説明

ヒートポンプ給湯室外機

【課題】ヒートポンプ給湯室外機のコストの増加を抑制しながら、ヒートポンプ給湯室外機の筐体各部の振動を抑制し、筐体各部から放射される騒音や低周波音を抑制することのできるヒートポンプ給湯室外機を提供すること。
【解決手段】本発明のヒートポンプ給湯室外機は、筐体と、筐体内に設けられ、封入した冷媒が循環する冷媒回路と、筐体内に設けられ、筐体外から供給される水と冷媒との熱交換を行う水冷媒熱交換器8と、一端が水冷媒熱交換器8に接続され、他端が筐体に対して固定され、筐体外から供給される水あるいは筐体外へ供給される湯が通る接続水配管19,20と、を備え、接続水配管19,20の少なくとも一部は、管壁に螺旋状または環状の山谷部が形成された山谷付き管で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ給湯室外機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気の熱を吸収して湯を沸かすことのできる、エネルギー効率に優れたヒートポンプ式給湯システムが広く用いられている。ヒートポンプ式給湯システムを構成するヒートポンプ給湯室外機には、空気の熱を冷媒に吸熱させる空気冷媒熱交換器、この空気冷媒熱交換器に送風する送風機、冷媒を圧縮する圧縮機、冷媒の熱によって水を加熱する水冷媒熱交換器などが搭載されている。
【0003】
特許文献1には、両端部を除く領域の外周に複数条の山谷部の谷部を各条ごとに連続して螺旋状に形成した熱交換用水配管と、この熱配管用水配管の山谷部の谷部に沿って巻き付けられた冷媒配管とを備えた、ヒートポンプ給湯室外機の水冷媒熱交換器が開示されている。この水冷媒熱交換器の熱交換用水配管の両端部には、山谷部の無い平滑部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−336885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヒートポンプ給湯室外機には、重量が大きく横に長い形状の水冷媒熱交換器が、発泡材等の収納容器に収納されて、ベース上面に設置されている。また、圧縮機が、ゴム部材あるいは金属スプリング部材等の防振マウントを介してベース上面に設置されている。圧縮機と水冷媒熱交換器とは、冷媒配管により接続され、圧縮機と水冷媒熱交換器とがベース上面に横に並べて設置されている。また、水冷媒熱交換器と筐体側部とは、通常入水用と出湯用との2本の接続水配管により接続されている。この接続水配管には、円管(平滑管)が使用されている。
【0006】
ヒートポンプ給湯室外機の運転中に、圧縮機の振動が冷媒配管を介して水冷媒熱交換器に伝達し、この水冷媒熱交換器の振動は、接続水配管を介して筐体側部まで伝達し、筐体各部に伝達する。これにより、ヒートポンプ給湯室外機の筐体各部の振動が増加したり、筐体各部から放射される騒音や低周波音が増加する等の問題がある。このような振動、騒音、低周波音の増加を抑制するためには、筐体各部への防振部材の貼り付け、筐体各部の板厚増加、筐体各部への補強部材取付け等が必要となり、コストが著しく増加するという問題がある。
