説明

ヒートローラ及びその製造方法

【課題】 ヒートローラの外周側の円筒状部材への、その他の構成部品を一体化したローラ体の挿入作業を簡便としつつ、円筒状部材の外周面の平滑性を保障する。
【解決手段】 円筒体又は円柱体の基材1aの半径方向外側に、いずれも円筒状の断熱層4a、非通気層6a、発熱層3a、絶縁層4a及びシームレスの外管7aがこの順番で積層され、断熱層4aの弾発力により、非通気層6a、発熱層3a及び絶縁層4aが外管7aの内周に押し付けられたヒートローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱用のヒートローラ及びその製造方法に関する。特に、電子写真方式の画像形成装置において、トナー画像を用紙に熱定着するためのヒートローラ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、円筒状の基材上にいずれも円筒状の断熱層、発熱体、絶縁層、円筒部材をこの順番に積層したヒートローラ(定着ローラ)を開示しており、その製造方法についても言及している。この製造方法によると、円筒状部材以外の構成部材を一体化したローラ体を構成しておき、円筒状部材を熱膨張させた後に円筒状部材の内部にローラ体を挿入し、次いで円筒状部材を冷却して円筒状部材とローラ体を一体化することにより、ヒートローラが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−128109号公報
【特許文献2】特開2001−345169号公報
【特許文献3】特開昭63−45030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
断熱層は発熱体及び絶縁層を円筒状部材の内周に押し付ける役割を担うため、断熱層の無負荷状態の厚みは円筒状部材と基材との環状隙間よりも大きいことが要求されるが、特許文献1の製造方法によれば、熱膨張した円筒状部材内にローラ体を簡単に挿入することができる。けれども、円筒状部材が冷却されて収縮する際に、円筒状部材の外周面に収縮ムラが起こる可能性が皆無ではなく、ヒートローラの外周面の平滑性を保障できる製造方法の確立が望まれている。
【0005】
本発明が解決した課題は、ヒートローラの外周側の円筒状部材への、その他の構成部品を一体化したローラ体の挿入作業を簡便としつつ、円筒状部材の外周面の平滑性を保障したヒートローラの製造方法、及び該製造方法により製造されるヒートローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はヒートローラに関し、その好ましい態様では、円筒体又は円柱体の基材の半径方向外側に、いずれも円筒状の断熱層、非通気層、発熱層、絶縁層及びシームレスの外管がこの順番で積層され、前記断熱層の弾発力により、前記非通気層、発熱層及び絶縁層が前記外管の内周に押し付けられている。
【0007】
この好ましい態様のヒートローラは、以下のようにして製造されることが好ましい。その製造方法は、前記外管の内周に絶縁層及び発熱層を円筒状に配置して第1構成体を準備する工程と、前記基材の外周に前記断熱層を積層した積層体を排気口を除いて非通気層内に封入し、最外周の非通気層の外径が前記第1構成体の発熱層の内径よりも小さくなるまで前記排気口から前記非通気層内部の空気を排気した後に、排気口を密閉して第2構成体を準備する工程と、前記第2構成体を前記第1構成体内に挿入する工程と、前記第2構成体を前記第1構成体内に挿入した状態において前記排気口を開放し、前記断熱層の弾発力により前記非通気層、発熱層及び絶縁層を前記外管の内周に押し付ける工程と、を少なくとも含む。特に、前記基材は、内外を厚み方向に連通する複数の連通孔が形成された円筒体であり、前記第2構成体の準備工程において、前記基材内に複数の吸引孔が形成された吸引管が挿入され、前記非通気層内部の空気が前記複数の連通孔及び前記複数の吸引孔を介して前記排気口から排気されても構わない。
【0008】
上記した本発明の好ましい態様によれば、弾発性を持つ断熱層を非通気層で封入してから排気して、第1構成体の外周直径を第2構成体の内周直径よりも小さくしたので、第1構成体を第2構成体内にスムーズに挿入できる。その後、排気口を開放するだけで、断熱層の弾発性により絶縁層及び発熱層が外管の内周に押し付けられてヒートローラが製造される。したがって、外管の内周に発熱体を配置した構成のヒートローラの製造方法が既存技術に比較して極めて簡単で済む。
【0009】
また、本発明のヒートローラの他の好ましい態様では、円筒体又は円柱体の基材の半径方向外側に、いずれも円筒状の断熱層、発熱層、絶縁層、非通気層及びシームレスの外管がこの順番で積層され、前記断熱層の弾発力により、前記発熱層、絶縁層及び非通気層が前記外管の内面に押し付けられている。
