説明

ヒートローラ、該ヒートローラを備えた定着装置、及び該定着装置を備えた画像形成装置

【課題】円筒形状の基材と、該基材の外周に設けられる面状発熱体との接着強度を高め得るヒートローラを提供する。また、上記ヒートローラを備えた定着装置、及び該定着装置を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】記録媒体に形成されたトナー画像を定着させるための定着装置4に用いられるヒートローラ40であって、円筒形状の基材401と、接着層403を介して該基材の外周に固着された面状発熱体402とを備え、前記接着層は、該接着層内に強化繊維シート432を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写装置、ファクシミリ装置、プリンタ装置、或いはこれらの機能を備えた複合機等の画像形成装置、該画像形成装置に設置される定着装置、及び該定着装置に用いられるヒートローラに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような画像形成装置としては、用紙カセット等の用紙収容部から、1枚ずつ用紙等の記録媒体を繰出し、用紙搬送路の途中に設置された搬送(レジスト)ローラ対を経て、電子写真方式の画像記録部で画像記録を行うものが挙げられる。
上記画像記録部を構成する感光体ドラムと転写ローラとのニップ部に搬送及び供給された用紙には、感光体ドラムの表面に形成されたトナー画像が転写される。トナー画像が転写された用紙は、定着装置でトナー画像が定着されて、排出部に排出される。
【0003】
上記画像形成装置に設置される定着装置としては、ヒートローラと、該ヒートローラに弾性的に接するプレスローラとを備えたものが挙げられる。このような定着装置は、ヒートローラとプレスローラとのニップ部において、用紙に転写されたトナー画像を加熱及び加圧することにより永久画像として定着させている。
上記ヒートローラとしては、アルミニウムなどの中空円筒からなり、その内部にハロゲンランプなどの発熱体を収容し、該ハロゲンランプによって中空円筒を加熱する構成とされたものが多用されている。
このようなハロゲンランプを収容したヒートローラでは、消費電力が比較的大きいという問題、及び電源投入後にヒートローラの外表面(外周面)が所定の温度(定着温度)となるまでのウォームアップタイムが長くなるという問題があった。
【0004】
そこで、近時においては、中空円筒の基材の内周面或いは外周面に発熱体を配置したヒートローラが提案されている。
下記特許文献1では、中空の比較的薄いフィラメント巻円筒形チューブと、該チューブの外面に耐熱接着剤で固着された回路発熱体とを備えた瞬間加熱式定着ロールが提案されている。
上記瞬間加熱式定着ロールは、ガラス繊維、炭素黒鉛繊維または炭素硼素繊維等を巻線機を使用してマンドレル上に巻くことで上記フィラメント巻円筒形チューブを形成し、該チューブの外面に耐熱接着剤により上記回路発熱体を接着して形成されている。
また、上記フィラメント巻円筒形チューブを形成する際に、上記繊維を縦軸に対して約50°の巻線角度で繊維を巻くことで、十分な機械的強度が得られる、と説明されている。
【特許文献1】特公平6−5429号公報(第3図参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1で提案されている瞬間加熱式定着ローラでは、該定着ロールの基材として、中空の比較的薄いフィラメント巻円筒形チューブを採用することにより、熱容量が小さくなり、ウォームアップタイムの短縮化は図れるものと思われる。
しかしながら、前記チューブの外面に上記回路発熱体を接着する際に、該回路発熱体が面状(シート状)に形成された面状発熱体では、該面状発熱体を、基材となる上記チューブの外周面に巻くようにして接着剤で接着する必要がある。
このように接着剤によって面状の発熱体と基材とを接着すれば、面状発熱体と該接着剤によって形成される接着層との熱膨張率の違いから、上記のように接着された面状発熱体の合わせ目(端部同士の突合せ部、継ぎ目)が広がる恐れがあった。すなわち、接着層が面状発熱体に加熱されて膨張することにより、面状発熱体の合わせ目が広がる恐れがあった。
このように面状発熱体の合わせ目が広がった場合には、該合わせ目部分に段差が生じ、定着ムラ或いは定着不良が生じる恐れがあり、また、最終的には面状発熱体が基材から剥離してしまう恐れがあった。上記特許文献1に記載の定着ロールでは、これらの点についての考慮がなされておらず、更なる改善が望まれていた。
【0006】
