説明

ヒートローラ、該ヒートローラを備えた定着装置、及び該定着装置を備えた画像形成装置

【課題】円筒形状の基材と、該基材の外周に設けられる面状発熱体との接着強度を高め得るとともに、該基材と面状発熱体との断熱性を高め得るヒートローラを提供する。また、上記ヒートローラを備えた定着装置、及び該定着装置を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】記録媒体に形成されたトナー画像を定着させるための定着装置4に用いられるヒートローラ40であって、円筒形状の基材401と、複数の凹溝405が前記基材側に向けて開口して形成された接着層403と、該接着層を介して前記基材の外周に固着された面状発熱体402とを備えている。前記凹溝は、ローラ軸方向に沿って連通するとともに、ローラ軸方向両端部において開口している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写装置、ファクシミリ装置、プリンタ装置、或いはこれらの機能を備えた複合機等の画像形成装置、該画像形成装置に設置される定着装置、及び該定着装置に用いられるヒートローラに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような画像形成装置としては、用紙カセット等の用紙収容部から、1枚ずつ用紙等の記録媒体を繰出し、用紙搬送路の途中に設置された搬送(レジスト)ローラ対を経て、電子写真方式の画像記録部で画像記録を行うものが挙げられる。
上記画像記録部を構成する感光体ドラムと転写ローラとのニップ部に搬送及び供給された用紙には、感光体ドラムの表面に形成されたトナー画像が転写される。トナー画像が転写された用紙は、定着装置でトナー画像が定着されて、排出部に排出される。
【0003】
上記画像形成装置に設置される定着装置としては、ヒートローラと、該ヒートローラに弾性的に接するプレスローラとを備えたものが挙げられる。このような定着装置は、ヒートローラとプレスローラとのニップ部において、用紙に転写されたトナー画像を加熱及び加圧することにより永久画像として定着させている。
上記ヒートローラとしては、アルミニウムなどの中空円筒からなり、その内部にハロゲンランプなどの発熱体を収容し、該ハロゲンランプによって中空円筒を加熱する構成とされたものが多用されている。
このようなハロゲンランプを収容したヒートローラでは、消費電力が比較的大きいという問題、及び電源投入後にヒートローラの外表面(外周面)が所定の温度(定着温度)となるまでのウォームアップタイムが長くなるという問題があった。
【0004】
そこで、近時においては、中空円筒の基材の内周面或いは外周面に発熱体を配置したヒートローラが提案されている。
下記特許文献1では、金属パイプと、該金属パイプの内周面に配置され、発熱体を備えた耐熱絶縁層と、該耐熱絶縁層および上記金属パイプが形成するパイプ内空間部に形成された発泡樹脂体とを備えた加熱定着ローラが提案されている。
上記発泡樹脂体は、上記パイプ内空間部に充填された室温硬化性発泡樹脂材を発泡硬化させることにより形成されており、上記加熱定着ローラでは、この発泡樹脂体の発泡圧力で耐熱絶縁層を金属パイプの内周面へ押し付け固着する構成とされている。
これによれば、発熱体と金属パイプ間の固着の信頼性が高く、また、発熱体が金属パイプに接着されていないので、接着部が剥離するようなことがない、と説明されている。
【特許文献1】特開平9−179423号公報(図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献1で提案されている加熱定着ローラでは、金属パイプの内周面に発熱体が配置されているので、該発熱体からの熱伝導により該金属パイプが加熱されて発熱する構成とされている。このような金属パイプの内周面からの加熱では、金属パイプの外周面、すなわち、記録媒体と接する面が所定の定着温度となるまでのウォームアップタイムは、上記ハロゲンランプ収容型のヒートローラよりは短くなるが、更なる短縮化が望まれる。
そこで、上記ウォームアップタイムを短縮するために、金属パイプ等の円筒形状とされた基材の外周に、面状発熱体を設けたヒートローラとすることが考えられる。
これによれば、ヒートローラの外周面の近くに熱源となる発熱体が配置されるので、ヒートローラの外周面の温度を急速に上昇させることができ、ウォームアップタイムを短縮できる。
【0006】
しかし、上記のように基材の外周に面状発熱体を配置する場合は、シート状の面状発熱体を円筒形状の基材の外周に巻くようにして接着剤によって接着する必要がある。このように接着剤によって面状発熱体と基材とを接着すれば、面状発熱体と接着層、或いは面状発熱体と基材との熱膨張率の違いから、上記のように接着された面状発熱体の合わせ目(端部同士の突合せ部、継ぎ目)が広がる恐れがあった。すなわち、接着層或いは基材が面状発熱体に加熱されて膨張することにより、面状発熱体の合わせ目が広がる恐れがあった。
このように面状発熱体の合わせ目が広がった場合には、該合わせ目部分に段差が生じ、定着ムラ或いは定着不良が生じる恐れがあり、また、最終的には面状発熱体が基材から剥離してしまう恐れがあった。
また、他の問題点として、上記のように基材の外周に面状発熱体を配置する場合は、面状発熱体が発する熱が基材に奪われないよう断熱する必要があった。
【0007】
