説明

ヒートポンプ機能を備えたモジュール車両用空調装置

【課題】空気を加熱及び冷却するためのモジュール車両用空調装置を提供する。
【解決手段】本発明のモジュール車両用空調装置(1)は、少なくとも1つの送風機(140、120、121)と、空気流路を設定するためのフラップと、を備えたハウジングと、組み込まれた接続ラインと共に、凝縮器(11)、蒸発器(12)、圧縮機(13)、及び膨張装置(14)を備えた冷媒回路(100、200)と、を有し、ハウジング内には、蒸発器(12)を通る蒸発器空気流路と凝縮器(11)を通る凝縮器空気流路とが形成され、各空気流路が、周囲環境からの新鮮な外気、客室からの再循環空気、又はこれら2つの混合物を供給するように形成され、2つの空気流路は、車内の加熱又は冷却が空気流路の設定によって行われるように、制御可能なフラップを介して互いに連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、特に、電気自動車及びハイブリッド車の車内の空気を加熱、冷却及び除湿するためのヒートポンプ機能を備えた車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車内に供給する空気を調節するために、空気を冷却するための冷却器、加熱するためのグリコール−空気熱交換器、並びに、グリコール−空気ヒートポンプ及び空気−空気ヒートポンプを備えた車両用空調装置が従来用いられている。
【0003】
現在の車両空調システムは、種々の独立した構成部品から構成される。これらは、例えば、
・通常、車両の前部に配置されている凝縮器、
・自動車エンジンに接続されており、それにより駆動する圧縮機、
・客室に配置されており、調節した空気を乗客に供給する空調機器、
・冷媒ライン、である。
【0004】
これらの構成部品は、通常、車両製品に個々に供給されて取り付けられる。製造工場のライン上の構成部品の数に応じて、いくつかの組立ステップが必要となる。さらに、組立の最中に設置する必要がある複数の連結部において、漏れを招く可能性がある。漏れが生じた場合には、高い費用をかけて修正する必要がある。
【0005】
予め取り付けられたシステムを利用する手法が、特許文献1により周知となっている。z型配置の送風機−熱交換器配置を有する空調システムが提案されている。
【0006】
さらに、閉鎖型の、予め充填された冷却ループが、特許文献1に記載されている。
【0007】
先行技術として、加熱運転用に、グリコール−空気ヒートポンプとして空気−グリコール熱交換器を備えた車両用空調装置が、特許文献2及び特許文献3に記載されており、空気−空気ヒートポンプを有する装置が、特許文献4、特許文献5、及び特許文献6に記載されている。
【0008】
冷却運転用に冷媒R134aを利用する効率的な冷却ループが存在する。
【0009】
加熱運転における従来の欠点は、周囲温度が低い、例えば、−10℃よりも低い場所で、直接噴射を利用するディーゼル及びオットーエンジンなどの効率的な燃焼エンジンを用いる場合に、客室の快適な暖房に要求されるレベルに冷却水温が達しない、という点にある。例えば、ハイブリッド車などを含む将来の開発において、これらの問題がより大きくなることが予期される。このため、効率的な補助加熱設計を用いる必要がある。
【0010】
さらに、駆動システムを完全電化にする傾向がある。この開発では、駆動バッテリからの効率的なエネルギー変換に起因して、室内の暖房に利用可能な廃熱がさらに減少する。さらに、先行技術の燃料タンクよりも、バッテリが蓄えるエネルギー量は著しく少ない。それ故、将来の電気自動車では、室内の空調設備に必要な電力が、車両の走行距離に相当な影響を及ぼす。
【0011】
グリコール−空気ヒートポンプを用いる最新技術におけるさらなる欠点は、上記のポンプが、熱源として燃焼エンジンの冷却水を利用することである。この処理では、冷却水から熱を奪う。この結果、燃焼エンジンが、より低温でより長期間動作することになる。これは、排ガスの排出及び燃費に悪影響を及ぼす。
【0012】
ハイブリッド車における燃焼エンジンの間欠的運転に起因して、作動時間がより長い場合でさえも、十分な冷却水温に達しない。この結果、燃焼エンジンの始動−停止運転は、周囲温度が低いと妨げられる。
【0013】
空気−空気ヒートポンプは周囲空気から熱を奪う。これにより、ある状況下では、ヒートポンプが作動するときに蒸発器として機能する凝縮器に着氷する可能性がある。ヒートポンプの知的な調整により着氷を回避する場合には、結果として、利用可能なヒートポンプの加熱力が低減する。気体冷却器への着氷が許容範囲にある場合には、空調装置である冷媒回路の簡単な運転により、ヒートポンプが能動的に解凍する。これにより、ヒートポンプの平均有効出力が低減する。
