説明

ヒートポンプ式暖房装置

【課題】ヒートポンプユニットにて流体に与えた熱をより充分に有効に利用することが可能なヒートポンプ式暖房装置を提供する。
【解決手段】ヒートポンプ式暖房装置は、ヒートポンプユニット1と循環路8とを備える。ヒートポンプユニット1は、循環路8を流通する不凍液等の熱交換媒体である流体を加熱する手段であり、循環路8は、建物内に敷設され、熱交換媒体としての流体が内部を循環する経路である。循環路8は、建物内の暖房に供される暖房利用区域10Aと、暖房利用区域10Aからヒートポンプユニット1に流体が戻る部分に設けられ、水洗トイレ設備に貯留されているトイレ洗浄水の加熱に供されるトイレ洗浄水加熱区域10Bとを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプユニットにて加熱された熱交換媒体を用いて建物内の居室等を暖房するヒートポンプ式暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外に設置されたヒートポンプユニットを熱源として居室等の暖房を行なうヒートポンプ式暖房装置が知られている(たとえば、特開2003−90547号公報(特許文献1)参照)。ヒートポンプ式暖房装置は、熱交換媒体としての不凍液等の流体が循環する循環路の一部を居室等の暖房空間の床下や壁内に埋設し、床材や壁材からの熱伝達や床面や壁面からの輻射熱を利用して居室等の暖房を行なう装置である。
【0003】
一般に、このようなヒートポンプ式暖房装置においては、人体が直接床材や壁材に触れても熱く感じないように、ヒートポンプユニットから上記流体へと供給される熱量を制限し、循環路の暖房利用区域の入口部分を通過する上記流体の温度が概ね60℃程度となるように調節され、また、循環路の暖房利用区域の下流部分においても充分な暖房効果が得られるように、循環路の暖房利用区域の出口部分を通過する上記流体の温度が概ね40℃程度となるように調節されている。
【特許文献1】特開2003−90547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のヒートポンプ式暖房装置においては、上述のように、循環路の暖房利用区域の出口部分を通過する上記流体の温度が概ね40℃程度となるように調節されているため、ヒートポンプユニットにて流体に与えられた熱量のうちの一部のみが暖房に利用されるにとどまっている。すなわち、ヒートポンプユニットにて流体に与えられた熱量のうちの一部は、暖房に利用されることなくそのまま流体に保持されてヒートポンプユニットに戻されることとなっている。したがって、利用価値のある所定の熱量を帯びた流体を何ら利用することなくヒートポンプユニットに戻していることになり、必ずしもヒートポンプユニットにて生じさせた熱をすべて有効に利用しているとは言えない状況である。
【0005】
したがって、本発明は、上記問題を解決すべくなされたものであり、ヒートポンプユニットにて流体に与えた熱をより充分に有効に利用することが可能なヒートポンプ式暖房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づくヒートポンプ式暖房装置は、少なくとも一部が建物内に敷設され、熱交換媒体としての流体が内部を循環する循環路と、上記循環路を流通する上記流体を加熱するヒートポンプユニットとを備えたものであって、上記循環路が、建物内の暖房に供される暖房利用区域と、上記暖房利用区域から上記ヒートポンプユニットに上記流体が戻る部分に設けられ、水洗トイレ設備に貯留されているトイレ洗浄水の加熱に供されるトイレ洗浄水加熱区域とを含んでいることを特徴とするものである。
【0007】
このように構成することにより、循環路の暖房利用区域を通過した後の流体が依然として有している利用価値のある熱量を、トイレ洗浄水加熱区域においてトイレ洗浄水の加熱に利用することが可能になる。そのため、ヒートポンプユニットにて流体に与えられた熱をより充分に利用することが可能になる。また、上記のようにトイレ洗浄水を加熱することにより、トイレ洗浄水による便器等の汚れの除去効果が向上することが期待でき、水洗トイレ設備をより清潔に保つことが可能になる。
【0008】
上記本発明に基づくヒートポンプ式暖房装置にあっては、上記循環路の上記トイレ洗浄水加熱区域に相当する部分が、上記水洗トイレ設備の便器本体の水溜め部に配設されていることが好ましい。また、上記本発明に基づくヒートポンプ式暖房装置にあっては、上記循環路の上記トイレ洗浄水加熱区域に相当する部分が、上記水洗トイレ設備のトイレ洗浄水貯留タンクに配設されていることが好ましい。
【0009】
