説明

ヒートローラ、該ヒートローラを備えた定着装置、及び該定着装置を備えた画像形成装置

【課題】薄肉化を図りつつも簡易な構成により機械的強度を高め得るヒートローラを提供する。また、上記ヒートローラを備えた定着装置、及び該定着装置を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】記録媒体に形成されたトナー画像を定着させるための定着装置4に用いられるヒートローラ40であって、中空円筒形状の合成樹脂材からなる基材41と、該基材の外周に固着された面状発熱体42とを備え、前記基材の内周面410には、ローラ軸方向中央部より軸心方向へ突出する薄肉中央リブ411と、周方向に沿って並列されるとともにローラ軸方向に沿って形成された複数本の細長状リブ412とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写装置、ファクシミリ装置、プリンタ装置、或いはこれらの機能を備えた複合機等の画像形成装置、該画像形成装置に設置される定着装置、及び該定着装置に用いられるヒートローラに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような画像形成装置としては、用紙カセット等の用紙収容部から、1枚ずつ用紙等の記録媒体を繰出し、用紙搬送路の途中に設置された搬送(レジスト)ローラ対を経て、電子写真方式の画像記録部で画像記録を行うものが挙げられる。
上記画像記録部を構成する感光体ドラムと転写ローラとのニップ部に搬送及び供給された用紙には、感光体ドラムの表面に形成されたトナー画像が転写される。トナー画像が転写された用紙は、定着装置でトナー画像が定着されて、排出部に排出される。
【0003】
上記画像形成装置に設置される定着装置としては、ヒートローラと、該ヒートローラに弾性的に接するプレスローラとを備えたものが挙げられる。このような定着装置は、ヒートローラとプレスローラとのニップ部において、用紙に転写されたトナー画像を加熱及び加圧することにより永久画像として定着させている。
上記ヒートローラとしては、アルミニウムなどの中空円筒を基材とし、その内部にハロゲンランプなどの発熱体を収容し、該ハロゲンランプによって基材を加熱する構成とされたものが知られている。
或いは、中空円筒の基材の外周面に発熱体を配置したヒートローラが知られている。
【0004】
上記したような基材の内部或いは外周面に熱源が配置されるヒートローラにおいては、該基材の熱容量が大きくなると、熱源からの熱が該基材に奪われる。この結果、ヒートローラ自体の温度上昇が阻害されて、電源投入後にヒートローラの外表面(外周面)が所定の温度(定着温度)となるまでのウォームアップタイムが長くなるという問題があった。
上記基材の熱容量を小さくするためには、該基材を薄肉化することが考えられるが、上記したように定着装置内において、該基材(ヒートローラ)には、上記プレスローラが弾性的に接するため、該基材を薄肉化し過ぎると、該ヒートローラの機械的強度が低下する。
【0005】
下記特許文献1では、上記したようなヒートローラの機械的強度の低下を低減するために、基体(基材)の内面に補強リブを設けた定着ローラ(ヒートローラ)が提案されている。
この定着ローラは、アルミ又は鉄の薄肉パイプにより上記基体を構成し、内部にハロゲンヒータを配置している。
また、上記基体の内面には、絞り加工により形成された複数本の補強リブが周方向に沿って設けられており、該補強リブは、ローラ軸方向中央部で密となるように設けられている。さらに、定着ローラの中央部に撓み防止装置を設け、該撓み防止装置の押圧部により定着ローラの加圧ローラとは反対側の外周面を押圧し、該定着ローラの中央部を、プレスローラ側に向けて押圧する構成とされている。
上記定着ローラによれば、上記補強リブにより、該定着ローラの潰れ(周方向の変形)が防止できるとともに、上記撓み防止装置により、該定着ローラの撓み(軸方向の変形)が抑止できる、と説明されている。
【特許文献1】特開2004−258104号公報(図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記特許文献1に記載の定着ローラでは、周方向の潰れ変形は、上記補強リブで防止できるものの、軸方向の撓み変形の抑止は上記のような撓み防止装置を設ける必要があり、装置が複雑化及び大型化するという問題があった。
また、上記特許文献1に記載の定着ローラのように、内部に熱源(ハロゲンランプ)を配置するものでは、上記基材が、熱伝導性の良い鉄或いはアルミニウム等の金属材から形成されるので、その機械的強度もある程度は保つことができる。
しかし、上記したような中空円筒の基材の外周面に発熱体を配置したヒートローラにおいて、該基材を熱伝導性の良い金属材等で形成すれば、該基材の熱伝導性の良さにより、発熱体が発する熱が基材側に奪われる。この結果、熱効率が悪化し、該ヒートローラの外周面を効率的に昇温できない恐れがあった。また、該基材と発熱体とを電気的に絶縁する必要も生じる。
【0007】
そこで、上記基材を、合成樹脂材により形成することが考えられるが、この場合にも上述のように、基材自体の熱容量を小さくすべく、基材を薄肉化することが望まれる。
しかしながら、合成樹脂材からなる基材は、上記のような金属材により基材を形成した場合と比べて、機械的強度が更に弱く、薄肉化による上述のような変形の問題がより一層顕著となり、更なる改善が望まれていた。
【0008】
本発明は、前記問題を解決するために提案されたもので、その目的は、薄肉化を図りつつも簡易な構成により機械的強度を高め得るヒートローラを提供することにある。また、本発明は、上記ヒートローラを備えた定着装置、及び該定着装置を備えた画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明に係るヒートローラは、記録媒体に形成されたトナー画像を定着させるための定着装置に用いられるヒートローラであって、中空円筒形状の合成樹脂材からなる基材と、該基材の外周に固着された面状発熱体とを備え、前記基材の内周面には、ローラ軸方向中央部より軸心方向へ突出する薄肉中央リブと、周方向に沿って並列されるとともにローラ軸方向に沿って形成された複数本の細長状リブとが設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の前記ヒートローラにおいては、前記薄肉中央リブと前記細長状リブとを、前記基材と成形一体に形成するようにしてもよい。
