説明

ビシクロヘプタジエンの安定化

【課題】ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエンを安定化する方法を提供する。
【解決手段】安定化剤として、キノン類、およびニトロオキサイド類を添加した安定化されたビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン組成物、およびこれの使用。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
背景技術
低い誘電率(“low−k”)とともに適切な機械的強度を同時に与える絶縁膜は、半導体製造のために必要である(例えば、International Technology Roadmap for Semiconductors, 2007 edition参照)。近年、最も成功した材料は、カーボンドープされた酸化シリコンであり、Si,C,O、およびHを含み(すなわち“SiCOH”)、例えば米国特許第7,030,468号および第7,282,458号(いずれもGates et al.)に記載されているように、プラズマエンハンスト化学蒸着(PECVD)により堆積される。
【0002】
これらの材料の主な利点は、SiO2誘電体を堆積するために一般に用いられるのと同様の蒸着装置を用いて堆積できることである。蒸着処理は、高い純度の真空雰囲気中で行なうことができ、その雰囲気においては、存在する試薬の全てから空気が厳密に排除される。例えば、10ppb未満、さらには1ppb未満の酸素の組成での窒素キャリアガスを用いることが通常である。
【0003】
絶縁膜の誘電率は、例えば米国特許第7,288,292号(Gates et al.)に記載されているように、ポロジェンを用いて空孔を導入することよってさらに低減することができる。ポロジェンの例は、以下に示すビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエンであり、2,5−ノルボルナジエンとも呼ばれている。以下、BCHDと称する。ポロジェンとしてのBCHDの使用は、米国特許第6,312,793号(Grill et al)に記載されており、絶縁膜に空孔を導入するための“最も知られた方法”として認定されてきた。しかしながら、BCHDは、非常に反応性のオレフィン性液体であり、適切な抑制剤が存在しない場合には自己重合することが確認されてきた。米国特許第3,860,497号および第3,140,275号参照。自己重合は、温度が上昇するとより迅速に進行すると信じられている。
【化1】

【0004】
蒸着プロセスにBCHDを届ける一般的な方法は、加熱された“注入バルブ”を通して液体BCHDの流れを届けることであり、それは、種々の開口を通して液体が通過する際に気化し、気化した液体の流れとキャリアガスの制御された流れとを組み合わせる。BCHD蒸気の流れは、可変開口を調節することによって制御される。理解されるように、低揮発成分のオリゴマーの存在は、開口におけるこれら低揮発性物質の蓄積を容易に引き起こして、最終的に閉塞をもたらす。より深刻でない場合には、オリゴマーは、液滴としてガス流の中に取り込まれ、ポロジェンの不均一な輸送をプロセスにもたらす。
【0005】
貯蔵中にBCHDに形成されるオリゴマーは、しばしばBCHDに可溶性であり、BCHD流とともに気化器に運ばれ、上で略述したような困難さを引き起こす。さらに、気化器が加熱されるので、BCHDオリゴマーは、気化器自体の中で形成されるかもしれない。BCHDのサンプルが流れないで気化器内に止まる場合(例えば、生産中のとぎれ)には、これは顕著である。
【0006】
それゆえ、貯蔵中、および蒸着中にみられるより高温の条件において、BCHDの重合を避ける必要性が存在する。
【0007】
多くの特許およびいくつかの文献は、種々の化合物、特にオレフィン化合物の重合を避けるために種々の抑制剤の使用を述べている。The Chemistry of Free Radical Polymerizationのセクション5.4において、MoadおよびSolomonは、安定なラジカル、電子受容供与性オレフィン類、フェノール類、キノン類、酸素、およびある種の遷移金属塩は、通常の抑制剤であることを開示している(Elsevier Science Ltd. 1995)。一般的に、ラジカル種(すなわち不対電子を有する化学種)は、BCHDのようなオレフィンと反応することによって重合を開始することが知られている。反応生成物は、もうひとつのラジカルであり、重合の連鎖を伝播する。抑制剤は、ラジカルと反応して非反応性の生成物を形成し、それゆえ開始を抑制する。
【0008】
