説明

ヒートポンプ式給湯機

【課題】本発明の課題は、冷凍サイクルの上限圧力値を超えないように、沸上げ運転を行うことができ、信頼性の向上を図ったヒートポンプ式給湯機を提供することにある。
【解決手段】本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機4と、前記圧縮機4から吐出される高温高圧の冷媒により水を加熱する水−冷媒熱交換器5と、前記水−冷媒熱交換器5から減圧弁6を介して流入する低温低圧の冷媒を空気と熱交換させて前記圧縮機4に戻す蒸発器7と、を備えるヒートポンプ式給湯機Sにおいて、前記圧縮機4の回転速度の大きさに応じて設定されるヒートポンプ式給湯機Sの使用上限圧力を超えないように、前記圧縮機4から吐出される冷媒の圧力を設定する保護手段を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ式給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、深夜電力等を利用してヒートポンプサイクルを駆動し、低温水を加熱して所望の温度の湯を貯湯タンクに貯える沸上げ機能を備えたヒートポンプ式給湯機が知られている。このようなヒートポンプ式給湯機は、ヒートポンプサイクル内に設けられた水−冷媒熱交換器と貯湯タンクとを配管にて接続し、接続した配管内に貯湯タンク内の水を循環させている。そして、ヒートポンプ式給湯機は、水−冷媒熱交換器における貯湯タンクの水と冷凍サイクルの冷媒との熱交換によって沸上げを行なっている。このようなヒートポンプ式給湯機では、圧縮機や冷凍サイクルの構造に応じて、運転時の許容上限圧力を有している。
【0003】
一方、ヒートポンプ式給湯機は、水−冷媒熱交換器を流れる水の質量流量や温度、外気温度、外気湿度といった外環境の影響により、沸上げ運転時の圧力が変化する。そのため、沸上げ運転時の圧力が、外環境によってヒートポンプ式給湯機自体に定められている上限圧力に達する問題がある。
このような問題に対応するために、沸上げ運転時の圧力が上限圧力に達すると作動する圧力スイッチを冷凍サイクル内に設け、この圧力スイッチが作動することで、圧縮機の運転を停止するヒートポンプ制御システムが開示されている(特許文献1参照)。
また、外環境条件に基づいて決定した目標圧力となるように沸上げ運転時の冷凍サイクルを制御するヒートポンプ式給湯機が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−071600号公報
【特許文献2】特開2009−052880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のヒートポンプ制御システムにおいては、前記した上限圧力が、圧縮機の運転時の負荷との間に相関を有している。そのため、圧縮機の信頼性を考えた場合には、圧縮機の回転速度に応じて前記した上限圧力を変化させる必要がある。しかしながら、このヒートポンプ制御システムでの圧力スイッチは、検出できる圧力が一点しか無いために、上限圧力の変化に対応できずに圧縮機の信頼性の面で問題があった。
また、特許文献2のヒートポンプ式給湯機では、外環境条件に基づいて決定した目標圧力自体が上限圧力よりも高い値となる場合がある。
したがって、冷凍サイクルの上限圧力を超えないように、沸上げ運転を行うことができ、信頼性の向上を図ったヒートポンプ式給湯機が望まれている。
【0006】
そこで、本発明の課題は、冷凍サイクルの上限圧力を超えないように、沸上げ運転を行うことができ、信頼性の向上を図ったヒートポンプ式給湯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機から吐出される高温高圧の冷媒により水を加熱する水−冷媒熱交換器と、前記水−冷媒熱交換器から減圧弁を介して流入する低温低圧の冷媒を空気と熱交換させて前記圧縮機に戻す蒸発器と、を備えるヒートポンプ式給湯機において、前記圧縮機の回転速度の大きさに応じて設定されるヒートポンプ式給湯機の使用上限圧力を超えないように、前記圧縮機から吐出される冷媒の圧力を設定する保護手段を備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記課題を解決する本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機から吐出される高温高圧の冷媒により水を加熱する水−冷媒熱交換器と、前記水−冷媒熱