本発明は、前記問題を解決するために提案されたもので、その目的は、円筒形状の基材と該基材の外周に設けられる面状発熱体との接着強度を高め得るとともに、該基材と面状発熱体との断熱性を高め得るヒートローラを提供することにある。また、本発明は、上記ヒートローラを備えた定着装置、及び該定着装置を備えた画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明に係るヒートローラは、記録媒体に形成されたトナー画像を定着させるための定着装置に用いられるヒートローラであって、円筒形状の基材と、複数の凹溝が前記基材側に向けて開口して形成された接着層と、該接着層を介して前記基材の外周に固着された面状発熱体とを備え、前記凹溝は、ローラ軸方向に沿って連通するとともに、ローラ軸方向両端部において開口していることを特徴とする。
【0009】
本発明の前記ヒートローラにおいては、前記凹溝を、ローラ軸方向に沿って、かつ該ローラ軸方向の全長に亘って形成するとともに、周方向に沿って並列して形成するようにしてもよい。
あるいは、本発明の前記ヒートローラにおいては、前記接着層を、前記基材側に向けて突出する多数のドット状の凸部とし、該凸部間が前記凹溝を構成するようにしてもよい。
また、本発明の前記ヒートローラにおいては、前記基材を、中空円筒形状の金属材としてもよい。
【0010】
また、前記目的を達成するために、本発明に係る定着装置は、前記ヒートローラのうちのいずれかと、該ヒートローラに弾性的に接するプレスローラとを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、前記目的を達成するために、本発明に係る画像形成装置は、記録媒体にトナー画像を形成するプロセス部と、前記定着装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る前記ヒートローラは、円筒形状の基材と、複数の凹溝が前記基材側に向けて開口して形成された接着層と、該接着層を介して前記基材の外周に固着された面状発熱体とを備えている。従って、熱源となる面状発熱体が、ヒートローラの外周面近くに配置されるので、ヒートローラの外周面の温度を急速に上昇させることができ、ウォームアップタイムを短縮できる。
また、前記ヒートローラの前記接着層には、前記基材側に向けて開口する複数の凹溝が形成されているので、該凹溝により、前記面状発熱体の発熱による前記接着層或いは前記基材の熱膨張を吸収できる。また、前記凹溝は、ローラ軸方向に沿って連通するとともに、ローラ軸方向両端部において開口しているので、該凹溝が空気流通路となる。よって、該凹溝内の空気、及び前記接着層或いは前記基材が熱膨張した場合でも、ローラ軸方向両端部から空気が流出し、該凹溝による上記した前記接着層或いは前記基材の熱膨張の吸収を阻害することがない。
従って、前記基材の外周に固着された前記面状発熱体の合わせ目が広がることを防止でき、該基材と該面状発熱体との接着強度を高めることができる。
さらに、前記凹溝が空気流通路となることで、該空気流通路が断熱部となり、前記面状発熱体が発する熱が前記基材に伝わり難くなる。従って、前記ヒートローラの外周面の温度を急速に上昇させることができ、ウォームアップタイムをより効果的に短縮できる。
【0013】
前記ヒートローラにおいて、前記凹溝を、ローラ軸方向に沿って、かつ該ローラ軸方向の全長に亘って形成するとともに、周方向に沿って並列して形成するようにすれば、該凹溝による空気流通路がローラ軸方向に沿ってかつ周方向に沿って並列して形成される。これにより、前記接着層或いは前記基材の拡径方向への熱膨張を効果的に吸収できる。
或いは、前記ヒートローラにおいて、前記接着層を、前記基材側に向けて突出する多数のドット状の凸部とし、該凸部間が前記凹溝を構成するようにすれば、該凹溝による空気流通路が周方向及びローラ軸方向にも連通して形成される。これにより、前記接着層或いは前記基材の拡径方向への熱膨張及び前記接着層或いは前記基材のローラ軸方向への熱膨張を効果的に吸収できる。
【0014】
前記ヒートローラにおいて、前記基材を、中空円筒形状の金属材とすれば、例えば、基材を合成樹脂材等で形成した場合と比べて、前記面状発熱体からの熱が該基材へ伝わり易くなるが、該基材の剛性を高めることができる。このように基材の剛性が高められることで、定着装置に設置されてプレスローラ等からの分布荷重を受けた場合にも撓むようなことがなく、よって、定着ムラ或いは定着不良を低減できる。
また、上述のように、本発明によれば、前記凹溝により形成される空気流通路が断熱部となり、基材を金属材とした場合にも前記面状発熱体から該基材への熱伝導を低減できる。
【0015】
本発明に係る前記定着装置は、前記ヒートローラのうちのいずれかと、該ヒートローラに弾性的に接するプレスローラとを備えている。従って、上記したように、前記面状発熱体の合わせ目が広がるようなことがないので、前記ヒートローラの面状発熱体と前記基材との接着強度を高めることができる。これにより、該面状発熱体の合わせ目が広がることによる定着ムラ或いは定着不良を防止できる。
また、前記ヒートローラに形成された前記凹溝により、前記面状発熱体が発する熱が前記基材に伝わり難くなる。従って、前記ヒートローラの外周面の温度を急速に上昇させることができ、ウォームアップタイムを効果的に短縮できる定着装置となる。
【0016】
本発明に係る前記画像形成装置は、記録媒体にトナー画像を形成するプロセス部と、前記定着装置とを備えているので、前記同様、定着ムラ等を防止できるとともに、ウォームアップタイムを短縮できる画像形成装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の最良の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る定着装置を備えた画像形成装置の一例を示す概略縦断面図、図2は、同定着装置を模式的に示す概略縦断面図及び該定着装置が備えるヒートローラの一例を模式的に示す概略一部拡大縦断面図である。