重合の開始および抑制における酸素の役割は、MoadおよびSolomonの262頁、およびPrinciples of Polymerization,George Odian,1991(Wiley)p.264で論じられてきた。酸素は、フリーラジカルを過酸化物に変えることが知られており、それは、反応性が低く、それによって重合を抑制する(同じ著者による)。それゆえ、プラスチックの製造のような重合が望まれる場合には、酸素は排除されなければならない。しかしながら、重合の長期に亘った耐性が必要とされる場合には、過酸化物の存在は受け入れられない。なぜなら、過酸化物は分解して、フリーラジカルを再形成するからである。分解は、室温ではゆっくりと起こるが、加熱されるとより速くなる。過酸化物は、比較的非反応性の有機分子と酸素との反応によっても形成され、結果として、過酸化物が分解した際にラジカル濃度の増加をもたらす。こうして、酸素もまた重合の開始剤として作用する。
【0009】
BCHDについて、酸素が系内に浸入して(例えばリークにより)、不揮発性オリゴマーの形成を一般的に導き、結果として上述したような問題を生じることが知られている。これは、上述したような過酸化物の形成に起因すると推測される。それゆえ、酸素のない状態にBCHDを保つことが重要である。
【0010】
BCHDは、フェノール抑制剤、すなわち2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHTとも称される)(例えば、シグマ−アルドリッチカタログのプロダクトno.B33803を参照)を含んで市販されている。「フェノール抑制剤」(ハイドロキノン類としても知られている)の分類は、“輸送中および保管中に重合を避けるために多くの市販のモノマーに一般的に添加される”として、MoadおよびSolomonによって述べられている(前述と同様の著書のp.263)。BHTおよび他のフェノール抑制剤は、空気または酸素の存在下におけるオレフィン系化合物の重合を抑制するのに、より効果的であることが知られている。例えば、Introduction Kurland,J.Polym.Sci,18 1139−1145(1980);Why Oxygen?,Levy,Plant/Operations Progress,6 188(1987);p.37,第2欄の文頭,Gustin,Chemical Health and Safety,Nov/Dec.2005;およびNicolson,Plant/Operations Progress,Vol.10(3)p171−183(1991)参照。
【0011】
米国特許出願公開No.2007/0057235(Teff etal.)には、BHT以外のフェノール系抑制剤を用いた安定化されたBCHD組成物が記載されている。BCHD中の「溶解性が高く、揮発性の低い固体生成物」は、「偶発の空気の存在」に起因する。性能データは、空気に曝した後に得られた残渣について与えられる。しかしながら、上述の議論から理解されるように、空気の存在下で得られたデータは、半導体製造装置に最も関係するものではなく、空気が存在しない場合でさえ、オリゴマーなしで残るBCHDについての必要性が存在する。
【0012】
オレフィン系化合物とともに頻繁に用いられる安定剤/抑制剤の他の分類は、下記化学式に示されるような、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジノ−1−オキソ、または2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニル(TEMPO)である。MoaおよびSolomonは、カーボン中心のラジカルのため、TEMPOが最も反応性の抑制剤であるとして挙げている(前述と同様の著書の260)。
【化2】

【0013】
米国特許第No.4,670,131号(Ferrell)は、次のように述べている。「安定なニトロオキサイドおよび他の安定なフリーラジカルおよびそれへの前駆体の使用は、オレフィン系有機化合物のための安定化剤として、特許および公知の文献においてよく立証されている。従来技術は、これらの安定なフリーラジカルは、貯蔵中のオレフィンモノマーの時期尚早なラジカル的に引き起こされる重合の防止のための抗酸化剤として有用であると開示している。」Ferrellは、引用された化合物は、TEMPOを含み、2〜20の炭素原子を有するオレフィン系有機化合物を含む炭化水素流のための、加熱および蒸発のために用いられる装置のような、処理装置内の汚れを制御し、ブタジエンおよびイソプレンを含むことをさらに開示している。
【0014】
米国特許第5,616,753号(Turner et al.)は、抑制されたシラン組成物をクレームし、それは、重合性シランと、合成中、精製中、および酸素の存在下または酸素なしでの適用前の現場におけるシランの重合を抑制するのに十分な量のTEMPOのような非芳香族系安定フリーラジカルとを含む。非シラン化合物には、向けられていない。Turner et al.は、抑制剤およびショートストッピングエージェントの両方としての非芳香族フリーラジカルの使用を開示し、その薬剤は重合が開始した後に停止のために加えることができる。