【0007】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、ヒートポンプ給湯室外機のコストの増加を抑制しながら、ヒートポンプ給湯室外機の筐体各部の振動を抑制し、筐体各部から放射される騒音や低周波音を抑制することのできるヒートポンプ給湯室外機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るヒートポンプ給湯室外機は、筐体と、筐体内に設けられ、封入した冷媒が循環する冷媒回路と、筐体内に設けられ、筐体外から供給される水と冷媒との熱交換を行う水冷媒熱交換器と、一端が水冷媒熱交換器に接続され、他端が筐体に対して固定され、筐体外から供給される水あるいは筐体外へ供給される湯が通る接続水配管と、を備え、接続水配管の少なくとも一部は、管壁に螺旋状または環状の山谷部が形成された山谷付き管で構成されているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水冷媒熱交換器と筐体を接続する接続水配管の少なくとも一部を構成する山谷付き管にて振動が低減するので、筐体への振動の伝達を抑制することができる。このため、ヒートポンプ給湯室外機の筐体各部から放射される騒音、低周波音を確実に抑制することが可能となる。また、振動、騒音、低周波音の増加を抑制するための筐体各部への防振部材の貼り付け、筐体各部の板厚増加、筐体各部への補強部材取付け等が不要または削減可能となるので、コストの増加を抑制しながら振動、騒音、低周波音の面で優れたヒートポンプ給湯室外機を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1のヒートポンプ給湯室外機の全体の分解斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1のヒートポンプ給湯室外機のベースに対する水冷媒熱交換器の設置状態を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1のヒートポンプ給湯室外機の内部構造を示す正面図および要部拡大図である。
【図4】本発明の実施の形態2のヒートポンプ給湯室外機の要部拡大図である。
【図5】本発明の実施の形態3のヒートポンプ給湯室外機の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1のヒートポンプ給湯室外機の全体の分解斜視図である。なお、図1中では、左下が前方、右上が後方である。図2は、本発明の実施の形態1のヒートポンプ給湯室外機のベースに対する水冷媒熱交換器の設置状態を示す分解斜視図である。図3は、本発明の実施の形態1のヒートポンプ給湯室外機の内部構造を示す正面図および要部拡大図である。
【0013】
まず、本実施形態のヒートポンプ給湯室外機の全体構成について説明する。図1に示すように、本実施形態のヒートポンプ給湯室外機1は、その構成機器を収容する筐体を有している。この筐体は、底部を構成するベース17と、前面および左側面を覆う前面左側面部18aと、後面および右側面を覆う後面右側面部18bと、上面を覆う上面部18cとを組み合わせて構成されている。上記筐体は、主に板金材等で構成される。ヒートポンプ給湯室外機1は、空気冷媒熱交換器7の設置部以外は、上記筐体で覆われている。上記筐体の内部には、仕切板16が設けられ、この仕切板16により、前面から見て右側の機械室14と、左側の送風機室15とに筐体内部が区画されている。
【0014】
図示を省略しているものもあるが、機械室14内には、冷媒を圧縮するための圧縮機2、冷媒を減圧するための膨張弁、これらを接続する吸入管4や吐出管5等の冷媒配管、その他の冷媒回路部品が組み込まれている。送風機室15内には、送風機6と、この送風機6に隣接する空気冷媒熱交換器7とが組み込まれている。送風機室15内は、風路確保のため大きな空間を有している。
【0015】
圧縮機2は、吐出管5を介して水冷媒熱交換器8の冷媒入口部と接続されている。水冷媒熱交換器8の冷媒出口部は、冷媒配管を介して膨張弁の入口部と接続されている。膨張弁の出口部は、別の冷媒配管を介して空気冷媒熱交換器7の冷媒入口部と接続されている。空気冷媒熱交換器7の冷媒出口部は、吸入管4を介して圧縮機2と接続されている。また、冷媒配管の途中には、その他の冷媒回路部品が取り付けられている場合もある。このように構成された冷媒回路の密閉空間内に所定の量の冷媒(例えばCO冷媒)が封入されている。
