説明

ヒートポンプ式給湯機

【課題】本発明は、水−冷媒熱交換器を流れる水の入水温度が上昇した場合、冷媒レシーバやアキュムレータといった冷媒量調整手段を設けることなく、要求される沸上げ温度を満足しつつ、安定して沸上運転を行える、機器の小型化を図ったヒートポンプ式給湯機を提供する。
【解決手段】本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機4と、この圧縮機4から吐出される高温高圧の冷媒により水を加熱する水−冷媒熱交換器5と、この水−冷媒熱交換器5から減圧弁7を介して流入する低温低圧の冷媒を空気と熱交換させて前記圧縮機4に戻す蒸発器8と、前記水−冷媒熱交換器5から流出する冷媒と前記蒸発器8から流出する冷媒を熱交換させる内部熱交換器6と、を備えるヒートポンプ式給湯機において、前記水−冷媒熱交換器5に流入する水の温度が上昇した際に、前記減圧弁7の開度を調整して低圧側の冷媒量の減少を抑える機能を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ式給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、深夜電力等を利用してヒートポンプサイクルを駆動し、低温水を加熱して所望の温度の湯を貯湯タンクに貯える沸上げ機能を備えたヒートポンプ式給湯機が知られている。このようなヒートポンプ式給湯機は、ヒートポンプサイクル内に設けられた水−冷媒熱交換器と貯湯タンクとを配管にて接続し、接続した配管内に貯湯タンク内の水を循環させている。そして、ヒートポンプ式給湯機は、水−冷媒熱交換器における貯湯タンクの水と冷凍サイクルの冷媒との熱交換によって沸上げを行っている。このようなヒートポンプ式給湯機には、オゾン層破壊係数がゼロでありかつ地球温暖化係数もフロン類に比べて格段に小さい二酸化炭素を冷媒として用いる冷凍サイクル装置が提案されている。
【0003】
二酸化炭素のような臨界温度が低い冷媒を冷凍サイクル装置に用いる場合、高圧側では凝縮が生じず、臨界圧力以上で運転される超臨界サイクルとなる。しかし超臨界サイクルの運転では、外気温度などの外環境条件や、沸上目標温度、また水−冷媒熱交換器に流入する水の入水温度などの変化により、運転に最適となる高圧側と低圧側の冷媒充填量が異なるため、最適な冷媒充填量へと調整するために、運転に最適となる冷媒充填量が異なるため、緩衝用冷媒レシーバやアキュムレータといった冷媒量調整容器を冷凍サイクルに設け、冷媒量を調整する技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−18602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の技術の場合、液冷媒を貯蔵するために容量の大きい冷媒レシーバやアキュムレータといった冷媒量調整容器を冷凍サイクル内に設ける必要があるため、機器が大型化していた。
【0006】
したがって、外気温度などの外環境条件や沸上目標温度、水−冷媒熱交換器に流入する水の入水温度などが変化して運転に最適となる冷媒量が変化しても、冷媒レシーバやアキュムレータといった冷媒量調整容器を用いる必要がなく、沸上運転を行うことができるヒートポンプ式給湯機が望まれるものと考える。
【0007】
本発明は、諸条件の変化により運転に最適となる冷媒充填量が変化しても、冷媒レシーバやアキュムレータなどの冷媒量調整容器を用いなくてもよく且つ、効率的な沸上運転を行うことのできるヒートポンプ式給湯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、冷媒を圧縮する圧縮機と、この圧縮機から吐出される高温高圧の冷媒により水を加熱する水−冷媒熱交換器と、この水−冷媒熱交換器から減圧弁を介して流入する低温低圧の冷媒を空気と熱交換させて前記圧縮機に戻す蒸発器と、前記水−冷媒熱交換器から流出する冷媒と前記蒸発器から流出する冷媒を熱交換させる内部熱交換器とを備えるヒートポンプ式給湯機において、前記水−冷媒熱交換器に流入する水の温度が上昇した際に、前記減圧弁の開度を調整して低圧側の冷媒量の減少を抑える機能を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、沸上運転に最適な高圧側圧力を維持して高効率な沸上運転を行え、また水−冷媒熱交換器へ流入する入水温度が上昇しても