【0015】
米国特許第5,880,230号(Syrinek)は、1,3−ブタジエンおよびイソプレンを含むビニルまたはジエンモノマーの乳化重合のためのショートストッピングエージェントとして、TEMPOを用いている。背景において、Syrinekは、製造中、精製中、貯蔵中、および輸送中に安定なニトロキシルフリーのラジカルは、ビニルモノマーの重合を抑制するために非常に低い濃度で用いられることが知られていることを認めており、それにおいては、重合は、熱または酸素からの偶発的なフリーラジカルに起因する。
【0016】
米国特許第6,686,422号および第6,525,146号(Shahid)は、ヒンダードまたはアンヒンダードフェノールと安定ニトロオキサイドとの組み合わせを用いた、ブタジエンおよびイソプレンのようなジエン化合物の蒸留中における“ポップコーン”ポリマーの成長の抑制を述べている。BHTおよびMHQは、アンヒンダードフェノールの例である。安定なニトロオキサイドの例は、TEMPOである。Shahidは、約10,000ppmまでのフェノールと、約10,000ppmまでの安定なニトロオキサイドとを用いることができ、好ましい濃度範囲は、約5,000ppmまでのフェノールと、約400〜500ppmまでの安定なニトロオキサイドであることが言及されている。Shahidは、気相および液相のいずれにおいてもポップコーン重合が起こること、および温度が高いほど、より起こり易いことを開示している。
【0017】
国際公開No.2007/045886(Loyns et al.)は、特定の安定なニトロオキサイド、および安定なニトロオキサイドの混合物の使用をクレームしており、それらは、モノマーの合成および精製中において、水相および油相のいずれでも効果的である。モノマーの例は、スチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、およびブタジエンまたはイソプレンのようなジエン類を含む。クレームされた特定の安定なニトロオキサイドは下記化学式で表わされ、R1はC4−C20ハイドロカルビル、R2〜R5は、それぞれ独立して1-8アルキルである。示された式の安定なニトロオキサイドと組み合わせて、他の安定なニトロオキサイド(例えばTEMPOのような)の使用もクレームされる。
【化3】

【0018】
米国特許出願公開No.2009/0159843および2009/0159844(いずれもMayorga et al.)には、BCHDまたはイソプレンのような不飽和炭化水素ベースの前駆体と、ヒドロベンゾフェノンまたはTEMPOのようなニトロキシラジカルから選択される安定化剤とから実質的になる安定化された組成物がクレームされている。しかしながら、2008年2月27日に出願された初期の出願において、200ppmのTEMPOの使用が開示された後、Mayorga et al.は、同様の開示を2008年5月28日の2番目の出願(段落0057参照)において、産業的に関連する条件下、直接の液体注入の間に動的安定性に取り組むには、100ppmのTEMPOは不十分であることを例33〜41に示し、1,000から5,000ppmの範囲をクレームしている。
【0019】
TEMPOのようなニトロキシラジカルの重合抑制剤としての使用は、よく知られている一方、ニトロン化合物は、反応メカニズムを解明するための“スピントラップ”として主に用いられ、MoadおよびSolomonの265頁に記載されているように、ほとんど顕著に電磁気共鳴スペクトルを用いる。ニトロン化合物を用いた光重合の抑制は、米国特許第6,162,579号(Stengel et al)に開示されている。問題の重合性化合物は、エーテル、エステル、アクリル酸およびメタクリル酸の部分的なエステルである。
【0020】
文献に基づいて、TEMPOおよび関連する安定なニトロキシラジカル類は、オレフィン系化合物の安定化のための好ましい選択であることが明らかである。しかしながら、Mayorga et al.により行なわれたように、BCHD中における比較的高い濃度(>1000ppm)のTEMPOは、半導体産業に用いられる気化器内の堆積を避けるために必要であることがわかった。1800ppmのTEMPO添加でさえ、気化器に残渣を全く与えないとしてMayorga et al.により示された連続流の最も長い持続は10時間であり、それは、実際の製造のためには非常に短い。長期に亘る使用の間の残渣蓄積を避けるために必要な条件を予測する手段は、未だ得られていない。
【0021】
より低い濃度の抑制剤は、高純度の物質が必要とされる半導体製造のために用いられる前駆体において本来的に望ましい。特に、窒素含有抑制剤は低濃度で用いられることが望まれる。窒素化合物は、光レジストの阻害を引き起こすことが知られているからである。