交換器から減圧弁を介して流入される低温低圧の冷媒を空気と熱交換させて前記圧縮機に戻す蒸発器と、給水源に連通された貯湯タンクと、前記貯湯タンクの水を抜き出して前記水−冷媒熱交換器に送り出す送出配管、及び前記水−冷媒熱交換器から前記貯湯タンクに水を戻す戻し配管を有する循環路と、前記循環路内の水を循環させる水循環装置と、前記圧縮機から吐出される冷媒の圧力を検出する圧力検出手段と、外気温度、沸上げ目標温度、及び水−冷媒熱交換器の入口水温度の少なくともいずれか一つにより算出される前記圧縮機の目標吐出冷媒圧力に、前記圧力検出手段で検出される圧力が近づくように、前記圧縮機の回転速度、前記減圧弁の開度、及び前記水循環装置の少なくともいずれか一つを制御する制御部と、を備えるヒートポンプ式給湯機であって、前記制御部は、前記圧縮機の回転速度の大きさに応じて設定されるヒートポンプ式給湯機の使用上限圧力よりも、前記目標吐出冷媒圧力が高くなると判定した場合に、前記使用上限圧力よりも低い修正目標吐出冷媒圧力を新たに設定すると共に、前記圧力検出手段で検出される圧力がこの修正目標吐出冷媒圧力に近づくように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、冷凍サイクルの上限圧力値を超えないように、沸上げ運転を行うことができ、信頼性の向上を図ったヒートポンプ式給湯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るヒートポンプ式給湯機の構成説明図である。
【図2】本発明の実施形態での圧縮機の回転速度と使用上限圧力との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の実施形態に係るヒートポンプ式給湯機の沸上げ運転時に、制御部が減圧弁及び圧縮機を制御する手順を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係るヒートポンプ式給湯機の他の動作例を示すグラフであり、水−冷媒熱交換器に流入する水温度(入口水温度)と、圧縮機の目標吐出冷媒圧力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。本発明のヒートポンプ式給湯機は、圧縮機の回転速度の大きさに応じて設定されるヒートポンプ式給湯機の使用上限圧力を超えないように、圧縮機から吐出される冷媒の圧力を設定する保護手段を備えることを主な特徴とする。
以下では、本発明の実施形態に係るヒートポンプ式給湯機の全体構成について説明した後に、前記した保護手段を構成する制御部について更に具体的に説明する。
【0012】
図1に示すように、ヒートポンプ式給湯機Sは、ヒートポンプユニット1とタンクユニット2とを備えている。ちなみに、ヒートポンプユニット1とタンクユニット2とは、ヒートポンプ式給湯機Sが現場に配置される際に、接続配管3a,3bによって連結される構造となっている。
【0013】
前記ヒートポンプユニット1の冷凍サイクルは、圧縮機4と、水−冷媒熱交換器5と、減圧弁6と、蒸発器7と、制御部20と、で主に構成されている。そして、圧縮機4、水−冷媒熱交換器5、減圧弁6、及び蒸発器7は、この順番で冷媒が循環するように配管で環状に連結されている。なお、本実施形態での冷媒としては、二酸化炭素が使用されている。そして、ヒートポンプユニット1では、圧縮機4より吐出される冷媒(二酸化炭素)の吐出圧力が臨界圧力以上となる超臨界蒸気圧縮式のヒートポンプサイクルを使用している。
【0014】
圧縮機4は、環状の回路から戻ってきた冷媒を圧縮すると共に、圧縮した高温高圧のガス冷媒(以下、ホットガスということがある)を再び環状の回路に送り出している。更に具体的には、蒸発器7から戻ってきた冷媒を圧縮して水−冷媒熱交換器5に向かって送り出している。
【0015】
圧縮機4は、容量制御が可能で、高温貯湯(例えば、90℃)を行う場合は、通常よりも速い回転速度(例えば3000〜4000回転/分)で運転する。また、通常の貯湯温度(例えば、65℃)で運転する場合は、比較的遅い回転速度(例えば1000〜2000回転/分)で運転する。また、圧縮機4は、PWM制御、電圧制御(例えばPAM制御)及びこれらの組み合わせ制御により、低速(例えば700回転/分)から高速(例えば6000回転/分)まで回転速度の制御が行えるようになっている。
【0016】
