説明

ビオチン化タンパク質を用いる受容体チップおよびその作製方法

【課題】本発明は、簡便に固相上に固定化可能な状態でビオチン化受容体タンパク質を大量に調製し、そのタンパク質を固相上に固定化することによって受容体チップを開発することを課題とする。本発明はまた、そのようなチップを用いた、検出キットおよび検出方法を開発することを課題とする。
【解決手段】本発明に従って、簡便に固相上に固定化可能な状態でビオチン化受容体タンパク質を大量に調製し、そのタンパク質を固相上に固定化することによって受容体チップを作製した。また、そのようなチップを用いた、検出キットおよび検出方法も本発明によって提供された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビオチン化された組換え受容体タンパク質をチップ上に固定化して、受容体チップを作製する方法、および、そのような受容体チップを含む検出用キット、ならびに、そのような方法によって作製された受容体チップに関する。
【0002】
さらに本発明において、受容体フラグメントとして使用するスカベンジャー受容体のリガンド認識部位に関係する領域を細胞もしくは試験管内で発現させた後、固相上に固定化して作製された受容体チップを提供する。この受容体チップは、酸化LDL、アセチルLDL、サクシニルLDL、およびマロンジアルデヒドLDL、糖化LDLなどの変性LDL(Low Density Lipoprotein)異常細胞並びに細菌を検出するための、高感度な受容体チップとして有用である。
【0003】
また本発明は、スカベンジャー受容体の細胞外領域、並びにCタイプレクチン様領域(CTLDとも略記する)をビオチン化タンパク質として大腸菌などの細胞または試験管内に発現させた後、不活性な凝集体であるビオチン化タンパク質の間違った構造を変性剤により解きほぐし、さらに界面活性剤と環状糖質により正しい高次構造にリフォールディングしたタンパク質を、アビジンやストレプトアビジン等を介して固相上に方向性を保って固定化したものを、分子問相互作用解析法、例えば表面プラズモン共鳴、水晶発振子マイクロバランスなどの検出機器を用いる検出方法におけるセンサー部位(検出用センサー)として利用し、変性LDL、アポトーシス細胞などの異常細胞、または細菌などを検出する方法並びに検出用キットに関する。
【0004】
また、本発明に基づいて、任意の受容体または受容体フラグメントをチップ上に固定化した、受容体チップを作製することも可能になる。
【背景技術】
【0005】
細胞表面に存在する受容体は、その受容体に対応するリガンドと特異的に結合し、その結果、種々のシグナルを細胞内に伝達する。細胞表面に存在する受容体は多様であり、その対応するリガンドも異なる。従って、特定のリガンドの検出および/または定量を行うために、そのリガンドに特異的に結合する受容体を用いることは有用である。異常細胞または疾患の診断マーカーをリガンドとする受容体チップを作製することにより、細胞集団中の異常細胞の存在の検出、または、疾患の診断のための有用なツールを提供できることが、予想される。
【0006】
例えば、生体内に蓄積した変性LDLやアポトーシス細胞や老化赤血球などの異常細胞、並びに生体内に侵入した細菌等を認識して結合する能力のある複数の受容体の存在が発見されている。このような受容体の中には、認識する対象(リガンド)の認識に必要な領域が予想されているものも多い。これらの受容体そのもの、あるいは認識に必要な領域のみを利用すれぱ、リガンドである変性LDL、アポトーシス細胞などの異常な細胞、細菌を簡便に検出できる可能性がある。
【0007】
受容体を利用したリガンド認識のために、例えば、チップのような固相上に受容体のリガンド認識に関係する部位を固定化することにより、高感度のリガンドセンサーを作製することが求められる。
【0008】
しかしながら、受容体タンパク質は、一般に発現量が少ないため、天然の受容体タンパク質を受容体チップの作製をするほど大量に調製することは、困難である。また、遺伝子組換えによる発現系を用いる場合、受容体は膜タンパク質であるため、検出に使用可能なシステムを構築するためには、認識に必須の領域を可溶性タンパク質として得る必要がある。さらに、得られる可溶性タンパク質が、検出に利用可能なセンサーとして機能するための修飾がなされていることが必要である。
【0009】
ところが、従来の方法では、先ず可溶性タンパク質を得ること自体が困難であつた。最も簡便に効率的、かつ安価に可溶性タンパク質を得る方法は、遺伝子工学的手法により大腸菌を宿主として目的タンパク質を発現させることであるが、この方法では、発現産物が封入体と呼ばれる不活性な凝集体として菌体内に蓄積され、可溶性のタンパク質を得ることは不可能であった。
【0010】
一方、動物細胞を宿主として可溶性タンパク質を得て、リガンドを測定した例としては、受容体を利用した変性LDLの定量法として、酸化LDL受容体の細胞外領域と免疫グロブリン重鎖の定常領域の一部からなる融合タンパク質を動物細胞により発現させ、これを免疫学的アッセイにより高感度に定量可能とした手法がある(特開2002−17353号公報)。しかし、動物培養細胞を使用する方法は、大変な手間とコストを要する手法である。
【0011】
また、大腸菌内に蓄積した受容体タンパク質由来の凝集物を、可溶性の正しい構造にリフォールドしょうとする試みもなされた(例えば、可溶性IL−15受容体α鎖について特開2003−169693)。しかし、従来の方法は、例えば、受容体を樹脂に吸着させた後、吸着させた樹脂を変性剤を含有する緩衝溶液と接触させ、次いで変性剤の濃度を漸次低下させた緩衝溶液と接触させる(特開2003−169693)というように、いずれも煩雑な方法であった。さらに、固相に固定化された状態でリフォールディングした場合は、リフォールディング後に固相からの溶出や切り出しなどの工程を経る必要があり、煩雑さを増すと共に収率が低下するなどの問題があった。また、固相を用いた場合も、用いていない場合も、得られた可溶性タンパク質を検出系に使用するための適切な修飾がなされておらず、リフォールディング後のタンパク質を所望の位置に固定化することはできなかった。
【0012】
また、親和性に基づくタンパク質の固定化のためには、Hisタグ、GSTタグの付加、または発現産物のビオチン化が知られている。これらの内で、タンパク質のビオチン化は、立体的障害、ならびに金属イオンおよび還元剤の影響が少ないことから好ましい。しかし、発現産物の機能を損なうことなく効率よくビオチン化するためには、細菌内でビオチン化をする必要があるが、従来法においては、封入体を生じる条件下で発現させた場合のリフォールディングの困難性、ならびに封入体を生じない条件下で発現させた場合の発現量の少なさおよび発現産物の分解という障害のために、ビオチン化受容体タンパク質の発現およびその固定化による受容体チップの作製は行われていなかった。
【0013】
上記の次第で、現時点において、受容体を、リガンド結合能を保持しつつ、かつ、簡便に固相上に固定化可能な状態で調製する方法は確立されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−17353号
【特許文献2】特開2003−169693号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、簡便に固相上に固定化可能な状態でビオチン化受容体タンパク質を大量に調製し、そのタンパク質を固相上に固定化することによって受容体チップを作製することを目的とする。また、本発明のさらなる目的は、そのようなチップを用いた、検出キットおよび検出方法を提供することにある。
【0016】
本発明のさらなる目的は、スカベンジャー受容体を用いた受容体チップを作製し、変性LDL、異常細胞並びに細菌の検出方法を提供し、また、好適には方向性を有した状態(リガンド結合部位が外側に位置するように)で固相上に固定化可能な可溶性のリガンド認識領域を大量に調製し、そのリガンド認識特性を活かしたセンサー部位を構築し、これを利用して変性LDLやアポトーシス細胞や老化赤血球などの異常細胞、並びに生体内に侵入した細菌等を検出する方法および検出用キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明では、組換え発現されたビオチン化受容体タンパク質を、環状糖質サイクロアミロースとポリオキシエチレン系界面活性剤を含有する溶液中、または、環状糖質サイクロアミロースとイオン性界面活性剤を含有する溶液中でリフォールディングして、そのリフォールディングされたタンパク質を固相上に固定化することによって、組換えビオチン化受容体タンパク質を、リガンド結合能を保持しつつ、かつ、簡便に固相上に固定化することができた。
【0018】
さらに、本発明においては、スカベンジャー受容体ファミリーに所属するレクチン様酸化LDL受容体としてhLOXの細胞外領域、並びにCTLDを大腸菌内に大量に蓄積した後、可溶性タンパク質として再構成し、これを変性LDL、アポトーシス細胞などの異常な細胞、細菌などを検出するセンサー部位として利用することが可能なことを見出し、本発明に到達した。
【0019】
したがって、本発明は、以下を提供する。
【0020】
1.組換え発現されたビオチン化受容体タンパク質が、ビオチンと特異的に結合し得る因子を介して固定化された、受容体チップ。
【0021】
2.前記ビオチン化受容体タンパク質が、細菌宿主において発現されたタンパク質である、項目1に記載の受容体チップ。
【0022】
3.前記ビオチン化受容体タンパク質が、試験管内において発現されたタンパク質である、項目1に記載の受容体チップ。
【0023】
4.前記受容体タンパク質のビオチン化が、細菌宿主内において行われる、項目2に記載の受容体チップ。
【0024】
5.前記受容体タンパク質のビオチン化が、該タンパク質の発現後に試験管内において行われる、項目2に記載の受容体チップ。
【0025】
6.前記固定化されたビオチン化受容体タンパク質が、細菌内で封入体として発現されたビオチン化受容体タンパク質をリフォールディングしたタンパク質である、項目4に記載の受容体チップ。
【0026】
7.前記リフォールディングが、環状糖質サイクロアミロースとポリオキシエチレン系界面活性剤を含有する溶液中で行われる、項目6に記載の受容体チップ。
【0027】
8.前記環状糖質サイクロアミロースの重合度が、17〜50または40〜150である、項目7記載の受容体チップ。
【0028】
9.前記環状糖質サイクロアミロースの重合度が、40〜150である、項目8記載の受容体チップ。
【0029】
10.前記ポリオキシエチレン系界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘプタメチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルまたはスクロース脂肪酸エステルである、項目7に記載の受容体チップ。
【0030】
11.前記リフォールディングが、環状糖質サイクロアミロースとイオン性界面活性剤を含有する溶液中で行われる、項目6に記載の受容体チップ。
【0031】