また、前記各リブを上記基材と一体成形したヒートローラにおいては、前記細長状リブ間の溝を、ローラ軸方向中央部より両端部に向けて徐々に深くなるテーパ状とし、前記細長状リブを、横断面が山形状としてもよい。
【0011】
また、前記目的を達成するために、本発明に係る定着装置は、前記ヒートローラのうちのいずれかと、該ヒートローラに弾性的に接するプレスローラとを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、前記目的を達成するために、本発明に係る画像形成装置は、記録媒体にトナー画像を形成するプロセス部と、前記定着装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る前記ヒートローラは、中空円筒形状の合成樹脂材からなる基材と、該基材の外周に固着された面状発熱体とを備えている。従って、熱源となる面状発熱体が、ヒートローラの外周面近くに配置されるので、ヒートローラの外周面の温度を急速に上昇させることができ、ウォームアップタイムを短縮できる。
また、前記基材を、合成樹脂材からなる基材としているので、例えば、金属材からなる基材とした場合と比べて、熱伝導性が低いため、その外周に固着される面状発熱体からの熱が該基材側へ逃げることを低減できる。これにより、効果的にウォームアップタイムの短縮化が図れる。
【0014】
さらに、前記基材の内周面には、ローラ軸方向中央部より軸心方向へ突出する薄肉中央リブと、周方向に沿って並列されるとともにローラ軸方向に沿って形成された複数本の細長状リブとが設けられている。従って、定着装置内に設置されてプレスローラと弾性的に接することによるヒートローラの変形を、薄肉化を図りつつも防止できる。
すなわち、ヒートローラには、プレスローラにより、その軸方向に沿って均等な分布荷重が加えられ、そのローラ軸方向中央部において曲げモーメントが最大となるが、上記薄肉中央リブにより、当該中央部の強度が高められ、ローラ軸方向の撓みを低減できる。さらに、上記ローラ軸方向に沿って形成された複数本の細長状リブにより、ローラ軸方向の強度が高められ、ローラ軸方向の撓みをより効果的に低減できる。
つまり、上記各リブを設けずに、撓み等の変形を防止するためには、上記ヒートローラの基材の肉厚を厚くする、或いは中実形状とすることも考えられるが、これらの場合には、基材の熱容量が大きくなり、ウォームアップタイムの短縮化が阻害される。一方、本発明によれば、上記のように各リブを基材の内周面に設けることで、薄肉化を図りつつも機械的強度を高めることができる。
【0015】
本発明に係る前記ヒートローラにおいて、前記薄肉中央リブと前記細長状リブとを、前記基材と成形一体に形成するようにすれば、基材を容易に成形できる。また、一体成形されるので、例えば上記各リブを別部材として、基材の内周面に固着させた場合と比べて、これら前記薄肉中央リブ及び前記細長状リブが基材の内周面から外れるようなことが低減される。
さらに、上記各リブは、それぞれ薄肉、細長状とされているので、一体成形した場合にもヒケ等により基材の外周面に凹凸等が生じ難い。
【0016】
前記各リブを上記基材と一体成形したヒートローラにおいて、前記細長状リブ間の溝を、ローラ軸方向中央部より両端部に向けて徐々に深くなるテーパ状とし、前記細長状リブを、横断面が山形状とすれば、以下のような効果を奏する。
すなわち、上記細長状リブを形成するそれらの間の溝を、ローラ軸方向中央部より両端部に向けて徐々に深くなるテーパ状とすることで、該溝が金型の当該溝対応部位の抜き勾配となり、金型からの離型がスムーズになされる。
また、上記細長状リブの横断面を山形状としているので、上記テーパ状の溝形状と相俟って、該細長状リブと上記金型の対応部位との接触面積が、離型方向に沿って小さくなり、金型からの離型がスムーズになされる。
従って、離型不良等が生じ難く、クラック、割れ或いは擦傷等のない基材となる。
【0017】
本発明に係る前記定着装置は、前記ヒートローラのうちのいずれかと、該ヒートローラに弾性的に接するプレスローラとを備えている。従って、上記したように、ヒートローラのローラ軸方向における撓みが低減されるので、ヒートローラの撓みにより発生する種々の問題を低減できる。例えば、ヒートローラの中央部におけるニップ圧の低減により、定着不良が生じる恐れがある。或いは、上記プレスローラとともに定着後の用紙をニップ搬送する際に、用紙にシワが生じる恐れがある。本発明によれば、このような恐れを低減できる。
【0018】
本発明に係る前記画像形成装置は、記録媒体にトナー画像を形成するプロセス部と、前記定着装置とを備えているので、前記同様、定着不良、搬送不良によるシワの発生等を防止できる画像形成装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の最良の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る定着装置を備えた画像形成装置の一例を示す概略縦断面図、図2は、同定着装置を模式的に示す概略縦断面図及び該定着装置が備えるヒートローラの一例を模式的に示す概略一部拡大縦断面図、図3は、同ヒートローラの基材の一例を模式的に示す概略一部破断平面図である。
図4〜図9は、同基材を模式的に示し、それぞれ図3における各矢視概略断面図等である。
尚、以下の実施形態の説明において示す上流側及び下流側は、それぞれ用紙搬送路を搬送される用紙の搬送方向上流側及び搬送方向下流側として説明する。
【0020】
図1の画像形成装置1は、クリーナレスシステムを採用した電子写真方式のプロセス部3と定着装置4とで構成される画像記録部を備えたいわゆる複合機を示している。すなわち、複写機能、ファクシミリ機能及びプリンタ機能を兼ね備えたものであるが、これに限らず、画像読取機能を備えた複写装置、ファクシミリ装置或いはプリンタ装置等の画像形成装置であっても良い。また、白黒の電子写真方式の記録部に限られず、各種カラー記録方式の記録部を備えた画像形成装置としてもよい。
画像形成装置1の装置本体10は、用紙を収容し、供給する用紙供給部2と、電子写真方式のプロセス部3と定着装置4とで構成された画像記録部及び記録後の記録済用紙の排出部5と、画像読取部8とが、この順序で高さ方向に積み重なるように構成されている。
【0021】
