説明

ヒールを有する靴の中底とこれを用いた靴

【課題】 ヒールを有する靴において、細いヒールで地面から衝撃を受けても衝撃を吸収するヒールを有する靴の中底を提供する。
【解決手段】 靴1の爪先部7からかかと部4の後端4bまでの大きさの中底3の、かかと部4の後端4bから土踏まず部5の前端5aまでの後部表面層6を硬質ボード8から形成し、該硬質ボード8の裏面の縦方向中央部6aにシャンク9を設けて固着し、シャンク9の後部9bの上の該硬質ボード8にヒールネイル11の頭部11aを自由に通す頭部貫通孔12を設けて、中底後部上面材14と弾性のプラスチックフォーム中間層15を貼り、プラスチックフォーム中間層15の裏面に中底3の大きさのボール紙芯材16を貼り、さらに土踏まず部5の前端5aより後方のボール紙芯材16の裏面に、かかと部4の後部表面層6の上部硬質ボード8aと同材質の下部硬質ボード8bを貼って一体化してなる、ヒール2を有する靴1の中底3。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、靴のかかとの靴底の表底にヒールを有する女性用の靴の中底、とりわけパンプスやスリングバック、ブーツなどにおいてヒールを有する女性用の靴の中底に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、かかとの高い靴すなわちヒールを有する靴では、表底と中底の間でかつ土踏まず部に相当する箇所に補強として鋼製の踏まず芯であるシャンク・ピース(以下、シャンク・ピースを「シャンク」という。)が入れられている。直立した人間の歩行を支える靴には、大変に大きな荷重がかかる。そこで、地面に接する爪先側の表底と、設置面の小さなヒールとに分かれて荷重がかかったときにヒールがぐらつかないように、一般的な靴では、土踏まず部の位置の表底と中底の間にシャンクとして弾性の高い鋼やプラスチック樹脂素材等を入れ込むことで補強した構造としている。とりわけ、女性用のヒールの高い靴では、荷重に鑑みて、シャンクは鋼材が一般的である。
【0003】
たしかに、こうしたシャンクの踏まず芯が入ることで、ヒールの手前の土踏まず部の部分の靴底が曲がることがなく、また足のあおりがよくできることとなる。もっとも、ヒールの高さが3cm以上の中ヒールあるいはハイヒールになると、歩行時に十分に足のあおりができなくなるので、歩行には大腿部の筋肉、臀部の筋肉を余分に使うこととなり、長途の歩行には向かない靴形状であることが指摘されている(非特許文献1参照。)。
【0004】
ところで、一般的な婦人靴は、例えば、日本工業規格JIS S5050に例示されているように、アッパー(甲革)と表底を接着するセメント式製法(C式製法。甲部周辺を中底に釣り込んだ後、甲部周辺と表底周辺に接着剤を塗布し、圧着機で底付けをする製法)等によって製造されている(非特許文献2、付図5参照。)。
【0005】
この場合、ヒールネックは、ハイヒールの細いネックに集中する荷重おいても耐え得るだけの強度が求められるので、必然的に硬質プラスチック樹脂などの硬く頑強な素材となる。そこで、ヒールネック自体は、衝撃や振動に応じての伸縮性や緩衝性には乏しい素材であった。また、さらに、ヒールネックは、ヒール止め用ねじ釘やヒール止め用らせん釘といったヒールネイルでもって、中底の上からヒールに釘打ちするようにして、強固にがっちりと固定されている。そこで、ヒールネック自体が弾力をもって伸縮するといったことは想定も期待もされていなかった。
【0006】
また、ヒールを保護するため、ヒールの接地面には、磨耗やスリップの対策に、トップリフト(化粧)として、革、ゴム、合成樹脂製の部材が取り付けられているのが一般的である。このトップリフトも大きな荷重がかかるので、ヒールネックにしっかり固定しておくことが必要である。このために、例えば、トップリフトの裏面には、ヒールネックに向かって金属製のピンが突き込むように設けられていて、このピンがヒールネック側に穿たれた下穴に差し込まれるように係止されて、いわば軸芯として強固に固着させるといった方法がとられている。
【0007】
このように、ヒールは、非常に頑強な素材であり、接地面のトップリフト側(下面側)からも、中底側(上面側)からも、釘やピンで強固に固定されているのが一般的である。したがって、ヒールネック自体は、その素材の硬さと内部の釘やピンとが相俟って、非常に硬く弾性の低いものとなっており、このために快適なクッション性を持たせることは困難となっていた。
【0008】
このように快適なクッション性を持っていないので、歩行時に、ハイヒールのヒールの先端が接地した際に受ける衝撃や振動が中底から、歩行者のかかとの裏へとダイレクトに伝わることとなる。人間の足はアーチ状の土踏まず部で振動を吸収するなどしているが、かかとにダイレクトに伝わる衝撃が、そのまま脳天まで伝播されるように伝わるような感じになるので、非常に不愉快な履き心地となってしまい、長時間の歩行には好適とはいい難かった。また、クッション性の乏しい硬いヒールであることから、先細のピンヒールの女性用の靴を履いて石畳や砂利などの足場の悪い凹凸のあるところを歩行すると、靴底の接地時にヒールの先端部であるトップリフトが凹凸に載ってずれて姿勢を保持しにくく、足元がふらついたり、かかとをこねってしまいやすかった。また、径が1.5cm前後の小石の上を前ストームを有する部分である土踏まず部の前側の部分の表底で踏み付けたとき、この小石に載った表底が平衡を欠いて足裏がぐらつき危険である。