図3〜図5は、いずれも同ヒートローラの形成工程を模式的に示す概略縦断面図である。
尚、以下の実施形態の説明において示す上流側及び下流側は、それぞれ用紙搬送路を搬送される用紙の搬送方向上流側及び搬送方向下流側として説明する。
【0018】
図1の画像形成装置1は、クリーナレスシステムを採用した電子写真方式のプロセス部3と定着装置4とで構成される画像記録部を備えたいわゆる複合機を示している。すなわち、複写機能、ファクシミリ機能及びプリンタ機能を兼ね備えたものであるが、これに限らず、画像読取機能を備えた複写装置、ファクシミリ装置或いはプリンタ装置等の画像形成装置であっても良い。また、白黒の電子写真方式の記録部に限られず、各種カラー記録方式の記録部を備えた画像形成装置としてもよい。
画像形成装置1の装置本体10は、用紙を収容し、供給する用紙供給部2と、電子写真方式のプロセス部3と定着装置4とで構成された画像記録部及び記録後の記録済用紙の排出部5と、画像読取部8とが、この順序で高さ方向に積み重なるように構成されている。
【0019】
画像読取部8は、ADF(オートドキュメントフィーダ)読取部81及びFBS部(フラットベットスキャナ部)82を備えた画像読取走査部80と、該画像読取走査部80の上に開閉自在に設置される原稿押え板83と、ADF機構部86とよりなる。画像読取走査部80内には、光源、ミラー、レンズ及びCCDを搭載した走査キャリッジ84が設置され、該走査キャリッジ84は、FBS部82では往復移動可能に、ADF読取部81では固定状態となるよう、その移動の制御がなされる。また、原稿押え板83の上面には、ADF原稿をADF機構部86へ供給するための供給トレイ85と、ADF機構部86からのADF原稿を排出するための排出トレイ87とが設けられている。
【0020】
上記画像読取部8は、原稿画像の複写或いはファクシミリ送信の際に使用される。
また、上記画像読取部8は、装置本体10に対してヒンジピン14を支点として開閉自在とされ、把持部13をして、その開閉がなされる。この画像読取部8を開放することで、後記する画像記録部のプロセスユニットの着脱が可能とされている。
【0021】
用紙供給部2は、多数枚の用紙を堆積状態で収納し得る用紙収容部を構成する用紙カセット20と、該用紙カセット20の用紙搬送方向前端部に設置されたセパレートローラ22と、該セパレートローラ22の周面に弾性的に接する分離パッド21とを備えている。
この用紙カセット20は、装置本体10に対して、抜差し可能とされている。また、用紙カセット20は、圧縮コイルバネ等によって常時上向きに弾力が付与された押上板23と、用紙の後端を規制し、搬送方向に向けて弾力が付与されるとともに用紙サイズに合わせて位置調整可能とされたエンドガイド24とを備えている。
【0022】
上記用紙供給部2では、用紙カセット20に収納され堆積された用紙は、その前端部が、セパレートローラ22の周面に押し当てられる。セパレートローラ22が回転すると、該セパレートローラ22と分離パッド21との協働作用によって、堆積された用紙がその最上層部より一枚ずつ分離され、後記する用紙搬送路6に向けて繰出される。
尚、用紙供給部2は、図示した分離パッド方式のものに限られず、半月ローラと分離爪とを備えた分離爪方式或いはリタードローラ方式の供給部としてもよい。
また、用紙カセット20の下に、更に同様のカセットを段積みして多段カセットとし、或いは、オプションカセット(不図示)を設置し得るよう構成することも可能である。
【0023】
画像記録部は、感光体ドラム30の周囲に、プラス(或いはマイナス)帯電方式の帯電器31、露光器32、現像器33、転写ローラ34及びメモリ除去部材35をこの順序で配したプロセス部3と、後記する定着装置4とより構成される。
上記プロセス部3のうち露光器32及び転写ローラ34以外は、プロセスユニットとしてユニット化されている。該プロセスユニットは、上記画像読取部8を上方に向けて開放し、ヒンジピン12を支点として開閉自在とされたメンテナンス用扉11を上方に向けて開放させることで、装置本体10に対して上方に取出し可能とされている。
【0024】
尚、感光体ドラム30、帯電器31及びメモリ除去部材35からなるドラムユニットと、現像器33からなる現像器ユニットとの2つのユニットに分割して、これら各ユニットを個々に装置本体10に対して着脱可能とされた構成としてもよい。また、装置本体10の側部に開閉扉を設けて、装置本体10に対して水平方向へ取出し可能な構成としてもよい。
また、上記帯電器31は、感光体ドラム30の周面に接するブラシローラからなるブラシ帯電器としているが、スコロトロン帯電器としても良い。
また、上記露光器32は、多数の発光ダイオード(LED)を走査方向(感光体ドラム30の軸方向)に沿って配列したLEDヘッドアレイとしているが、光源としてレーザー光を使用するレーザー露光器としてもよい。
【0025】
上記現像器33は、本実施形態では、一成分現像剤を用いる方式の現像器を例示している。この現像器33は、樹脂成型され、非磁性一成分トナーを収容するトナー容器を兼ねるケーシング330、その内部に設けられたトナーを攪拌するアジテータ331、その下流側に設けられた供給ローラ332、現像ローラ333及び規制ブレード334を備えている。
供給ローラ332と現像ローラ333とは、互いに押し当て状態で擦れ合うように同一方向に回転され、それぞれバイアス印加電源(不図示)に電気的に接続され、異なるバイアス電圧が印加される。
【0026】