、低圧側である蒸発器へ冷媒を送り込めるため、冷媒レシーバやアキュムレータといった冷媒量調整手段が不必要となり、機器の小型化が図られたヒートポンプ式給湯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るヒートポンプ式給湯機の構成説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係るヒートポンプ式給湯機の沸上げ運転時に、制御部が減圧弁及び圧縮機を制御する手順を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係るヒートポンプ式給湯機における目標吐出冷媒圧力とCOPとの関係を示すグラフである。
【図4】本発明の実施形態に係るヒートポンプ式給湯機における入水温度と目標吐出冷媒圧力、およびCOPの関係を示すグラフである。
【図5】本発明の実施形態に係るヒートポンプ式給湯機における蒸発器での冷媒保有比率及び入水温度と、圧縮機回転数の比率及び入水温度との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の実施形態に係るヒートポンプ式給湯機における内部熱交換器と高圧側での冷媒保有比率と入水温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態のヒートポンプ式給湯機は、水−冷媒熱交換器に流入する水の温度が上昇した際に、減圧弁の開度を調整して低圧側の冷媒量の減少を抑える機能を設けたものである。具体的には、高圧側の圧力を検出する検出装置を備え、外気温度、沸上目標温度、前記水−冷媒熱交換器へ流入する入水温度から算出される圧縮機吐出圧力目標値と高圧側圧力検出装置より検出される圧力値が同一となるように減圧弁の開度を調整する制御機能を設けたこと、および水−冷媒熱交換器に流入する水の温度が上昇した際に、高圧側から低圧側に冷媒を移動させるように減圧弁の開度を調整して、入水温度の上昇にともなう低圧側の冷媒保有量の減少を抑える機能を設けたものである。
【0012】
以下では、本実施形態に係るヒートポンプ式給湯機の全体構成について説明した後に、前記した機能について更に具体的に説明する。
【0013】
図1に示すように、ヒートポンプ式給湯機は、ヒートポンプユニット1と貯湯タンクユニット2とを備えている。ちなみに、ヒートポンプユニット1と貯湯タンクユニット2とは、ヒートポンプ式給湯機が現場に配置される際に、接続配管3a,3bによって連結される構造となっている。
【0014】
前記ヒートポンプユニット1の冷凍サイクルは、圧縮機4と、水−冷媒熱交換器5と、内部熱交換器6と、減圧弁7と、蒸発器8と、送風ファン9と、ヒートポンプユニット制御部20と、で主に構成されている。そして、圧縮機4、水−冷媒熱交換器5、内部熱交換器6、減圧弁7、及び蒸発器8は、この順番で冷媒が循環するように配管で環状に連結されている。なお、本実施形態での冷媒としては、二酸化炭素が使用されている。そして、ヒートポンプユニット1では、圧縮機4より吐出される冷媒(二酸化炭素)の吐出圧力が臨界圧力以上となる超臨界蒸気圧縮式のヒートポンプサイクルを使用している。
【0015】
圧縮機4は、環状の回路から戻ってきた冷媒を圧縮すると共に、圧縮した高温高圧のガス冷媒(以下、ホットガスということがある)を再び環状の回路に送り出している。更に具体的には、蒸発器8から戻ってきた冷媒を圧縮して水−冷媒熱交換器5に向かって送り出している。
【0016】
圧縮機4は、容量制御が可能で、高温貯湯(例えば、90℃)を行う場合は、通常よりも速い回転速度(例えば3000〜4000回転/分)で運転する。また、通常の貯湯温度(例えば、65℃)で運転する場合は、比較的遅い回転速度(例えば2000〜3000回転/分)で運転する。また、圧縮機4は、PWM制御、電圧制御(例えばPAM制御)及びこれらの組み合わせ制御により、低速(例えば1000回転/分)から高速(例えば6000回転/分)まで回転速度の制御が行えるようになっている。
【0017】
圧縮機4と次に説明する水−冷媒熱交換器5とを接続する配管には、圧縮機4寄りに、圧縮機4の高圧側冷媒圧力(圧縮機吐出冷媒圧力)を検出する圧力センサ15が設けられている。ちなみに、この配管は、水−冷媒熱交換器5で、次に説明する冷媒伝熱管2aの入口と接続されている。
【0018】