【0009】
そこで、こうした足から伝わる振動や衝撃を減らし、より快適な歩行環境を提供するために、本発明者は、ウエッジソールの靴において、靴底にエアクッション入りの靴を発明している。これは、ポリウレタンゴムからなるウエッジソールの靴底のかかとの内部に、軟質プラスチック製の中空パイプを格子状に組み合わせて一体にした一般にエアソールといわれるエアクッションパーツを、複数段として配設した工夫に関する発明を提案している。このエアクッションパーツは、各段とも、前側が低く、かかと側を高くなるように傾けて配設しており、各段の前後方向の長さを上段から下段になるに連れてその長さを短くし、しかも各かかとのエアクッションをかかと部の傾斜した表底と平行になるように傾斜し、かつそれらの後端を揃えて配設するといったことを特徴としている。(特許文献1参照。)。
【0010】
これらの工夫により、エアクッションパーツのかかとの上部側が前後に長く、下部側が前後に短いという形状に合致した状態で履いた足の足裏のかかとに掛かる負荷を受けることが可能となるので、かかと全体に掛かる負荷を足裏全体に均等に配分でき、長時間履くことに好適なウエッジソールの靴を提供している。
【0011】
たしかに、ウエッジソールのような船底型の靴底であれば、こうした工夫によって靴底にクッション性を好適に持たせることができて有用といえる。もっとも、こうした工夫は、ウエッジソールの船底型の靴底形状自体がそもそもシャンクを不要とするべく工夫であったという開発経緯からも明らかなとおりで、船底型のウエッジソールであるから、十分にエアクッションパーツの効果が発揮されるものといえる。これは、ウエッジソールであれば、土踏まず部分が爪先側と一体に保持されているので、かかと部を特段に硬い素材で固めて保持する必然性がないことから、衝撃吸収のためにかかと部の内部にエアを配置するといった工夫の余地が大きいといえる工夫だからである。
【0012】
しかしながら、中ヒールやハイヒールなどのヒールを有する靴では、ヒール部分の強度のためにヒールネックの素材に制約が多く、これらの素材は伸縮性、緩衝性、衝撃吸収性や弾性力に乏しい。そこで、ウエッジソールよりも衝撃吸収性のよい、クッション性に優れたかかと部を提供することがより望まれているにもかかわらず、逆にヒールの細い断面で荷重を支える必要性から、非常に強い衝撃をヒールがダイレクトに足裏に伝えてしまう構造となってしまっている。例えば、ハイヒールのような細いヒールネックの内部に、エアを差し入れる工夫を配するとなれば、安全強度を確保するうえでヒールネックの太さが十分とはいえず、事実上、安全強度の確保は困難なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2010−148790号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】「世界百科大辞典第2版」平凡社(「靴」)
【非特許文献2】日本工業規格 JIS S5050「革靴」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、女性用の中ヒールあるいはハイヒールなどヒールを有する靴でありながら、上記したように伸縮性、緩衝性、衝撃吸収性や弾性力に乏しいという制約の多いヒールネックのかかとの部分について、その表底とその上の中底の部分の構造を改良することにより、細いヒールネックでありながら、細いヒールネックのトップリフトから伝わる地面からの衝撃を、中底の部分で吸収して、かかとの部分から身体の脳天にまで達するような強い衝撃が伝わり難いものとした構造からなる中底およびこの中底を有する中ヒールもしくはハイヒールなどのヒールを有する靴を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の手段では、ヒール2を有する靴1の爪先部7からかかと部4の後端4bまでの大きさからなる中底3における手段である。この中底3のかかと部4の後端4bから土踏まず部5の前端5aまでの後部表面層6をパルプボードあるいはレザーボードからなる硬質ボード8から形成し、この後部表面層6のかかと部4の中央4aから土踏まず部5の中央5bまでの後部表面層6の部分である上部硬質ボード8aの裏面の縦方向中央部6aに鋼製のシャンク9を配設してシャンク9の前部9aおよび後部9bをリベットもしくはハトメ10で上部硬質ボード8aの裏面に固着する。さらに、このシャンク9の後部9bの上に位置する後部表面層6である上部硬質ボード8aにヒールネイル11の頭部11aを自由に通しうる頭部貫通孔12を開口し、さらにこの上部硬質ボード8aのヒールネイル11の頭部貫通孔12の下面のシャンクにヒールネイル11の軸部11bのみを自由に挿通し得る軸部挿通孔13を頭部貫通孔12と同芯状に開口し、これらのシャンク9を裏面に有する後部表面層6の硬質ボード8から中底後部上面材14を形成し、この中底後部上面材14に有する前部のリベットもしくはハトメ10の後部からかかと部4の後端4bに弾性のあるプラスチックフォーム中間層15を貼付し、さらにプラスチックフォーム中間層15の裏面に、中底3の大きさのボール紙芯材16を土踏まず部5の前端5aからかかと部4の後端4bまでの部分に貼付して残りのボール紙芯材16を中底3の土踏まず部3の前部から爪先部7までの部分とし、さらに土踏まず部5の前端5aより後方のボール紙芯材16の裏面に、かかと部4の後部表面層6の上部硬質ボード8aと同材質の下部硬質ボード8bを貼付して一体的に積層したことを特徴とするヒール2を有する靴1の中底3である。