【0010】
この他の好ましい態様のヒートローラは、以下の製造方法によって製造されることが好ましい。その製造方法は、前記外管を準備する工程と、前記基材の外周に前記断熱層を積層し、前記断熱層の外周に前記発熱層を積層した積層体を排気口を除いて非通気層内に封入し、最外周の非通気層の外径が前記外管の内径よりも小さくなるまで前記排気口から前記非通気層内部の空気を排気した後に、排気口を密閉して構成体を準備する工程と、前記構成体を前記外管内に挿入する工程と、前記構成体を前記外管内に挿入した状態において前記排気口を開放し、前記断熱層の弾発力により前記発熱層、絶縁層及び非通気層を前記外管の内周に押し付ける工程とを含む。
【0011】
この好ましい態様に従えば、弾発性を持つ断熱層を非通気層で封入してから排気して構成体の外周直径を外管の内周直径よりも小さくしたので、構成体を外管内にスムーズに挿入できる。その後、排気口を開放するだけで、断熱層の弾発性により絶縁層及び発熱層が外管の内周に押し付けられてヒートローラが製造される。したがって、外管の内周に発熱体を配置した構成のヒートローラの製造方法が既存技術に比較して極めて簡単で済む
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ヒートローラの外周側の円筒状部材への、その他の構成部品を一体化したローラ体の挿入作業を簡便としつつ、円筒状部材の外周面の平滑性を保障した。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の第1実施例のヒートローラの製造方法を説明するための図である。
【図2】図2は、本発明のヒートローラが好適に搭載される画像形成装置の外観斜視図である。
【図3】図3は、本発明のヒートローラが好適に搭載される画像形成装置の正面断面図である。
【図4】図4は、本発明のヒートローラを備えた定着装置の正面断面図である。
【図5】図5は、本発明の第1実施例のヒートローラの正面断面図である。
【図6】図6は、本発明の第2実施例のヒートローラとその製造方法を説明するための図である。
【図7】図7は、本発明の第3実施例のヒートローラの正面断面図である。
【図8】図8は、本発明の第4実施例のヒートローラの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜図8を参照して本発明を好適な実施例として説明するが、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載により定められるべきものであり、これらの実施例の記載により限定的に解釈されるべきでない。
【0015】
図2〜図4を参照して、本発明の各実施例のヒートローラを備えた定着装置を好適に搭載し得る画像形成装置の一例について説明する。図2の外観斜視図に示すように、画像形成装置としてのコピーファクシミリ複合機(以下、複合機)75は、画像読取部76、操作パネル77、本体78及び給紙カセット79を備える。画像読取部76は、フラットベッドスキャナ及びオートドキュメントフィードスキャナとして機能する。操作パネル77は、コピー部数やファクシミリ送信先等を指示するために用いられる。本体78は、記録媒体としての用紙に画像を形成する画像形成部等を内蔵し、通信回線を介して画像データを伝送するための図略の送受信部等を備える。給紙カセット79は、用紙を順次供給する。
【0016】
図3に複合機75の正面断面図を示す。本体78の下部に用紙100を供給する給紙カセット79が備えられ、この給紙カセット79が装置正面側に引出可能である。給紙カセット79の上方に、画像形成部11、後述する本発明の好適な実施形態の定着装置51および排紙トレイ80が備えられる。
【0017】
給紙カセット79から給紙ローラ21により取り出した用紙100を用紙搬送路24に搬送し、画像読取装置76で読み取った画像データに基づいて画像形成部11に配置する感光体ドラム12から用紙Pにトナー画像を転写する。そして、トナー画像を担持する用紙Pを定着装置51に通して用紙100に画像を定着し、その用紙100を用紙搬送路24の端部に設けた排出ローラ25により排出トレイ80に排出させる。
【0018】
図4に示すように、この定着装置51は、ヒートローラ52及びプレスローラ53を収容するハウジング55を備える。このハウジング55には、ベアリング(不図示)を介してヒートローラ52が回転自在に支持されるとともに、プレスローラ53が軸受57を介して回転自在に支持される。
【0019】
