説明

ビオチン残基を含む抗血栓性デュアルインヒビター

【課題】手術の終わりに抗血栓/抗凝血活性を停止出来る抗血栓/抗凝血薬に対する中和剤の提供。
【解決手段】五糖が直接的トロンビン阻害剤に結合した抗血栓性化合物に下記基


を結合または導入した抗血栓性デュアルインヒビターに対するアビジン又はストレプトアビジンを含む中和剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビオチン残基またはビオチン誘導体を含む新しい抗血栓性デュアルインヒビター、これらの調製方法、これらの化合物を活性成分として含有する医薬組成物、ならびに医薬の製造のための前記化合物の使用、に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘパリンと比較して同様のまたはより優れた抗血栓性を示す合成活性医薬物質の研究における最近の進歩は、例えば国際公開第99/65934号および国際公開第01/42262号に記載されているような新しいデュアルインヒビターの設計をもたらした。これらの化合物は一般に、本質的に薬理学的に不活性なスペーサーによってオリゴ糖残基を、直接的トロンビン阻害剤に結合した共役体である。分子内のオリゴ糖残基は、アンチトロンビンIII(AT−III)介在抗Xa活性を示す。従って、新しい共役体は、抗血栓性および抗凝血性のデュアルアクティビティーを示す。
【0003】
デュアルインヒビターの新しい分類の優れた例には、五糖が直接的トロンビン阻害剤に結合したコード名Org42675で示される化合物があるが、この化合物は、以下の構造:
【0004】
【化1】

を有する。実験的血栓症の研究は、この化合物が強力な抗凝血性および抗血栓性に加えて、血栓結合のトロンビンの活性をも阻害することを実証した。さらに、Org42675は、閉塞性動脈血栓の血栓溶解に続く、血栓再閉塞の予防において高度に有効であると考えられる。この化合物は、対応する、NAPAPから誘導される非共役型直接的トロンビン阻害剤と比較して10倍長い半減期を示す。アルガトロバン、ヘパリンおよびフォンダパリヌクスと比較して、Org42675は、改善された有効性を示した(Journal of Thrombosis and Haemostasis, Volume 1, Issue 9, Page 1945 , 2003)。新しいデュアルインヒビターの臨床的可能性は、大きいと考えられ、従って、臨床試験がすでに開始されている。
【0005】
予防措置として、抗凝血治療および抗血栓治療の分野内において、用いられる抗凝血薬または抗血栓薬の活性を効果的に中和または最小化することができる解毒薬に対する必要性が存在する。なぜなら、これは、治療中の患者において、いずれかの不慮の原因により出血が引き起こされ得ることはよく知られているからである。さらに、抗血栓治療または抗凝血治療中の患者に外科的な介入が必要とされ得る。また、いくつかの外科的手順の間、血液凝固を防止するために抗凝血薬を高い投与量で用いることができるが、手術の終わりにそれらを中和する必要がある。従って、いかなるときでも抗血栓/抗凝血活性を停止するために中和することができる抗血栓/抗凝血薬を入手するのは、好都合である。米国特許出願公開第2004/0024197号明細書において、緊急の場合に一定の多糖類の抗血栓活性を、これらの多糖類が少なくとも1つのビオチンまたはビオチン誘導体との共有結合を含有する場合、アビジンを用いて低減することができることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第99/65934号
【特許文献2】国際公開第01/42262号
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0024197号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Journal of Thrombosis and Haemostasis, Volume 1, Issue 9, Page 1945 , 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、国際公開第99/65934号および国際公開第01/42262号に記載されているデュアルインヒビターから誘導される新規の中和可能なデュアルインヒビターに関する。本明細書中では「BT」(これは、ヘキサヒドロ−2−オキソ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−ペンタン酸から誘導される。好ましくはD(+)−異性体)と呼ぶ基である一定のビオチン「標識」:
【0009】
【化2】

またはこの類似体を、国際公開第99/65934号および国際公開第01/42262号に記載されている化合物の構造中に結合するまたは導入することができ、これにより中和可能なデュアルインヒビターが得られる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、式(I):
【0011】
【化3】