【0014】
出力を空気に放出するヒートポンプシステムは、多くの場合に、車両に供給する空気の除湿及び加熱を同時に行うことはできない。この結果、自動車の空調設備は、周囲温度が低い場合に、車内から再循環される空気である再循環空気を利用して運転することはできない。除湿機能を備えていない場合には、これは凝縮を原因とする、車両の窓ガラスの内側の蒸気による曇りをもたらすことになる。
【0015】
出力をエンジン冷却回路に放出する、ヒートポンプシステムに加えて燃料補助加熱器は、多くの場合に、動的性能に欠け、効率が悪くなる。
【0016】
特許文献7には、ヒートポンプ機能を備えた小型の空調装置が記載されている。しかしながら、この装置では、ヒートポンプ機能の実施は、冷却回路の能動的な切り替えにより行われる。この構成は冷却回路を著しく複雑にするため、それ相応に費用が高くなり、技術的リスクが生じる。
【0017】
特許文献8には、吸収板と連動する取り付けが記載されている。この装置では、システムは循環的に作動し、隣接して配置された熱交換ユニットが、加熱から冷却、及びその逆に連続的に切り替わる。この装置では、第2の熱交換器は非循環的に作動する。このため、加熱又は冷却を目的として、フラップを、必要に応じて、客室又は周囲環境に空気を導くように循環的に調整することもできる。空気を冷却及び除湿するための再加熱運転、及びその後の再加熱又は連続運転は、明白に実施可能であるとは言えず、再循環空気の部分利用は記載されていない。フラップが循環的に移動するため、この取り付けは技術的に非常に複雑である。
【0018】
特許文献9には、並行に配置された熱交換器を備え、平行な空気の流れと共に、放出作用及び混合作用を備えた基本構造が開示されている。再加熱機能、又は再循環空気の部分利用の実現性は認められない。空気が室内から第1の熱交換器を通って導き出されることができない場合には、流れ方向は一方向のみであるが、外気は第2の熱交換器に対して流れる。
【0019】
特許文献10には、取り付けの構成部品に対する一般的な保持固定具が開示されている。加熱機能、再循環空気の部分利用、又は気流の混合は認められない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】独国特許出願公開第102007046663号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102 53 357号明細書
【特許文献3】特開平7−009844号公報
【特許文献4】独国特許第42 44 137号明細書
【特許文献5】特開平8−216667号公報
【特許文献6】特開2003−291635号公報
【特許文献7】独国特許出願公開第102009028522号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第602005004667号明細書
【特許文献9】独国特許出願公開第19824461号明細書
【特許文献10】国際公開第2007/042465号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ここで、本発明の課題は、低容量の熱源を有する周囲環境でさえも、全ての要求を満たす、加熱機能を備えた空調システムを提供すること、及びそのシステムの運転方法を示すことにある。この熱源とは、例えば、エネルギー効率の良い燃焼エンジン、もしくは燃焼エンジン及び電動機、又は、駆動システムの熱源を備えていない場合、例えば電動自動車等のような駆動システムからなるハイブリッド駆動などに用いられる熱源などのようなものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の課題は、独立クレームの特徴により解決される。本発明の変形例は、従属クレームに示される。
【0023】
特に、本課題は、空気を加熱及び冷却するためのモジュール車両用空調装置により解決される。この装置は、少なくとも1つの送風機(140、120、121)と、空気流路を設定するためのフラップと、を備えたハウジングと、組み込まれた接続ラインと共に、凝縮器(11)、蒸発器(12)、圧縮機(13)、及び膨張装置(14)を備えた冷媒回路(100、200)と、を有し、ハウジング内には、蒸発器(12)を通る蒸発器空気流路と凝縮器(11)を通る凝縮器空気流路とが形成され、各空気流路が、周囲環境からの新鮮な外気、客室からの再循環空気、又はこれら2つの混合物を供給するように形成され、2つの空気流路は、上記車内の加熱又は冷却が上記空気流路の設定によって行われるように、制御可能なフラップを介して互いに連通することを特徴としている。