【0016】
図2に示すように、水冷媒熱交換器8は、前方から見て左右に長い略直方体形状の外形を有する発泡材の収納容器12に収納され、送風機室15内の送風機6の下方に位置するベース17の上面に設置されている。水冷媒熱交換器8を収納した収納容器12は、ベース17に取り付けられた板金材の収納囲部材10に囲まれ、発泡材の収納容器蓋13により上側を覆われる。この収納容器蓋13を更に覆うように、板金材の収納蓋部材11が設置される。
【0017】
図1に示すように、機械室14の上方および送風機室15の上方の一部には、圧縮機2、膨張弁、送風機6等を駆動制御するインバータ電源等の電気部品を収納した電気部品収納箱9が組み込まれている。電気部品収納箱9の右部には、外部電気配線を接続する端子台9aがあり、この端子台9aを保護するため、サービスパネル23が筐体の後面右側面部18bの右側面部に取り付けられている。また、ヒートポンプ給湯室外機1の右側面部には、外部水配管A(図示せず)が接続される接続部となる水入口バルブ29と、外部水配管B(図示せず)が接続される接続部となる給湯出口バルブ30とが設けられている。水入口バルブ29は、給湯出口バルブ30の下方に位置している。筐体の外部へ突出する水入口バルブ29および給湯出口バルブ30を保護するため、サービスパネル24が筐体の後面右側面部18bの右側面部に取り付けられている。
【0018】
図3に示すように、水入口バルブ29および給湯出口バルブ30は、バルブベッド28に取り付けられており、このバルブベッド28が筐体の後面右側面部18bの右側面部に取り付けられている。このように、水入口バルブ29および給湯出口バルブ30は、バルブベッド28を介して筐体に固定されている。機械室14内には、接続水配管19および接続水配管20が通っている。接続水配管19の一端は、水冷媒熱交換器8の水入口部に接続されている。接続水配管19の他端は、筐体の内側から水入口バルブ29に接続されている。水入口バルブ29に接続された外部水配管A(図示せず)により供給される水は、接続水配管19を通って、水冷媒熱交換器8の水入口部に流入する。接続水配管20の一端は、水冷媒熱交換器8の給湯出口部に接続されている。接続水配管20の他端は、筐体の内側から給湯出口バルブ30に接続されている。水冷媒熱交換器8の給湯出口部から流出する湯は、接続水配管20を経由して、給湯出口バルブ30に接続された外部水配管B(図示せず)に送られる。このような構成により、接続水配管19の水入口バルブ29側の端部および接続水配管20の給湯出口バルブ30側の端部は、バルブベッド28を介して、筐体に固定された状態となっている。接続水配管19および接続水配管20は、金属材料で構成される。
【0019】
次に、水冷媒熱交換器8の構造と機能について説明する。水冷媒熱交換器8は、管壁に螺旋状の山谷部(凹凸)が形成された山谷付き管8aと、この山谷付き管8aの外周の谷部(凹部)に沿って螺旋状に巻き付けられた冷媒配管8bとを有している。冷媒配管8bは、山谷付き管8aの外周の谷部に挿入して密着接合され、ハンダ付けあるいはロウ付け等により接合が固着されている。このような構成により、山谷付き管8a内を流れる水と、冷媒配管8b内を流れる冷媒との間で熱交換が行われる。このような山谷付き管8aおよび冷媒配管8bの接合構造体が、数回曲げ成形されて略長円コイル状になった状態で、略直方体形状の収納容器12内に収納されている。本実施形態の山谷付き管8aは、3条の山谷部を有している。圧縮機2から吐出された冷媒が通る吐出管5は、3本の冷媒配管8bに分岐し、この3本の冷媒配管8bが山谷付き管8aの外周の3条の谷部に沿ってそれぞれ巻き付けられている。ただし、本発明における水冷媒熱交換器8は、図示の構成に限らず、1条の山谷部を有する山谷付き管の外周の谷部に沿って1本の冷媒配管を巻き付けた構成となっていてもよい。