画像読取部8は、ADF(オートドキュメントフィーダ)読取部81及びFBS部(フラットベットスキャナ部)82を備えた画像読取走査部80と、該画像読取走査部80の上に開閉自在に設置される原稿押え板83と、ADF機構部86とよりなる。画像読取走査部80内には、光源、ミラー、レンズ及びCCDを搭載した走査キャリッジ84が設置され、該走査キャリッジ84は、FBS部82では往復移動可能に、ADF読取部81では固定状態となるよう、その移動の制御がなされる。また、原稿押え板83の上面には、ADF原稿をADF機構部86へ供給するための供給トレイ85と、ADF機構部86からのADF原稿を排出するための排出トレイ87とが設けられている。
上記画像読取部8は、原稿画像の複写或いはファクシミリ送信の際に使用される。
また、上記画像読取部8は、装置本体10に対してヒンジピン14を支点として開閉自在とされ、把持部13をして、その開閉がなされる。この画像読取部8を開放することで、後記する画像記録部のプロセスユニットの着脱が可能とされている。
【0022】
用紙供給部2は、多数枚の用紙を堆積状態で収納し得る用紙収容部を構成する用紙カセット20と、該用紙カセット20の用紙搬送方向前端部に設置されたセパレートローラ22と、該セパレートローラ22の周面に弾性的に接する分離パッド21とを備えている。
この用紙カセット20は、装置本体10に対して、抜差し可能とされている。また、用紙カセット20は、圧縮コイルバネ等によって常時上向きに弾力が付与された押上板23と、用紙の後端を規制し、搬送方向に向けて弾力が付与されるとともに用紙サイズに合わせて位置調整可能とされたエンドガイド24とを備えている。
上記用紙供給部2では、用紙カセット20に収納され堆積された用紙は、その前端部が、セパレートローラ22の周面に押し当てられる。セパレートローラ22が回転すると、該セパレートローラ22と分離パッド21との協働作用によって、堆積された用紙がその最上層部より一枚ずつ分離され、後記する用紙搬送路6に向けて繰出される。
尚、用紙供給部2は、図示した分離パッド方式のものに限られず、半月ローラと分離爪とを備えた分離爪方式或いはリタードローラ方式の供給部としてもよい。
【0023】
画像記録部は、感光体ドラム30の周囲に、プラス(或いはマイナス)帯電方式の帯電器31、露光器32、現像器33、転写ローラ34及びメモリ除去部材35をこの順序で配したプロセス部3と、後記する定着装置4とより構成される。
上記プロセス部3のうち露光器32及び転写ローラ34以外は、プロセスユニットとしてユニット化されている。該プロセスユニットは、上記画像読取部8を上方に向けて開放し、ヒンジピン12を支点として開閉自在とされたメンテナンス用扉11を上方に向けて開放させることで、装置本体10に対して上方に取出し可能とされている。
尚、感光体ドラム30、帯電器31及びメモリ除去部材35からなるドラムユニットと、現像器33からなる現像器ユニットとの2つのユニットに分割して、これら各ユニットを個々に装置本体10に対して着脱可能とされた構成としてもよい。また、装置本体10の側部に開閉扉を設けて、装置本体10に対して水平方向へ取出し可能な構成としてもよい。
また、上記帯電器31は、感光体ドラム30の周面に接するブラシローラからなるブラシ帯電器としているが、スコロトロン帯電器としても良い。
また、上記露光器32は、多数の発光ダイオード(LED)を走査方向(感光体ドラム30の軸方向)に沿って配列したLEDヘッドアレイとしているが、光源としてレーザー光を使用するレーザー露光器としてもよい。
【0024】
上記現像器33は、本実施形態では、一成分現像剤を用いる方式の現像器を例示している。この現像器33は、樹脂成型され、非磁性一成分トナーを収容するトナー容器を兼ねるケーシング330、その内部に設けられたトナーを攪拌するアジテータ331、その下流側に設けられた供給ローラ332、現像ローラ333及び規制ブレード334を備えている。供給ローラ332と現像ローラ333とは、互いに押し当て状態で擦れ合うように同一方向に回転され、それぞれバイアス印加電源(不図示)に電気的に接続され、異なるバイアス電圧が印加される。
上記現像器33では、アジテータ331で攪拌されたトナーが供給ローラ332を介して現像ローラ333に供給される。そのトナーは、両ローラ332,333の摩擦作用及び電位差により帯電されるとともに、規制ブレード334によって、現像ローラ333の表面に均一に薄層を形成するように供給される。
尚、現像器33としては、一成分現像剤を用いる方式のものに限らず、二成分方式、その他の方式のものも採用可能である。また、現像器と離間した位置に別途、トナーカートリッジを配置し、該トナーカートリッジから現像器にトナーが供給される構成とされた現像器としてもよい。
【0025】
上記転写ローラ34は、感光体ドラム30に接し、且つ矢印方向(感光体ドラム30とウイズ方向)に回転駆動されながら用紙をニップして搬送する。
上記メモリ除去部材35は、感光体ドラム30に残留するトナーを掻き乱す導電性ブラシからなり、その先端が感光体ドラム30の表面に擦れ合うように接している。
上記プロセス部3の上流側近傍には、レジストローラ対62が設置されており、また、上記プロセス部3の下流側近傍には、後記する定着装置4が設置されている。
【0026】
上記排出部5は、定着装置4の下流側に設置された排出ローラ対50と、排出された記録済用紙を積載する排出トレイ51とを備えている。
上記排出ローラ対50を回転させることで、定着装置4でトナー画像が定着された記録済用紙は、装置本体10の側壁に設けられた排出口15から該排出口15の下方かつ排出方向前方に向けて延びるように設けられた排出トレイ51に向けて排出される。
【0027】
上記構成とされた画像記録部においては、用紙カセット20から、上記のように1枚ずつ分離され繰出された用紙は、上記レジストローラ対62によりレジストされて、前記感光体ドラム30と転写ローラ34とのニップ部に導入される。感光体ドラム30は、図1の矢印方向に回転しながら、帯電器31によりその表面が一様にプラス(或いはマイナス)帯電され、画像情報に基づく光学画像が露光器32によって感光体ドラム30の表面に照射され、感光体ドラム30の表面には静電潜像が形成される。この静電潜像は、感光体ドラム30の表面の光導電体の特性に基づき、光の照射部分と非照射部分との間に生じる電位差により形成されるものである。
上記静電潜像は、現像器33で逐次現像されてトナー画像とされ、このトナー画像は感光体ドラム30の回転に伴い、転写ローラ34とのニップ部に至る。上記レジストローラ対62は、感光体ドラム30の表面のトナー画像の移動に同期して用紙が上記ニップ部に導入されるようレジスト制御されて回転駆動される。