【0024】
ハウジングは、2つのハウジング部を備え、各ハウジング部分内には、空気流路が形成されていることが好ましい。特別な実施形態によれば、蒸発器空気流路のためのハウジング部の設計と、凝縮器空気流路ためのそれとは鏡面対称である。
【0025】
本発明の有利な変形例は、ハウジングは、更に、第3のハウジング部を備え、構成部品を通って導かれる空気用の流路が、2つのハウジング部により形成され、上記第3のハウジング部は、空気が通り抜けない全ての冷却回路部品を収容することにある。
【0026】
2つのハウジング部には、2つの流路に対して空気を搬送するための共通の送風機が設けられていることが好ましい。このようにして、第2の流路用の追加の駆動部を省くことができるため、構築に関する利点に加えて費用的な利点もある。
【0027】
さらに、空気側において、2つのハウジング部を分離又は接続する再加熱用のフラップが設けられていることが有利である。
【0028】
空気は、各流路の端部において2つの部分質量流に分けられ、そのうちの1つの空気の部分質量流は、客室に導くことができるように設計され、空気の第2の部分質量流は、周囲環境に導くことができるように設計されている。
【0029】
変形例として、空調装置の小型設計では、2つの空気搬送ハウジング部は、車両内に存在する設置スペースに応じて、客室下方、カウル、エンジン室内又はトランク内に配置することができるように、互いに異なるように設計されて配置されている。
【0030】
本発明の特に有利な実施形態では、車内の空気の調節のために、及び、駆動バッテリ、パワーエレクトロニクスユニット又は車両の別の構成部品のさらなる冷却のために、冷却器が冷媒回路に配置され、ラインによって冷媒回路に組み込まれる。
【0031】
自動車の車内の空気を加熱、冷却及び除湿するためのヒートポンプ機能を備えた冷媒回路を運転するための方法であって、冷却運転と加熱運転とを切り替え、及び/又は、凝縮器と蒸発器の排出口における空気側部分質量流を調整することのみによって再加熱運転を実施し、車内に供給される部分質量流は、車内に供給される空気の要求温度に達するように調整されることを特徴としている。
【0032】
本発明の実施形態によれば、モジュール空調装置を用いて空気を加熱及び冷却し、車内の空気を調節する。このモジュール空調装置は、ラインにより冷却回路に接続されている凝縮器、蒸発器、圧縮機、及び膨張装置を備えている。全ての構成部品は、少なくとも1つの送風機及び2つの新鮮な外気/再循環空気システムを有する、小型の、組立済みのシステムを共同して形成する。前述のシステムの全ての構成部品は、その各々に流路が形成された2つの空気搬送ハウジング部に配置されている。冷媒を搬送するシステムは冷却ユニットから構成され、冷却器とヒートポンプ機能を実施するヒートポンプとを組み合わせた従来のシステムに要求されるような冷媒用の切り替え弁の必要を免れる。車内を加熱及び冷却する所望の処理は、冷却器/ヒートポンプ用の高価な連結回路が無くとも、特殊技術を要する、空気側における気流の切り替えのみを利用して達成される。
【0033】
先行技術によるシステムとは対照的に、この取り付けの調整設計は、冷媒搬送構成部品でもある冷却ユニットを、ヒートポンプに切り替えが生じないという事実に基づく。代わりに、ヒートポンプ機能は、空気から得られる環境熱、又は車内を暖めるときに冷媒回路を通じて車両から出た廃熱を利用し、気流の空気側における切り替えを利用してのみもたらされる。
【0034】
したがって、本発明の本質は、冷却器とヒートポンプとを組み合わせたものとして冷媒回路を実装せず、代わりに、付随するフラップを備えたハウジングによってのみ、ヒートポンプの効果を実現することにある。気流の経路を指定することにより、冷却器においてヒートポンプ機能を得ることができる。
【0035】
したがって、本発明による実施形態は、移動使用のための小型の空調装置である。冷却回路は、冷媒R134a、R1234yf又はR744用に設計することができ、冷却回路は、電動圧縮機が設けられ、小型の空調装置と完全に一体化されることが好ましい。従って、冷却回路は、周囲環境に関して有利にも動的シールを備えず、それ故、理論的に漏れが無く、車両の組み立て前又は空調装置の納品前に充填することができる。
【0036】