【0017】
請求項2の手段では、請求項1の手段と同様にヒール2を有する靴1の爪先部7からかかと部4の後端4bまでの大きさからなる中底3における手段である。この中底3のかかと部4の後端4bから土踏まず部5の前端5aまでの後部表面層6をパルプボードあるいはレザーボードからなる硬質ボード8から形成し、この後部表面層6のかかと部4の中央4aから土踏まず部5の中央5bまでの上部硬質ボード8aの裏面の縦方向中央部6aに鋼製のシャンク9を配設してシャンク9の前部9aおよび後部9bをリベットもしくはハトメ10で硬質ボード8の裏面に固着する。さらに、このシャンク9の後部9bの上に位置する後部表面層6である上部硬質ボード8aにヒールネイル11の頭部11aを自由に通しうる頭部貫通孔12を開口し、さらにこの硬質ボード8のヒールネイル11の頭部貫通孔12の下面のシャンク9にヒールネイル11の軸部11bのみを自由に挿通し得る軸部挿通孔13を頭部貫通孔12と同芯状に開口し、これらのシャンク9を裏面に有する後部表面層6の硬質ボード8から中底後部上面材14を形成し、この中底後部上面材14の前部に、中底3の大きさのボール紙芯材16を土踏まず部5の前端5aからかかと部4の後端4bまでの部分に貼付して残りのボール紙芯材16を中底3の土踏まず部3の前部から爪先部7までの部分とし、さらに土踏まず部5の前端5aより後方のボール紙芯材16の裏面に、弾性のあるプラスチックフォーム中間層15を貼付し、さらに土踏まず部5の前端5aより後方のボール紙芯材16および弾性のあるプラスチックフォーム中間層15の裏面に、かかと部4の後部表面層6の上部硬質ボード8aと同材質の下部硬質ボード8bを貼付して一体的に積層したことを特徴とするヒール2を有する靴1の中底3である。
【0018】
請求項3の手段では、中底3の大きさのボール紙芯材16は、土踏まず部5から爪先部7までの部分の上部に柔軟なプラスチックフォーム前部表面層17を形成して有し、この柔軟なプラスチックフォーム前部表面層17の後端を後部表面層6の上部硬質ボード8aの土踏まず部5の前端5aに接続していることを特徴とする請求項1または2の手段のヒール2を有する靴1の中底3である。
【0019】
請求項4の手段では、ボール紙芯材16の上の土踏まず部5から爪先部7までの部分の上部に柔軟なプラスチックフォーム前部表面層17は、その前端部17aの爪先部7の上に、後部表面層6の上部硬質ボード8aと同材料である前端部硬質ボード8cを形成して有することを特徴とする請求項3の手段のヒール2を有する靴1の中底3である。
【0020】
上記の請求項1の手段と請求項2の手段の相違点は、請求項1の手段が中底3の大きさからなるボール紙芯材16の下に土踏まず部5の前部から後方のかかと部4に設けたプラスチックフォーム中間層15を貼付して有するのに対し、請求項2の手段が土踏まず部5の前部から後方のかかと部4に設けたプラスチックスフォーム中間層15の下に中底3の大きさからなるボール紙芯材16を貼付して有する点である。
【0021】
請求項5の手段では、請求項1または請求項2の手段のヒール2を有する靴1の中底3を、表底19の上に形成して有し、中底3の後部表面層6を形成する上部硬質ボード8aに開口するヒールネイル11の頭部貫通孔12およびこの上部硬質ボード8aの下部のシャンク9に開口するヒールネイル11の軸部11bのみを挿通し得る軸部挿通孔13にヒールネイル11の軸部11bを挿通し、このヒールネイル11の頭部11aの下面を軸部挿通孔13の周囲のシャンク9の上面に当接してこのヒールネイル11をかかと部4の下部のヒール2に係止し、かつ中底3の周囲上部に甲革からなるアッパー18を形成して有することを特徴とするヒール2を有する靴1である。
【0022】
請求項6の手段では、請求項1または請求項2の手段のヒール2を有する靴1の中底3に変えて、請求項3の手段のヒール2を有する靴1の中底3を表底19の上に形成して有し、中底3の後部表面層6を形成する上部硬質ボード8aに開口するヒールネイル11の頭部貫通孔12およびこの上部硬質ボード8aの下部のシャンク9に開口するヒールネイル11の軸部挿通孔13にヒールネイル11の軸部11bを挿通し、このヒールネイル11の頭部11aの下面をヒールネイル11の軸部挿通孔13の周囲のシャンク9の上面に当接し、ヒールネイル11を表底19の下部に配設のヒール2に係止し、かつ中底3の周囲上部に甲革からなるアッパー18を形成して有することを特徴とするヒール2を有する靴1である。
【0023】
請求項7の手段では、請求項1〜3項の手段のヒール2を有する靴1の中底3に変えて、請求項4の手段のヒール2を有する靴1の中底2を表底19の上に形成して有し、中底3の後部表面層6を形成する上部硬質ボード8aに開口するヒールネイル11の頭部貫通孔12およびこの上部硬質ボード8aの下部のシャンク9に開口するヒールネイル11の軸部挿通孔13にヒールネイル11に軸部11bを挿通し、このヒールネイル11の頭部11aの下面をヒールネイル11の軸部挿通孔13の周囲のシャンク9の上面に当接し、このヒールネイル11を表底19の下部に配設のヒール2に係止し、かつ中底3の周囲上部に甲革からなるアッパー18を形成して有することを特徴とするヒール2を有する靴1である。
【0024】