水−冷媒熱交換器5は、放熱器として機能するものであり、圧縮機4から吐出されたホットガスを流通させる冷媒伝熱管5aと、水を流通させる水伝熱管5bとを備えている。これらの冷媒伝熱管5a及び水伝熱管5bは、冷媒と水とが相互に熱交換するよう密着して設けられている。また水−冷媒熱交換器5は、冷媒と水とが相互に熱交換できる構造であれば、密着していない構造(例えば、水伝熱管5bの中に冷媒伝熱管5aを通す構造)でもよい。
【0019】
内部熱交換器6は、冷凍サイクル内の高圧側冷媒と低圧側冷媒間で熱交換を行う機能を有するものであり、水−冷媒熱交換器5から流出した高圧冷媒を流通させる冷媒伝熱管6aと、蒸発器8から流出した低圧冷媒を流通させる冷媒伝熱管6bとを備えている。これらの冷媒伝熱管6a及び冷媒伝熱管6bは、高圧側冷媒と低圧側冷媒とが相互に熱交換するように密着して設けられており、水−冷媒熱交換器5から流出した冷媒を、蒸発器8から流出した冷媒によって冷却することで、蒸発器8入口の冷媒乾き度を小さくする機能を有している。また逆に、蒸発器8より流出した冷媒を、水−冷媒熱交換器5より流出した冷媒によって加熱することで、圧縮機4が吸込む冷媒の温度を高くし、沸上運転時の性能を向上させる機能を有している。また内部熱交換器6は高圧側と低圧側の冷媒が熱交換できる構造であれば、密着していない構造(例えば、低圧側冷媒配管6bの中に高圧側冷媒配管6aを通す構造)でもよい。
【0020】
減圧弁7は、内部熱交換器6と蒸発器8との間に配置される配管の途中に設けられており、電動減圧弁が使用されている。この減圧弁7は、内部熱交換器6からの高圧冷媒を減圧し、蒸発し易い低温低圧の冷媒として蒸発器8に送り出している。そして、減圧弁7は、絞り開度(開閉度合い)が調節可能となっており、ヒートポンプユニット制御部19がこの絞り開度を変えてヒートポンプユニット1での高圧側圧力を調節することができる。この機能を使用して、ヒートポンプユニット制御部19は、後記するように、減圧弁7の絞り開度を変えることで、圧縮機4の吐出冷媒圧力を調節することとなる。
【0021】
なお、減圧弁7は、蒸発器8に着霜した場合に、絞り開度を全開にしてデフロストを行うようにも働く。
【0022】
蒸発器8は、送風ファン9の回転によって外気を取り入れた空気(送風)と、蒸発器8内を流通する低温低圧の冷媒との熱交換を行って、外気から熱を汲み上げるものである。そして、冷媒は、この蒸発器8から内部熱交換器6を介して圧縮機4に戻されることとなる。
【0023】
符号18は、外気温度を検出する温度センサであり、本実施形態での外気温度センサ18は、蒸発器8に流入する空気の温度を検出するように、送風ファン9が形成する空気流の上流側に配置されている。なお、ヒートポンプ制御部19は、後記するように、この外気温度センサ18の検出する温度を参照要素の一つとして、圧縮機4の目標吐出冷媒圧力値を算出することとなる。
【0024】
符号21aは、水送出配管であり、送出配管21aは、前記冷媒で加熱される水を水−冷媒熱交換器5に送り出すものである。送出配管21aの一端は、水−冷媒熱交換器5の水伝熱管5bの入口に接続されている。この送出配管21aは、前記した接続配管3a及び後記の配管13bを介して後記する貯湯タンク11の底部側と接続されることとなる。
【0025】
この送出配管21aには、循環ポンプ12が、水−冷媒熱交換器5の上流側に配置されている。なお、本実施形態での循環ポンプ12は、貯湯タンク11の水を水伝熱管5bの入口側に送り込むように駆動する。この循環ポンプ12は、後記する水循環路で水を循環させるように機能し、水循環装置としての役割を果たす。ちなみに、循環ポンプ12は、ヒートポンプユニット制御部19によって、循環路内での水の流量(質量流量)、流速及び圧力が自由に選択できるように構成されている。
【0026】
また、送出配管21aの水−冷媒熱交換器5寄りには、熱交換器入口水温度センサ16が設けられている。この熱交換器入口水温度センサ16は、水−冷媒熱交換器5の入口で水の温度を検出するものである。なお、ヒートポンプ制御部19は、後記するように、この熱交換器入口水温度センサ16の検出する温度を参照要素の一つとして、圧縮機4の目標吐出冷媒圧力値を算出することとなる。
【0027】