転写ローラ34は、上記のように回転駆動されながら用紙をニップして搬送し、この間感光体ドラム30の表面のトナー像が用紙に転写される。トナー像が転写された記録済用紙は、後記する定着装置4に導入され、加熱、加圧されて永久画像として定着された後、排出部5に至る。
転写ローラ34を経た感光体ドラム30の表面に付着、残留した残留トナーは、所定のバイアス電位が印加されたメモリ除去部材35によって掻き乱され、感光体ドラム30の表面上に分散される。分散された残留トナーは、その後の露光工程での静電潜像の形成に影響を及ぼすことなく現像器33に回収される。尚、メモリ除去部材35に代え、帯電器32に残留トナーのメモリ除去機能を持たせるようにしても良い。
【0028】
上記一連の用紙の搬送は、用紙カセット20からの繰出し直後に、搬送ローラ対61が設置された湾曲路で、用紙カセット20の繰出し方向とは略180度の方向にUターンするように形成された、いわゆるUパスの用紙搬送路6に沿ってなされる。このように用紙をUターンさせて搬送する用紙搬送路6とすることで、装置本体10の高さを低く抑えることができる。また、搬送される用紙は、上記画像記録部において、その上面に画像記録がなされるので、例えば、下面に画像記録するようにしたものと比べて、画質不良を低減することができる。
尚、図1において、符号60は、多段カセット方式としてのオプションカセット(不図示)を前記用紙カセット20の下に設置した場合に、そのオプションカセットからの用紙を搬送するための搬送路であり、該搬送路60は、用紙搬送路6の一部を構成する。
また、図1において、符号70は、装置本体10の側部に開閉自在に設けられた手差供給トレイであり、該手差供給トレイ70にセットされた用紙は、搬送ローラ対71によって手差パス7を搬送され、用紙搬送路6に合流し、上記同様に画像記録がなされる。
【0029】
次に、本実施形態に係る定着装置及び該定着装置が備えるヒートローラの一例について図2に基づいて説明する。
定着装置4は、プロセス部3(図1参照)の下流側に配設され、樹脂成型された定着装置ハウジング46内に、互いに押し当て状態とされたヒートローラ40とプレスローラ45とを備えている。
定着装置ハウジング46の上流側壁(図2における紙面右方)には、上記用紙搬送路6に沿って搬送されるトナー画像が転写された用紙を受入れる上流側開口461が設けられている。また、定着装置ハウジング46の下流側壁(図2における紙面左方)には、トナー画像が定着された記録済用紙を排出部5に向けて排出する下流側開口462が設けられている。
装置本体10に装着された状態で定着装置4は、図1に示すように、ヒートローラ40とプレスローラ45とのニップ部が用紙搬送路6に沿うように配置される。
【0030】
また、定着装置ハウジング46には、搬送される用紙をヒートローラ40から剥離するための剥離爪47と用紙の搬送をガイドするガイドリブ460とがローラ軸方向に沿って複数箇所に形成されている。
剥離爪47は、その基端部が揺動自在に支持されており、ヒートローラ40の外周面に、その先端が接触するようにトーションバネなどにより常に弾力が付与されている。
また、定着装置ハウジング46には、ヒートローラ40の表面温度を計測するサーミスタ等の温度センサ48が設けられている。この温度センサ48から出力された計測温度に基づいて、ヒートローラ40の外周面が所定の定着温度に維持されるように、後記する面状発熱体42への通電(ON/OFF)の制御がなされる。
尚、図示を省略しているが、定着装置ハウジング46には、後記するヒートローラ40の面状発熱体42への給電を行うための給電部が設けられている。
【0031】
ヒートローラ40は、大略的に、基材41と、接着層43を介して基材41の外周に固着された面状発熱体42と、該面状発熱体42の外周に形成された離型層44とを備えている。
上記基材41は、電気絶縁性及び耐熱性を有する合成樹脂材、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)等の合成樹脂材により中空円筒形状に形成されている。
この基材41の内周面410には、薄肉中央リブ411と、細長状リブ412とが設けられている。尚、これらリブ411,412を含む基材41の詳細については後述する。
また、上記基材41は、上記PPS樹脂に限らず、電気絶縁性及び耐熱性を有する他の合成樹脂材により形成するようにしてもよい。
【0032】
上記面状発熱体42は、発熱体421、高熱伝導接着層422、耐熱絶縁層423及び伝熱層424を径方向外方にこの順に積層した四層構造とされている。
上記伝熱層424としては、高い熱伝導率を有する銅箔が挙げられ、10μm〜30μm程度の厚さとされている。尚、この伝熱層424としては、他のアルミニウム等の金属材としてもよく、或いは、窒化アルミニウム又は炭化ケイ素等のセラミックスとしてもよい。
上記耐熱絶縁層423としては、電気絶縁性及び耐熱性を有する耐熱樹脂材からなるものが挙げられ、例えば、ポリイミドフィルム等が挙げられる。該耐熱絶縁層423は、上記伝熱層424と発熱体421とを電気的に絶縁可能な程度の厚さとすればよく、例えば、10μm〜70μm程度の厚さとされている。
上記高熱伝導接着層422としては、耐熱性及び高い熱伝導率を有する耐熱高熱伝導接着剤からなるものが挙げられ、例えば、高熱伝導シリコーン樹脂系接着剤が挙げられる。該高熱伝導接着層422は、上記耐熱絶縁層423に発熱体421を固着可能な程度の厚さとすればよく、例えば、10μm〜30μm程度の厚さとされている。
上記発熱体421は、ステンレス或いはニッケルクロム等からなり、該発熱体421は、複数の線状に形成されたヒータパターンとされている。該発熱体421は、10μm〜70μm程度の厚さとされている。
【0033】
上記面状発熱体42は、例えば、面状発熱体42の基材としてのポリイミドフィルム(耐熱絶縁層)423の一方の面に、上記銅箔(伝熱層)424を貼着し、他方の面に、上記高熱伝導接着層422を形成する高熱伝導シリコーン樹脂系接着剤を塗布する。次いで、高熱伝導シリコーン樹脂系接着剤が塗布された側の面に、ステンレス或いはニッケルクロム等からなる箔状の材料を、加熱及び加圧により固着させる。次いで、ウェットエッチング等の公知の方法により、複数の線を有するパターン形状に加工してヒータパターンを形成し、上記発熱体421を形成するようにしてもよい。
