ヒートポンプ式温水装置
【課題】循環路におけるスケール付着異常判定精度の向上を図ったヒートポンプ式温水装置を得る。
【解決手段】沸き上げポンプ回転数認識手段54はヒートポンプユニット制御手段53からの回転数指令C13に基づき認識された回転数情報D13をスケール付着判定手段57Aに出力する。スケール付着判定手段57Aは出湯サーミスタ21からの検出出湯温度T21及び回転数情報D13を常時読み出してスケール付着判定ルーチンを実行し、スケール付着異常の有無を指示する判定結果情報D57Aをスケール付着異常時実行手段58に出力する。スケール付着異常時実行手段58は判定結果情報D57Aが「スケール付着異常あり」を指示する場合、圧縮機25の停止等を含むヒートポンプ式給湯装置の運転停止によるスケール付着異常処理を実行する。
【解決手段】沸き上げポンプ回転数認識手段54はヒートポンプユニット制御手段53からの回転数指令C13に基づき認識された回転数情報D13をスケール付着判定手段57Aに出力する。スケール付着判定手段57Aは出湯サーミスタ21からの検出出湯温度T21及び回転数情報D13を常時読み出してスケール付着判定ルーチンを実行し、スケール付着異常の有無を指示する判定結果情報D57Aをスケール付着異常時実行手段58に出力する。スケール付着異常時実行手段58は判定結果情報D57Aが「スケール付着異常あり」を指示する場合、圧縮機25の停止等を含むヒートポンプ式給湯装置の運転停止によるスケール付着異常処理を実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、循環路におけるスケール異常判定機能を備えたヒートポンプ式温水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートポンプ式温水装置の一つであるヒートポンプ式給湯装置は出湯温度が予め設定された設定異常温度(例えば、98℃)以上に上昇した場合に出湯温度異常と判定する出湯温度異常判定方法を採用しており、設定異常温度以上まで出湯温度が上昇した場合のみに異常と判定し、判定後は装置の運転停止制御を行っていた。このような異常判定機能を備えたヒートポンプ式給湯装置として例えば特許文献1に開示されたヒートポンプ式給湯器がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−53190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、循環路となる配管経路におけるスケール付着を主な要因として圧力損失が増加してしまうことに起因して、沸き上げポンプの回転数を設定可能な最大回転数に設定して貯湯タンクからヒートポンプにて熱交換して貯湯タンクに戻る循環路において、水循環を可能最大流量、または最大流量に近い値で行うように制御しても、実際に循環路を流れる水の流量低下により、出湯温度が上昇してしまう現象が生じる傾向がある。この現象が生じると、出湯温度は上述した設定異常温度(98℃程度)までには至らないものの、循環路の配管許容最大温度(例えば、95℃)以上に達する可能性が高い。
【0005】
この場合、従来の出湯温度異常判定方法では、設定異常温度(98℃)までには至らないため、異常検出できず、出湯温度が配管許容最大温度(例えば、95℃)以上で装置の運転が継続されてしまうというという状態が発生してしまうという問題点があった。
【0006】
このように、従来の出湯温度異常判定方法では、スケール付着による異常を精度良く検出することができず、循環路となる配管の劣化が生じてしまうという問題点があった。
【0007】
加えて、上記した高温の水が流れる状態で装置の運転が継続されることにより、更なるスケール付着が発生し、配管の劣化を増長させてしまうという問題点があった。
【0008】
この発明は上記問題点を解決するためになされたもので、循環路におけるスケール付着異常判定精度の向上を図ったヒートポンプ式温水装置を得ることを目的とする。
【0009】
また、圧力損失が増大する要因として、スケール付着以外に、配管長が長い施工をされた場合や配管におけるバルブの設置、ゴミのつまりなどがある。すなわち、許容範囲以上の異常な設置をされた場合も、スケール付着と同等に、本発明によって異常な状態であることを検知することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る請求項1記載の発明は、所定の水路(12)を流れる湯水を加熱するヒートポンプ式温水装置であって、前記湯水が前記所定の水路を流れるように駆動する沸き上げポンプ(13)を備え、前記湯水が前記所定の水路を流通する流量は前記沸き上げポンプの回転数に対し正の相関を有し、前記湯水を加熱する熱交換処理を行うヒートポンプ部(H)をさらに備え、前記ヒートポンプ部は、前記熱交換処理を行う熱交換器(26)と加熱後の前記湯水の温度である出湯温度を検出する出湯温度検出手段(21)とを含み、前記ヒートポンプ式温水装置は、前記出湯温度が目標出湯温度に達するように、前記沸き上げポンプ及び前記ヒートポンプ部の動作を制御する制御手段(50)をさらに備え、前記制御手段は、前記沸き上げポンプへの回転数を指示する回転数指令を出力して前記沸き上げポンプを制御し、前記出湯温度を認識可能に前記出湯温度検出手段に接続され、出湯温度検出手段より検出された前記出湯温度が所定の出湯温度以上の際に前記沸き上げポンプの回転数を上昇させるように回転数指令を出力し、前記出湯温度が前記所定の出湯温度以上の際に前記沸き上げポンプの回転数を上昇させるように前記回転数指令を出力している第1の条件と、前記出湯温度が所定の下限温度よりも低い温度とならない第2の条件とを共に満足するとき、前記所定の水路にスケール付着異常が発生していると判定する。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1記載のヒートポンプ式温水装置であって、前記第1の条件は、所定の期間において、前記回転数指令が指示する回転数が継続して所定の回転数以下に低下しない条件を含み、前記第2の条件は、前記所定の期間において、前記出湯温度が継続して前記所定の下限温度以下に低下しない条件を含み、前記制御手段(50)は、前記所定の水路にスケール付着異常が発生していると判定した際、前記沸き上げポンプ及び前記ヒートポンプ部の動作を停止させるスケール付着異常処理を行う。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2記載のヒートポンプ式温水装置であって、前記ヒートポンプ部(H)は、熱源となる冷媒を吐出する圧縮機(25)をさらに含み、前記冷媒の温度は前記圧縮機の周波数に対し正の相関を有し、前記熱交換器(26)は前記冷媒を用いて前記熱交換処理を行い、前記出湯温度検出手段(21)は前記熱交換器の出力側における前記所定の水路(12)に設けられた出湯サーミスタを含み、前記制御手段(50)は、前記圧縮機の周波数を指示する周波数指令を前記圧縮機に出力して前記圧縮機の動作を制御し、前記第1及び第2の条件に加え、前記所定の期間において、前記周波数指令が指示する周波数が継続して所定の周波数以上に上昇しない第3の条件をさらに満足するとき、前記スケール付着異常が発生していると判定する。
【0013】
請求項4の発明は、請求項3記載のヒートポンプ式温水装置であって、前記ヒートポンプ部(H)は、吐出後の前記冷媒の温度を吐出温度として検出する冷媒温度検出手段(40)とを含み、前記吐出温度検出手段は前記圧縮機の出力側に設けられた吐出温度サーミスタを含み、前記制御手段(50)は、前記吐出温度を認識可能に前記吐出温度検出手段に接続され、前記第1〜第3の条件に加え、前記所定の期間において前記吐出温度が継続して所定の上限温度以上に上昇しない第4の条件をさらに満足するとき、前記スケール付着異常が発生していると判定する。
【0014】
請求項5の発明は、請求項3記載のヒートポンプ式温水装置であって、前記ヒートポンプ部(H)は、前記冷媒の通過する冷媒通路上に設けられる膨張弁(27)とを含み、前記冷媒の温度は前記膨張弁の開度に対し負の相関を有し、前記制御手段(50)は、前記膨張弁の開度を指示する開度指令を出力して前記膨張弁を制御し、前記第1〜第3の条件に加え、前記所定の期間において前記開度指令が指示する開度が継続して所定の開度以下に低下しない第4の条件をさらに満足するとき、前記スケール付着異常処理を行う。
【0015】
請求項6の発明は、請求項2記載のヒートポンプ式温水装置であって、前記ヒートポンプ部(H)は、熱源となる冷媒を吐出する圧縮機(25)と、吐出後の前記冷媒の温度を吐出温度として検出する冷媒温度検出手段(40)とを含み、前記熱交換器(26)は前記冷媒を用いて前記熱交換処理を行い、前記出湯温度検出手段(21)は前記熱交換器の出力側における前記所定の水路に設けられた出湯サーミスタを含み、前記吐出温度検出手段は前記圧縮機の出力側に設けられた吐出温度サーミスタを含み、前記制御手段(50)は、前記吐出温度を認識可能に前記吐出温度検出手段に接続され、前記第1及び第2の条件に加え、前記所定の期間において前記吐出温度が継続して所定の上限温度以上に上昇しない第4の条件をさらに満足するとき、前記スケール付着異常処理を行う。
【0016】
請求項7の発明は、請求項2記載のヒートポンプ式温水装置であって、前記ヒートポンプ部(H)は、熱源となる冷媒を吐出する圧縮機(25)と、前記冷媒の通過する冷媒通路上に設けられる膨張弁(27)とを含み、前記冷媒の温度は前記膨張弁の開度に対し負の相関を有し、前記熱交換器(26)は前記冷媒を用いて前記熱交換処理を行い、前記出湯温度検出手段(21)は前記熱交換器の出力側における前記所定の水路に設けられた出湯サーミスタを含み、前記制御手段(50)は、前記膨張弁の開度を指示する開度指令を出力して前記膨張弁を制御し、前記第1及び第2の条件に加え、前記所定の期間において前記開度指令が指示する開度が継続して所定の開度以下に低下しない第4の条件をさらに満足するとき、前記スケール付着異常処理を行う。
【0017】
請求項8の発明は、請求項1ないし請求項7うち、いずれか1項に記載のヒートポンプ式温水装置であって、前記制御手段(50)は、起動時において前記出湯温度が所定のハンチング設定温度を超えないように前記ヒートポンプ部及び前記沸き上げポンプを制御する。
【0018】
請求項9の発明は、請求項1ないし請求項8のうち、いずれか1項に記載のヒートポンプ式温水装置であって、前記所定の水路は循環路を含み、前記循環路(12)上に設けられる貯水タンク(3)をさらに備え、前記沸き上げポンプ(13)は前記貯水タンクの貯留水を流出させ、前記湯水を循環水として前記循環路内を循環させる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の本願発明におけるヒートポンプ式温水装置における制御手段は、出湯温度が所定の出湯温度以上の際に沸き上げポンプの回転数を上昇させるように回転数指令を出力している第1の条件と、出湯温度が所定の下限温度よりも低い温度とならない第2の条件とを共に満足するとき、所定の水路にスケール付着異常が発生していると判定している。
【0020】
その結果、請求項1記載の本願発明は、出湯温度をモニタするだけでは検出不可能であったスケール付着を判定可能にして、スケール付着異常判定精度の向上を図ることができる。
【0021】
請求項2記載のヒートポンプ式温水装置における制御手段は、所定の期間において沸き上げポンプの回転数が継続して所定の回転数以下に低下しないという第1の条件、上記所定の期間において出湯温度が継続して所定の下限温度以下に低下しないという第2の条件とが、共に所定の期間において継続されることに着目することにより、スケール付着異常の判定精度の向上を図ることができる。
【0022】
請求項3記載のヒートポンプ式温水装置の制御手段は、第1及び第2の条件に加え、圧縮機の周波数が継続して所定の周波数以上に上昇しない第3の条件をさらに加味することにより、より精度良くスケール付着異常の発生の有無を判定することができる。
【0023】
請求項4記載のヒートポンプ式温水装置の制御手段は、第1〜第3の条件に加え、吐出温度が継続して所定の上限温度以上に上昇しない第4の条件をさらに加味することにより、より一層、精度良くスケール付着異常の有無を判定することができる。
【0024】
請求項5記載のヒートポンプ式温水装置の制御手段は、第1〜第3の条件に加え、膨張弁の開度が継続して所定の開度以下に低下しない第4の条件をさらに加味することにより、より一層、精度良くスケール付着異常の発生の有無を判定することができる。
【0025】
請求項6記載のヒートポンプ式温水装置の制御手段は、第1及び第2の条件に加え、吐出温度が継続して所定の上限温度以上に上昇しない第4の条件をさらに加味することにより、より精度良くスケール付着異常の有無を判定することができる。
【0026】
請求項7記載のヒートポンプ式温水装置の制御手段は、第1及び第2の条件に加え、膨張弁の開度が継続して所定の開度以下に低下しない第4の条件をさらに加味することにより、より精度良くスケール付着異常の発生の有無を判定することができる。
【0027】
請求項8記載のヒートポンプ式温水装置は、制御手段が起動時において前記出湯温度が所定のハンチング設定温度を超えないように制御することにより、スケール付着判定に必要な所定の期間の長さを短くすることにより、早期にスケール付着異常の有無を判定することができる。
【0028】
請求項9記載のヒートポンプ式温水装置は、貯水タンクを循環路上に有し給湯機能を実現可能な構成においても、スケール付着異常判定精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の原理を示すためのヒートポンプ式給湯装置における出湯温度の経時変化を示すグラフである。
【図2】この発明の実施の形態1であるヒートポンプ式給湯装置の構成を示す回路構成図である。
【図3】実施の形態1における運転制御手段内部構成の詳細を示すブロック図である。
【図4】図3で示したスケール付着判定手段によるスケール付着判定ルーチンの実行手順を示すフローチャートである。
【図5】検出出湯温度と及び沸き上げポンプの回転数の経時変化を示すグラフである。
【図6】実施の形態2であるヒートポンプ式給湯装置における運転制御手段の内部構成の詳細を示すブロック図である。
【図7】図6で示したスケール付着判定手段によるスケール付着判定ルーチンの実行手順を示すフローチャートである。
【図8】検出出湯温度、沸き上げポンプの回転数及び圧縮機の周波数の経時変化を示すグラフである。
【図9】実施の形態3であるヒートポンプ式給湯装置における運転制御手段の内部構成の詳細を示すブロック図である。
【図10】図9で示したスケール付着判定手段によるスケール付着判定ルーチンの実行手順を示すフローチャートである。
【図11】ヒートポンプ式給湯装置の第1の態様におけるスケール付着判定手段5の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<発明の原理>
図1はこの発明の原理を示すためのヒートポンプ式給湯装置における出湯温度の経時変化を示すグラフである。同図に示すように、上述した従来の異常出湯温度判定手段では判定不可能であった98℃以下で変化する出湯温度T1の出湯温度変化J1〜J5についてもスケール付着異常の有無を可能にするのが本願発明である。
【0031】
本願発明では、瞬間的なスケール付着異常判定用の異常基準温度X(基準出湯温度)として95℃を設定し、継続的なスケール付着異常判定用の下限温度Yとして94℃を設定している。すなわち、異常基準温度X及び下限温度Yを共に従来の設定異常温度である98℃よりも少し低く設定している。
【0032】
異常基準温度Xは通常は目標出湯温度DO(例えば、90℃程度)より高い温度となるため、ヒートポンプ式給湯装置として出湯温度が目標出湯温度DOに達するように、出湯温度を下げる運転(出湯温度低下意図運転)をしていると考えられる。上記出湯温度低下意図運転として、例えば、沸き上げポンプの回転数を上昇させ、所定の回転数P以上に設定されている状況が推測される。
【0033】
本発明では、上記出湯温度低下意図運転が行われている際に、出湯温度T1が異常基準温度Xを超えるときを、スケール付着異常判定処理起動条件して、スケール付着異常判定処理を開始させる。なお、出湯温度T1が瞬間的に異常基準温度Xを超えただけで単純に「スケール付着異常である」と判定するのは検出精度が低下してしまうため行っていない。
【0034】
