説明

ヒートポンプ式加熱装置

【課題】正常なヒートポンプ回路に不要な負荷を与えて異常停止する前に、水回路側の異常を判別する。
【解決手段】冷媒を圧縮する圧縮機10、被加熱流体と対向して冷媒が流れる熱交換器11、冷媒を減圧する減圧装置12、減圧された冷媒を蒸発する蒸発器13を接続したヒートポンプ回路9と、被加熱流体を熱交換器11へ循環させる水回路18と、水回路18の水を循環させる循環ポンプ19と、ヒートポンプ回路9の熱交換器11から流出する冷媒の温度を検出する出口冷媒温度センサ16と、水回路18の熱交換器11から流出する被加熱流体の温度を検出する出口流体温度センサ21とを備え、ヒートポンプ回路9の起動後に、出口冷媒温度センサ16で検出する冷媒温度より出口流体温度センサ21で検出する流体温度が低い状態を所定時間継続すると、水回路18側の異常であると判別するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱流体を加熱するヒートポンプ式加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の被加熱流体を加熱するヒートポンプ式加熱装置においては、特許文献1に示すように、圧縮機、熱交換器、膨張弁、蒸発器を冷媒配管で接続したヒートポンプ回路と、給水管と出湯管が接続されて被加熱流体としての水を貯湯する貯湯タンクと、貯湯タンク内の水を熱交換器へ循環させる水回路と、水回路の水を循環させる循環ポンプと、を備えた貯湯式給湯装置であって、圧縮機起動後にヒートポンプ回路の高圧側が高圧異常となった場合に、圧縮機を駆動停止し、停止時の被加熱流体の温度と吐出冷媒温度とからヒートポンプ回路側の異常であるか、水回路側の異常であるかを判別しようとしたものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−243774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところがこの従来のものでは、水回路側に異常があった場合に、正常なヒートポンプ回路を高圧異常となるまで駆動継続することとなり、ヒートポンプ回路側に不要な負荷を与えてしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、正常なヒートポンプ回路に不要な負荷を与えて異常停止する前に、水回路側の異常を判別することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は上記課題を解決するため、冷媒を圧縮する圧縮機、被加熱流体と対向して冷媒が流れる熱交換器、冷媒を減圧する減圧装置、減圧された冷媒を蒸発する蒸発器を接続したヒートポンプ回路と、被加熱流体を前記熱交換器へ循環させる水回路と、前記水回路の水を循環させる循環ポンプと、前記ヒートポンプ回路の前記熱交換器から流出する冷媒の温度を検出する出口冷媒温度センサと、前記水回路の前記熱交換器から流出する被加熱流体の温度を検出する出口流体温度センサとを備え、前記ヒートポンプ回路の起動後に、前記出口冷媒温度センサで検出する冷媒温度より前記出口流体温度センサで検出する流体温度が低い状態を所定時間継続すると、前記水回路側の異常であると判別するようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ヒートポンプ回路の起動後に、出口冷媒温度センサで検出する冷媒温度より出口流体温度センサで検出する流体温度が低い状態が所定時間継続すると、水回路側の異常であると判別するようにしたので、ヒートポンプ回路は正常であり、水回路側に異常が発生していることを確実に判別でき、正常なヒートポンプ回路に不要な負荷を与え続けて異常停止させることがないと共に、異常のある水回路側に絞って修理またはメンテナンスすることができ、ヒートポンプ回路の不要な点検あるいは交換を行わずに済む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態の概略構成図
【図2】同一実施形態の沸き上げ動作を説明するフローチャート
【図3】熱交換器の温度状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態のヒートポンプ式給湯装置を図面に基づいて説明する。