【0022】
窒素フリーの抑制剤を用いることによって、窒素を完全に避けることが望ましい。そのような分類の一つは、フェノール系抑制剤であり、Teffにより米国特許出願公開第2007/0057235に開示されている。しかしながら、上述したように、フェノール製抑制剤は、酸素の存在下で最もよく作用することが知られているが、酸素は、BCHDから慎重に排除されるべきものである。
【0023】
窒素を含まない抑制剤のもう一つの分類はキノン類、例えば、p−ベンゾキノンである。MoadおよびSolomonは、p−ベンゾキノンは、抑制剤としてTEMPOの効果の約100倍未満であることを示している(前述と同様の著書のp.260)。Principles of Polymerizationのサードエディションの259ページにおいて、George Odianは、ベンゾキノンはスチレンの重合単位中で抑制剤として作用し、消費されることを開示している(John Wiley&Sons,Inc.1991)。264ページにおいて、Odianは、ベンゾキノンがスチレンおよびビニルアセテートのための抑制剤(すなわち、期間にわたって重合を避ける)として作用することを示し、これは、電子リッチな伝達ラジカルを有するとして特徴付けられるが、アクリロ二トリルおよびメチルメタクリレートのための遅延剤として作用するのみであり(すなわち、重合を遅らせるが、それを阻害しない)、これらは電子プアな伝達ラジカルを含む。この情報に基づくと、BCHDは電子リッチでも電子プアのいずれでもないので、ベンゾキノンは、BCHDの重合の抑制/遅延において、中間的な効果を有するものであることが予測される。YassinおよびRizk(J.Polymer Sci:Polymer Chemistry Edition(16)1475−1485(1978)“Charge−Transfer Complexes as Polymerization Inhibitors:I.Amine−Chloranil Complexes as Inhibitors for the Radical Polymerization of Methyl Methacrylate”)は、クロラニル(テトラクロロベンゾキノンとも称する)によりメチルメタクリレート重合の抑制を高めるために、N,Nジメチルアニリンおよびトリエチルアミンをどのように用いることができるか述べている。この抑制強化は、電子プアなモノマーに特異的であると述べられている。
【0024】
米国特許第5,840,976号(Sato et al.)においては、ベンゾキノンまたはキノンのアルカリ改質誘導体は、蒸留の間にN−ビニルアミドを安定にするために用いられ、それはN−ビニルホルムアミドおよびN−ビニルアセタミドを含む。Sato et al.は、N−ビニルアミド化合物は非常に反応性であり、容易に分解または重合することを示す。表1は、分解試験の結果を示し、N−ビニルホルムアミド単独または、ベンゾキノン、アントラキノン、ヒドロキノン、およびヒドロキノンモノメチルエーテル安定剤、それらの1つとともの組み合わせを比較している。TEMPOとの比較は与えられていない。さらに、Satoは、50〜10,000ppmのキノンを用い得ること、より少ない量では効果が乏しく、より多い量では安定化効果の飽和を引き起こすことを開示する。その例においては、Sato et al.は、500〜3000ppmのベンゾキノンを用いて、3000ppmの場合より優れた結果を達成する。Sato et al.は、ビニルアミド以外のオレフィン系化合物が添加されるベンゾキノンの用途に向けられていない。
【0025】
BCHDにおいて開示された不揮発性物質の濃度は、BCHDの与えられたサンプルが不完全に蒸発する、または気化器の詰まりを引き起こす可能性を評価するために明らかに有用である。単純な先天的な計算は、不揮発性物質の非常に低い濃度が望ましいことを示している。例えば、1分あたり1gの量でBCHDが消費される標準的な製造条件を考慮すると、それは10kgのオーダーの月ごとの消費を意味する。小さなオリフィスを有する気化器は、1mgのような堆積により不利に影響されるかもしれない。サンプル中の全ての不揮発性物質が結局は気化器内で捕らえられて、約0.1ppmwのオーダーで不揮発性物質の所望の濃度をもたらすと仮定すると、月ごとに気化器の清浄または交換を行なうことが意図される。実際には、そのような低い濃度の不揮発性物質を伴なうBCHDのサンプルを調製して分析することは、法外な費用がかかり製造には実用的ではない。それゆえ、理想的なレベルより高い不揮発性物質を含むBCHDサンプルでも、製造中に成功して用いられる必要性が存在する。
【0026】