その理由の一つとしてハンチング現象がある。ヒートポンプ式給湯装置の起動時やヒートポンプユニットにおける圧縮機の周波数変更時において、90℃程度の目標出湯温度DOに達するべく制御を行う場合、早期に実現すべくオーバーシュートを伴うハンチング現象が生じ、95℃程度の異常基準温度Xを超えてしまう可能性が高い。すなわち、単純に出湯温度T1が異常基準温度Xを超えた時にスケール付着異常であると判定することは誤判定となる可能性が高いため、採用することはできない。
【0035】
図1において、仮に開始時刻TS1の時点で上記出湯温度低下意図運転がなされているとすると、出湯温度T1(出湯温度変化J1〜J5)が異常基準温度Xを超えた時刻がスケール付着異常判定処理の開始時刻TS1となる。なお、図1では、説明の都合上、少なくとも開始時刻TS1〜終了時刻TE1までの期間は上記出湯温度低下意図運転が継続していることを前提とする。
【0036】
そして、開始時刻TS1から終了時刻TE1までの異常判定期間PD1において、出湯温度T1が継続して下限温度Y以下に低下しなかた場合、「スケール付着異常あり」と判定し、一瞬でも下限温度Y以下に低下した場合、「スケール付着異常なし」と判定する。
【0037】
したがって、図1の例では、出湯温度変化J1〜J4は、一度も下限温度Y(94℃)以下に低下しなかったため「スケール付着異常あり」と判定され、出湯温度変化J5は、時刻tx1に下限温度Y(94℃)達し、時刻tx1以降は94℃を下回ったため、「スケール付着異常なし」と判定される。
【0038】
このように、本発明は、異常基準温度Xによるスケール付着異常判定処理起動条件で開始される下限温度Yによるスケール付着異常判定処理によって、従来の設定異常温度(98℃)より低い温度(異常基準温度X及び下限温度Y)と出湯温度T1との比較結果に基づき、従来ではスケール付着異常判定が不可能であった出湯温度T1の出湯温度変化J1〜J4においもて「スケール付着異常あり」と判定可能にしている。
【0039】
本発明により循環路を構成する配管におけるスケール付着異常判定を精度良く行うことにより、従来に比べ早期にスケール付着異常を判定することができる結果、配管を洗浄することによってスケールを除去できることが可能となる。すなわち、本発明では、洗浄によって配管内のスケールを除去することが可能な状況でスケール付着異常を判定することを可能にしている。
【0040】
<実施の形態1>
(装置構成)
図2はこの発明の実施の形態1であるヒートポンプ式給湯装置(温水装置)の構成を示す回路構成図である。
【0041】
同図に示すように、実施の形態1のヒートポンプ式給湯装置は、ヒートポンプユニットHUと、ヒートポンプユニットHUによって加熱された温湯を貯湯するタンクユニットTUとを有している。タンクユニットTUは、貯湯タンク3と、この貯湯タンク3に連結される循環路12(所定の水路)と、この循環路12に介設される熱交換路14とを備え、この熱交換路14をヒートポンプ加熱源にて加熱して、上記貯湯タンク3から循環路12に流出した低温水を沸き上げてこの貯湯タンク3に返流する運転が可能である。そして、この貯湯タンク3に貯湯された温湯が図示省略の浴槽等に供給される。
【0042】
この場合、貯湯タンク3には、その底壁に給水口5が設けられると共に、その上壁に給湯口6が設けられている。そして、給水口5から貯湯タンク3に水道水が供給され、給湯口6から給湯用流路7を介して高温湯が出湯される。また、貯湯タンク3には、その底壁に取水口10が開設されると共に、側壁(周壁)の上部に湯入口11が開設され、取水口10と湯入口11とが循環路12にて連結されている。そして、この循環路12に沸き上げポンプ(水循環用ポンプ)13と熱交換路14とが介設されている。なお、給水口5には給水用流路8が接続されている。
【0043】
貯湯タンク3には、上下方向に所定ピッチで配列された4個の残湯量検出サーミスタ18a、18b、18c、18dから成る残湯量検出手段18と、給水温度検出手段(給水サーミスタ)19とが設けられている。また、上記循環路12には、熱交換路14の上流側に入水温度検出手段(入水サーミスタ)20が設けられると共に、熱交換路14の下流側に出湯温度検出手段(出湯サーミスタ)21が設けられている。この出湯サーミスタ21によって出湯温度を検出出湯温度T21として検出することができる。さらに、給湯用流路7には、給湯温度検出手段(給湯サーミスタ)22と給湯量測定手段(流量センサ)23とが設けられている。
【0044】
一方、ヒートポンプユニット(加熱源)HUは冷媒回路を備え、この冷媒回路は、圧縮機35と、熱交換路14を構成する水熱交換器26と、電動膨張弁(減圧機構)27と、空気熱交換器(蒸発器)28とを順に接続して構成される。すなわち、圧縮機25の吐出管29を水熱交換器26に接続し、水熱交換器26と電動膨張弁27とを冷媒通路30にて接続し、電動膨張弁27と蒸発器28とを冷媒通路31にて接続し、蒸発器28と圧縮機25とをアキュームレータ32が介設された冷媒通路33にて接続している。これにより、圧縮機25を駆動すると、水熱交換器26において熱交換路14を流れる水が加熱されることになる。また、蒸発器28にはこの蒸発器28の能力を調整するファン34が付設されている。さらに、圧縮機25の吐出管29に吐出温度検出手段(吐出サーミスタ)40が設けられ、この吐出サーミスタ40によって吐出管29の吐出温度を検出吐出温度T40として検出することができる。
【0045】
上記のように構成された給湯装置によれば、圧縮機25を駆動すると共に、沸き上げポンプ13を駆動(作動)させると、貯湯タンク3の底部に設けた取水口10から貯溜水(低温水)が流出し、これが循環路12の熱交換路14を流通する。そのときこの温湯は水熱交換器26によって加熱され(沸き上げられ)、湯入口11から貯湯タンク3の上部に返流される。このような動作を継続して行うことによって、貯湯タンク3に高温の温湯を貯湯することができる。この場合、現状の電力料金制度は夜間の電力料金単価が昼間に比べて安価に設定されているので、この運転は主として、低額である夜間時間帯(例えば、23時から翌7時までの時間帯)に行うものである。
【0046】
そして、ヒートポンプ式給湯装置の運転を制御する運転制御手段50が設けられ、運転制御手段50には出湯サーミスタ21により検出された検出出湯温度T21、吐出サーミスタ40により検出された検出吐出温度T40がそれぞれ入力される。さらに、運転制御手段50は、回転数指令C13を沸き上げポンプ13に出力することにより沸き上げポンプ13の動作を制御し、開度指令C27を電動膨張弁27出力することにより電動膨張弁27の動作を制御し、周波数指令C25を圧縮機25に出力することにより圧縮機25の動作を制御する。
【0047】
なお、運転制御手段50は実際には他の構成部(ファン34等)に指令を与え、他の検出手段(例えば、入水サーミスタ20、給湯サーミスタ22等)から検出値が入力されるが、説明の都合上、本発明に関連する運転制御手段50とタンクユニットTU及びヒートポンプユニットHU間の信号入出力関係のみ示している。
【0048】
(運転制御手段50A)
図3は実施の形態1における運転制御手段50Aの内部構成の詳細を示すブロック図である。なお、運転制御手段50Aは図2の運転制御手段50に相当する。また、図3では説明の都合上、実施の形態1のスケール付着判定処理に関連する部分のみ示している。
【0049】
同図に示すように、ヒートポンプユニット制御手段53は出湯温度検出手段である出湯サーミスタ21より検出出湯温度T21を取り込み、回転数指令C13を循環ポンプである沸き上げポンプ13に出力する(図3では図示せず)ともに、沸き上げポンプ回転数認識手段54に出力する。沸き上げポンプ回転数認識手段54は回転数指令C13に基づき認識された回転数情報D13をスケール付着判定手段57Aに出力する。
【0050】
スケール付着判定手段57Aは検出出湯温度T21及び回転数情報D13を常時読み出してスケール付着判定ルーチンを行い、スケール付着異常の有無を指示する判定結果情報D57Aをスケール付着異常時実行手段58に出力する。
【0051】
スケール付着異常時実行手段58は判定結果情報D57Aが「スケール付着異常あり」を指示する場合、圧縮機25の停止等を含むヒートポンプ式給湯装置の運転停止によるスケール付着異常処理を実行する。なお、ヒートポンプ式給湯装置の運転停止処理は、例えば、圧縮機25の停止後、所定期間経過後、沸き上げポンプ13及びファン34等を停止させることにより実施される。
【0052】
(スケール付着判定手段57A)
図4はスケール付着判定手段57Aによるスケール付着判定ルーチンの実行手順を示すフローチャートである。図5は検出出湯温度T21と及び回転数情報D13の指示する沸き上げポンプ13の回転数の経時変化を示すグラフである。以下、これらの図を参照して、スケール付着判定ルーチンの流れを説明する。
【0053】
まず、ステップS11において、ヒートポンプ式給湯装置として出湯温度を低下させることを意図した出湯温度低下意図運転を行っている否かをチェックする。具体的には、回転数情報D13が指示する沸き上げポンプ13の回転数が比較用ポンプ回転数RP(所定の回転数)以上になっておれば、上記出湯温度低下意図運転を行っている(YES)と判定し、所定の回転数RP未満であれば上記出湯温度低下意図運転を行っていない(NO)と判定する。
【0054】
所定の回転数RPは例えば沸き上げポンプ13の最大回転数に近い回転数に設定される。沸き上げポンプ13は循環路12内の湯水を循環水として循環させる働きを有しているため、上記循環水が循環路12循環路を流通する流量は沸き上げポンプ13の回転数に対し正の相関を有し、循環路12を構成する配管内にスケールが非付着の場合、所定の流量(L/min)以上の流量で循環水が流れていると推定される。
【0055】
したがって、ステップS11では、ヒートポンプユニット制御手段53は検出出湯温度T21が目標出湯温度DOより高い場合、出湯温度を低下させるべく沸き上げポンプ13の回転数を最大に近い回転数(≧RP)で動作させるための回転数指令C13を出力すると考えられるため、このような場合を上記出湯温度低下意図運転が実行されていると判定する。
【0056】
ステップS11でYESの場合、上記出湯温度低下意図運転が行われており、ステップS13以降のスケール付着異常判定処理を行う可能性があるためステップS12に移行する。一方、ステップS11でNOの場合、上記出湯温度低下意図運転が行われていないため、ステップS13以降のスケール付着異常判定処理を行う可能性は無く、ステップS11に戻る。以降、ステップS11でYESと判定されるまでステップS11を繰り返す。
【0057】
図5で示す例では、回転数情報D13の指示する回転数は時刻t10までは沸き上げポンプ13の回転数が比較用ポンプ回転数RP以上にならないため、ステップS11は常にNOとなり、時刻t10以降で初めてYESとなる。
【0058】
次に、ステップS12において、検出出湯温度T21が所定の異常基準温度X以上であるか(YES)否か(NO)をチェックする。
【0059】
ステップS12でYESの場合、ステップS13以降のスケール付着異常判定処理を行う必要があると判定しステップS13に移行する。一方、ステップS12でNOの場合、出湯温度がスケール付着異常を起こすレベルではないため、ステップS11に戻る。
【0060】
このように、ステップS11において上記出湯温度低下意図運転が行われていると確認され、かつステップS12において検出出湯温度T21が異常基準温度X以上であると認識されたとき、はじめてステップS13以降のスケール付着異常判定処理を行う。
【0061】
図5で示す例では、異常基準温度Xは95℃に設定されており、時刻t10以前の時刻t01以降で検出出湯温度T21は異常基準温度Xを上回っているため、時刻t10でステップS11がYES直後のステップS12の実行時に直ちにYESとなる。したがって、図5で示す例では、時刻t10がスケール付着異常判定処理の開示時刻となる。
【0062】
その結果、ステップS13において、スケール付着異常判定処理を開始する。図5で示す例では時刻t10からスケール付着異常判定処理を開始する。具体的にはスケール付着判定用のタイマーを起動し、ステップS14以降の処理を実行する。なお、上記タイマーはスケール付着判定手段57Aが内蔵しても、外部のものを用いても良い。
【0063】
その後、ステップS14において、検出出湯温度T21が一瞬でも下限温度Yよりも低下したか(YES)否か(NO)をチェックする。図5で示す例では時刻t10以降に一瞬でも検出出湯温度T21が下限温度Y以下に低下するとYESと判定される。
【0064】
ステップS14でYESと判定されると、出湯温度はスケール付着を引き起こすレベルでないと判断し、ステップS18でタイマーをクリアし、ステップS19でスケール付着異常判定処理を終了(「スケール付着異常なし」と判定)し、ステップS11に戻る。
【0065】
ステップS14でNOと判定されると、出湯温度は下限温度Y以下に低下しないというスケール付着異常判断用の条件(第2の条件)を満足するため、次のステップS15に移る。
【0066】
ステップS15において、沸き上げポンプ13の回転数が一瞬でも比較用ポンプ回転数RP以下に低下したか(YES)否か(NO)をチェックする。図5で示す例では時刻t10以降に一瞬でも回転数情報D13の指示する回転数が比較用ポンプ回転数RP以下に低下するとYESと判定される。
【0067】
ステップS15でYESと判定されると、上記出湯温度低下意図運転は終了していると判断し、ステップS18でタイマーをクリアし、ステップS19でスケール付着異常判定処理を終了し、ステップS11に戻る。
【0068】
ステップS15でNOと判定されると、沸き上げポンプ13の回転数が比較用ポンプ回転数RP以下に低下しないというスケール付着異常判断用の条件(第1の条件)を満足するため、次のステップS16に移る。
【0069】
ステップS16において、タイマーはスケール判定期間TSCをカウントしたか(YES)否か(NO)をチェックする。図5で示す例では時刻t10からスケール判定期間TSC経過後の時刻t20に達しておればYESとなり、そうでなければNOとなる。
【0070】
ステップS16でYESと判定されると、スケール判定期間TSCにおいて継続して上記出湯温度低下意図運転が行われ、出湯温度はスケール付着を引き起こすレベルを維持しているため、ステップS17にて「スケール付着異常あり」と判断し、「スケール付着異常あり」を指示する判定結果情報D57Aをスケール付着異常時実行手段58に出力する。
【0071】
一方、ステップS16でNOと判定されると、再び、ステップS14に戻り、ステップS14あるいはステップS15でYESとなるか、ステップS16でYESになるまで、ステップS14〜S16の処理が続行される。
【0072】
図5で示す例では、スケール判定期間TSCにおいて、回転数情報D13が指示する沸き上げポンプ13の回転数は継続して比較用ポンプ回転数RPを上回っている。
【0073】
したがって、出湯温度変化J11〜J14はスケール判定期間TSCにおいて継続して下限温度Yより低い温度とならなかったため、ステップS14,S15が常にNOであり、時刻t20にステップS16がYESとなる結果、ステップS17にて「スケール付着異常あり」と判断される。
【0074】
一方、出湯温度変化J15はスケール判定期間TSCにおいて時刻t10以降の時刻t11で下限温度Yに達し、以降は下限温度Yを下回るため、時刻t11においてステップS15がYESとなるとなる結果、ステップS19にて「スケール付着異常なし」と判断してスケール付着異常判定処理が終了される。
【0075】
このように、実施の形態1のヒートポンプ式給湯装置は、ステップS13以降に実施されるスケール付着異常判定処理時において、検出出湯温度T21が比較用ポンプ回転数RPより低下しない第1の条件と、出湯温度が下限温度Yよりも低い温度とならない第2の条件とを共に満足するとき、循環路12にスケール付着異常は発生していると判断している。なお、上記第1の条件は、出湯温度が所定の出湯温度(例えば、目標出湯温度DO)以上の際に沸き上げポンプ13の回転数を上昇させるように回転数指令を出力していると考えることもできる。
【0076】
その結果、貯湯タンク3を循環路12上に有し給湯機能を備えた構成において、出湯温度をモニタするだけでは検出不可能であったスケール付着異常を判断可能にすることにより、スケール付着異常判定精度の向上を図ることができる。
【0077】
そして、スケール付着異常時実行手段58が判定結果情報D57Aが「スケール付着異常あり」を判定したとき、タンクユニットTU及びヒートポンプユニットHUの運転を停止させる。したがって、運転停止後、循環路12の洗浄等のスケールの除去処理等を行い、スケール付着異常状態を解消することができる。