12.前記環状糖質サイクロアミロースの重合度が、17〜50または40〜150である、項目11記載の受容体チップ。
【0032】
13.前記環状糖質サイクロアミロースの重合度が、40〜150である、項目12記載の受容体チップ。
【0033】
14.前記イオン性界面活性剤が、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシル硫酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホン酸、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドまたはミリスチルサルホオベタインである、項目11に記載の受容体チップ。
【0034】
15.前記受容体が、以下の受容体からなる群から選択される、項目1に記載の受容体チップ:
スカベンジャー受容体、インスリン受容体ファミリーに属する受容体、EGF受容体ファ
ミリーに属する受容体、PDGF受容体ファミリーに属する受容体、VEGF受容体ファミリーに属する受容体、FGF受容体ファミリーに属する受容体、NGF受容体ファミリーの増殖因子受容体、TGF-βスーパーファミリー受容体、Toll-like受容体ファミリー、LDL受容体関連タンパク質ファミリー、およびGタンパク質共役型受容体ファミリーの受容体。
【0035】
16.前記受容体が、スカベンジャー受容体のLOX−1である、項目15に記載の受容体チップ。
【0036】
17.表面プラズモン共鳴、水晶発振子マイクロバランス、または質量分析計による検出に適合する、項目1に記載の受容体チップ。
【0037】
18.以下の工程を包含する、受容体チップの作製方法:
a)ビオチン化受容体タンパク質を、細菌宿主内で封入体として組換え発現する工程;
b)該封入体を、環状糖質サイクロアミロースとポリオキシエチレン系界面活性剤を含有する溶液中でリフォールディングして、可溶性ビオチン化受容体タンパク質を調製する工程;および
c)該リフォールディングされた可溶性ビオチン化受容体タンパク質を、ビオチンと特異的に結合し得る因子を介して固相上に固定化する工程。
【0038】
19.前記環状糖質サイクロアミロースの重合度が、17〜50または40〜150である、項目18記載の方法。
【0039】
20.前記環状糖質サイクロアミロースの重合度が、40〜150である、項目19記載の方法。
【0040】
21.前記ポリオキシエチレン系界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘプタメチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルまたはスクロース脂肪酸エステルである、項目18に記載の方法。
【0041】
22.前記受容体が、以下の受容体からなる群から選択される、項目18に記載の方法:
スカベンジャー受容体、インスリン受容体ファミリーに属する受容体、EGF受容体ファミリーに属する受容体、PDGF受容体ファミリーに属する受容体、VEGF受容体ファミリーに属する受容体、FGF受容体ファミリーに属する受容体、NGF受容体ファミリーの増殖因子受容体、TGF-βスーパーファミリー受容体、Toll-like受容体ファミリー、LDL受容体関連タンパク質ファミリー、およびGタンパク質共役型受容体ファミリー。
【0042】
23.前記受容体が、スカベンジャー受容体のLOX−1である、項目22に記載の方法。
【0043】
24.前記固相が、表面プラズモン共鳴、水晶発振子マイクロバランス、または質量分析計による検出に適合する固相である、項目18に記載の方法。
【0044】
25.以下の工程を包含する、受容体チップの作製方法:
a)ビオチン化受容体タンパク質を、細菌宿主内で封入体として組換え発現する工程;
b)該封入体を、環状糖質サイクロアミロースとイオン性界面活性剤を含有する溶液中でリフォールディングして、可溶性ビオチン化受容体タンパク質を調製する工程;および
c)該リフォールディングされた可溶性ビオチン化受容体タンパク質を、ビオチンと特異的に結合し得る因子を介して固相上に固定化する工程。
【0045】
26.前記環状糖質サイクロアミロースの重合度が、17〜50または40〜150である、項目25記載の方法。
【0046】
27.前記環状糖質サイクロアミロースの重合度が、40〜150である、項目26記載の方法。
【0047】
28.前記イオン性界面活性剤が、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシル硫酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホン酸、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドまたはミリスチルサルホオベタインである、項目25に記載の方法。
【0048】
29.前記受容体が、以下の受容体からなる群から選択される、項目25に記載の方法:
スカベンジャー受容体、インスリン受容体ファミリーに属する受容体、EGF受容体ファミリーに属する受容体、PDGF受容体ファミリーに属する受容体、VEGF受容体ファミリーに属する受容体、FGF受容体ファミリーに属する受容体、NGF受容体ファミリーの増殖因子受容体、TGF-βスーパーファミリー受容体、Toll-like受容体ファミリー、LDL受容体関連タンパク質ファミリー、およびGタンパク質共役型受容体ファミリー。
【0049】
30.前記受容体が、スカベンジャー受容体のLOX−1である、項目29に記載の方法。
【0050】
31.前記固相が表面プラズモン共鳴、水晶発振子マイクロバランス、または質量分析計による検出に適合する、項目25に記載の方法。
【0051】
32.項目18または25に記載の方法によって作製された受容体チップ。
【0052】
33.項目16に記載の受容体チップを用いる、変性LDL、異常細胞または細菌の検出方法。
【0053】
34.項目23または30に記載の方法によって作製された受容体チップ。
【0054】
35.項目34に記載の受容体チップを用いる、変性LDL、異常細胞または細菌の検出方法。
【0055】
36.項目18または25に記載の方法によって作製された受容体チップを含む、検出用キット。
【0056】
37.項目16に記載の受容体チップを含む、検出用キット。
【0057】
38.項目23または30に記載の方法によって作製された受容体チップを含む、検出用キット。
【0058】
39.項目34に記載の受容体チップを含む、検出用キット。
【0059】
さらに本発明は、受容体のリガンド認識に関係する領域を細胞もしくは試験管内で発現させて得た組換えタンパク質を用いることを特徴とする分子間相互作用解析法による変性LDL、異常細胞または細菌の検出方法を提供する。
【0060】
また本発明は、受容体のリガンド認識に関係する領域をビオチン化タンパク質として細胞もしくは試験管内で発現させた後、発現させたビオチン化タンパク質をアビジンまたはストレプトアビジンを介して方向性を保って固相上に固定化し、当該固定化タンパク質を用いることを特徴とする分子間相互作用解析法による変性LDL、異常細胞または細菌の検出方法を提供する。
【0061】
本発明は、大腸菌内に蓄積した受容体の細胞外領域またはリガンド認識領域を正しい立体構造にリフォールディングして再構成して得た再構成タンパク質を用いることを特徴とする分子間相互作用解析法による変性LDL、異常細胞または細菌の検出方法を提供する。
【0062】
また本発明は、大腸菌内に蓄積した受容体のビオチン化細胞外領域またはビオチン化リガンド認識領域を正しい立体構造にリフォールディングして再構成した後、再構成したビオチン化タンパク質をアビジンまたはストレプトアビジンを介して方向性を保って固相上に固定化し、当該固定化タンパク質を用いることを特徴とする分子間相互作用解析法による変性LDL、異常細胞または細菌の検出方法を提供する。
【0063】
本発明はまた、大腸菌内に凝集体として蓄積した受容体の細胞外領域またはリガンド認識領域を変性剤により構造を解きほぐした後、界面活性剤と環状糖質により正しい立体構造にリフォールディングしたタンパク質を含む変性LDL、異常細胞または細菌の検出用キットを提供する。
【0064】
さらに本発明は、大腸菌内に凝集体として蓄積した受容体のビオチン化細胞外領域またはビオチン化リガンド認識領域を変性剤により構造を解きほぐした後、界面活性剤と環状糖質により正しい立体構造にリフォールディングしたタンパク質を、アビジンまたはストレプトアビジンを介して方向性を保って固相上に固定化したものを含む変性LDL、異常細胞または細菌の検出用キットを提供する。
【発明の効果】
【0065】
本発明において、簡便に固相上に固定化可能な状態でビオチン化受容体タンパク質を大量に調製し、そのタンパク質を固相上に固定化することによって受容体チップを作製した。また、そのようなチップを用いた、検出キットおよび検出方法も本発明によって提供された。
【0066】
本発明により、生体内に蓄積した変性LDLやアポトーシス細胞、老化赤血球などの異常細胞、並びに生体内に侵入した細菌などを効率よく検出する方法が提供される。この方法は、スカベンジャー受容体のリガンド認識に関係する領域を細胞内もしくは試験管内で発現させて得た組換えタンパク質を利用して行うことができる。
【0067】
さらに、本発明は、かかる変性LDL、異常細胞、細菌を検出するためのセンサー部位(検出用キット)を安価かつ大量に供給することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施例1におけるビオチン化細胞外領域、ならびにビオチン化CTLDの発現状態を示す電気泳動像である。A:ビオチン化細胞外領域。B:ビオチン化CTLD。レーン1:不溶性画分。レーン2:可溶性画分
【図2】実施例2におけるビオチン化細胞外領域、ならびにビオチン化CTLDのリフォールディングの結果を示す電気泳動像である。A:ビオチン化細胞外領域。B:ビオチン化CTLD。レーン1:封入体。レーン2:CTABの使用で可溶性画分に回収されたもの。レーン3:CTABの使用で不溶性画分に回収されたもの。レーン4:SB3−14の使用で可溶性画分に回収されたもの。レーン5:SB3−14の使用で不溶性画分に回収されたもの。
【図3】実施例3における表面プラズモン共鳴による変性LDLの検出結果を示すグラフ。A:細胞外領域によるアセチル化LDLの検出結果を示す。B:細胞外領域による酸化LDLの検出結果を示す。C:CTLDによるアセチル化LDLの検出結果を示す。D:CTLDによる酸化LDLの検出結果を示す。
【図4】実施例4における水晶発振子マイクロバランスによる変性LDLの検出結果を示すグラフ。A:細胞外領域による酸化LDLの検出結果を示す。B:CTLDによる酸化LDLの検出結果を示す。
【図5】実施例4における水晶発振子マイクロバランスによる細菌の検出結果を示すグラフ。A:細胞外領域による大腸菌の検出結果を示す。B:細胞外領域によるブドウ球菌の検出結果を示す。
【図6】実施例4における水晶発振子マイクロバランスによる細菌の検出結果を示すグラフ。A:CTLDによる大腸菌の検出結果を示す。B:CTLDによるブドウ球菌の検出結果を示す。