このように構成することにより、トイレ洗浄水をヒートポンプ式暖房装置の循環路を流通する流体にて効果的に加熱することが可能になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヒートポンプユニットにおいて熱交換媒体である流体に与えた熱をより充分に有効利用することができるヒートポンプ式暖房装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の実施の形態におけるヒートポンプ式暖房装置の構成を模式的に表わした図である。また、図2は、本実施の形態におけるヒートポンプ式暖房装置が実際に設置された建物の一例を示す見取り図である。また、図3は、本実施の形態におけるヒートポンプ式暖房装置の循環路の一部が敷設された水洗トイレ設備の模式断面図である。以下においては、これの図を参照して、本発明の実施の形態におけるヒートポンプ式暖房装置について具体的に説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態におけるヒートポンプ式暖房装置は、ヒートポンプユニット1を備えている。ヒートポンプユニット1は、冷媒が封入されたヒートポンプ回路を有している。ヒートポンプ回路は、圧縮機2、熱交換器3、膨張弁4および空気熱交換器5を冷媒配管7にて連結することによって構成されている。このヒートポンプ回路に封入される冷媒としては、たとえば二酸化炭素やエチレン、エタン、酸化窒素等が挙げられる。
【0013】
ヒートポンプ回路においては、熱交換器3を通過した冷媒を膨張弁4にて強制的に膨張させて低温の状態とし、空気熱交換器5に通じさせて大気が有している熱を冷媒に吸熱させ、この冷媒を圧縮機2にて強制的に圧縮させて高温の状態とし、その後再び熱交換器3に供給することが行なわれる。これにより、ヒートポンプユニット1においては、効率的な熱の生成が行なわれることになる。なお、空気熱交換器5には、この空気熱交換器5における大気からの吸熱が促進されるように、ファン6が近接配置されている。
【0014】
また、図1に示すように、本実施の形態におけるヒートポンプ式暖房装置は、ヒートポンプユニット1に接続された循環路8を備えている。循環路8は、ヒートポンプユニット1の熱交換器3に接続されており、その内部には熱交換媒体としての不凍液等からなる流体が充填されている。循環路8は、暖房利用区域10Aとトイレ洗浄水加熱区域10Bとを有しており、トイレ洗浄水加熱区域10Bは、暖房利用区域10Aからヒートポンプユニット1の熱交換器3に流体が戻る部分の循環路8に設けられている。すなわち、循環路8に封入された流体は、熱交換器3、暖房利用区域10A、トイレ洗浄水加熱区域10B、熱交換器3の順で循環路8内を流通することになる。なお、循環路8の所定位置には、循環路8内の流体を循環させるためのポンプ9が設置されている。
【0015】
循環路8においては、熱交換器3においてヒートポンプ回路を流通する冷媒の熱を受け取って高温の状態となった流体が、暖房利用区域10Aに達して建物内の居室の暖房に利用され、その後トイレ洗浄水加熱区域10Bに達して暖房利用区域10Aにおいて放熱されなかった熱をトイレ洗浄水に与える。その後、ヒートポンプユニットにて与えられた熱の大部分を失った流体が熱交換器3に戻され、再びヒートポンプ回路を流通する冷媒の熱によって加熱されることになる。
【0016】
上述のヒートポンプ式暖房装置は、図2に示すように、住居等の建物100に設置される。より具体的には、ヒートポンプユニット1は建物100の外部に設置され、このヒートポンプユニット1に接続された循環路8が建物100の内部に敷設されることになる。図示する建物100においては、循環路8の一部が居室Aの床材およびトイレ室の床材に埋設されており、この部分において暖房利用区域10Aを構成している。また、上記暖房利用区域10Aの下流側に位置する循環路8の一部が水洗トイレ設備に埋設されており、トイレ洗浄水加熱区域10Bを構成している。
【0017】
循環路8のトイレ洗浄水加熱区域10Bは、水洗トイレ設備の便器本体や便器本体に付属するトイレ洗浄水貯留タンクに配設される。より具体的には、居室Aから延びる循環路8は、図3に示すように、トイレ室の床材101に埋設されて暖房利用区域10Aを構成した後、水洗トイレ設備20の便器本体21の水溜め部21aにおいて蛇行するように配設されてトイレ洗浄水加熱区域10B1を構成し、さらにその後、水洗トイレ設備20の便器本体21の上方に位置するトイレ洗浄水貯留タンク22内において蛇行するように配設されてトイレ洗浄水加熱区域10B2を構成する。そして、その後、循環路8は、トイレ室外部へと引き出され、最終的に屋外のヒートポンプユニット1へと連結される。
【0018】