また、圧縮機4には、圧縮機4の高圧側冷媒温度(圧縮機吐出冷媒温度)を検出する圧縮機温度センサ13が設けられている。そして、圧縮機4と次に説明する水−冷媒熱交換器5とを接続する配管には、圧縮機4寄りに、圧縮機4の高圧側冷媒圧力(圧縮機吐出冷媒圧力)を検出する圧力センサ14が設けられている。ちなみに、この配管は、水−冷媒熱交換器5の塔頂側で、次に説明する冷媒伝熱管2aの入口と接続されている。
【0017】
水−冷媒熱交換器5は、凝縮器として機能するものであり、圧縮機4から吐出されたホットガスを流通させる冷媒伝熱管2aと、水を流通させる水伝熱管2bとを備えている。これらの冷媒伝熱管2a及び水伝熱管2bは、冷媒と水とが相互に熱交換するよう密着して設けられている。
【0018】
減圧弁6は、水−冷媒熱交換器5と蒸発器7との間に配置される配管の途中に設けられており、電動膨張弁が使用されている。この減圧弁6は、水−冷媒熱交換器5からの中温高圧冷媒を減圧し、蒸発し易い低温低圧の冷媒として蒸発器7に送り出している。そして、減圧弁6は、絞り開度(開閉度合い)が調節可能となっており、制御部20がこの絞り開度を変えてヒートポンプユニット1での冷媒循環量を調節している。そして、制御部20は、後記するように、減圧弁6の絞り開度を変えることで、圧縮機4の吐出冷媒圧力を調節することとなる。
ちなみに、減圧弁6は、蒸発器7に着霜した場合に、絞り開度を全開にしてデフロストを行うようにも働く。
【0019】
蒸発器7は、ファン8の回転によって外気を取り入れた空気(送風)と、蒸発器7内を流通する低温低圧の冷媒との熱交換を行って、外気から熱を汲み上げるものである。そして、冷媒は、この蒸発器7から圧縮機4に戻されることとなる。
【0020】
符号17は、外気温度を検出する温度センサであり、本実施形態での外気温度センサ17は、蒸発器7に流入する空気の温度を検出するように、ファン8が形成する空気流の下流側に配置されている。なお、制御部20は、後記するように、この外気温度センサ17の検出する温度を参照要素の一つとして、圧縮機4の目標吐出冷媒圧力値を算出することとなる。
【0021】
符号36は、特許請求の範囲にいう「戻し配管」であり、戻し配管36の一端は、水−冷媒熱交換器5の水伝熱管2bの出口に接続されている。この戻し配管36は、冷媒で加熱された水(湯)を水−冷媒熱交換器5から後記する貯湯タンク9に戻すものである。戻し配管36の水−冷媒熱交換器5寄りには、水−冷媒熱交換器5の出口水温度を検出する熱交換器出口水温度センサ16が設けられている。この戻し配管36は、前記した接続配管3a及び後記の配管12bを介して貯湯タンク9の塔頂部側と接続されることとなる。
【0022】
符号35は、特許請求の範囲にいう「送出配管」であり、送出配管35は、前記冷媒で加熱される水を水−冷媒熱交換器5に送り出すものである。送出配管35の一端は、水−冷媒熱交換器5の水伝熱管2bの入口に接続されている。この送出配管35は、前記した接続配管3b及び後記の配管11bを介して貯湯タンク9の底部側と接続されることとなる。
【0023】
この送出配管35には、循環ポンプ10が、水−冷媒熱交換器5の下流側に配置されている。なお、本実施形態での循環ポンプ10は、貯湯タンク9の水を水伝熱管2bの入口側に送り込むように駆動する。この循環ポンプ10は、後記する循環路Cで水を循環させるように機能し、特許請求の範囲にいう「水循環装置」に相当する。ちなみに、循環ポンプ10は、後記する制御部20によって、循環路C内での水の流量(質量流量)、流速及び圧力が自由に選択できるように構成されている。
【0024】
また、送出配管35の水−冷媒熱交換器5寄りには、熱交換器入口水温度センサ15が設けられている。この熱交換器入口水温度センサ15は、水−冷媒熱交換器5の入口で水の温度を検出するものである。
【0025】
次に、このようなヒートポンプユニット1と共にヒートポンプ式給湯機Sを構成するタンクユニット2について説明する。
タンクユニット2は、水(湯)を貯蔵する貯湯タンク9を備えている。
この貯湯タンク9の塔頂部には、前記したように、水−冷媒熱交換器5の塔頂部における水伝熱管2bの出口から送り出される水(湯)が、配管12bを介して流れ込むようになっている。そして、この貯湯タンク9の底部からは、前記したように、配管11bを介して、水−冷媒熱交換器5の水伝熱管2bの入口に水が流れ込むようになっている。
【0026】
つまり、水−冷媒熱交換器5から貯湯タンク9に湯を送り出すと共に、貯湯タンク9の水を水−冷媒熱交換器5に送り出すように、配管36,3a,12b,11b,3b,35が、水−冷媒熱交換器5と貯湯タンク9とを接続することで、水(湯)の循環路Cを形成している。