【0020】
図3の要部拡大図において、接合端部8cより左側の範囲では山谷付き管8aと冷媒配管8bとが接合(固着)されており、接合端部8cより右側の範囲では、山谷付き管8aと冷媒配管8bとが分離している。冷媒配管8bと分離した山谷付き管8aは、そのまま延長されて、接続水配管20を構成している。すなわち、接続水配管20を構成する山谷付き管は、水冷媒熱交換器8を構成する山谷付き管8aから連続して設けられている。熱交換は接合端部8cより左側の範囲において行われるので、接合端部8cは水冷媒熱交換器8の端部(給湯出口部)に相当する。したがって、接合端部8cから給湯出口バルブ30までの範囲が接続水配管20に相当する。本実施形態の接続水配管20は、接合端部8cから給湯出口バルブ30までのほぼ全範囲に渡って、山谷付き管で構成されている。
【0021】
図示を省略するが、接続水配管19も接続水配管20と同様にして山谷付き管で構成されている。すなわち、水冷媒熱交換器8の山谷付き管8aが水入口部で冷媒配管8bと分離してそのまま延長されて、接続水配管19を構成している。本実施形態の接続水配管19は、水冷媒熱交換器8の水入口部から水入口バルブ29までのほぼ全範囲に渡って、山谷付き管で構成されている。
【0022】
次に、水冷媒熱交換器8以外の機能部品について説明する。圧縮機2の内部には、冷媒の圧縮動作を行う圧縮部(図示せず)と、圧縮部と接続され圧縮部を駆動するモータ(図示せず)とが組み込まれ、外部から電源供給される事によりモータと圧縮部が所定の回転数で駆動するようになっている。また、圧縮機2の下部に設けられた脚板2aの下面には、3〜4個程度の概略円筒形のゴムあるいは金属コイルの成形品からなる防振マウント3が取り付けられている。防振マウント3は、ベース17上面に固定され、圧縮機2を弾性的に支持している。また、冷媒を吸入するための吸入管4が圧縮機2に取り付けられ、冷媒を圧縮機2内部で圧縮後、吐出するための吐出管5が圧縮機2に取り付けられている。
【0023】
送風機6は、2〜3枚のプロペラ翼と、プロペラ翼を回転駆動させるモータとが組み合わされて構成され、外部からの電源供給によりモータとプロペラ翼が所定の回転数で回転するようになっている。膨張弁(図示せず)は、冷媒流路本体外側面にコイル部材が取り付けられ、コイル部材に外部から通電する事により発生する電磁作用により、内部の流路抵抗調節部を稼動させて冷媒の流路抵抗を調節し、膨張弁の冷媒上流側高圧と冷媒下流側低圧を所定の圧力に調節している。空気冷媒熱交換器7は、複数回往復曲げ成形された長い冷媒配管に多数のアルミ薄板のフィンが密着して略平板状になっており、冷媒配管内の冷媒とフィン周辺の空気とで熱交換が行われるようになっており、送風機6による送風でフィン周辺を流れて通過する空気の風量が増やされて調節され、熱交換の量が増やされて調節されている。電気部品収納箱9は圧縮機2、膨張弁、送風機6等を駆動制御するインバータ電源等の電気部品を収納し、インバータ電源は、圧縮機2のモータの回転数を数十rps(Hz)〜百rps(Hz)程度の所定の回転数に変化させ、また、膨張弁の開度を所定の量に変化させ、また、送風機6の回転数を数百rpm〜千rpm程度の所定の回転数に変化させるよう制御している。
【0024】