本発明は、前記問題を解決するために提案されたもので、その目的は、円筒形状の基材と該基材の外周に設けられる面状発熱体との接着強度を高め得るヒートローラを提供することにある。また、本発明は、上記ヒートローラを備えた定着装置、及び該定着装置を備えた画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明に係るヒートローラは、記録媒体に形成されたトナー画像を定着させるための定着装置に用いられるヒートローラであって、円筒形状の基材と、接着層を介して該基材の外周に固着された面状発熱体とを備え、前記接着層は、該接着層内に強化繊維シートを備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明の前記ヒートローラにおいては、前記強化繊維シート中の少なくとも一部の強化繊維を、ローラ周方向に配向するようにしてもよい。
また、本発明の前記ヒートローラにおいては、前記接着層を構成する接着剤を、シリコーン樹脂系接着剤とし、前記強化繊維を、ガラス繊維としてもよい。
【0009】
また、前記目的を達成するために、本発明に係る定着装置は、前記ヒートローラのうちのいずれかと、該ヒートローラに弾性的に接するプレスローラとを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、前記目的を達成するために、本発明に係る画像形成装置は、記録媒体にトナー画像を形成するプロセス部と、前記定着装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る前記ヒートローラは、円筒形状の基材と、接着層を介して該基材の外周に固着された面状発熱体とを備えている。従って、熱源となる面状発熱体が、ヒートローラの外周面近くに配置されるので、ヒートローラの外周面の温度を急速に上昇させることができ、ウォームアップタイムを短縮できる。
また、前記ヒートローラの前記接着層は、その層内に強化繊維シートを備えているので、接着剤のみにより接着層を形成したものと比べて、該接着層の熱膨張(線膨張)が緩和される。すなわち、通常の樹脂系接着剤が硬化して形成される接着層では、線膨張係数が比較的大きく、該接着層と面状発熱体との熱膨張率の差が大きくなるが、強化繊維シートを該接着層に介在させることで、接着層の熱膨張を緩和できる。
これにより、前記基材の外周に固着された前記面状発熱体の合わせ目が広がることを防止でき、該基材と該面状発熱体との接着強度を高めることができる。
【0012】
前記ヒートローラにおいて、前記強化繊維シート中の少なくとも一部の強化繊維を、ローラ周方向に配向するようにすれば、前記接着層の周方向(拡径方向)への膨張を効果的に低減できる。これにより、前記面状発熱体の合わせ目が広がることをより効果的に低減できる。
【0013】
前記ヒートローラにおいて、前記接着層を構成する接着剤を、シリコーン樹脂系接着剤とし、前記強化繊維を、ガラス繊維とすれば、シリコーン樹脂系接着剤を用いることにより、耐熱性及び絶縁性に優れた接着層となる。また、シリコーンの線膨張係数は、比較的大きいが、線膨張係数の比較的小さいガラス繊維からなる強化繊維シートを該接着層内に介在させることで、シリコーンの膨張を効果的に低減できる。これにより、前記面状発熱体の合わせ目が広がることをより効果的に低減できる。
【0014】
本発明に係る前記定着装置は、前記ヒートローラのうちのいずれかと、該ヒートローラに弾性的に接するプレスローラとを備えている。従って、上記したように、前記面状発熱体の合わせ目が広がるようなことがないので、前記ヒートローラの面状発熱体と前記基材との接着強度を高めることができる。これにより、該面状発熱体の合わせ目が広がることによる定着ムラ或いは定着不良を防止できる。
【0015】
本発明に係る前記画像形成装置は、記録媒体にトナー画像を形成するプロセス部と、前記定着装置とを備えているので、前記同様、定着ムラ等を防止できる画像形成装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の最良の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る定着装置を備えた画像形成装置の一例を示す概略縦断面図、図2は、同定着装置を模式的に示す概略縦断面図及び該定着装置が備えるヒートローラの一例を模式的に示す概略一部拡大縦断面図である。
図3は、同定着装置が備えるヒートローラに用いられる強化繊維シートの一例を模式的に示す概略拡大平面図、図4は、同ヒートローラを模式的に示す一部破断概略平面図である。
尚、以下の実施形態の説明において示す上流側及び下流側は、それぞれ用紙搬送路を搬送される用紙の搬送方向上流側及び搬送方向下流側として説明する。
【0017】
図1の画像形成装置1は、クリーナレスシステムを採用した電子写真方式のプロセス部3と定着装置4とで構成される画像記録部を備えたいわゆる複合機を示している。すなわち、複写機能、ファクシミリ機能及びプリンタ機能を兼ね備えたものであるが、これに限らず、画像読取機能を備えた複写装置、ファクシミリ装置或いはプリンタ装置等の画像形成装置であっても良い。また、白黒の電子写真方式の記録部に限られず、各種カラー記録方式の記録部を備えた画像形成装置としてもよい。