[式中、オリゴ糖は2から25単糖単位を含む負荷電のオリゴ糖残基であり、前記荷電は、正荷電の対イオンにより相殺され、前記オリゴ糖残基は、それ自体が(AT−III介在性)抗Xa活性を有するオリゴ糖から誘導され;
スペーサーは、10から70原子の鎖長を有する、本質的に薬理学的に不活性な屈曲性連結残基であり;
Aは、残基−CH[NH−SO−R][CO−NR−CH(4−ベンズアミジン)−CO−NR]{式中、Rは、フェニル、ナフチル、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、(イソ)キノリニル、テトラヒドロ(イソ)キノリニル、3,4−ジヒドロ−1H−イソキノリニル、クロマニルまたは樟脳基であり、これらの基は(1−8C)アルキルまたは(1−8C)アルコキシから選択される1つ以上の置換基で場合により置換されていてよく、RおよびRは独立してHまたは(1−8C)アルキルであり;Rは(1−8C)アルキルまたは(3−8C)シクロアルキルであり;またはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒に、もう1つのヘテロ原子を場合により含有する非芳香族(4から8)員環を形成し、この環は(1−8C)アルキルまたはSO−(1−8C)アルキルで場合により置換されている。}である。]
の化合物であり、ここで、前記式Iの化合物が、さらに、ビオチン残基またはこの類似体との少なくとも1つの共有結合を含む、前記化合物、またはこれらの薬学的に許容できる塩、プロドラッグまたはこれらの溶媒和物に関する。
【0012】
本発明の化合物は、デュアルインヒビターであり、これは、非介在性直接的アンチトロンビン(IIa因子)活性および抗トロンビンIII(AT−III)介在性抗Xa活性の両方の調整可能な混合プロフィールを有する。本発明の化合物の混合プロフィールは、オリゴ糖残基の性質および直接的トロンビン阻害剤(NAPAP類似体)の効力を変化させることにより調整することができる。これにより、一連のプロフィールが入手可能である。本発明の化合物は、長い血漿中半減期を有し、その結果、本発明の化合物は従来の文献に報告されているNAPAPまたはこの誘導体と比較して延長されたアンチトロンビン活性を有する。また、本発明の化合物は、血小板第4因子(PF4)の中和作用を免れることができる。低毒性もまた、本発明の化合物の有利な態様である。
【0013】
本発明の化合物は、トロンビン介在性のおよびトロンビン関連の疾患の治療および予防に対して有用である。これは、凝固カスケードが活性化される、多くのトロンビン状態およびプロトロンビン状態を含み、これらは、深部静脈血栓症、肺塞栓症、血栓性静脈炎、血栓症または塞栓症由来の動脈閉塞、血管形成術または血栓溶解の期間中または期間後の動脈再閉塞、動脈損傷または侵襲的心臓病学的措置後の再狭窄、術後の静脈血栓症または塞栓症、急性または慢性の粥状動脈硬化症、発作、心筋梗塞、癌および転移、ならびに神経変性疾患を含むが、これらに限定されるものではない。本発明の化合物はまた、透析および外科手術において必要なものとして、体外血液回路における抗凝血薬としても用いることができる。本発明の化合物はまた、インビトロでの抗凝血薬としても用いることができる。
【0014】
本発明の化合物におけるビオチン標識(またはこの類似体)は、特定の解毒薬であるアビジン(The Merck Index,Twelfth edition,1996,M.N. 920,pages151−152)またはストレプトアビジン(これは、ビオチンに対して大変高い親和性を有し、それぞれの質量が、約66000および60000Daに等しい、2つの四量体タンパク質である。)に速やかに認識され、該特定の解毒薬に結合する。従って非常の場合には、デュアルインヒビターの作用は、アビジンまたはストレプトアビジンを用いて、例えばこれらを含有する医薬溶液の注射によりすばやく中和することができる。高いビオチン親和性を有するアビジンおよびストレプトアビジンの類似体も、同様に用いることができる。得られた不活性な解毒薬−阻害剤複合体は、血液循環から取り除かれる。
【0015】
本発明による標識として用いることができるビオチン類似体は、例えばヘキサン酸6−ビオチンアミド、ヘキサン酸6−(6−ビオチンアミドヘキサンアミド)および2−ビオチンアミドエタンチオールなどの、Pierce社カタログ(1999−2000、62から81ページ)に記載されているビオチン類似体から選択できるが、これらに限定されるものではない。このような類似体において、ビオチン残基BTは、前記で定義したように分子の特徴的な部分である。他の類似体は、例えばビオチンアミド結合部位でアルキル化(ここで、アルキルは、(1−4C)アルキル、好ましくはメチルである。)され、ビオチニダーゼ分割(Bioconjugate Chem.,Vol.11,2000,569−583;Bioconjugate Chem.,Vol.11,2000,584−598)に対して安定なビオチン類似体、またはBioconjugate Chem.,Vol.12,No.4,2001,616−623に記載されているようなビオチンアミド結合のα位に、例えばヒドロキシメチレン、カルボキシレート、またはアセテートを含む他のビオチン類似体である。
好ましいビオチン類似体の残基は、式:−(NH−CO)−(CH−NR−BT(式中、nは0または1(特にnは、0である。)であり、pは4または5(特にpは、4である。)であり、R=Hまたは(1−4C)アルキルであり、BTは前記に定義した通りである。)を有する。好ましい実施形態において、RはHである。
【0016】
対応する非ビオチン化化合物との比較研究において、本発明のデュアルインヒビターへのビオチン標識の導入が、本質的にこれらの直接的トロンビン阻害効力もこれらのアンチトロンビンIII(AT−III)介在性の抗Xa因子活性も妨害しないことが見いだされた。また、式Iの化合物の抗血栓活性は、アビジンまたはストレプトアビジンの投与時に(本質的に)完全に中和される。
【0017】
いずれかの2から25単糖単位の負荷電のオリゴ糖残基は、本発明の化合物において使用可能である。適した本発明の化合物は、オリゴ糖が硫酸化オリゴ糖残基である化合物である。好ましくは、オリゴ糖残基は、欧州特許出願公開第0,454,220号明細書、欧州特許出願公開第0,529,715号明細書、国際公開第97/47659号、第98/03554号、第99/36443号および第99/36428号に開示されているオリゴ糖などの、それ自身(AT−III介在性)抗Xa活性を有するオリゴ糖から誘導される。さらに好ましいのは、2から16、特に2から6単糖単位を有するオリゴ糖残基である。最も好ましくは、オリゴ糖は、硫酸化五糖残基である。好ましい五糖残基は、式(II):
【0018】
【化4】

(式中、Rは、独立してビオチン残基もしくはこの類似体、OSOまたは(1−8C)アルコキシである。)、
を有する。好ましい五糖残基において、硫酸基の総数は、4、5、6または7である。
【0019】
好ましい本発明による化合物は、五糖残基が構造:
【0020】
【化5】

(式中、Rは、OCHまたはOSOである。)
を有する、化合物である。
【0021】
特に好ましい五糖残基は、
【0022】
【化6】

である。
【0023】
さらに好ましい本発明の化合物は、式I:(式中、Rは、メチルまたはメトキシから選択される1つ以上の置換基で場合によって置換されていてもよいフェニルまたはナフチルである。)の化合物である。より好ましくは、Rは、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニルである。好ましい化合物において、NRは、ピペリジニル基をあらわす。好ましくは、RはHである。
【0024】
スペーサーは、本質的に薬理学的不活性な屈曲性連結残基であり、好ましくは、該スペーサーは、オリゴ糖残基の酸素を含めないでスペーサーの「主鎖」に沿って数えて10から50原子を有する。さらに、好ましいのは、13から25原子の長さであり、好ましくは16から22原子の長さであり、最も好ましくは19原子の長さである。
スペーサーの化学的性質は、本発明の化合物の抗血栓活性にとってあまり重要ではない。スペーサーは、環構造および不飽和結合などの(いくらか)強固な要素を含むことができる。高度に屈曲性のスペーサーは、他のものよりも、より適する。適したスペーサーは、当業者により容易に設計され得る。合成上の理由により、より長いスペーサーは、より不適切と考えられるが、それでも、より長いスペーサーは、本発明の化合物において首尾よく適用することができる。好ましいスペーサーは、少なくとも1つの−(CHCHO)−要素を含む。
【0025】
本発明による好ましい化合物はビオチン残基またはこの類似体との1つの共有結合を含む。
ビオチン(またはこの類似体)標識は、式Iの化合物のあらゆる部分において存在し得る。従って、本発明の実施形態は、(a)式Iの化合物のオリゴ糖残基が、ビオチン残基またはこの類似体との共有結合を含み、(b)式Iの化合物のスペーサーが、ビオチン残基またはこの類似体との共有結合を含み、および(c)式Iの化合物の残基Aがビオチン残基またはこの類似体との共有結合を含む(これは、Aの定義における水素原子または置換基がビオチン残基により置換されていることを意味する。)、化合物である。
【0026】
本発明のビオチン化デュアルインヒビターの代表例としては、
【0027】
【化7】

