説明

ヒートポンプ式給湯機

【課題】貯湯タンク内の熱量に応じた追い焚き運転を行うことが可能なヒートポンプ式給湯機を提供する。
【解決手段】貯湯タンク2内に設置する風呂熱交換器25を内管と外管とで構成される二重管構造とし、内管はヒーポン戻り管14と一端が接続し他端が貯湯タンク2内に開口した開口部を形成し、外管は風呂循環回路29に両端が接続しており、ヒーポン戻り管14に第1切替管路46へ切り替え可能な第1切替弁45とヒーポン往き管13に第2切替管路48へ切り替え可能な第2切替弁47とを設置して、貯湯温度センサ44で検出された風呂熱交換器25近傍の温度と浴槽水の温度から、圧縮機8とヒーポン循環ポンプ16の駆動の制御、又は風呂バイパス弁34の開度の調節を行って第1切替弁45と第2切替弁47を切り替えることで、追い焚き時間を短縮して中温水の発生を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヒートポンプユニットで湯水を加熱し貯湯タンク内に貯湯するヒートポンプ式給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものにおいて、ヒートポンプ式加熱手段で加熱した湯水を貯湯タンクに貯湯し、該貯湯タンク内の高温水と低温水を混合弁で設定温度に調節して浴槽内に注湯する湯張り管と、貯湯タンク内上部に設置され浴槽と風呂循環回路で接続された風呂熱交換器とを備え、浴槽水の追い焚き運転の開始指令を検知すると、浴槽水を風呂熱交換器へ循環させ、更に湯張り管から高温水を注湯することで追い焚き運転の時間を短縮し、風呂熱交換器付近の温度低下を防止するものがあった。(例えば、特許文献1)
【0003】
また、貯湯タンクの外に設置した熱交換器内に貯湯タンク内の高温水と浴槽水を循環させて熱交換することで、浴槽水を設定温度まで昇温し、熱交換によって温度が低下した湯水を貯湯タンク下部に戻すことで効率よく追い焚き運転を行うものがあった。(例えば、特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−138966号公報
【特許文献2】特開2006−98040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この従来のものでは、例えば特許文献1で開示されている方法で追い焚き運転を行う場合、浴槽内の浴槽水が風呂熱交換器内を循環して貯湯タンク内に貯湯された90℃程度の高温水と熱交換するので、浴槽水の温度が低温であれば風呂熱交換器付近の高温水から熱量が大量に奪われ、追い焚き運転終了時には40〜50℃程度の中温水が貯湯タンク上部に貯湯された状態となる。この状態から貯湯タンク内の湯水を沸き上げる沸き上げ運転を開始すると、中温水に対するヒートポンプ式加熱手段の加熱能力の低下が大きいため、エネルギー消費効率(以下、COPとする)が低下する問題があり、更に、貯湯タンク上部に40〜50℃程度の中温水が貯湯された状態だと、60℃程度の高温出湯要求に対応できない場合もあるため利便性を損ねている。また、風呂熱交換器付近に高温水が存在しなければ浴槽水の追い焚き運転に時間がかかる、もしくは追い焚き運転ができない問題があった。
【0006】
また、特許文献2で開示されている方法で追い焚き運転が行われると、貯湯タンク内とは別にある熱交換器で浴槽水を昇温するため、貯湯タンク上部の中温水の発生は防止できるが、熱交換器を貯湯タンク内とは別位置に設置するので専用の回路を貯湯タンクに接続する必要があり、更には、貯湯タンク内の高温水を熱交換器に循環させるためのポンプが必要となるため、装置の大型化やコストアップを招く問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では湯水を貯湯する貯湯タンクと、該貯湯タンク内の湯水を加熱するヒートポンプ式加熱手段と、前記貯湯タンク下部と前記ヒートポンプ式加熱手段とを接続するヒーポン往き管と、前記ヒートポンプ式加熱手段と前記貯湯タンク上部とを接続するヒーポン戻り管と、前記ヒーポン往き管と前記ヒーポン戻り管とで構成されるヒーポン循環回路と、該ヒーポン循環回路に設置され湯水を搬送するヒーポン循環ポンプと、前記貯湯タンク内に設置され高温水と熱交換して浴槽水を昇温する風呂熱交換器と、前記浴槽内の浴槽水を前記風呂熱交換器内に流入させる風呂往き管と、該風呂熱交換器で熱交換された浴槽水を浴槽へ流入させる風呂戻り管と、前記風呂往き管と前記風呂戻り管とで構成される風呂循環回路と、前記風呂循環回路内に設置され浴槽水を搬送する風呂循環ポンプとを備え、前記風呂循環ポンプを駆動して前記浴槽水を前記風呂熱交換器内に循環させて昇温する追い焚き運転を行うヒートポンプ式給湯機において、前記風呂熱交換器は内管と外管とで構成された二重管構造であり、内管は前記ヒーポン戻り管と一端が接続し他端が前記貯湯タンク内に開口した開口部を形成し、外管は前記風呂循環回路に両端が接続しているものである。
【0008】
また、請求項2では前記風呂熱交換器を構成する内管の前記開口部から前記貯湯タンク内に流入する湯水の温度を検出する開口温度センサを設置し、前記追い焚き運転時に、前記ヒートポンプ式加熱手段による加熱動作を行い前記ヒーポン循環ポンプを駆動させ、前記内管を流動する湯水の温度又は前記外管を流動する浴槽水の流量を制御して、前記開口温度センサでの検出温度が所定温度以上の高温水となるようにするものである。
【0009】
また、請求項3では前記貯湯タンクの上下に所定の間隔で配置され各温度層の温度をそれぞれ検出する貯湯温度センサと、前記浴槽水の温度を検出する風呂温度センサと、前記ヒーポン戻り管に前記貯湯タンク下部と接続する第1切替管路へ流路を切り替え可能な第1切替弁と、前記ヒーポン往き管に前記第1切替弁より下流側の前記ヒーポン戻り管に接続する第2切替管路へ流路を切り替え可能な第2切替弁とを設置して、前記追い焚き運転時に、前記貯湯温度センサで検出された前記風呂熱交換器近傍の温度が高温であり、前記風呂温度センサで検出された浴槽水の温度が低温であれば、前記第1切替弁を前記第1切替管路方向に切り替え、前記第2切替弁を前記第2切替管路方向に切り替えて、前記ヒートポンプ式加熱手段による加熱動作を行わず前記ヒーポン循環ポンプを駆動する切替管路追い焚き運転を行うものである。
【0010】
また、請求項4では前記ヒーポン循環回路に湯水の温度を検出するヒーポン温度センサを設置して、前記切替管路追い焚き運転時に、前記ヒーポン温度センサで検出された温度が設定された所定温度以上となったら前記ヒーポン循環ポンプの駆動を停止するものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明の請求項1によれば、貯湯タンク内に設置された風呂熱交換器を二重管で構成し、内管の一端部がヒーポン戻り管と接続し他端部が貯湯タンク内に開口した開口部を形成して、外管の両端部が風呂循環回路に接続されるので、追い焚き運転時にヒーポン循環ポンプを駆動してヒートポンプ式加熱手段で加熱した湯水を内管に流動させることで、風呂熱交換器の内管を流動する高温水と風呂熱交換器の外管の外側にある高温水とで二重に浴槽水を加熱するので追い焚き運転に要する時間を短縮することができ、ヒーポン循環ポンプを駆動させなければ、貯湯タンク内の高温水による熱交換が可能な内熱交として浴槽水の加熱を可能とする。
【0012】
また、請求項2によれば、風呂熱交換器の内管の開口部近傍に開口温度センサを設置し、追い焚き運転時に、ヒートポンプ式加熱手段による加熱動作を行いヒーポン循環ポンプを駆動させ、内管を流動する湯水の温度又は外管を流動する浴槽水の流量を制御して、開口温度センサでの検出温度が所定温度以上の高温水となるようにすることで、追い焚き運転時において所定温度よりも低温の中温水が発生して、貯湯タンク上部の貯湯温度を低下させてしまう事態を防止すると共に、中温水の発生を抑制するため、その後のヒートポンプ式加熱手段での沸き上げ時におけるCOPが向上する。
【0013】