このような構成により、面状発熱体42は、可撓性を有したシート状のヒータとなり、基材41の外周面に後記する接着層43を介して固着される。
【0034】
尚、図示を省略しているが、面状発熱体42のローラ軸方向両端部には、前記給電部と導通される電極部が設けられている。
また、上記発熱体421を構成するヒータパターンの形成は、上記例に限らず、スパッタリング或いは蒸着、パターン印刷、ブラスト等により形成するようにしてもよい。
さらに、上記面状発熱体42の構成は、上記層構造に限られず、例えば、高熱伝導接着層422を設けずに、耐熱絶縁層423をポリイミド系接着剤により形成するようにしてもよい。この場合は、三層構造となり、上記銅箔の一方の面に、ポリイミド系接着剤を塗布し、その上に上記発熱体を形成するようにしてもよい。
【0035】
上記接着層43は、上記基材41と上記面状発熱体42との間に介在され、高い耐熱性を有するとともに、熱伝導率の低い熱硬化型のシリコーン系接着剤が硬化することにより形成された低熱伝導接着層431を備えている。
上記面状発熱体42を上記基材41の外周に固着させる際には、例えば、該面状発熱体42の裏面側(上記発熱体421側)に上記低熱伝導接着剤を塗布し、該接着剤塗布側の面を、基材41の外周に向けて、面状発熱体42を基材41の外周に巻きつける。
また、巻きつけた際に、上記面状発熱体42の端部同士が対向する部位(合わせ目部位、継ぎ目部位)には、所定の隙間が形成されており、該隙間に、上記同様の高熱伝導シリコーン樹脂系接着剤を充填する。
次いで、上記各接着剤を硬化させることにより、上記面状発熱体42を上記基材41の外周に固着させるようにしてもよい。
これにより、上記面状発熱体42と基材41との間には、上記低熱伝導接着層431が形成されるとともに、上記隙間には、高熱伝導充填部432が形成される。
【0036】
尚、上記低熱伝導接着層431を形成する上記接着剤としては、所定の定着温度に耐えられる耐熱性を有するとともに、低熱伝導率の他の接着剤からなるものとしてもよく、例えば、熱硬化型のエポキシ系、アクリル系等の接着剤により形成するようにしてもよい。
また、この低熱伝導接着層431の厚さは、30μm〜100μm程度の厚さとしてもよい。該低熱伝導接着層431は、上記面状発熱体42と基材41とを電気的に絶縁するとともに、断熱層として機能し、この低熱伝導接着層431の厚さは、上記面状発熱体42と基材41との電気絶縁性及び断熱性を阻害することがない厚さとすればよい。
【0037】
上記離型層44は、トナー或いは紙粉の付着を低減するためのもので、例えば、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニル共重合体等のフッ素系樹脂からなり、面状発熱体42の外周面(上記伝熱層424側)に接着剤等で固着、或いは塗布形成されている。この離型層44の厚みは、30μm〜50μm程度としてもよい。
上記構成とされたヒートローラ40においては、上記発熱体421からの熱は、それぞれ薄状に形成された高熱伝導接着層422、耐熱絶縁層423、伝熱層424及び離型層44を伝導し、これにより、ヒートローラ40の外周面が均一に発熱する。
【0038】
上記構成とされたヒートローラ40によれば、基材41の外周に面状発熱体42を配置しているので、熱源となる面状発熱体42が、ヒートローラ40の外周面近くに配置される。従って、ヒートローラ40の外周面の温度を急速に上昇させることができ、ウォームアップタイムを短縮できる。
また、上記ヒートローラ40の基材41を、合成樹脂材からなる基材41としているので、例えば、金属材からなる基材とした場合と比べて、熱伝導性が低いため、その外周に固着される面状発熱体42からの熱が該基材41側へ逃げることを低減できる。これにより、効果的にウォームアップタイムの短縮化が図れる。
さらに、面状発熱体42と基材41との間に介在された接着層43を低熱伝導性の接着層とするとともに、後記するように基材41を薄肉化することで、発熱体421からの熱が基材41側に奪われることをより効果的に防止できる。これにより、ウォームアップタイムをより効果的に短縮できる。
【0039】
上記構成とされたヒートローラ40の両端部には、ローラ軸部材(不図示)が設けられており、定着装置ハウジング46内に設けられた軸受(不図示)等で回転自在に支持されている。また、該ローラ軸部材の一端には、ギア等が固着されており、該ギア等に対して、装置本体10に設けられたモータ等の駆動手段(不図示)による駆動が伝達されて、ヒートローラ40の回転駆動がなされる。
このヒートローラ40の回転駆動により、後記するプレスローラ45が従動回転して、ニップ部に導入された用紙がニップ搬送される。該ニップ部を用紙が通過する間に、転写されたトナー画像が加熱及び加圧により用紙に定着され、記録済用紙として排出部5に向けて搬送される。
【0040】
上記プレスローラ45は、鉄鋼材等の金属材で形成されたプレスローラ軸450と、該プレスローラ軸450に外装された円筒状弾性部材451と、離型層452とからなる。
円筒状弾性部材451は、シリコーン、ウレタン等のゴム体あるいはスポンジ体からなり、プレスローラ軸450に接着剤等で固着されている。
上記離型層452は、円筒状弾性部材451の外周面に形成されており、用紙、トナー或いは紙粉の剥離性を高めるための例えば、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニル共重合体等のフッ素系樹脂チューブ等からなる。
尚、プレスローラ軸に適用される金属材料としては、SUM24LやS20Cなどの鉄鋼材にニッケル鍍金を施したものとしてもよい。また、離型層452の厚みは、30μm〜50μm程度としてもよい。
【0041】
プレスローラ軸450は、その両端が軸受体463により回転自在に支持されている。該軸受体463は、定着装置ハウジング46に対してスライド自在に設けられており、定着装置ハウジング46に固定されたコイルバネ等からなる弾性部材464の弾力によってヒートローラ40側に向けて押されている。
この弾性部材464により、プレスローラ45は、ヒートローラ40に向けて押し当て状態とされ、該プレスローラ45が上記ヒートローラ40に弾性的に接することで、ニップ部が形成される。
【0042】
尚、弾性部材464は、定着装置ハウジング46内に固定された金属シャーシ(不図示)に、その基端部が固定支持されている。