符号21bは、水戻し配管であり、戻し配管21bの一端は、水−冷媒熱交換器5の水伝熱管5bの出口に接続されている。この戻し配管21bは、冷媒で加熱された水(湯)を水−冷媒熱交換器5から貯湯タンク11に戻すものである。戻し配管21bの水−冷媒熱交換器5寄りには、水−冷媒熱交換器5の出口水温度を検出する熱交換器出口水温度センサ17が設けられている。この戻し配管21bは、前記した接続配管3b及び後記の配管14bを介して貯湯タンク11の塔頂部側と接続されることとなる。
【0028】
次に、このようなヒートポンプユニット1と共にヒートポンプ式給湯機を構成する貯湯タンクユニット2について説明する。
【0029】
タンクユニット2は、水(湯)を貯蔵する貯湯タンク11を備えている。
【0030】
この貯湯タンク11の塔頂部には、前記したように、水−冷媒熱交換器5における水伝熱管5bの出口から送り出される水(湯)が、配管14bを介して流れ込むようになっている。そして、この貯湯タンク11の底部からは、前記したように、配管13bを介して、水−冷媒熱交換器5の水伝熱管5bの入口に水が流れ込むようになっている。
【0031】
つまり、水−冷媒熱交換器5から貯湯タンク11に湯を送り出すと共に、貯湯タンク11の水を水−冷媒熱交換器5に送り出すように、配管13a,3a,21a,21b,3b,14bが、水−冷媒熱交換器5と貯湯タンク11とを接続することで、水(湯)の水循環路を形成している。
【0032】
また、貯湯タンク11の底部には給水配管13aを介して水道等の給水源(図示省略)が接続され、貯湯タンク11の塔頂部には、貯湯タンク11内の湯を導出して所定の給湯栓(図示省略)に給湯する給湯配管14aが接続されている。なお、図示しないが、給水配管13aから分岐すると共に、所定の湯水混合弁を介して給湯配管14aに合流するように分岐配管を設ける構成とすることもできる。このような分岐配管によれば、湯水混合弁の開口度合いに応じて、給水配管13aから給湯配管14aに流れ込む水の量を調節することで、前記した給湯栓から出る湯の温度を調節することができる。
【0033】
ヒートポンプユニット制御部19は、CPU、ROM、RAM、各種インターフェイス、電子回路等を含んで構成されており、その内部に記憶されたプログラムに従って、本実施形態に係るヒートポンプユニット1を総合的に制御するようになっている。
【0034】
また、ヒートポンプユニット制御部19は、圧縮機4の回転速度を熱交換器出口水温度センサ17で検出される水−冷媒熱交換器5の出口水温度に基づいて制御する。具体的には、ヒートポンプユニット制御部19は、熱交換器出口水温度センサ17で検出される温度が、予め設定された出口水温度の目標値(目標温水温度)となるように、圧縮機4の回転速度を制御する。つまり、目標値に対して熱交換器出口水温度センサ17の検出温度(計測値)が低い場合には圧縮機4の回転速度を速め、これとは逆に検出温度(計測値)が高い場合には圧縮機4の回転速度を遅くする。
【0035】
また、ヒートポンプユニット制御部19は、循環ポンプ12が水−冷媒熱交換器5の水伝熱管5bに送り込む水の量を、予め求めた圧縮機4の目標回転速度に基づいて制御する。具体的には、圧縮機4の目標回転速度に対して実回転速度が遅い場合には、水伝熱管5bに送り込まれる水の量が増えるように循環ポンプ12を制御し、これとは逆に圧縮機4の実回転速度が速い場合には、水伝熱管5bに送り込まれる水の量が減るように循環ポンプ12を制御する。
【0036】
そして、ヒートポンプユニット制御部19は、後に詳しく説明するように、圧力センサ15により検出される圧縮機4の吐出冷媒圧力が、外気温度と水−冷媒熱交換器5の水入口温度、および水−冷媒熱交換器5の出口水温度に対する目標温水温度より算出される目標吐出冷媒圧力値と一致するように減圧弁7の開度を制御する。つまり、目標値に対して圧力センサ15の検出圧力(計測値)が低い場合には減圧弁7の開度を小さくし、これとは逆に検出圧力(計測値)が高い場合には減圧弁7の開度を大きくする。
【0037】
貯湯タンクユニット制御部20は、CPU、ROM、RAM、各種インターフェイス、電子回路等を含んで構成されており、その内部に記憶されたプログラムに従って、本実施形態に係るヒートポンプ式給湯機を総合的に制御するようになっており、ヒートポンプ式給湯機のユーザーとのインターフェースとなるリモコン(図示省略)からの情報や、貯湯タンク11に設けた温度センサ(図示省略)から得られる貯湯タンク11内の残湯量の情報などから、沸き上げる目標温水温度と沸上開始時間を算出し、ヒートポンプユニット制御部19に対して沸上運転開始指令の発報や、目標温水温度の伝達を行う。