【0078】
さらに、実施の形態1のヒートポンプ式給湯装置は、沸き上げポンプ13の回転数が比較用ポンプ回転数RP以下に低下しないという第1の条件、スケール判定期間TSCにおいて出湯温度が所定の下限温度以下に低下しないという第2の条件とが、共にスケール判定期間TSC(所定の期間)において継続されることに着目することにより、スケール付着異常の判定精度のさらなる向上を図ることができる。
【0079】
<実施の形態2>
(運転制御手段50B)
図6は実施の形態2であるヒートポンプ式給湯装置における運転制御手段50Bの内部構成の詳細を示すブロック図である。なお、ヒートポンプ式給湯装置の全体構成は図2で示した構成と同様であり、図6の運転制御手段50Bは図2の運転制御手段50に相当する。また、図6では説明の都合上、実施の形態2のスケール付着異常判定処理に関連する部分のみ示している。
【0080】
同図に示すように、ヒートポンプユニット制御手段53は出湯温度検出手段である出湯サーミスタ21より検出出湯温度T21を取り込み、回転数指令C13を沸き上げポンプ13を沸き上げポンプ13に出力する(図6では図示せず)ともに、沸き上げポンプ回転数認識手段54に出力する。沸き上げポンプ回転数認識手段54は回転数指令C13に基づき認識される回転数情報D13をスケール付着判定手段57Bに出力する。
【0081】
さらに、ヒートポンプユニット制御手段53は周波数指令C25を圧縮機25に出力する(図6では図示せず)ともに、沸き上げポンプ回転数認識手段54に出力する。圧縮機周波数認識手段55は周波数指令C25に基づき認識される周波数情報D25をスケール付着判定手段57Bに出力する。
【0082】
スケール付着判定手段57Bは検出出湯温度T21、回転数情報D13及び周波数情報D25を常時読み出してスケール付着判定ルーチンを実行し、スケール付着異常の有無を指示する判定結果情報D57Bをスケール付着異常時実行手段58に出力する。
【0083】
スケール付着異常時実行手段58は判定結果情報D57Bが「スケール付着異常あり」を指示する場合、圧縮機25の停止等を含むヒートポンプ式給湯装置の運転停止によるスケール付着異常処理を実行する。
【0084】
(スケール付着判定手段57B)
図7はスケール付着判定手段57Bによるスケール付着判定ルーチンの実行手順を示すフローチャートである。図8は検出出湯温度T21、回転数情報D13の指示する沸き上げポンプ13の回転数及び周波数情報D25の指示する圧縮機25の周波数の経時変化を示すグラフである。以下、これらの図を参照して、スケール付着判定ルーチンの流れを説明する。
【0085】
まず、ステップS21において、ヒートポンプ式給湯装置として出湯温度を低下させることを意図した出湯温度低下意図運転を行っている否かをチェックする。具体的には、回転数情報D13が指示する沸き上げポンプ13の回転数が比較用ポンプ回転数RP以上でかつ、周波数情報D25が指示する圧縮機25の周波数が比較用周波数FSR以下になっておれば、上記出湯温度低下意図運転を行っている(YES)と判定し、そうでない場合は上記出湯温度低下意図運転を行っていない(NO)と判定する。
【0086】
比較用周波数FSRは例えば圧縮機25の最小周波数に近い周波数に設定される。圧縮機25の周波数は水熱交換器26を流れる冷媒の温度に対し正の相関を有している。
【0087】
したがって、ステップS21では、ヒートポンプユニット制御手段53は検出出湯温度T21が目標出湯温度DOより高い場合、出湯温度を低下させるべく沸き上げポンプ13の回転数を最大に近い回転数(≧RP)で動作させるための回転数指令C13を出力し、圧縮機25は比較用周波数FSR以下で動作させるための周波数指令C25を出力すると考えられる。このため、沸き上げポンプ13の回転数及び圧縮機25の周波数が上記条件を満足する場合を実施の形態2では上記出湯温度低下意図運転が実行されていると判定する。
【0088】
ステップS21でYESの場合、上記出湯温度低下意図運転が行われており、ステップS23以降のスケール付着異常判定処理を行う可能性があるためステップS22に移行する。一方、ステップS21でNOの場合、上記出湯温度低下意図運転が行われていないため、ステップS23以降のスケール付着異常判定処理を行う可能性は無く、ステップS21に戻る。以降、ステップS21でYESと判定されるまでステップS21を繰り返す。
【0089】
図8で示す例では、回転数情報D13の指示する回転数は時刻t10までは沸き上げポンプ13の回転数が比較用ポンプ回転数RP以上にならないため、ステップS21は常にNOとなり、時刻t10以降で初めてYESとなる。
【0090】
次に、ステップS22において、検出出湯温度T21が異常基準温度X以上であるか(YES)否か(NO)をチェックする。
【0091】
ステップS22でYESの場合、ステップS23以降のスケール付着異常判定処理を行う必要があると判定しステップS23に移行する。一方、ステップS22でNOの場合、出湯温度がスケール付着異常を起こすレベルではないため、ステップS21に戻る。
【0092】
このように、ステップS21において上記出湯温度低下意図運転が行われていると確認され、かつステップS22において検出出湯温度T21が異常基準温度X以上であると認識されたとき、はじめてステップS23以降のスケール付着異常判定処理を行う。
【0093】
図8で示す例では、異常基準温度Xは95℃に設定されており、時刻t10以前の時刻t03から周波数指令C25の指示する周波数は比較用周波数FSRを下回り、同様に、時刻t10以前の時刻t02から検出出湯温度T21は異常基準温度Xを上回っているため、時刻t10でステップS21はYESとなり、ステップS21直後のステップS22の実行時に直ちにYESとなる。したがって、図8で示す例では、時刻t10がスケール付着異常判定処理の開示時刻となる。
【0094】
その結果、ステップS23において、スケール付着異常判定処理を開始する。図8で示す例では時刻t10からスケール付着異常判定処理を開始する。具体的にはスケール付着判定用のタイマーを起動し、ステップS24以降の処理を実行する。なお、上記タイマーはスケール付着判定手段57Bが内蔵しても、外部のものを用いても良い。
【0095】
その後、ステップS24において、検出出湯温度T21が一瞬でも下限温度Yよりも低下したか(YES)否か(NO)をチェックする。図8で示す例では時刻t10以降に一瞬でも検出出湯温度T21が下限温度Y以下に低下するとYESと判定される。
【0096】
ステップS24でYESと判定されると、出湯温度はスケール付着を引き起こすレベルでないと判断し、ステップS29でタイマーをクリアし、ステップS30でスケール付着異常判定処理を終了(「スケール付着異常なし」と判定)し、ステップS21に戻る。
【0097】
ステップS24でNOと判定されると、出湯温度は下限温度Y以下に低下しないというスケール付着異常判断用の条件(第2の条件)を満足するため、次のステップS25に移る。
【0098】
ステップS25において、沸き上げポンプ13の回転数が一瞬でも比較用ポンプ回転数RP以下に低下したか(YES)否か(NO)をチェックする。図8で示す例では時刻t10以降に一瞬でも回転数情報D13の指示する回転数が比較用ポンプ回転数RP以下に低下するとYESと判定される。
【0099】
ステップS25でYESと判定されると、上記出湯温度低下意図運転は終了していると判断し、ステップS29でタイマーをクリアし、ステップS30でスケール付着異常判定処理を終了し、ステップS21に戻る。
【0100】
ステップS25でNOと判定されると、沸き上げポンプ13の回転数が比較用ポンプ回転数RP以下に低下しないというスケール付着異常判断用の条件(第1の条件)を満足するため、次のステップS26に移る。
【0101】
ステップS26において、圧縮機25の周波数が一瞬でも比較用周波数FSR以上に上昇したか(YES)否か(NO)をチェックする。図8で示す例では時刻t10以降に一瞬でも周波数情報D25の指示する周波数が比較用周波数FSR以上に上昇するとYESと判定される。
【0102】
ステップS26でYESと判定されると、上記出湯温度低下意図運転は終了していると判断し、ステップS29でタイマーをクリアし、ステップS30でスケール付着異常判定処理を終了し、ステップS21に戻る。
【0103】
ステップS26でNOと判定されると、圧縮機25の周波数が比較用周波数FSR以上に上昇しないというスケール付着異常判断用の条件(第3の条件)を満足するため、次のステップS27に移る。
【0104】
ステップS27において、タイマーはスケール判定期間TSCをカウントしたか(YES)否か(NO)をチェックする。図8で示す例では時刻t10からスケール判定期間TSC経過後の時刻t20に達しておればYESとなり、そうでなければNOとなる。
【0105】
ステップS27でYESと判定されると、スケール判定期間TSCにおいて継続して上記出湯温度低下意図運転(ステップS25,S26で共にNO)が行われ、出湯温度はスケール付着を引き起こすレベルを維持している(ステップS24でNO)ため、ステップS28にて「スケール付着異常あり」と判断し、「スケール付着異常あり」を指示する判定結果情報判定結果情報D57Bをスケール付着異常時実行手段58に出力する。
【0106】
一方、ステップS27でNOと判定されると、再び、ステップS24に戻り、ステップS24〜ステップS26のいずれかでYESとなるか、ステップS27でYESになるまで、ステップS24〜S27の処理が続行される。
【0107】
図8で示す例では、スケール判定期間TSCにおいて、回転数情報D13が指示する沸き上げポンプ13の回転数は継続して比較用ポンプ回転数RPを上回っている。さらに、スケール判定期間TSCにおいて、周波数情報D25の指示する圧縮機25の周波数は継続して比較用周波数FSRを下回っている。
【0108】
したがって、出湯温度変化J21〜J24はスケール判定期間TSCにおいて継続して下限温度Yより低い温度とならなかったため、ステップS24〜S25が常にNOであり、時刻t20にステップS27がYESとなる結果、ステップS28にて「スケール付着異常あり」と判断される。
【0109】
一方、出湯温度変化J25はスケール判定期間TSCにおいて時刻t10以降の時刻t12で下限温度Yに達し、以降下限温度Yを下回るため、時刻t12においてステップS25がYESとなるとなる結果、ステップS30にてスケール付着異常なしと判断してスケール付着異常判定処理が終了される。
【0110】
このように、実施の形態2のヒートポンプ式給湯装置は、ステップS23以降に実施されるスケール付着異常判定処理時において、沸き上げポンプ13の回転数に関する第1の条件、出湯温度に関する第2の条件とに加え、圧縮機25の周波数が比較用周波数FSR以上に上昇しない第3の条件が全てスケール判定期間TSCにおいて継続されることに着目している。
【0111】
このため、実施の形態2のヒートポンプ式給湯装置は、実施の形態1以上にスケール異常付着の判定精度より一層向上させることができる効果を奏する。
【0112】
<実施の形態3>
(運転制御手段50C)
図9は実施の形態3であるヒートポンプ式給湯装置における運転制御手段50Cの内部構成の詳細を示すブロック図である。なお、ヒートポンプ式給湯装置の全体構成は図2で示した構成と同様であり、図9の運転制御手段50Cは図2の運転制御手段50に相当する。また、図9では説明の都合上、実施の形態3のスケール付着異常判定処理に関連する部分のみ示している。
【0113】
同図に示すように、ヒートポンプユニット制御手段53は出湯温度検出手段である出湯サーミスタ21より検出出湯温度T21を取り込み、回転数指令C13を沸き上げポンプ13を沸き上げポンプ13に出力する(図9では図示せず)ともに、沸き上げポンプ回転数認識手段54に出力する。沸き上げポンプ回転数認識手段54は回転数指令C13に基づき認識される回転数情報D13をスケール付着判定手段57Cに出力する。
【0114】
さらに、ヒートポンプユニット制御手段53は開度指令C27を電動膨張弁27に出力する(図9では図示せず)ともに、電動弁開度認識手段56に出力する。電動弁開度認識手段56は開度指令C27に基づき認識される開度情報D27をスケール付着判定手段57Cに出力する。
【0115】
スケール付着判定手段57Cは検出出湯温度T21、回転数情報D13及び開度情報D27を常時読み出してスケール付着異常判定処理を行い、スケール付着異常の有無を指示する判定結果情報D57Cをスケール付着異常時実行手段58に出力する。
【0116】
また、スケール付着判定手段57Cは、開度情報D27に代えて、吐出サーミスタ40より検出される検出吐出温度T40を読み出すようにしても良い。この場合、スケール付着判定手段57Cは検出出湯温度T21、回転数情報D13及び検出吐出温度T40を常時読み出してスケール付着異常判定処理を行い、スケール付着異常の有無を指示する判定結果情報D57Cをスケール付着異常時実行手段58に出力する。
【0117】
スケール付着異常時実行手段58は判定結果情報D57Cが「スケール付着異常あり」を指示する場合、圧縮機25の停止等を含むヒートポンプ式給湯装置の運転停止によるスケール付着異常処理を実行する。
【0118】
(スケール付着判定手段57C)
図10はスケール付着判定手段57Cによるスケール付着判定ルーチンの実行手順を示すフローチャートである。以下、図10を参照して、スケール付着判定ルーチンの流れを説明する。
【0119】
まず、ステップS31において、ヒートポンプ式給湯装置として出湯温度を低下させることを意図した出湯温度低下意図運転を行っている否かをチェックする。具体的には、回転数情報D13が指示する沸き上げポンプ13の回転数が比較用ポンプ回転数RP以上でかつ、開度情報D27が指示する電動膨張弁27の電動弁開度が比較用電動弁開度EV(所定の開度)以上になっておれば、上記出湯温度低下意図運転を行っている(YES)と判定し、そうでない場合は上記出湯温度低下意図運転を行っていない(NO)と判定する。
【0120】
なお、ステップS31において、「開度情報D27が指示する電動膨張弁27の電動弁開度が比較用電動弁開度EV以上」の条件に代えて「検出吐出温度T40が目標出湯温度DO(所定の上限温度)以下」を用いても良い。この場合、回転数情報D13が指示する沸き上げポンプ13の回転数が比較用ポンプ回転数RP以上でかつ、検出吐出温度T40が目標出湯温度DO以上になっておれば、上記出湯温度低下意図運転を行っている)と判定する。
【0121】
比較用電動弁開度EVは例えば電動膨張弁27の最大開度に近い開度に設定される。電動膨張弁27の開度は水熱交換器26を流れる冷媒の温度に対し負の相関を有している。また、検出吐出温度T40は実質的に水熱交換器26を流れる冷媒の温度である。
【0122】
したがって、ステップS31では、ヒートポンプユニット制御手段53は検出出湯温度T21が目標出湯温度DOより高い場合、出湯温度を低下させるべく沸き上げポンプ13の回転数を最大に近い回転数(≧RP)で動作させるための回転数指令C13を出力し、かつ、電動膨張弁27は比較用電動弁開度EV以上で動作させるための周波数指令C25を出力する(検出吐出温度T40は目標出湯温度DO以下である)と考えられる。このため、沸き上げポンプ13の回転数及び電動膨張弁27の開度(検出吐出温度T40)が上記条件を満足する場合を実施の形態3では上記出湯温度低下意図運転が実行されていると判定する。
【0123】
ステップS31でYESの場合、上記出湯温度低下意図運転が行われており、ステップS33以降のスケール付着異常判定処理を行う可能性があるためステップS32に移行する。一方、ステップS31でNOの場合、上記出湯温度低下意図運転が行われていないため、ステップS33以降のスケール付着異常判定処理を行う可能性は無く、ステップS31に戻る。以降、ステップS31でYESと判定されるまでステップS31を繰り返す。
【0124】
次に、ステップS32において、検出出湯温度T21が異常基準温度X以上であるか(YES)否か(NO)をチェックする。
【0125】
ステップS32でYESの場合、ステップS33以降のスケール付着異常判定処理を行う必要があると判定しステップS33に移行する。一方、ステップS32でNOの場合、出湯温度がスケール付着異常を起こすレベルではないため、ステップS31に戻る。
【0126】
このように、ステップS31において上記出湯温度低下意図運転が行われていると確認され、かつステップS32において検出出湯温度T21が異常基準温度X以上であると認識されたとき、はじめてステップS33以降のスケール付着異常判定処理を行う。