したがって、本発明の有利な実施形態によれば、予め組み立てることができる小型システムを提案し、1つ又は2つの送風機、並びに2つの新鮮な外気/再循環空気システムを提供する。装置は、客室下方の、カウル、エンジン室内又はトランク内に配置することができる。空調デバイスは、好ましくは2つ又は3つのハウジング部からなり、いずれの場合でも、このうちの2つが、構成部品を通り導かれる空気流路を提供する。2つのハウジング部には、それぞれの流路に空気を搬送するための送風機が設けられているか、又は、変形例として、共通の送風機により2つの流路を提供することができる。ここで、各流路には、周囲環境からの新鮮な外気、車内からの再循環空気、又はこれら両方の混合空気を供給することができる。さらに、各流路の端部において、空気は2つの部分質量流に分けることができる。この処理では、各流路から、部分的な質量流は車内に導かれ、かつ部分的な質量流は周囲環境に導かれ得る。
【0037】
ここで、2つのハウジング部は、車両に存在する設置スペースに応じて、互いに対して異なるように配置することができる。
【0038】
第3のハウジング部は、有利な実施形態による場合には、空気がそこを通って流れない全ての冷却回路部品を含む。
【0039】
ここで、冷却回路は、2つの熱交換器、凝縮器、及び蒸発器のみを備えた基本設計で設計される。さらに、冷却回路は、好ましくは電動圧縮機と、好ましくは電気的に調整可能な膨張装置とを備えている。上記4つの構成部品は、4本のラインにより互いに接続されている。
【0040】
さらなる有利な実施形態は、駆動バッテリを冷却するため、又は冷媒回路からの熱を吸収するための冷却器と結合した冷却回路の変形例である。この例では、冷却器はさらに、追加の遮断弁又は膨張弁を備えている。
【0041】
本発明の構造は、冷却運転と加熱運転との切り替え、又は再加熱運転の実施が、凝縮器及び蒸発器の排出口における空気側部分質量流を調整することにより実現される。この処理では、室内に供給される部分質量流は、客室に送られる供給空気に対して要求される温度及び質量流が達成されるように制御される。
【0042】
本発明による設計は、先行技術による調整方策から著しく逸脱し、乗用車用の空調システムの調整に特に有利である。
【0043】
本発明の個々の態様を以下に示す。
・加熱と除湿とを同時に実施可能な高効率のヒートポンプシステム。
・周囲温度が低い場合における暖気の迅速な供給。
・再循環空気運転中の加熱の可能性、又は再循環空気の割合を高くすることによる、車内の加熱に必要な電力の低減。
・予め充填された密封冷却回路。
・切り替え弁無しに、膨張弁の数が最小であることに加えて、並行貫流をともなう冷媒部の利用が最低限にする、もしくはさらに、これを取り外すことによる、冷却回路における最低限の複雑性。
・車台の上、トランク内、防火壁の上、又はエンジン室内などの車両内における代替の配置が可能。
【0044】
先行技術と比較した、本発明の顕著な利点及び特徴は、実質的には以下を含む。
・同程度の機能を有する他の補助加熱システムと比較して低い複雑性。
・少数の「能動的な」構成部品、すなわち、圧縮機及び任意選択的に外部から調整可能な膨張弁であり、この結果、複雑性が低い。追加の構成部品が少数であることは、費用効率の良い実施を保証する。
・車内の除湿と加熱との同時実行。
・再循環空気を用いた運転を可能にすることによる、ヒートポンプに要求される最大加熱力の低減。
・電動圧縮機を使用する場合には、燃焼エンジンとは独立して加熱力を利用可能。
・車両内の代替的な気流を、単純な方法で実施可能。
・「自由に用いることができる」周囲熱を用いることによる、消費燃料の低減。
・電動圧縮機を用いる場合には、密封システムを利用して冷媒の漏れが無い。
・乗客の快適性のための電気又は化石エネルギーの利用量、の低減。
・個々の構成部品の組立及び充填を確実に実行するために、予め充填された取り付けの完全に接続された納品。
・組立のため、又は電動圧縮機を用いる場合の相対移動を補正するためのチューブを必要としない。
・車両製造工場での最適化された車両組立。
・事前に検査したシステムを提供したことによる、品質に関係する問題がより少なく、かつ車両製造工場における再加工がより少ないこと。
【0045】
本発明の実施形態のさらなる詳細、特徴及び利点は、関連する図面を参照する以下の実施形態の記載から得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】車内の空気を調節するためのモジュール車両用空調装置の基本設計における冷却回路の回路配置を示す図である。