また、貯湯タンク9の底部には給水配管11aを介して水道等の給水源(図示省略)が接続され、貯湯タンク9の塔頂部には、貯湯タンク9内の湯を導出して所定の給湯栓(図示省略)に給湯する給湯配管12aが接続されている。なお、図示しないが、給水配管11aから分岐すると共に、所定の湯水混合弁を介して給湯配管12aに合流するように分岐配管を設ける構成とすることもできる。このような分岐配管によれば、湯水混合弁の開口度合いに応じて、給水配管11aから給湯配管12aに流れ込む水の量を調節することで、前記した給湯栓から出る湯の温度を調節することができる。
【0027】
制御部20は、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路等を含んで構成されており、その内部に記憶されたプログラムに従って、本実施形態に係るヒートポンプ式給湯機Sを総合的に制御するようになっている。
【0028】
また、制御部20は、圧縮機4の回転速度を熱交換器出口水温度センサ16で検出される水−冷媒熱交換器5の出口水温度に基づいて制御する。具体的には、制御部20は、熱交換器出口水温度センサ16で検出される温度が、予め設定された出口水温度の目標値(目標温水温度)となるように、圧縮機4の回転速度を制御する。つまり、目標値に対して熱交換器出口水温度センサ16の検出温度(計測値)が低い場合には圧縮機4の回転速度を速め、これとは逆に検出温度(計測値)が高い場合には圧縮機4の回転速度を遅くする。
【0029】
また、制御部20は、循環ポンプ10が水−冷媒熱交換器5の水伝熱管2bに送り込む水の量を、予め求めた圧縮機4の目標回転速度に基づいて制御する。具体的には、圧縮機4の目標回転速度に対して実回転速度が遅い場合には、水伝熱管2bに送り込まれる水の量が増えるように循環ポンプ10を制御し、これとは逆に圧縮機4の実回転速度が速い場合には、水伝熱管2bに送り込まれる水の量が減るように循環ポンプ10を制御する。
【0030】
そして、制御部20は、後に詳しく説明するように、圧縮機4の吐出冷媒圧力が、圧縮機4の回転速度の大きさに応じて設定されるヒートポンプ式給湯機Sの「使用上限圧力」を超えないように制御するように構成されている。
【0031】
一般に、「使用上限圧力」の用語は、これ以上の圧力を掛けた場合に、正常に作動しなくなる虞がある上限の圧力を意味するが、本実施形態での「使用上限圧力」は、前記したように、圧縮機4の回転速度の大きさに応じて設定される変動値である。
本実施形態に係るヒートポンプユニット1の冷凍サイクルで規定する「使用上限圧力」は、水−冷媒熱交換器5、圧縮機4、その他接続配管等が破壊されない圧力とすることも考えられるが、圧縮機4は、回転速度に応じてその要素である軸受、ポンプ機構等への圧力による負荷を考慮する必要がある。そのため、本実施形態での「使用上限圧力」は、圧縮機4の回転速度に合わせて変動する値として規定されている。
【0032】
図2は、本発明の実施形態での圧縮機の回転速度と使用上限圧力との関係を示すグラフである。
図2に示すように、ヒートポンプ式給湯機S(ヒートポンプユニット1)の使用上限圧力は、圧縮機4の回転速度(図2の横軸参照)の変化に応じて変化するように構成されている。本実施形態での使用上限圧力は、圧縮機4の回転速度が低速領域に属する場合には、その回転速度が増加するに従って増加し、圧縮機4の回転速度が高速領域に属する場合には、その回転速度が増加するに従って減少する。そして、圧縮機4の回転速度が、低速領域と高速領域との間の中間領域に属する場合には、略一定値となっている。
なお、本発明での「使用上限圧力」は、図2に示すものに限定されずに、例えば、圧縮機4の回転速度に応じて変化するヒートポンプ式給湯機Sの各構成部材(部品)における安全率等を考慮しながら適宜に設定することもできる。
【0033】
また、制御部20は、前記した「使用上限圧力」を超えないよう制御する際に、減圧弁6の開度を、圧力センサ14で検出される圧縮機4の吐出冷媒圧力に基づいて制御する。具体的には、制御部20は、圧力センサ14で検出される吐出冷媒圧力が、後記する目標吐出冷媒圧力、又は修正目標吐出冷媒圧力(上限圧力(I)、上限圧力(II)、上限圧力目標値等)に近づくように減圧弁6の開度を制御する。
なお、特許請求の範囲にいう「保護手段」は、この制御部20、圧力センサ14、各温度センサ13,15,16,17、圧縮機4、減圧弁6、循環ポンプ10を少なくとも含んで構成されている。