上記現像器33では、アジテータ331で攪拌されたトナーが供給ローラ332を介して現像ローラ333に供給される。そのトナーは、両ローラ332,333の摩擦作用及び電位差により帯電されるとともに、規制ブレード334によって、現像ローラ333の表面に均一に薄層を形成するように供給される。
尚、現像器33としては、一成分現像剤を用いる方式のものに限らず、二成分方式、その他の方式のものも採用可能である。また、現像器と離間した位置に別途、トナーカートリッジを配置し、該トナーカートリッジから現像器にトナーが供給される構成とされた現像器としてもよい。
【0027】
上記転写ローラ34は、感光体ドラム30に接し、且つ矢印方向(感光体ドラム30とウイズ方向)に回転駆動されながら用紙をニップして搬送する。
上記メモリ除去部材35は、感光体ドラム30に残留するトナーを掻き乱す導電性ブラシからなり、その先端が感光体ドラム30の表面に擦れ合うように接している。
上記プロセス部3の上流側近傍には、レジストローラ対62が設置されており、また、上記プロセス部3の下流側近傍には、後記する定着装置4が設置されている。
【0028】
上記排出部5は、定着装置4の下流側に設置された排出ローラ対50と、排出された記録済用紙を積載する排出トレイ51とを備えている。
上記排出ローラ対50を回転させることで、定着装置4でトナー画像が定着された記録済用紙は、装置本体10の側壁に設けられた排出口15から該排出口15の下方かつ排出方向前方に向けて延びるように設けられた排出トレイ51に向けて排出される。
【0029】
上記構成とされた画像記録部においては、用紙カセット20から、上記のように1枚ずつ分離され繰出された用紙は、上記レジストローラ対62によりレジストされて、前記感光体ドラム30と転写ローラ34とのニップ部に導入される。感光体ドラム30は、図1の矢印方向に回転しながら、帯電器31によりその表面が一様にプラス(或いはマイナス)帯電され、画像情報に基づく光学画像が露光器32によって感光体ドラム30の表面に照射され、感光体ドラム30の表面には静電潜像が形成される。この静電潜像は、感光体ドラム30の表面の光導電体の特性に基づき、光の照射部分と非照射部分との間に生じる電位差により形成されるものである。
【0030】
上記静電潜像は、現像器33で逐次現像されてトナー画像とされ、このトナー画像は感光体ドラム30の回転に伴い、転写ローラ34とのニップ部に至る。上記レジストローラ対62は、感光体ドラム30の表面のトナー画像の移動に同期して用紙が上記ニップ部に導入されるようレジスト制御されて回転駆動される。
転写ローラ34は、上記のように回転駆動されながら用紙をニップして搬送し、この間感光体ドラム30の表面のトナー像が用紙に転写される。トナー像が転写された記録済用紙は、後記する定着装置4に導入され、加熱、加圧されて永久画像として定着された後、排出部5に至る。
【0031】
転写ローラ34を経た感光体ドラム30の表面には、若干のトナーが付着、残留しており、この残留トナーは、所定のバイアス電位が印加されたメモリ除去部材35によって掻き乱され、感光体ドラム30の表面上に分散される。分散された残留トナーは、その後の露光工程での静電潜像の形成に影響を及ぼすことなく現像器33に回収される。
尚、メモリ除去部材35に代え、帯電器32に残留トナーのメモリ除去機能を持たせるようにしても良い。
【0032】
上記一連の用紙の搬送は、用紙カセット20からの繰出し直後に、搬送ローラ対61が設置された湾曲路で、用紙カセット20の繰出し方向とは略180度の方向にUターンするように形成された、いわゆるUパスの用紙搬送路6に沿ってなされる。このように用紙をUターンさせて搬送する用紙搬送路6とすることで、装置本体10の高さを低く抑えることができる。また、搬送される用紙は、上記画像記録部において、その上面に画像記録がなされるので、例えば、下面に画像記録するようにしたものと比べて、画質不良を低減することができる。
【0033】
尚、図1において、符号60は、多段カセット方式としてのオプションカセット(不図示)を前記用紙カセット20の下に設置した場合に、そのオプションカセットからの用紙を搬送するための搬送路である。このようにオプションカセットを備えた場合は、搬送路60は、用紙搬送路6の一部を構成する。
また、図1において、符号70は、装置本体10の側部に開閉自在に設けられた手差供給トレイである。該手差供給トレイ70にセットされた用紙は、手差パス7に設置された搬送ローラ対71によって手差パス7を搬送され、用紙搬送路6に合流し、レジストローラ対62によって感光体ドラム30と転写ローラ34のニップ部に導入され、上記同様に画像記録がなされる。
【0034】
次に、本実施形態に係る定着装置及び該定着装置が備えるヒートローラの一例について図2〜図5に基づいて説明する。
定着装置4は、プロセス部3(図1参照)の下流側に配設され、樹脂成型された定着装置ハウジング42内に、互いに押し当て状態とされたヒートローラ40とプレスローラ41とを備えている。
定着装置ハウジング42の上流側壁(図2における紙面右方)には、上記用紙搬送路6に沿って搬送されるトナー画像が転写された用紙を受入れる上流側開口421が設けられている。また、定着装置ハウジング42の下流側壁(図2における紙面左方)には、トナー画像が定着された記録済用紙を排出部5に向けて排出する下流側開口422が設けられている。
装置本体10に装着された状態で定着装置4は、図1に示すように、ヒートローラ40とプレスローラ41とのニップ部が用紙搬送路6に沿うように配置される。
【0035】
また、定着装置ハウジング42には、搬送される用紙をヒートローラ40から剥離するための剥離爪43と用紙の搬送をガイドするガイドリブ420とがローラ軸方向に沿って複数箇所に形成されている。