画像形成装置1の装置本体10は、用紙を収容し、供給する用紙供給部2と、電子写真方式のプロセス部3と定着装置4とで構成された画像記録部及び記録後の記録済用紙の排出部5と、画像読取部8とが、この順序で高さ方向に積み重なるように構成されている。
【0018】
画像読取部8は、ADF(オートドキュメントフィーダ)読取部81及びFBS部(フラットベットスキャナ部)82を備えた画像読取走査部80と、該画像読取走査部80の上に開閉自在に設置される原稿押え板83と、ADF機構部86とよりなる。画像読取走査部80内には、光源、ミラー、レンズ及びCCDを搭載した走査キャリッジ84が設置され、該走査キャリッジ84は、FBS部82では往復移動可能に、ADF読取部81では固定状態となるよう、その移動の制御がなされる。また、原稿押え板83の上面には、ADF原稿をADF機構部86へ供給するための供給トレイ85と、ADF機構部86からのADF原稿を排出するための排出トレイ87とが設けられている。
上記画像読取部8は、原稿画像の複写或いはファクシミリ送信の際に使用される。
また、上記画像読取部8は、装置本体10に対してヒンジピン14を支点として開閉自在とされ、把持部13をして、その開閉がなされる。この画像読取部8を開放することで、後記する画像記録部のプロセスユニットの着脱が可能とされている。
【0019】
用紙供給部2は、多数枚の用紙を堆積状態で収納し得る用紙収容部を構成する用紙カセット20と、該用紙カセット20の用紙搬送方向前端部に設置されたセパレートローラ22と、該セパレートローラ22の周面に弾性的に接する分離パッド21とを備えている。
この用紙カセット20は、装置本体10に対して、抜差し可能とされている。また、用紙カセット20は、圧縮コイルバネ等によって常時上向きに弾力が付与された押上板23と、用紙の後端を規制し、搬送方向に向けて弾力が付与されるとともに用紙サイズに合わせて位置調整可能とされたエンドガイド24とを備えている。
上記用紙供給部2では、用紙カセット20に収納され堆積された用紙は、その前端部が、セパレートローラ22の周面に押し当てられる。セパレートローラ22が回転すると、該セパレートローラ22と分離パッド21との協働作用によって、堆積された用紙がその最上層部より一枚ずつ分離され、後記する用紙搬送路6に向けて繰出される。
尚、用紙供給部2は、図示した分離パッド方式のものに限られず、半月ローラと分離爪とを備えた分離爪方式或いはリタードローラ方式の供給部としてもよい。
【0020】
画像記録部は、感光体ドラム30の周囲に、プラス(或いはマイナス)帯電方式の帯電器31、露光器32、現像器33、転写ローラ34及びメモリ除去部材35をこの順序で配したプロセス部3と、後記する定着装置4とより構成される。
上記プロセス部3のうち露光器32及び転写ローラ34以外は、プロセスユニットとしてユニット化されている。該プロセスユニットは、上記画像読取部8を上方に向けて開放し、ヒンジピン12を支点として開閉自在とされたメンテナンス用扉11を上方に向けて開放させることで、装置本体10に対して上方に取出し可能とされている。
尚、感光体ドラム30、帯電器31及びメモリ除去部材35からなるドラムユニットと、現像器33からなる現像器ユニットとの2つのユニットに分割して、これら各ユニットを個々に装置本体10に対して着脱可能とされた構成としてもよい。また、装置本体10の側部に開閉扉を設けて、装置本体10に対して水平方向へ取出し可能な構成としてもよい。
また、上記帯電器31は、感光体ドラム30の周面に接するブラシローラからなるブラシ帯電器としているが、スコロトロン帯電器としても良い。
また、上記露光器32は、多数の発光ダイオード(LED)を走査方向(感光体ドラム30の軸方向)に沿って配列したLEDヘッドアレイとしているが、光源としてレーザー光を使用するレーザー露光器としてもよい。
【0021】
上記現像器33は、本実施形態では、一成分現像剤を用いる方式の現像器を例示している。この現像器33は、樹脂成型され、非磁性一成分トナーを収容するトナー容器を兼ねるケーシング330、その内部に設けられたトナーを攪拌するアジテータ331、その下流側に設けられた供給ローラ332、現像ローラ333及び規制ブレード334を備えている。供給ローラ332と現像ローラ333とは、互いに押し当て状態で擦れ合うように同一方向に回転され、それぞれバイアス印加電源(不図示)に電気的に接続され、異なるバイアス電圧が印加される。
上記現像器33では、アジテータ331で攪拌されたトナーが供給ローラ332を介して現像ローラ333に供給される。そのトナーは、両ローラ332,333の摩擦作用及び電位差により帯電されるとともに、規制ブレード334によって、現像ローラ333の表面に均一に薄層を形成するように供給される。