【0034】
次に、本実施形態に係るヒートポンプ式給湯機Sの動作について説明する。
このヒートポンプ式給湯機Sでは、貯湯タンク9内に所定の温度で所定の湯量を確保するのに先立って、貯湯タンク9を満たすように水が供給される。この際、貯湯タンク9には、残存する湯に加えられるように、図示しない給水源から給水配管11aを介して水が加えられる。もちろん、貯湯タンク9が空の場合には、その全てが水で満たされる。
以下では、貯湯タンク9に残存する湯と新たに加えられた水とを一緒にして単に「水」ということがある。
【0035】
そして、ヒートポンプ式給湯機Sは、貯湯タンク9が水で満たされてから、貯湯運転工程を実施する。
ヒートポンプ式給湯機Sは、起動した圧縮機4が吐出するホットガス(高温高圧の冷媒)を水−冷媒熱交換器5(凝縮器)の冷媒伝熱管2aに送り込む。冷媒伝熱管2aに送り込まれたホットガスは、水伝熱管2b内の水に熱を放出することで凝縮する。そして、水伝熱管2b内の水はホットガスで加熱される。
【0036】
次いで、水−冷媒熱交換器5(凝縮器)の冷媒伝熱管2aから送り出された中温高圧の冷媒は、減圧弁6(膨張弁)で減圧された後に、蒸発器7に流れ込む。そして、流れ込んだ低温低圧の冷媒は、ファン8から送り込まれた風によって蒸発する際に、水−冷媒熱交換器5を介して外気から熱を汲み上げる。その後、冷媒は、圧縮機4に戻って再び圧縮される。
【0037】
その一方で、貯湯タンク9に満たされた水は、循環ポンプ10が起動することで、送出配管35を介して水−冷媒熱交換器5の水伝熱管2b内に送り込まれる。そして、送り込まれた水は、前記したように、冷媒に加熱されて湯となって、戻し配管36に流れ込む。
戻し配管36に流れ込んだ湯は、貯湯タンク9に戻って貯蔵される。このように貯湯タンク9と水−冷媒熱交換器5との間で水が循環する間に、ヒートポンプ式給湯機Sは、貯湯タンク9内に所定の温度で所定の湯量を確保する。
【0038】
そして、ヒートポンプ式給湯機Sがこのように水の沸上げ運転を行う際に、制御部20は、圧縮機4及び減圧弁6を次のよう制御する。次に参照する図3は、本発明の実施形態に係るヒートポンプ式給湯機の沸上げ運転時に、制御部が減圧弁及び圧縮機を制御する手順を説明するためのフローチャートである。
【0039】
圧縮機4(図1参照)が起動してヒートポンプ式給湯機S(図1参照)が沸上げ運転を開始すると、制御部20(図1参照)は、図3に示すように、目標温水温度と目標吐出冷媒圧力を設定する(ステップS1)。
【0040】
この際、目標温水温度は、熱交換器入口水温度センサ15の検出温度(水−冷媒熱交換器5の水伝熱管2bに送り込まれる水の温度(入口水温度))、水−冷媒熱交換器5の出口水温度の目標値(沸上げ温度、例えば、前記した90℃又は65℃)、水−冷媒熱交換器5に送り込まれる水の質量流量、及び外気温度センサ17の検出温度(外気温度)から選ばれる少なくとも1つに基づいて設定することができる。
【0041】
そして、目標吐出冷媒圧力もまた、熱交換器入口水温度センサ15の検出温度(水−冷媒熱交換器5の水伝熱管2bに送り込まれる水の温度(入口水温度))、水−冷媒熱交換器5の出口水温度の目標値(沸上げ温度、例えば、前記した90℃又は65℃)、水−冷媒熱交換器5に送り込まれる水の質量流量、及び外気温度センサ17の検出温度(外気温度)から選ばれる少なくとも1つに基づいて設定することができる。
【0042】
次に、制御部20は、圧力センサ14にて圧縮機4の吐出冷媒圧力を検出すると共に(ステップS2)、この吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力と等しいか否か(冷媒圧力=目標圧力か)を判断する(ステップS3)。そして、吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力と等しいと判断した場合には(ステップS3のYes)次のステップS5に進み、吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力に等しくないと判断した場合には(ステップS3のNo)、吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力と等しくなるように減圧弁6(図1参照)の開度を修正した後に(ステップS4)、次のステップS5に進む。
【0043】