請求項8の手段では、ヒール2を有する靴1は、その表底19の土踏まず部5よりも前部の表底19の素材中に空気を封入し弾性ゴムカプセルであるエアソール21を配設して有することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項の手段のヒール2を有する靴1である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の手段の中底の後部表面層の上部硬質ボードに形成のヒールネイルの頭部を自由に挿通する貫通孔を開口し、この表面層の上部硬質ボードの裏側に配設のシャンクにヒールネイルの軸部のみを自由に挿通し得る軸部挿通孔を設けているので、この中底をヒールネイルでヒールに係止して形成したヒールを有する靴は、ヒールの上部に履いた人の体重が掛かって中底を下方に押圧したとき、ヒール部の中底の中間に装入しているプラスチックフォーム中間層が体重の重みで圧縮されて薄くなっても、中底の上部硬質ボードに開口の頭部貫通孔の部分にヒールネイルの頭部の厚さよりも厚い空間でかつ頭部が上部硬質ボードより上に飛び出さない余裕のある厚さを設けているので、この空間の部分がヒールネイルの頭部が上下し得る遊びの部分となってヒールネイルの頭部が上部硬質ボードから上に飛び出すことがない。したがって、この靴を履いた人のかかとがヒールネイルで傷つけられることが無く、履き心地に優れている。また、細いヒールであっても、小石などをヒールで踏みつけた際に、異物の衝撃を中底の上部表面層である上部硬質ボード内で吸収されるので、バランスを崩すことが無く、したがって疲労することないので、従来のヒールを有する靴よりも長時間にわたって履くことができる。さらに、これらに加えて、靴底の土踏まず部の前部の表底に一体で形成した空気を封入した弾性ゴムカプセルからなるエアソールを配設することで、土踏まず部の前部の足裏に掛かる衝撃も緩和されるので、さらに疲労感を伴うことなく、長時間にわたって履くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の典型的な中底の素材の組み合わせ方を示す斜視図。
【図2】本発明の他の典型的な中底の素材の組み合わせ方を示す斜視図。
【図3】本発明の基本的な素材の組合せからなる中底の斜視図。
【図4】本発明の他の基本的な素材の組合せからなる中底の斜視図。
【図5】図1の組み合わせからなる中底の斜視図。
【図6】図2の組み合わせからなる中底の斜視図。
【図7】中底後部上面材へのシャンクの取り付け方を示す図。
【図8】表底へ中底の取り付け方を示す斜視図。
【図9】中底とヒールを有するかかと部の表底とのヒールネイルによる取り付け状態の効果を示し、体重を受けていないときのヒールネイルの頭部の位置を示す斜視図。
【図10】中底とヒールを有するかかと部の表底とのヒールネイルによる取り付け状態の効果を示し、体重を受けているときのヒールネイルの頭部の位置を示す斜視図。
【図11】土踏まず部の前部の表底の素材中にエアソールを配設して有するヒールを有する靴の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して以下に説明する。本発明の中底3は、ヒール2を有する靴1であれば、種々の靴1に適用することができる。特段に靴1の靴底20の上に設ける足の後部を覆う甲革であるアッパー18のタイプを選ぶものではない。しかし、本発明の中底3を用いた場合と、用いなかった場合とで顕著な違いが出るのは、かかと部4の高いハイヒールである。
【0028】
このように、かかと部4にヒール2のあるハイヒール・パンプスに好適なのはもちろんのこと、さらにハイヒールに限らず、かつ、本発明の中底3が適用できる靴1には、これと組合わせて使用するアッパー18の形状や構造を選ぶことはなく、したがって、多くのヒール2を有する靴1、例えば、ミッドヒール・パンプス、ローヒール・パンプス、スリング・バック、サイド・オープン、サンダル、アンクル・ストラップ、インステップ・ストラップ、T−ストラップ、オープン・トウ、ギリー、アンクル・ブーツ、ショート・ブーツ、ハーフ・ブーツ、ロング・ブーツなどの、ヒール2を有する靴1であれば、本発明の中底3を適用することができる。
【0029】
本発明の中底3の最も典型的な構造は、図1に示すように、土踏まず部5の前端5aから後方のかかと部4にかけての部分において、上側から下側に矢印で示すように、(a)の後部表面層6であるパルプボードあるいはレザーボードからなる上部硬質ボード8a、(b)の踏まず芯である鋼製や硬質プラスチックなどのシャンク9、(c)のクッション材であるプラスチックフォーム中間層15、(d)のかかと部から爪先部までの大きさのボール紙芯材16、(e)の下部硬質ボード8bを積層した構成と、(f)の柔軟なプラスチックフォーム前部表面層17の前端部17a上に載置した(g)の半月状の前端部硬質ボード8cからなり、これらを一体に貼り合わして形成されている。
【0030】
これらにおいて、(b)のシャンク9と(d)のボール紙芯材16の間に、図1に示すように、(c)のクッション材であるプラスチックフォーム中間層15を介在させて有するか、もしくは、(b)のシャンク9と(c)のクッション材であるプラスチックフォーム中間層15の間に、図2に示すように、(d)のボール紙芯材16を介在させて有するものとする。この構造において、さらに(d)のボール紙芯材16に代えて不織布を用いるかあるいはボール紙芯材16の上に不織布を合わせて用いてもよく、特にこれらの部材もボール紙芯材16と同様に土踏まず部5の前部の爪先部7まで延ばして踏まず前部の中底3とするのもよい。