【0038】
次に、本実施形態に係るヒートポンプ式給湯機の動作について説明する。
【0039】
このヒートポンプ式給湯機では、貯湯タンク11内に所定の温度で所定の湯量を確保するのに先立って、貯湯タンク11を満たすように水が供給される。この際、貯湯タンク11には、残存する湯に加えられるように、図示しない給水源から給水配管13aを介して水が加えられる。もちろん貯湯タンク11が空の場合には、その全てが水で満たされる。
【0040】
以下では、貯湯タンク11に残存する湯と新たに加えられた水とを一緒にして単に「水」ということがある。
【0041】
そして、ヒートポンプ式給湯機は、貯湯タンク11が水で満たされてから、貯湯運転工程を実施する。
【0042】
ヒートポンプ式給湯機は、起動した圧縮機4が吐出するホットガス(高温高圧の冷媒)を水−冷媒熱交換器5(放熱器)の冷媒伝熱管5aに送り込む。冷媒伝熱管5aに送り込まれたホットガスは、水伝熱管5b内の水に熱を放出する。そして、水伝熱管5b内の水はホットガスで加熱される。
【0043】
次いで、水−冷媒熱交換器5(放熱器)の冷媒伝熱管5aから送り出された冷媒は、内部熱交換器6において、低圧側の冷媒へと更なる放熱を行った後、減圧弁7(減圧弁)で減圧された後に、蒸発器8に流れ込む。そして、流れ込んだ低温低圧の冷媒は、送風ファン9から送り込まれた風によって蒸発する際に外気から熱を汲み上げる。その後、冷媒は、内部熱交換器6において、高圧側の冷媒から更なる吸熱を行った後、圧縮機4に戻って再び圧縮される。
【0044】
その一方で、貯湯タンク11に満たされた水は、循環ポンプ12が起動することで、送出配管21aを介して水−冷媒熱交換器5の水伝熱管5b内に送り込まれる。そして、送り込まれた水は、前記したように、冷媒に加熱されて湯となって、戻し配管21bに流れ込む。
【0045】
戻し配管21bに流れ込んだ湯は、貯湯タンク11に戻って貯蔵される。このように貯湯タンク11と水−冷媒熱交換器5との間で水が循環する間に、ヒートポンプ式給湯機は、貯湯タンク11内に所定の温度で所定の湯量を確保する。
【0046】
そして、ヒートポンプ式給湯機がこのように水の沸上げ運転を行う際に、ヒートポンプユニット制御部19は、圧縮機4及び減圧弁7を次のよう制御する。次に参照する図2は、本実施形態に係るヒートポンプ式給湯機の沸上げ運転時に、制御部が減圧弁及び圧縮機を制御する手順を説明するためのフローチャートである。
【0047】
貯湯タンクユニット制御部20において、目標温水温度(例えば、前記した90℃又は65℃)の設定がなされ、ヒートポンプユニット制御部19に対して運転開始指令が発報される。この際、目標温水温度は、給水配管13aから貯湯タンク11へ送り込まれた水の温度、外気温度センサ18の検出温度(外気温度)、貯湯タンク11内の残湯量、1日のユーザーによる湯の使用量、及びリモコンによりユーザーから要求される要求値から選ばれる少なくとも1つに基づいて設定することができる。
【0048】
運転開始指令を受けたヒートポンプユニット制御部19では、ヒートポンプユニットの沸上運転を開始する。指令を受けたヒートポンプユニット制御部19は、図2に示すように、圧縮機4、ファンモータ10、水循環ポンプ12、減圧弁7を初期値で起動した後、目標温水温度と目標吐出冷媒圧力を設定する(ステップS1)。
【0049】
目標吐出冷媒圧力は、熱交換器入口水温度センサ16の検出温度(水−冷媒熱交換器5の水伝熱管5bに送り込まれる水の温度(入口水温度))、前記した目標温水温度、及び外気温度センサ18の検出温度(外気温度)から選ばれる少なくとも1つに基づいて設定することができる。
【0050】
次に、ヒートポンプユニット制御部19は、圧力センサ15にて圧縮機4の吐出冷媒圧力を検出すると共に(ステップS2)、この吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力と等しいか否か(冷媒圧力=目標圧力か)を判断する(ステップS3)。そして、吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力と等しいと判断した場合には(ステップS3のYes)次のステップS5に進み、吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力に等しくないと判断した場合には(ステップS3のNo)、吐出冷媒圧力が目標吐出冷媒圧力と等しくなるように減圧弁7(図1参照)の開度を修正した後に(ステップS4)、次のステップS5に進む。