制御部20は、ステップS5において、熱交換器出口水温度センサ16にて水−冷媒熱交換器5の出口水温度を検出すると共に(ステップS6)、この出口水温度が前記した目標温水温度と等しいか否か(出口水温度=目標温水温度か)を判断する(ステップS6)。そして、出口水温度が目標温水温度と等しいと判断した場合には(ステップS6のYes)次のステップS8に進み、出口水温度が目標温水温度と等しくないと判断した場合には(ステップS6のNo)、出口水温度が目標温水温度と等しくなるように圧縮機4の回転速度の修正した後に(ステップS7)、次のステップS8に進む。
【0044】
制御部20は、ステップS8において、「使用上限圧力」を設定する。この「使用上限圧力」は、前記したように、圧縮機4の回転速度に応じて設定される。つまり、制御部20は、図2の横軸の「圧縮機の回転速度」に対応する縦軸の「使用上限圧力」を求めて設定することとなる。ちなみに、ステップS7を経た場合には、圧縮機4の回転速度は、修正された回転速度により「使用上限圧力」が設定される。
【0045】
次に、ステップS9において、制御部20は、圧力センサ14にて検出した圧縮機4の吐出冷媒圧力が、上限圧力(I)以上か(冷媒圧力値≧上限圧力(I)か)を判断する。
なお、上限圧力(I)は、「使用上限圧力」と次のステップS11における上限圧力(II)に対して、使用上限圧力>上限圧力(II)>上限圧力(I)で示される大小関係を有すると共に、上限圧力(I)は、制御部20の求めた前記の目標吐出冷媒圧力が「使用上限圧力」よりも大きくなると判断した場合に設定される。
ちなみに、「使用上限圧力」と上限圧力(I)との差は、予め安全率等によって適宜に設定される規定値(例えば、0.3MPa)である。また、「使用上限圧力」と上限圧力(II)との差も、予め安全率等によって適宜に設定される規定値(例えば、0.2MPa)である。
【0046】
そして、制御部20は、圧力センサ14にて検出した圧縮機4の吐出冷媒圧力が、上限圧力(I)未満である場合には(ステップS9のNo)次のステップS11に進み、上限圧力(I)以上である場合には(ステップS9のYes)、減圧弁6の開度を予め定めた規定開度だけ開いて保護動作を行った後に(ステップS10)、次のステップS11に進む。
【0047】
制御部20は、ステップS11において、圧力センサ14にて検出した圧縮機4の吐出冷媒圧力が、前記の上限圧力(II)以上か(冷媒圧力値≧上限圧力(II)か)を判断する。
【0048】
そして、制御部20は、圧力センサ14にて検出した圧縮機4の吐出冷媒圧力が、上限圧力(II)未満であると判断した場合には(ステップS11のNo)次のステップS13に進み、上限圧力(II)以上であると判断した場合には(ステップS11のYes)、圧縮機4の回転速度を予め定めた規定速度だけ減速させて(結果的に、圧縮機4の吐出冷媒圧力を低下させて)保護動作を行った後に(ステップS12)、次のステップS13に進む。
【0049】
次に、制御部20は、ステップS13において、圧力センサ14にて検出した圧縮機4の吐出冷媒圧力が、前記の「使用上限圧力」以上か(冷媒圧力値≧使用上限圧力か)を判断する。
【0050】
そして、制御部20は、圧力センサ14にて検出した圧縮機4の吐出冷媒圧力が、「使用上限圧力」未満であると判断した場合には(ステップS13のNo)、ヒートポンプ式給湯機Sに対する運転指令が継続しているか否かを判断して(ステップS14)、継続していると判断した場合には(ステップS14のYes)ステップS1に戻る。そして、継続していないと判断した場合には(ステップS14のNo)、ヒートポンプ式給湯機S(図1参照)は運転を停止して所定の沸上げ運転が終了する。
【0051】
そして、制御部20は、ステップS13において、圧力センサ14にて検出した圧縮機4の吐出冷媒圧力が、「使用上限圧力」以上であると判断した場合には(ステップS13のYes)、圧縮機4の運転を停止し、減圧弁6を起動時の開度に修正することで(ステップS15)、保護動作を行う。
その後、制御部20は、ステップS16において、ヒートポンプ式給湯機Sに対する運転指令が継続しているか否かを判断すると共に、継続していると判断した場合には(ステップS16のYes)圧縮機4を再び起動してから(ステップS17)ステップS1に戻る。そして、継続していないと判断した場合には(ステップS16のNo)、ヒートポンプ式給湯機S(図1参照)は運転を停止して所定の沸上げ運転が終了する。
【0052】
以上のような本発明の実施形態に係るヒートポンプ式給湯機Sによれば、次のような作用効果を奏することができる。