また、請求項3によれば、貯湯タンク内の各温度層の温度を検出する貯湯温度センサと、浴槽水の温度を検出する風呂温度センサと、ヒーポン戻り管に貯湯タンク下部と接続する第1切替管路へ流路を切り替え可能な第1切替弁と、ヒーポン往き管に第1切替弁より下流側のヒーポン戻り管に接続する第2切替管路へ流路を切り替え可能な第2切替弁とを設置して、追い焚き運転時に、貯湯温度センサで検出された風呂熱交換器近傍の温度が高温であり、風呂温度センサで検出された浴槽水の温度が低温であれば、第1切替弁を第1切替管路方向に切り替え、第2切替弁を前記第2切替管路方向に切り替えて、ヒートポンプ式加熱手段による加熱動作を行わずヒーポン循環ポンプを駆動させる切替管路追い焚き運転を行うので、ヒートポンプ式加熱手段による加熱動作を行うことなく浴槽水の加熱が可能であり、風呂熱交換器の内管を流動する高温水と風呂熱交換器の外管の外側にある高温水とで二重に加熱することで追い焚き運転に要する時間が短縮することができる。
【0014】
また、請求項4によれば、ヒーポン循環回路に湯水の温度を検出するヒーポン温度センサを設置して、切替管路追い焚き運転時に、ヒーポン温度センサで検出された温度が設定された所定温度以上になったらヒーポン循環ポンプの駆動を停止するので、貯湯タンク下部の貯湯温度を上昇させてしまう事態を防止すると共に、中温水の発生を抑制するため、その後のヒートポンプ式加熱手段での沸き上げ時におけるCOPが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の一実施形態を示すヒートポンプ式給湯機の概略構成図
【図2】同実施形態の要部拡大図
【図3】追い焚き運転時の動作を示すフローチャート
【図4】同運転時のフローチャート
【図5】同運転時のフローチャート
【図6】同運転時の流路を説明する図
【図7】同運転時の流路を説明する図
【図8】他の実施形態を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を適用した一実施形態を図に基づいて説明する。
1は湯水を貯湯する貯湯タンク2を内部に備えた貯湯タンクユニット、3は貯湯タンク2内の湯水を加熱するヒートポンプ式加熱手段としてのヒートポンプユニット、4は台所や洗面所等に備えられた給湯栓、5は給湯栓4から出湯する湯水の温度を設定する給湯リモコン、6は浴槽、7は浴室に設けられた風呂リモコンである。
【0017】
ヒートポンプユニット3は、冷媒を圧縮する圧縮機8と、凝縮器としての水冷媒熱交換器9と、冷媒を減圧する電子膨張弁10と、強制空冷式の蒸発器としての空気熱交換器11とで構成されたヒートポンプサイクル12と、貯湯タンク2の下部と水冷媒熱交換器9とを接続するヒーポン往き管13と、水冷媒熱交換器9と貯湯タンク2上部とを接続するヒーポン戻り管14と、ヒーポン往き管13とヒーポン戻り管14とから構成されるヒーポン循環回路15と、ヒーポン往き管13に設置されヒーポン循環回路15内の湯水を搬送するヒーポン循環ポンプ16と、ヒーポン戻り管14に設置され湯水の温度を検出するヒーポン温度センサ17と、それらを制御するヒーポン制御部18とを備えており、ヒートポンプサイクル12内には冷媒として二酸化炭素が使用され超臨界ヒートポンプサイクルを構成している。
【0018】
ここで、水冷媒熱交換器9は冷媒と被加熱水である貯湯タンク2内の湯水とが対向して流れる対向流方式を採用しており、超臨界ヒートポンプサイクルでは熱交換時において冷媒は超臨界状態のまま凝縮されるため効率よく高温まで被加熱水を加熱することができ、水冷媒熱交換器9に流入する冷媒の入口温度と流出する出口温度の温度差が一定になるように電子膨張弁10または圧縮機8を制御して、水冷媒熱交換器9に流入する被加熱水の温度が5〜20℃の低温であれば効率よく加熱することができるのでCOPが向上する。
【0019】
19は貯湯タンク2上部と接続して高温水を出湯する出湯管、20は貯湯タンク2下部と接続して低温水を供給する給水管、21は給水管20から分岐した給水バイパス管、22は出湯管19と給水バイパス管21内の湯水を混合する電動ミキシング弁で構成された給湯混合弁であり、給湯混合弁22の下流にある給湯管23に設けた給湯温度センサ24で検知した湯水の温度について、給湯リモコン5や風呂リモコン7で使用者が設定した給湯設定温度になるよう給湯混合弁22の弁開度を調整して高温水と低温水の混合比率を制御する。
【0020】