【図7】実施例4における水晶発振子マイクロバランスによるアポトーシス細胞の検出結果を示すグラフ。A:細胞外領域によるアポトーシス細胞の検出結果を示す。B:CTLDによるアポトーシス細胞の検出結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
(発明の実施の形態)
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
【0070】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0071】
本明細書において使用される用語「受容体」とは、1個以上のリガンドと可逆的、かつ特異的に複合体化する1個以上の結合ドメインを備える生物学的な構造であって、ここで、この複合体化は生物学的な構造を有する。受容体は、完全に細胞の外部(細胞外の受容体)、細胞膜の中(しかし、受容体の部分を細胞外部の環境および細胞質ゾルに向けている)、または完全に細胞の中(細胞内の受容体)に存在し得る。これらはまた、細胞と独立的に機能し得る。細胞膜中の受容体は、細胞を、その境界の外部の空間と連絡(例えば、シグナル伝達)させ、そして細胞の内側および外側への分子およびイオンの輸送において機能させることを可能とする。本明細書において使用する場合、受容体は、受容体全長であっても、受容体のフラグメントであってもよい。
【0072】
受容体フラグメントを用いる場合には、受容体タンパク質のリガンド認識に関係する部位を用いる。受容体タンパク質のリガンド認識に関係する部位は、以下のように同定することができる。ホモロジーやドメイン検索により相同性や機能上の類似点の高いタンパク質の構造からリガンド認識領域を推定することができる。例えば、同一のリガンドに特異的に結合する、異なる受容体分子のアミノ酸配列をBLASTのデフォルトパラメータを用いて算出した場合、50%以上、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上の相同性を示す領域が、リガンド認識領域として推定される。
。さらに欠損変異やアミノ酸置換などを導入した変異受容体をコードする遺伝子を動物細胞などに一過性発現させ、その機能に必須の領域を決定することも、当業者は容易になし得る。
【0073】
本明細書において使用される用語「リガンド」とは、特異的な受容体または受容体のファミリーに対する結合パートナーである。リガンドは、受容体に対する内因性のリガンドであるか、またはその代わりに、薬剤、薬剤候補、もしくは薬理学的手段のような受容体に対する合成リガンドであり得る。
【0074】
本明細書において使用される用語「タンパク質」「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされ得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。
【0075】
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」を含む。「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。用語「核酸」はまた、本明細書において、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換可能に使用される。特定の核酸配列はまた、「スプライス改変体」を包含する。同様に、核酸によりコードされた特定のタンパク質は、その核酸のスプライス改変体によりコードされる任意のタンパク質を暗黙に包含する。その名が示唆するように「スプライス改変体」は、遺伝子のオルタナティブスプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる(別の)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされ得る。スプライス改変体の産生機構は変化するが、エキソンのオルタナティブスプライシングを含む。読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリペプチドもまた、この定義に包含される。スプライシング反応の任意の産物(組換え形態のスプライス産物を含む)がこの定義に含まれる。
【0076】
本明細書において「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定する遺伝子を構造遺伝子といい、その発現を左右する調節遺伝子という。本明細書では、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」ならびに/あるいは「タンパク質」「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」をさすことがある。本明細書において遺伝子の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。
【0077】
本明細書では塩基配列の同一性の比較および相同性の算出は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。
【0078】
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」とは、その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一態様であり得る。より好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けたものであり得る。
【0079】
本明細書において、「アミノ酸」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体アミノ酸」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体アミノ酸およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。用語「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体である。用語「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様な様式で機能する化合物をいう。
【0080】
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に受け入れられた1文字コードにより言及され得る。
【0081】
本明細書中において、「対応する」アミノ酸とは、あるタンパク質分子またはポリペプチド分子において、比較の基準となるタンパク質またはポリペプチドにおける所定のアミノ酸と同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸をいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。
【0082】
本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
本明細書において、「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において使用する場合、好ましくは、受容体「フラグメント」は、全長受容体が特異的に結合し得るリガンドに特異的に結合する。レクチン様酸化LDL受容体の好ましいフラグメントは、C−タイプレクチン様領域(CTLD)を含むフラグメントである。
【0084】
本発明のポリペプチドを製造する方法としては、例えば、そのポリペプチドを産生する原核生物である細菌を培養し、細菌中に組換え受容体タンパク質を封入体として蓄積させ、その宿主細菌を破壊することによって、そのポリペプチドを得る方法が挙げられる。
【0085】
大腸菌内でタンパク質をビオチン化するためのビオチン化モチーフのアミノ酸配列としては:
「MKLKVTVNGTAYDVDVDVDKSHENPMGTILFGGGTGGAPAPAAGGAGAGKAGEGEIPAPLAGTVSKILVKEGDTVKAGQTVLVLEAMKMETEINAPTDGKVEKVLVKERDAVQGGQGLIKIGDLEL」(配列番号5)が挙げられる。アミノ酸配列「GLNDIFEAQKIEWHE」(配列番号6)もまたビオチン化モチーフとして利用可能である。これら配列において、実際にビオチン化を受けるK(リジン)残基以外に変異を導入しても、ビオチン化活性に大きな影響はないので、リジン残基以外を置換した配列もまた、ビオチン化モチーフとして使用することができる。また、実際にビオチン化を受けるKを含んだ「KIG,KI,KIA,KIE,KIGDP(配列番号7),KLWSI(配列番号8),KLG,KVG」などをC末側に付加することによるビオチン化も可能である。
【0086】
また、エンドプロテイナーゼであるFactorXaの認識配列「IEGR」(配列番号9)やエンテロキナーゼの認識配列「DDDDK」(配列番号10)などをこれらビオチン化モチーフと発現される外来タンパク質との間に挿入し、FactorXaまたはエンテロキナーゼによる切断により外来タンパク質を精製することも可能である。例えば、CTLDを発現する場合、これらビオチン化モチーフとCTLDとの間にアミノ酸配列「IEGR」を挿入し、CTLDのみの精製をすることも可能である。
【0087】
「形質転換体」とは、宿主細胞を形質転換することによって作製された細胞などの生命体の全部または一部をいう。形質転換体としては、原核細胞が例示される。形質転換体は、その対象に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換宿主などともいわれ、本明細書においてそれらの形態をすべて包含するが、特定の文脈において特定の形態を指し得る。
【0088】
形質転換体を得るための宿主細菌細胞は、生理活性を保持するポリペプチドを発現するものであれば、特に限定されず、従来から遺伝子操作において利用される各種の宿主細菌細胞を用いることができる。原核細胞としては、エシェリヒア属、セラチア属、バチルス属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属、ミクロバクテリウム属、シュードモナス属等に属する原核細胞、例えば、Escherichia coli XL1−Blue、Escherichia coli XL2−Blue、Escherichia coli DH1、Escherichia coli MC1000、Escherichia coli KY3276、Escherichia coli W1485、Escherichia coli JM109、Escherichia coli HB101、Escherichia coli No.49、Escherichia coli W3110、Escherichia coli NY49、Escherichia coli BL21(DE3)、Escherichia coli BL21(DE3)pLysS、Escherichia coli HMS174(DE3)、Escherichia coli HMS174(DE3)pLysS、Serratia ficaria、Serratia fonticola、Serratia liquefaciens、Serratia marcescens、Bacillus subtilis、Bacillus amyloliquefaciens、Brevibacterium ammmoniagenes、Brevibacterium immariophilum ATCC14068、Brevibacterium saccharolyticumATCC14066、Corynebacterium glutamicum ATCC13032、Corynebacterium glutamicum ATCC14067、Corynebacterium glutamicum ATCC13869、Corynebacterium acetoacidophilum ATCC13870、Microbacterium ammoniaphilum ATCC15354、Pseudomonas sp.D−0110などが例示される。