尚、現像器33としては、一成分現像剤を用いる方式のものに限らず、二成分方式、その他の方式のものも採用可能である。また、現像器と離間した位置に別途、トナーカートリッジを配置し、該トナーカートリッジから現像器にトナーが供給される構成とされた現像器としてもよい。
【0022】
上記転写ローラ34は、感光体ドラム30に接し、且つ矢印方向(感光体ドラム30とウイズ方向)に回転駆動されながら用紙をニップして搬送する。
上記メモリ除去部材35は、感光体ドラム30に残留するトナーを掻き乱す導電性ブラシからなり、その先端が感光体ドラム30の表面に擦れ合うように接している。
上記プロセス部3の上流側近傍には、レジストローラ対62が設置されており、また、上記プロセス部3の下流側近傍には、後記する定着装置4が設置されている。
【0023】
上記排出部5は、定着装置4の下流側に設置された排出ローラ対50と、排出された記録済用紙を積載する排出トレイ51とを備えている。
上記排出ローラ対50を回転させることで、定着装置4でトナー画像が定着された記録済用紙は、装置本体10の側壁に設けられた排出口15から該排出口15の下方かつ排出方向前方に向けて延びるように設けられた排出トレイ51に向けて排出される。
【0024】
上記構成とされた画像記録部においては、用紙カセット20から、上記のように1枚ずつ分離され繰出された用紙は、上記レジストローラ対62によりレジストされて、前記感光体ドラム30と転写ローラ34とのニップ部に導入される。感光体ドラム30は、図1の矢印方向に回転しながら、帯電器31によりその表面が一様にプラス(或いはマイナス)帯電され、画像情報に基づく光学画像が露光器32によって感光体ドラム30の表面に照射され、感光体ドラム30の表面には静電潜像が形成される。この静電潜像は、感光体ドラム30の表面の光導電体の特性に基づき、光の照射部分と非照射部分との間に生じる電位差により形成されるものである。
上記静電潜像は、現像器33で逐次現像されてトナー画像とされ、このトナー画像は感光体ドラム30の回転に伴い、転写ローラ34とのニップ部に至る。上記レジストローラ対62は、感光体ドラム30の表面のトナー画像の移動に同期して用紙が上記ニップ部に導入されるようレジスト制御されて回転駆動される。
転写ローラ34は、上記のように回転駆動されながら用紙をニップして搬送し、この間感光体ドラム30の表面のトナー像が用紙に転写される。トナー像が転写された記録済用紙は、後記する定着装置4に導入され、加熱、加圧されて永久画像として定着された後、排出部5に至る。
転写ローラ34を経た感光体ドラム30の表面に付着、残留した残留トナーは、所定のバイアス電位が印加されたメモリ除去部材35によって掻き乱され、感光体ドラム30の表面上に分散される。分散された残留トナーは、その後の露光工程での静電潜像の形成に影響を及ぼすことなく現像器33に回収される。尚、メモリ除去部材35に代え、帯電器32に残留トナーのメモリ除去機能を持たせるようにしても良い。
【0025】
上記一連の用紙の搬送は、用紙カセット20からの繰出し直後に、搬送ローラ対61が設置された湾曲路で、用紙カセット20の繰出し方向とは略180度の方向にUターンするように形成された、いわゆるUパスの用紙搬送路6に沿ってなされる。このように用紙をUターンさせて搬送する用紙搬送路6とすることで、装置本体10の高さを低く抑えることができる。また、搬送される用紙は、上記画像記録部において、その上面に画像記録がなされるので、例えば、下面に画像記録するようにしたものと比べて、画質不良を低減することができる。
尚、図1において、符号60は、多段カセット方式としてのオプションカセット(不図示)を前記用紙カセット20の下に設置した場合に、そのオプションカセットからの用紙を搬送するための搬送路であり、該搬送路60は、用紙搬送路6の一部を構成する。
また、図1において、符号70は、装置本体10の側部に開閉自在に設けられた手差供給トレイであり、該手差供給トレイ70にセットされた用紙は、搬送ローラ対71によって手差パス7を搬送され、用紙搬送路6に合流し、上記同様に画像記録がなされる。
【0026】
次に、本実施形態に係る定着装置及び該定着装置が備えるヒートローラの一例について図2〜図4に基づいて説明する。
定着装置4は、プロセス部3(図1参照)の下流側に配設され、樹脂成型された定着装置ハウジング42内に、互いに押し当て状態とされたヒートローラ40とプレスローラ41とを備えている。
定着装置ハウジング42の上流側壁(図2における紙面右方)には、上記用紙搬送路6に沿って搬送されるトナー画像が転写された用紙を受入れる上流側開口421が設けられている。また、定着装置ハウジング42の下流側壁(図2における紙面左方)には、トナー画像が定着された記録済用紙を排出部5に向けて排出する下流側開口422が設けられている。