25は貯湯タンク2内の上部に備えられた風呂熱交換器であり、この風呂熱交換器25は内管26と外管27とで構成される二重管構造で、内管26の一端がヒーポン戻り管14に接続され他端が貯湯タンク2内の上部に開口した開口部28を形成し、外管27の両端が浴槽6内の浴槽水を流通させる風呂循環回路29に接続しており、浴槽水を水冷媒熱交換器9で加熱された高温水と貯湯タンク2内の上部に貯湯された高温水とで配管の内外から加熱可能としたものである。
【0021】
風呂循環回路29は、配管途中に設置された風呂循環ポンプ30によって浴槽6内の浴槽水を風呂熱交換器25の外管27の一端に搬送する風呂往き管31と、外管27の他端と接続して風呂熱交換器25内で加熱された浴槽水を浴槽6内に戻す風呂戻り管32とで構成されている。また、33は配管内を流動する浴槽水の流量を検知する流量センサ、34は風呂往き管31に設置され風呂熱交換器25と風呂戻り管32に接続された風呂バイパス管35の各方向に流入させる浴槽水の流量が可変可能な風呂バイパス弁である。
【0022】
36は風呂往き管31に設置され配管内部を流動する浴槽水の温度を検出する往き管温度センサ、37は風呂戻り管32に設置され浴槽6内に流入する浴槽水の温度を検出する戻り管温度センサ、38は風呂熱交換器25で加熱された浴槽水の温度を検出する熱交出口温度センサであり、風呂リモコン7で使用者が設定した浴槽6内に貯める浴槽水の設定温度と往き管温度センサ36で検出された温度を一致させるため、往き管温度センサ36での検出値に基づいて風呂バイパス管35の弁開度を調節し、風呂熱交換器25の外管27へ流入する浴槽水の流量を変化させることで温度を調整する。
【0023】
39は出湯管19と給水バイパス管21内の湯水を混合する電動ミキシング弁で構成された風呂混合弁であり、該風呂混合弁39の下流には風呂往き管31と接続された湯張り管40が設置されている。この湯張り管40には、浴槽6への注湯開始及び停止を行う湯張り弁41と、浴槽6への注湯量をカウントする風呂流量カウンタ42と、浴槽6へ流入する湯水が逆流するのを防止する二重に配設した逆止弁43とが配管途中に設けられている。
【0024】
44は貯湯タンク2の上下方向に複数配置された貯湯温度検出手段としての貯湯温度センサで、この実施形態では貯湯温度センサ44a、44b、44c、44d、44eの5つが設置されているものであり、この貯湯温度センサ44が検出する温度情報によって貯湯タンク2内の残熱量と、貯湯タンク2内の上下方向の温度分布が確認できる。
【0025】
尚、貯湯温度センサ44bで検出される温度が風呂熱交換器25の近傍にある湯水の温度で貯湯タンク2の上部に貯湯された湯水の温度であるとし、貯湯温度センサ44eで検出される温度が貯湯タンク2の下部の温度とする。
【0026】
45はヒーポン戻り管14に設置され水冷媒熱交換器9から流出する湯水を内管26と接続されたヒーポン戻り管14と貯湯タンク2下部と接続された第1切替管路46とに切り替え可能な第1切替弁、47はヒーポン往き管13に設置され水冷媒熱交換器9に流入する湯水を貯湯タンク2下部と接続されたヒーポン往き管13とヒーポン戻り管14の第1切替弁45よりも下流側に接続した第2切替管路48とに切り替え可能な第2切替弁であり、追い焚き運転時に貯湯温度センサ44の検出温度に基づいて第1切替弁45と第2切替弁47とを切り替えて流路を変更し、効率よく追い焚き運転が可能となるようにする。
【0027】
前記給湯リモコン5及び風呂リモコン7には、給湯設定温度を設定する給湯温度設定スイッチ49、及び風呂設定温度を設定する風呂温度設定スイッチ50がそれぞれ設けられており、浴槽6へ風呂設定温度の湯を風呂リモコン7の図示しない湯張り量設定スイッチで設定された湯張り量だけ注湯し、所定時間保温させる風呂自動スイッチ51がそれぞれ設けられ、さらに、風呂リモコン7には浴槽6内の浴槽水の追い焚きを開始させる追い焚きスイッチ52が設けられている。
【0028】
53は貯湯タンクユニット1内に設置された各センサの入力を受け、各アクチュエータの駆動を制御するマイコンを内蔵した制御手段としての給湯制御部である。この給湯制御部53は給湯リモコン5及び風呂リモコン7と無線又は有線により接続され、ユーザーが任意の給湯設定温度及び風呂設定温度を設定でき、給湯運転や風呂の追い焚き運転等を制御するものである。