【0127】
その結果、ステップS33において、スケール付着異常判定処理を開始する。具体的にスケール付着判定用のタイマーを起動し、ステップS34以降の処理を実行する。なお、上記タイマーはスケール付着判定手段57Cが内蔵しても、外部のものを用いても良い。
【0128】
その後、ステップS34において、検出出湯温度T21が一瞬でも下限温度Yよりも低下したか(YES)否か(NO)をチェックする。
【0129】
ステップS34でYESと判定されると、出湯温度はスケール付着を引き起こすレベルでないと判断し、ステップS39でタイマーをクリアし、ステップS40でスケール付着異常判定処理を終了し、ステップS31に戻る。
【0130】
ステップS34でNOと判定されると、出湯温度は下限温度Y以下に低下しないというスケール付着異常判断用の条件(第2の条件)を満足するため、次のステップS35に移る。
【0131】
ステップS35において、沸き上げポンプ13の回転数が一瞬でも比較用ポンプ回転数RP以下に低下したか(YES)否か(NO)をチェックする。
【0132】
ステップS35でYESと判定されると、上記出湯温度低下意図運転は終了していると判断し、ステップS39でタイマーをクリアし、ステップS40でスケール付着異常判定処理を終了し、ステップS31に戻る。
【0133】
ステップS35でNOと判定されると、沸き上げポンプ13の回転数が比較用ポンプ回転数RP以下に低下しないというスケール付着異常判断用の条件(第1の条件)を満足するため、次のステップS36に移る。
【0134】
ステップS36において、電動膨張弁27の開度が一瞬でも比較用電動弁開度EV以下に低下したか(YES)否か(NO)をチェックする。なお、ステップS36として、検出吐出温度T40が一瞬でも目標出湯温度DO以上に上昇したか(YES)否か(NO)をチェックするようにしても良い。
【0135】
ステップS36でYESと判定されると、上記出湯温度低下意図運転は終了していると判断し、ステップS39でタイマーをクリアし、ステップS40でスケール付着異常判定処理を終了し、ステップS31に戻る。
【0136】
ステップS36でNOと判定されると、電動膨張弁27の開度が比較用電動弁開度EV以下に低下しないというスケール付着異常判断用の条件(第4の条件)を満足するため、次のステップS37に移る。なお、第4の条件として、検出吐出温度T40が目標出湯温度DO以上に上昇しないという条件を用いても良い。
【0137】
ステップS37において、タイマーはスケール判定期間TSCをカウントしたか(YES)否か(NO)をチェックする。
【0138】
ステップS37でYESと判定されると、スケール判定期間TSCにおいて継続して上記出湯温度低下意図運転(ステップS35,S36で共にNO)が行われ、出湯温度はスケール付着を引き起こすレベルを維持している(ステップS34でNO)ため、ステップS38にて「スケール付着異常あり」と判断し、「スケール付着異常あり」を指示する判定結果情報判定結果情報D57Cをスケール付着異常時実行手段58に出力する。
【0139】
一方、ステップS37でNOと判定されると、再び、ステップS34に戻り、ステップS34〜ステップS36のいずれかでYESとなるか、ステップS37でYESになるまで、ステップS34〜S37の処理が続行される。
【0140】
このように、実施の形態3のヒートポンプ式給湯装置は、ステップS33以降に実施されるスケール付着異常判定処理時において、沸き上げポンプ13の回転数に関する第1の条件、出湯温度に関する第2の条件とに加え、電動膨張弁27の開度が比較用電動弁開度EV以下に低下しない第4の条件が全てスケール判定期間TSCにおいて継続されることに着目している。なお、第4の条件として、検出吐出温度T40が目標出湯温度DO以上に上昇しないという条件を用いても良い。
【0141】
このため、実施の形態3のヒートポンプ式給湯装置は、実施の形態1以上にスケール異常付着の判定精度より一層向上させることができる効果を奏する。
【0142】
<その他>
(第1の態様)
実施の形態2のスケール付着判定手段57Bの周波数情報D25に基づくとスケール付着異常判定処理と、実施の形態3のスケール付着判定手段57Cの開度情報D27(検出吐出温度T40)に基づくスケール付着異常判定処理とを組み合わせたスケール付着判定手段を有する第1の態様のヒートポンプ式給湯装置も可能である。
【0143】
図11はこの発明の第1の態様であるヒートポンプ式給湯装置におけるスケール付着判定手段57Xの構成を示すブロック図である。なお、ヒートポンプ式給湯装置の全体構成は図2で示した構成と同様であり、図11の運転制御手段50Xは図2の運転制御手段50に相当する。また、図11では説明の都合上、第1の態様のスケール付着異常判定処理に関連する部分のみ示している。
【0144】
同図に示すように、ヒートポンプユニット制御手段53は出湯温度検出手段である出湯サーミスタ21より検出出湯温度T21を取り込み、回転数指令C13を沸き上げポンプ13を沸き上げポンプ13に出力する(図11では図示せず)ともに、沸き上げポンプ回転数認識手段54に出力する。沸き上げポンプ回転数認識手段54は回転数指令C13に基づき認識される回転数情報D13をスケール付着判定手段57Xに出力する。
【0145】
さらに、ヒートポンプユニット制御手段53は周波数指令C25を圧縮機25に出力する(図11では図示せず)ともに、沸き上げポンプ回転数認識手段54に出力する。圧縮機周波数認識手段55は周波数指令C25に基づき認識される周波数情報D25をスケール付着判定手段57Bに出力する。
【0146】
さらに、ヒートポンプユニット制御手段53は開度指令C27を電動膨張弁27に出力する(図11では図示せず)ともに、電動弁開度認識手段56に出力する。電動弁開度認識手段56は開度指令C27に基づき認識される開度情報D27をスケール付着判定手段57Bに出力する。
【0147】
スケール付着判定手段57Xは検出出湯温度T21、回転数情報D13、周波数情報D25及び開度情報D27を常時読み出してスケール付着異常判定処理を行い、スケール付着異常の有無を指示する判定結果情報D57Xをスケール付着異常時実行手段58に出力する。
【0148】
また、スケール付着判定手段57Xは、開度情報D27に代えて、吐出サーミスタ40より検出される検出吐出温度T40を読み出すようにしても良い。この場合、スケール付着判定手段57Xは、検出出湯温度T21、回転数情報D13、周波数情報D25及び検出吐出温度T40を常時読み出してスケール付着異常判定処理を行い、スケール付着異常の有無を指示する判定結果情報D57Xをスケール付着異常時実行手段58に出力する。
【0149】
スケール付着判定手段57Xによるスケール付着異常判定処理は、沸き上げポンプ13の回転数、圧縮機25の周波数及び電動膨張弁27の開度(検出吐出温度T40)が全て、実施の形態2あるいは実施の形態3述べた条件を満足する場合に、上記出湯温度低下意図運転が実行されていると判定する。他の処理は実施の形態2あるいは実施の形態3と同様である。
【0150】
スケール付着異常時実行手段58は判定結果情報D57Xが「スケール付着異常あり」を指示する場合、圧縮機25の停止等を含むヒートポンプ式給湯装置の運転停止によるスケール付着異常処理を実行する。
【0151】
このような構成の第1の態様のヒートポンプ式給湯装置は、スケール付着異常判定処理時において、沸き上げポンプ13の回転数に関する第1の条件、出湯温度に関する第2の条件(実施の形態1〜実施の形態3で共通)、圧縮機25の周波数に関する第3の条件(実施の形態2のみ)、及び電動膨張弁27の開度あるいは吐出温度に関する第4の条件(実施の形態3のみ)全てに関し、スケール判定期間TSCにおいて継続されることに着目している。
【0152】
このため、第1の態様のヒートポンプ式給湯装置は、実施の形態1〜実施の形態3以上にスケール異常付着の判定精度より一層向上させることができる効果を奏する。
【0153】
(第2の態様)
また、第2の態様として、運転制御手段50による起動時、圧縮機25の周波数変更時において出湯温度が所定のハンチング設定温度(例えば、1℃)を超えないようにヒートポンプユニットHU及びタンクユニットTUを制御するヒートポンプ式給湯装置が考えられる。
【0154】
第2の態様のようにハンチング設定温度内でオーバーシュートを抑えることにより、90℃程度の目標出湯温度DOで出湯温度を制御する際、異常基準温度Xを超える可能性を十分低くすることができる。その結果、上述した実施の形態1〜実施の形態3それぞれのヒートポンプ式給湯装置において、スケール判定期間TSCを短くしても精度良くスケール付着異常判定処理を行うことができる効果を奏する。
【0155】
第2の態様のように、出湯温度が所定のハンチング設定温度を超えないように制御することにより、スケール付着判定手段57によるスケール判定期間TSCの長さを短くすることができるため、早期にスケール付着異常の判定を行うことができる効果を奏する。
【0156】
(他の適用)
上述した実施の形態では、ヒートポンプ式給湯装置として説明したが、貯湯タンクを有することなく循環路に循環水を循環させ、床暖房等の放熱器を循環路に接続してなるヒートポンプ式温水暖房装置としても適用可能である。
【0157】
すなわち、ヒートポンプユニットと、ヒートポンプユニットによって加熱された温湯を循環させる循環路と、この循環路に介設される放熱器とを備え、循環路を流れる循環水を沸き上げて循環させる運転が可能なヒートポンプ式温水装置に対しても適用可能である。
【0158】
さらに、循環することなく入力部及び出力部を有する所定の水路を流れる湯水をヒートポンプユニットによって加熱し、所定の水路の入力部から出力部にかけてを湯水が流れるようにポンプにより駆動して、所定の水路の出力部から温湯として得る構成にもこの発明を適用することができる。
【0159】
(その他)
上述した実施の形態では、異常基準温度Xと下限温度Yとを異なる温度に設定したが、同一の温度に設定する態様も勿論考えられる。但し、異常基準温度Xと下限温度Yとを同一に設定すると、スケール付着異常判定処理開始直後に出湯温度が微小に低下しても、「スケール付着異常なし」と判定してしまう可能性があるため、上述した実施の形態で述べたように、異常基準温度Xと下限温度Yとの間に1℃程度のディファレンシャルを設ける方が望ましい。
【符号の説明】
【0160】
3 貯湯タンク
12 循環路
13 沸き上げポンプ
21 出湯サーミスタ
25 圧縮機
26 水熱交換器
27 電動膨張弁
40 吐出サーミスタ
50,50A〜50C,50X 運転制御手段
【技術分野】
【0001】
この発明は、循環路におけるスケール異常判定機能を備えたヒートポンプ式温水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートポンプ式温水装置の一つであるヒートポンプ式給湯装置は出湯温度が予め設定された設定異常温度(例えば、98℃)以上に上昇した場合に出湯温度異常と判定する出湯温度異常判定方法を採用しており、設定異常温度以上まで出湯温度が上昇した場合のみに異常と判定し、判定後は装置の運転停止制御を行っていた。このような異常判定機能を備えたヒートポンプ式給湯装置として例えば特許文献1に開示されたヒートポンプ式給湯器がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−53190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、循環路となる配管経路におけるスケール付着を主な要因として圧力損失が増加してしまうことに起因して、沸き上げポンプの回転数を設定可能な最大回転数に設定して貯湯タンクからヒートポンプにて熱交換して貯湯タンクに戻る循環路において、水循環を可能最大流量、または最大流量に近い値で行うように制御しても、実際に循環路を流れる水の流量低下により、出湯温度が上昇してしまう現象が生じる傾向がある。この現象が生じると、出湯温度は上述した設定異常温度(98℃程度)までには至らないものの、循環路の配管許容最大温度(例えば、95℃)以上に達する可能性が高い。
【0005】
この場合、従来の出湯温度異常判定方法では、設定異常温度(98℃)までには至らないため、異常検出できず、出湯温度が配管許容最大温度(例えば、95℃)以上で装置の運転が継続されてしまうというという状態が発生してしまうという問題点があった。
【0006】
このように、従来の出湯温度異常判定方法では、スケール付着による異常を精度良く検出することができず、循環路となる配管の劣化が生じてしまうという問題点があった。
【0007】
加えて、上記した高温の水が流れる状態で装置の運転が継続されることにより、更なるスケール付着が発生し、配管の劣化を増長させてしまうという問題点があった。
【0008】
この発明は上記問題点を解決するためになされたもので、循環路におけるスケール付着異常判定精度の向上を図ったヒートポンプ式温水装置を得ることを目的とする。
【0009】
また、圧力損失が増大する要因として、スケール付着以外に、配管長が長い施工をされた場合や配管におけるバルブの設置、ゴミのつまりなどがある。すなわち、許容範囲以上の異常な設置をされた場合も、スケール付着と同等に、本発明によって異常な状態であることを検知することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る請求項1記載の発明は、所定の水路(12)を流れる湯水を加熱するヒートポンプ式温水装置であって、前記湯水が前記所定の水路を流れるように駆動する沸き上げポンプ(13)を備え、前記湯水が前記所定の水路を流通する流量は前記沸き上げポンプの回転数に対し正の相関を有し、前記湯水を加熱する熱交換処理を行うヒートポンプ部(H)をさらに備え、前記ヒートポンプ部は、前記熱交換処理を行う熱交換器(26)と加熱後の前記湯水の温度である出湯温度を検出する出湯温度検出手段(21)とを含み、前記ヒートポンプ式温水装置は、前記出湯温度が目標出湯温度に達するように、前記沸き上げポンプ及び前記ヒートポンプ部の動作を制御する制御手段(50)をさらに備え、前記制御手段は、前記沸き上げポンプへの回転数を指示する回転数指令を出力して前記沸き上げポンプを制御し、前記出湯温度を認識可能に前記出湯温度検出手段に接続され、出湯温度検出手段より検出された前記出湯温度が所定の出湯温度以上の際に前記沸き上げポンプの回転数を上昇させるように回転数指令を出力し、前記出湯温度が前記所定の出湯温度以上の際に前記沸き上げポンプの回転数を上昇させるように前記回転数指令を出力している第1の条件と、前記出湯温度が所定の下限温度よりも低い温度とならない第2の条件とを共に満足するとき、前記所定の水路にスケール付着異常が発生していると判定する。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1記載のヒートポンプ式温水装置であって、前記第1の条件は、所定の期間において、前記回転数指令が指示する回転数が継続して所定の回転数以下に低下しない条件を含み、前記第2の条件は、前記所定の期間において、前記出湯温度が継続して前記所定の下限温度以下に低下しない条件を含み、前記制御手段(50)は、前記所定の水路にスケール付着異常が発生していると判定した際、前記沸き上げポンプ及び前記ヒートポンプ部の動作を停止させるスケール付着異常処理を行う。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2記載のヒートポンプ式温水装置であって、前記ヒートポンプ部(H)は、熱源となる冷媒を吐出する圧縮機(25)をさらに含み、前記冷媒の温度は前記圧縮機の周波数に対し正の相関を有し、前記熱交換器(26)は前記冷媒を用いて前記熱交換処理を行い、前記出湯温度検出手段(21)は前記熱交換器の出力側における前記所定の水路(12)に設けられた出湯サーミスタを含み、前記制御手段(50)は、前記圧縮機の周波数を指示する周波数指令を前記圧縮機に出力して前記圧縮機の動作を制御し、前記第1及び第2の条件に加え、前記所定の期間において、前記周波数指令が指示する周波数が継続して所定の周波数以上に上昇しない第3の条件をさらに満足するとき、前記スケール付着異常が発生していると判定する。
【0013】
請求項4の発明は、請求項3記載のヒートポンプ式温水装置であって、前記ヒートポンプ部(H)は、吐出後の前記冷媒の温度を吐出温度として検出する冷媒温度検出手段(40)とを含み、前記吐出温度検出手段は前記圧縮機の出力側に設けられた吐出温度サーミスタを含み、前記制御手段(50)は、前記吐出温度を認識可能に前記吐出温度検出手段に接続され、前記第1〜第3の条件に加え、前記所定の期間において前記吐出温度が継続して所定の上限温度以上に上昇しない第4の条件をさらに満足するとき、前記スケール付着異常が発生していると判定する。