次に、ヒートポンプ給湯室外機1と貯湯装置との組み合わせ構成について説明する。ヒートポンプ給湯室外機1は、貯湯装置(図示せず)と組み合わせて使用することができる。貯湯装置には例えば数百リットル程度の容量の貯湯タンクと、貯湯タンク内の水を外部に送る送水ポンプとが組み込まれ、送水ポンプの入口部は貯湯タンク下部に接続された配管に接続され、送水ポンプの出口部は外部水配管A(図示せず)に接続され、貯湯タンク上部に接続された配管には外部水配管B(図示せず)が接続されている。ヒートポンプ給湯室外機1と貯湯装置とは、外部水配管A(図示せず)、外部水配管B(図示せず)および電気配線(図示せず)を介して接続されている。外部水配管Aの貯湯タンク接続側と反対側はヒートポンプ給湯室外機1のサービスパネル24内の水入口バルブ29と接続され、外部水配管Bの貯湯タンク接続側と反対側はヒートポンプ給湯室外機1のサービスパネル24内の給湯出口バルブ30と接続されている。このようにヒートポンプ給湯室外機1と貯湯装置とで給湯回路が構成されている。
【0025】
次に、貯湯装置内の貯湯タンク内の湯量を増やすための沸き上げ運転におけるヒートポンプ給湯室外機1の動作について説明する。電気部品収納箱9に収納されたインバータ電源から圧縮機2内のモータに電源供給されるとモータが駆動し、モータと接続された圧縮機2内の圧縮部が駆動する。インバータ電源は、モータの回転数を数十rps(Hz)〜百rps(Hz)程度の所定の回転数に変化させ、冷媒が循環して行われるヒートポンプサイクルの循環速度、冷媒の流量を変化させる事により、所定の沸き上げ能力に調節制御している。
【0026】
また、電気部品収納箱9に収納されたインバータ電源から送風機6のモータに電源供給されるとモータが駆動し、モータと接続された送風機6のプロペラ翼が回転駆動する。インバータ電源は、モータの回転数を数百rpm〜千rpm程度に変化させ、空気冷媒熱交換器7を通過する空気の流量を変化させる事により、空気冷媒熱交換器7での冷媒と空気の熱交換量を所定の量に調節制御している。空気は送風機6により送風機6の後方に設置された空気冷媒熱交換器7の後方から吸い込まれ、空気冷媒熱交換器7を通過し、空気冷媒熱交換器7と反対側の前方へ排出される。
【0027】
また、電気部品収納箱9に収納されたインバータ電源から膨張弁の冷媒流路本体外側面に取り付けられたコイル部材に通電されると、冷媒流路本体内部の流路抵抗調節部を稼動させて冷媒の流路抵抗度を調節し、膨張弁の上流側高圧と下流側低圧の冷媒を所定の圧力に調節制御している。
【0028】
圧縮機2の回転数、送風機6の回転数、膨張弁の流路抵抗度は、ヒートポンプ給湯室外機1の設置環境、使用環境に応じて制御される。圧縮機2内の圧縮部が駆動すると圧縮部内で冷媒の圧縮動作が行われ、低圧冷媒は吸入管4から圧縮機2に吸入される。低圧冷媒は圧縮機2内の圧縮部で高温高圧冷媒に圧縮され、圧縮機2から吐出管5に吐出され、高温高圧冷媒は吐出管5から水冷媒熱交換器8の冷媒入口部に流入する。高温高圧冷媒は、水冷媒熱交換器8の冷媒配管8bを通って山谷付き管8a内の低温水と熱交換し、低温水を加熱して高温湯を生成させる。高温高圧冷媒は水冷媒熱交換器8でエンタルピを低下させ、温度を低下させて水冷媒熱交換器8の冷媒出口部から膨張弁の入口部に流入する。高圧冷媒は膨張弁で所定の圧力に減圧され温度降下し低温低圧冷媒となり膨張弁の出口部から空気冷媒熱交換器7入口部に流入する。低温低圧冷媒は空気冷媒熱交換器7で空気と熱交換し、エンタルピを増加させ、空気冷媒熱交換器7の出口部から吸入管4に流入し、圧縮機2に吸入される。このように冷媒が循環してヒートポンプサイクルが行われる。
【0029】