【0051】
ヒートポンプユニット制御部19は、ステップS5において、熱交換器出口水温度センサ17にて水−冷媒熱交換器5の出口水温度を検出すると共に(ステップS6)、この出口水温度が前記した目標温水温度と等しいか否か(出口水温度=目標温水温度か)を判断する(ステップS6)。そして、出口水温度が目標温水温度と等しいと判断した場合には(ステップS6のYes)次のステップS8に進み、出口水温度が目標温水温度と等しくないと判断した場合には(ステップS6のNo)、出口水温度が目標温水温度と等しくなるように圧縮機4の回転速度の修正した後に(ステップS7)、次のステップS8に進む。
【0052】
その後、ヒートポンプユニット制御部19は、運転指令が継続しているか否かを判断すると共に、継続していると判断した場合(ステップS8のYes)にはステップS1に戻る。そして、継続していないと判断した場合には(ステップS8のNo)、ヒートポンプユニット1は、運転を停止して所定の沸上げ運転が終了する。
【0053】
なお、水−冷媒熱交換器を流れる水の入水温度が上昇、あるいは低外気温時に目標温水温度が高い値に設定される場合には、圧縮機からの吐出冷媒圧力、および吐出冷媒温度が許容上限値近傍まで上昇することがある。この場合には、減圧弁を制御して開度を大きくする、ないしは循環ポンプを制御して水−冷媒熱交換器を流れる水の量を減少させるように圧縮機4の目標回転速度を設定することにより、吐出冷媒圧力と吐出冷媒温度が、あらかじめ設定した圧縮機回転数と許容上限圧力の関係と検出した圧縮機の回転速度から算出される許容上限圧力、および許容上限温度を超過することを回避する。
【0054】
以上のような本発明の実施形態に係るヒートポンプ式給湯機によれば、次のような作用効果を奏することができる。
【0055】
目標吐出冷媒圧力は、水−冷媒熱交換器5に流入する水の温度、目標温水温度、及び外気温度に基づいて、ヒートポンプユニットの成績係数(以下COPと称す)が最大となる圧力に設定される。図3に、入口水温度が9℃、目標温水温度が65℃、外気温度が7℃(湿球温度は6℃)のときの、吐出冷媒圧力とCOPの関係を示す。同じ容量で、入口水温度、目標温水温度、外気温度が異なる場合に対して、COPが最大となる吐出冷媒圧力を目標吐出冷媒圧力として予め設定しておく。沸上運転時には、検出される吐出冷媒圧力が、図3に示す目標吐出冷媒圧力を中心にした圧力範囲A内となるように、減圧弁7の開度を制御することにより、ヒートポンプユニットを、ほぼ最大の性能で運転することが可能となる。
【0056】
なお、アキュムレータなどの冷媒量調整手段を用いた場合と比較すると、本実施形態では、図3に示すように、COPが最大となる吐出冷媒圧力が低下し、かつ最大となるCOPの値が向上する。内部熱交換器により、蒸発器から流出した冷媒が、水−冷媒熱交換器から流出した冷媒により加熱されることで、圧縮機に流入する冷媒の温度が高くなり、吐出冷媒圧力が低くても圧縮機から吐出される冷媒の温度を高くできるためである。また、COPが最大となる吐出冷媒圧力近傍の圧力範囲Aでは、本実施形態により、COPに対する吐出冷媒圧力の感度を緩和することができる(即ち、COPに対する吐出冷媒圧力のピークを緩やかにすることができる)。したがって、内部熱交換器を備え、かつ吐出冷媒圧力を目標値とした制御方式により、ヒートポンプユニットをほぼ最大の性能で安定して運転することが可能となる。
【0057】
水−冷媒熱交換器5に流入する水の温度が上昇した場合についても同様にして、各入水温度に対してCOPが最大となる吐出冷媒圧力の関係から、目標吐出冷媒圧力設定値が決定される。図4に、入水温度と目標吐出冷媒圧力、およびCOPの関係を、目標温水温度が高い場合を例にして示す。本実施形態では、冷媒レシーバやアキュムレータといった冷媒量調整手段の代わりに、水−冷媒熱交換器から流出した冷媒と蒸発器から流出した冷媒とを熱交換させる内部熱交換器を設置することにより、前記冷媒量調整手段を設けた場合よりも目標吐出冷媒圧力を低い値に設定することができる。また、沸き上げ運転時間の多くを占める入水が低い場合には、COPを高くすることができるため、より少ない消費電力量でかつ安定した沸上げ運転を行うことができる。
【0058】