1は被加熱流体としての湯水を貯湯する貯湯タンク、2は貯湯タンク1下部へ給水する給水管、3は貯湯タンク1上部から出湯する出湯管、4は給水管2から分岐された給水バイパス管、5は出湯管3からの湯と給水バイパス管4からの水とを給湯設定温度に混合する給湯混合弁、6は給湯混合弁5で混合された湯水を給湯栓(図示せず)に供給する給湯管、7は給湯管6から流出する給湯の流量をカウントする給湯流量カウンタ、8は給湯管6から給湯される湯水の温度を検出する給湯温度センサである。
【0010】
9は貯湯タンク1内の湯水を加熱する加熱手段としてのヒートポンプ回路で、冷媒を圧縮する圧縮機10と、圧縮された高温冷媒と貯湯タンク1からの湯水とを対向流で熱交換する冷媒水熱交換器11の冷媒側と、冷媒水熱交換器11で放熱された冷媒を減圧する減圧装置としての膨張弁12と、低温低圧の冷媒を蒸発される蒸発器13とを環状に接続して構成され、送風手段14にて蒸発器13へ大気熱源としての空気を送風している。
【0011】
15は圧縮機10から吐出されて冷媒水熱交換器11の水側へ流入する冷媒の温度を検出する吐出冷媒温度センサ、16は冷媒水熱交換器11で熱交換された後の冷媒の温度を検出する出口冷媒温度センサ、17は外気温度を検出する外気温度センサである。
【0012】
18は貯湯タンク1下部の湯水を冷媒水熱交換器11の水側へ循環させて貯湯タンク1上部に戻す水回路、19は水回路18途中に設けられた加熱循環ポンプ、20は冷媒水熱交換器11の水側へ流入する湯水の温度を検出する入口流体温度センサ、21は冷媒水熱交換器11の水側から流出する加熱された湯水の温度を検出する出口流体温度センサ、22a〜dは貯湯タンク1の外周側面上下に複数設けられ、貯湯タンク1内の湯水の温度を検出し、貯湯量を検出する貯湯温度センサである。
【0013】
23はリモコンで、給湯装置に関する各種の情報(給湯設定温度、残湯量、給湯装置の作動状態、沸き上げモード等)を表示する表示部24と、給湯設定温度等を設定操作する複数の操作スイッチ25とを備えている。
【0014】
26は給湯流量センサ7、給湯温度センサ8、吐出冷媒温度センサ15、出口冷媒温度センサ16、外気温度センサ17、入口流体温度センサ20、出口流体温度センサ21、貯湯温度センサ22の検出値が入力され、給湯混合弁5、圧縮機10、膨張弁12、加熱循環ポンプ19の作動を制御すると共に、リモコン23と通信可能に接続された制御手段である。この制御手段26は、予め給湯装置の作動を制御するためのプログラムが記憶されていると共に、演算、比較、記憶機能、時計機能を有しているものである。
【0015】
<沸き上げ動作>
次に、電力料金単価の安価な深夜の沸き上げ動作について、図2のフローチャートに基づいて説明する。ここでは、一例として23時から翌朝7時までの深夜時間帯がそれ以外の昼間時間帯よりも電力料金単価が安価な料金制度に基づいて説明するが、これに限られず、例えば22時から翌朝8時までを安価な深夜時間帯とする料金制度でもよいものである。
【0016】
現在時刻が23時となり深夜時間帯が開始されると(ステップS1でYes)、制御手段26は、ステップS2で、給湯流量カウンタ7で検出して積算していた1日の給湯湯量に基づき目標貯湯量を算出し、外気温度センサ17で検出する外気温度と目標貯湯量とから沸き上げ目標温度を決定する。
【0017】
続くステップS3で、制御手段26は、目標貯湯量を沸き上げるのに必要な時間を算出し、翌朝までに沸き上げを完了すべく沸き上げ開始時刻(ピークシフト時刻)を算出し、現在時刻がピークシフト時刻となると(ステップS4でYes)、ヒートポンプ回路9および加熱循環ポンプ19を駆動してヒートポンプ回路9で加熱した湯を貯湯タンク1上部から戻す沸き上げ動作を開始する(ステップS5)。
【0018】
沸き上げ動作の開始が指示されると制御手段26は、膨張弁12を初期開度に開き、加熱循環ポンプ19を駆動すると共に送風手段14を送風状態とする。その後少し遅れて圧縮機10を駆動し、膨張弁12の開度と、加熱循環ポンプ19の回転数と、圧縮機10の駆動周波数とを制御して出口流体温度センサ21で検出する出口流体温度が沸き上げ目標温度となるように沸き上げ動作を行う。
【0019】