従来のヒートポンプ式給湯機では、水−冷媒熱交換器を流れる水の流量や温度、また外気温度や外気湿度といった外環境の影響により、沸上げ運転時における圧縮機の吐出冷媒圧力が変動することで、冷凍サイクルに規定された許容上限値を上回る虞がある。
これに対して、本実施形態に係るヒートポンプ式給湯機Sでは、圧縮機4の回転速度の大きさに応じて設定される、ヒートポンプ式給湯機Sの「使用上限圧力」は、外環境の影響により圧縮機4の回転速度が変化しても、その変化に応じて「使用上限圧力」も変化する。そして、この「使用上限圧力」よりも規定値を下回る新たに設定した修正目標吐出冷媒圧力に近づくように圧縮機4の吐出冷媒圧力が制御される。
その結果、本実施形態に係るヒートポンプ式給湯機Sによれば、外環境条件が変化しても、冷凍サイクルの上限圧力(使用上限圧力)を超えないように沸上げ運転を行うことができる。そして、本実施形態に係るヒートポンプ式給湯機Sによれば、上限圧力(使用上限圧力)を超えないように沸上げ運転を行うことができるので、信頼性の向上を達成することができる。
【0053】
また、本実施形態に係るヒートポンプ式給湯機Sによれば、目標温水温度となるように、圧縮機4の回転速度が決定された後に、この圧縮機4の回転速度に応じて「使用上限圧力」が設定され、上限圧力(使用上限圧力)を超えないように減圧弁6の開度が制御されるので、要求される沸上げ温度を満足しつつ、安定して沸上げ運転を行うことができる。
【0054】
また、本実施形態に係るヒートポンプ式給湯機Sによれば、使用上限圧力>上限圧力(II)>上限圧力(I)の関係にある、上限圧力(I)を先ず修正目標吐出冷媒圧力として、ヒートポンプ式給湯機Sの保護を図り、次いで、上限圧力(II)を修正目標吐出冷媒圧力として、ヒートポンプ式給湯機Sの保護を図るので、冷凍サイクルの上限圧力(使用上限圧力)を超えないように、より確実にきめ細かく沸上げ運転を行うことができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
前記実施形態では、上限圧力(I)及び上限圧力(II)を修正目標吐出冷媒圧力として、制御部20が圧縮機4の回転速度、及び減圧弁6の開度を制御したが、本発明は更なる上限圧力目標値を設定することができる。
【0056】
図4は、本発明の実施形態に係るヒートポンプ式給湯機の他の動作例を示すグラフであり、水−冷媒熱交換器に流入する水温度(入口水温度)と、圧縮機の目標吐出冷媒圧力との関係を示すグラフである。
図4に示すように、例えば、ヒートポンプ式給湯機Sを高効率に運転させるために、水−冷媒熱交換器5へ流入する水温度(入口水温度)に合わせて目標吐出冷媒圧力を変化させることが考えられる。
そして、水−冷媒熱交換器5の入口水温度(図4の横軸参照)が高くなるにつれて、高効率な運転を行うための目標吐出冷媒圧力(図4の縦軸参照)も高くなる。この際、目標吐出冷媒圧力が「使用上限圧力」を超える虞がある場合には、目標吐出冷媒圧力を「使用上限圧力」値より規定圧力だけ低い上限圧力目標値として運転を行うことができる。
【0057】
ちなみに、上限圧力目標値は、使用上限圧力>前記の上限圧力(II)>前記の上限圧力(I)>上限圧力目標値の関係となる値である。なお、「使用上限圧力」と上限圧力目標値との差は、予め安全率等によって適宜に設定される規定値(例えば、0.5MPa)である。
このような制御とすることで、圧縮機4の吐出冷媒圧力が、より確実に「使用上限圧力」を超えないように修正目標吐出冷媒圧力を規定することができる。
【0058】
また、前記実施形態では、圧力センサ14にて検出した圧縮機4の吐出冷媒圧力が、修正目標吐出冷媒圧力(上限圧力(I)、上限圧力(II)、上限圧力目標値等)に近づくように減圧弁6の開度を制御するように構成されているが、本発明は、圧力センサ14にて検出した吐出冷媒圧力が修正目標吐出冷媒圧力近づくように、圧縮機4の回転速度、減圧弁6の開度、及び循環ポンプ10の少なくともいずれか一つを制御する構成であればよい。また、本発明は圧縮機4の回転速度、減圧弁6の開度、及び循環ポンプ10の少なくともいずれか一つを制御することで、水−冷媒熱交換器5の出口水温度を制御する構成とすることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 ヒートポンプユニット
2 タンクユニット
4 圧縮機(保護手段)
5 水−冷媒熱交換器
6 減圧弁(保護手段)
7 蒸発器
8 ファン
9 貯湯タンク