図5は、第1実施例のヒートローラ52aの軸断面図である。第1実施例のヒートローラ52aは、直径30mm又は28mmの円筒状の部材であって、円筒体又は円柱体(第1実施例では円筒体を示す)の基材1aの半径方向外側(外周面上)に、いずれも円筒状の断熱層2a、非通気層6a、発熱層3a、電気絶縁層4a及びシームレスの外管7aがこの順番で積層され、断熱層2aの弾発力により、非通気層6aと発熱層3aを電気絶縁層4aに積層したフィルム状ヒータ5aとが外管7aの内周に押し付けられている。
【0020】
基材1aは、アルミニウム(AL)、ステンレス(SUS)又はポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)から成る、厚さ0.8mm〜1.0mmの円筒体又は円柱体であり、高い剛性を有している。
【0021】
この基材1aの外周に、無負荷状態で厚さが約2.0mmで且つ弾発性を持つ円筒状の断熱層2aが、厚さを約1.5mmに縮めて積層される。この断熱層2aとして、アラミドアミド不織布等のフェルト断熱材や耐熱性の発泡ウレタン等を採用し得る。
【0022】
断熱層2aの外周に、円筒状の非通気層6aが積層される。非通気層6aは気液の通過を遮断する薄いフィルムであって、厚みを100μm以下(本実施例では25μm)とする樹脂チューブ(本実施例では、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下、PFAと略記する)のチューブ)が継目段差無しに積層される。
【0023】
この非通気層6aの外周に、フィルム状ヒータ5aが、その電気絶縁層4aを外周側に向けて継目段差無しに両端部を突き合わせて、円筒状に積層される。フィルム状ヒータ5aは、電気絶縁層4aの一方表面に、幅の細い複数の金属線をパターン化した発熱層3aをスパッタリング等の公知の手法により形成したシートであり、電気絶縁層4aとしてポリイミド樹脂フィルムが好適に用いられ、発熱層3aとしてステンレスやニッケル合金が用いられる。
【0024】
電気絶縁層4aの外周に、厚さを0.3mm以下(本実施例では0.1mm)とする外管7aが配置される。この外管7aは、アルミニウムやステンレス等の熱伝導の良好な金属のシームレスチューブである。このような構成のヒートローラ52aによれば、発熱層3aで生じた熱が速やかに外管7aの表面に伝熱され、ヒートローラ52aの外周面温度を急速に上昇させることができる。この外管7aの外周に、離型層8aとしてPFAチューブを被せ、トナーとの離型性を確保している。
【0025】
図1に、第1実施例のヒートローラ52aの製造方法を示す。この製造方法は、第1構成体15aを準備する第1工程(A)と、第2構成体16aを準備する第2工程(B)と、第2構成体16a内に第1構成体15aを挿入して所定位置に位置決めする第3工程(C)と、フィルム状ヒータ5aを外管7aの内周に押し付ける第4工程(D)と、を少なくとも含む。
【0026】
第1工程では、電気絶縁層4aが外管7aの内周面に臨む姿勢に、フィルム状ヒータ5aを丸めてシームレスの外管7aの内部に挿入し、フィルム状ヒータ5aの端部同士が重なることなく突き合せて第1構成体を準備する。フィルム状ヒータ5aは自身の弾発性により、電気絶縁層4aが外管7aの内周に接する。
【0027】
第1工程と平行して又は前後して第2工程を行う。この第2工程では、基材1aの外周に断熱層2aを積層して積層体を形成し、逆止弁を取り付けた排気口9aを除いて、有底チューブ状又は袋状の非通気層6a内に積層体を封入する。そして、排気口9aより図示しない減圧ポンプで、非通気層6a内の空気を非通気層6aの外周径が第1構成体15aのフィルム状ヒータ5aの内周径よりも小さくなるまで排気して、第2構成体16aを準備する。
【0028】
続く第3工程において、第1構成体15a内に第2構成体16aを挿入して、軸方向の所定位置に位置決めする。続く第4工程において、非通気層6aの一部を切除する又は逆止弁を取り外すなどして排気口9aを開放し、縮められた断熱層2aが自然状態に戻ろうとする弾性復元力により断熱層2aを拡径させ、断熱層2aの外周と外管7aの内周との間に配置された非通気層6a、発熱層3a及び絶縁層4aを押し広げて外管7aの内周に押し付ける。その後、外管7aの外周を離型層8aで被覆する。
【0029】
上記した製造方法に従って第1実施例のヒートローラ52aが製造されるが、第2工程において断熱層2aを含む第2構成体16aの外周径が外管7aを含む第1構成体15aの内周径よりも小さくされているので、第3工程において第2構成体16aを第1構成体15a内にスムーズに挿入することができる。また、シームレスの外管7aの膨張・収縮工程を伴わないので外管7aの外周面の平滑性は確保され、この外管7aの外周面にPFA樹脂の離型層8aを介して接する用紙上のトナーの定着性にムラも生じない。
【0030】