【0014】
請求項5の発明は、請求項3記載のヒートポンプ式温水装置であって、前記ヒートポンプ部(H)は、前記冷媒の通過する冷媒通路上に設けられる膨張弁(27)とを含み、前記冷媒の温度は前記膨張弁の開度に対し負の相関を有し、前記制御手段(50)は、前記膨張弁の開度を指示する開度指令を出力して前記膨張弁を制御し、前記第1〜第3の条件に加え、前記所定の期間において前記開度指令が指示する開度が継続して所定の開度以下に低下しない第4の条件をさらに満足するとき、前記スケール付着異常処理を行う。
【0015】
請求項6の発明は、請求項2記載のヒートポンプ式温水装置であって、前記ヒートポンプ部(H)は、熱源となる冷媒を吐出する圧縮機(25)と、吐出後の前記冷媒の温度を吐出温度として検出する冷媒温度検出手段(40)とを含み、前記熱交換器(26)は前記冷媒を用いて前記熱交換処理を行い、前記出湯温度検出手段(21)は前記熱交換器の出力側における前記所定の水路に設けられた出湯サーミスタを含み、前記吐出温度検出手段は前記圧縮機の出力側に設けられた吐出温度サーミスタを含み、前記制御手段(50)は、前記吐出温度を認識可能に前記吐出温度検出手段に接続され、前記第1及び第2の条件に加え、前記所定の期間において前記吐出温度が継続して所定の上限温度以上に上昇しない第4の条件をさらに満足するとき、前記スケール付着異常処理を行う。
【0016】
請求項7の発明は、請求項2記載のヒートポンプ式温水装置であって、前記ヒートポンプ部(H)は、熱源となる冷媒を吐出する圧縮機(25)と、前記冷媒の通過する冷媒通路上に設けられる膨張弁(27)とを含み、前記冷媒の温度は前記膨張弁の開度に対し負の相関を有し、前記熱交換器(26)は前記冷媒を用いて前記熱交換処理を行い、前記出湯温度検出手段(21)は前記熱交換器の出力側における前記所定の水路に設けられた出湯サーミスタを含み、前記制御手段(50)は、前記膨張弁の開度を指示する開度指令を出力して前記膨張弁を制御し、前記第1及び第2の条件に加え、前記所定の期間において前記開度指令が指示する開度が継続して所定の開度以下に低下しない第4の条件をさらに満足するとき、前記スケール付着異常処理を行う。
【0017】
請求項8の発明は、請求項1ないし請求項7うち、いずれか1項に記載のヒートポンプ式温水装置であって、前記制御手段(50)は、起動時において前記出湯温度が所定のハンチング設定温度を超えないように前記ヒートポンプ部及び前記沸き上げポンプを制御する。
【0018】
請求項9の発明は、請求項1ないし請求項8のうち、いずれか1項に記載のヒートポンプ式温水装置であって、前記所定の水路は循環路を含み、前記循環路(12)上に設けられる貯水タンク(3)をさらに備え、前記沸き上げポンプ(13)は前記貯水タンクの貯留水を流出させ、前記湯水を循環水として前記循環路内を循環させる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の本願発明におけるヒートポンプ式温水装置における制御手段は、出湯温度が所定の出湯温度以上の際に沸き上げポンプの回転数を上昇させるように回転数指令を出力している第1の条件と、出湯温度が所定の下限温度よりも低い温度とならない第2の条件とを共に満足するとき、所定の水路にスケール付着異常が発生していると判定している。
【0020】
その結果、請求項1記載の本願発明は、出湯温度をモニタするだけでは検出不可能であったスケール付着を判定可能にして、スケール付着異常判定精度の向上を図ることができる。
【0021】
請求項2記載のヒートポンプ式温水装置における制御手段は、所定の期間において沸き上げポンプの回転数が継続して所定の回転数以下に低下しないという第1の条件、上記所定の期間において出湯温度が継続して所定の下限温度以下に低下しないという第2の条件とが、共に所定の期間において継続されることに着目することにより、スケール付着異常の判定精度の向上を図ることができる。
【0022】
請求項3記載のヒートポンプ式温水装置の制御手段は、第1及び第2の条件に加え、圧縮機の周波数が継続して所定の周波数以上に上昇しない第3の条件をさらに加味することにより、より精度良くスケール付着異常の発生の有無を判定することができる。
【0023】
請求項4記載のヒートポンプ式温水装置の制御手段は、第1〜第3の条件に加え、吐出温度が継続して所定の上限温度以上に上昇しない第4の条件をさらに加味することにより、より一層、精度良くスケール付着異常の有無を判定することができる。
【0024】
請求項5記載のヒートポンプ式温水装置の制御手段は、第1〜第3の条件に加え、膨張弁の開度が継続して所定の開度以下に低下しない第4の条件をさらに加味することにより、より一層、精度良くスケール付着異常の発生の有無を判定することができる。
【0025】
請求項6記載のヒートポンプ式温水装置の制御手段は、第1及び第2の条件に加え、吐出温度が継続して所定の上限温度以上に上昇しない第4の条件をさらに加味することにより、より精度良くスケール付着異常の有無を判定することができる。
【0026】
請求項7記載のヒートポンプ式温水装置の制御手段は、第1及び第2の条件に加え、膨張弁の開度が継続して所定の開度以下に低下しない第4の条件をさらに加味することにより、より精度良くスケール付着異常の発生の有無を判定することができる。
【0027】
請求項8記載のヒートポンプ式温水装置は、制御手段が起動時において前記出湯温度が所定のハンチング設定温度を超えないように制御することにより、スケール付着判定に必要な所定の期間の長さを短くすることにより、早期にスケール付着異常の有無を判定することができる。
【0028】
請求項9記載のヒートポンプ式温水装置は、貯水タンクを循環路上に有し給湯機能を実現可能な構成においても、スケール付着異常判定精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の原理を示すためのヒートポンプ式給湯装置における出湯温度の経時変化を示すグラフである。
【図2】この発明の実施の形態1であるヒートポンプ式給湯装置の構成を示す回路構成図である。
【図3】実施の形態1における運転制御手段内部構成の詳細を示すブロック図である。
【図4】図3で示したスケール付着判定手段によるスケール付着判定ルーチンの実行手順を示すフローチャートである。
【図5】検出出湯温度と及び沸き上げポンプの回転数の経時変化を示すグラフである。
【図6】実施の形態2であるヒートポンプ式給湯装置における運転制御手段の内部構成の詳細を示すブロック図である。
【図7】図6で示したスケール付着判定手段によるスケール付着判定ルーチンの実行手順を示すフローチャートである。
【図8】検出出湯温度、沸き上げポンプの回転数及び圧縮機の周波数の経時変化を示すグラフである。
【図9】実施の形態3であるヒートポンプ式給湯装置における運転制御手段の内部構成の詳細を示すブロック図である。
【図10】図9で示したスケール付着判定手段によるスケール付着判定ルーチンの実行手順を示すフローチャートである。
【図11】ヒートポンプ式給湯装置の第1の態様におけるスケール付着判定手段5の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<発明の原理>
図1はこの発明の原理を示すためのヒートポンプ式給湯装置における出湯温度の経時変化を示すグラフである。同図に示すように、上述した従来の異常出湯温度判定手段では判定不可能であった98℃以下で変化する出湯温度T1の出湯温度変化J1〜J5についてもスケール付着異常の有無を可能にするのが本願発明である。
【0031】
本願発明では、瞬間的なスケール付着異常判定用の異常基準温度X(基準出湯温度)として95℃を設定し、継続的なスケール付着異常判定用の下限温度Yとして94℃を設定している。すなわち、異常基準温度X及び下限温度Yを共に従来の設定異常温度である98℃よりも少し低く設定している。
【0032】
異常基準温度Xは通常は目標出湯温度DO(例えば、90℃程度)より高い温度となるため、ヒートポンプ式給湯装置として出湯温度が目標出湯温度DOに達するように、出湯温度を下げる運転(出湯温度低下意図運転)をしていると考えられる。上記出湯温度低下意図運転として、例えば、沸き上げポンプの回転数を上昇させ、所定の回転数P以上に設定されている状況が推測される。
【0033】
本発明では、上記出湯温度低下意図運転が行われている際に、出湯温度T1が異常基準温度Xを超えるときを、スケール付着異常判定処理起動条件して、スケール付着異常判定処理を開始させる。なお、出湯温度T1が瞬間的に異常基準温度Xを超えただけで単純に「スケール付着異常である」と判定するのは検出精度が低下してしまうため行っていない。
【0034】
その理由の一つとしてハンチング現象がある。ヒートポンプ式給湯装置の起動時やヒートポンプユニットにおける圧縮機の周波数変更時において、90℃程度の目標出湯温度DOに達するべく制御を行う場合、早期に実現すべくオーバーシュートを伴うハンチング現象が生じ、95℃程度の異常基準温度Xを超えてしまう可能性が高い。すなわち、単純に出湯温度T1が異常基準温度Xを超えた時にスケール付着異常であると判定することは誤判定となる可能性が高いため、採用することはできない。
【0035】
図1において、仮に開始時刻TS1の時点で上記出湯温度低下意図運転がなされているとすると、出湯温度T1(出湯温度変化J1〜J5)が異常基準温度Xを超えた時刻がスケール付着異常判定処理の開始時刻TS1となる。なお、図1では、説明の都合上、少なくとも開始時刻TS1〜終了時刻TE1までの期間は上記出湯温度低下意図運転が継続していることを前提とする。
【0036】
そして、開始時刻TS1から終了時刻TE1までの異常判定期間PD1において、出湯温度T1が継続して下限温度Y以下に低下しなかた場合、「スケール付着異常あり」と判定し、一瞬でも下限温度Y以下に低下した場合、「スケール付着異常なし」と判定する。
【0037】
したがって、図1の例では、出湯温度変化J1〜J4は、一度も下限温度Y(94℃)以下に低下しなかったため「スケール付着異常あり」と判定され、出湯温度変化J5は、時刻tx1に下限温度Y(94℃)達し、時刻tx1以降は94℃を下回ったため、「スケール付着異常なし」と判定される。
【0038】
このように、本発明は、異常基準温度Xによるスケール付着異常判定処理起動条件で開始される下限温度Yによるスケール付着異常判定処理によって、従来の設定異常温度(98℃)より低い温度(異常基準温度X及び下限温度Y)と出湯温度T1との比較結果に基づき、従来ではスケール付着異常判定が不可能であった出湯温度T1の出湯温度変化J1〜J4においもて「スケール付着異常あり」と判定可能にしている。
【0039】
本発明により循環路を構成する配管におけるスケール付着異常判定を精度良く行うことにより、従来に比べ早期にスケール付着異常を判定することができる結果、配管を洗浄することによってスケールを除去できることが可能となる。すなわち、本発明では、洗浄によって配管内のスケールを除去することが可能な状況でスケール付着異常を判定することを可能にしている。
【0040】
<実施の形態1>
(装置構成)
図2はこの発明の実施の形態1であるヒートポンプ式給湯装置(温水装置)の構成を示す回路構成図である。
【0041】
同図に示すように、実施の形態1のヒートポンプ式給湯装置は、ヒートポンプユニットHUと、ヒートポンプユニットHUによって加熱された温湯を貯湯するタンクユニットTUとを有している。タンクユニットTUは、貯湯タンク3と、この貯湯タンク3に連結される循環路12(所定の水路)と、この循環路12に介設される熱交換路14とを備え、この熱交換路14をヒートポンプ加熱源にて加熱して、上記貯湯タンク3から循環路12に流出した低温水を沸き上げてこの貯湯タンク3に返流する運転が可能である。そして、この貯湯タンク3に貯湯された温湯が図示省略の浴槽等に供給される。
【0042】
この場合、貯湯タンク3には、その底壁に給水口5が設けられると共に、その上壁に給湯口6が設けられている。そして、給水口5から貯湯タンク3に水道水が供給され、給湯口6から給湯用流路7を介して高温湯が出湯される。また、貯湯タンク3には、その底壁に取水口10が開設されると共に、側壁(周壁)の上部に湯入口11が開設され、取水口10と湯入口11とが循環路12にて連結されている。そして、この循環路12に沸き上げポンプ(水循環用ポンプ)13と熱交換路14とが介設されている。なお、給水口5には給水用流路8が接続されている。
【0043】
貯湯タンク3には、上下方向に所定ピッチで配列された4個の残湯量検出サーミスタ18a、18b、18c、18dから成る残湯量検出手段18と、給水温度検出手段(給水サーミスタ)19とが設けられている。また、上記循環路12には、熱交換路14の上流側に入水温度検出手段(入水サーミスタ)20が設けられると共に、熱交換路14の下流側に出湯温度検出手段(出湯サーミスタ)21が設けられている。この出湯サーミスタ21によって出湯温度を検出出湯温度T21として検出することができる。さらに、給湯用流路7には、給湯温度検出手段(給湯サーミスタ)22と給湯量測定手段(流量センサ)23とが設けられている。
【0044】
一方、ヒートポンプユニット(加熱源)HUは冷媒回路を備え、この冷媒回路は、圧縮機35と、熱交換路14を構成する水熱交換器26と、電動膨張弁(減圧機構)27と、空気熱交換器(蒸発器)28とを順に接続して構成される。すなわち、圧縮機25の吐出管29を水熱交換器26に接続し、水熱交換器26と電動膨張弁27とを冷媒通路30にて接続し、電動膨張弁27と蒸発器28とを冷媒通路31にて接続し、蒸発器28と圧縮機25とをアキュームレータ32が介設された冷媒通路33にて接続している。これにより、圧縮機25を駆動すると、水熱交換器26において熱交換路14を流れる水が加熱されることになる。また、蒸発器28にはこの蒸発器28の能力を調整するファン34が付設されている。さらに、圧縮機25の吐出管29に吐出温度検出手段(吐出サーミスタ)40が設けられ、この吐出サーミスタ40によって吐出管29の吐出温度を検出吐出温度T40として検出することができる。
【0045】
上記のように構成された給湯装置によれば、圧縮機25を駆動すると共に、沸き上げポンプ13を駆動(作動)させると、貯湯タンク3の底部に設けた取水口10から貯溜水(低温水)が流出し、これが循環路12の熱交換路14を流通する。そのときこの温湯は水熱交換器26によって加熱され(沸き上げられ)、湯入口11から貯湯タンク3の上部に返流される。このような動作を継続して行うことによって、貯湯タンク3に高温の温湯を貯湯することができる。この場合、現状の電力料金制度は夜間の電力料金単価が昼間に比べて安価に設定されているので、この運転は主として、低額である夜間時間帯(例えば、23時から翌7時までの時間帯)に行うものである。
【0046】
そして、ヒートポンプ式給湯装置の運転を制御する運転制御手段50が設けられ、運転制御手段50には出湯サーミスタ21により検出された検出出湯温度T21、吐出サーミスタ40により検出された検出吐出温度T40がそれぞれ入力される。さらに、運転制御手段50は、回転数指令C13を沸き上げポンプ13に出力することにより沸き上げポンプ13の動作を制御し、開度指令C27を電動膨張弁27出力することにより電動膨張弁27の動作を制御し、周波数指令C25を圧縮機25に出力することにより圧縮機25の動作を制御する。
【0047】
なお、運転制御手段50は実際には他の構成部(ファン34等)に指令を与え、他の検出手段(例えば、入水サーミスタ20、給湯サーミスタ22等)から検出値が入力されるが、説明の都合上、本発明に関連する運転制御手段50とタンクユニットTU及びヒートポンプユニットHU間の信号入出力関係のみ示している。
【0048】
(運転制御手段50A)
図3は実施の形態1における運転制御手段50Aの内部構成の詳細を示すブロック図である。なお、運転制御手段50Aは図2の運転制御手段50に相当する。また、図3では説明の都合上、実施の形態1のスケール付着判定処理に関連する部分のみ示している。
【0049】
同図に示すように、ヒートポンプユニット制御手段53は出湯温度検出手段である出湯サーミスタ21より検出出湯温度T21を取り込み、回転数指令C13を循環ポンプである沸き上げポンプ13に出力する(図3では図示せず)ともに、沸き上げポンプ回転数認識手段54に出力する。沸き上げポンプ回転数認識手段54は回転数指令C13に基づき認識された回転数情報D13をスケール付着判定手段57Aに出力する。