および
【0028】
【化8】

ならびにこれらの塩類ばかりでなく、式Iの化合物:(式中、スペーサーが、もう1つの部位でオリゴ糖に結合している。)および/またはビオチン(類似体)残基が分子の他の部位に存在する化合物、を挙げることができる。好ましいのは、ナトリウム塩である。
式IIIの化合物は、本発明の1つの好ましい例である。
【0029】
式(I)の化合物の記載において、以下の定義が用いられる。
用語「(1−4C)アルキルおよび(1−8C)アルキル」は、各々1から4および1から8の炭素原子を有する分枝したまたは分枝していないアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ヘキシルおよびオクチル)を意味する。メチルおよびエチルは、好ましいアルキル基である。
用語「(1−8C)アルコキシ」は、アルキル部分が前記で定義した意味を有する、1から8の炭素原子を有するアルコキシ基を意味する。メトキシは、好ましいアルコキシ基である。
用語「(3−8C)シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチルである3から8の炭素原子を有するシクロアルキル基を意味する。シクロペンチルおよびシクロヘキシルは、好ましいシクロアルキル基である。
スペーサーの長さは、スペーサーに結合しているオリゴ糖残基の酸素原子は数に入れずに、オリゴ糖残基と分子のペプチド部分との間の最も短い鎖に沿って数えたスペーサーの原子数である。
用語「プロドラッグ」は、例えばアミジノ部分のアミノ基が、例えばヒドロキシまたは(1から6C)アルコキシカルボニル基により保護された本発明の化合物を意味する。
本発明による溶媒和物は、水和物を含む。
【0030】
ビオチン残基を式Iの化合物に結合させる合成方法に関して、化学文献は、利用することができるいくつかの可能性を提供し、これにより、当業者によく知られている一連の保護基が、使用され得る。例えば活性化エステル、マレイミド、ヨードアセチルまたは一級アミン型の反応性基を含むビオチン残基は、好ましくはアミン官能基、またはチオール官能基、またはカルボン酸官能基、またはアルデヒド官能基と反応させるが、該反応は、文献(Savage et al.,Avidin−Biotin Chemistry:A Handbook;Pierce Chemical Company,1992を参照のこと)に記載された条件に従って行われる。
ビオチン残基は、例えば(負荷電の)オリゴ糖残基に直接に結合させることができるし、または場合によりオリゴ糖−スペーサー残基のN−(1−4C)アルキル化アミノ官能基を介してまたは場合によりN−(1−4C)アルキル化アミノ酸残基を介して、場合により式Iの化合物のオリゴ糖残基のN−(1−4C)アルキル化アミン官能基に結合させることができる。
【0031】
本発明のもう1つの態様において、ビオチン残基は、例えば残基Aに直接に結合させることができ、または場合により連結残基のN−(1−4C)アルキル化アミノ官能基を介してまたは場合によりN−(1−4C)アルキル化アミノ酸残基を介して、場合により式Iの化合物の残基AのN−(1−4C)アルキル化アミン官能基に結合させることができる。
【0032】
さらに本発明のもう1つの態様において、ビオチン残基は、例えば第1に残基Aに直接結合させるか、または場合により式Iのスペーサーの一部のN−(1−4C)アルキル化アミノ官能基を介してまたは場合によりN−(1−4C)アルキル化アミノ酸残基を介して場合により式Iの化合物の残基AのN−(1−4C)アルキル化アミン官能基に結合させ、および第2にオリゴ糖に直接結合させるか、または場合により式Iのスペーサーの一部分のN−(1−4C)アルキル化アミノ官能基を介してまたは場合によりN−(1−4C)アルキル化アミノ酸残基を介して場合により式Iの化合物の(負荷電の)オリゴ糖のN−(1−4C)アルキル化アミン官能基に結合させることにより、あるいは逆もまた同様にして、段階的に導入することができる。
【0033】
本発明のもう1つの態様において、場合により、[Bioconjugate Chem.,Vol.12,No.4,2001,616−623]に記載されているようなN−アルキル化アミノ酸残基またはα−N−置換(β−)アミノ酸類似体を、当分野で知られている方法を用いペプチド結合により導入することができる。アジド基は、それに続くビオチン残基の導入のために式Iの化合物の前駆体中に用いることのできる、適した潜在的なアミン官能基である。
【0034】
式Iの化合物の好ましい調製方法は、残基Aにおけるベンズアミジン部分が、前駆体、好ましくは1,2,4−オキサジアゾリン−5−オン基の形態であり、ついでこれを脱保護、特に水素化によりベンズアミジンに転換する段階を含む(Bolton,R.E. et al,Tetrahedron Letters,Vol36,No.25,1995,pp 4471−4474)。
【0035】
本発明の化合物はさらに、NAPAP(またはNAPAP類似体)を、一般に当分野で知られている方法を用いて、グリシン部位において、システインまたはリジンまたはアスパラギン酸で誘導体化し、ついでこの化合物を、(a)オリゴ糖−スペーサー残基に結合させ、または(b)スペーサーに結合させ、次にこれをチオール官能基またはカルボン酸官能基で誘導体化し、その後オリゴ糖残基とカップリングさせることによって調製する。この目的のために、例えば文献(例えば、欧州特許出願公開第0,454,220号明細書および欧州特許出願公開第0,529,715号明細書であるが、これらの出所に限定されない)に公知のオリゴ糖類または市販のオリゴ糖類などのいずれかの適したオリゴ糖が、使用され得る。オリゴ糖へのスペーサーの結合は、例えば欧州特許出願公開第0,649,854号明細書に記載されている方法を用いて実施することができる。
【0036】
本発明の化合物を調製するための上記方法における1つの手順段階であるペプチド結合は、ペプチド断片の結合(または縮合)のための当分野で一般に知られている方法(アジド法、混合酸無水物法、活性エステル法、カルボジイミド法など)により、または好ましくはTBTUのようなアンモニウム/ウロニウム塩の影響下で、特にN−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシベンゾトリアゾールおよび7−アザ−N−ヒドロキシベンゾトリアゾールのような触媒作用のおよびラセミ化抑制化合物の添加で実施することができる。概要は、The Peptides,Analysis,Synthesis,Biology,Vol 3,E.Gross and J.Meienhofer,eds.(Academic Press,New York,1981)およびPeptides:Chemistry and Biology,N.Sewald and H.−D.Jakubke(Wiley−VCH,Weinheim,2002)に記載されている。
【0037】
化合物内に存在するアミン官能基は、N−保護基による合成手順の間に保護することができるが、このN−保護基は、tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)基、ベンジルオキシカルボニル(Z)基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基またはフタロイル(Phth)基のようなα−アミノ基の保護のためにペプチド化学において一般に用いられる基を意味する、またはアジド部分のデマスキングにより導入することができる。アミノ保護基およびそれらを除去するための方法の概要は、上記のThe Peptides,Analysis,Synthesis,Biology,Vol 3およびPeptides:Chemistry and Biologyに記載されている。
【0038】
本発明の化合物は、遊離塩基の形態で生じ得、薬学的に許容できる塩の形態で反応混合物から単離することができる。薬学的に許容できる塩類はまた、式(I)の遊離塩基を、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、アスコルビン酸などの有機または無機酸で処理することにより得ることもできる。
【0039】
本発明の化合物またはこれらの中間体は、不斉炭素原子を有し、従って、純粋な鏡像異性体、または鏡像異性体の混合物、またはジアステレオマーを含む混合物として得ることができる。純粋な鏡像異性体を得る方法は、当分野において周知であり、これらは、例えば光学活性酸およびラセミ混合物とから得られる塩の結晶化、またはキラルカラムを用いるクロマトグラフィーである。ジアステレオマーに関しては、順相または逆相のカラムを用いることができる。
【0040】
本発明の化合物は、経腸的にまたは非経口的に投与することができる。これらの化合物およびこれらの組成物の正確な投与量および投与計画は、医薬が投与される予定の個々の患者の必要性、苦痛の程度または医師の必要性および判断によって必然的に決まる。一般に、非経口投与法は、吸収により多く依存する他の投与方法よりも低めの投与量を必要とする。しかしながら、ヒトに対する一日量は、好ましくは0.001から100mg/体重kgであり、より好ましくは0.01から10mg/体重kgである。
【0041】