【0031】
そして、爪先部7には、下部硬質ボード8bの上部の先端側であるボール紙芯材16もしくはその上に有する不織布の上に、薄いクッション材である柔軟なプラスチックフォーム前部表面層17を接着剤で貼付し、爪先側の足裏面にソフトな感触をもたらすようにしてもよい。さらに柔軟なプラスチックフォーム前部表面層17の先端部の上に半月状の前端部硬質ボードを貼付することもできる。ところで、爪先側の先端部の靴1の表底19の上部の表面部を形成する部材をヒール2に至る表底19と一体に靴型に沿うように積層して準備したうえで、これらの準備した部材上と中底3の裏面との間に接着剤を塗布して両者を貼り合わせた状態とし、中底3の上部からプレスすることで、中底3を表底19と立体的かつ一体的な形状の靴底20とする。この靴底20である表底19やヒール2と中底3からなる一体物を甲革であるアッパー18を組み合せることで、ヒール2を有する靴1の婦人靴を得ることができる。
【0032】
さて、上部硬質ボード8aはパルプボードもしくは屑革を固めたレザーボードあるいは圧縮ボール紙あるいは厚板紙からなるもので、硬度を必要とする場合は合成樹脂を含浸させて固めルこともできる。この上部硬質ボード8aの土踏まず部5の前端5aからかかと部4の後端4bの部分のうちの、土踏まず部5の中央5bからかかと部4の後端4bの部分の裏面の後部表面層6の縦方向中央部6aに、図7に示すように、鋼製のシャンク9を配し、この鋼製のシャンク9の前部9aと後部9bにリベットもしくはハトメ10で上部硬質ボード8aと一体的に固定して、中底3を補強する部材としている。
【0033】
この踏まず芯であるシャンク9は、鋼製の板バネ状からなる部材で、上方から荷重がかかっても中底3が撓まないようにして支えるものであるから、靴型であるラストの底の形状に沿うように、ゆるやかに湾曲してアーチ状に形成されている。また、シャンク9の中央長手方向である左右の中心部に、曲状に突出したリブを設けることで、土踏まず部5からかかと部4の部分が折損し難くしている。この場合、シャンク9の鋼全体を焼き入れするなどしてより強度を高めることで、より薄くて軽いシャンク9とすることができる。
【0034】
ヒール止めねじ釘またはヒール止めらせん釘といったヒールネイル11の軸部11bをシャンク9に容易に挿通できるように、シャンク9にヒールネイル11の軸部11bの軸径より少し太くした軸部挿通孔13を形成する。この場合、1個ないし複数個、例えば図7では3個の軸部挿通孔13をシャンク9の後部9bに開口して形成している。この上部硬質ボード8aの裏面に固定されているシャンク9は、上部硬質ボード8aの裏面と共に他の中底部材、例えば図1のプラスチックフォーム中間層15あるいは図2のボール紙芯材16と、これらの下部を構成する他の中底3の後部部材と貼り合わされて立体的に一体化して中底3とした後、シャンク9の上から、最下部に配設のヒール2のヒールネック2aの内部へとヒールネイル11のねじを締め込んで一体化する。図9あるいは図10に示すように、ヒール2の下端には弾性ゴムなどからなるトップリフト2bがネジ釘で係止されて地面からの衝撃を緩和している。
【0035】
なお、シャンク9に開口の軸部挿通孔13を形成する軸部ねじ孔13aの径の大きさはヒールネイル11の軸部11bの周囲と干渉しないように、軸部11bよりも少し大きな径の孔としている。しかし、他方、軸部挿通孔13はヒールネイル9の頭部11aの径より小さな径の孔であり、ヒールネイル11の頭部11aは通り抜けできなくなっている。したがって、板バネ機能の弾性を有するシャンク9が表底20やヒールネック2aから上方へ浮いてしまわないように、ヒールネイル11はその頭部11aで上方からシャンク9に当接してシャンク9を押さえる役割を果している。
【0036】
上部硬質ボード8aには、シャンク9の軸部ねじ孔13aの位置の上部に、この軸部ねじ孔13aよりも大きな頭部貫通孔12を開口して設けている。この上部硬質ボード8aに開口した頭部貫通孔12の径の大きさは、ヒールネイルのヒール止めらせん釘またはヒール止めねじ釘であるヒールネイル11の頭部11aの径より大きいものとし、ヒールネイル11の頭部11aの周囲と干渉しない大きさに形成されている。上部から靴を履いている人の荷重が掛かると、シャンク9を押さえていたヒールネイル11の頭部11aはシャンク9から上方に浮き上がるが、部硬質ボード8aの厚みはその浮き上がり分以上に十分に厚く形成されているので、ヒールネイル11の頭部11aは上部硬質ボード8aの頭部貫通孔12の厚みのなかで上下し得るようになっている。したがって、中底3に足裏からの荷重が掛かっても、その足裏にヒールネイル11の頭部11aが直接に当接して足裏を傷つけることはない。
【0037】