【0089】
本発明において得られた細胞に由来するポリペプチドは、天然型のポリペプチドと実質的に同一の作用を有する限り、アミノ酸配列中の1以上のアミノ酸が置換、付加および/または欠失していてもよく、糖鎖が置換、付加および/または欠失していてもよい。
【0090】
あるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、リガンド分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。
【0091】
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol. 157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
【0092】
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、リガンド結合能において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。米国特許第4、554、101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
【0093】
本発明において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0094】
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトとマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子とβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。オルソログは、分子系統樹の推定に有用であることから、オルソログもまた、本発明において有用であり得る。
【0095】
「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。このような核酸の変動は、保存的に改変された変異の1つの種である「サイレント改変(変異)」である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての核酸配列はまた、その核酸の可能なすべてのサイレント変異を記載する。当該分野において、核酸中の各コドン(通常メチオニンのための唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一な分子を産生するために改変され得ることが理解される。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列において暗黙に含まれる。好ましくは、そのような改変は、ポリペプチドの高次構造に多大な影響を与えるアミノ酸であるシステインの置換を回避するようになされ得る。
【0096】
本明細書中において、機能的に等価なポリペプチドを作製するために、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
【0097】
このような核酸は、周知のPCR法により得ることができ、化学的に合成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変位誘発法、ハイブリダイゼーション法などを組み合わせてもよい。
【0098】
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わることまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、癌マーカー、神経疾患マーカーなど)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
【0099】
高分子構造(例えば、ポリペプチド構造)は種々のレベルの構成に関して記述され得る。この構成の一般的な議論については、例えば、Albertsら、Molecular Biology of the Cell(第3版、1994)、ならびに、CantorおよびSchimmel、Biophysical Chemistry Part I:The Conformation of Biological Macromolecules(1980)を参照。「一次構造」とは、特定のペプチドのアミノ酸配列をいう。「二次構造」とは、ポリペプチド内の局所的に配置された三次元構造をいう。これらの構造はドメインとして一般に公知である。ドメインは、ポリペプチドの緻密単位を形成し、そして代表的には50〜350アミノ酸長であるそのポリペプチドの部分である。代表的なドメインは、βシート(βストランドなど)およびα−ヘリックスのストレッチ(stretch)のような、部分から作られる。「三次構造」とは、ポリペプチドモノマーの完全な三次元構造をいう。「四次構造」とは、独立した三次単位の非共有的会合により形成される三次元構造をいう。異方性に関する用語は、エネルギー分野において知られる用語と同様に使用される。
【0100】
本発明において利用され得る一般的な分子生物学的手法としては、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、 Wiley、 New York、 NY;Sambrook Jら (1987) Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYなどを参酌して当業者であれば容易に実施をすることができる。
【0101】
本明細書において遺伝子について言及する場合、「ベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるものをいう。そのようなベクターとしては、細菌宿主細胞において自律複製が可能である、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。
【0102】
「発現ベクター」は、構造遺伝子およびその発現を調節するプロモーターに加えて種々の調節エレメントが宿主の細胞中で作動し得る状態で連結されている核酸配列をいう。調節エレメントは、好ましくは、ターミネーターおよび、選択マーカーを含み得る。発現ベクターのタイプおよび使用される調節エレメントの種類が、宿主細菌細胞に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
【0103】
「組換えベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるベクターをいう。そのようなベクターとしては、原核宿主細胞において自立複製が可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。
【0104】
原核細胞に対する「組換えベクター」としては、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(いずれもRoche Molecular Biochemicalsより市販)、pKK233−2(Pharmacia)、pSE280(Invitrogen)、pGEMEX−1(Promega)、pQE−8(QIAGEN)、pKYP10(特開昭58−110600)、pKYP200(Agric.Biol.Chem.,48,669(1984))、pLSA1(Agric.Biol.Chem.,53,277(1989))、pGEL1(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,4306(1985))、pBluescript II SK+(Stratagene)、pBluescript II SK(−)(Stratagene)、pTrs30(FERM BP−5407)、pTrs32(FERM BP−5408)、pGHA2(FERM BP−400)、pGKA2(FERM B−6798)、pTerm2(特開平3−22979、US4686191、US4939094、US5160735)、pEG400[J.Bacteriol.,172,2392(1990)]、pGEX(Pharmacia)、pETシステム(Novagen)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pTrxFus(Invitrogen)、pMAL−c2(New England Biolabs)、pUC19[Gene,33,103(1985)]、pSTV28(宝酒造)、pUC118(宝酒造)、pPA1(特開昭63−233798)、Pinpoint Xa(Promega社製)、PAN,PAC(avidity社製)などが例示される。
【0105】
本明細書において用いられる「プロモーター」とは、遺伝子の転写の開始部位を決定し、またその頻度を直接的に調節するDNA上の領域をいい、RNAポリメラーゼが結合して転写を始める塩基配列である。推定プロモーター領域は、構造遺伝子ごとに変動するが、通常構造遺伝子の上流にあるが、これらに限定されず、構造遺伝子の下流にもあり得る。
【0106】
本明細書において使用される「固相」とは、抗体のような分子が固定され得る平面状の支持体をいう。本発明において表面プラズモン共鳴の原理を用いて検出する場合、固相は、金、銀またはアルミニウムを含む金属薄膜を片面に持つガラス基板の基材であることが好ましい。本発明において水晶発振子マイクロバランスの原理を用いて検出する場合は、周波数変換素子(例えば水晶発振子、表面弾性波素子)を固相として用い、直接受容体を結合させる。水晶板の片面はシリコーンで被覆し、もう一方の面は金電極を施したものを固相として用いる。
【0107】
本明細書において使用される「基板」とは、本発明のチップまたはアレイが構築される材料(好ましくは固体)をいう。したがって、基板は固相の概念に包含される。基板の材料としては、共有結合かまたは非共有結合のいずれかで、本発明において使用される生体分子に結合する特性を有するかまたはそのような特性を有するように誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられる。