上記循環路8のトイレ洗浄水加熱区域10B1においては、配管内を流通する流体の熱が便器本体21の水溜め部21aに貯留されているトイレ洗浄水に与えられ、これにより水溜め部21aに貯留されているトイレ洗浄水が加熱されることになる。また、上記循環路8のトイレ洗浄水加熱区域10B2においては、配管内を流通する流体の熱がトイレ洗浄水貯留タンク22に貯留されているトイレ洗浄水に与えられ、これによりトイレ洗浄水貯留タンク22に貯留されているトイレ洗浄水が加熱されることになる。
【0019】
以上において説明した如くのヒートポンプ式暖房装置とすることにより、循環路8の暖房利用区域10Aを通過した後の流体が依然として有している利用価値のある熱量を、トイレ洗浄水加熱区域10Bにおいてトイレ洗浄水の加熱に利用することができる。したがって、ヒートポンプユニット1にて流体に与えられた熱をより充分に利用することが可能になる。
【0020】
また、上記のように循環路8を流通する流体によってトイレ洗浄水を加熱することにより、トイレ洗浄水をほぼ常に温水に維持することができる。そのため、トイレ洗浄水による便器等の汚れの除去効果が向上することが期待でき、水洗トイレ設備20をより清潔に保つことが可能になる。さらには、冬場においては、室温が低いために便器本体21やトイレ洗浄水貯留タンク22に結露が生じる場合があるが、便器本体21自体およびトイレ洗浄水貯留タンク22自体の温度を室温よりも高く維持することが可能になるため、結露の発生が未然に防止できる。したがって、結露が発生した場合にそれによってカビ等が発生し繁殖するおそれがあるが、上記構成を採用することによって、カビ等の発生および繁殖が防止可能となり、衛生面で優れた効果を発揮することになる。
【0021】
上述の実施の形態におけるヒートポンプ式暖房装置においては、循環路を床材に埋設することによって床暖房とした場合を例示して説明を行なったが、循環路を壁材や天井材に埋設することも当然に可能である。また、上述の実施の形態においては、ヒートポンプ式暖房装置によって暖房される空間として居室やトイレ室を対象とした場合を例示したが、暖房対象となる空間はこれに限定されるものではない。たとえば、廊下や洗面所、風呂場等、建物内の様々な部分が暖房対象となり得る。なお、その場合にも、トレイ洗浄水加熱区域は、すべての暖房利用区域を通過した後の循環路に設けることが好ましい。
【0022】
また、上述の実施の形態におけるヒートポンプ式暖房装置においては、水洗トイレ設備の便器本体の水溜め部およびトイレ洗浄水貯留タンクの両方に循環路を敷設した場合を例示して説明を行なったが、必ずしもこれら両方に敷設する必要はなく、一方のみとしてもよい。
【0023】
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態におけるヒートポンプ式暖房装置の構成を模式的に表わした図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるヒートポンプ式暖房装置が実際に設置された建物の一例を示す見取り図である。
【図3】本実施の形態におけるヒートポンプ式暖房装置の循環路の一部が敷設された水洗トイレ設備の模式断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ヒートポンプユニット、2 圧縮機、3 熱交換器、4 膨張弁、5 空気熱交換器、6 ファン、7 冷媒配管、8 循環路、9 ポンプ、10A 暖房利用区域、10B トイレ洗浄水加熱区域、20 水洗トイレ設備、21 便器本体、21a 水溜め部、22 トイレ洗浄水貯留タンク、100 建物、101 トイレの床材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が建物内に敷設され、熱交換媒体としての流体が内部を循環する循環路と、
前記循環路を流通する前記流体を加熱するヒートポンプユニットとを備え、
前記循環路は、建物内の暖房に供される暖房利用区域と、前記暖房利用区域から前記ヒートポンプユニットに前記流体が戻る部分に設けられ、水洗トイレ設備に貯留されているトイレ洗浄水の加熱に供されるトイレ洗浄水加熱区域とを含む、ヒートポンプ式暖房装置。
【請求項2】
前記循環路の前記トイレ洗浄水加熱区域に相当する部分は、前記水洗トイレ設備の便器本体の水溜め部に配設されている、請求項1に記載のヒートポンプ式暖房装置。
【請求項3】
前記循環路の前記トイレ洗浄水加熱区域に相当する部分は、前記水洗トイレ設備のトイレ洗浄水貯留タンクに配設されている、請求項1または2に記載のヒートポンプ式暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−155293(P2007−155293A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354865(P2005−354865)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】