図6に第2実施例のヒートローラ52bをその製造方法と共に示す。この第2実施例のヒートローラ52bは、第1実施例のヒートローラ52aと比較して、基材1aの形状が相違し、これに付随してその製造方法も第2工程及び第4工程が相違する。以下、第1実施例との相違点について説明し、共通点については同一の参照符号を付して説明は省略する。
【0031】
基材1bは、アルミニウム(AL)、ステンレス(SUS)又はポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)から成る、厚さ0.8mm〜1.0mmの円筒体である点で第1実施例の基材1aと共通するが、厚さ方向に内外を連通する連通孔19bが軸方向に沿って複数形成している点で相違する。
【0032】
第2工程(B)において、複数の連通孔19bを持つ基材1bの外周に断熱層2aを積層して積層体を形成し、基材1bの内側に、吸引孔20bが軸方向に沿って複数形成された吸引管17bを、その両端が基材1bの両端よりも軸方向外側に飛び出した姿勢に挿入する。吸引管17bが挿入された積層体を両端が開口したチューブ状の非通気層6bで覆い、吸引管17bの端部と非通気層6bの端部とを、例えばCリングや結束紐などのクランプ部材18bによって気密にクランプする。吸引管17bの一端部を図示しない減圧ポンプに接続し、この減圧ポンプで非通気層6b内の空気を、非通気層6bの外周径が第1構成体15aのフィルム状ヒータ5aの内周径よりも小さくなるまで排気して第2構成体16bを準備する。
【0033】
続く第3工程(C)において、第1構成体15a内に第2構成体16bを挿入して、軸方向の所定位置に位置決めする。続く第4工程(D)において、両端のクランプ部材18bを取り外して排気口を開放し、縮められた断熱層2aの弾性復元力により断熱層2aを拡径させ、断熱層2aの外周と外管7aの内周との間に配置された非通気層6b、発熱層3a及び絶縁層4aを押し広げて外管7aの内周に押し付ける。その後、外管7aの外周を離型層8aで被覆する。
【0034】
上記した製造方法に従って第2実施例のヒートローラ52bが製造されるが、第2工程において断熱層2aを含む第2構成体16bの外周径が外管7aを含む第1構成体15aの内周径よりも小さくされているので、第3工程において第2構成体16bを第1構成体15a内にスムーズに挿入することができる。また、シームレスの外管7aの膨張・収縮工程が存在しないので、外管7aの外周面の平滑性は確保され、この外管7aの外周面にPFAの離型層8aを介して接する用紙上のトナーの定着性にムラも生じない。さらに、吸引管17bに形成した複数の吸引孔20b及び基材1bに形成した複数の連通孔19bを介して、非通気層6b内部の空気を排気するので、第1実施例のヒートローラ52aの製造方法に比較して、第2工程に要する時間を短縮することができる。
【0035】
図7に第3実施例のヒートローラ53cの軸断面図を示し、図8にヒートローラ53cの製造方法を示す。この第3実施例のヒートローラ53cは、第1実施例のヒートローラ52aと比較して、非通気層6aの積層位置が相違し、これに付随してその製造方法も第2工程が相違する。以下、第1実施例との相違点について説明し、共通点については同一の参照符号を付して説明は省略する。
【0036】
第3実施例のヒートローラ52cは、基材1aの半径方向外側(外周面上)に、いずれも円筒状の断熱層2a、発熱層3a、電気絶縁層4a、非通気層6a及びシームレスの外管7aがこの順番で積層され、断熱層2aの弾発力により、非通気層6aと発熱層3a及び電気絶縁層4aからなるフィルム状ヒータ5aとが外管7aの内周に押し付けられている。つまり、第1実施例のヒートローラ52aでは非通気層6aが断熱層2aと発熱層3aとの間に存在するのに対して、第3実施例のヒートローラ52cでは非通気層6aが電気絶縁層4aと外管7aとの間に存在する点で相違する。
【0037】
図8を参照して、第1工程(A)でシームレスの外管7aを準備する。第1工程と平行して又は前後して第2工程を行う。この第2工程(B)では、基材1aの外周に断熱層2を積層し、さらにその外周にフィルム状ヒータ5aを電気絶縁層4aを外周側にして積層して積層体を形成し、逆止弁を取り付けた排気口9aを除いて、有底チューブ状又は袋状の非通気層6a内に積層体を封入する。そして、排気口9aより図示しない減圧ポンプで、非通気層6a内の空気を非通気層6aの外周径が基材1aの内周径よりも小さくなるまで排気して、構成体16cを準備する。
【0038】
続く第3工程(C)において、基材7a内に構成体16cを挿入して、軸方向の所定位置に位置決めする。続く第4工程(D)において、非通気層6aの一部を切除するか又は逆止弁を取り外すなどして排気口9aを開放して、縮められた断熱層2aの弾性復元力により断熱層2aを拡径させ、断熱層2aの外周と外管7aの内周との間に配置された発熱層3a、絶縁層4a及び非通気層4aを押し広げ外管7aの内周に押し付ける。その後、外管7aの外周を離型層8aで被覆する。
