説明

ヒートポンプ式給湯機

【課題】沸き上げ運転終了直前の貯湯タンク下部の中温水を中温蓄熱材を通過させることで蓄熱し、この熱で凍結予防運転時の低温水を加熱するヒートポンプ式給湯機を提供する。
【解決手段】貯湯タンク2下部の湯水を循環ポンプ10を駆動して、ヒーポン往き管9、水冷媒熱交換器5、ヒーポン戻り管12、バイパス管14、貯湯タンク2下部に戻す循環をさせて凍結を防止する凍結予防運転を行わせる給湯制御部27とを備えたもので、前記ヒーポン往き管9、水冷媒熱交換器5、ヒーポン戻り管12の流路切換手段13までの回路途中には、沸き上げ運転終了直前の20℃〜30℃の中温水温度を蓄熱する中温蓄熱材33を備え、凍結予防運転時の低温水を加熱するようにしたので、電力消費が抑えられ極めて経済的で無駄のない使用が出来るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヒートポンプユニットにより湯を沸き上げてこれを貯湯するヒートポンプ式給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種のヒートポンプ式給湯機では、ヒーポンユニットからのヒーポン戻り管に流路切換手段を介して貯湯タンク下部に戻るバイパス管を接続し、低外気温時に凍結防止の為に、循環ポンプを駆動して貯湯タンク下部の低温水を、ヒーポン往き管、ヒーポンユニット内の水冷媒熱交換器、ヒーポン戻り管、バイパス管を介して貯湯タンク下部へと戻る循環を繰り返す、凍結予防運転を行うものであった。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−32150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこの従来のものでは、外気温が更に低下し、低温水の上記循環回路の循環だけでは凍結する恐れがある時には、ヒートポンプユニットを駆動して低温水を加熱して凍結を防止するものであるが、電力が消費されて省エネにはならないと言う課題を有するものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記課題を解決するために、特にその構成を、湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク内の湯水を加熱する水冷媒熱交換器を備えたヒートポンプユニットと、前記貯湯タンク内下部の湯水を前記水冷媒熱交換器に流入させるヒーポン往き管と、前記水冷媒熱交換器で加熱された高温水を貯湯タンクの上部に戻すヒーポン戻り管と、前記貯湯タンクの湯水をヒートポンプユニットの水冷媒熱交換器との間で循環させる循環ポンプと、前記ヒーポン戻り管の途中に流路切換手段を介して接続され湯水を貯湯タンク下部に戻すバイパス管と、前記貯湯タンク下部からの湯水を循環ポンプ及びヒートポンプユニットを駆動して加熱し貯湯タンク上部に戻す運転を繰り返して、貯湯タンク内の湯水を沸き上げる沸き上げ運転と、貯湯タンク下部の湯水を循環ポンプを駆動して、ヒーポン往き管、水冷媒熱交換器、ヒーポン戻り管、バイパス管、貯湯タンク下部に戻す循環をさせて凍結を防止する凍結予防運転を行わせる給湯制御部とを備えたものに於いて、前記ヒーポン往き管、水冷媒熱交換器、ヒーポン戻り管の流路切換手段までの回路途中には、沸き上げ運転終了直前の中温水の温度を蓄熱する中温蓄熱材を備え、凍結予防運転時の低温水を加熱するようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、沸き上げ運転終了直前の20℃〜30℃の中温水の熱を中温蓄熱材が蓄熱することで、温度低下した湯水が水冷媒熱交換器で加熱されるので、効率が向上するものであり、又凍結予防運転で中温蓄熱材を貯湯タンク内の低温水が通過することで、加熱されて温度上昇しながら循環するので、外気温が低下してもヒートポンプユニットを駆動する必要がなく、電力消費が抑えられ極めて経済的で無駄のない使用が出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】この発明の一実施形態のヒートポンプ式給湯機の概略構成図。
【図2】同凍結予防運転状態を説明する概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次にこの発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
1は湯水を貯湯する貯湯タンク2等を収納する貯湯タンクユニット、3は貯湯タンク2内の湯水を加熱する加熱手段としてのヒートポンプユニットで、内部には圧縮機4と凝縮器としての水冷媒熱交換器5と減圧装置としての電子膨張弁6と強制空冷式の蒸発器7とで構成され、このヒートポンプユニット3の冷凍サイクルには冷媒として二酸化炭素が用いられて超臨界ヒートポンプサイクルを構成しているものである。また、前記圧縮機4や電子膨張弁6等によりヒートポンプサイクルを駆動制御するヒーポン制御部8を設けている。