【0029】
54は貯湯タンク2上部に設置され内管26の開口部28から流出する湯水の温度を検出する開口温度センサであり、浴槽水の追い焚き時に水冷媒熱交換器9で加熱され風呂熱交換器25内で浴槽水と熱交換された後の湯水の温度を検出し、検出した温度に基づいて給湯制御部53は、高温水として使用可能となるようヒートポンプユニット3内の圧縮機8とヒーポン循環ポンプ16の駆動を制御し、風呂バイパス弁34の開度を調節する。
【0030】
55は貯湯タンク2内の過圧を逃がす過圧逃がし弁、56は給水の圧力を減圧する減圧弁、57は給水栓、58は排水栓である。
【0031】
次に、この一実施形態の作動を説明する。
まず、沸き上げ運転について説明すると、深夜電力時間帯になって貯湯温度センサ44が貯湯タンク2内に貯湯された湯水の温度を検出し、翌日に必要な熱量が残っていないことを確認したら、給湯制御部53はヒーポン制御部18に対して沸き上げ開始命令を下す。指令を受けたヒーポン制御部18は圧縮機8を起動させた後にヒーポン循環ポンプ16を駆動開始し、貯湯タンク2下部に接続されたヒーポン往き管13から取り出した5〜20℃程度の低温水を水冷媒熱交換器9で70〜90℃程度の高温水に加熱し、ヒーポン戻り管14から貯湯タンク2上部へ戻す。貯湯タンク2上部から順次積層して高温水を貯湯していき、必要な熱量が貯湯されたことを貯湯温度センサ44で検出すると、給湯制御部53はヒーポン制御部18に対して沸き上げ停止命令を下し、ヒーポン制御部18は圧縮機8を停止すると共にヒーポン循環ポンプ16も停止して沸き上げ動作を終了するものである。
【0032】
尚、沸き上げ運転を実行する際、貯湯タンク2下部からヒーポン往き管13を流動し、水冷媒熱交換器9で加熱されてヒーポン戻り管14から貯湯タンク2上部へ流入するヒーポン循環回路15内を湯水が流通するよう、給湯制御部53は第1切替弁45及び第2切替弁47を切り替える。
【0033】
次に、浴槽6への湯張り運転について説明すると、給湯リモコン5又は風呂リモコン7の風呂自動スイッチ51が操作されると、給湯制御部53が湯張り弁41を開弁する。すると、給水管20からの給水が貯湯タンク2内に流入し、出湯管19を介して風呂混合弁39へ貯湯タンク2内の高温水が押し出される。
【0034】
ここで、給湯制御部53は風呂自動スイッチ51の入力を受けると、出湯管19内の高温水と給水バイパス管21内の低温水を混合することで、給湯リモコン5又は風呂リモコン7で設定された風呂設定温度になるよう風呂混合弁39の弁開度を調節し、風呂設定温度の湯が湯張り管40から風呂往き管31を介して浴槽6へ流入して湯張りが行われる。
【0035】
そして、湯張り管40の途中に設置された風呂流量カウンタ42で所定の湯張り量をカウントしたら、給湯制御部53は湯張り弁41を閉弁して湯張り運転を終了する。
【0036】
次に、風呂の追い焚き運転について図3から図5のフローチャートに基づいて説明する。
使用者が風呂リモコン7の追い焚きスイッチ52を操作することで追い焚き運転が開始されると、貯湯温度センサ44bによって貯湯タンク2内の風呂熱交換器25近傍にある湯水の温度を検出し(S101)、給湯制御部53は検出された温度が65℃より低いか判断する(S102)。検出温度が65℃より低ければ風呂熱交換器25近傍に高温水が存在しないとして、ヒーポン循環ポンプ16及び風呂循環ポンプ30と圧縮機8を駆動させ(S103)、図6で示されるようにヒーポンユニット3内で加熱された湯水が風呂熱交換器25の内管26に流入し、風呂循環回路29内を流動する浴槽水が風呂熱交換器25の外管27に流入して、内管26を流動する高温水と熱交換することで、浴槽水を加熱することが可能となり貯湯タンク2内の熱量に関わらず追い焚き運転が可能となる。
【0037】
S103でヒーポン循環ポンプ16及び風呂循環ポンプ30と圧縮機8を駆動させたら、開口温度センサ54で内管26の開口部28から流出する湯水の温度を検出し(S104)、給湯制御部53は熱交換された湯水の温度が65℃以上か判断する(S105)。検出された温度が65℃以上であれば、高温水が貯湯タンク2上部に貯湯されているとして次のステップに進み、65℃よりも低ければ、圧縮機8の出力を増加させヒーポン循環ポンプ16の回転数を上昇させるか、風呂バイパス弁34の開度を調節して風呂熱交換器25の外管27に流入する浴槽水の量を減少させて開口部28から流出する湯水の温度を上昇させ(S106)、再びS104で開口温度センサ54で湯水の温度を検出する。