剥離爪43は、その基端部が揺動自在に支持されており、ヒートローラ40の外周面に、その先端が接触するようにトーションバネなどにより常に弾力が付与されている。
また、定着装置ハウジング42には、ヒートローラ40の表面温度を計測するサーミスタ等の温度センサ44が設けられている。この温度センサ44から出力された計測温度に基づいて、ヒートローラ40の外周面が所定の定着温度に維持されるように、後記する面状発熱体402への通電(ON/OFF)の制御がなされる。
尚、図示を省略しているが、定着装置ハウジング42には、後記するヒートローラ40の面状発熱体402への給電を行うための給電部が設けられている。
【0036】
ヒートローラ40は、基材401と、接着層403を介して基材401の外周に固着された面状発熱体402と、該面状発熱体402の外周に形成された離型層404とを備えている。
上記基材401は、中空円筒形状とされたアルミニウムパイプからなる。
尚、基材401は、上記アルミニウムパイプに限らず、他の金属材からなるものとしてもよい。または、電気絶縁性及び耐熱性を有する合成樹脂、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)等の合成樹脂を中空円筒状或いは中実円筒状に形成した基材401としてもよい。
【0037】
上記面状発熱体402は、発熱体142、耐熱絶縁層242及び伝熱層342を径方向外方にこの順に積層した三層構造とされている。
上記伝熱層342としては、高い熱伝導率を有する銅箔が挙げられ、10μm〜30μm程度の厚さとされている。尚、この伝熱層342としては、他のアルミニウム等の金属材としてもよく、或いは、窒化アルミニウム又は炭化ケイ素等のセラミックスとしてもよい。
上記耐熱絶縁層242としては、電気絶縁性及び耐熱性を有する耐熱接着剤からなるものが挙げられ、例えば、ポリイミド系の接着剤により形成するようにしてもよい。該耐熱絶縁層242は、上記伝熱層342と発熱体142とを電気的に絶縁可能な程度の厚さとすればよく、例えば、10μm〜70μm程度の厚さとされている。
上記発熱体142は、ステンレス或いはニッケルクロム等からなり、該発熱体142は、複数の線状に形成されたヒータパターンとされている。該発熱体142は、10μm〜70μm程度の厚さとされている。
【0038】
上記面状発熱体402は、例えば、伝熱層342となる上記銅箔の一方の面に、所定の厚さで上記耐熱絶縁層242を形成する。次いで、該耐熱絶縁層242にステンレス或いはニッケルクロム等からなる箔状の材料を、加熱及び加圧により固着させる。次いで、ウェットエッチング等の公知の方法により、複数の線を有するパターン形状に加工してヒータパターンを形成し、上記発熱体142を形成するようにしてもよい。
このような構成により、面状発熱体402は、可撓性を有したシート状のヒータとなり、基材401の外周面に後記する接着層403を介して固着される。
【0039】
尚、図示を省略しているが、面状発熱体402のローラ軸方向両端部には、前記給電部と導通される電極部が設けられている。
また、上記発熱体142を構成するヒータパターンの形成は、上記例に限らず、スパッタリング或いは蒸着、パターン印刷、ブラスト等により形成するようにしてもよい。
【0040】
上記接着層403は、熱硬化型のシリコーン系接着剤を硬化させて形成されており、該接着層403には、上記基材401側に向けて開口する複数の凹溝405が形成されている。この接着層403の厚さは、10μm〜500μm程度とされており、好ましくは、30μm〜100μm程度である。該接着層403は、上記面状発熱体402と基材401とを電気的に絶縁するとともに、断熱層として機能し、この接着層403の厚さは、上記面状発熱体402と基材401との電気絶縁性及び断熱性を阻害することがない厚さとすればよい。
【0041】
上記凹溝405は、本実施形態では、ヒートローラ40の軸方向に沿って、かつ該軸方向の全長に亘って形成されるとともに、周方向に沿って並列して形成されている。換言すれば、接着層403に、軸方向に沿って、かつ該軸方向の全長に亘って形成されるとともに、周方向に沿って並列して形成された凸部406の間が凹溝405とされている。
該凹溝405の幅(周方向に沿う幅)及び設ける本数は、接着層或いは基材の物性(熱膨張率)等に応じて、適宜設定可能である。その凹溝405の幅及び本数は、少なくとも基材401に接着される接着部となる凸部406の上面(基材側の面)の面積よりも、該凹溝405全体の開口部側面積が小さくなるようにしてもよい。これにより、基材401と面状発熱体402との接着強度を阻害することなく、後記するように接着層或いは基材の熱膨張を吸収できる。
【0042】
上記のように形成された凹溝405は、軸方向に沿って連通するとともに、軸方向両端部において開口しており、空気流通路を形成する。
尚、上記接着層403としては、本実施形態では、高い耐熱性を有するシリコーン系接着剤からなるものを例示しているが、凹溝405を形成できるものであれば、他の接着剤からなるものとしてもよい。例えば、熱硬化型の他のエポキシ系、アクリル系等の接着剤により形成するようにしてもよく、所定の定着温度に耐えられる耐熱性のあるものとすればよい。
【0043】
上記離型層404は、トナー或いは紙粉の付着を低減するためのもので、例えば、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニル共重合体等のフッ素系樹脂からなり、面状発熱体402の外周面に接着剤等で固着、或いは塗布形成されている。この離型層404の厚みは、30μm〜50μm程度としてもよい。