クッション材であるプラスチックフォーム中間層15には、エチレン酢酸ビニル樹脂製のEVAゴムや、その他のプラスチックスフォーム、例えば緻密な気泡を有するウレタン発泡体であるウレタンゴムなどが好適である。上記したように、かかと部4にかかる急な下向きの荷重移動によって、上部硬質ボード8aとシャンク9が下方に押されたときには、クッション材であるプラスチックフォーム中間層15がそれに追従して収縮する。また、靴底20のヒール2の側からの不意な突き上げによる振動を受けると、クッション材であるプラスチックフォーム中間層15がこの振動を受けて収縮することで、こうした衝撃を吸収して緩衝できる。その際、クッション材であるプラスチックフォーム中間層15が上下からの圧力に応じて収縮する一方で、他方、ヒール止めらせん釘やヒール止めねじ釘などのヒールネイル11は金属であるので収縮しないままである。クッション材であるプラスチックフォーム中間層15の収縮時には、シャンク9と当接するようにして押さえとなっていたねじであるヒールネイル11の頭部11aの部分が、上記したように、シャンク9から上方に離れて浮き上がり、上部硬質ボード8aに開口の頭部貫通孔12の上方の空間の厚み部分に逃げることとなる。したがって、クッション材であるプラスチックフォーム中間層15の収縮の度合いを上部硬質ボード8aに開口の頭部貫通孔12の上方の空間の厚み以内になるようにプラスチックフォーム中間層15の厚みを事前に設計して調節しておくものとする。
【0038】
中底3を構成する素材を積層して一体に貼り合わせるための接着剤は、例えばポリエステル系の接着剤とし、これは溶剤可溶タイプ、ホットメルトタイプ、水分散タイプの何れでもよいが、素材との接着強度に応じて、接着剤の材質等は適宜選択するものとする。
【0039】
靴1の土踏まず部5より爪先側の中底3の上面を形成する素材は、ボール紙芯材16のままとするか、あるいはボール紙芯材16の上に薄いクッション材としてEVAゴム層もしくは柔軟なプラスチックフォーム前部表面層17を形成したものとしている。爪先側の中底3の上面を形成するこれらのEVAゴム層もしくは柔軟なプラスチックフォーム前部表面層17からなる素材の上には、中敷きを敷かない場合に足裏と直接に当接することを考慮して、メリヤス生地を全面に貼り付けて、足裏と直接に接触した場合の感触を良好なものとしている。
【0040】
一方、中底3の下面を形成するボール紙芯材16は、ボール紙以外の素材としてコットン繊維もしくは不織布に合成樹脂を含浸させて芯材としての強直な硬さを付与して形成する。これら素材からなる中底3の土踏まず部5より前側の素材の裏面および土踏まず部5の前端5aより後側の下部硬質ボード8bの裏面には、細糸からなる格子状のネットを貼付して形成している。このように中底3の裏面には細糸からなる格子状のネットを貼付して有するので、靴底20を形成する表底19の表面部に中底3の裏面を疎面化して接着剤の載りを良好なものとして接着性を高めている。
【0041】
さらに、表底19の爪先側には、表底19の内部に、中空パイプからなるやや偏平な軟質プラスチックの弾性ゴムカプセルのエアクッション材であるエアソール21を配することで、衝撃吸収力を持たせるようにしてもよく、図11のパンプスハイヒールでは踏まず前の表底19の内部にこのエアソール21を配設している。このように表底19の踏まず前の部分の内部にエアソール21を配設すると、爪先側のエアクッション材であるエアソール21と、かかと側の中底4の構造からなる衝撃吸収性とが相俟って、歩行時の靴底20に掛かる荷重移動に伴って、前側すなわち爪先側の部位および後側すなわちかかと側の部位の靴1の全体で、衝撃が吸収されることとなる。したがって、このエアソール21を踏まず前の部分の表底19に有する靴1は、踏まず前の部分の表底19にエアソール21を有しない靴底20の靴1よりも適切にバランスよく荷重を受け止めることができるので、この靴1を履いた者の歩行がより安定し、快適なものとなり、疲れにくいので長時間の使用により好適なものとなる。
【0042】
本発明の中底3の素材が、上記した様に衝撃吸収性や緩衝性に優れる特性を備える点について、その素材の反発弾性を試験した。試験方法は、JIS K6400に準拠して、試験片の上面より500mmの高さから直径16mm、質量16gの鋼球を落下させ、跳ね返った最高の高さを落下高さの百分率として反発弾性率を求めたものである。具体的には、硬質ボードとして圧縮されたパルプボードの9枚とEVAゴム8枚を交互に積層したものを試料とし、この試料から試験片を100mm×120mm×50mmの寸法で切り出し、その反発弾性率を確認したところ反発弾性率は3%であった。このように、荷重を支えるため、硬質ボードとEVAゴムを主とすることで強度を持たせることができ、さらにクッション性のあるEVAゴムを組みあわせたことで、衝撃吸収性や緩衝性を両立して得られることが確認できた。したがって、本発明の中底3に、このようなクッション性による衝撃吸収性や緩衝性を発揮させることで、靴1を着用した際にかかと部4で振動が吸収され、その結果、安定感が得られて履き心地が向上することとなる。
【0043】
本発明の中底3を用いたヒール高さ8.5cmのピンヒールタイプのヒール2を有する婦人用の靴1を履いて一定時間の歩行を行ない、その結果を、従来の中底でかつヒール2を有する靴1を履いた場合と比較した。先ず、3D加速度センサー(Apple社製のiPhoneに搭載の歩数計アプリを利用したセンサー)を使用することとし、腰の位置にiPhoneを固定して1時間歩行して検知した。この結果、本発明の中底3からなる靴1の場合は、従来の中底であるピンヒールの靴と比較して、約1割前後、歩数計の検知した歩数が減少していた。この歩数計は、一定のしきい値を超える加速変動を検知したときに歩数としてカウントする仕組みであるから、検知した歩数が減少した分だけ、より衝撃が吸収され、緩和されたといえる。
【0044】