次に、ステップS6では、制御手段26は、ヒートポンプ回路9の出口冷媒温度センサ16で検出する出口冷媒温度と、水回路18の出口流体温度センサ21で検出する出口流体温度とを比較する。ここでは、出口冷媒温度が出口流体温度よりも所定温度(ここでは10℃)以上高い温度であるかを判別している。
【0020】
沸き上げ動作の開始直後は冷媒水熱交換器11の水回路18の出口流体温度が上昇していないため、ステップS6でYesとなり、ステップS7へ進んで時間カウントを開始し、所定の時間(ここでは120秒)が経過したかどうかを判定し、そして、ヒートポンプ回路9および水回路18が正常に動作して加熱状態となると、図3の(A)に示すように出口流体温度が上昇してステップS6でNoとなり、ステップS8へ進む。
【0021】
そして、貯湯タンク1最下部の貯湯温度センサ22dが沸き上げ終了温度(例えば65℃)以上を検出するかまたは入口流体温度センサ20が規定の温度以上を検出して貯湯タンク1が満タンになるか(ステップS8でYes)、現在時刻が深夜時間帯の終了時刻である7時に到達すると(ステップS9でYes)、制御手段26は、ヒートポンプ回路9および加熱循環ポンプ19を駆動停止して沸き上げ動作を終了する(ステップS10)。
【0022】
一方、ヒートポンプ回路9が正常で水回路18が閉塞した状態であると、図3の(B)に示すように冷媒水熱交換器11内部の水回路18側の温度だけが上昇し、出口流体温度は上昇せず、正常時の出口冷媒温度との温度関係が逆転して出口冷媒温度が出口流体温度より高い状態が継続するため、沸き上げ動作を開始してから出口流体温度が上昇しないまま前記ステップS6でNoを継続して、前記ステップS7の120秒が継続すると、水回路18の異常状態であると判別して、ステップS11でリモコン23の表示部24に水回路18の異常状態を示すエラーコードを表示させ、ステップS10へ進んで沸き上げ動作を終了する。
【0023】
このように、正常なヒートポンプ回路9を高圧異常となるまで駆動継続することなく、水回路18側に異常があることを確実に検出することができ、正常なヒートポンプ回路に不要な負荷を与えて異常停止することを防止することができると共に、異常のある水回路18側だけを点検修理することができ、点検修理時のメンテナンス性を向上することができる。
【0024】
水回路18側の異常の原因としては、水回路18途中に設けられる止水バルブの開放忘れや、水回路18のエア抜き不足等、故障ではない異常があり、本発明は、そのような不適切な施工時に適切な施工を再度行うことで解消することのできる異常発生時に、ヒートポンプ回路9に高圧保護回路が作動するほどの不要な高負荷運転を強いることをなくすことができるものである。
【0025】
なお、実施形態としてヒートポンプ式給湯装置を用いて説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、温水式ヒートポンプ暖房装置であってもよいものである。
【符号の説明】
【0026】
9 ヒートポンプ回路
10 圧縮機
11 冷媒水熱交換器(熱交換器)
12 膨張弁(減圧装置)
13 蒸発器
16 出口冷媒温度センサ
18 水回路
19 循環ポンプ
21 出口流体温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機、被加熱流体と対向して冷媒が流れる熱交換器、冷媒を減圧する減圧装置、減圧された冷媒を蒸発する蒸発器を接続したヒートポンプ回路と、被加熱流体を前記熱交換器へ循環させる水回路と、前記水回路の水を循環させる循環ポンプと、前記ヒートポンプ回路の前記熱交換器から流出する冷媒の温度を検出する出口冷媒温度センサと、前記水回路の前記熱交換器から流出する被加熱流体の温度を検出する出口流体温度センサとを備え、前記ヒートポンプ回路の起動後に、前記出口冷媒温度センサで検出する冷媒温度より前記出口流体温度センサで検出する流体温度が低い状態を所定時間継続すると、前記水回路側の異常であると判別するようにしたことを特徴とするヒートポンプ式加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−92272(P2013−92272A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232965(P2011−232965)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)