10 循環ポンプ(水循環装置、保護手段)
11a 給水配管
12a 給湯配管
13 圧縮機温度センサ
14 圧力センサ(圧力検出装置、保護手段)
15 熱交換器入口水温度センサ(保護手段)
16 熱交換器出口水温度センサ(保護手段)
17 外気温度センサ(保護手段)
20 制御部(保護手段)
35 送出配管
36 戻し配管
C 循環路
S ヒートポンプ式給湯機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機から吐出される高温高圧の冷媒により水を加熱する水−冷媒熱交換器と、
前記水−冷媒熱交換器から減圧弁を介して流入する低温低圧の冷媒を空気と熱交換させて前記圧縮機に戻す蒸発器と、
を備えるヒートポンプ式給湯機において、
前記圧縮機の回転速度の大きさに応じて設定されるヒートポンプ式給湯機の使用上限圧力を超えないように、前記圧縮機から吐出される冷媒の圧力を設定する保護手段を備えることを特徴とするヒートポンプ式給湯機。
【請求項2】
請求項1に記載のヒートポンプ式給湯機において、
前記保護手段は、前記圧縮機の回転速度を低下させることで前記圧縮機から吐出される冷媒の圧力が前記使用上限圧力を超えないようにすることを特徴とするヒートポンプ式給湯機。
【請求項3】
請求項1に記載のヒートポンプ式給湯機において、
前記保護手段は、前記減圧弁の開度を大きくすることで前記圧縮機から吐出される冷媒の圧力が前記使用上限圧力を超えないようにすることを特徴とするヒートポンプ式給湯機。
【請求項4】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機から吐出される高温高圧の冷媒により水を加熱する水−冷媒熱交換器と、
前記水−冷媒熱交換器から減圧弁を介して流入される低温低圧の冷媒を空気と熱交換させて前記圧縮機に戻す蒸発器と、
給水源に連通された貯湯タンクと、
前記貯湯タンクの水を抜き出して前記水−冷媒熱交換器に送り出す送出配管、及び前記水−冷媒熱交換器から前記貯湯タンクに水を戻す戻し配管を有する循環路と、
前記循環路内の水を循環させる水循環装置と、
前記圧縮機から吐出される冷媒の圧力を検出する圧力検出手段と、
外気温度、沸上げ目標温度、及び水−冷媒熱交換器の入口水温度の少なくともいずれか一つにより算出される前記圧縮機の目標吐出冷媒圧力に、前記圧力検出手段で検出される圧力が近づくように、前記圧縮機の回転速度、前記減圧弁の開度、及び前記水循環装置の少なくともいずれか一つを制御する制御部と、
を備えるヒートポンプ式給湯機であって、
前記制御部は、前記圧縮機の回転速度の大きさに応じて設定されるヒートポンプ式給湯機の使用上限圧力よりも、前記目標吐出冷媒圧力が高くなると判定した場合に、前記使用上限圧力よりも低い修正目標吐出冷媒圧力を新たに設定すると共に、前記圧力検出手段で検出される圧力がこの修正目標吐出冷媒圧力に近づくように制御することを特徴とするヒートポンプ式給湯機。
【請求項5】
請求項4に記載のヒートポンプ式給湯機において、
前記制御部は、前記圧縮機の回転速度を低下させることで前記圧力検出手段で検出される圧力が前記修正目標吐出冷媒圧力に近づくように制御することを特徴とするヒートポンプ式給湯機。
【請求項6】
請求項4に記載のヒートポンプ式給湯機において、
前記制御部は、前記減圧弁の開度を大きくすることで前記圧力検出手段で検出される圧力が前記修正目標吐出冷媒圧力に近づくように制御することを特徴とするヒートポンプ式給湯機。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれか1項に記載のヒートポンプ式給湯機において、
前記制御部は、前記水−冷媒熱交換器の出口水温度が、前記沸上目標温度に近づくように、前記圧縮機の回転速度を制御することを特徴とするヒートポンプ式給湯機。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のヒートポンプ式給湯機において、
前記冷媒は二酸化炭素であることを特徴とするヒートポンプ式給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−79770(P2013−79770A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220602(P2011−220602)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)