出願人は、製造において成功した方法に必要とされる安定化BCHD中の不揮発性物質の確定されたレベルを確認した。上述の開示とは反対に、出願人は、ニトロン類、キノン類、およびキノン類と安定なニトロン類との混合物を含むいくつかの抑制剤は、比較的低い濃度においてもBCHDの重合を抑制するために効果的であることを見出した。
【0027】
要約
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン(BCHD)と少なくとも一種の添加剤とを含有し、low−k膜を与えるための組成物が本明細書に開示される。組成物は、50ppmw未満の不揮発性物質を含む。添加剤は、ニトロン類、キノン類、ニトロン類とキノン類との混合物、ニトロン類と安定なニトロオキサイドとの混合物、およびキノン類と安定なニトロオキサイドとの混合物からなる群から選択される。添加剤がキノンを含む場合、組成物は、電子供与種をさらに含有することができる。選択された添加剤は、20℃において約0.05トルから約50トルの範囲、より好ましくは、20℃において、約0.08トルから約10トルの範囲の蒸気圧を示す好ましい添加剤は、約300ppmwと約1,000ppmwとの間の濃度での5,5−ジメチル−1−ピロリン N−オキサイドである。二番目に好ましい添加剤は、約100ppmwから約500ppmwの間の濃度でのベンゾキノンである。もう一つの好ましい添加剤は、ベンゾキノンと2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)との組み合わせであり、それぞれ約1ppmwから約150ppmwの間、および約100ppmwから約200ppmwの間の濃度である。組成物は、半導体材料、光電池、LCD−TFT、触媒、またはフラットパネル型装置の製造に用いられるカーボンドープされたシリコン酸化物のような絶縁膜の誘電率を下げるために用いることができる。
【0028】
BCHDにおける重合を抑制するための方法もまた開示され、半導体処理においてそれを使用し、特に気化器を通したその輸送は、より都合がよい。BCHDは、ニトロン類、キノン類、ニトロン類とキノン類との混合物、およびキノン類と安定なニトロオキサイドとの混合物からなる群から選択される少なくとも一種の添加剤を加えることによって安定化される。電子供与種は、BCHDへの添加前にキノンと組み合わせることができる。安定化は、空気のない高温(すなわち80℃以上)で作用する。添加剤は、BCHDの精製の1時間以内に加えることができる。BCHDは、好ましくは少なくとも99.0%まで精製される。添加剤は、精製の間に蒸発容器または濃縮容器に加えることができる。一つの好ましい添加剤は、約300ppmwと約1,000ppmwの間の濃度での5,5−ジメチル−1−ピロリン N−オキサイドである。第二の好ましい添加剤は、約100ppmwと約500ppmwの間の濃度でのベンゾキノンである。もう一つの好ましい添加剤は、ベンゾキノンと2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)との組み合わせであり、それぞれ約1ppmwから約150ppmwとの間、および約100ppmwから約200ppmwの間の濃度である。
ニトロン類、キノン類、ニトロン類とキノン類との組み合わせ、ニトロン類と安定なニトロオキサイドとの組み合わせ、およびキノン類と安定なニトロオキサイドとの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一種の添加剤をBCHDと組み合わせることによって、low−k膜を与えるための組成物を形成するための方法もまた開示される。添加剤がキノンを含む場合には、組成物は電子供与種をさらに含有することができる。BCHDおよび添加剤は、BCHDの精製の1時間以内に組み合わせることが好ましい。BCHDは、少なくとも99.0%まで精製されることが好ましい。添加剤は、精製中に蒸発容器または濃縮容器に加えることができる。一つの好ましい添加剤は、約300ppmwと約1,000ppmwの間の濃度での5,5−ジメチル−1−ピロリン N−オキサイドである。第二の好ましい添加剤は、約100ppmwと約500ppmwの間の濃度でのベンゾキノンである。もう一つの好ましい添加剤は、ベンゾキノンと2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)との組み合わせであり、それぞれ約1ppmwから約150ppmwとの間、および約100ppmwから約200ppmwの間の濃度である。