【0038】
S106で開口部28から流出する湯水の温度を上昇させる際、例えば、風呂リモコン7で追い焚き運転における優先事項を使用者が事前に選択して、追い焚き運転に要する時間の短縮を優先するなら圧縮機8の出力を増加させヒーポン循環ポンプ16の回転数を上昇させる手段を実行し、消費電力を節約して電気料金を抑えることを優先するなら風呂バイパス弁34の開度を調節して外管27へ流入する浴槽水の量を減少させる手段を実行するよう制御可能にすることで最適な動作が行われるものである。
【0039】
S105で開口部28から流出する湯水の温度が65℃以上であると判断されれば、熱交換により加熱された浴槽水の温度を往き管温度センサ36で検出し(S107)、検出された浴槽水温度から給湯制御部53は、浴槽水の温度が設定温度に達したか判断する(S108)。浴槽水の温度が設定温度に達していれば、ヒーポン循環ポンプ16及び風呂循環ポンプ30と圧縮機8の駆動を停止させて追い焚き運転を終了し(S109)、設定温度に達していなければ、再びS104で開口部28から流出する湯水の温度を検出する。
【0040】
また、S102で風呂熱交換器25近傍に65℃以上の高温水が存在すると判断されれば、浴槽水の温度を往き管温度センサ36で検出して(S201)、給湯制御部53は浴槽水の温度が30℃以下の低温水であるか判断する(S202)。浴槽水の温度が30℃以下であれば、図7で示されるように第1切替弁45及び第2切替弁47を切り替えて、ヒーポン戻り管14から第1切替管路46へ湯水が流入可能にし、第2切替管路48からヒーポン往き管13へ湯水を流入可能にしてヒーポン循環ポンプ16を駆動させることで、開口部28から内管26へ流入した高温水がヒーポン戻り管14、第2切替管路48、ヒーポン往き管13、水冷媒熱交換器9、ヒーポン戻り管14、第1切替管路46を循環して貯湯タンク2下部に流入する切替管路追い焚き運転を実行する。この際、ヒートポンプユニット3内の圧縮機8は駆動させず水冷媒熱交換器9内で湯水が加熱されないようにして風呂循環ポンプ30を駆動することで(S203)、浴槽水を風呂熱交換器25の内管26を流動する高温水と風呂熱交換器25の外管27の外側にある高温水とで二重に加熱することができるため、追い焚き運転に要する時間を短縮できる。
【0041】
S203での動作が完了したら、ヒーポン循環回路15内を流動する湯水の温度をヒーポン温度センサ17で検出し(S204)、給湯制御部53は、湯水の温度が30℃より低いか判断する(S205)。湯水の温度が30℃より低ければ、貯湯タンク2下部に流入した際に温度層を壊さず中温水が発生しないとして次のステップに進み、湯水の温度が30℃以上であれば、貯湯タンク2下部の温度層に対して高温であり中温水が発生するおそれがあるため、ヒーポン循環ポンプ16の駆動を停止させてヒーポン循環回路15内に湯水が流動しないようにする(S206)。
【0042】
尚、ヒーポン温度センサ17での検出値に基づくヒーポン循環ポンプ16の駆動の制御は基準値の変更を可能とし、例えば、追い焚き運転に要する時間の短縮を最優先にするモードを風呂リモコン7で使用者が選択していれば、ヒーポン温度センサ17での検出値が40℃以上になるとヒーポン循環ポンプ16の駆動を停止する制御に変更することで、より短時間で追い焚き運転を終了させることが可能となる。
【0043】
S205でヒーポン循環回路15内を流動する湯水の温度が30℃より低いと判断されたかS206でヒーポン循環ポンプ16の駆動を停止させた後に、熱交換により加熱された浴槽水の温度を往き管温度センサ36で検出し(S207)、給湯制御部53は浴槽水の温度が設定温度に達したか判断する(S208)。浴槽水の温度が設定温度に達していれば次のステップに進み、設定温度に達していなければ、再びS204でヒーポン循環回路15内を流動する湯水の温度を検出するので、浴槽水を風呂熱交換器25の内管26を流動する高温水と風呂熱交換器25の外管27の外側にある高温水とで二重に加熱することができるため、追い焚き運転に要する時間を短縮できる。