次に、本発明のヒール2を有する靴1を履いて、歩行したり階段を昇り降りした際の安定性をについて実験した。この実験には、31歳の事務職の女性が、本発明の中底3およびエアソール21をかかと部4の前部の表底19に有しかつヒールを有する靴1としてヒール高さ8.5cm、サイズ23cm、重量290gのパンプスハイヒールと、従来の中底3の例としてA社のヒール高さ10cm、サイズ22.5cm、重量230gのパンプスハイヒールと、B社のヒール高さ9cm、サイズ23cm、重量240gのパンプスハイヒールからなる、3種のヒール2を有する靴1を履いて、(1)一般の道路を歩行し、土踏まず部5より前側の表底19の靴底20で直径1.5cmの石ころを踏みつけた際のぐらつきの程度を考察する実験と、(2)18段からなる階段を繰り返し昇り降りし、階段の昇り時と降り時における安定感を考察する実験とを行った。
【0045】
(1)の実験で、本発明の中底3およびエアソール21をかかと部4の前部の表底19に有するヒールを有する靴1は、かかと部4の前部の表底19に装着しているエアソール21の部分で直径1.5cmの大きさの石ころを包み込む感じで表底19を圧縮して、石ころを吸収する状態となって踏まず前部を安定にすると共に、ヒール2の上部の中底3のかかと部4の部分に素材として装着されているプラスチック中間層15の部分の圧縮に伴って足裏のかかとに掛かる衝撃も緩和されていた。これに比して従来の中底および踏まず前部にエアソールを有しない靴1では、上記大きさの石ころを踏まず前の部分で踏みつけると足裏が安定せずに傾いて倒れそうになり、ヒール部で支えられなくなり足首をくじきそうになった。これに対して本発明の靴1では、かかと部4の中底3の部分とヒール2の部分を係合しているヒールネイル11の頭部11aが中底3の最上層の上部硬質ボード8aの厚み内で上下する動きにより、ヒール2から受ける足裏のかかとに掛かる衝撃が緩和されていた。
【0046】
さらに(2)の実験で階段を繰り返し昇り降りしたが、本発明の中底3およびエアソール21をかかと部4の前部の表底19に有し、本発明のかかと部4の中底3の構造からなるヒール2を有する靴1は、階段を下る際に受ける靴底20からの衝撃が従来のエアソールを有することなく、さらに従来の構造の中底3のかかと部4を有する靴1に比して、膝の関節に掛かる負担が小さく、軽やかに、安定して降りることができたことができた。また、階段を上る際も本発明のエアソールを有し、本発明の中底3のかかと部4のヒール2の直上の構造を有する靴1は、従来のエアソールが無くまた従来の構造のかかと部4の中底3を有する靴1に比して、安定して上ることができ、さらに覚えた疲労も少なかった。
【0047】
次に、本発明における中底3を用いた靴1を得る実施の形態として、セメント法を用いた接着法による手順を説明する。まず、甲革であるアッパー18を靴型(ラスト)に合わせて縫製して形を整えてから、これを中底3と組み合わせて縫製もしくは接着する。次いで、それらの中底3の下面と、表底19およびヒール2の上面に接着剤を塗布し、互いを貼り合わせて、アッパー18と中底3を表底19とヒール2にしっかりと貼り合わせる。次いで、中底3側から、ヒール2に向けて、シャンク9の上から、ヒールネイル11であるヒール止めねじ釘を締めていき、中底3の下面がヒール2から浮き上がらないようにしつつ、中底3を構成するクッションであるプラスチックフォーム中間層15を潰しきらない様に厚みを設けて固定する。さらに、甲皮の足を差し入れる開口から中敷きを差し入れて、これを中底3の上表面に接着剤で貼り合わせることでインナーソールの内面を仕上げ、ヒール2のついた婦人用の靴1を得る。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の中底3は、これをヒール2を有する表底16と組みあわせることで、種々のタイプの靴底20として適用することが可能であり、また、甲革であるアッパー18との組合せによって、種々の態様のヒール2のある婦人用の靴1に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 靴
2 ヒール
2a ヒールネック
2b トップリフト
3 中底
4 かかと部
4a 中央
4b 後端
5 土踏まず部
5a 前端
5b 中央
6 後部表面層
6a 縦方向中央部
7 爪先部
8 硬質ボード
8a 上部硬質ボード
8b 下部硬質ボード
8c 前端部硬質ボード
9 シャンク
9a 前部
9b 後部
10 リベットもしくはハトメ
11 ヒールネイル
11a 頭部
11b 軸部
12 頭部貫通孔
13 軸部挿通孔
13a 軸部ねじ孔
14 中底後部上面材
15 プラスチックフォーム中間層
16 ボール紙芯材
17 柔軟なプラスチックフォーム前部表面層
17a 前端部
18 アッパー
19 表底
20 靴底