本発明の化合物を用いて製造される医薬は、急性の抗凝固療法におけるアジュバントとしても用いることができる。このような場合、本医薬は、このような症状の治療に有用な他の化合物と共に投与される。
【0042】
例えば、標準的な参照文献である、Gennaro et al.,Remington’s Pharmaceutical Sciences(18th ed.,Mack Publishing Company,1990,特にPart 8:Pharmaceutical Preparations and Their Manufactureを参照のこと)中に記載されているような、薬学的に適した補助剤と混合して、本化合物は、例えばピル、錠剤などの固体の投与単位に圧縮するか、またはカプセルもしくは座剤に加工することができる。薬学的に適した液体を用いて、化合物は、例えば注射製剤として用いるために、または例えば点鼻スプレーなどのスプレーとして用いるために溶液、懸濁液、乳濁液の形態で投与することもできる。
【0043】
例えば錠剤などの投与量単位を製造するために、充填剤、着色剤、ポリマー結合剤などの通常の添加剤の使用が考えられる。一般に、活性化合物の機能を妨害しないいずれかの薬学的に許容できる添加剤も用いることができる。組成物を共に用いて投与することのできる適した担体は、適した量で用いられるラクトース、デンプン、セルロース誘導体などまたはこれらの混合物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のビオチン化化合物III(「ビオチン」)の100nmol/kgを皮下投与した後の抗Xa因子または抗IIa因子活性の測定により決定される平均血漿中濃度を示す図である。また、Org42675(「オリジナル」)の血漿中濃度は、抗Xa因子活性の測定後に得られる。
【図2】100nmol/kgの化合物の皮下投与後の平均血漿中濃度±標準誤差を示す図である。t=2hの時点でアビジン(10mg/kg)を、本発明の化合物III(「ビオチン」)またはOrg42675(「オリジナル」)で処理したラットに静脈内投与した。本発明の化合物IIIの薬物動態学的挙動は、オリジナル化合物の挙動とは対照的に、アビジンの投与により影響を受ける。
【0045】
本発明は、さらに以下の実施例によって例示される。
【0046】
(実施例)
使用した略語
Aq.=水性の
ATIII=アンチトロンビンIII
Boc=tert−ブチルオキシカルボニル
DCM=ジクロロメタン
DiPEA=N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMF=N,N−ジメチルホルムアミド
Et=エチル
fmoc=9−フルオレニルメトキシカルボニル
NMM=N−メチルモルホリン
Me=メチル
sat.=飽和した
PRP=多血小板血漿
PPP=貧血小板血漿
RT=室温
TBTU=テトラフルオロホウ酸2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム
TFA=トリフルオロ酢酸
TΗF=テトラヒドロフラン
【実施例1】
【0047】
図式1
ε−(D−(+)−ビオチニル)−N−{4−[[4−[[(1R)−1−[[4−(1,2,4−オキサジアゾール−5−オニル)フェニル]メチル]−2−オキソ−2−(1−ピペリジニル)エチル]アミノ]−3−[[(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニル)スルホニル]アミノ]−1,4−(S)−ジオキソ−ブチル]アミノ]−ブタノイル}−L−リジン(3)
国際公開第01/42262号に記載されているようにして調製された化合物2(0.20g,0.27mmol)をDCM(10mL)中に溶解した。DiPEA(0.14mL,0.81mmol)を加え、ついでTBTU(86mg,0.27mmol)を加えた。窒素雰囲気下で1時間撹拌後、化合物1(Nε−fmoc−Lys−OH,0.27mmol,Fluka)を固体として加えた。DMF(5mL)を加えて(Nε−fmoc−Lys−OHを溶解した。混合物を16時間撹拌し、0.5N HCl溶液中に注いだ。溶液をDCM(3×)で抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)し、減圧下(850mbar,45℃)で濃縮した。粗生成物を、シリカカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH/AcOH,99/0/1→89/10/1,v/v/v)で精製した。残ったAcOHはトルエン中で繰り返し濃縮して除去した。さらに精製をHPLCクロマトグラフィー(ACN/HO/0.1N TFA,20:78:3→95:2:3)で完成させて、純粋な化合物の0.15g(53%)を得た。TLC:Rf0.5(DCM/MeOH/AcOH,90/9/1,v/v/v)。LC−MS:m/z1089[M+H]1+
fmoc保護中間体(0.15g,0.14mmol)をTHF(5mL)中に溶解し、EtNH(2mL)を加えた。混合物を45℃で45分間撹拌した。溶液を減圧下で濃縮し、トルエン中で濃縮した。ESI−MS:m/z857[M+H]1+
ε−脱保護リジン誘導体(0.14mmol)をDMF(3mL)中に溶解し、窒素雰囲気下で1時間撹拌しておいたD−(+)−ビオチン(34mg,1当量)、TBTU(45mg,1当量)およびDiPEA(61uL,2.5当量)のDMF(4mL)中の溶液に加えた。得られた混合物を16時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去した。EtOAc(30mL)を加え、撹拌した。固形生成物3を濾過により収集し、MeOHおよびEtOAcで洗浄し、真空中で乾燥した。収量86mg(57%)。Rf0.15(DCM/MeOH,9/1,v/v)。ESI−MS:1083.6[M+H]
【0048】
化合物IIIおよびIVの一般的調製方法
カルボン酸誘導体(33μmol)(すなわち化合物3または11)を乾燥DMF(2×2mL)中で繰り返し濃縮することにより乾燥し、DMF(1mL)中に溶解し、N雰囲気下、TBTU(11mg,33μmol)およびDiPEA(5.7μL,33μmol)の存在下で撹拌した。1時間後、五糖4(31μmol)を加えた。反応混合物を室温で16時間撹拌し、イオン交換(Mono−Q)クロマトグラフィーで分析した。反応混合物を濃縮(<50℃,15mmHg)した。(粗)生成物(10mg/mLのHO/t−BuOH溶液,1/1,v/v)を10%Pd/C(粗生成物に対して等しい重量)上での水素化(H)により脱保護した。16時間後、溶液を脱気し0.45μM HPLCフィルター上で濾過し、減圧下(<50℃,15mmHg)で濃縮した。この共役体をイオン交換クロマトグラフィー(Q−セファロース,緩衝液:HO→2M NaCl)により精製し、Sephadex G25−カラム(HO)で脱塩し、凍結乾燥した。
【0049】
メチルO−2,3−ジ−O−メチル−4−O−<<<12−N−<<Nε−(D−(+)−ビオチニル)−N−<)]−{4−[[4−[[(1R)−1−[[4−(アミノイミノメチル)フェニル]メチル]−2−オキソ−2−(1−ピペリジニル)エチル]アミノ]−3−[[(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニル)スルホニル]アミノ]−1,4−(S)−ジオキソ−ブチル]アミノ]−ブタノイル}−L−リシル>>−12−アザ−3,6,9−トリオキサ−ドデシル>>>−6−O−スルホ−α−D−グルコピラノシル−(1−>4)−O−2,3−ジ−O−メチル−β−D−グルコピラヌロノシル−(1−>4)−O−2,3,6−トリ−O−スルホ−α−D−グルコピラノシル−(1−>4)−O−2,3−ジ−O−メチル−α−L−イドピラヌロノシル−(1−>4)−3−O−メチル−2,6−ジ−O−スルホ−α−D−グルコピラノシドオクタキスナトリウム塩(III)
化合物3(86mg,81μmol)を化合物4(0.14g,80μmol)(国際公開第01/42262号に記載されているようにして調製した)と一般的手順に従って結合させることにより、化合物IIIを、調製し精製した。収量0.14g(60%)。ESI/TOF−MS:880.91[M−3H]3−,888.57[M−3H+Na]3−,660.43[M−4H]4−
H−NMR(DO,600MHz);4.71ppmの基準水信号により、4.80から4.50ppmの間の信号の信頼できる積分が妨害されている。δ7.66(m,2H),7.30(m,2H),6.74(m,1H),5.36(m,1H),5.25(m,1H),5.05(m,1H),4.98(m,1H),4,84(m,1H),4.46(m,2H),4.31(m,1H),4.27−4.13(5H),4.13−3.99(5H),3.92(m,1H),3.88−3.70(8H),3.70−3.07(49H±5),3.07−2.92(4H),2.85(m,1H),2.76(m,1H),2.65(m,1H),2.51(s,3H),2.40(s,3H),2.36−2.22(m,2H),2.21−2.11(m,2H),2.08(m,1H),2.06−1.91(4H),1.83−1.03(20H±2)。
【0050】
【化9】