【0044】
S208で浴槽水の温度が設定温度に達していると判断されれば、第1切替弁45及び第2切替弁47を切り替えて元の状態に戻し、風呂循環ポンプ30と駆動中であればヒーポン循環ポンプ16の駆動を停止して切替管路追い焚き運転を終了する(S209)。
【0045】
また、S202で浴槽水の温度が30℃よりも高温であると判断されれば、風呂循環ポンプ30のみを駆動させ(S301)、風呂熱交換器25の外管27を循環して貯湯タンク2内の高温水と熱交換することで浴槽水を加熱する通常の追い焚き運転を実行する。熱交換で加熱された浴槽水の温度を往き管温度センサ36で検出して(S302)、給湯制御部53は浴槽水の温度が設定温度に達したか判断する(S303)。浴槽水の温度が設定温度に達していれば次のステップに進み、設定温度に達していなければ、再びS302で風呂循環回路29内を流動する浴槽水の温度を検出するので、ヒーポン循環ポンプ16を駆動させる必要がないので消費電力を抑えることができ、更に貯湯タンク2下部の温度層を壊さず中温水の発生が抑えられるのでCOPが向上する。
【0046】
S303で浴槽水の温度が設定温度に達したと判断されれば、風呂循環ポンプ30の駆動を停止させて追い焚き運転を終了する(S304)。
【0047】
尚、本発明は上記内容に限定されるものではなく、例えば図8に示すように風呂熱交換器25の内管26を一旦貯湯タンク2の外部に出し、貯湯タンク2の上端近傍に内管26の開口部28を形成して、開口部28近傍の内管26に開口温度センサ54を設置する構成が考えられ、このような構成にすることで、浴槽水と熱交換して低下した湯水の温度を正確に検出することが可能となり、貯湯タンク2上部に流入する湯水の温度が高温水以下になる事態を確実に防止できるので使用可能な高温水の確保を確実に行え、かつ中温水の発生を抑えることでCOPが向上する
【0048】
また、風呂熱交換器25近傍の湯水が65℃より低い場合の追い焚き運転において、内管26を流動する湯水と外管27を流動する浴槽水が並行流であることから、熱交換により加熱された浴槽水の温度を検出する熱交出口温度センサ38での検出温度が65℃以上であれば、内管26の開口部28から貯湯タンク2上部に流入する湯水の温度が65℃以上となるので、熱交出口温度センサ38で検出される浴槽水の温度によって圧縮機8とヒーポン循環ポンプ16の駆動の制御、又は風呂バイパス弁34の開度を調節することで貯湯タンク2上部に高温水を流入させることも可能である。
【0049】
以上のように、風呂の追い焚き運転を行う際、貯湯タンク2内に設置された風呂熱交換器25近傍の温度から高温水の有無を判断し、高温水が存在しない場合、ヒーポン循環ポンプ16を駆動させ風呂熱交換器25の内管26にヒートポンプユニット3内で加熱された湯水を流入することで、貯湯タンク2内に貯湯された湯水の温度に関わらず浴槽水の加熱が可能となり、風呂熱交換器25の内外から浴槽水を加熱することができるので追い焚き運転に要する時間を短縮することができ、更に、内管26の開口部28から貯湯タンク2上部に流入する湯水の温度を開口温度センサ54で検出し、圧縮機8の出力やヒーポン循環ポンプ16の駆動を制御する、又は風呂バイパス弁34の開度を調節して高温水以下の温度にならないようにすることで、追い焚き運転に要する時間の短縮かCOPの向上で使用者が優先する事項に合った動作を行うため利便性が向上する。
【0050】
また、風呂熱交換器25近傍に高温水が存在し浴槽水温度が低い場合、ヒーポン循環回路15内に設置された第1切替弁45と第2切替弁47を切り替えてヒーポン循環ポンプ16を駆動させる切替管路追い焚き運転を実行することで、内管26を流動する貯湯タンク2上部の高温水と外管27を流動する浴槽水との間で熱交換がなされるので、浴槽水を熱交換器の内外から加熱することで追い焚き運転に要する時間を短縮することができ、更に、ヒーポン温度センサ17で検出される温度が所定温度以下になるようヒーポン循環ポンプ16の駆動を制御することで、追い焚き運転に要する時間の短縮かCOPの向上で使用者が優先する事項に合わせた動作を行うため利便性が向上する。