【図2】車内の空気を調節するためのモジュール車両用空調装置のバッテリ冷却し、ヒートポンプを運転するための熱源としても使用することができる冷却器を備えた冷却回路の回路配置を示す図である。
【図3】車内の空気を調節するための空気側体積流量を調整及び制御することにより、ヒートポンプ機能を実施するモジュール車両用空調装置の実施形態の例を示す図である。
【図4】車内の空気を調節するための2つの送風機を備え、ヒートポンプ機能を備えたモジュール車両用空調装置の実施形態の例を示す図である。
【図5】車内の空気を調節するための1つの送風機を備え、ヒートポンプ機能を備えたモジュール車両用空調装置の実施形態の例を示す図である。
【図6】車内の空気を調節するための再加熱機能を備え、ヒートポンプ機能を備えたモジュール車両用空調装置の実施形態の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、車両用空調装置1用の冷却器の冷媒回路100の基本的な構造を示す。構成部品は、凝縮器11、蒸発器12、好ましくは、電動の圧縮機13、及び電気的に調整可能な膨張装置14であり、これらは、接続ライン15、16、17及び18により互いに接続されている。圧縮機13は、小型モジュール車両用空調装置1と完全に一体化されている。冷却回路は、周囲環境に関する動的シールを備えず、それ故、理論的に漏れが無く、車両の組み立て前、又は納品前に車両製造工場で冷媒を充填することができる。蒸発器12は熱を吸収でき、車両への供給空気を冷却する。そして、蒸発器−圧縮機接続ライン15を通して冷媒蒸気を圧縮機13に送ることができ、冷媒蒸気は圧縮される。圧縮された冷媒蒸気は、圧縮機−凝縮器接続ライン16を介して凝縮器11に導かれる。冷媒蒸気はここで凝縮して熱を放出する。凝縮液は、凝縮器−膨張装置接続線17を介して膨張装置14に流れ、ここから膨張状態に戻り、膨張装置−蒸発器接続ライン18を通って蒸発器12に送られる。このようにして、要求される温度レベルは、基本設計1内の小型モジュール車両用空調装置、及び車両の客室のための空気の冷却、除湿及び加熱に対応する要件を満たすために利用可能となる。
【0048】
図2では、回路の熱を吸収するための冷却器21として追加の蒸発器を備えた設計における、車両用空調装置2用の冷媒回路200の基本的な構造が示されている。構成部品は、凝縮器11、蒸発器12、好ましくは電動の圧縮機13、及び、好ましくは電気的に調整可能な膨張装置14に加えて、冷却器21があり、これらは、接続ライン16、17、22及び23により互いに接続されている。圧縮機13は、小型モジュール車両用空調装置1と完全に一体化されることが好ましい。冷却回路は、周囲環境に関する動的シールを備えず、それ故、理論的に漏れが無く、車両内での組み立て前、又は納品前に車両製造工場で冷媒を充填することができる。蒸発器12は熱を吸収でき、蒸発器−圧縮機−冷却器接続ライン22を介して冷媒蒸気を圧縮機13に送ることができ、冷媒蒸気は圧縮される。圧縮された冷媒蒸気は、圧縮機−凝縮器接続ライン16を介して凝縮器11に導かれる。冷媒蒸気はここで凝縮して熱を放出する。凝縮液は、凝縮器−膨張装置接続ライン17を介して膨張装置14に流れ、膨張状態で、ここから膨張装置−蒸発器−冷却器接続ライン23を介して、蒸発器12に並行して、又は交互に冷却器21に送られる。ここで、冷却器21には、図示しない追加の遮断弁又は膨張弁を設けなければならない。このようにして、必要な温度レベルは、車両の客室に送る空気の冷却及び加熱に対応する要件のための冷却器21を有する小型モジュール車両用空調装置2に利用可能であり、車両のバッテリ、パワーエレクトロニクス、又は他の構成部品などの冷却のために利用可能である。ヒートポンプ機能を備えた空気側連結部では、水冷式の駆動部品の廃熱を熱源として用いることが望ましい。
【0049】
図3では、ヒートポンプ機能を備えた冷媒回路100を有する本発明によるモジュール車両用空調装置1の実施形態の例を示す。この図は、車両の全体構造におけるモジュール車両用空調装置1の配置、特に、外気と客室10との関係を示す。図1に説明した従来の冷却回路は、ヒートポンプ機能を備えた冷却器において図3の空気側連結部を利用して実装される。蒸発器側の第1のハウジング部99では、外気供給流108が、図示しない送風機により吸引される。外気は外気供給ダクト106を通り、供給気流用調整フラップ110を通過後、蒸発器12に達し、冷却され、供給気流104の中で調整フラップ114及び113を通過した後に、供給空気ダクト102を通り客室10に達する。同様に、凝縮器側の第2のハウジング部98では、外気供給流107が、図示しない送風機により吸引される。外気は外気供給ダクト105を通り、供給気流用調整フラップ109を通過後、凝縮器11に達し、温められ、供給空気104の中で調整フラップ112及び113を通過した後に、供給空気ダクト102を通り客室10に達する。