【実施例2】
【0051】
図式2
15−N−(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)−15−アザ−3,6,9,12−テトラオキサ−ペンタデカン酸tert−ブチル(6)
15−アミノ−3,6,9,12−テトラオキサ−ペンタデカン酸tert−ブチル(5)(0.50g,1.45mmol)をTHF(7.5mL)およびHO(5mL)中に溶解した。4N NaOH溶液をpHが約9になるまで加えた。カルバミン酸N−9−フルオレニルメチル−コハク酸イミド(FmocOSu,0.54g,1.60mmol,1.1当量)を少量ずつ加えた。10分後、更なる4N NaOH溶液を加えて、pHを約9に調節した。3時間後、反応混合物を1N HCl溶液でpH6から7に酸性化した。HOを反応混合物に加え、EtOAcで3回抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、MgSO上で乾燥した。濾過後、溶媒を減圧下(50mbar,50℃)で除去した。粗製油をシリカカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH,1/0→95/5,v/v)で精製して、化合物6を黄色油(0.61g,79%)として得た。Rf0.64(DCM/MeOH,95/5,v/v)。
【0052】
15−N−(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)−15−アザ−3,6,9,12−テトラオキサ−ペンタデカン酸塩(7)
化合物6をDCM(3.5mL)中に溶解し、TFA(3.5mL)を窒素雰囲気下で加えた。1.5時間撹拌後、反応混合物を減圧下で濃縮した。その後、過剰のTFAをトルエン中の繰り返し濃縮により除去した。DCM/EtO(100mL,1/2,v/v)を加え、1N HClで洗浄した。水層をDCM/EtO(100mL,1/2,v/v)で抽出した。加え合わせた有機層を食塩水で洗浄し、MgSO上で乾燥した。濾過後、溶媒を大気圧下(50℃)で除去した。粗製油をシリカカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH/AcOH,99/0/1→89/10/1,v/v/v)で精製して化合物7を得た。残ったAcOHを、粗製油状生成物をDCM/EtO(1/2,v/v)に溶解し、HO(3回)および食塩水で洗浄し、ついでMgSOで乾燥して除去した。濾過後、溶媒を、大気圧下(50℃)で除去して化合物7を黄色油(0.37g,67%)として得た。Rf0.32(DCM/MeOH,89/10/1,v/v)。
【0053】
15−N−(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)−15−アザ−3,6,9,12−テトラオキサ−ペンタデカノイル−ε−N−(Z)−L−リジンtert−ブチル(8)
化合物7(0.37mg,0.77mmol)をDCM(18mL)中に溶解した。引き続き、DIPEA(0.40μL,2.31mmol,3当量)およびTBTU(0.25g,0.77mmol)をN雰囲気下で加え、溶液を10分間撹拌した。ついで、ε−(Z)−L−Lys−OtBu・HCl(0.29g,0.77mmol)を加え、混合物をさらに1.5時間撹拌した。反応混合物をDCMで希釈し、HO、0.1N HCl、飽和NaHCO溶液および食塩水で濯いだ。有機層を乾燥(MgSO)し、大気圧下で濃縮した。精製をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH,1/0→9/1,v/v)で行って、化合物8を黄色油(0.51g,83%)として得た。Rf0.85(DCM/MeOH,9/1,v/v)。ESI−MS:792.6[M+H],814.6[M+Na],736.4[M−tBu+H]
【0054】
15−N−tert−ブチルオキシカルボニル−15−アザ−3,6,9,12−テトラオキサ−ペンタデカノイル−ε−N−(Z)−L−リジンtert−ブチル(9)
化合物8(0.26g,0.32mmol)をTHF(5mL)中に溶解した。EtN(1mL)を加え、溶液を24時間撹拌した。過剰のEtNおよび溶媒を減圧下(50℃)で除去した。トルエンを加え、減圧下(50℃,65mbar)で除去しN−脱保護中間生成物(0.21g,0.32mmol)を得た。Rf0.23(DCM/MeOH,9/1,v/v)。ESI−MS:570.4[M+H],514.4[M−tBu+H]。粗製生成物をDCM(3mL)中に溶解した。N雰囲気中で、EtN(0.11mL)を加え、ついでジ−tert−ブチルジカーボネート(73mg,0.34mmol,1.1当量)を加えた。5時間撹拌後、混合物を0.1N HCl冷(5℃)溶液に加え、EtOAcで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)した。濾過後、溶媒を、減圧下(180mbar,50℃)で除去した。精製をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH,1/0→95/5,v/v)で行って、9を無色油(0.17g,82%)として得た。Rf0.5(DCM/MeOH,9/1,v/v)。ESI−MS:670.6[MH+H],692.4[MH+Na],570.4[M−Boc+H],514.1[M−Boc−tBu+H]
【0055】
15−アザ−3,6,9,12−テトラオキサ−ペンタデカノイル−ε−[D−(+)−ビオチニル]−L−リジン(10)
化合物9(0.23g,0.34mmol)をEtOH(8mL)およびHO(1.2mL)中に溶解した。溶液を窒素で5分間フラッシングした後、Pd/C10%(0.11g)を加えた。水素を溶液に4時間通過させた。窒素を溶液に10分間フラッシングして全ての水素を除去した。混合物をデカライト上で濾過し、減圧下(170mbar,50℃)で濃縮してN−L−リジン脱保護中間体を無色油(0.15g,81%)として得た。Rf0.02(DCM/EtOAc,9/1,v/v)。
D−(+)−ビオチン(75mg,0.31mmol)をDCM(7mL)中に懸濁した。引き続き、N雰囲気下でDIPEA(0.11mL,0.62mmol,2当量)およびTBTU(0.10g,0.31mmol)を加え、溶液を1時間撹拌した。上記のN−L−リジン脱保護中間体のDCM(3mL)中の溶液を反応混合物に加えた。混合物を16時間撹拌した。HOを加え、DCM(3×)で抽出した。有機層を乾燥(MgSO)し、減圧下(850mbar,50℃)でろ過および濃縮した。精製をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:DCM/MeOH,1/0→9/1v/v)で行って油(0.13g,60%)を得た。Rf0.48(DCM/MeOH,9/1,v/v)。ESI−MS:762.6[M+H],784.6[M+Na],662.4[M−Boc+H],606.4[M−Boc−tBu+H]。油をジオキサン中の乾燥4N HCl溶液(4mL)中に溶解し、撹拌した。1時間後、不溶性の油が出現し、その後溶媒を減圧下(100mbar,50℃)で除去し、化合物10を定量的収率で得た。ESI−MS:606.4[M+H],628.4[M+Na]
【0056】
【化10】