【0108】
固相および基板として使用するためのそのような材料としては、固体表面を形成し得る任意の材料が使用され得るが、例えば、ガラス、シリカ、シリコーン、セラミック、二酸化珪素、プラスチック、金属(合金も含まれる)、天然および合成のポリマー(例えば、ポリスチレン、セルロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)以下が挙げられるがそれらに限定されない。基板は、複数の異なる材料の層から形成されていてもよい。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素などの無機絶縁材料を使用できる。また、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。本発明においてはまた、ナイロン膜、ニトロセルロース膜、PVDF膜など、ブロッティングに使用される膜を用いることもできる。高密度のものを解析する場合は、ガラスなど硬度のあるものを材料として使用することが好ましい。基板として好ましい材質は、測定機器などの種々のパラメータによって変動し、当業者は、上述のような種々の材料から適切なものを適宜選択することができる。
【0109】
本明細書において「チップ」または「マイクロチップ」は、互換可能に用いられ、多様の機能をもち、システムの一部となる超小型集積回路をいう。本明細書において、ビオチン化受容体を固定化した固相を、受容体チップおよび/または受容体マイクロチップと呼ぶ。
【0110】
本明細書において「アレイ」とは、1以上(例えば、1000以上)の受容体が整列されて配置されたパターンまたはパターンを有する基板(例えば、チップ)そのものをいう。アレイの中で、小さな基板(例えば、10×10mm上など)上にパターン化されているものはマイクロアレイというが、本明細書では、マイクロアレイとアレイとは互換可能に使用される。従って、上述の基板より大きなものにパターン化されたものでもマイクロアレイと呼ぶことがある。例えば、アレイはそれ自身固相表面または膜に固定されている所望の受容体のセットで構成される。アレイは好ましくは同一のまたは異なる受容体を少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、およびさらに好ましくは少なくとも10個、さらにより好ましくは少なくとも10個を含む。これらの受容体は、好ましくは表面が125×80mm、より好ましくは10×10mm上に配置される。形式としては、96ウェルマイクロタイタープレート、384ウェルマイクロタイタープレートなどのマイクロタイタープレートの大きさのものから、スライドグラス程度の大きさのものが企図される。固定される受容体は、1種類であっても複数種類であってもよい。そのような種類の数は、1個〜スポット数までの任意の数であり得る。例えば、約10種類、約100種類、約500種類、約1000種類の受容体が固定され得る。
【0111】
基板のような固相表面または膜には、上述のように任意の数の生体分子(例えば、受容体)が配置され得るが、通常、基板1つあたり、10個の生体分子まで、他の実施形態において10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、または10個の生体分子までの個の生体分子が配置され得るが、10個の生体分子を超える生体分子が配置されていてもよい。これらの場合において、基板の大きさはより小さいことが好ましい。特に、生体分子である受容体のスポットの大きさは、単一の生体分子のサイズと同じ小さくあり得る(これは、1−2nmの桁であり得る)。最小限の基板の面積は、いくつかの場合において基板上の生体分子の数によって決定される。本発明では、細胞と特異的に結合する因子は、通常、0.01mm〜10mmのスポット状に共有結合あるいは物理的相互作用によって配列固定されている。
【0112】
アレイ上には、生体分子の「スポット」が配置され得る。本明細書において「スポット」とは、生体分子の一定の集合をいう。本明細書において「スポッティング」とは、ある生体分子のスポットをある基板または固相に作製することをいう。スポッティングはどのような方法でも行うことができ、例えば、ピペッティングなどによって達成され得、あるいは自動装置で行うこともでき、そのような方法は当該分野において周知である。本明細書において、生体分子は、受容体、受容体のフラグメント、または受容体の改変体である。
【0113】
本明細書において使用される用語「アドレス」とは、基板上のユニークな位置をいい、他のユニークな位置から弁別可能であり得るものをいう。アドレスは、そのアドレスを伴うスポットとの関連づけに適切であり、そしてすべての各々のアドレスにおける存在物が他のアドレスにおける存在物から識別され得る(例えば、光学的)、任意の形状を採り得る。アドレスを定める形は、例えば、円状、楕円状、正方形、長方形であり得るか、または不規則な形であり得る。したがって、「アドレス」は、抽象的な概念を示し、「スポット」は具体的な概念を示すために使用され得るが、両者を区別する必要がない場合、本明細書においては、「アドレス」と「スポット」とは互換的に使用され得る。
【0114】
各々のアドレスを定める大きさは、とりわけ、その基板の大きさ、特定の基板上のアドレスの数、分析物の量および/または利用可能な試薬、微粒子の大きさおよびそのアレイが使用される任意の方法のために必要な解像度の程度に依存する。大きさは、例えば、1−2nmから数cmの範囲であり得るが、そのアレイの適用に一致した任意の大きさが可能である。
【0115】
アドレスを定める空間配置および形状は、そのマイクロアレイが使用される特定の適用に適合するように設計される。アドレスは、密に配置され得、広汎に分散され得るか、または特定の型の分析物に適切な所望のパターンへとサブグループ化され得る。
【0116】
マイクロアレイについては、秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」、M.F.Templin,et al.,Protein microarray technology, Drug Discovery Today, 7(15), 815−822(2002)に広く概説されている。
【0117】
マイクロアレイから得られるデータは膨大であることから、クローンとスポットとの対応の管理、データ解析などを行うためのデータ解析ソフトウェアが重要である。そのようなソフトウェアとしては、各種検出システムに付属のソフトウェアが利用可能である(Ermolaeva Oら(1998)Nat.Genet.20:19−23)。また、データベースのフォーマットとしては、例えば、Affymetrixが提唱しているGATC(genetic analysis technology consortium)と呼ばれる形式が挙げられる。
【0118】
微細加工については、例えば、Campbell,S.A.(1996).The Science and Engineering of Microelectronic Fabrication,Oxford University Press;Zaut,P.V.(1996).Micromicroarray Fabrication:a Practical Guide to Semiconductor Processing,Semiconductor Services;Madou,M.J.(1997).Fundamentals of Microfabrication,CRC1 5 Press;Rai−Choudhury,P.(1997).Handbook of Microlithography,Micromachining,& Microfabrication:Microlithographyなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
【0119】
マイクロアレイの作製には、マイクロコンタクトプリンティング法、光リソグラフィー法などの種々の方法を用いることが可能であるが、望ましくは、アルカンチオール単分子膜のマイクロパターン化表面を利用する方法である。この場合、まず、片面に金薄膜を蒸着したガラス基板に、メチル基、フルオロメチル基のような疎水性官能基をもつアルカンチオールの単分子膜を形成させる。この単分子膜に、直径数μmから1mm程度の多数の光透過性スポットを配列させたフォトマスクを重ね、紫外線を照射する。これによって、照射部のアルカンチオールをスポット状に分解除去することができる。スポット内に導入された反応性官能基を使ってストレプトアビジン、アビジンなどのビオチンと特異的に結合するタンパク質を固定化する。最後に受容体タンパク質のビオチン化部位を介して受容体タンパク質を固定化することにより、化学的処理を経ずに穏やかな条件下で方向性を保った状態での、受容体タンパク質の固定化が完了する。例えば、カルボキシル基含有スポットの場合には、カルボキシル基をN−ヒドロキシスクシンイミドを用いて活性エステルに変換し、アビジンやストレプトアビジンなどを固定化させた後、微量の生体分子含有溶液を各スポットに滴下することで、固定化を行うことができる。スポット周囲に形成させた疎水性の単分子膜は、溶液の拡散を抑えるために有効である。スポット周囲のバックグラウンド領域と分析物との非特異的な相互作用を抑えるため、ウシ血清アルブミンのような不活性タンパク質、ポリエチレングリコールのような親水性高分子でブロッキングを行う。
【0120】
DNAマイクロアレイ、プロテインチップなどを使った分析技術の進歩を見ても明らかなように、マイクロアレイは、一枚の基板上で多数の検体に対してハイスループット分析が可能であるため、きわめて有効な分析手段である。本発明は、このようなマイクロアレイの考え方を、多種類の生体分子−細胞間相互作用を迅速に計測するために応用する。この場合、きわめて多くの検体を同時に分析したり、分析に必要な生体分子および細胞の量をできる限り少なくするためには、マイクロアレイの集積化が重要である。しかし一方で、マイクロアレイ上の細胞に関する情報を取得する場合、ある程度以上の細胞数からなる集団を対象とした測定を行わない限り、誤差の大きいデータしか得ることができない。このような観点から、マイクロアレイを構成する各スポットの大きさは、少なくとも数十〜数千個程度の細胞が相互作用することのできる大きさであることが望ましく、例えば、円形のスポットの場合、その直径はおおよそ数μmから1mm程度である。
【0121】
マイクロアレイの作製には、マイクロコンタクトプリンティング法、光リソグラフィー法などの種々の方法を用いることが可能であるが、望ましくは、アルカンチオール単分子膜のマイクロパターン化表面を利用する方法である。
【0122】
本明細書において使用される用語「生体分子」とは、生体に関連する分子をいう。本明細書において「生体」とは、生物学的な有機体をいい、動物、植物、菌類、ウイルスなどを含むがそれらに限定されない。生体分子は、生体から抽出される分子を包含するが、それに限定されず、生体に影響を与え得る分子であれば生体分子の定義に入る。そのような生体分子には、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルライブラリ化合物など)、これらの複合分子などが包含されるがそれらに限定されない。本明細書において好ましい生体分子は、受容体および受容体フラグメント、ならびにそれらのリガンドである。