装置本体10に装着された状態で定着装置4は、図1に示すように、ヒートローラ40とプレスローラ41とのニップ部が用紙搬送路6に沿うように配置される。
【0027】
また、定着装置ハウジング42には、搬送される用紙をヒートローラ40から剥離するための剥離爪43と用紙の搬送をガイドするガイドリブ420とがローラ軸方向に沿って複数箇所に形成されている。
剥離爪43は、その基端部が揺動自在に支持されており、ヒートローラ40の外周面に、その先端が接触するようにトーションバネなどにより常に弾力が付与されている。
また、定着装置ハウジング42には、ヒートローラ40の表面温度を計測するサーミスタ等の温度センサ44が設けられている。この温度センサ44から出力された計測温度に基づいて、ヒートローラ40の外周面が所定の定着温度に維持されるように、後記する面状発熱体402への通電(ON/OFF)の制御がなされる。
尚、図示を省略しているが、定着装置ハウジング42には、後記するヒートローラ40の面状発熱体402への給電を行うための給電部が設けられている。
【0028】
ヒートローラ40は、大略的に、基材401と、接着層403を介して基材401の外周に固着された面状発熱体402と、該面状発熱体402の外周に形成された離型層404とを備えている。
上記基材401は、中空円筒形状とされたアルミニウムパイプからなる。
尚、基材401は、上記アルミニウムパイプに限らず、他の金属材からなるものとしてもよい。または、電気絶縁性及び耐熱性を有する合成樹脂、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)等の合成樹脂を中空円筒状或いは中実円筒状に形成した基材401としてもよい。
【0029】
上記面状発熱体402は、発熱体142、耐熱絶縁層242及び伝熱層342を径方向外方にこの順に積層した三層構造とされている。
上記伝熱層342としては、高い熱伝導率を有する銅箔が挙げられ、10μm〜30μm程度の厚さとされている。尚、この伝熱層342としては、他のアルミニウム等の金属材としてもよく、或いは、窒化アルミニウム又は炭化ケイ素等のセラミックスとしてもよい。
上記耐熱絶縁層242としては、電気絶縁性及び耐熱性を有する耐熱接着剤からなるものが挙げられ、例えば、ポリイミド系の接着剤により形成するようにしてもよい。該耐熱絶縁層242は、上記伝熱層342と発熱体142とを電気的に絶縁可能な程度の厚さとすればよく、例えば、10μm〜70μm程度の厚さとされている。
上記発熱体142は、ステンレス或いはニッケルクロム等からなり、該発熱体142は、複数の線状に形成されたヒータパターンとされている。該発熱体142は、10μm〜70μm程度の厚さとされている。
【0030】
上記面状発熱体402は、例えば、伝熱層342となる上記銅箔の一方の面に、所定の厚さで上記耐熱絶縁層242を形成する。次いで、該耐熱絶縁層242にステンレス或いはニッケルクロム等からなる箔状の材料を、加熱及び加圧により固着させる。次いで、ウェットエッチング等の公知の方法により、複数の線を有するパターン形状に加工してヒータパターンを形成し、上記発熱体142を形成するようにしてもよい。
このような構成により、面状発熱体402は、可撓性を有したシート状のヒータとなり、基材401の外周面に後記する接着層403を介して固着される。
尚、図示を省略しているが、面状発熱体402のローラ軸方向両端部には、前記給電部と導通される電極部が設けられている。
また、上記発熱体142を構成するヒータパターンの形成は、上記例に限らず、スパッタリング或いは蒸着、パターン印刷、ブラスト等により形成するようにしてもよい。
【0031】
上記接着層403は、後記する接着剤の硬化により形成された硬化接着剤層431と、該硬化接着剤層431中に介在された強化繊維シート432とにより形成されている。また、上記面状発熱体402の端部同士が対向する部位(合わせ目部位、継ぎ目部位)には、所定の隙間が形成されており、該隙間には、接着剤が充填されて硬化した充填部433が形成されている。
上記接着層403の厚さ(上記充填部433を除く)は、200μm〜500μm程度とされている。該接着層403は、上記面状発熱体402と基材401とを電気的に絶縁するとともに、断熱層として機能し、この接着層403の厚さは、上記面状発熱体402と基材401との電気絶縁性及び断熱性を阻害することがない厚さとすればよい。
上記硬化接着剤層431を形成する接着剤は、本実施形態では、高い耐熱性を有するとともに、熱伝導率の低い熱硬化型のシリコーン系接着剤としている。このようなシリコーンの線膨張係数は、比較的大きく、200(×10-6/℃)程度である。
尚、上記接着剤としては、所定の定着温度に耐えられる耐熱性を有するとともに、低熱伝導率の他の接着剤からなるものとしてもよく、例えば、熱硬化型のエポキシ系、アクリル系等の接着剤により形成するようにしてもよい。