【0009】
9は前記貯湯タンク2の下部と水冷媒熱交換器5を接続するヒーポン往き管で、循環ポンプ10が取り付けられている。
11は前記貯湯タンク2の下部に水道を接続し、水道水を供給する給水管である。
12は前記水冷媒熱交換器5と貯湯タンク2の上部とを接続するヒーポン戻り管である。
【0010】
13は前記ヒーポン戻り管12の途中に備えられた三方弁からなる流路切換手段で、ヒーポン側の第1ヒーポン戻り管12aからの湯水をタンク側の第2ヒーポン戻り管12bに流すか、貯湯タンク2下部と連通するバイパス管14に流すかを切替るもので、後述する外気温センサにより凍結危険温度が検知されると、循環ポンプ10が駆動され流路切換手段13は第1ヒーポン戻り管12aからの湯水をバイパス管14側に流し、貯湯タンク2下部からヒーポン往き管9、水冷媒熱交換器5、第1ヒーポン戻り管12a、バイパス管14から貯湯タンク2下部に戻る循環を繰り返して凍結を防止するものであり、又貯湯タンク2下部の湯水をヒートポンプユニット3及び循環ポンプ10の駆動で水冷媒熱交換器5を流通させることによる沸き上げ運転の開始時には、まだ温度上昇していない低温水を貯湯タンク2上部の高温水に混入させるのを防止する為、後述する水冷媒熱交換器5の出口温度センサが所定温度を検知したら、第1ヒーポン戻り管12aからの湯水を初めて第2ヒーポン戻り管12b側に流すように流路を切替るものであり、貯湯タンク2下部からヒーポン往き管9、水冷媒熱交換器5、ヒーポン戻り管12から貯湯タンク2上部へと湯水を循環させて沸き上げるものである。
【0011】
15は前記貯湯タンク2の上部に接続され貯湯されている高温水を出湯する出湯管、16は前記給水管11から出湯側へ水道水を導く給水バイパス管、17は前記出湯管15からの湯水と前記給水バイパス管16からの水道水を給湯設定温度に混合する給湯混合弁、18は前記給湯混合弁17から給湯栓19に湯を供給する給湯管である。
【0012】
20は給湯管18に設けた給湯温度センサ、21は出湯管15に設け一日の出湯量をカウントする出湯流量センサ、22は前記給水管11に備えられ手動で給水の開閉を行う止水栓。23は前記給水管11に備えられ水道圧を減圧する減圧弁、24は前記給水バイパス管16と貯湯タンク2とを結ぶ給水管11途中に備えられた逆止弁で、貯湯タンク2内及びバイパス管14の湯水が水道側に逆流することを防止する。
【0013】
25は前記出湯管15に接続された過圧逃し弁、26は台所等に設置され、給湯装置の運転停止や給湯温度の設定や各種運転モードの設定を行うリモコンで、前記貯湯タンクユニット1と接続されている。27は前記ヒーポン制御部8やリモコン26と接続され給湯装置全体の制御を行う給湯制御部で、貯湯タンク2内の湯水の沸き上げ運転や凍結予防運転も制御するものである。
【0014】
28は前記貯湯タンク2の側面上下方向に多数のサーミスタセンサを備えた貯湯温度センサで、貯湯タンク2内の湯水の温度と湯量を検知するものである。
29は前記蒸発器7の熱交換を行うためにプロペラファンにて送風する送風機、30は前記蒸発器7の風上側に設けられ外気温を測定する外気温センサ、31は前記水冷媒熱交換器5とヒーポン往き管9の接続部分に設けた入口温度センサで、加熱する前の冷水温度を検知する。32は前記水冷媒熱交換器5とヒーポン戻り管12接続部分に設けた出口温度センサで、加熱後の湯水温度を検知するものである。
【0015】
33はヒーポン往き管9の途中に備えられた中温蓄熱材で、ヒーポン往き管9を覆って設けられ、固体状態の中温蓄熱材が沸き上げ運転終了直前の20℃〜30℃の中温水温度を吸熱して液体状態に相変化して蓄熱し、そして凍結予防運転で貯湯タンク2下部の5℃〜10℃の低温水の循環時には、この蓄熱した20℃〜30℃の熱で低温水を徐々に加熱して中温蓄熱材33は固体状態に戻るものであり、凍結の危険を有した低温水が温度上昇されて、エネルギー効率(COP)が向上すると共に、ヒートポンプユニット3を駆動させることなく、低温水の温度を可能としたので、電力の消費量を増やすことなく極めて経済的に凍結予防が行われるものである。
【0016】
前記リモコン26には押圧式の電源スイッチ34、給湯設定温度を設定する温度設定スイッチ35、浴槽(図示せず)への湯張りを指示する湯張りスイッチ36、湯張り量を設定する湯張り量設定スイッチ37、及び給湯可能な残時間を表示させる残時間表示スイッチ38とを有した操作部39と、ドットマトリクス型の蛍光表示管よりなる表示部40と、これら操作部39及び表示部40を制御すると共に、前記給湯制御部27と通信を行うマイクロコンピュータを主に構成されたリモコン制御部(図示せず)を備えており、通常運転時は前記表示部40に操作部39で設定された給湯設定温度や時刻情報および貯湯温度センサ29で検知する残り貯湯量等が表示されるものである。なお、前記表示部40はドットマトリクス型の液晶表示部としても良い。