【0050】
スケール付着判定手段57Aは検出出湯温度T21及び回転数情報D13を常時読み出してスケール付着判定ルーチンを行い、スケール付着異常の有無を指示する判定結果情報D57Aをスケール付着異常時実行手段58に出力する。
【0051】
スケール付着異常時実行手段58は判定結果情報D57Aが「スケール付着異常あり」を指示する場合、圧縮機25の停止等を含むヒートポンプ式給湯装置の運転停止によるスケール付着異常処理を実行する。なお、ヒートポンプ式給湯装置の運転停止処理は、例えば、圧縮機25の停止後、所定期間経過後、沸き上げポンプ13及びファン34等を停止させることにより実施される。
【0052】
(スケール付着判定手段57A)
図4はスケール付着判定手段57Aによるスケール付着判定ルーチンの実行手順を示すフローチャートである。図5は検出出湯温度T21と及び回転数情報D13の指示する沸き上げポンプ13の回転数の経時変化を示すグラフである。以下、これらの図を参照して、スケール付着判定ルーチンの流れを説明する。
【0053】
まず、ステップS11において、ヒートポンプ式給湯装置として出湯温度を低下させることを意図した出湯温度低下意図運転を行っている否かをチェックする。具体的には、回転数情報D13が指示する沸き上げポンプ13の回転数が比較用ポンプ回転数RP(所定の回転数)以上になっておれば、上記出湯温度低下意図運転を行っている(YES)と判定し、所定の回転数RP未満であれば上記出湯温度低下意図運転を行っていない(NO)と判定する。
【0054】
所定の回転数RPは例えば沸き上げポンプ13の最大回転数に近い回転数に設定される。沸き上げポンプ13は循環路12内の湯水を循環水として循環させる働きを有しているため、上記循環水が循環路12循環路を流通する流量は沸き上げポンプ13の回転数に対し正の相関を有し、循環路12を構成する配管内にスケールが非付着の場合、所定の流量(L/min)以上の流量で循環水が流れていると推定される。
【0055】
したがって、ステップS11では、ヒートポンプユニット制御手段53は検出出湯温度T21が目標出湯温度DOより高い場合、出湯温度を低下させるべく沸き上げポンプ13の回転数を最大に近い回転数(≧RP)で動作させるための回転数指令C13を出力すると考えられるため、このような場合を上記出湯温度低下意図運転が実行されていると判定する。
【0056】
ステップS11でYESの場合、上記出湯温度低下意図運転が行われており、ステップS13以降のスケール付着異常判定処理を行う可能性があるためステップS12に移行する。一方、ステップS11でNOの場合、上記出湯温度低下意図運転が行われていないため、ステップS13以降のスケール付着異常判定処理を行う可能性は無く、ステップS11に戻る。以降、ステップS11でYESと判定されるまでステップS11を繰り返す。
【0057】
図5で示す例では、回転数情報D13の指示する回転数は時刻t10までは沸き上げポンプ13の回転数が比較用ポンプ回転数RP以上にならないため、ステップS11は常にNOとなり、時刻t10以降で初めてYESとなる。
【0058】
次に、ステップS12において、検出出湯温度T21が所定の異常基準温度X以上であるか(YES)否か(NO)をチェックする。
【0059】
ステップS12でYESの場合、ステップS13以降のスケール付着異常判定処理を行う必要があると判定しステップS13に移行する。一方、ステップS12でNOの場合、出湯温度がスケール付着異常を起こすレベルではないため、ステップS11に戻る。
【0060】
このように、ステップS11において上記出湯温度低下意図運転が行われていると確認され、かつステップS12において検出出湯温度T21が異常基準温度X以上であると認識されたとき、はじめてステップS13以降のスケール付着異常判定処理を行う。
【0061】
図5で示す例では、異常基準温度Xは95℃に設定されており、時刻t10以前の時刻t01以降で検出出湯温度T21は異常基準温度Xを上回っているため、時刻t10でステップS11がYES直後のステップS12の実行時に直ちにYESとなる。したがって、図5で示す例では、時刻t10がスケール付着異常判定処理の開示時刻となる。
【0062】
その結果、ステップS13において、スケール付着異常判定処理を開始する。図5で示す例では時刻t10からスケール付着異常判定処理を開始する。具体的にはスケール付着判定用のタイマーを起動し、ステップS14以降の処理を実行する。なお、上記タイマーはスケール付着判定手段57Aが内蔵しても、外部のものを用いても良い。
【0063】
その後、ステップS14において、検出出湯温度T21が一瞬でも下限温度Yよりも低下したか(YES)否か(NO)をチェックする。図5で示す例では時刻t10以降に一瞬でも検出出湯温度T21が下限温度Y以下に低下するとYESと判定される。
【0064】
ステップS14でYESと判定されると、出湯温度はスケール付着を引き起こすレベルでないと判断し、ステップS18でタイマーをクリアし、ステップS19でスケール付着異常判定処理を終了(「スケール付着異常なし」と判定)し、ステップS11に戻る。
【0065】
ステップS14でNOと判定されると、出湯温度は下限温度Y以下に低下しないというスケール付着異常判断用の条件(第2の条件)を満足するため、次のステップS15に移る。
【0066】
ステップS15において、沸き上げポンプ13の回転数が一瞬でも比較用ポンプ回転数RP以下に低下したか(YES)否か(NO)をチェックする。図5で示す例では時刻t10以降に一瞬でも回転数情報D13の指示する回転数が比較用ポンプ回転数RP以下に低下するとYESと判定される。
【0067】
ステップS15でYESと判定されると、上記出湯温度低下意図運転は終了していると判断し、ステップS18でタイマーをクリアし、ステップS19でスケール付着異常判定処理を終了し、ステップS11に戻る。
【0068】
ステップS15でNOと判定されると、沸き上げポンプ13の回転数が比較用ポンプ回転数RP以下に低下しないというスケール付着異常判断用の条件(第1の条件)を満足するため、次のステップS16に移る。
【0069】
ステップS16において、タイマーはスケール判定期間TSCをカウントしたか(YES)否か(NO)をチェックする。図5で示す例では時刻t10からスケール判定期間TSC経過後の時刻t20に達しておればYESとなり、そうでなければNOとなる。
【0070】
ステップS16でYESと判定されると、スケール判定期間TSCにおいて継続して上記出湯温度低下意図運転が行われ、出湯温度はスケール付着を引き起こすレベルを維持しているため、ステップS17にて「スケール付着異常あり」と判断し、「スケール付着異常あり」を指示する判定結果情報D57Aをスケール付着異常時実行手段58に出力する。
【0071】
一方、ステップS16でNOと判定されると、再び、ステップS14に戻り、ステップS14あるいはステップS15でYESとなるか、ステップS16でYESになるまで、ステップS14〜S16の処理が続行される。
【0072】
図5で示す例では、スケール判定期間TSCにおいて、回転数情報D13が指示する沸き上げポンプ13の回転数は継続して比較用ポンプ回転数RPを上回っている。
【0073】
したがって、出湯温度変化J11〜J14はスケール判定期間TSCにおいて継続して下限温度Yより低い温度とならなかったため、ステップS14,S15が常にNOであり、時刻t20にステップS16がYESとなる結果、ステップS17にて「スケール付着異常あり」と判断される。
【0074】
一方、出湯温度変化J15はスケール判定期間TSCにおいて時刻t10以降の時刻t11で下限温度Yに達し、以降は下限温度Yを下回るため、時刻t11においてステップS15がYESとなるとなる結果、ステップS19にて「スケール付着異常なし」と判断してスケール付着異常判定処理が終了される。
【0075】
このように、実施の形態1のヒートポンプ式給湯装置は、ステップS13以降に実施されるスケール付着異常判定処理時において、検出出湯温度T21が比較用ポンプ回転数RPより低下しない第1の条件と、出湯温度が下限温度Yよりも低い温度とならない第2の条件とを共に満足するとき、循環路12にスケール付着異常は発生していると判断している。なお、上記第1の条件は、出湯温度が所定の出湯温度(例えば、目標出湯温度DO)以上の際に沸き上げポンプ13の回転数を上昇させるように回転数指令を出力していると考えることもできる。
【0076】
その結果、貯湯タンク3を循環路12上に有し給湯機能を備えた構成において、出湯温度をモニタするだけでは検出不可能であったスケール付着異常を判断可能にすることにより、スケール付着異常判定精度の向上を図ることができる。
【0077】
そして、スケール付着異常時実行手段58が判定結果情報D57Aが「スケール付着異常あり」を判定したとき、タンクユニットTU及びヒートポンプユニットHUの運転を停止させる。したがって、運転停止後、循環路12の洗浄等のスケールの除去処理等を行い、スケール付着異常状態を解消することができる。
【0078】
さらに、実施の形態1のヒートポンプ式給湯装置は、沸き上げポンプ13の回転数が比較用ポンプ回転数RP以下に低下しないという第1の条件、スケール判定期間TSCにおいて出湯温度が所定の下限温度以下に低下しないという第2の条件とが、共にスケール判定期間TSC(所定の期間)において継続されることに着目することにより、スケール付着異常の判定精度のさらなる向上を図ることができる。
【0079】
<実施の形態2>
(運転制御手段50B)
図6は実施の形態2であるヒートポンプ式給湯装置における運転制御手段50Bの内部構成の詳細を示すブロック図である。なお、ヒートポンプ式給湯装置の全体構成は図2で示した構成と同様であり、図6の運転制御手段50Bは図2の運転制御手段50に相当する。また、図6では説明の都合上、実施の形態2のスケール付着異常判定処理に関連する部分のみ示している。
【0080】
同図に示すように、ヒートポンプユニット制御手段53は出湯温度検出手段である出湯サーミスタ21より検出出湯温度T21を取り込み、回転数指令C13を沸き上げポンプ13を沸き上げポンプ13に出力する(図6では図示せず)ともに、沸き上げポンプ回転数認識手段54に出力する。沸き上げポンプ回転数認識手段54は回転数指令C13に基づき認識される回転数情報D13をスケール付着判定手段57Bに出力する。
【0081】
さらに、ヒートポンプユニット制御手段53は周波数指令C25を圧縮機25に出力する(図6では図示せず)ともに、沸き上げポンプ回転数認識手段54に出力する。圧縮機周波数認識手段55は周波数指令C25に基づき認識される周波数情報D25をスケール付着判定手段57Bに出力する。
【0082】
スケール付着判定手段57Bは検出出湯温度T21、回転数情報D13及び周波数情報D25を常時読み出してスケール付着判定ルーチンを実行し、スケール付着異常の有無を指示する判定結果情報D57Bをスケール付着異常時実行手段58に出力する。
【0083】
スケール付着異常時実行手段58は判定結果情報D57Bが「スケール付着異常あり」を指示する場合、圧縮機25の停止等を含むヒートポンプ式給湯装置の運転停止によるスケール付着異常処理を実行する。
【0084】
(スケール付着判定手段57B)
図7はスケール付着判定手段57Bによるスケール付着判定ルーチンの実行手順を示すフローチャートである。図8は検出出湯温度T21、回転数情報D13の指示する沸き上げポンプ13の回転数及び周波数情報D25の指示する圧縮機25の周波数の経時変化を示すグラフである。以下、これらの図を参照して、スケール付着判定ルーチンの流れを説明する。
【0085】
まず、ステップS21において、ヒートポンプ式給湯装置として出湯温度を低下させることを意図した出湯温度低下意図運転を行っている否かをチェックする。具体的には、回転数情報D13が指示する沸き上げポンプ13の回転数が比較用ポンプ回転数RP以上でかつ、周波数情報D25が指示する圧縮機25の周波数が比較用周波数FSR以下になっておれば、上記出湯温度低下意図運転を行っている(YES)と判定し、そうでない場合は上記出湯温度低下意図運転を行っていない(NO)と判定する。
【0086】
比較用周波数FSRは例えば圧縮機25の最小周波数に近い周波数に設定される。圧縮機25の周波数は水熱交換器26を流れる冷媒の温度に対し正の相関を有している。
【0087】
したがって、ステップS21では、ヒートポンプユニット制御手段53は検出出湯温度T21が目標出湯温度DOより高い場合、出湯温度を低下させるべく沸き上げポンプ13の回転数を最大に近い回転数(≧RP)で動作させるための回転数指令C13を出力し、圧縮機25は比較用周波数FSR以下で動作させるための周波数指令C25を出力すると考えられる。このため、沸き上げポンプ13の回転数及び圧縮機25の周波数が上記条件を満足する場合を実施の形態2では上記出湯温度低下意図運転が実行されていると判定する。
【0088】
ステップS21でYESの場合、上記出湯温度低下意図運転が行われており、ステップS23以降のスケール付着異常判定処理を行う可能性があるためステップS22に移行する。一方、ステップS21でNOの場合、上記出湯温度低下意図運転が行われていないため、ステップS23以降のスケール付着異常判定処理を行う可能性は無く、ステップS21に戻る。以降、ステップS21でYESと判定されるまでステップS21を繰り返す。
【0089】
図8で示す例では、回転数情報D13の指示する回転数は時刻t10までは沸き上げポンプ13の回転数が比較用ポンプ回転数RP以上にならないため、ステップS21は常にNOとなり、時刻t10以降で初めてYESとなる。
【0090】
次に、ステップS22において、検出出湯温度T21が異常基準温度X以上であるか(YES)否か(NO)をチェックする。
【0091】
ステップS22でYESの場合、ステップS23以降のスケール付着異常判定処理を行う必要があると判定しステップS23に移行する。一方、ステップS22でNOの場合、出湯温度がスケール付着異常を起こすレベルではないため、ステップS21に戻る。
【0092】
このように、ステップS21において上記出湯温度低下意図運転が行われていると確認され、かつステップS22において検出出湯温度T21が異常基準温度X以上であると認識されたとき、はじめてステップS23以降のスケール付着異常判定処理を行う。
【0093】
図8で示す例では、異常基準温度Xは95℃に設定されており、時刻t10以前の時刻t03から周波数指令C25の指示する周波数は比較用周波数FSRを下回り、同様に、時刻t10以前の時刻t02から検出出湯温度T21は異常基準温度Xを上回っているため、時刻t10でステップS21はYESとなり、ステップS21直後のステップS22の実行時に直ちにYESとなる。したがって、図8で示す例では、時刻t10がスケール付着異常判定処理の開示時刻となる。
【0094】
その結果、ステップS23において、スケール付着異常判定処理を開始する。図8で示す例では時刻t10からスケール付着異常判定処理を開始する。具体的にはスケール付着判定用のタイマーを起動し、ステップS24以降の処理を実行する。なお、上記タイマーはスケール付着判定手段57Bが内蔵しても、外部のものを用いても良い。
【0095】
その後、ステップS24において、検出出湯温度T21が一瞬でも下限温度Yよりも低下したか(YES)否か(NO)をチェックする。図8で示す例では時刻t10以降に一瞬でも検出出湯温度T21が下限温度Y以下に低下するとYESと判定される。
【0096】
ステップS24でYESと判定されると、出湯温度はスケール付着を引き起こすレベルでないと判断し、ステップS29でタイマーをクリアし、ステップS30でスケール付着異常判定処理を終了(「スケール付着異常なし」と判定)し、ステップS21に戻る。
【0097】
ステップS24でNOと判定されると、出湯温度は下限温度Y以下に低下しないというスケール付着異常判断用の条件(第2の条件)を満足するため、次のステップS25に移る。
【0098】
ステップS25において、沸き上げポンプ13の回転数が一瞬でも比較用ポンプ回転数RP以下に低下したか(YES)否か(NO)をチェックする。図8で示す例では時刻t10以降に一瞬でも回転数情報D13の指示する回転数が比較用ポンプ回転数RP以下に低下するとYESと判定される。
【0099】
ステップS25でYESと判定されると、上記出湯温度低下意図運転は終了していると判断し、ステップS29でタイマーをクリアし、ステップS30でスケール付着異常判定処理を終了し、ステップS21に戻る。