また、弾性部材464としては、コイルバネに限らず、プレスローラ45をヒートローラ40に対して押し当て可能な押部材であればどのようなものでもよい。
さらに、図示を省略しているが、定着装置4は、ヒートローラ40とプレスローラ45とのニップ状態(接触状態)を解除するニップ解除機構を備えている。また、ヒートローラ40の表面に付着した紙粉やトナーを除去するクリーニングローラあるいはクリーニングブレードなどを備えている。
【0043】
次に、前記ヒートローラ40を構成する上記基材41について、図3〜図9に基づいて詳述する。
上記基材41は、図3に示すように、薄肉の中空円筒形状とされており、その内周面410には、薄肉中央リブ411と、複数本の細長状リブ412とが設けられている。これら薄肉中央リブ411と、細長状リブ412とは、本実施形態では、基材41と成形一体に形成されている。
また、該基材41の両端部には、上記ローラ軸部材が嵌め込まれる取付部414が形成されている。この取付部414が形成された部位では、基材41の中央部近傍の内径よりもややその内径が大きく形成されている。すなわち、該取付部414が形成された部位では、基材41の肉厚が、そのローラ軸方向中央部よりも薄肉とされている(図4〜図6も参照)。
上記薄肉中央リブ411は、基材41の内周面410のローラ軸方向中央部に設けられており、該中央部の内周面410から軸心方向に向けて突出するように設けられている。本実施形態では、内周面410から軸心に至るまで突出させるようにした円盤状の薄肉中央リブ411としている。
【0044】
上記細長状リブ412は、上記基材41の内周面410にローラ軸方向に沿って形成されており、周方向に沿って複数本の細長状リブ412が並列して設けられている。
これら複数本の細長状リブ412のそれぞれは、基材41のローラ軸方向中央部に設けられた上記薄肉中央リブ411から所定間隔を隔てた部位を始端として、基材41の端部側の上記取付部414に至るまで形成されている。
また、これら細長状リブ412間には、複数本の溝413が形成され、図4に示すように、これら溝413は、ローラ軸方向中央部より両端部に向けて徐々に深くなるテーパ状とされている。換言すれば、これら溝413が形成された部位では、基材41の肉厚が、ローラ軸方向に沿って、ローラ軸方向中央部より両端部に向けて徐々に薄くなるよう形成されている。
また、上記細長状リブ412のそれぞれは、図5に示すように、その軸心側端部がローラ軸方向に沿って、上記中央部近傍の始端側から取付部414近傍の終端側まで基材41の外周面と断面視して略平行に形成されている。換言すれば、上記細長状リブ412が形成された部位では、基材41の肉厚が、ローラ軸方向に沿って、ローラ軸方向中央部より両端部に向けて略同じ厚みに形成されている。
また、上記細長状リブ412の終端部415は、凸曲面状に形成されている。
【0045】
さらに、上記細長状リブ412は、図7に示すように、横断面(ローラ軸方向と直交する方向の断面)が山形状とされている。本実施形態では、横断面が、その終端側近傍では略半円形状とされている。
このように細長状リブ412の横断面を略半円形状とするとともに、これら細長状リブ412間の溝413を上記のようにテーパ状としている。これにより、図7及び図8に示すように、上記溝413は、ローラ軸方向両端部から中央部に向けて、徐々に浅くなるとともに、上記細長状リブ412の断面形状に応じて徐々に幅広となっている。換言すれば、細長状リブ412は、上記終端側では、その横断面形状が略半円形状とされるとともに、上記溝413が中央部に向けて浅くなることにより、上記始端側近傍では、上記略半円形状の頂上部の半円弧状部分のみが形成される構成となっている。
【0046】
また、図6及びこの図6の一部拡大図と同様図である図2の拡大図に示すように、ローラ軸方向両端部では、上記したように、薄肉とされた取付部414と、軸方向中央部近傍の内周面410との間に上記細長状リブ412の厚さ分の段差が形成されている。
また、図9に示すように、ローラ軸方向中央部近傍部位では、その内周面410には、上記細長状リブ412及び溝413が形成されておらず、略平滑面とされている。
尚、本実施形態では、上記細長状リブ412が形成された部位では、基材41の肉厚が、ローラ軸方向に沿って、ローラ軸方向中央部より両端部に向けて略同じ厚みに形成するようにしているが、以下のようにしてもよい。すなわち、上記細長状リブ412が形成された部位では、基材41の肉厚が、ローラ軸方向に沿って、ローラ軸方向中央部より両端部に向けて徐々に薄くなるように形成してもよい。これによれば、後述するように、金型により一体成形する際に、該細長状リブ412の頂点部(軸心側端部)にも抜き勾配が形成される。
【0047】
また、上記基材41のローラ軸方向長さ、外径、各リブ411,412の厚さ及び大きさ等は、上記ヒートローラ40が用いられる上記定着装置4或いは上記画像形成装置1の種別(収容・印字、定着可能な用紙サイズ等)等に応じて、適宜設定可能である。
本実施形態では、最大でJIS A列4番の用紙を収容、印字可能な画像形成装置1に適用する場合のヒートローラ40の基材41を図示しており、該A列4番の用紙幅に応じて、ローラ軸方向長さを240mm程度としている。また、基材41の外径は、27mm程度〜28mm程度としている。また、基材41のローラ軸方向中央部近傍の内径を、25mm程度とし、上記取付部414の内径を、26mm程度としている。すなわち、上記取付部414の内周面を基準とすると、その近傍部位の上記細長状リブ412の高さを0.3mm〜0.6mm程度とし、上記テーパ状とされた溝413の中央部側に向けての上り勾配を略0.25°〜0.5°程度としている。
さらに、上記薄肉中央リブの厚さ(ローラ軸方向に沿う厚さ)は、1mm程度としている。
【0048】
次に、上記基材41の形成工程の一例を図10及び図11に基づいて説明する。
図10及び図11は、いずれも上記基材41を形成するための金型の一例を模式的に示す概略縦断面図である。
図例の金型9は、固定型90と、可動型91と、一対の可動割型(合わせ型)92と、可動型91に設けられたエジェクタピン93とを備えている。
上記固定型90は、上記可動型91側に向けて突出する固定側コア部(中子)900と、射出成形機(不図示)のノズルから射出された溶融樹脂が通る湯道となるスプルー904とを備えている。該スプルー904は、固定側コア部900の先端面903において開口している。
【0049】