【0032】
上記強化繊維シート432は、該硬化接着剤層431中において、基材401の外周に沿うように、周方向の略全周に亘って介在されるとともに、軸方向の略全長に亘って介在されている。
上記強化繊維シート432は、本実施形態では、図3に示すように、直交する二方向(縦横)にガラス繊維を編み込んで形成された、いわゆる平織のガラスクロスとしている。このようなガラスクロスは、ガラス繊維を束にして糸状にしたもの(ストランド)を編み込んだものとしてもよい。或いはストランドに撚りをかけたヤーンを編み込んだものとしてもよい。
このガラスクロス432は、比較的目が粗く目抜平織状に編み込まれており、ネット状(メッシュ状)に形成されている。このように目抜平織状とされたガラスクロス432の平面視における空隙率(隙間率)は、10%以上、90%以下とすることが好ましく、より好ましくは、30%以上、70%以下としてもよい。上記空隙率が小さくなると、後記するように接着剤に浸漬させ、該接着剤を絡める際に、ガラスクロス432へ十分に接着剤が絡まない傾向があり、また、上記空隙率が大きくなると、接着層403全体としての熱膨張の低減が効果的になされない傾向がある。
【0033】
また、本実施形態では、上記のように縦横に編み込まれたガラスクロス432を、図4に示すように、ガラス繊維の方向がそれぞれ周方向及び軸方向に沿って配置されるようガラスクロス432を介在させている。すなわち、ガラスクロス432中の少なくとも一部のガラス繊維をローラ周方向に沿うように配向させている。
尚、強化繊維シート432を構成する強化繊維としては、本実施形態では、線膨張係数が8.5(×10-6/℃)程度と比較的小さいガラス繊維としているが、これに限られず、高い引張強度を有し、線膨張係数が上記接着剤よりも低いものとしてもよい。例えば、炭素繊維、アラミド繊維、テキサリウム繊維、セラミックス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、バサルト繊維(鉱物繊維)、ケナフ繊維、窒化硼素繊維等としてもよい。これら強化繊維は、一種あるいは二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
また、本実施形態では、強化繊維を平織したクロスシートを例示しているが、これに限らず、綾織、朱子織、多軸配向編等により編み込み形成されたものとしてもよい。
さらに、上記のように、編み込んで形成したクロスシートに限らず、例えば、ストランドを所定の長さに切断して、ランダム方向に分散させて積層し、結合剤等によってマット状に形成した異方向性(多方向性)のマットシートとしてもよく、或いは、不織布としてもよい。このような異方向性のマットシートとする場合は、長繊維の強化繊維とすることが好ましい。または、強化繊維のフィラメント或いはストランドを一方向或いは直交する二方向等に方向を揃えて積層して結合剤等でマット状に形成した一方向性或いは二方向性のマットシートとしてもよい。このような一方向性或いは二方向性のマットシートは、その強化繊維の繊維方向がローラ周方向に沿うように配置するようにしてもよい。
さらにまた、上記強化繊維の繊維径、各シートの厚さ、接着層403中の接着剤の量等は、該強化繊維の物性及び接着剤の物性に応じて適宜設定可能である。これらは、例えば、上記面状発熱体402の伝熱層342の線膨張係数に応じて、該伝熱層342と、接着層403との線膨張係数が同程度となるように調整してもよい。すなわち、銅の線膨張係数16.8或いはアルミニウムの線膨張係数23.6等と、接着層403の線膨張係数とが略等しくなるよう、接着層403中の強化繊維の量等を設定するようにしてもよい。
【0035】
上記離型層404は、トナー或いは紙粉の付着を低減するためのもので、例えば、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニル共重合体等のフッ素系樹脂からなり、面状発熱体402の外周面に接着剤等で固着、或いは塗布形成されている。この離型層404の厚みは、30μm〜50μm程度としてもよい。
上記構成とされたヒートローラ40の両端部には、ローラ軸部材(不図示)が設けられており、定着装置ハウジング42内に設けられた軸受(不図示)等で回転自在に支持されている。また、該ローラ軸部材の一端には、ギア等が固着されており、該ギア等に対して、装置本体10に設けられたモータ等の駆動手段(不図示)による駆動が伝達されて、ヒートローラ40の回転駆動がなされる。
このヒートローラ40の回転駆動により、後記するプレスローラ41が従動回転して、ニップ部に導入された用紙がニップ搬送される。該ニップ部を用紙が通過する間に、転写されたトナー画像が加熱及び加圧により用紙に定着され、記録済用紙として排出部5に向けて搬送される。