【0100】
ステップS25でNOと判定されると、沸き上げポンプ13の回転数が比較用ポンプ回転数RP以下に低下しないというスケール付着異常判断用の条件(第1の条件)を満足するため、次のステップS26に移る。
【0101】
ステップS26において、圧縮機25の周波数が一瞬でも比較用周波数FSR以上に上昇したか(YES)否か(NO)をチェックする。図8で示す例では時刻t10以降に一瞬でも周波数情報D25の指示する周波数が比較用周波数FSR以上に上昇するとYESと判定される。
【0102】
ステップS26でYESと判定されると、上記出湯温度低下意図運転は終了していると判断し、ステップS29でタイマーをクリアし、ステップS30でスケール付着異常判定処理を終了し、ステップS21に戻る。
【0103】
ステップS26でNOと判定されると、圧縮機25の周波数が比較用周波数FSR以上に上昇しないというスケール付着異常判断用の条件(第3の条件)を満足するため、次のステップS27に移る。
【0104】
ステップS27において、タイマーはスケール判定期間TSCをカウントしたか(YES)否か(NO)をチェックする。図8で示す例では時刻t10からスケール判定期間TSC経過後の時刻t20に達しておればYESとなり、そうでなければNOとなる。
【0105】
ステップS27でYESと判定されると、スケール判定期間TSCにおいて継続して上記出湯温度低下意図運転(ステップS25,S26で共にNO)が行われ、出湯温度はスケール付着を引き起こすレベルを維持している(ステップS24でNO)ため、ステップS28にて「スケール付着異常あり」と判断し、「スケール付着異常あり」を指示する判定結果情報判定結果情報D57Bをスケール付着異常時実行手段58に出力する。
【0106】
一方、ステップS27でNOと判定されると、再び、ステップS24に戻り、ステップS24〜ステップS26のいずれかでYESとなるか、ステップS27でYESになるまで、ステップS24〜S27の処理が続行される。
【0107】
図8で示す例では、スケール判定期間TSCにおいて、回転数情報D13が指示する沸き上げポンプ13の回転数は継続して比較用ポンプ回転数RPを上回っている。さらに、スケール判定期間TSCにおいて、周波数情報D25の指示する圧縮機25の周波数は継続して比較用周波数FSRを下回っている。
【0108】
したがって、出湯温度変化J21〜J24はスケール判定期間TSCにおいて継続して下限温度Yより低い温度とならなかったため、ステップS24〜S25が常にNOであり、時刻t20にステップS27がYESとなる結果、ステップS28にて「スケール付着異常あり」と判断される。
【0109】
一方、出湯温度変化J25はスケール判定期間TSCにおいて時刻t10以降の時刻t12で下限温度Yに達し、以降下限温度Yを下回るため、時刻t12においてステップS25がYESとなるとなる結果、ステップS30にてスケール付着異常なしと判断してスケール付着異常判定処理が終了される。
【0110】
このように、実施の形態2のヒートポンプ式給湯装置は、ステップS23以降に実施されるスケール付着異常判定処理時において、沸き上げポンプ13の回転数に関する第1の条件、出湯温度に関する第2の条件とに加え、圧縮機25の周波数が比較用周波数FSR以上に上昇しない第3の条件が全てスケール判定期間TSCにおいて継続されることに着目している。
【0111】
このため、実施の形態2のヒートポンプ式給湯装置は、実施の形態1以上にスケール異常付着の判定精度より一層向上させることができる効果を奏する。
【0112】
<実施の形態3>
(運転制御手段50C)
図9は実施の形態3であるヒートポンプ式給湯装置における運転制御手段50Cの内部構成の詳細を示すブロック図である。なお、ヒートポンプ式給湯装置の全体構成は図2で示した構成と同様であり、図9の運転制御手段50Cは図2の運転制御手段50に相当する。また、図9では説明の都合上、実施の形態3のスケール付着異常判定処理に関連する部分のみ示している。
【0113】
同図に示すように、ヒートポンプユニット制御手段53は出湯温度検出手段である出湯サーミスタ21より検出出湯温度T21を取り込み、回転数指令C13を沸き上げポンプ13を沸き上げポンプ13に出力する(図9では図示せず)ともに、沸き上げポンプ回転数認識手段54に出力する。沸き上げポンプ回転数認識手段54は回転数指令C13に基づき認識される回転数情報D13をスケール付着判定手段57Cに出力する。
【0114】
さらに、ヒートポンプユニット制御手段53は開度指令C27を電動膨張弁27に出力する(図9では図示せず)ともに、電動弁開度認識手段56に出力する。電動弁開度認識手段56は開度指令C27に基づき認識される開度情報D27をスケール付着判定手段57Cに出力する。
【0115】
スケール付着判定手段57Cは検出出湯温度T21、回転数情報D13及び開度情報D27を常時読み出してスケール付着異常判定処理を行い、スケール付着異常の有無を指示する判定結果情報D57Cをスケール付着異常時実行手段58に出力する。
【0116】
また、スケール付着判定手段57Cは、開度情報D27に代えて、吐出サーミスタ40より検出される検出吐出温度T40を読み出すようにしても良い。この場合、スケール付着判定手段57Cは検出出湯温度T21、回転数情報D13及び検出吐出温度T40を常時読み出してスケール付着異常判定処理を行い、スケール付着異常の有無を指示する判定結果情報D57Cをスケール付着異常時実行手段58に出力する。
【0117】
スケール付着異常時実行手段58は判定結果情報D57Cが「スケール付着異常あり」を指示する場合、圧縮機25の停止等を含むヒートポンプ式給湯装置の運転停止によるスケール付着異常処理を実行する。
【0118】
(スケール付着判定手段57C)
図10はスケール付着判定手段57Cによるスケール付着判定ルーチンの実行手順を示すフローチャートである。以下、図10を参照して、スケール付着判定ルーチンの流れを説明する。
【0119】
まず、ステップS31において、ヒートポンプ式給湯装置として出湯温度を低下させることを意図した出湯温度低下意図運転を行っている否かをチェックする。具体的には、回転数情報D13が指示する沸き上げポンプ13の回転数が比較用ポンプ回転数RP以上でかつ、開度情報D27が指示する電動膨張弁27の電動弁開度が比較用電動弁開度EV(所定の開度)以上になっておれば、上記出湯温度低下意図運転を行っている(YES)と判定し、そうでない場合は上記出湯温度低下意図運転を行っていない(NO)と判定する。
【0120】
なお、ステップS31において、「開度情報D27が指示する電動膨張弁27の電動弁開度が比較用電動弁開度EV以上」の条件に代えて「検出吐出温度T40が目標出湯温度DO(所定の上限温度)以下」を用いても良い。この場合、回転数情報D13が指示する沸き上げポンプ13の回転数が比較用ポンプ回転数RP以上でかつ、検出吐出温度T40が目標出湯温度DO以上になっておれば、上記出湯温度低下意図運転を行っている)と判定する。
【0121】
比較用電動弁開度EVは例えば電動膨張弁27の最大開度に近い開度に設定される。電動膨張弁27の開度は水熱交換器26を流れる冷媒の温度に対し負の相関を有している。また、検出吐出温度T40は実質的に水熱交換器26を流れる冷媒の温度である。
【0122】
したがって、ステップS31では、ヒートポンプユニット制御手段53は検出出湯温度T21が目標出湯温度DOより高い場合、出湯温度を低下させるべく沸き上げポンプ13の回転数を最大に近い回転数(≧RP)で動作させるための回転数指令C13を出力し、かつ、電動膨張弁27は比較用電動弁開度EV以上で動作させるための周波数指令C25を出力する(検出吐出温度T40は目標出湯温度DO以下である)と考えられる。このため、沸き上げポンプ13の回転数及び電動膨張弁27の開度(検出吐出温度T40)が上記条件を満足する場合を実施の形態3では上記出湯温度低下意図運転が実行されていると判定する。
【0123】
ステップS31でYESの場合、上記出湯温度低下意図運転が行われており、ステップS33以降のスケール付着異常判定処理を行う可能性があるためステップS32に移行する。一方、ステップS31でNOの場合、上記出湯温度低下意図運転が行われていないため、ステップS33以降のスケール付着異常判定処理を行う可能性は無く、ステップS31に戻る。以降、ステップS31でYESと判定されるまでステップS31を繰り返す。
【0124】
次に、ステップS32において、検出出湯温度T21が異常基準温度X以上であるか(YES)否か(NO)をチェックする。
【0125】
ステップS32でYESの場合、ステップS33以降のスケール付着異常判定処理を行う必要があると判定しステップS33に移行する。一方、ステップS32でNOの場合、出湯温度がスケール付着異常を起こすレベルではないため、ステップS31に戻る。
【0126】
このように、ステップS31において上記出湯温度低下意図運転が行われていると確認され、かつステップS32において検出出湯温度T21が異常基準温度X以上であると認識されたとき、はじめてステップS33以降のスケール付着異常判定処理を行う。
【0127】
その結果、ステップS33において、スケール付着異常判定処理を開始する。具体的にスケール付着判定用のタイマーを起動し、ステップS34以降の処理を実行する。なお、上記タイマーはスケール付着判定手段57Cが内蔵しても、外部のものを用いても良い。
【0128】
その後、ステップS34において、検出出湯温度T21が一瞬でも下限温度Yよりも低下したか(YES)否か(NO)をチェックする。
【0129】
ステップS34でYESと判定されると、出湯温度はスケール付着を引き起こすレベルでないと判断し、ステップS39でタイマーをクリアし、ステップS40でスケール付着異常判定処理を終了し、ステップS31に戻る。
【0130】
ステップS34でNOと判定されると、出湯温度は下限温度Y以下に低下しないというスケール付着異常判断用の条件(第2の条件)を満足するため、次のステップS35に移る。
【0131】
ステップS35において、沸き上げポンプ13の回転数が一瞬でも比較用ポンプ回転数RP以下に低下したか(YES)否か(NO)をチェックする。
【0132】
ステップS35でYESと判定されると、上記出湯温度低下意図運転は終了していると判断し、ステップS39でタイマーをクリアし、ステップS40でスケール付着異常判定処理を終了し、ステップS31に戻る。
【0133】
ステップS35でNOと判定されると、沸き上げポンプ13の回転数が比較用ポンプ回転数RP以下に低下しないというスケール付着異常判断用の条件(第1の条件)を満足するため、次のステップS36に移る。
【0134】
ステップS36において、電動膨張弁27の開度が一瞬でも比較用電動弁開度EV以下に低下したか(YES)否か(NO)をチェックする。なお、ステップS36として、検出吐出温度T40が一瞬でも目標出湯温度DO以上に上昇したか(YES)否か(NO)をチェックするようにしても良い。
【0135】
ステップS36でYESと判定されると、上記出湯温度低下意図運転は終了していると判断し、ステップS39でタイマーをクリアし、ステップS40でスケール付着異常判定処理を終了し、ステップS31に戻る。
【0136】
ステップS36でNOと判定されると、電動膨張弁27の開度が比較用電動弁開度EV以下に低下しないというスケール付着異常判断用の条件(第4の条件)を満足するため、次のステップS37に移る。なお、第4の条件として、検出吐出温度T40が目標出湯温度DO以上に上昇しないという条件を用いても良い。
【0137】
ステップS37において、タイマーはスケール判定期間TSCをカウントしたか(YES)否か(NO)をチェックする。
【0138】
ステップS37でYESと判定されると、スケール判定期間TSCにおいて継続して上記出湯温度低下意図運転(ステップS35,S36で共にNO)が行われ、出湯温度はスケール付着を引き起こすレベルを維持している(ステップS34でNO)ため、ステップS38にて「スケール付着異常あり」と判断し、「スケール付着異常あり」を指示する判定結果情報判定結果情報D57Cをスケール付着異常時実行手段58に出力する。
【0139】
一方、ステップS37でNOと判定されると、再び、ステップS34に戻り、ステップS34〜ステップS36のいずれかでYESとなるか、ステップS37でYESになるまで、ステップS34〜S37の処理が続行される。
【0140】
このように、実施の形態3のヒートポンプ式給湯装置は、ステップS33以降に実施されるスケール付着異常判定処理時において、沸き上げポンプ13の回転数に関する第1の条件、出湯温度に関する第2の条件とに加え、電動膨張弁27の開度が比較用電動弁開度EV以下に低下しない第4の条件が全てスケール判定期間TSCにおいて継続されることに着目している。なお、第4の条件として、検出吐出温度T40が目標出湯温度DO以上に上昇しないという条件を用いても良い。
【0141】
このため、実施の形態3のヒートポンプ式給湯装置は、実施の形態1以上にスケール異常付着の判定精度より一層向上させることができる効果を奏する。
【0142】
<その他>
(第1の態様)
実施の形態2のスケール付着判定手段57Bの周波数情報D25に基づくとスケール付着異常判定処理と、実施の形態3のスケール付着判定手段57Cの開度情報D27(検出吐出温度T40)に基づくスケール付着異常判定処理とを組み合わせたスケール付着判定手段を有する第1の態様のヒートポンプ式給湯装置も可能である。
【0143】
図11はこの発明の第1の態様であるヒートポンプ式給湯装置におけるスケール付着判定手段57Xの構成を示すブロック図である。なお、ヒートポンプ式給湯装置の全体構成は図2で示した構成と同様であり、図11の運転制御手段50Xは図2の運転制御手段50に相当する。また、図11では説明の都合上、第1の態様のスケール付着異常判定処理に関連する部分のみ示している。
【0144】
同図に示すように、ヒートポンプユニット制御手段53は出湯温度検出手段である出湯サーミスタ21より検出出湯温度T21を取り込み、回転数指令C13を沸き上げポンプ13を沸き上げポンプ13に出力する(図11では図示せず)ともに、沸き上げポンプ回転数認識手段54に出力する。沸き上げポンプ回転数認識手段54は回転数指令C13に基づき認識される回転数情報D13をスケール付着判定手段57Xに出力する。
【0145】
さらに、ヒートポンプユニット制御手段53は周波数指令C25を圧縮機25に出力する(図11では図示せず)ともに、沸き上げポンプ回転数認識手段54に出力する。圧縮機周波数認識手段55は周波数指令C25に基づき認識される周波数情報D25をスケール付着判定手段57Bに出力する。
【0146】
さらに、ヒートポンプユニット制御手段53は開度指令C27を電動膨張弁27に出力する(図11では図示せず)ともに、電動弁開度認識手段56に出力する。電動弁開度認識手段56は開度指令C27に基づき認識される開度情報D27をスケール付着判定手段57Bに出力する。
【0147】
スケール付着判定手段57Xは検出出湯温度T21、回転数情報D13、周波数情報D25及び開度情報D27を常時読み出してスケール付着異常判定処理を行い、スケール付着異常の有無を指示する判定結果情報D57Xをスケール付着異常時実行手段58に出力する。
【0148】
また、スケール付着判定手段57Xは、開度情報D27に代えて、吐出サーミスタ40より検出される検出吐出温度T40を読み出すようにしても良い。この場合、スケール付着判定手段57Xは、検出出湯温度T21、回転数情報D13、周波数情報D25及び検出吐出温度T40を常時読み出してスケール付着異常判定処理を行い、スケール付着異常の有無を指示する判定結果情報D57Xをスケール付着異常時実行手段58に出力する。
【0149】
スケール付着判定手段57Xによるスケール付着異常判定処理は、沸き上げポンプ13の回転数、圧縮機25の周波数及び電動膨張弁27の開度(検出吐出温度T40)が全て、実施の形態2あるいは実施の形態3述べた条件を満足する場合に、上記出湯温度低下意図運転が実行されていると判定する。他の処理は実施の形態2あるいは実施の形態3と同様である。
【0150】
スケール付着異常時実行手段58は判定結果情報D57Xが「スケール付着異常あり」を指示する場合、圧縮機25の停止等を含むヒートポンプ式給湯装置の運転停止によるスケール付着異常処理を実行する。
【0151】
このような構成の第1の態様のヒートポンプ式給湯装置は、スケール付着異常判定処理時において、沸き上げポンプ13の回転数に関する第1の条件、出湯温度に関する第2の条件(実施の形態1〜実施の形態3で共通)、圧縮機25の周波数に関する第3の条件(実施の形態2のみ)、及び電動膨張弁27の開度あるいは吐出温度に関する第4の条件(実施の形態3のみ)全てに関し、スケール判定期間TSCにおいて継続されることに着目している。