【0123】
本明細書において使用される場合、「ビオチンと特異的に結合する因子」とは、ビオチンと特異的に結合し得る任意の因子をいう。ビオチンと特異的に結合する因子とビオチンとの結合は、可逆的であっても、不可逆的であってもよい。ビオチンと特異的に結合する因子としては、アビジン、およびストレプトアビジン、ならびにこれらの改変体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
表面プラズモン共鳴(SPR)は、金属表面に生じた表面プラズモン(弾性波)と、全反射した電磁波によって発生するエバネッセント波(光波)との間で起こる相互作用である。プラズモン波とエバネッセント波の波数と波動ベクトルが近似的に一致する条件を与える光の入射角θにおいて共鳴が起こり、エバネッセント波が表面プラズモンの励起に使われるため反射光強度が低下する。表面プラズモン共鳴を得るためには、高屈折率媒体からなるプリズムを配置し(Kretschmann配置)、レーザー光およびLED光を入射する方法がとられる。ここで、プリズムとは反対側の金属表面に接触する媒体の誘電率の変化によって、プラズモン波の波数が変化する。すなわち、金属表面上に物質が接近することによって、表面プラズモン共鳴を与える光の入射角がシフトする。このことを利用して、金属表面の物質による被覆をセンシングすることが可能となる。この測定法は、表面鉛直方向の分解能に優れており(0.1nmのオーダー)、表面に存在する物質量をng〜pg/cmのオーダーでリアルタイムに観測することが可能である。また、水媒体中で測定できることもタンパク質のような生体分子の挙動を調べる上で大きな利点である。これを利用した測定装置が生体分子間相互作用測定装置として開発され、タンパク質およびDNAなどの相互作用の分析に応用されている。
【0125】
水晶発振子マイクロバランスは、周波数変換素子の電極上に化学的に結合対の一方を結合・固定化し、その周波数変換素子を水中に浸漬し、その結合対と対応する結合対との特異的に結合により生じる質量変化に伴う周波数変換素子の周波数変化を測定して、結合の有無を検出するものである(例えば、特開平6−94591)。この周波数変換素子としては、例えば水晶発振子、表面弾性波素子(SAW)などが挙げられる。
【0126】
本発明の受容体チップはまた、質量分析計のための質量分析チップとしても使用され得る。一般的に、質量分光測定による分析は、レーザービームを含む、レーザーなどの高エネルギー源を用いた少量のサンプルの気化およびイオン化を伴っている。物質はレーザービームによって、質量分析チップ先端の表面からガスあるいは気相に気化され、このプロセス中に、個々の分子の一部は陽子を取り込んで、イオン化される。これら正の電荷にイオン化された分子は、次に、短い高圧電界で加速され、高真空度チェンバーに導かれ(ドリフト)、その先で、感度の高い検出装置の表面に衝突する。飛行時間はイオン化された分子の質量の関数であるから、イオン化と衝突との間に経過する時間は、その分子の質量の判定に用いることができ、その分子質量は、次に特定の質量の既知の分子が存在しているかどうかの判定に用いることができる(飛行時間質量分光測定(TOF))。また、イオン化されたサンプルに含まれる特定の質量/電荷数(m/Z)のイオンだけが安定な振動状態になることを利用して、直流成分と高周波の交流成分の電圧を加えることにより、特定の質量/電荷数(m/Z)を有するイオンのみを通過させる質量フィルターを用いて(必要であれば、フラグメントイオンを生成させて)、サンプル(またはサンプルのフラグメントイオン)の質量/電荷数(m/Z)を検出することもできる(タンデム質量分析法)。
【0127】
気相イオンの生成方法としては、粒子のサンプルへの衝撃から得られる脱着/イオン化法などがある。この方法には、高速原子衝撃法(FAB−揮発性マトリクスに懸濁したサンプルに中性粒子(neutral)を衝撃する)、二次イオン質量分析法(SIMS−keV一次イオンが表面に衝撃して二次イオンを発生する)、液体SIMS(LSIMS−一次種がイオンであることを除いてFABと同様)、プラズマ脱着質量分析法(MeV一次イオンを用いることを除いてSIMSと同様)、大量クラスタ衝撃法(MCI−大きいクラスタの一次イオンを用いてSIMSと同様)、レーザ脱着/イオン化法(LDI−レーザ光を用いて、表面から種を脱着/イオン化する)、マトリクス補助型レーザ脱着/イオン化法(MALDI−脱着およびイオン化の事象を補助することができるマトリクスから種を脱着/イオン化することを除いてLDIと同様)などがある。代表的な質量分析法としては、レーザー脱着/イオン化、飛行時間質量分光測定(TOF)を用いる方法が挙げられる。
【0128】
質量分析計において、受容体のような親和性結合を行う分子を結合した質量分析チップを用いる測定方法は、例えば以下のように、特表平9−501489に開示される:
受容体を固定化した質量分析チップ面を、前記分析対象物分子(例えば、リガンドを含む混合物)の源にさらし、前記分析対象物分子が結合するようにするステップと;前記分析対象物分子が結合している質量分析チップ先端を、飛行時間質量分光測定器の一方の端に置き、真空および電場を与えて分光測定器内に加速電位を作るステップと;前記先端より前記分析対象物分子のイオンを脱着させるために、分光測定器内の、誘導された質量分析チップ先端面に結合している分析対象物の少なくとも一部分を、1つあるいはそれ以上のレーザーパルスを用いて、打つステップと;前記質量分光測定器内で、飛行時間によってイオンの質量を検出するステップと;このように検出された質量を表示するステップとから成る、方法。この方法において、質量分析チップに結合した分子(例えば、受容体に特異的に結合するリガンド)のイオンの質量を検出することができる。
【0129】
上記の方法において、レーザー脱着/イオン化、飛行時間質量分光測定法により、分析対象物分子の質量を測定することが可能であり、この方法においては、分析対象物の脱着およびイオン化を容易にするために、前記分析対象物と一緒にエネルギー吸収物質(例えば、シナピン酸、シンナムアミド、シンナミル臭化物、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、およびα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸)を用いることができる。
【0130】
質量分析計において、受容体のような親和性結合を行う分子を固定化した質量分析チップを用いるさらなる測定方法は、特表平11−512518に開示される。この開示される方法においては、一般にヒドロゲル、およびさらに詳細には、カルボキシメチル化デキストランなどの多糖のヒドロゲルを有する支持体表面に受容体のような親和性結合分子をチップに固定化し、その分析物(例えば、リガンド)をその支持体と接触させた後、親和性結合分子に結合した分析物の有無およびその質量等について解析する。
【0131】
本明細書において使用する受容体としては、レクチン様酸化LDL受容体(LOX−1)を含むスカベンジャー受容体、インスリン受容体ファミリーに属する受容体、EGF受容体ファミリーに属する受容体、PDGF受容体ファミリーに属する受容体、VEGF受容体ファミリーに属する受容体、FGF受容体ファミリーに属する受容体、NGF受容体ファミリーなどの増殖因子受容体、ならびに、TGF-βスーパーファミリー受容体、Toll-like受容体ファミリー、LDL受容体関連タンパク質ファミリー、およびGタンパク質共役型受容体ファミリーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
本明細書において、封入体として発現された受容体タンパク質のリフォールディングは、環状糖質サイクロアミロースとポリオキシエチレン系界面活性剤を含有する溶液中、または環状糖質サイクロアミロースとイオン性界面活性剤を含有する溶液中で行われる。本明細書において使用される環状糖質サイクロアミロース(CAと略す)の重合度の下限は17以上、好ましくは25以上、より好ましくは40以上であり、重合度の上限は150以下、好ましくは100以下、より好ましくは50以下である。
【0133】
本明細書において使用されるポリオキシエチレン系界面活性剤としては、一般式C2n+1(OCHCHOHと表され、通常Cと略記されるポリオキシエチレン系界面活性剤、好ましくはポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘプタメチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルまたはスクロース脂肪酸エステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
本明細書において使用されるイオン性界面活性剤としては、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(以下、CTABと略記することもある。)、ドデシル硫酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホン酸、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ミリスチルサルフォベタイン(以下、SB3−14と略記することもある。)などが挙げられ、特に、CTAB、SB3−14などのカチオン系、ないしは両性界面活性剤が望ましいが、これらに限定されない。
【0135】
正しい高次構造にリフオールディングする際に使用する特に好ましい界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルまたはスクロース脂肪酸エステル、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、デオキシコール酸ナトリウム、ミリスチルサルフォベタイン(SB3−14)等が挙げられる。
【0136】
界面活性剤を過剰量に添加することにより、ビオチン化タンパク質などを変性状態にしている物質を希釈すると共に、受容体同士の凝集を防ぐことができる。
【0137】
また、環状糖質としては、前記したように、重合度が17以上の環状α−1,4−グルカンなどを挙げることができる。
【0138】
スカベンジャー受容体ファミリーに所属するレクチン様酸化LDL受容体(Lectin−like oxidized LDL receptor:LOX−1)の一つであるヒト由来のLOX−1(hLOX−1と略記する)は、動脈硬化や高脂血症などの疾患の引き金となると考えられている変性LDLの1つである酸化LDLを認識し、結合する。
【0139】