【0036】
上記プレスローラ41は、鉄鋼材等の金属材で形成されたプレスローラ軸410と、該プレスローラ軸410に外装された円筒状弾性部材411と、離型層412とからなる。
円筒状弾性部材411は、シリコーン、ウレタン等のゴム体あるいはスポンジ体からなり、プレスローラ軸410に接着剤等で固着されている。
上記離型層412は、円筒状弾性部材411の外周面に形成されており、用紙、トナー或いは紙粉の剥離性を高めるための例えば、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニル共重合体等のフッ素系樹脂チューブ等からなる。
尚、プレスローラ軸に適用される金属材料としては、SUM24LやS20Cなどの鉄鋼材にニッケル鍍金を施したものとしてもよい。また、離型層412の厚みは、30μm〜50μm程度としてもよい。
【0037】
プレスローラ軸410は、その両端が軸受体423により回転自在に支持されている。該軸受体423は、定着装置ハウジング42に対してスライド自在に設けられており、定着装置ハウジング42に固定されたコイルバネ等からなる弾性部材424の弾力によってヒートローラ40側に向けて押されている。
この弾性部材424により、プレスローラ41は、ヒートローラ40に向けて押し当て状態とされ、該プレスローラ41が上記ヒートローラ40に弾性的に接することで、ニップ部が形成される。
【0038】
尚、弾性部材424は、定着装置ハウジング42内に固定された金属シャーシ(不図示)に、その基端部が固定支持されている。
また、弾性部材424としては、コイルバネに限らず、プレスローラ41をヒートローラ40に対して押し当て可能な押部材であればどのようなものでもよい。
さらに、図示を省略しているが、定着装置4は、ヒートローラ40とプレスローラ41とのニップ状態(接触状態)を解除するニップ解除機構を備えている。また、ヒートローラ40の表面に付着した紙粉やトナーを除去するクリーニングローラあるいはクリーニングブレードなどを備えている。
【0039】
次に、前記構成とされたヒートローラ40の形成工程の一例について説明する。
まず、上記基材401の外径及び軸方向長さに合わせて上記ガラスクロス432をカットする。該ガラスクロス432を、液体状のシリコーン系接着剤に浸漬して、該ガラスクロス432の繊維間に該接着剤を絡ませるようにして、該ガラスクロス432の表裏に接着剤膜を形成する。この際、ガラスクロス432及び接着剤膜中の空気を取り除くことが好ましい。
次いで、上記のように、表裏に接着剤膜が形成されたガラスクロス432を、上記基材401の外周に巻きつける。これら接着剤及びガラスクロス432の外周に、上記面状発熱体402の裏面側(上記発熱体142側)をガラスクロス432側に向けて巻きつけ、面状発熱体402の端部同士の突合せ部位に形成された隙間に接着剤を充填し、接着剤を加熱して完全に硬化させる。
【0040】
次いで、上記したように面状発熱体402の表面側(上記伝熱層342側)に離型層404を形成する。
上記工程により、図2に示すように、基材401と面状発熱体402との間にガラスクロス432を硬化接着剤層431中に介在させた接着層403が形成される。また、面状発熱体402の端部同士の突合せ部位に形成された隙間には、上記充填部433が形成される。
尚、上記接着層403の形成は、一例に過ぎず、他の工程により形成するようにしてもよい。例えば、ガラスクロス432を、予めガラスクロス432に上記接着剤を絡ませるとともに表裏に接着剤膜を形成して、該接着剤を半硬化させた、いわゆるプリプレグシートとしてもよい。
或いは、上記のようにガラスクロス432を、上記接着剤に浸漬して繊維間に接着剤を絡ませるとともに、基材401の外周及び/又は面状発熱体402の裏面にも接着剤を塗布してこれらを接着するようにしてもよい。
また、上記充填部433は、本実施形態では、上記接着層403を形成する接着剤と同様の接着剤により形成されているが、例えば、熱伝導率の高い耐熱接着剤により形成するようにしてもよい。これにより、ヒートローラ40の外周における均熱化が図れる。
【0041】
以上のように、本実施形態に係る定着装置4が備えるヒートローラ40は、円筒形状の基材401と、接着層403を介して該基材401の外周に固着された面状発熱体402とを備えている。従って、熱源となる面状発熱体402が、ヒートローラ40の外周面近くに配置されるので、ヒートローラ40の外周面の温度を急速に上昇させることができ、ウォームアップタイムを短縮できる。
また、ヒートローラ40の接着層403は、硬化接着剤層431と、該硬化接着剤層431中に介在させたガラスクロス432とにより形成されているので、接着剤のみにより接着層を形成したものと比べて、該接着層403の熱膨張(線膨張)が緩和される。すなわち、例えば、シリコーン樹脂系接着剤が硬化して形成される接着層では、線膨張係数が上記したように比較的大きく、該接着層と面状発熱体402との熱膨張率の差が大きくなる。本実施形態のように、ガラスクロス432を接着層403に介在させることで、接着層403の線膨張係数を小さくでき、よって、接着層403の熱膨張を緩和できる。