上記構成とされたヒートローラ40の両端部には、ローラ軸部材(不図示)が設けられており、定着装置ハウジング42内に設けられた軸受(不図示)等で回転自在に支持されている。また、該ローラ軸部材の一端には、ギア等が固着されており、該ギア等に対して、装置本体10に設けられたモータ等の駆動手段(不図示)による駆動が伝達されて、ヒートローラ40の回転駆動がなされる。
このヒートローラ40の回転駆動により、後記するプレスローラ41が従動回転して、ニップ部に導入された用紙がニップ搬送される。該ニップ部を用紙が通過する間に、転写されたトナー画像が加熱及び加圧により用紙に定着され、記録済用紙として排出部5に向けて搬送される。
【0044】
上記プレスローラ41は、鉄鋼材等の金属材で形成されたプレスローラ軸410と、該プレスローラ軸410に外装された円筒状弾性部材411と、離型層412とからなる。
円筒状弾性部材411は、シリコーン、ウレタン等のゴム体あるいはスポンジ体からなり、プレスローラ軸410に接着剤等で固着されている。
上記離型層412は、円筒状弾性部材411の外周面に形成されており、用紙、トナー或いは紙粉の剥離性を高めるための例えば、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニル共重合体等のフッ素系樹脂チューブ等からなる。
尚、プレスローラ軸に適用される金属材料としては、SUM24LやS20Cなどの鉄鋼材にニッケル鍍金を施したものとしてもよい。また、離型層412の厚みは、30μm〜50μm程度としてもよい。
【0045】
プレスローラ軸410は、その両端が軸受体423により回転自在に支持されている。該軸受体423は、定着装置ハウジング42に対してスライド自在に設けられており、定着装置ハウジング42に固定されたコイルバネ等からなる弾性部材424の弾力によってヒートローラ40側に向けて押されている。
この弾性部材424により、プレスローラ41は、ヒートローラ40に向けて押し当て状態とされ、該プレスローラ41が上記ヒートローラ40に弾性的に接することで、ニップ部が形成される。
【0046】
尚、弾性部材424は、定着装置ハウジング42内に固定された金属シャーシ(不図示)に、その基端部が固定支持されている。
また、弾性部材424としては、コイルバネに限らず、プレスローラ41をヒートローラ40に対して押し当て可能な押部材であればどのようなものでもよい。
さらに、図示を省略しているが、定着装置4は、ヒートローラ40とプレスローラ41とのニップ状態(接触状態)を解除するニップ解除機構を備えている。また、ヒートローラ40の表面に付着した紙粉やトナーを除去するクリーニングローラあるいはクリーニングブレードなどを備えている。
【0047】
次に、前記構成とされたヒートローラ40の形成工程の一例について、図3〜図5に基づいて説明する。
尚、図3〜図5では、上記面状発熱体402を構成する各層は図示を省略しており、また、上記発熱体142により形成される微小な凹凸も図示を省略している。
図3に示すように、前記のようにシート状に形成された面状発熱体402を台座(不図示)等の上に平面状に配置する。次いで、該面状発熱体402の裏面側(上記発熱体142側)に、熱硬化型のシリコーン系接着剤407を所定の厚さで塗布する。この状態では、シリコーン系接着剤407は、加熱されておらず未硬化状態である。
次いで、上記シリコーン系接着剤407に対して、金型9によって加圧するとともに加熱する。
この金型9は、上記シリコーン系接着剤407側に向けて突出する複数の線状の凸部91と、該凸部91間に形成された複数の凹溝90とを有している。上記凸部91が、上記接着層403の凹溝405を形成し、上記凹溝90が、上記接着層403の凸部406を形成する。
また、この際、金型温度は、シリコーン系接着剤407が完全に硬化しない温度に設定されている。
【0048】
上記のように金型9によりプレスされることで、図4に示すように、シリコーン系接着剤が半硬化状態とされた半硬化接着層408が形成される。
この状態では、半硬化接着層408には、上記接着層403の上記凹溝405と上記406とが形成されている。
次いで、図5に示すように、半硬化接着層408側を基材401側に向けた状態で、面状発熱体402を基材401の外周に巻きつける。
上記のように基材401の外周に半硬化接着層408を介して面状発熱体402を巻きつけた状態で、加熱して半硬化接着層408を完全に硬化させ、基材401と面状発熱体402とを接着する。
【0049】
次いで、上記したように面状発熱体402の表面側(上記伝熱層342側)に離型層404を形成する。
上記工程により、図2に示すように、基材401と面状発熱体402との間に、凹溝405を有した接着層403が形成される。
尚、接着層403への凹溝405の形成は、上記金型9を用いた例に限られず、半硬化状態とされたシリコーン系接着剤に対して凹溝を形成可能な他の方法を用いても良い。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る定着装置4が備えるヒートローラ40は、基材401と、複数の凹溝405が基材401側に向けて開口して形成された接着層403と、該接着層403を介して基材401の外周に固着された面状発熱体402とを備えている。従って、熱源となる面状発熱体402が、ヒートローラ40の外周面近くに配置されるので、ヒートローラ40の外周面の温度を急速に上昇させることができ、ウォームアップタイムを短縮できる。
【0051】