さらに、アポトーシス細胞や老化赤血球などの異常な細胞、大腸菌(Escherichia coli)やブドウ球菌(Staphylococcus aureus)などの食中毒や感染症の原因となり得る細菌を認識することが知られている。これらリガンドの認識と結合には、細胞外領域が関係していることが明らかである上、リガンド結合に必須の最小領域としてC−タイプレクチン様領域(CTLDと略記することがある)が予想されていた。
【0140】
そこで本発明者らは、hLOX−1の細胞外領域もしくはCTLDをビオチン標識タンパク質として大腸菌内に凝集体として大量に蓄積させた後、変性剤により間違った構造を解きほぐし、さらに界面活性剤と環状糖質、例えば重合度17以上の高重合度シクロアミロース(以下、CAと略記することがある)によりリガンド認識能を有した正しい高次構造にリフォールドすることを検討した。
【0141】
また、リフォールディングしたビオチン化受容体をアビジンもしくはストレプトアビジンを介して方向性を保った状態で固相上に固定し、例えば表面プラズモン共鳴や水晶発振子マイクロバランスなどの原理を利用した検出機器のセンサー部位として利用し、変性LDLや異常細胞、細菌を簡便に検出することを検討した。
【0142】
その結果、hLOX−1の細胞外領域、もしくはリガンド認識領域(例えばCTLD)をコードする遺伝子と、大腸菌内でビオチン化を受けるポリペプチドをコードする遺伝子とのキメラ遺伝子を作製し、そのキメラ遺伝子を大腸菌用の発現ベクターに挿入し、その発現ベクターで大腸菌を形質転換した後、ビオチン存在下の誘導条件で培養し、菌体内にビオチン化細胞外領域もしくはビオチン化CTLDを不活性な凝集体として蓄積させた後、変性剤により間違った構造を解きほぐし、さらに変性状態にあるビオチン化タンパク質に、界面活性剤と環状糖質、例えば重合度が17以上の環状α−1,4−グルカンを作用させることによりリガンド認識能を有した状態に変換し、アビジンもしくはストレプトアビジンを介して検出機器の特性に応じた固相上に固定化することによって、本発明の課題が達成された。
【0143】
本発明の好適な実施様態においては、前記変性状態にあるビオチン化タンパク質は、微生物により不溶性の封入体として生産されたビオチン化スカベンジャ一受容体細胞外領域であり、かつその不溶性の封入体が変性剤により可溶化されたものである。さらに好適な実施様態においては、前記受容体細胞外領域は、ヒトhLOX−1の細胞外領域、もしくはCTLDである。これら実施態様において、本発明の受容体チップを用いて、変性LDL、アポトーシス細胞などの異常な細胞、並びに細菌を検出するセンサーとして利用する方法もまた、達成された。
【0144】
本発明はまた、変性状態にあるビオチン化受容体に過剰量の界面活性剤を添加することにより、受容体を変性状態にしている物質を希釈すると共に、ビオチン化受容体同士の凝集を防ぎ、次いで重合度が17以上の環状α−1,4−グルカンを添加し、その包接能を利用して前記界面活性剤を除き、ビオチン化受容体を正しい高次構造に戻し、リガンド認識能を有する正しい高次構造に戻し、センサーとして利用する方法をも教示する。
【0145】
従って、本発明により、変性LDL、アポトーシス細胞などの異常な細胞、細菌を簡便に検出する方浩、並びにそのための検出用センサーが提供される。
【0146】
本発明の方法では、はじめに、受容体のリガンド認識部位に関係する領域を細胞もしくは試験管で発現させる。ここで、受容体としてはLOX−1などのスカベンジャー受容体ファミリーが挙げられる。また、リガンド認識部位に関係する領域とは、例えば、細胞外領域またはリガンド認識嶺城、例えばCTLDを意味する。
【0147】
受容体のリガンド認識に関係する領域を細胞もしくは試験管内で発現させる揚合、hLOX−1の細胞外領域、もしくはCTLDをコードするDNA断片をPCR法による常法によって調製する。その際に、それらの両端に、発現させる宿主の発現ベクターに応じた制限酵素サイトを付加する。例えば、大腸菌で発現させる場合は、5’側にNruI、3’側にEcoRVの制限酵素サイトを付加することができる。
【0148】
PCR産物を抽出後、該当する組み合わせの制限酵素により処理した後、同様の制限酵素で処理済のクローニングベクターであるpBSに挿入し、遺伝子配列に誤りがないかDNAシークエンサーにより確認する。
【0149】
続いて、配列を確認した当該タンパク質をコードした遺伝子を、該当する制限酵素により切り出し、発現ベクターの制限酵素サイトに挿入する。ここで、発現ベクターとは、大腸菌の場合、大腸菌体内においてビオチン化を受けることが知られているポリペプチドをコ一ドしているプラスミドベクターPinpoint Xa(Promega社製)を用いることができる。次いで、発現宿主である大腸菌JM109に形質転換した後、正しく目的遺伝子を取り込んだ形質転換体を選抜する。
【0150】
さらに、発現ベクター中に挿入する際には、ビオチン化を受けるポリペプチドの配列を当該遺伝子配列の上流に入れ、ビオチン化ポリペプチドとの融合タンパク質として発現可能なようにする。
【0151】
なお、ビオチン化に関しては、目的プラスミドにより形質転換された大腸菌JM109のコロニーを最終濃度で100μg/m1のアンピシリン、並びに2μMのビオチンを含むLB培地5mIに接種し、37℃で一晩撹拝しながら培養する。続いて、この培養液を最終濃度で100μg/m1のアンピシリン、並びに2μMのビオチンを含む50m1のLB培地に0.5m1添加し、1時間培養したのち、最終濃度で100μMになるようにIPTGを添加し、目的融合タンパク質の発現を誘導し、さらに4時間撹拝しながら培養する。この操作により、目的とするタンパク質をビオチン化タンパク質として発現させることができる。
【0152】
大腸菌内に蓄積した受容体のリガンド認識に関係する領域の再構成は、第1段階として、不溶性画分に回収された受容体の細胞外領域またはリガンド認識領域を、最終濃度で40mMのDTTを含む6Mのグアニジン塩酸塩中で1時間処理し、間違った構造を解きほぐすことにより行う。続いて、第2段階として、70倍容量の0.05〜0.1%界面活性剤溶液(最終濃度で2mMのDL−cystineを含むPBS(−)(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)から、CaCl2,MgSOを除いたもの))を添加し、室温で1時間反応させる。
【0153】
この過程で、変性剤が希釈されると同時に、変性剤の希釈に伴う受容体同士の凝集は、添加した界面活性剤が受容体・界面活性剤複合体を形成することにより防止される。さらに、最終段階として、最終濃度で0.6%になるように3%のCA保存溶液を添加し、室温で1時間反応させる。CAは、受容体・界面活性剤複合体から界面活性剤を剥離する。この過程で受容体は正しい立体構造にリフォールディングされ、再構成受容体を得ることができる。
【0154】
前記で用いる変性剤としては、グアニジン塩酸塩、尿素などがあるが、間違った構造を完全に解きほぐす目的で、最終濃度で6Mのグアニジン塩酸塩を一般に用いる。また、間違って形成されているS−S結合を切断する目的で、変性剤溶液中には最終濃度で40mMのDTTを添加する。処理するタンパク質濃度は、10mg/m1程度である。封入体をPBS(−)(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)から、CaCl2,MgSOを除いたもの)に懸濁した後、最終濃度で40mMのDTTを含む最終濃度6Mのグアニジン塩酸塩を加え、室温で1時間反応させる。
【0155】
次いで、発現させたタンパク質を利用して酸化LDL等の変性LDL、アポトーシス細胞や老化赤血球などの異常な細胞、並びに細菌(例えば生体内に侵入した食中毒や感染症の原因となり得る細菌)を検出する。
【0156】
検出に際しては、前記の検出用センサーを調製するが、本発明の変性LDL、アポトーシス細胞などの異常な細胞、細菌を検出するセンサーの調製方法の好ましい態様では、受容体のリガンド認識部位に関係する領域をビオチン化タンパク質として細胞もしくは試験管で発現させることもできる。
【0157】
発現させたビオチン化タンパク質例えばhLOX−1の細胞外領域、CTLDを封入体として大腸菌内に蓄積させた後、上記したように、グアニジン塩酸塩などの変性剤を用いて間違った高次構造を解きほぐす。続いて、変性状態にあるビオチン化細胞外領域、並びにCTLDを過剰量の界面活性剤を添加することにより、ビオチン化タンパク質を変性状態にしている物質を希釈すると共に、受容体分子同士の凝集を防ぐ。
【0158】
次いで、環状糖質、例えば重合度が17以上の環状α−1,4−グルカンを添加し、その包接能を利用して前記界面活性剤を除き、正しい高次構造にリフォールディングし、リガンド認識能を有した状態に変換する。その後、アビジンもしくはストレプトアビジン等を介して方向性を保った状態でチップ、キュベット等の固相上に固定し、これをセンサー(すなわち、受容体チップ)として使用する。
【0159】
本発明者らは、受容体チップ中の目的とするセンサー部位を構築するに当たり、hLOX−1の細胞外領域、もしくはCTLDのみでも、変性LDL、異常細胞、並びに細菌などを結合し得ることを予想し、hLOX−1の細胞外領域、並びにCTLDを簡便、かつ安価に製造するための条件を確立した。
【0160】
さらに本発明者らは、製造した領域がセンサー部位として汎用性に富むためには、タンパク質などの相互作用を解析する全システムにおいて、アビジンもしくはストレプトアピジンを介した固定化を利用することが可能なことに着目し、固定化するタンパク質の領域をビオチン化タンパク質として調製した。
【0161】
そこで、hLOX−1の細胞外領域、またはCTLDをビオチン化タンパク質として発現可能な系として、ビオチン存在下において大腸菌内においてビオチン化を受けるポリペプチドとの融合タンパク質として発現させることを試みた。
【0162】
その結果、いずれのビオチン化タンパク質も過剰発現は可能であるが、不規則な凝集体(封入体)として大腸菌体内に蓄積するため、リガンド認識能を有した状態にリフォールディングする必要があることが明らかとなった。
【0163】
そこで次の段階として、封入体を形成したビオチン化タンパク質のリフォールディングを試みたところ、人工シャペロン法により良好にリフォールディングされることが明らかとなった。
【0164】
再構成したビオチン化細胞外領域、並びにビオチン化CTLDは、いずれもリガンド認識能が回復しており、センサーとして機能し得ることが示唆された。
【0165】
次に、再構成したビオチン化細胞外領域、並びにビオチン化CTLDが、実際にセンサー部位として機能し得るか検討するため、リガンドとの結合を数値として捕えることが可能なシステムに、アビジンもしくはストレプトアビジンを介して固定化した。そして、様々な種類のリガンドとの結合を検討した。
【0166】
その結果、酸化LDL、アセチル化LDLの場合、50ng/m1(10−11M)という低濃度でも十分に検出可能であることが明らかとなった。さらに、アポトーシス細胞、大腸菌(E.coli)、ブドウ球菌(S.aureus)等の細菌の検出も可能であることが明らかとなった。
【0167】
この検出方法に使用する検出機器としては、表面プラズモン共鳴、水晶発振子マイクロバランス、質量分析計など分子間相互作用解析に使用されている機器一般の適用が可能である。
【0168】