これにより、基材401の外周に固着された面状発熱体402の合わせ目が広がることを防止でき、該基材401と該面状発熱体402との接着強度を高めることができる。
【0042】
また、本実施形態では、縦横に編み込まれたガラスクロス432を、上記したように、ガラス繊維の方向がそれぞれ周方向及び軸方向に沿って配置されるように接着層403内にガラスクロス432を介在させている。従って、接着層403の周方向(拡径方向)への膨張を効果的に低減できる。これにより、面状発熱体402の合わせ目が広がることをより効果的に低減できる。
さらに、本実施形態では、上記ヒートローラ40の基材401を、中空円筒形状のアルミニウムパイプとしている。従って、例えば、基材を合成樹脂材等で形成した場合と比べて、面状発熱体402からの熱が該基材401へ伝わり易くなるが、該基材401の剛性を高めることができる。このように基材401の剛性が高められることで、定着装置4に設置されてプレスローラ41からの分布荷重を受けた場合にも撓むようなことがなく、よって、定着ムラ或いは定着不良を低減できる。
また、本実施形態では、上記接着層403を、熱伝導率の低い熱硬化型のシリコーン系接着剤よりなる硬化接着剤層431と、断熱性の高いガラスクロス432とにより形成している。これにより、該接着層403が断熱層となり、上記のように、基材401をアルミニウムパイプとした場合にも面状発熱体402から基材401への熱伝導を低減できる。従って、ウォームアップタイムを効果的に短縮できる。
【0043】
さらにまた、本実施形態に係る定着装置4によれば、上記ヒートローラ40を備えているので、上記したように、面状発熱体402の合わせ目が広がるようなことがない。従って、ヒートローラ40の面状発熱体402と基材401との接着強度を高めることができる。これにより、面状発熱体402の合わせ目が広がることによる定着ムラ或いは定着不良を防止できる。
また、ヒートローラ40に形成された上記接着層403により、面状発熱体402が発する熱が基材401に伝わり難くなる。従って、ヒートローラ40の外周面の温度を急速に上昇させることができ、ウォームアップタイムを効果的に短縮できる定着装置4となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す概略縦断面図である。
【図2】同画像形成装置が備える定着装置を模式的に示す概略縦断面図、及び概略一部拡大縦断面図である。
【図3】同定着装置が備えるヒートローラに用いられる強化繊維シートの一例を模式的に示す概略拡大平面図である。
【図4】同ヒートローラを模式的に示す一部破断概略平面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 画像形成装置
3 プロセス部
4 定着装置
40 ヒートローラ
401 基材
402 面状発熱体
403 接着層
432 ガラスクロス(強化繊維シート)
41 プレスローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に形成されたトナー画像を定着させるための定着装置に用いられるヒートローラであって、
円筒形状の基材と、接着層を介して該基材の外周に固着された面状発熱体とを備え、
前記接着層は、該接着層内に強化繊維シートを備えていることを特徴とするヒートローラ。
【請求項2】
請求項1において、
前記強化繊維シート中の少なくとも一部の強化繊維は、ローラ周方向に配向されていることを特徴とするヒートローラ。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記接着層を構成する接着剤は、シリコーン樹脂系接着剤とされ、前記強化繊維は、ガラス繊維とされていることを特徴とするヒートローラ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のヒートローラと、該ヒートローラに弾性的に接するプレスローラとを備えたことを特徴とする定着装置。
【請求項5】
記録媒体にトナー画像を形成するプロセス部と、請求項4に記載の定着装置とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−251405(P2009−251405A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100988(P2008−100988)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】