【0057】
図式3
ε−(D−(+)−ビオチニル)−N−{{4−[[4−[[(1R)−1−[[4−(1,2,4−オキサジアゾール−5−オニル)フェニル]メチル]−2−オキソ−2−(1−ピペリジニル)エチル]アミノ]−3−[[(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニル)スルホニル]アミノ]−1,4−(S)−ジオキソ−ブチル]アミノ]−ブタノイル}−15−N−(15−アザ−1−オキソ−3,6,9,12−テトラオキサ−ペンタデシル)}}−L−リジン(11)
化合物10(0.12g,0.21mmol)を、化合物3の調製で記載したように、化合物2(0.15g,0.21mmol)に結合させた。粗製生成物を調製用HPLC(C18,ACN/HO,0.01%TFA)で精製して、化合物11を純粋な形態で得た。収量60mg(22%)。ESI−MS:1316.8[M+H]
【0058】
メチルO−2,3−ジ−O−メチル−4−O−<<<12−N−<<Nε−(D−(+)−ビオチニル)−N−<[15−N−(15−アザ−1−オキソ−3,6,9,12−テトラオキサ−ペンタデシル)]−{4−[[4−[[(1R)−1−[[4−(アミノイミノメチル)フェニル]メチル]−2−オキソ−2−(1−ピペリジニル)エチル]アミノ]−3−[[(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニル)スルホニル]アミノ]−1,4−(S)−ジオキソ−ブチル]アミノ]−ブタノイル}>−L−リシル>>−12−アザ−3,6,9−トリオキサ−ドデシル>>>−6−O−スルホ−α−D−グルコピラノシル−(1−>4)−O−2,3−ジ−O−メチル−β−D−グルコピラヌロノシル−(1−>4)−O−2,3,6−トリ−O−スルホ−α−D−グルコピラノシル−(1−>4)−O−2,3−ジ−O−メチル−α−L−イドピラヌロノシル−(1−>4)−3−0−メチル−2,6−ジ−0−スルホ−α−D−グルコピラノシドオクタキスナトリウム塩(IV)
一般的手順に従って化合物11を化合物4に結合させ、中間体共役体を脱保護して化合物IVを得た。収量9.2mg(7.6%)。
H−NMR(D2O,600MHz),4.70ppmにおける基準水信号により、4.80から4.54ppmの間の信号の信頼できる積分が妨害されている。δ7.59(d,2H),7.23(d,2H),6.68(s,1H),5.32(m,1H),5.19(m,1H),4.91(m,1H),4.85(m,1H),4.76(m),4.53−4.31(3H),4.30−4.05(9H),4.04−3.90(7H),3.89−3.62(7H),3.61−3.42(42H±4),3.42−3.31(18H±2),3.31−3.14(12H),3.14−3.05(5H),3.03−2.94(3H),2.93−2.84(2H),2.81(dd,1H),2.70(dd,1H),2.59(d,1H),2.44(s,3H),2.34(s,3H),2.22−2.08(4H),2.06(t,2H),1.96(s,3H),1.72−1.01(18H±2)。
ESI/TOF−MS:m/z574.72[M−5H]5−,m/z718.66[M−4H]4−,m/z958.56[M−3H]3−
【0059】
【化11】