変性LDL、アポトーシス細胞等の異常な細胞、並びに細菌の検出を行う際には、先ずリフォールディングに成功したビオチン化領域、もしくはビオチン化CTLDを定量的な検出が可能な装置のセンサー部位に固定化する。表面プラズモン共鳴の原理を利用した装置で検出する場合には、装置の挿入部位の形状に適したチップやキュベット上にストレプトアビジン、もしくはアビジンを介してリガンド認識領域が外側を向くように固定化する。水晶発振子マイクロバランスにより検出する場合は、装置への挿入が可能な水晶発振子上にストレプトアビジン、もしくはアビジンを介してリガンド認識領域が外側を向くように固定化する。
【0169】
これらをそれぞれの検出機器に挿入し、変性LDL(酸化LDL、アセチル化LDL)、アポトーシス細胞(HL60をサイクロヘキシミドで処理することによりアポトーシスを誘導)、並びに細菌(E.coli、S.aureus等)を流路に流したり、添加したりして、その結合を測定する。表面プラズモン共鳴の原理を使用した機器の場合、リガンドの結合に伴うセンサー表面の屈折率の変化(レゾナンスユニット;RU〉として検出することとなる。水晶発振子マイクロバランスの原理を使用した機器の場合、重量負荷が増大するため、振動数(Hz)の減少として検出される。
【実施例1】
【0170】
以下に実施例等により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0171】
hLOX−1のビオチン化細胞外領域、並びにビオチン化CTLDの発現
本実施例では、hLOX−1の細胞外領域、並びにCTLDをビオチン化タンパク質として発現させる手法について検討した。
【0172】
(1)ビオチン化ポリペプチドとhLOX−1の細胞外領域、もしくはCTLDとの融合タンパク質発現系の構築
hLOX−1の細胞外領域、もしくはCTLDをコードするDNA断片はPCR法による常法により調製した。それらの両端には、5’側にNruI、3’側にEcoRVの制限酵素サイトを付加した。PCR産物を抽出後、両制限酵素により処理した後、クローニング用ベクターであるpBSに挿入し、遺伝子配列に誤りがないかDNAシークーエンサーにより確認した。hLOX−1の細胞外領域の塩基配列およびアミノ酸配列を配列表の配列番号1および2に、hLOX−1のCTLDの塩基配列およびアミノ酸配列を配列表の配列番号3および4に、それぞれ示す。配列を確認した当該タンパク質をコードした遺伝子を、制限酵素により切り出し、大腸菌内においてビオチン化を受けることが知られているポリペプチドをコードしているプラスミドベクターPinPoint Xa(Promega社製)の上記制限酵素サイトに挿入した。次いで、発現宿主である大腸菌JM109に形質転換した後、正しく目的遺伝子を取り込んだ形質転換体を選抜した。
【0173】
(2)ビオチン化タンパク質の誘導方法
目的プラスミドにより形質転換された大腸菌JM109のコロニーを最終濃度でで100μg/m1のアンピシリン、並びに2μMのビオチンを含むLB培地5m1に接種し、37℃で一晩撹拝しながら培養した。続いて、この培養液を最終濃度で100μg/m1のアンピシリン、並びに2μMのビオチンを含む50mlのLB培地に1:100(容量比)の割合で接種し、1時間培養した後、最終濃度で100μMになるようにIPTGを添加し、目的融合タンパク質の発現を誘導し、さらに4時間撹拝しながら培養した。
【0174】
(3)ビオチン化細胞外領域、ピオチン化CTLDの検出と発現状態の確認
上記誘導処理後の培養液100μ1を1.5m1の遠心チューブに入れ、15,000rpmで数分間遠心し、菌体を回収した。回収した菌体を超音波処理にて破砕後、20,000gで30分間遠心して得られた上清(可溶性面分)と沈殿(不溶性面分)をそれぞれSDSサンプルバッファーに懸濁し、95℃で4分間処理した。次いで、12%のSDS−PAGEにてタンパク質を分離した後、ニトロセルロース膜に電気的に転写した。
【0175】
転写後のニトロセルロース膜は、ポンソーSによる染色で、タンパク質バンドの位置を確認した後、TBS−Tween(20mMTris、150mM NaCl、pH7.6、0.1%Tween20)中にて室温で穏やかに60分間攪拌した。次に、ストレプトアビジン標識アルカリフォスファターゼ中にて室温で30分間反応させた。続いて、反応後のニトロセルロース膜をTBS−Tweeenにて洗浄した後、アルカリフォスファターゼの基質であるNBT/BCIP溶液を添加し、ビオチン化タンパク質のバンドが検出されるまで室温で反応させた。その結果、不溶性画分には、ビオチン化細胞外領域、およびビオチン化CTLDの分子量に相当する位置にビオチン化タンパク質の顕著なバンドが検出された。
【実施例2】
【0176】
ビオチン化細胞外領域、ビオチン化CTLDの可溶性タンパク質への再構成
大腸菌で発現させたビオチン化細胞外領域、ビオチン化CTLDは、可溶性画分には存在せず、ほとんどが封入体として蓄積されていることが明らかとなった。そこで、封入体からビオチン化細胞外領域、ビオチン化CTLDを人工シャペロン法によりリフォールディングすることを試みた。
【0177】
封入体を最終濃度40mMのDTTを含む6Mのグアニジン塩酸塩溶液で室温にて1時間処理し、間違った構造を完全に解きほぐした。続いて、70倍容量の界面活性剤溶液(0.1%CTABもしくはSB3−14、最終濃度で2mMのDL−cystineを含むPBS(−)溶液)を添加し、室温で1時間反応させた後、反応液24m1を取り出し、3%CA溶液6m1を加えさらに1時間室温で反応させた。
【0178】
この溶液を20,000gで10分間遠心し、得られた上清(可溶性画分)をリフォールディング溶液とした。ビオチン化細胞外領域、CTLDの存在を確認したところ、80%以上が可溶性面分に回収されていることが確認され、効率的にリフォールディングされていることが示された(図2)。
【0179】
リフォールドされたビオチン化細胞外領域、ビオチン化CTLDをストレプトアビジンビーズ上に固定化し、リガンドの一つであるアセチル化LDLを蛍光標識したDiIAcLDLの結合を確認したところ、リフォールディングしたビオチン化細胞外領域、もしくはビオチン化CTLD領域を固定化したビーズ上に蛍光が観察され、どちらもリガンド結合能を回復していることが示された。
【実施例3】
【0180】
リフォールディングに成功したビオチン化細胞外領域、もしくはビオチン化CTLDを変性LDLなどを検出するセンサーとして使用する目的で、表面プラズモン共鳴により検出が可能な機器のセンサー部位へ各ビオチン化タンパク質を固定化し、実際のリガンドの結合を検討した。表面プラズモン共鳴装置としては、BIACORE杜製のBIACORE、並びに株式会社日立ハイテクノロジーズ製のIAsysを使用した。
【0181】
(1)再構成ビオチン化細胞外領域をBIACOREのストレプトアビジンセンサーチップ上に、リガンド認識に関わる部分が外側を向くように固定化した。これをBIACORE本体に挿入後、変性LDL(酸化LDLおよびアセチル化LDL)との結合を測定した。表面プラズモン共鳴の原理を利用した機器の場合、リガンドの結合をレゾナンスユニット:RUの増加として検出することになる。種々の濃度の変性LDLの結合を検討したところ、変性LDLの濃度が50ng/m1(10−11M)でも十分に検出可能であることが示された(図3)。
【0182】
(2)再構成ビオチン化受容体をIAsysのビオチンキュベット上に、ストレプトアビジンを介してリガンド認識に関わる部分が外側を向くように固定化した。これをIAsys本体に挿入後、変性LDL(酸化LDLおよびアセチル化LDL)との結合を測定した。その結果、BIACOREで得られた結果と同様に、変性LDLの濃度が50ng/ml(10−11M)でも十分にに検出可能であることが示された。
【0183】
(3)再構成ビオチン化受容体をIAsysのビオチンキュベット上に、ストレプトアビジンを介してリガンド認識に関わる部分が外側を向くように固定化した。これをIAsys本体に挿入後、細菌(大腸菌(E.coii)およびブドウ球菌(S.aureus))との結合を測定した。その結果、グラム陰性菌である大腸菌、並びにグラム陽性菌であるブドウ球菌のいずれも結合することが確認された。
【0184】
(4)再構成ビオチン化受容体をIAsysのビオチンキュペット上に、ストレプトアビジンを介してリガンド認識に関わる部分が外側を向くように固定化した。これをIAsys本体に挿入後、アポトーシスを誘導させたHL60との結合を測定した。
【0185】
その結果、アポトーシスを誘導していない健康なHL60には結合しないが、アポトーシス誘導細胞には結合することが確認された。
【実施例4】
【0186】
リフォールディングに成功したビオチン化細胞外領域、もしくはビオチン化CTLDを変性LDLなどを検出するセンサーとして使用する目的で、水晶発振子マイクロバランスにより検出が可能な機器のセンサー部位へ各ビオチン化タンパク質を固定化し、実際のリガンドの結合を測定した。装置としては、Intium社製のAffinixQを使用した。
【0187】
(1)再構成ビオチン化受容体を水晶発振子上に、ストレプトアビジンを介してリガンド認識に関わる部分が外側を向くように固定化した。これを装置に挿入後、変性LDL(酸化LDLおよびアセチル化LDL)との結合を測定した。その結果、変性LDLの濃度が50ng/ml(10−11M)でも充分に検出可能であることが示された(図4)。
【0188】
(2)再構成ビオチン化受容体を水晶発振子上に、ストレプトアビジンを介してリガンド認識に関わる部分が外側を向くように固定化した。水晶発振の原理を利用した機器の場合、リガンドが結合すると、重量負荷が増加するため、振動数(Hz)の減少として検出される。装置に挿入後、細菌(大腸菌(E.co1i)およびブドウ球菌(S.aureus))との結合を測定した。その結果、グラム陰性菌である大腸菌、並びにグラム陽性菌であるブドウ球菌のいずれも結合することが確認された(図5、6)。なお、図5、6中の矢印は細菌の添加時期を示す。
【0189】
(3)再構成ビオチン化受容体を水晶発振子上に、ストレプトアビジンを介してリガンド認識に関わる部分が外側を向くように固定化した。これを装置に挿入後、アポトーシスを誘導させたHL60との結合を測定した。その結果、アポトーシスを誘導していない健康なHL60は結合しないにもかかわらず、アポトーシス誘導細胞は結合することが確認された(図7)。図7中の矢印はアポトーシス細胞の添加時期を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−103718(P2009−103718A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27924(P2009−27924)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【分割の表示】特願2003−304624(P2003−304624)の分割
【原出願日】平成15年8月28日(2003.8.28)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】