21 エアソール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒールを有する靴の爪先部からかかと部後端までの大きさからなる中底において、かかと部後端から土踏まず部前端までの後部表面層をパルプボードあるいはレザーボードからなる硬質ボードから形成し、この後部表面層のかかと部中央から土踏まず部中央までの後部表面層の部分である上部硬質ボードの裏面の縦方向中央部に鋼製のシャンク・ピース(以下「シャンク」という。)を配設してシャンクの前部および後部をリベットもしくはハトメで上部硬質ボードの裏面に固着し、このシャンクの後部の上に位置する後部表面層である上部硬質ボードにヒールネイルの頭部を自由に通しうる頭部貫通孔を開口し、さらにこの上部硬質ボードのヒールネイルの頭部貫通孔の下面のシャンクにヒールネイルの軸部のみを自由に通しうる軸部挿通孔を頭部貫通孔と同芯状に開口し、これらのシャンクを裏面に有する後部表面層の硬質ボードから中底後部上面材を形成し、この中底後部上面材に有する前部のリベットもしくはハトメの後部からかかと部後端に弾性のあるプラスチックフォーム中間層を貼付し、さらにプラスチックフォーム中間層の裏面に、中底の大きさのボール紙芯材を土踏まず部前端からかかと部後端までの部分に貼付して残りのボール紙芯材を中底3の土踏まず部の前部から爪先部までの部分とし、さらに土踏まず部前端より後方のボール紙芯材の裏面に、かかと部の後部表面層の上部硬質ボードと同材質の下部硬質ボードを貼付して一体的に積層したことを特徴とするヒールを有する靴の中底。
【請求項2】
ヒールを有する靴の爪先部からかかと部後端までの大きさからなる中底において、かかと部後端から土踏まず部前端までの後部表面層をパルプボードあるいはレザーボードからなる硬質ボードから形成し、この後部表面層のかかと部中央から土踏まず部中央までの上部硬質ボードの裏面の縦方向中央部に鋼製のシャンクを配設してシャンクの前部および後部をリベットもしくはハトメで硬質ボードの裏面に固着し、このシャンクの後部の上に位置する後部表面層である上部硬質ボードにヒールネイルの頭部を自由に通しうる頭部貫通孔を開口し、さらにこの硬質ボードのヒールネイルの頭部貫通孔の下面のシャンクにヒールネイルの軸部のみを自由に通しうる軸部挿通孔を頭部貫通孔と同芯状に開口し、これらのシャンクを裏面に有する後部表面層の硬質ボードから中底後部上面材を形成し、この中底後部上面材の前部に、中底の大きさのボール紙芯材を土踏まず部前端からかかと部後端までの部分に貼付して残りのボール紙芯材を中底の土踏まず部の前部から爪先部までの部分とし、さらに土踏まず部前端より後方のボール紙芯材の裏面に、弾性のあるプラスチックフォーム中間層を貼付し、さらに土踏まず部前端より後方のボール紙芯材および弾性のあるプラスチックフォーム中間層の裏面に、かかと部4の後部表面層の上部硬質ボードと同材質の下部硬質ボードを貼付して一体的に積層したことを特徴とするヒールを有する靴の中底。
【請求項3】
中底の大きさのボール紙芯材は、土踏まず部から爪先部までの部分の上部に柔軟なプラスチックフォーム前部表面層を形成して有し、この柔軟なプラスチックフォーム前部表面層の後端を後部表面層の上部硬質ボードの土踏まず部前端に接続していることを特徴とする請求項1または2の手段のヒールを有する靴の中底。
【請求項4】
ボール紙芯材の上の土踏まず部から爪先部までの部分の上部に柔軟なプラスチックフォーム前部表面層はその前端部の爪先部の上に後部表面層の上部硬質ボードと同材料である前端部硬質ボードを形成して有することを特徴とする請求項3の手段のヒールを有する靴の中底。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のヒールを有する靴の中底を表底の上に形成して有し、中底の後部表面層を形成する上部硬質ボードに開口するヒールネイルの頭部貫通孔およびこの上部硬質ボードの下部のシャンクに開口するヒールネイルの軸部のみを挿通し得る軸部挿通孔にヒールネイルの軸部を挿通し、このヒールネイルの頭部の下面を軸部挿通孔の周囲のシャンクの上面に当接してこのヒールネイルをかかと部の下部のヒールに係止し、かつ中底の周囲上部に甲革からなるアッパーを形成して有することを特徴とするヒールを有する靴。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載のヒールを有する靴の中底に変えて、請求項3に記載のヒールを有する靴の中底を表底の上に形成して有し、中底の後部表面層を形成する上部硬質ボードに開口するヒールネイルの頭部貫通孔およびこの上部硬質ボードの下部のシャンクに開くヒールネイルの軸部挿通孔にヒールネイルの軸部を挿通し、このヒールネイルの頭部の下面をヒールネイルの軸部挿通孔の周囲のシャンクの上面に当接し、ヒールネイルを表底の下部に配設のヒールに係止し、かつ中底の周囲上部に甲革からなるアッパーを形成して有することを特徴とするヒールを有する靴。
【請求項7】
請求項1〜3項に記載のヒールを有する靴の中底に変えて、請求項4に記載のヒールを有する靴の中底を表底上に形成して有し、中底の後部表面層を形成する上部硬質ボードに開口するヒールネイルの頭部貫通孔およびこの上部硬質ボードの下部のシャンクに開口するヒールネイルの軸部挿通孔にヒールネイルの軸部を挿通し、このヒールネイルの頭部の下面をヒールネイルの軸部挿通孔の周囲のシャンクの上面に当接し、このヒールネイルを表底の下部に配設のヒールに係止し、かつ中底の周囲上部に甲革からなるアッパーを形成して有することを特徴とするヒールを有する靴。
【請求項8】
ヒールを有する靴は、その表底の土踏まず部よりも前部の表底の素材中にエアソールを配設して有することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のヒールを有する靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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