【符号の説明】
【0051】
1 貯湯タンクユニット
2 貯湯タンク
3 ヒートポンプユニット
6 浴槽
13 ヒーポン往き管
14 ヒーポン戻り管
15 ヒーポン循環回路
16 ヒーポン循環ポンプ
17 ヒーポン温度センサ
25 風呂熱交換器
26 内管
27 外管
28 開口部
29 風呂循環回路
30 風呂循環ポンプ
31 風呂往き管
32 風呂戻り管
44 貯湯温度センサ
45 第1切替弁
46 第1切替管路
47 第2切替弁
48 第2切替管路
54 開口温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、該貯湯タンク内の湯水を加熱するヒートポンプ式加熱手段と、前記貯湯タンク下部と前記ヒートポンプ式加熱手段とを接続するヒーポン往き管と、前記ヒートポンプ式加熱手段と前記貯湯タンク上部とを接続するヒーポン戻り管と、前記ヒーポン往き管と前記ヒーポン戻り管とで構成されるヒーポン循環回路と、該ヒーポン循環回路に設置され湯水を搬送するヒーポン循環ポンプと、前記貯湯タンク内に設置され高温水と熱交換して浴槽水を昇温する風呂熱交換器と、前記浴槽内の浴槽水を前記風呂熱交換器内に流入させる風呂往き管と、該風呂熱交換器で熱交換された浴槽水を浴槽へ流入させる風呂戻り管と、前記風呂往き管と前記風呂戻り管とで構成される風呂循環回路と、前記風呂循環回路内に設置され浴槽水を搬送する風呂循環ポンプとを備え、前記風呂循環ポンプを駆動して前記浴槽水を前記風呂熱交換器内に循環させて昇温する追い焚き運転を行うヒートポンプ式給湯機において、前記風呂熱交換器は内管と外管とで構成された二重管構造であり、内管は前記ヒーポン戻り管と一端が接続し他端が前記貯湯タンク内に開口した開口部を形成し、外管は前記風呂循環回路に両端が接続していることを特徴としたヒートポンプ式給湯機。
【請求項2】
前記風呂熱交換器を構成する内管の前記開口部から前記貯湯タンク内に流入する湯水の温度を検出する開口温度センサを設置し、前記追い焚き運転時に、前記ヒートポンプ式加熱手段による加熱動作を行い前記ヒーポン循環ポンプを駆動させ、前記内管を流動する湯水の温度又は前記外管を流動する浴槽水の流量を制御して、前記開口温度センサでの検出温度が所定温度以上の高温水となるようにすることを特徴とする請求項1記載のヒートポンプ式給湯機。
【請求項3】
前記貯湯タンクの上下に所定の間隔で配置され各温度層の温度をそれぞれ検出する貯湯温度センサと、前記浴槽水の温度を検出する風呂温度センサと、前記ヒーポン戻り管に前記貯湯タンク下部と接続する第1切替管路へ流路を切り替え可能な第1切替弁と、前記ヒーポン往き管に前記第1切替弁より下流側の前記ヒーポン戻り管に接続する第2切替管路へ流路を切り替え可能な第2切替弁とを設置して、前記追い焚き運転時に、前記貯湯温度センサで検出された前記風呂熱交換器近傍の温度が高温であり、前記風呂温度センサで検出された浴槽水の温度が低温であれば、前記第1切替弁を前記第1切替管路方向に切り替え、前記第2切替弁を前記第2切替管路方向に切り替えて、前記ヒートポンプ式加熱手段による加熱動作を行わず前記ヒーポン循環ポンプを駆動する切替管路追い焚き運転を行うことを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載のヒートポンプ式給湯機。
【請求項4】
前記ヒーポン循環回路に湯水の温度を検出するヒーポン温度センサを設置して、前記切替管路追い焚き運転時に、前記ヒーポン温度センサで検出された温度が設定された所定温度以上となったら前記ヒーポン循環ポンプの駆動を停止することを特徴とする請求項3記載のヒートポンプ式給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−149796(P2012−149796A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7484(P2011−7484)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)
【Fターム(参考)】