上記固定側コア部900は、略円柱状とされており、その外周面には、該固定側コア部900の長手方向に沿って、上記基材41の細長状リブ412及び溝413に対応した凸部901と凹部902とが形成されている。この固定側コア部900の先端部近傍の外径は、その基端部側の外径よりも小さく形成されており、該先端部近傍の外径が上記基材41の中央部近傍の内径に対応し、その基端部近傍の外径が上記基材41の一端部近傍の内径(取付部414の内径)に対応している。また、上記凸部901は、テーパ状とされた上記基材41の溝413に合わせて、該固定側コア部900の基端部側から先端部に向けて徐々に低くなるテーパ状とされている。また、上記凹部902は、上記基材41の細長状リブ412の形状に合わせて形成されている。
【0050】
上記可動型91は、上記固定型90側に向けて突出する可動側コア部(中子)910と、エジェクタピン93とを備えている。
上記可動側コア部910は、スプルー904が形成されていない点を除いて、上記固定側コア部900と略同寸同形状とされている。この可動側コア部910の先端面913は、図例のように型締めされた状態では、上記固定側コア部900の先端面903と所定の間隙を隔てて突き合わせられる。この間隙に注入された溶融樹脂が硬化することにより、上記基材41の内周面410に設けられた薄肉中央リブ411が形成される。
上記エジェクタピン93は、当該金型9において成形された基材41を離型する際に可動型91の型面から突き出されて、基材41を離型させる。
【0051】
上記一対の可動割型92は、その内周面921が軸方向に見た場合において略半円形状とされている。この可動割型92は、型締めされた状態、すなわち、可動割型92のそれぞれが突き合わせられて当接した状態では、これら各可動割型92の各内周面921が上記基材41の外周面に対応するよう形成されている。
尚、図示を省略しているが、金型9は、水穴、ガイドピン、スペーサブロック及びエジェクタピンプレート等の金型として必要な他の構成部材を備えている。
【0052】
上記構成とされた金型9においては、型締めされた状態で、上記固定型90、上記可動型91及び可動割型92により閉塞された空間(キャビティ)内に、上記スプルー904を介して溶融樹脂が注入、充填される。この際、上記固定側コア部900の先端面903と、上記可動側コア部910の先端面913との間の上記間隙がランナー部として機能する。すなわち、スプルー904から注入された溶融樹脂は、該ランナー部を通じて上記固定側コア部900及び可動側コア部910の外周と上記一対の可動側割型92の内周面921との間の空間に注入、充填される。
該溶融樹脂が硬化すれば、上記可動型91及び可動割型92を、上記固定型90から離間させるとともに、上記一対の可動割型92を離間させ、エジェクタピン93を突き出すことにより、成形品が離型される。次いで、上記スプルー904に充填されて硬化した棒状部を切除することにより、上記基材41が成形される。尚、この際、上記薄肉中央リブ411の中央部に貫通孔を形成するようにして、上記棒状部とともに、切除するようにしてもよい。
【0053】
尚、上記基材41の成形工程は、一例に過ぎず、上記以外の工程及び金型により形成するようにしてもよい。
例えば、上記金型9の上記固定側コア部900及び可動側コア部910に、位置決め用のガイドピン及びガイドブッシュを設けるようにしてもよい。この場合は、上記基材41の薄肉中央リブ411には、当該ガイドピンによる開口部が適所に形成される。
また、上記固定側コア部900及び可動側コア部910の各先端面903,913の中央部に膨出部を設けるようにしてもよい。これにより、スプルー904を通じて注入される溶融樹脂の上記キャビティ内への拡散が促進される。また、これにより、上記薄肉中央リブ411の中央部がさらに薄肉となり、上記のように棒状部とともに薄肉中央リブ411の中央部を切除する際に、容易に切除できる。
【0054】
以上のように、本実施形態に係るヒートローラ40は、基材41の内周面に、ローラ軸方向中央部より軸心方向へ突出する薄肉中央リブ411と、周方向に沿って並列されるとともにローラ軸方向に沿って形成された複数本の細長状リブ412とを設けている。従って、定着装置4内に設置されて上記プレスローラ45と弾性的に接することによるヒートローラ40の変形を、薄肉化を図りつつも防止できる。
すなわち、ヒートローラ40には、プレスローラ45により、その軸方向に沿って均等な分布荷重が加えられ、そのローラ軸方向中央部において曲げモーメントが最大となるが、薄肉中央リブ411により、当該中央部の強度が高められ、ローラ軸方向の撓みを低減できる。さらに、上記ローラ軸方向に沿って形成された複数本の細長状リブ412により、ローラ軸方向の強度が高められ、ローラ軸方向の撓みをより効果的に低減できる。
つまり、上記各リブを設けずに、撓み等の変形を防止するためには、上記ヒートローラの基材の肉厚を厚くする、或いは中実形状とすることも考えられるが、これらの場合には、基材の熱容量が大きくなり、ウォームアップタイムの短縮化が阻害される。一方、本実施形態のヒートローラ40によれば、上記のように各リブ411,412を基材41の内周面410に設けることで、薄肉化を図りつつも機械的強度を高めることができる。
【0055】
また、本実施形態では、上記基材41の薄肉中央リブ411と細長状リブ412とは、基材41と成形一体に形成されているので、基材41及びこれら各リブ411,412を容易に成形できる。また、一体成形されるので、例えば上記各リブを別部材として、基材の内周面に固着させた場合と比べて、これら薄肉中央リブ411及び細長状リブ412が基材41の内周面410から外れるようなことが低減される。
さらに、上記各リブ411,412は、それぞれ薄肉、細長状とされているので、一体成形した場合にもヒケ等により基材41の外周面に凹凸等が生じ難い。
【0056】
また、本実施形態では、細長状リブ412間の溝413を、ローラ軸方向中央部より両端部に向けて徐々に深くなるテーパ状としているので、該溝413が上記金型9の凸部(溝対応部位)901,911の抜き勾配となり、金型9からの離型がスムーズになされる。
さらに、上記細長状リブ412の横断面を山形状としているので、上記テーパ状の溝413の形状と相俟って、該細長状リブ412と上記金型9の凹部(細長状リブ対応部位)902,912との接触面積が、離型方向に沿って小さくなる。従って、金型9からの離型がスムーズになされる。