入水温度の上昇に伴い、水−冷媒熱交換器5から流出する冷媒の温度が上昇し、内部熱交換器を設けていない場合には、蒸発器に流入する冷媒の乾き度が減少するため、蒸発器で保有できる冷媒量が減少し、ついには冷媒充填量と冷媒が占める内容積との関係を満足するように、特に高圧側の圧力が大きく上昇する。
【0059】
冷媒レシーバやアキュムレータなどの冷媒量調整手段が設置された場合には、過剰になった冷媒量を貯留することで、入水温度上昇時の沸上運転を可能としている。
【0060】
本実施形態では、冷凍サイクルの高圧側と低圧側の冷媒を熱交換させる内部熱交換器6を設けている。内部熱交換器6の作用は、水−冷媒熱交換器5から流出した冷媒を蒸発器8から流出した冷媒によって冷却し、蒸発器8入口の冷媒乾き度を小さくすることによって、蒸発器8内で保有できる冷媒量を増加させることにある。そして、入水温度が上昇すると、減圧弁を開き、高圧側から低圧側への冷媒の移動量を増加させるようにしている。即ち、高圧側から低圧側に冷媒を移動させるように前記減圧弁の開度を調整して、入水温度の上昇にともなう低圧側の冷媒保有量の減少を抑える機能を有している。ここで、図5に一点鎖線で示すように、本実施形態では、入水温度が上昇した際には、加熱能力を維持すべく圧縮機の回転数を上昇させている。圧縮機の回転数を上昇させると、低圧側から高圧側への冷媒の移動量が増加する。一方で、仮に入水温度が上昇した際に加熱能力を維持しなければ(例えば、圧縮機の回転数を変化させなければ)、減圧弁を開くことにより低圧側への冷媒の移動量が増加し、低圧側(主には蒸発器)での冷媒保有比率が高まることとなる。本実施形態では、入水温度が上昇すると、減圧弁を開くとともに、加熱能力を維持すべく圧縮機の回転数を上昇させている。このような制御による相反する冷媒の移動量の増減を足し合わせると、圧縮機の回転数上昇による低圧側から高圧側への冷媒の移動量が減圧弁を開くことによる高圧側から低圧側への冷媒の移動量よりも少し多くなることによって、図5に実線で示すように入水温度上昇に伴って低圧側(主には蒸発器)での冷媒保有比率が少し低くなる。逆に、高圧側での冷媒保有比率は、図6に実線で示すように入水温度上昇に伴って上昇する。
【0061】
また、図5には、蒸発器での冷媒保有比率(=蒸発器での冷媒保有量/冷媒充填量)と入水温度との関係を、本実施形態のように内部熱交換器を設置した場合と、内部熱交換器を設置しない場合を示している。上述の通り、入水温度の上昇にともない、蒸発器が保有する冷媒量は減少するものの、内部熱交換器が設定されていない場合と比べて、より多くの冷媒を蒸発器で保有できることがわかる。なお、冷凍サイクルには、冷媒レシーバやアキュムレータなどの冷媒量調整手段が設置される場合があり、これらは過剰になった冷媒量を貯留することで入水温度上昇時の沸上運転を可能とするものであるが、これら冷媒レシーバやアキュムレータが設けられない場合であっても、蒸発器が実質的に同様の機能を果たすこととなる。
【0062】
なお、内部熱交換器の設置により、内部熱交換器および設置に必要な接続配管系にも冷媒が保有されることになるが、図6に示すように、内部熱交換器とその接続配管系に保有される冷媒量は、冷媒充填量の数パーセント程度と少なく、かつ入水温度の上昇にともなってさらに減少する。したがって、入水温度の上昇時に発生する過剰な冷媒量は、主に蒸発器で保有されると言える。
【0063】
内部熱交換器6のもう一つの作用は、蒸発器8から流出した冷媒を、水−冷媒熱交換器5から流出した冷媒により内部熱交換器6で加熱することにより、圧縮機に流入する冷媒の温度ないし乾き度を高くすることにある。圧縮機の吸込圧力と吐出冷媒温度が同じ場合、内部熱交換器のない場合と比べると、吐出冷媒圧力を低下させることができ、COPを最大とする目標吐出冷媒圧力を低い値に設定することができる。
【0064】
この内部熱交換器6の作用と目標吐出冷媒圧力を制御する減圧弁7の動作により、水−冷媒熱交換器を流れる水の入水温度が上昇した場合でも、高圧側の圧力上昇を低く抑え、要求される沸上げ温度を満足しつつ、安定して沸上げ運転を行うことができる。
【0065】
なお、水−冷媒熱交換器を流れる水の入水温度が上昇し、圧縮機からの吐出冷媒圧力、および吐出冷媒温度が許容上限値近傍まで上昇した場合には、予め設定した圧縮機回転数と許容上限圧力の関係から算出される許容上限圧力を維持するように減圧弁の開度を制御し、水−冷媒熱交換器を流れる水の量を減少させることによって、目標温水温度を維持しながら安定して沸上げ運転を行うことができる。