同時に、貯湯装置内の水ポンプにより貯湯装置内の貯湯タンク内下部の低温水が外部水配管Aを通り、ヒートポンプ給湯室外機1の水入口バルブ29を介して接続水配管19に流入し、水冷媒熱交換器8の水入口部に流入し、水冷媒熱交換器8で冷媒と熱交換し加熱されて高温湯に生成される。生成された高温湯は水冷媒熱交換器8の給湯出口部から接続水配管20に流入し、給湯出口バルブ30を介して外部水配管Bを通り、貯湯装置内の貯湯タンク上部に戻される。このように貯湯タンク内の高温湯の量が増やされている。
【0030】
次に、圧縮機2の動作と、ヒートポンプ給湯室外機1の振動、騒音、低周波音発生との関係について説明する。圧縮機2内の圧縮部が駆動し、圧縮部内で冷媒の圧縮動作が行われる時、冷媒の圧力変動および内部可動部品の動作により、圧縮機2には上下方向、横方向等いくつかの方向のそれぞれ並進振動、回転振動が発生する。それらの振動の周波数成分は、圧縮機2の回転数整数倍で、低い倍数の周波数成分の方が大きく発生する傾向が高い。圧縮機2の振動は、下記(ア)〜(オ)に例示するような経路により、防振マウント3および配管類を介して、ベース17、筐体各部に伝達する。
【0031】
(ア)圧縮機2→防振マウント3→ベース17
(イ)圧縮機2→吸入管4→空気冷媒熱交換器7→ベース17→筐体各部
(ウ)圧縮機2→吐出管5→水冷媒熱交換器8→ベース17→筐体各部
(エ)圧縮機2→吐出管5→水冷媒熱交換器8→接続水配管19→水入口バルブ29→バルブベッド28→筐体の後面右側面部18b→筐体各部
(オ)圧縮機2→吐出管5→水冷媒熱交換器8→接続水配管20→給湯出口バルブ30→バルブベッド28→筐体の後面右側面部18b→筐体各部
【0032】
このように、圧縮機2の振動が上記(ア)〜(オ)のような経路でベース17、筐体各部に伝達し、ヒートポンプ給湯室外機1の振動、騒音、低周波音の原因となり得るが、本発明者の研究によれば、従来、とりわけ(エ)および(オ)の振動伝達がヒートポンプ給湯室外機1の振動、騒音、低周波音の大きな要因となっている。これは、接続水配管19および接続水配管20には冷媒配管より外径の大きい配管が使用されるため、接続水配管19および接続水配管20として金属製の平滑管が用いられている従来の構成では、接続水配管19および接続水配管20の剛性が高く、広範囲の周波数の振動が接続水配管19および接続水配管20によって筐体に伝達し易い特性があることが原因である。
【0033】
これに対し、本実施形態のヒートポンプ給湯室外機1では、接続水配管19および接続水配管20が、可撓性を有し、振動を吸収し易い山谷付き管で構成されているので、振動が接続水配管19、接続水配管20を伝って水入口バルブ29、給湯出口バルブ30に伝達するまでの間に、広い範囲の周波数成分の振動が山谷付き管によって吸収されて十分に低減する。このため、筐体各部の振動が確実に抑制され、筐体各部から放射される騒音、低周波音の発生を確実に抑制することができる。また、従来、振動、騒音、低周波音の増加を抑制するためには筐体各部への防振部材の貼り付け、筐体各部の板厚増加、筐体各部への補強部材取付け等が必要で、コストが著しく増加する問題点があったが、本実施形態によれば、これらの対策が不要または削減可能となり、コストを低減することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態では、接続水配管19、接続水配管20を構成する山谷付き管は、水冷媒熱交換器8を構成する山谷付き管8aから連続して設けられているため、製造時に、接続水配管19、接続水配管20を水冷媒熱交換器8に接続するための工程が不要となる。すなわち、従来は、水冷媒熱交換器8に別部材からなる接続水配管19、接続水配管20を接続してロウ付けしているが、そのための組立工程が不要になるので、組立コストを低減することができる。
【0035】