【0050】
客室10からの廃気流103は、図示しない送風機により送気され、客室から廃気ダクト101を通り導かれ、調整フラップ112、113及び114を通過した後に、それらの位置に応じて、完全又は部分的に凝縮器11に入るか、蒸発器12に供給される。
【0051】
冷却運転と加熱運転との切り替え、又は加熱運転の実施は、車両の客室10のための空気の冷却及び除湿、及びその再加熱のための動作であり、凝縮器11及び蒸発器12の排出口における空気側部分質量流を調整することにより行われる。フラップ112、113及び114の位置により部分質量流を調整することにより、室内に不要な部分質量流が導かれ、蒸発器12又は凝縮器11を通過させた後、廃気ダクト111を通り周囲環境に送ることができる。
【0052】
図4に、2つの送風機120及び121を備え、ヒートポンプ機能を備えた、本発明によるモジュール車両用空調装置1の追加的な実施形態を示す。送風機120及び121は、別々に調整可能であり、他のシステムと比較してよりよい動的性能が可能である。なぜならば、冷気側は蒸発器12を利用して供給することができ、暖気側は凝縮器11を用いるため、気流が異なる速度で流れ、それ故、運転条件の変化に対応する迅速な反応が可能だからである。
【0053】
ハウジングの蒸発器側の送風機120は、蒸発器側の第1のハウジング部99において、蒸発器側の外気流用調整フラップ125が開いている場合には、そこを通して、又は、蒸発器側の再循環空気用調整フラップ126が開いている場合には、そこを通して、蒸発器側の供給空気ダクト122を通して空気を引き込み、蒸発器12に導く。空気をここで冷却し、冷気流を構成する。
【0054】
蒸発器12から出た冷気流は、周囲環境に送られる空気の部分質量流138と、客室に送られる空気の部分質量流139とに、要求される比率で分かれ得る。又は、1つの通路にその全部が配分することができる。これはフラップ130及び133を通って行われる。
【0055】
空気の部分質量流138の冷気は、冷気用廃気ダクト128を通じて周囲環境に送られる。
【0056】
客室に送られる空気の部分質量流139の冷気は、フラップ133を通って混合区画115に供給される。空気の高温及び低温部分質量流139用の混合区画が、フラップ133及び132の後方に形成される。
【0057】
送風機120と同様に、凝縮器側の第2のハウジング部98における送風機121は、凝縮器側の外気流用調整フラップ124が開いている場合には、そこを通して、又は、凝縮器側の再循環空気用調整フラップ127が開いている場合には、そこを通して、凝縮器側の供給空気ダクト123を通して空気を引き込み、凝縮器11に導く。空気をここで暖めて、暖気流を構成する。
【0058】
凝縮器11から出た暖気流は、周囲環境に送られる空気の部分質量流138と、客室に送られる空気の部分質量流139とに、要求される比率で分割することができる。又は、1つの通路にその全部が配分されてもよい。これはフラップ131及び132を通って行われる。
【0059】
空気の部分質量流138の暖気は、暖気用廃気ダクト129を通じて周囲環境に達する。
【0060】
空気の部分質量流139の暖気は、暖気用の調整フラップ132を通って混合区画115に供給される。
【0061】
混合区画115から出た混合空気は、空気ダクト134を介して客室の窓の内側のウィンドウデフロスタ、ダクト136を通りフットスペース、そして空気ダクト135を通り、人137の中央への気流として導かれる。個々のダクトへの空気の必要な分配は、要件に従い、図示しない、例えばフラップなどの制御要素を用いて達成される。
【0062】
処理空気量が室内に必要な量を上回る場合には、これは特定の運転条件下で起こり得るが、過剰空気が廃気ダクト128及び129を通して周囲環境に導かれる。
【0063】
図5では、ヒートポンプ機能を備えた、本発明によるモジュール車両用空調装置1のさらなる実施形態の例を示す。図4と比較して、これは、冷気側及び暖気側に共通の送風機140を備えた設計を行う。
【0064】