【0152】
このため、第1の態様のヒートポンプ式給湯装置は、実施の形態1〜実施の形態3以上にスケール異常付着の判定精度より一層向上させることができる効果を奏する。
【0153】
(第2の態様)
また、第2の態様として、運転制御手段50による起動時、圧縮機25の周波数変更時において出湯温度が所定のハンチング設定温度(例えば、1℃)を超えないようにヒートポンプユニットHU及びタンクユニットTUを制御するヒートポンプ式給湯装置が考えられる。
【0154】
第2の態様のようにハンチング設定温度内でオーバーシュートを抑えることにより、90℃程度の目標出湯温度DOで出湯温度を制御する際、異常基準温度Xを超える可能性を十分低くすることができる。その結果、上述した実施の形態1〜実施の形態3それぞれのヒートポンプ式給湯装置において、スケール判定期間TSCを短くしても精度良くスケール付着異常判定処理を行うことができる効果を奏する。
【0155】
第2の態様のように、出湯温度が所定のハンチング設定温度を超えないように制御することにより、スケール付着判定手段57によるスケール判定期間TSCの長さを短くすることができるため、早期にスケール付着異常の判定を行うことができる効果を奏する。
【0156】
(他の適用)
上述した実施の形態では、ヒートポンプ式給湯装置として説明したが、貯湯タンクを有することなく循環路に循環水を循環させ、床暖房等の放熱器を循環路に接続してなるヒートポンプ式温水暖房装置としても適用可能である。
【0157】
すなわち、ヒートポンプユニットと、ヒートポンプユニットによって加熱された温湯を循環させる循環路と、この循環路に介設される放熱器とを備え、循環路を流れる循環水を沸き上げて循環させる運転が可能なヒートポンプ式温水装置に対しても適用可能である。
【0158】
さらに、循環することなく入力部及び出力部を有する所定の水路を流れる湯水をヒートポンプユニットによって加熱し、所定の水路の入力部から出力部にかけてを湯水が流れるようにポンプにより駆動して、所定の水路の出力部から温湯として得る構成にもこの発明を適用することができる。
【0159】
(その他)
上述した実施の形態では、異常基準温度Xと下限温度Yとを異なる温度に設定したが、同一の温度に設定する態様も勿論考えられる。但し、異常基準温度Xと下限温度Yとを同一に設定すると、スケール付着異常判定処理開始直後に出湯温度が微小に低下しても、「スケール付着異常なし」と判定してしまう可能性があるため、上述した実施の形態で述べたように、異常基準温度Xと下限温度Yとの間に1℃程度のディファレンシャルを設ける方が望ましい。
【符号の説明】
【0160】
3 貯湯タンク
12 循環路
13 沸き上げポンプ
21 出湯サーミスタ
25 圧縮機
26 水熱交換器
27 電動膨張弁
40 吐出サーミスタ
50,50A〜50C,50X 運転制御手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の水路(12)を流れる湯水を加熱するヒートポンプ式温水装置であって、
前記湯水が前記所定の水路を流れるように駆動する沸き上げポンプ(13)を備え、前記湯水が前記所定の水路を流通する流量は前記沸き上げポンプの回転数に対し正の相関を有し、
前記湯水を加熱する熱交換処理を行うヒートポンプ部(H)をさらに備え、
前記ヒートポンプ部は、
前記熱交換処理を行う熱交換器(26)と
加熱後の前記湯水の温度である出湯温度を検出する出湯温度検出手段(21)とを含み、
前記ヒートポンプ式温水装置は、
前記出湯温度が目標出湯温度に達するように、前記沸き上げポンプ及び前記ヒートポンプ部の動作を制御する制御手段(50)をさらに備え、
前記制御手段は、
前記沸き上げポンプへの回転数を指示する回転数指令を出力して前記沸き上げポンプを制御し、前記出湯温度を認識可能に前記出湯温度検出手段に接続され、
出湯温度検出手段より検出された前記出湯温度が所定の出湯温度以上の際に前記沸き上げポンプの回転数を上昇させるように回転数指令を出力し、
前記出湯温度が前記所定の出湯温度以上の際に前記沸き上げポンプの回転数を上昇させるように前記回転数指令を出力している第1の条件と、前記出湯温度が所定の下限温度よりも低い温度とならない第2の条件とを共に満足するとき、前記所定の水路にスケール付着異常が発生していると判定する、
ヒートポンプ式温水装置。
【請求項2】
請求項1記載のヒートポンプ式温水装置であって、
前記第1の条件は、所定の期間において、前記回転数指令が指示する回転数が継続して所定の回転数以下に低下しない条件を含み、
前記第2の条件は、前記所定の期間において、前記出湯温度が継続して前記所定の下限温度以下に低下しない条件を含み、
前記制御手段(50)は、
前記所定の水路にスケール付着異常が発生していると判定した際、前記沸き上げポンプ及び前記ヒートポンプ部の動作を停止させるスケール付着異常処理を行う、
ヒートポンプ式温水装置。
【請求項3】
請求項2記載のヒートポンプ式温水装置であって、
前記ヒートポンプ部(H)は、
熱源となる冷媒を吐出する圧縮機(25)をさらに含み、前記冷媒の温度は前記圧縮機の周波数に対し正の相関を有し、
前記熱交換器(26)は前記冷媒を用いて前記熱交換処理を行い、
前記出湯温度検出手段(21)は前記熱交換器の出力側における前記所定の水路(12)に設けられた出湯サーミスタを含み、
前記制御手段(50)は、前記圧縮機の周波数を指示する周波数指令を前記圧縮機に出力して前記圧縮機の動作を制御し、
前記第1及び第2の条件に加え、前記所定の期間において、前記周波数指令が指示する周波数が継続して所定の周波数以上に上昇しない第3の条件をさらに満足するとき、前記スケール付着異常が発生していると判定する、
ヒートポンプ式温水装置。
【請求項4】
請求項3記載のヒートポンプ式温水装置であって、
前記ヒートポンプ部(H)は、
吐出後の前記冷媒の温度を吐出温度として検出する冷媒温度検出手段(40)とを含み、
前記吐出温度検出手段は前記圧縮機の出力側に設けられた吐出温度サーミスタを含み、
前記制御手段(50)は、前記吐出温度を認識可能に前記吐出温度検出手段に接続され、
前記第1〜第3の条件に加え、前記所定の期間において前記吐出温度が継続して所定の上限温度以上に上昇しない第4の条件をさらに満足するとき、前記スケール付着異常が発生していると判定する、
ヒートポンプ式温水装置。
【請求項5】
請求項3記載のヒートポンプ式温水装置であって、
前記ヒートポンプ部(H)は、
前記冷媒の通過する冷媒通路上に設けられる膨張弁(27)とを含み、前記冷媒の温度は前記膨張弁の開度に対し負の相関を有し、
前記制御手段(50)は、
前記膨張弁の開度を指示する開度指令を出力して前記膨張弁を制御し、
前記第1〜第3の条件に加え、前記所定の期間において前記開度指令が指示する開度が継続して所定の開度以下に低下しない第4の条件をさらに満足するとき、前記スケール付着異常処理を行う、
ヒートポンプ式温水装置。
【請求項6】
請求項2記載のヒートポンプ式温水装置であって、
前記ヒートポンプ部(H)は、
熱源となる冷媒を吐出する圧縮機(25)と、
吐出後の前記冷媒の温度を吐出温度として検出する冷媒温度検出手段(40)とを含み、
前記熱交換器(26)は前記冷媒を用いて前記熱交換処理を行い、
前記出湯温度検出手段(21)は前記熱交換器の出力側における前記所定の水路に設けられた出湯サーミスタを含み、
前記吐出温度検出手段は前記圧縮機の出力側に設けられた吐出温度サーミスタを含み、
前記制御手段(50)は、前記吐出温度を認識可能に前記吐出温度検出手段に接続され、
前記第1及び第2の条件に加え、前記所定の期間において前記吐出温度が継続して所定の上限温度以上に上昇しない第4の条件をさらに満足するとき、前記スケール付着異常処理を行う、
ヒートポンプ式温水装置。
【請求項7】
請求項2記載のヒートポンプ式温水装置であって、
前記ヒートポンプ部(H)は、
熱源となる冷媒を吐出する圧縮機(25)と、
前記冷媒の通過する冷媒通路上に設けられる膨張弁(27)とを含み、前記冷媒の温度は前記膨張弁の開度に対し負の相関を有し、
前記熱交換器(26)は前記冷媒を用いて前記熱交換処理を行い、
前記出湯温度検出手段(21)は前記熱交換器の出力側における前記所定の水路に設けられた出湯サーミスタを含み、
前記制御手段(50)は、
前記膨張弁の開度を指示する開度指令を出力して前記膨張弁を制御し、
前記第1及び第2の条件に加え、前記所定の期間において前記開度指令が指示する開度が継続して所定の開度以下に低下しない第4の条件をさらに満足するとき、前記スケール付着異常処理を行う、
ヒートポンプ式温水装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7うち、いずれか1項に記載のヒートポンプ式温水装置であって、
前記制御手段(50)は、起動時において前記出湯温度が所定のハンチング設定温度を超えないように前記ヒートポンプ部及び前記沸き上げポンプを制御する、
ヒートポンプ式温水装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のうち、いずれか1項に記載のヒートポンプ式温水装置であって、
前記所定の水路は循環路を含み、
前記循環路(12)上に設けられる貯水タンク(3)をさらに備え、
前記沸き上げポンプ(13)は前記貯水タンクの貯留水を流出させ、前記湯水を循環水として前記循環路内を循環させる、
ヒートポンプ式温水装置。
【請求項1】
所定の水路(12)を流れる湯水を加熱するヒートポンプ式温水装置であって、
前記湯水が前記所定の水路を流れるように駆動する沸き上げポンプ(13)を備え、前記湯水が前記所定の水路を流通する流量は前記沸き上げポンプの回転数に対し正の相関を有し、
前記湯水を加熱する熱交換処理を行うヒートポンプ部(H)をさらに備え、
前記ヒートポンプ部は、
前記熱交換処理を行う熱交換器(26)と
加熱後の前記湯水の温度である出湯温度を検出する出湯温度検出手段(21)とを含み、
前記ヒートポンプ式温水装置は、
前記出湯温度が目標出湯温度に達するように、前記沸き上げポンプ及び前記ヒートポンプ部の動作を制御する制御手段(50)をさらに備え、
前記制御手段は、
前記沸き上げポンプへの回転数を指示する回転数指令を出力して前記沸き上げポンプを制御し、前記出湯温度を認識可能に前記出湯温度検出手段に接続され、
出湯温度検出手段より検出された前記出湯温度が所定の出湯温度以上の際に前記沸き上げポンプの回転数を上昇させるように回転数指令を出力し、
前記出湯温度が前記所定の出湯温度以上の際に前記沸き上げポンプの回転数を上昇させるように前記回転数指令を出力している第1の条件と、前記出湯温度が所定の下限温度よりも低い温度とならない第2の条件とを共に満足するとき、前記所定の水路にスケール付着異常が発生していると判定する、
ヒートポンプ式温水装置。
【請求項2】
請求項1記載のヒートポンプ式温水装置であって、
前記第1の条件は、所定の期間において、前記回転数指令が指示する回転数が継続して所定の回転数以下に低下しない条件を含み、
前記第2の条件は、前記所定の期間において、前記出湯温度が継続して前記所定の下限温度以下に低下しない条件を含み、
前記制御手段(50)は、
前記所定の水路にスケール付着異常が発生していると判定した際、前記沸き上げポンプ及び前記ヒートポンプ部の動作を停止させるスケール付着異常処理を行う、
ヒートポンプ式温水装置。
【請求項3】
請求項2記載のヒートポンプ式温水装置であって、
前記ヒートポンプ部(H)は、
熱源となる冷媒を吐出する圧縮機(25)をさらに含み、前記冷媒の温度は前記圧縮機の周波数に対し正の相関を有し、
前記熱交換器(26)は前記冷媒を用いて前記熱交換処理を行い、
前記出湯温度検出手段(21)は前記熱交換器の出力側における前記所定の水路(12)に設けられた出湯サーミスタを含み、
前記制御手段(50)は、前記圧縮機の周波数を指示する周波数指令を前記圧縮機に出力して前記圧縮機の動作を制御し、
前記第1及び第2の条件に加え、前記所定の期間において、前記周波数指令が指示する周波数が継続して所定の周波数以上に上昇しない第3の条件をさらに満足するとき、前記スケール付着異常が発生していると判定する、
ヒートポンプ式温水装置。
【請求項4】
請求項3記載のヒートポンプ式温水装置であって、
前記ヒートポンプ部(H)は、
吐出後の前記冷媒の温度を吐出温度として検出する冷媒温度検出手段(40)とを含み、
前記吐出温度検出手段は前記圧縮機の出力側に設けられた吐出温度サーミスタを含み、
前記制御手段(50)は、前記吐出温度を認識可能に前記吐出温度検出手段に接続され、
前記第1〜第3の条件に加え、前記所定の期間において前記吐出温度が継続して所定の上限温度以上に上昇しない第4の条件をさらに満足するとき、前記スケール付着異常が発生していると判定する、
ヒートポンプ式温水装置。
【請求項5】
請求項3記載のヒートポンプ式温水装置であって、
前記ヒートポンプ部(H)は、
前記冷媒の通過する冷媒通路上に設けられる膨張弁(27)とを含み、前記冷媒の温度は前記膨張弁の開度に対し負の相関を有し、
前記制御手段(50)は、
前記膨張弁の開度を指示する開度指令を出力して前記膨張弁を制御し、
前記第1〜第3の条件に加え、前記所定の期間において前記開度指令が指示する開度が継続して所定の開度以下に低下しない第4の条件をさらに満足するとき、前記スケール付着異常処理を行う、
ヒートポンプ式温水装置。
【請求項6】
請求項2記載のヒートポンプ式温水装置であって、
前記ヒートポンプ部(H)は、
熱源となる冷媒を吐出する圧縮機(25)と、
吐出後の前記冷媒の温度を吐出温度として検出する冷媒温度検出手段(40)とを含み、
前記熱交換器(26)は前記冷媒を用いて前記熱交換処理を行い、
前記出湯温度検出手段(21)は前記熱交換器の出力側における前記所定の水路に設けられた出湯サーミスタを含み、
前記吐出温度検出手段は前記圧縮機の出力側に設けられた吐出温度サーミスタを含み、
前記制御手段(50)は、前記吐出温度を認識可能に前記吐出温度検出手段に接続され、
前記第1及び第2の条件に加え、前記所定の期間において前記吐出温度が継続して所定の上限温度以上に上昇しない第4の条件をさらに満足するとき、前記スケール付着異常処理を行う、
ヒートポンプ式温水装置。
【請求項7】
請求項2記載のヒートポンプ式温水装置であって、
前記ヒートポンプ部(H)は、
熱源となる冷媒を吐出する圧縮機(25)と、
前記冷媒の通過する冷媒通路上に設けられる膨張弁(27)とを含み、前記冷媒の温度は前記膨張弁の開度に対し負の相関を有し、
前記熱交換器(26)は前記冷媒を用いて前記熱交換処理を行い、
前記出湯温度検出手段(21)は前記熱交換器の出力側における前記所定の水路に設けられた出湯サーミスタを含み、
前記制御手段(50)は、
前記膨張弁の開度を指示する開度指令を出力して前記膨張弁を制御し、
前記第1及び第2の条件に加え、前記所定の期間において前記開度指令が指示する開度が継続して所定の開度以下に低下しない第4の条件をさらに満足するとき、前記スケール付着異常処理を行う、
ヒートポンプ式温水装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7うち、いずれか1項に記載のヒートポンプ式温水装置であって、
前記制御手段(50)は、起動時において前記出湯温度が所定のハンチング設定温度を超えないように前記ヒートポンプ部及び前記沸き上げポンプを制御する、
ヒートポンプ式温水装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のうち、いずれか1項に記載のヒートポンプ式温水装置であって、
前記所定の水路は循環路を含み、
前記循環路(12)上に設けられる貯水タンク(3)をさらに備え、
前記沸き上げポンプ(13)は前記貯水タンクの貯留水を流出させ、前記湯水を循環水として前記循環路内を循環させる、
ヒートポンプ式温水装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−117724(P2012−117724A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266728(P2010−266728)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
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