【0017】
ここで、給湯機の電源は時間帯別電灯であり、夜間(ここでは23時から翌朝7時まで)が割安な電力料金設定となっているもので、この割安な夜間電力を用いて夜間に一日に必要な貯湯熱量を沸き上げて使用するものであり、また、この時間帯別電灯では昼間(7時から23時まで)にも電力は供給され、残湯量が少なくなったときに追加の沸き増しが行われるものであり、更に沸き上げ運転中に、外気温センサ30が凍結危険温度以下を検知しても、沸き上げ運転中で凍結の危険がないので、凍結予防運転には入らないようにしているものである。
【0018】
次にこの一実施形態の作動を説明すれば、上記の時間帯で給湯制御部27からの制御信号により、沸き上げ運転が開始される。
この沸き上げ運転は、ヒートポンプユニット3及び循環ポンプ10の駆動で、貯湯タンク2下部の低温水をヒーポン往き管9から水冷媒熱交換器5に流入させ、ここで加熱した高温水をヒーポン戻り管12を介して貯湯タンク2上部に戻し、順次この循環を繰り返して貯湯タンク2内に高温水を貯湯して沸き上げ運転を終了するものである。
【0019】
しかしこの沸き上げ運転終了直前では、高温水と低温水の境界層が下部に低下していることにより、20℃〜30℃の中温水がヒーポン往き管9を介して水冷媒熱交換器5に供給されようとするが、この時ヒーポン往き管9には中温蓄熱材33が備えられているので、固体状態の中温蓄熱材33が20℃〜30℃の中温を吸熱して液体状態となって蓄熱するので、熱を奪われる中温水は低温水となり水冷媒熱交換器5で熱交換することで、エネルギー効率(COP)が向上するものである。
【0020】
又沸き上げ運転終了後に外気温が低下し外気温センサ30が凍結危険温度以下を検知した場合には、給湯制御部27が循環ポンプ10のみを駆動させると共に、流路切換手段13を第2ヒーポン戻り管12b側からバイパス管14側に流路切換させ、貯湯タンク2下部の5℃〜10℃の低温水をヒーポン往き管9、水冷媒熱交換器5、第1ヒーポン戻り管12a、流路切換手段13、バイパス管14から貯湯タンク2下部に戻す流通をする中で、ヒーポン往き管9途中の中温蓄熱材33が液体状態から固体状態に戻ることによる放熱により、該ヒーポン往き管9を流通する低温水が徐々に加熱されて、水冷媒熱交換器5、第1ヒーポン戻り管12a、流路切換手段13、バイパス管14から貯湯タンク2下部に戻るので、ヒートポンプユニット3の駆動による加熱を極力抑えることが出来、電力消費量が少なくて経済的な運転が行えるものである。
【符号の説明】
【0021】
2 貯湯タンク
3 ヒートポンプユニット
5 水冷媒熱交換器
9 ヒーポン往き管
10 循環ポンプ
13 流路切換手段
14 バイパス管
12 ヒーポン戻り管
27 給湯制御部
30 外気温センサ
33 中温蓄熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク内の湯水を加熱する水冷媒熱交換器を備えたヒートポンプユニットと、前記貯湯タンク内下部の湯水を前記水冷媒熱交換器に流入させるヒーポン往き管と、前記水冷媒熱交換器で加熱された高温水を貯湯タンクの上部に戻すヒーポン戻り管と、前記貯湯タンクの湯水をヒートポンプユニットの水冷媒熱交換器との間で循環させる循環ポンプと、前記ヒーポン戻り管の途中に流路切換手段を介して接続され湯水を貯湯タンク下部に戻すバイパス管と、前記貯湯タンク下部からの湯水を循環ポンプ及びヒートポンプユニットを駆動して加熱し貯湯タンク上部に戻す運転を繰り返して、貯湯タンク内の湯水を沸き上げる沸き上げ運転と、貯湯タンク下部の湯水を循環ポンプを駆動して、ヒーポン往き管、水冷媒熱交換器、ヒーポン戻り管、バイパス管、貯湯タンク下部に戻す循環をさせて凍結を防止する凍結予防運転を行わせる給湯制御部とを備えたものに於いて、前記ヒーポン往き管、水冷媒熱交換器、ヒーポン戻り管の流路切換手段までの回路途中には、沸き上げ運転終了直前の中温水の温度を蓄熱する中温蓄熱材を備え、凍結予防運転時の低温水を加熱するようにした事を特徴とするヒートポンプ式給湯機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−172944(P2012−172944A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37768(P2011−37768)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)