この設計は、モジュール車両用空調装置1の構成を簡単にするが、運転に適応した調整が必要となる。なぜならば、送風機の2つの側に空気を供給する必要があり、また、客室10用の空気量及び温度が、調整フラップ130、131、132及び133の設定のみに影響される可能性があるからである。流路ごとの空気量は、吸気フラップ124、125、126及び127により制御されなければならない。ここで、送風機140は2つの部分に分けられる。
【0065】
車両用空調装置の構成及び機能は、送風機140を除いて図4に示すものと同じである。このため、図4に関する記載が参照される。
【0066】
図6に、ヒートポンプ機能を備えた本発明によるモジュール車両用空調装置1の追加的な実施形態の例を示す。図5による実施形態の例と比較して、調整フラップ201を利用して実現可能な追加的な再加熱機能を実施し、蒸発器12と凝縮器11との間、又は送風機140と凝縮器11との間の気流を調整することができる。
【0067】
蒸発器側の第1のハウジング部99内の送風機140は、蒸発器側の外気流用調整フラップ125が開いている場合には、そこを通して、又は、蒸発器側の再循環空気用調整フラップ126が開いている場合には、そこを通して、蒸発器側の供給空気ダクト122を通して空気を引き込み、蒸発器12に導く。空気をここで冷却する。冷気流は、周囲環境に送られる空気の部分質量流138と、混合区画115に送られる空気の部分質量流139とに分かれる。必要に応じて、廃冷気用調整フラップ130が開放している場合には、冷気は、冷気用廃気ダクト128を通じて外側に放出することができる。
【0068】
これと並行して、凝縮器側の第2のハウジング部98内の送風機140は、凝縮器側の外気流用調整フラップ124が開いている場合には、そこを通して、又は、凝縮器側の再循環空気用調整フラップ127が開いている場合には、そこを通して、凝縮器側の供給空気ダクト123から空気を引き込む。そして、送風機140と凝縮器11と間の気流用調整フラップ201が、凝縮器11又は冷却器21に流れる方向に開いている場合にはそこに空気を導く。空気はそこで暖められる。暖気流は、周囲環境に送られる空気の部分質量流138と、客室に送られる空気の部分質量流139とに分かれる。暖気は、暖気用の調整フラップ132を通り混合区画115に達する。
【0069】
図4及び図5による設計と同様に、混合区画115から混合空気は、空気ダクト134を通り客室の窓の内側のウィンドウデフロスタ、ダクト136を通りフットスペース、そして空気ダクト135を通り、人137への中央の気流として導かれる。個々のダクトへの空気の必要な分配は、要件に従い、図示しないフラップなどの制御要素により達成される。
【0070】
再加熱運転において、図6に示すように、調整フラップ201を開いている蒸発器12の後に、冷気流が凝縮器11に導かれ、調整フラップ133が部分的又は完全に閉塞する。これにより、その少なくとも一部が混合区画115を通り客室に送られる前に、除湿した冷気流が凝縮器11において再度暖められる。
【符号の説明】
【0071】
1 基本構造内のモジュール車両用空調装置
2 冷却器を有するモジュール車両用空調装置
10 客室
11 凝縮器
12 蒸発器
13 電動圧縮機
14 電気的に調整可能な膨張装置
15 蒸発器−圧縮機接続ライン
16 圧縮機−凝縮器接続ライン
17 凝縮器−膨張装置接続ライン
18 膨張装置−蒸発器接続ライン
21 冷却器
22 蒸発器−圧縮機−冷却器接続ライン
23 膨張装置−冷却器−蒸発器接続ライン
98 凝縮器側の第2のハウジング部
99 蒸発器側の第1のハウジング部
100 冷媒回路
101 客室からの廃気ダクト
102 客室に至る供給空気ダクト
103 客室からの廃気ダクト
104 客室への供給空気ダクト
105 凝縮器への外気供給ダクト
106 蒸発器への外気供給ダクト
107 凝縮器への外気供給流
108 蒸発器への外気供給流
109 凝縮器への外気供給流用調整フラップ
110 蒸発器への外気供給流用調整フラップ
111 廃気ダクト
112 凝縮器からの供給気流用調整フラップ
113 客室への供給気流用調整フラップ
114 蒸発器への供給気流用調整フラップ
115 フラップ132及び133後方の混合区画
120 蒸発器側の送風機
121 凝縮器側の送風機
122 蒸発器側の供給空気ダクト
123 凝縮器側の供給空気ダクト
124 凝縮器側の外気流用調整フラップ
125 蒸発器側の外気流用調整フラップ
126 蒸発器側の再循環気流用調整フラップ
127 凝縮器側の再循環気流用調整フラップ
128 冷気用廃気ダクト
129 暖気用廃気ダクト
130 廃冷気用調整フラップ
131 廃暖気用調整フラップ
132 客室への暖気の調整フラップ