更に、本実施形態では、接続水配管19、接続水配管20は、水冷媒熱交換器8との接続箇所から、筐体に対する固定箇所である水入口バルブ29、給湯出口バルブ30付近までの全範囲において山谷付き管で構成されているので、振動をより確実に吸収、低減することができる。このため、筐体各部への振動の伝達がより確実に抑制され、筐体各部から放射される騒音、低周波音の発生をより確実に抑制することができる。
【0036】
ただし、本発明では、必ずしも接続水配管19、接続水配管20のほぼ全部を山谷付き管で構成する必要はなく、接続水配管19、接続水配管20の一部の区間が山谷付き管で構成されていればよい。その場合、少なくとも、水冷媒熱交換器8との接続箇所から収納容器12の外部に至るまでの部分の接続水配管19、接続水配管20が山谷付き管で構成されていることが好ましい。これにより、振動を十分に吸収、低減することができ、筐体各部への振動の伝達が確実に抑制され、筐体各部から放射される騒音、低周波音の発生を確実に抑制することができる。
【0037】
以上説明したように、接続水配管19、接続水配管20の少なくとも一部を山谷付き管で構成することにより、ヒートポンプ給湯室外機1の振動、騒音、低周波音の低減に大きな効果があり、コストの増加を抑制しながら振動、騒音、低周波音の面で優れたヒートポンプ給湯室外機1を得ることができる。給湯を行うヒートポンプ給湯室外機1は、深夜電力を利用する場合が多く、深夜の振動、騒音、特に低周波音には使用者の関心が高く、本発明による低周波音低減効果は著しく貢献する。また、CO冷媒を使用したヒートポンプ給湯室外機1の場合には、R410A冷媒を使用した空調機と比較して圧縮機2に発生する振動が大きいため、深夜電力利用に際して深夜の低周波音低減に貢献する本発明の有用性は更に大きくなる。
【0038】
実施の形態2.
次に、図4を参照して、本発明の実施の形態2について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。
【0039】
図4は、本発明の実施の形態2のヒートポンプ給湯室外機の要部拡大図である。図4に示すように、本実施形態のヒートポンプ給湯室外機1の水冷媒熱交換器8は、断面が略円形の平滑管で構成される水配管8dの外周部に1本の冷媒配管8eが平行に密着接合され、ハンダ付けあるいはロウ付け等により接合が固着された構成となっている。このような水配管8dおよび冷媒配管8eの接合構造体が、数回曲げ成形されて略長円コイル状になった状態で、略直方体形状の収納容器12内に収納されている。水冷媒熱交換器8の給湯出口部となる水配管8dの端部8fには、山谷付き管で構成された接続水配管20がロウ付け等により接合されている。図示を省略するが、接続水配管19も接続水配管20と同様にして山谷付き管で構成されている。
【0040】
このような本実施形態のヒートポンプ給湯室外機1によれば、実施の形態1と同様の効果が得られる。すなわち、圧縮機2に起因する振動が接続水配管19、接続水配管20を伝って水入口バルブ29、給湯出口バルブ30に伝達するまでの間に、広い範囲の周波数成分の振動が山谷付き管によって吸収されて十分に低減する。このため、筐体各部の振動が確実に抑制され、筐体各部から放射される騒音、低周波音の発生を確実に抑制することができる。
【0041】
このように、山谷付き管で構成された接続水配管19、接続水配管20を水冷媒熱交換器8に接合することにより、水冷媒熱交換器8の構造にかかわらず、本発明を適用することが可能である。なお、図示の構成では、接続水配管19、接続水配管20を構成する山谷付き管として、実施の形態1と同様に管壁の山谷部が螺旋状に形成されたものを用いているが、本実施形態では、管壁に環状の山谷部が長手方向に沿って多数並んで形成された山谷付き管によって接続水配管19、接続水配管20の少なくとも一部を構成するようにしてもよい。
【0042】
実施の形態3.