また、基板上に絶縁膜層を形成する方法であって、少なくとも1つの基板がその中に配置された反応チャンバーを与える工程、前記反応チャンバー内に少なくとも一種の前駆体化合物を導入する工程、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエンと、ニトロン類、キノン類、ニトロン類とキノン類との混合物、ニトロン類と安定ニトロオキサイド類との混合物、およびキノン類と安定ニトロオキサイド類との混合物からなる群から選択される少なくとも一種の添加剤とを含む組成物を、前記反応チャンバー内に導入する工程、および、前記少なくとも一種の前駆体化合物、前記組成物、および前記基板を接触させて、堆積プロセスを用いて前記基板の少なくとも1つの表面に絶縁膜を形成する工程を具備する方法が提供される。添加剤がキノンを含む場合、組成物は電子供与種をさらに含むことができる。組成物は、反応チャンバー内に導入する前に、キャリアガスの存在下で約70℃と約110℃との間の温度で気化される。一つの好ましい添加剤は、約300ppmwと約1,000ppmwの間の濃度での5,5−ジメチル−1−ピロリン N−オキサイドである。第二の好ましい添加剤は、約100ppmwと約500ppmwの間の濃度でのベンゾキノンである。もう一つの好ましい添加剤は、ベンゾキノンと2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)との組み合わせであり、それぞれ約1ppmwから約150ppmwとの間、および約100ppmwから約200ppmwの間の濃度である。
【0029】
注釈および呼称
いくつかの略称、記号、および用語は、引き続く記述および請求の範囲に亘って用いられ、以下を含む:略称“BCHD”および“NBDE”は、いずれもビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエンであり、これは、2,5−ノルボルナジエンとしても知られている;略称“BHT”は、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールをさす;略称“MHQ”は4−メトキシフェノールをさす;略称“PBN”はN−tert−ブチル−α−フェニルニトロンをさす;略称“DMPO”は5,5−ジメチル−1−ピロリン−N−オキサイドをさす;略称“ppm”は百万分の一をさす;略称“ppmw”は重量による百万分の一をさす;用語“添加剤”および“抑制剤”BCHDの重合を抑制するために用いられる化合物をひとまとめにしてさす;略称“slm”は、一分当たりの標準リットルをさす;略称“GC−FID”はガスクロマトフラフィ−水素炎イオン化検出をさし、与えられるパーセンテージはGC−FID分析から算出された;略称“MIM”は金属絶縁体金属(キャパシターに用いられる構造)をさす;略称“DRAM”はダイナミックランダムアクセスメモリーをさす;略称“FeRAM”は強誘電性ランダムアクセスメモリーをさす;略称“CMOC”は相補型金属酸化物半導体をさす;略称“UV”は紫外をさす;略称“RF”は無線周波数をさす;略称“cc”は立方センチメートルをさし、mLまたはミリリットルと交換可能である:略称“scc”は標準立方センチメートルをあし、0℃1バール圧力の標準状態の下で1ccを占めるガスまたは蒸気の量である;略称“scc/min”および“sccm”は、いずれも1分当たりのsccをさす;用語“残渣”は物質または混合物の蒸発後に残る物質をさす;および、用語“不揮発性物質”は、気化器内で通常用いられる条件のもとでは蒸発しない物質をさし、溶液中またはガス流にのって運ばれる液滴に懸濁または溶解した物質を含む。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】BCHDを精製するために用いられる蒸発装置を示す。
【0031】
好ましい態様の開示
本発明の特性および目的のさらなる理解のために、添付の図面と関連して以下の詳細な説明に言及されるべきである。
【0032】
low−k膜を与えるための組成物、BCHDを安定にする方法、および基板上に絶縁膜層を形成する方法が提供される。組成物は、50ppmw未満の不揮発性物質を含む。ニトロン類およびキノン類は、単独でまたは安定なニトロオキサイドのような他の既知の抑制剤と組み合わせられ、比較的低い濃度でもBCHDの重合を抑制する効果が見出された。BCHD/抑制剤の組み合わせは、その後、気化され堆積されて、従来技術において生じていた付随した不完全な気化、および詰まりの問題なしに、基板上に絶縁膜を形成することができる。
【0033】
ニトロン類
ニトロン類は、以下に示す一般構造を有し、R1〜R3は、水素または置換または非置換のアルキルまたはアリール基とすることができる。ニトロン類の限定されない例も、以下に示す。
【化4】

【0034】
ニトロン類は、「スピントラップ」として知られており、ラジカルと反応して安定な生成物を形成するその特性のために、基本的な化学研究に用いられる。背景技術で示したように、ニトロン類は、光重合性組成物の重合を抑制するために用いられてきた(Stengerによる)。ニトロン類は、BCHDのような単一成分の重合を抑制するためには、予め用いられていなかった。本願発明者らは、BCHDの重合を抑制することにおいてPBNが有効であることを見出した。しかしながら、PBNは揮発性が低いものであり、混合物の蒸発の際には、PBN自体に起因して残渣を導く。BCHDが蒸気として渡されない用途、例えば液体堆積用途には、PBNは有用かもしれない。DMPOは、より揮発性であり、75℃において0.4トルの蒸気圧を有し、蒸発の際には、PBNより少ない残渣を導くことが見出された。