以上のように本実施形態のヒートローラ40の基材41では、内周面410に設けられた細長状リブ412の形状を上記構成とすることで、離型不良等が生じ難く、クラック、割れ或いは擦傷等のない基材41となる。
【0057】
また、本実施形態に係る定着装置4では、上記ヒートローラ40を備えているので、ヒートローラ40のローラ軸方向における撓みが低減される。これにより、ヒートローラ40の撓みにより発生する種々の問題を低減できる。例えば、ヒートローラ40の中央部におけるニップ圧の低減により、定着不良が生じる恐れがある。或いは、上記プレスローラ45とともに定着後の用紙をニップ搬送する際に、用紙にシワが生じる恐れがある。本実施形態に係る定着装置4によれば、このような恐れを低減できる。
【0058】
尚、本実施形態では、上記基材41の内周面410に設けられた上記細長状リブ412は、その横断面が略半円形状とされたものを例示しているが、山形状であればどのようなものでもよく、例えば、略半楕円形状、略三角形状、或いは略台形状としてもよい。
また、上記基材41の内周面410に形成された溝413の形状も上記テーパ状に限らず、略平滑面、すなわち、溝413が形成された部位の基材41の肉厚を、ローラ軸方向に沿って、ローラ軸方向中央部より両端部に向けて略同じ厚みとなるようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、基材41の内周面410の周方向に沿って44本の上記細長状リブ412を並列して形成した基材41を例示しているが、該細長状リブ412の本数は、当該ヒートローラ40の機械的強度を考慮して、適宜本数とすればよい。
【0059】
次に、前記ヒートローラ40を構成する基材の変形例について図12及び図13に基づいて説明する。
図12は、同基材の変形例を模式的に示し、図3に対応させた概略一部破断平面図、図13は、同変形例を模式的に示し、図12におけるY5−Y5線矢視概略縦断面図である。
尚、上記基材41と同様の構成については、説明を省略或いは簡略に説明する。
【0060】
本変形例に係る基材141では、薄肉中央リブ416の形状が上記例とは異なる。
すなわち、薄肉中央リブ416は、基材41の内周面410から軸心に向けて所定の高さで突出されて形成されており、図13に示すように、開口部417が形成されたリング形状(ドーナツ形状)とされている。
この薄肉中央リブ416の内周面410からの突出高さは、基材41の軸方向長さ、外径及び薄肉中央リブ416の厚さ等に応じて、適宜設定可能であるが、基材141の潰れ及び撓みを低減できるように設定するようにすればよい。
尚、本変形例に係る基材141は、上記同様の金型9で一体成形し、その中央部を切除することにより、開口部417を形成した薄肉中央リブ416を形成するようにしてもよい。或いは、上記開口部417に対応するガイドピン等を上記固定側コア部900或いは可動側コア部910の先端部に形成し、当該開口部417を形成するようにしてもよい。この場合は、上記スプルー904を溶融樹脂の注入、充填が可能な部位に形成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施形態を示す概略縦断面図である。
【図2】同画像形成装置が備える定着装置を模式的に示す概略縦断面図、及び概略一部拡大縦断面図である。
【図3】同定着装置が備えるヒートローラの基材の一例を模式的に示す概略一部破断平面図である。
【図4】同基材を模式的に示し、図3におけるX1−X1線矢視概略横断面図である。
【図5】同基材を模式的に示し、図3におけるX2−X2線矢視概略横断面図である。
【図6】同基材を模式的に示し、図3におけるY1−Y1線矢視概略縦断面図である。
【図7】同基材を模式的に示し、図3におけるY2−Y2線矢視概略縦断面図、及び概略一部拡大縦断面図である。
【図8】同基材を模式的に示し、図3におけるY3−Y3線矢視概略縦断面図、及び概略一部拡大縦断面図である。
【図9】同基材を模式的に示し、図3におけるY4−Y4線矢視概略縦断面図である。
【図10】同基材の形成工程を説明するための説明図であり、金型の一例を模式的に示す概略縦断面図である。
【図11】同金型を示す図10に対応させた図である。
【図12】同基材の変形例を模式的に示し、図3に対応させた概略一部破断平面図である。
【図13】同変形例を模式的に示し、図12におけるY5−Y5線矢視概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 画像形成装置
3 プロセス部
4 定着装置
40 ヒートローラ
41,141 基材
410 基材の内周面
411,416 薄肉中央リブ
412 細長状リブ
413 細長状リブ間の溝
42 面状発熱体
45 プレスローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に形成されたトナー画像を定着させるための定着装置に用いられるヒートローラであって、
中空円筒形状の合成樹脂材からなる基材と、該基材の外周に固着された面状発熱体とを備え、
前記基材の内周面には、ローラ軸方向中央部より軸心方向へ突出する薄肉中央リブと、周方向に沿って並列されるとともにローラ軸方向に沿って形成された複数本の細長状リブとが設けられていることを特徴とするヒートローラ。
【請求項2】
請求項1において、
前記薄肉中央リブと前記細長状リブとは、前記基材と成形一体に形成されていることを特徴とするヒートローラ。
【請求項3】
請求項2において、
前記細長状リブ間の溝は、ローラ軸方向中央部より両端部に向けて徐々に深くなるテーパ状とされており、
前記細長状リブは、横断面が山形状とされていることを特徴とするヒートローラ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のヒートローラと、該ヒートローラに弾性的に接するプレスローラとを備えたことを特徴とする定着装置。
【請求項5】
記録媒体にトナー画像を形成するプロセス部と、請求項4に記載の定着装置とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−251407(P2009−251407A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100990(P2008−100990)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】