また、ヒートローラ40の接着層403には、基材401側に向けて開口する複数の凹溝405が形成されているので、凹溝405により、面状発熱体402の発熱による接着層403或いは基材401の熱膨張を吸収できる。また、凹溝405は、ローラ軸方向に沿って連通するとともに、ローラ軸方向両端部において開口しているので、凹溝405が空気流通路となる。よって、凹溝405内の空気、及び接着層403或いは基材401が熱膨張した場合でも、ローラ軸方向両端部から空気が流出し、凹溝405による上記した接着層403或いは基材401の熱膨張の吸収を阻害することがない。
従って、基材401の外周に固着された面状発熱体402の合わせ目(端部同士の突合せ部、継ぎ目)が広がることを防止でき、基材401と面状発熱体402との接着強度を高めることができる。すなわち、面状発熱体402が基材401から剥離することを防止できる。
さらに、凹溝405が空気流通路となることで、該空気流通路が断熱部となり、面状発熱体402が発する熱が基材401に伝わり難くなる。従って、ヒートローラ40の外周面の温度を急速に上昇させることができ、ウォームアップタイムをより効果的に短縮できる。
【0052】
また、本実施形態では、上記接着層403の凹溝405を、ローラ軸方向に沿って、かつ該ローラ軸方向の全長に亘って形成するとともに、周方向に沿って並列して形成するようにしている。従って、凹溝405による空気流通路がローラ軸方向に沿ってかつ周方向に沿って並列して形成される。これにより、接着層403或いは基材401の拡径方向への熱膨張を効果的に吸収できるので、面状発熱体402の合わせ目の広がりを、より効果的に防止できる。
さらに、本実施形態では、上記ヒートローラ40の基材401を、中空円筒形状のアルミニウムパイプとしている。従って、例えば、基材を合成樹脂材等で形成した場合と比べて、面状発熱体402からの熱が該基材401へ伝わり易くなるが、該基材401の剛性を高めることができる。このように基材401の剛性が高められることで、定着装置4に設置されてプレスローラ41からの分布荷重を受けた場合にも撓むようなことがなく、よって、定着ムラ或いは定着不良を低減できる。
また、上述のように、本実施形態によれば、接着層403の凹溝405により形成される空気流通路が断熱部となり、本実施形態のように、基材401をアルミニウムパイプとした場合にも面状発熱体402から基材401への熱伝導を低減できる。
【0053】
さらにまた、本実施形態に係る定着装置4によれば、上記ヒートローラ40を備えているので、上記したように、面状発熱体402の合わせ目が広がるようなことがない。従って、ヒートローラ40の面状発熱体402と基材401との接着強度を高めることができる。これにより、面状発熱体402の合わせ目が広がることによる定着ムラ或いは定着不良を防止できる。
また、ヒートローラ40に形成された凹溝405により、面状発熱体402が発する熱が基材401に伝わり難くなる。従って、ヒートローラ40の外周面の温度を急速に上昇させることができ、ウォームアップタイムを効果的に短縮できる定着装置4となる。
【0054】
次に、本実施形態に係る定着装置が備えるヒートローラの他例について図6〜図9に基づいて説明する。
図6及び図7は、同ヒートローラの形成工程を模式的に示す概略斜視図、図8は、同形成工程を模式的に示す概略縦断面図、図9は、同ヒートローラを模式的に示す図2の一点鎖線内拡大図に対応させた図である。
尚、上記例と同様の構成及び工程については、説明を省略或いは簡略に説明する。
また、図6〜図8では、上記面状発熱体402を構成する各層は図示を省略しており、また、上記発熱体142により形成される微小な凹凸も図示を省略している。
【0055】
本例では、面状発熱体402への半硬化接着層の形成工程及び接着層の凹溝の構成が上記例と主に異なる。また、基材401の外周には、アルマイト処理等により絶縁層409(図8参照)が形成されており、該絶縁層409を含めて基材として把握している。
まず、図6に示すように、台座等の上に平面状に配置した面状発熱体402の裏面側にマスキング部材19を載せ置く。
このマスキング部材19には、多数の孔部190が形成されており、該孔部190が、後記する接着層430(図9参照)を構成する多数のドット状の凸部460を形成する。すなわち、該孔部190は、形成したいドット状の凸部460の形状に合わせて、その孔径及び深さが設定されている。
【0056】
上記のようにマスキング部材19を、面状発熱体402の裏面に接触させて、載せ置いた状態で、シルクスクリーンの要領で、上記した熱硬化型のシリコーン系接着剤を塗布する。つまり、マスキング部材19の上記孔部190にシリコーン系接着剤を充填する。
この状態で加熱して、上記同様、シリコーン系接着剤を半硬化させる。
上記のようにシリコーン系接着剤を半硬化させ、マスキング部材19を面状発熱体402から脱離させる。
この状態では、図7に示すように、面状発熱体402の裏面に多数のドット状の凸部460が形成され、これら凸部460の集合体からなる半硬化接着層480が形成される。
上記ドット状の凸部460間に形成された通路が凹溝450を構成する。
また、この状態では、上記凸部460が形成されていない凹溝450には、上記発熱体421のヒータパターンの一部が露出した状態とされている(図9参照)。よって、本例のヒートローラ140では、上記したように、アルミニウムパイプからなる基材401と面状発熱体402との電気的絶縁性を確保すべく、基材401の外周に絶縁層409を形成している。
【0057】
次いで、図8に示すように、半硬化接着層480側を基材401側に向けた状態で、面状発熱体402を基材401の外周に巻きつける。
上記のように基材401の外周に半硬化接着層480を介して面状発熱体402を巻きつけた状態で、加熱して半硬化接着層480を完全に硬化させ、基材401と面状発熱体402とを接着する。