次に、図5を参照して、本発明の実施の形態3について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。
【0043】
図5は、本発明の実施の形態3のヒートポンプ給湯室外機の要部拡大図である。図5に示すように、本実施形態のヒートポンプ給湯室外機1では、山谷付き管で構成された接続水配管20を覆う防振部材21が取り付けられている。防振部材21は、例えばゴム材料、樹脂材料等の弾性材料(弾力性を有する材料)で構成されている。本実施形態の防振部材21は、山谷付き管で構成された接続水配管20を密着して覆う円筒状に形成されている。図示を省略するが、山谷付き管で構成された接続水配管19にも同様の防振部材21が取り付けられている。
【0044】
本実施形態によれば、上述したような防振部材21を接続水配管19および接続水配管20に取り付けたことにより、実施の形態1と比べて、圧縮機2に起因する振動が接続水配管19、接続水配管20を伝って水入口バルブ29、給湯出口バルブ30に伝達するまでの間に広い範囲の周波数成分の振動が更に低減するとともに、接続水配管19と接続水配管20の各々の固有振動数付近の周波数成分を中心とした振動も確実に低減する。このため、筐体各部の振動がより確実に抑制され、筐体各部から放射される騒音、低周波音の発生をより確実に抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態の防振部材21は、その内周に山谷部を有しており、接続水配管19、接続水配管20を構成する山谷付き管の外周の山谷部と防振部材21の内周の山谷部とが噛み合って、接続水配管19、接続水配管20を構成する山谷付き管の外周の谷部が防振部材21によって埋められている。このような構成により、更に優れた振動低減効果が得られるため、筐体各部の振動が更に確実に抑制され、筐体各部から放射される騒音、低周波音の発生を更に確実に抑制することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 ヒートポンプ給湯室外機
2 圧縮機
3 防振マウント
4 吸入管
5 吐出管
6 送風機
7 空気冷媒熱交換器
8 水冷媒熱交換器
8a 山谷付き管
8b,8e 冷媒配管
8c 接合端部
8d 水配管
8f 端部
9 電気部品収納箱
10 収納囲部材
11 収納蓋部材
12 収納容器
13 収納容器蓋
14 機械室
15 送風機室
16 仕切板
17 ベース
18a 前面左側面部
18b 後面右側面部
18c 上面部
19,20 接続水配管
21 防振部材
23,24 サービスパネル
28 バルブベッド
29 水入口バルブ
30 給湯出口バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に設けられ、封入した冷媒が循環する冷媒回路と、
前記筐体内に設けられ、前記筐体外から供給される水と前記冷媒との熱交換を行う水冷媒熱交換器と、
一端が前記水冷媒熱交換器に接続され、他端が前記筐体に対して固定され、前記筐体外から供給される水あるいは前記筐体外へ供給される湯が通る接続水配管と、
を備え、
前記接続水配管の少なくとも一部は、管壁に螺旋状または環状の山谷部が形成された山谷付き管で構成されているヒートポンプ給湯室外機。
【請求項2】
前記水冷媒熱交換器を収納する収納容器を備え、
前記接続水配管の、少なくとも前記水冷媒熱交換器との接続箇所から前記収納容器の外部に至るまでの部分が、前記山谷付き管で構成されている請求項1記載のヒートポンプ給湯室外機。
【請求項3】
前記接続水配管の、前記水冷媒熱交換器との接続箇所から前記筐体に対する固定箇所の付近までが、前記山谷付き管で構成されている請求項1または2記載のヒートポンプ給湯室外機。
【請求項4】
前記山谷付き管は、その外周に1条または複数条の螺旋状の谷部を有し、
前記水冷媒熱交換器は、その水の流路が前記山谷付き管で構成され、該山谷付き管の外周の前記谷部に沿って冷媒配管が螺旋状に巻き付けられた構成となっており、
前記接続水配管を構成する前記山谷付き管は、前記水冷媒熱交換器を構成する前記山谷付き管から連続して設けられている請求項1乃至3の何れか1項記載のヒートポンプ給湯室外機。
【請求項5】
前記接続水配管を構成する前記山谷付き管の外周を覆う、弾性材料で構成された防振部材を備える請求項1乃至4の何れか1項記載のヒートポンプ給湯室外機。
【請求項6】
前記防振部材は、前記山谷付き管の外周の谷部を埋めるように形成されている請求項5記載のヒートポンプ給湯室外機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−113450(P2013−113450A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257266(P2011−257266)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)