【実施例3】
【0060】
薬理学
ヒト血漿中の抗Xa因子活性および抗IIa因子活性の測定のためのインビトロ試験
ヒト血漿中の試験化合物の抗Xa因子活性および抗IIa因子活性を、基質として各々S2222またはS2238(Chromogenix,Chromogenics Ltd,Molndal,Sweden)を用いて、アミド分解活性を測定することにより測定した。手順は、TeienおよびLieにより記載されている方法(Teien AN,Lie M. Evaluation of an amidolytic heparin assay method increased sensitivity by adding purified antithrombin III.Thromb.Res.1977,10:399−410)に基づいた。両方の活性はIC−50(Mol/L)で表してある。
【0061】
【表1】

【0062】
3.1 薬物動態学
Org 42675の薬物動態学的特性および本発明の化合物IIIの薬物動態学的特性を、300から400gの雄のWistarラットについて研究した。ラットにO2/N2O/イソフルランの混合物の吸入により麻酔をかけ、その後右頚静脈にカニューレ処置をした。翌日、100nmol/kgの投与量でラットに皮下注射処置をした。皮下注射投与後、数回の間隔でサンプル採取を行った。ついで、血液を遠心分離した後血漿を吸い上げて、使用するまで−20℃で貯蔵した。試験化合物の濃度を、抗Xa活性または抗IIa活性を各々測定するために、基質としてS−2222またはS−2238(Chromogenix, Chromogenics Ltd, Molndal, Sweden)を用いてアミド分解活性について測定した。両方の手順は、Teien およびLieの方法(Teien AN, Lie M. Evaluation of an amidolytic heparin assay method increased sensitivity by adding purified antithrombin III. Thromb. Res. 1977, 10: 399−410)に基づいた。得られた血漿サンプル中の濃度は、試験化合物自身の原液を用いて作成した検量線に対して測定した。サンプル中の濃度をnmol/mLで表し、速度パラメーターをWinNonlinのノンコンパートメントモデルを用いて算出した(図1参照)。
【0063】
【表2】

【0064】
本発明の実験化合物IIIおよびOrg42675は、実験データの変動性の範囲内で、ラットにおいて同じ薬物動態学的挙動を示すことが結論づけられる。
【0065】
3.2 薬物動態学−中和実験
100nmol/kgの投与量で本発明の化合物IIIまたはOrg42675で、皮下でラットを、処置した。t=2hの時点で血液サンプルを採取し、本発明の化合物IIIまたはOrg42675で処置したラットにアビジン(卵白由来,Sigma)の10mg/kgを静脈内投与した。続いて、0.17、0.5、1、2、3、および7時間の時点で血液をサンプル採取した。血液は薬物動態学実験に記載されているようにして処置し、サンプルの濃度は、(残存する)抗Xa活性または抗IIa活性を測定することにより測定した(図2参照)。
【0066】
【表3】