【0066】
本実施形態のヒートポンプ式給湯機によれば、冷媒レシーバやアキュムレータといった冷媒量調整手段を設ける必要が無くなるが、運転能力の向上やよりきめ細かな制御を行うために、冷媒量調整手段を付加することを妨げるものではない。本実施形態に冷媒量調整手段を付加した場合でも、機器の大型化を阻止若しくは大型化を大幅に抑制できる。
【符号の説明】
【0067】
1 ヒートポンプユニット
2 貯湯タンクユニット
3a,3b 接続配管
4 圧縮機
5 水−冷媒熱交換器
6 内部熱交換器
7 減圧弁
8 蒸発器
9 送風ファン
10 ファンモータ
11 貯湯タンク
12 水循環ポンプ
13 給水配管
14 給湯配管
15 圧縮機吐出冷媒圧力センサ
16 水−冷媒熱交換器入口水温度センサ
17 水−冷媒熱交換器出口水温度センサ
18 外気温度センサ
19 ヒートポンプユニット制御部
20 貯湯タンクユニット制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
この圧縮機から吐出される高温高圧の冷媒により水を加熱する水−冷媒熱交換器と、
この水−冷媒熱交換器から減圧弁を介して流入する低温低圧の冷媒を空気と熱交換させて前記圧縮機に戻す蒸発器と、前記水−冷媒熱交換器から流出する冷媒と前記蒸発器から流出する冷媒を熱交換させる内部熱交換器と
を備えるヒートポンプ式給湯機において、
前記水−冷媒熱交換器に流入する水の温度が上昇した際に、前記減圧弁の開度を調整して低圧側の冷媒量の減少を抑える機能を設けたことを特徴とするヒートポンプ式給湯機。
【請求項2】
請求項1に記載のヒートポンプ式給湯機において、
前記水−冷媒熱交換器に流入する水の温度が上昇した際に、高圧側の圧力が上昇した場合には減圧弁の開度を調整して低圧側の冷媒量の減少を抑えて高圧側の圧力を低減させることを特徴とするヒートポンプ式給湯機。
【請求項3】
請求項1に記載のヒートポンプ式給湯機において、
高圧側の圧力を検出する検出装置を備え、外気温度、沸上目標温度、前記水−冷媒熱交換器へ流入する入水温度のいずれか一つから算出される圧縮機吐出圧力目標値と高圧側圧力検出装置より検出される圧力値が同一となるように減圧弁の開度を調整する制御機能を設け、前期水−冷媒熱交換器へ流入する水の入水温度が上昇し、高圧側の圧力が上昇した場合には、圧縮機吐出圧力目標値と一致するように減圧弁を開いて低圧側の冷媒量の減少を抑える機能を設けたことを特徴とするヒートポンプ式給湯機。
【請求項4】
請求項1に記載のヒートポンプ式給湯機において、
高圧側の圧力を検出する検出装置を備え、外気温度、沸上目標温度、前記水−冷媒熱交換器へ流入する入水温度から算出される圧縮機吐出圧力目標値と高圧側圧力検出装置より検出される圧力値が同一となるように減圧弁の開度を調整する制御機能を設けたことを特徴とするヒートポンプ式給湯機。
【請求項5】
請求項1に記載のヒートポンプ式給湯機において、
前記水−冷媒熱交換器に流入する水の温度が上昇した際に、高圧側から低圧側に冷媒を移動させるように前記減圧弁の開度を調整して、入水温度の上昇にともなう低圧側の冷媒保有量の減少を抑える機能を設けたことを特徴とするヒートポンプ式給湯機。
【請求項6】
請求項1に記載のヒートポンプ式給湯機において、
前記水−冷媒熱交換器に流入する水の温度が上昇した際に、高圧側の圧力が許容上限圧力近傍まで上昇した場合には、高圧側から低圧側に冷媒を移動させるように減圧弁の開度を調整して、入水温度の上昇にともなう低圧側の冷媒保有量の減少を抑えるとともに、水−冷媒熱交換器に流入する水の流量を低下させることにより、沸き上げ温度を維持しつつも高圧側の圧力上昇を抑制することを特徴とするヒートポンプ式給湯機。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のヒートポンプ式給湯機において、
前記冷媒は二酸化炭素であることを特徴とするヒートポンプ式給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−88038(P2013−88038A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229339(P2011−229339)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)