【0035】
キノン類および関連した化合物
キノン類は以下に示される構造を有し、これにおいては、R1ないしR4は、独立にH、塩素、アルキル基、または置換されたアルキル基である。キノン類の例は、p−ベンゾキノン、ジュロキノン、2,5−ジクロロ−ベンゾキノン、2,6−ジクロロベンゾキノン、およびクロラニル(アカ2,3,5,6−テトラクロロ−1,4−ベンゾキノン)を含む。ベンゾキノン(R1〜R4がH)の蒸気圧は、25℃において約0.09トルであり、沸点(1気圧での)は180℃であると報告されている。
【化5】

【0036】
キノン類は、ラジカル類と反応してラジカル類を生成し、これにおいては、不対電子が環構造および酸素原子の上方で非局在化される。形成されたラジカルは、非局在化により、および幾分かの芳香族的特性にもよって安定化される。こうして、生成されたラジカル類の反応性は、ニトロン類について観測されるのと幾分同様に、ベンゾキノンによって低減される。
【0037】
重合の抑制におけるキノン類の有効性は、電子供与種を与えることにより高めることができ、アンモニアNH3またはアミンNR3のようなものであり、ここで各Rは、独立にH、アルキル基またはアリール基とすることができる。2つのR基は、結合して環状アミンを形成してもよい。ターシャリーアミンは、無関係の反応を低減するために好ましい。適切なアミンの例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアミン、およびメチルピロリジンを含む。電子供与種は、キノン類とBCHDとを組み合わせる前に、キノン類と組み合わせることが好ましい。あるいは、BCHD/キノン組成物と組み合わせることができる。
【0038】
安定なニトロオキサイド類
安定なニトロオキサイド類は、以下に示すピペリジン−1−オキサイド構造を有する。これにおいては、Yは、水素、酸素(二重結合を有する)、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルキル基、アミド基(例えば、4−アセタミドまたは4−マレイミドTEMPO)、カルボン酸基またはエステル基であり、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、またはアルコキシ基とすることができる。あまり好ましくないが、それでも使用できるYは、ハロゲン置換されたアルキルまたはアルコキシ基、チオシアネート基、スルホネート、およびアルキルスルホネート基を含む。安定なニトロオキサイドの例はTEMPOであり、以下に示される。TEMPOの20℃における蒸気圧は、約0.4トルである。適切な蒸気圧を有する置換されたTEMPOもまた、用いることができ、以下に示すようなものである。TEMPOおよびp−ヒドロキシTEMPOは、この分類の最も好ましい分子である。
【化6】

【0039】
安定なニトロオキサイド類はラジカルである(すなわち、上述において酸素原子に隣接した点で表わされる不対電子を有する)ので、それらは他のラジカル類と互いに反応して、非ラジカル種を形成する。こうして、安定なニトロオキサイド類は、ラジカル類を完全に取り除き、むしろ、単に互いに反応して反応性のより低いラジカル類を形成するものであり、重合の抑制において非常に有効であるとして文献に立証されている。
【0040】
揮発性の基準
選択されるいずれの添加剤も、気化器内でのその蓄積を避けるために、十分な蒸気圧を示さなければならない。添加剤が不十分な蒸気圧を示す場合には、それは残渣として気化器内に蓄積し、BCHD単独により引き起こされるのと同様の問題が生じる。
【0041】
高すぎる蒸気圧を有する抑制剤もまた、望ましくない。それらはBCHDより迅速に気化するので、結局は、重合を抑制するためのBCHDに不十分な抑制剤をもたらすであろう。BCHDの蒸気圧は、20℃において約50トルであり、80℃において550トルである。高すぎる蒸気圧は、ほとんどの候補となる抑制剤よりもBCHDが揮発性なので、実際には問題となることは少ない。一般的に、20℃において約0.05トルから約50トルの範囲内の蒸気圧を有する抑制剤が好ましく、20℃において約0.08トルから約10トルの範囲であることがより好ましい。蒸気圧データは、しばしば全温度においては利用できないので、以下の範囲も用いることができる:80℃において0.1トルから1000トル、より好ましくは80℃において0.2トルから550トルである。
【0042】