【0039】
上記した製造方法に従って第3実施例のヒートローラ52cが製造されるが、第2工程において断熱層2aを含む構成体16cの外周径が外管7aの内周径よりも小さくされているので、第3工程において構成体16cを外管1a内にスムーズに挿入することができる。また、シームレスの外管7aの膨張・収縮工程が存在しないので、外管7aの外周面の平滑性は確保され、この外管7aの外周面にPFAの離型層8aを介して接する用紙上のトナーの定着性にムラも生じない。また、第1実施例のヒートローラ52aと異なり、第3実施例のヒートローラ52cでは、非通気層4aがフィルム状ヒータ5aと外管7aとの間に存在するが、先に説明した通り、非通気層4aとして耐熱性に優れたPFAチューブを採用することにより非通気層4aの熱溶解は起こらず、さらに非通気層4aが100μm以下と極めて薄いので、外管7aへの伝熱も殆ど阻害されない。
【符号の説明】
【0040】
1a,1b 基材
2a 断熱層
3a 発熱層
4a 絶縁層
5a フィルム状ヒータ
6a,6b 非通気層
7a 外管
9a 排気口
15a 第1構成体
16a,16c 第2構成体
16b 構成体
17b 吸引管
19b 吸引孔
52a,52b,52c ヒートローラ
51 定着装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒体又は円柱体の基材の半径方向外側に、いずれも円筒状の断熱層、非通気層、発熱層、絶縁層及びシームレスの外管がこの順番で積層され、前記断熱層の弾発力により、前記非通気層、発熱層及び絶縁層が前記外管の内周に押し付けられていることを特徴とするヒートローラ。
【請求項2】
円筒体又は円柱体の基材の半径方向外側に、いずれも円筒状の断熱層、非通気層、発熱層、絶縁層及び外管がこの順番で積層され、前記断熱層の弾発力により、前記非通気層、発熱層及び絶縁層が前記外管の内周に押し付けられたヒートローラの製造方法であって、
前記外管の内周に絶縁層及び発熱層を円筒状に配置して第1構成体を準備する工程と、
前記基材の外周に前記断熱層を積層した積層体を排気口を除いて非通気層内に封入し、最外周の非通気層の外径が前記第1構成体の発熱層の内径よりも小さくなるまで前記排気口から前記非通気層内部の空気を排気した後に、排気口を密閉して第2構成体を準備する工程と、
前記第2構成体を前記第1構成体内に挿入する工程と、
前記第2構成体を前記第1構成体内に挿入した状態において前記排気口を開放し、前記断熱層の弾発力により前記非通気層、発熱層及び絶縁層を前記外管の内周に押し付ける工程と、を少なくとも含むヒートローラの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のヒートローラの製造方法において、
前記基材は、内外を厚み方向に連通する複数の連通孔が形成された円筒体であり、
前記第2構成体の準備工程において、前記基材内に複数の吸引孔が形成された吸引管が挿入され、前記非通気層内部の空気が前記複数の連通孔及び前記複数の吸引孔を介して前記排気口から排気される、ことを特徴とするヒートローラの製造方法。
【請求項4】
円筒体又は円柱体の基材の半径方向外側に、いずれも円筒状の断熱層、発熱層、絶縁層、非通気層及びシームレスの外管がこの順番で積層され、前記断熱層の弾発力により、前記発熱層、絶縁層及び非通気層が前記外管の内面に押し付けられていることを特徴とするヒートローラ。
【請求項5】
円筒体又は円柱体の基材の半径方向外側に、いずれも円筒状の断熱層、発熱層、絶縁層、非通気層及び外管がこの順番で積層され、前記断熱層の弾発力により、前記発熱層、絶縁層及び非通気層が前記外管の内面に押し付けられたヒートローラの製造方法であって、
前記外管を準備する工程と、
前記基材の外周に前記断熱層を積層し、前記断熱層の外周に前記発熱層を積層した積層体を排気口を除いて非通気層内に封入し、最外周の非通気層の外径が前記外管の内径よりも小さくなるまで前記排気口から前記非通気層内部の空気を排気した後に、排気口を密閉して構成体を準備する工程と、
前記構成体を前記外管内に挿入する工程と、
前記構成体を前記外管内に挿入した状態において前記排気口を開放し、前記断熱層の弾発力により前記発熱層、絶縁層及び非通気層を前記外管の内周に押し付ける工程と、を含むことを特徴とするヒートローラの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−3028(P2012−3028A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137787(P2010−137787)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】