次いで、上記同様、面状発熱体402の表面側に離型層404を形成する。
上記工程により、図9に示すように、基材401と面状発熱体402との間に、凹溝450を有した接着層430が形成される。
すなわち、面状発熱体402から基材401側に向けて突出する多数のドット状の凸部460が接着層430を構成し、該凸部460間が凹溝450を構成する。
【0058】
以上のように、本例に係るヒートローラ140によれば、上記凹溝450による空気流通路が周方向及びローラ軸方向にも連通して形成される。これにより、上記例と同様の効果を奏するとともに、接着層430或いは基材401の拡径方向への熱膨張及び接着層430或いは基材401のローラ軸方向への熱膨張も効果的に吸収できるヒートローラとなる。
【0059】
尚、本例では、マスキング部材19によって、多数のドット状の凸部460を形成した例を示したが、例えば、接着剤吐出装置等によって吐出させてドット状の凸部を形成するようにしてもよい。
また、本例では、ドット状の凸部460が前後左右に整列した状態で配置され、凹溝450が平面視して略格子状に形成された例を示しているが、凸部460を千鳥状に形成するようにしてもよく、或いはランダムに形成するようにしてもよい。
さらに、上記ドット状の凸部460を形成する前に、面状発熱体402の裏面の全面にシリコーン系接着剤を塗布し、該接着剤の上面にマスキング部材19を載せ置いて凸部460を形成するようにしてもよい。この場合は、上記ヒートローラ40と同様、面状発熱体402の全面が接着層によって覆われるので、基材401の外周に絶縁層409を形成しないようにしてよい。
【0060】
さらに、本例では、マスキング部材19の孔部190の形状を、平面視して略矩形状のものとしたが、ドット状の凸部460を形成できる形状であれば、円形、楕円形、多角形等、どのような形状としてもよい。すなわち、ドット状の凸部460の形状は、平面視して略矩形状に限らず、他の円形、楕円形、多角形等、どのような形状としてもよい。
さらにまた、本例のマスキング部材19の孔部の形状を、上記ヒートローラ40の凸部406に対応させた長尺のスリット形状とし、該マスキング部材19によって、上記ヒートローラ40の半硬化接着層408を形成するようにしてもよい。この場合は、面状発熱体402の裏面或いは基材401の少なくともいずれか一方に、上記したように絶縁層を形成するようにしてもよい。
また、上記ヒートローラ40及び本例のヒートローラ140のいずれにおいても基材401が合成樹脂等の電気絶縁性の材料からなる場合は、上記したような絶縁層を形成しない構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す概略縦断面図である。
【図2】同画像形成装置が備える定着装置の一例を模式的に示す概略縦断面図、及び概略一部拡大縦断面図である。
【図3】同定着装置が備えるヒートローラの一例の形成工程を模式的に示す概略縦断面図である。
【図4】同形成工程を模式的に示す概略縦断面図である。
【図5】同形成工程を模式的に示す概略縦断面図である。
【図6】同定着装置が備えるヒートローラの他例の形成工程を模式的に示す概略斜視図である。
【図7】同形成工程を模式的に示す概略斜視図である。
【図8】同形成工程を模式的に示す図5に対応させた図である。
【図9】同ヒートローラを模式的に示す図2の一点鎖線内拡大縦断面図に対応させた図である。
【符号の説明】
【0062】
1 画像形成装置
3 プロセス部
4 定着装置
40,140 ヒートローラ
401 基材
402 面状発熱体
403,430 接着層
405,450 凹溝
409 絶縁層(基材)
460 ドット状の凸部
41 プレスローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に形成されたトナー画像を定着させるための定着装置に用いられるヒートローラであって、
円筒形状の基材と、複数の凹溝が前記基材側に向けて開口して形成された接着層と、該接着層を介して前記基材の外周に固着された面状発熱体とを備え、
前記凹溝は、ローラ軸方向に沿って連通するとともに、ローラ軸方向両端部において開口していることを特徴とするヒートローラ。
【請求項2】
請求項1において、
前記凹溝は、ローラ軸方向に沿って、かつ該ローラ軸方向の全長に亘って形成されるとともに、周方向に沿って並列して形成されていることを特徴とするヒートローラ。
【請求項3】
請求項1において、
前記接着層は、前記基材側に向けて突出する多数のドット状の凸部とされ、該凸部間が前記凹溝を構成していることを特徴とするヒートローラ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記基材は、中空円筒形状の金属材からなることを特徴とするヒートローラ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のヒートローラと、該ヒートローラに弾性的に接するプレスローラとを備えたことを特徴とする定着装置。
【請求項6】
記録媒体にトナー画像を形成するプロセス部と、請求項5に記載の定着装置とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−251406(P2009−251406A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100989(P2008−100989)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】