【0067】
本発明の化合物IIIの皮下投与(100nmol/kg)後、(残存する)抗Xa因子活性および抗IIa因子活性を測定することにより定量される抗血栓性活性は、アビジンの10mg/kgの静脈内投与により中和できることが結論付けられる。本発明の化合物IIIのアビジンによる中和は、その血漿中濃度が急速に減少すること、およびアビジンの投与後に本発明の化合物IIIのAUCinfが化合物Org42675と比較して著しく減少することにより反映される。さらにまた、非ビオチン化相当化合物であるOrg42675の薬物動態学的挙動は、アビジンの添加により影響を受けない。後者により、中和はビオチン標識の存在と関連していること、およびこれはデュアルインヒビターの薬物動態学的挙動に影響を与えないことが確認される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の抗血栓性化合物
【化1】

[式中、オリゴ糖は、2から25単糖単位を含む負荷電のオリゴ糖残基であり、前記荷電は、正荷電の対イオンにより相殺され、ならびに前記オリゴ糖残基は、それ自体が(AT−III介在性)抗Xa活性を有するオリゴ糖から誘導され;
スペーサーは、10から70原子の鎖長を有する、本質的に薬理学的に不活性な屈曲性連結残基であり;
Aは、残基−CH[NH−SO−R][CO−NR−CH(4−ベンズアミジン)−CO−NR]{Rは、フェニル、ナフチル、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、(イソ)キノリニル、テトラヒドロ(イソ)キノリニル、3,4−ジヒドロ−1H−イソキノリニル、クロマニルまたは樟脳基であり、これらの基は、(1−8C)アルキルまたは(1−8C)アルコキシから選択される1つ以上の置換基で場合により置換されており、ならびにRおよびRは、独立してHまたは(1−8C)アルキルであり;Rは、(1−8C)アルキルまたは(3−8C)シクロアルキルであり;またはRおよびRは、それらが結合している窒素原子と一緒に、もう1つのヘテロ原子を場合により含有する非芳香族(4から8)員環であり、前記環は(1−8C)アルキルまたはSO−(1−8C)アルキルで場合により置換されている}である。]
であり、ここで、前記式Iの化合物が、さらに、ビオチン残基またはこの類似体との少なくとも1つの共有結合を含む、前記化合物、またはこれらの薬学的に許容できる塩、プロドラッグまたはこれらの溶媒和物。
【請求項2】
オリゴ糖残基が、2から16単糖単位を有する、請求項1の化合物。
【請求項3】
オリゴ糖が、硫酸化五糖残基である、請求項2の化合物。
【請求項4】
オリゴ糖が、式(II):
【化2】

(式中、Rは、独立してビオチン残基もしくはこの類似体、OSOまたは(1−8C)アルコキシである。)の五糖残基である、請求項3の化合物。
【請求項5】
五糖残基が、構造:
【化3】

(Rは、OCHまたはOSOである。)
を有する、請求項4の化合物。
【請求項6】
五糖残基が、構造:
【化4】

を有する、請求項5の化合物。
【請求項7】
スペーサーが、10から50原子の長さ、好ましくは16から22、および最も好ましくは19原子の長さを有する、請求項1から6のいずれか一項の化合物。
【請求項8】
スペーサーが、16から22原子の長さを有する、請求項7の化合物。
【請求項9】
スペーサーが、少なくとも1つの−(CHCHO)−要素を含む、請求項1から8のいずれか一項の化合物。
【請求項10】
が、メチルまたはメトキシから選択される1つ以上の置換基で場合により置換されるフェニルまたはナフチルである、請求項1から9のいずれか一項の化合物。
【請求項11】
が、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニルである、請求項10の化合物。
【請求項12】
NRが、ピペリジニル基を表す、請求項1から11のいずれか一項の化合物。
【請求項13】
が、Hである、請求項1から12のいずれか一項の化合物。
【請求項14】
ビオチン残基またはこの類似体との1つの共有結合を含む、請求項1から13のいずれかの化合物。
【請求項15】
式Iの化合物のオリゴ糖残基が、ビオチン残基またはこの類似体との共有結合を含む、請求項1から4、7から14のいずれかの化合物。
【請求項16】
式Iの化合物のオリゴ糖残基が、式:−(NH−CO)−(CH−NR−BT(式中、BTは残基:
【化5】

であり、Rは、Hまたは(1−4C)アルキルである。)のビオチン類似体との1つの共有結合を含む、請求項15の化合物。
【請求項17】
式Iの化合物のスペーサーが、ビオチン残基またはこの類似体との共有結合を含む、請求項1から14のいずれかの化合物。
【請求項18】
式Iの化合物のスペーサーが、式:−(CH−NR−BT(式中、RおよびBTは、前記に定義したとおりである。)のビオチン類似体の残基との1つの共有結合を含む、請求項17の化合物。
【請求項19】
【化6】

またはこれらの薬学的に許容できる塩、プロドラッグまたはこれらの溶媒和物である、請求項18の化合物。
【請求項20】
ナトリウム塩の形態である、請求項19の化合物。
【請求項21】
式Iの化合物の残基Aが、ビオチン残基またはこの類似体との共有結合を含む、請求項1から14のいずれか一項の化合物。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項の化合物および薬学的に適した補助剤を含む、医薬組成物。
【請求項23】
残基Aにおけるベンズアミジン部分が、1,2,4−オキサジアゾリン−5−オン基である前駆体の形態であり、および続いて脱保護によりベンズアミジンに転換される段階を含む、式Iの化合物の調製方法。
【請求項24】
治療において用いるための、請求項1から21のいずれか一項の化合物。
【請求項25】
血栓症またはその他のトロンビン関連疾患の治療または予防のための医薬の製造のための、請求項1から21のいずれか一項の化合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−35851(P2013−35851A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−202307(P2012−202307)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【分割の表示】特願2007−547509(P2007−547509)の分割
【原出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(512059936)エム・エス・ディー・オス・ベー・フェー (24)
【Fターム(参考)】