133 客室への冷気用調整フラップ
134 ウィンドウデフロスタ用空気ダクト
135 人の中央への空気ダクト
136 フットスペース加熱用空気ダクト
137 人の中央への気流
138 周囲環境内への空気の部分質量流
139 客室への空気の部分質量流
140 共有の送風機
200 拡大構造の冷媒回路
201 蒸発器側と凝縮器側との間の気流用調整フラップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を加熱及び冷却するためのモジュール車両用空調装置(1)であって、
少なくとも1つの送風機(140、120、121)と、空気流路を設定するためのフラップと、を備えたハウジングと、
組み込まれた接続ラインと共に、凝縮器(11)、蒸発器(12)、圧縮機(13)、及び膨張装置(14)を備えた冷媒回路(100、200)と、を有し、
上記ハウジング内には、上記蒸発器(12)を通る蒸発器空気流路と上記凝縮器(11)を通る凝縮器空気流路とが形成され、各空気流路が、周囲環境からの新鮮な外気、客室からの再循環空気、又はこれら2つの混合物を供給するように形成され、
2つの空気流路は、上記車内の加熱又は冷却が上記空気流路の設定によって行われるように、制御可能なフラップを介して互いに連通することを特徴とするモジュール車両用空調装置(1)。
【請求項2】
上記ハウジングは、2つのハウジング部(98、99)を備え、各ハウジング部分内には、空気流路が形成されている請求項1に記載のモジュール車両用空調装置。
【請求項3】
上記ハウジングは、更に、第3のハウジング部を備え、構成部品を通って導かれる空気用の流路が、2つのハウジング部(98、99)により形成され、上記第3のハウジング部は、空気が通り抜けない全ての冷却回路部品を収容する請求項1又は2に記載のモジュール車両用空調装置(1)。
【請求項4】
上記2つのハウジング部(98)及び(99)には、2つの流路に対して空気を搬送するための共通の送風機(140)が設けられている請求項1乃至3の何れか1項に記載のモジュール車両用空調装置(1)。
【請求項5】
空気側において、上記2つのハウジング部(98)及び(99)を分離又は接続する再加熱用のフラップ(201)が設けられている請求項1乃至4の何れか1項に記載のモジュール車両用空調装置(1)。
【請求項6】
空気は、各流路の端部において2つの部分質量流に分けられ、そのうちの1つの空気の部分質量流(139)は、客室(10)に導くことができるように設計され、空気の第2の部分質量流(138)は、周囲環境に導くことができるように設計されている請求項1乃至5の何れか1項に記載のモジュール車両用空調装置(1)。
【請求項7】
2つの空気搬送ハウジング部(98)及び(99)は、車両内に存在する設置スペースに応じて、客室(10)下方、カウル、エンジン室内又はトランク内に配置することができるように、互いに異なるように設計されて配置されている請求項1乃至6の何れか1項に記載のモジュール車両用空調装置(1)。
【請求項8】
車内の空気の調節のために、及び、駆動バッテリ、パワーエレクトロニクスユニット又は車両の別の構成部品のさらなる冷却のために、冷却器(21)が冷媒回路(200)に配置され、ライン(22、16、17、23)によって冷媒回路(200)に組み込まれる請求項1乃至7の何れか1項に記載のモジュール車両用空調装置(1)。
【請求項9】
冷却回路(100)は、電動圧縮機(13)と、電気的に調整可能な膨張装置14と、を備え、上記ハウジング内に一体化されている請求項1乃至8の何れか1項に記載のモジュール車両用空調装置。
【請求項10】
自動車の車内(10)の空気を加熱、冷却及び除湿するためのヒートポンプ機能を備えた冷媒回路(100、200)を運転するための方法であって、
冷却運転と加熱運転とを切り替え、及び/又は、凝縮器と蒸発器の排出口における空気側部分質量流を調整することのみによって再加熱運転を実施し、
車内に供給される部分質量流は、客室に供給される空気の要求温度に達するように調整されることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−63766(P2013−63766A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−188032(P2012−188032)
【出願日】平成24年8月10日(2012.8.10)
【出願人】(505450755)ビステオン グローバル テクノロジーズ インコーポレイテッド (140)
【Fターム(参考)】