蒸気圧に加えて揮発性もまた、添加剤の沸点により決定することができる。常圧における好ましい沸点範囲は、約300℃未満であり、より好ましくは約200℃未満である。
【0043】
得られるBCHD/添加剤組成物は、50ppmw未満、より好ましくは20ppmw未満の不揮発性物質を有するであろう。不揮発性物質の量は、BCHD/添加剤組成物を蒸発し、不揮発性物質の残りの重量を決定することによって求めることができる。一つの典型的な蒸発プロセスにおいて、99%以上の純度を有する蒸留BCHD約150mLが、適切な量の添加剤と混合され、図1の装置1の加熱された容器10内に加えられる。約0.3から1slmの流量を有する窒素が、装置1を通過する。加熱された容器10は、シリコーンオイルバス11により約50℃から約90℃の間の温度に維持される。冷却器21は、冷却された容器20を約−25℃から約25℃の間の温度に維持する。ppmwでの不揮発性物質の総量は、約3時間後の加熱された容器10内に残留する不揮発性物質の量を表わす。
【0044】
好ましい抑制剤濃度
300ppmwの濃度のDMPO、150ppmwの濃度のベンゾキノン、および150ppmwのベンゾキノンと150ppmwのTEMPOとの混合物は、BCHDを安定にするのに十分であることが見出された。
【0045】
室温での保存において、ベンゾキノンの消費は全く観察されなかった。しかしながら、BCHDが高められた温度に曝されると、ベンゾキノンの組成物が観察された。試験は以下のように行なわれた:150ppmwのベンゾキノンで安定化されたBCHDのサンプルを、約7日間、80℃のオイルバス中に浸漬した。その後、取り除いて、ベンゾキノンの濃度をGC−FIDにより測定した。結果を下記表にまとめる。
【表1】

【0046】
ベンゾキノンは、室温より80℃でより迅速に消費されることが、結果に明確に示されている。80℃に7日曝すことは、通常の取り扱いにおいては起こりそうもない。したがって、約100〜200ppmwの範囲におけるベンゾキノン濃度は、通常の取り扱いおよび引き続く蒸着の間に起こり得る熱的逸脱のための十分に安定なマージンを与えるために好ましい。
【0047】
他の抑制剤についての最適な濃度は、ルーチン的な実験によって決定することができる。抑制剤の間に違いは観察されるものの、単一の抑制剤が用いられる場合、約100ppmwと約500ppmwとの間で存在するべきであることが一般的に推奨される。一種より多くの抑制剤が用いられる場合には、全抑制剤の濃度は、約100ppmwと約500ppmwとの間とするべきである。100ppmwより低い濃度も有効であるが、高温のような意に沿わない条件に偶発的に曝された場合には、組成物が劣化しやすく、これは抑制剤の消費を引き起こす。抑制剤が完全に消費された場合には、重合は、よりいっそう迅速に進行するであろう。
【0048】
抑制剤の高すぎる濃度は、避けられるべきである。十分に高い濃度において、堆積された膜上への影響が起こるであろう。さらに、蒸発の際の残渣の増加は、より低い抑制剤濃度のサンプルと比較して、より高い抑制剤濃度(すなわち、約1000ppm)において時折観察されてきた。これらの結果は、完全には理解されないが、BCHDとの抑制剤の共重合、または酸素について述べられた挙動と同様に、意図された抑制剤の開始剤として作用に起因すると考えられる。
【0049】
精製
BCHDは、蒸着プロセス前に精製しなければならない。BCHDのオリゴマーは、しばしばBCHD中に溶解する。したがって、目視では透明に見えるBCHDのサンプルは、かなりの画分のオリゴマーを含んでいることがある。これは、純度の高い化合物の蒸発後に残り、気化器内に残渣を引き起こす。金属汚染物質は錯体を形成し、それゆえ、溶液中にも存在することができる。金属汚染物質は、特に加熱の際、重合を開始するまたは重合の触媒として作用する。それゆえ、不揮発性物質の形成を少なくするために、BCHDを慎重に精製することは重要である。好ましくは、BCHD出発物質は、少なくとも95%の純度を有し、精製は、このBCHD出発物質を少なくとも99.0%の純度のものとするであろう。BCHDは、BHT(例えば、シグマ−アルドリッチカタログのno.B33803の製品)とともに供給することができる。BHTは、非常に揮発性ではないので、精製は出発物質からBHTを除去する。
【0050】
BCHDの純度は、水素炎イオン化検出器を用いたガスクロマトグラフィ(“GC−FID”)により決定することができる。ガスクロマトグラフィは、不揮発性物質は検出しないことが理解されるべきであり、それはガス相中の分析カラムを通過しない。それにもかかわらず、GC−FIDは、BCHD生成物中に存在する揮発性汚染物質のレベルを測定することによって、純度の全体の有効性を検出するための有用な技術である。ここで用いられたカラムは、HP−5MSカラム(長さ30m,内径0.32mm,膜厚0.25ミクロン)である。GC−FIDは、次の条件で動作した:1cc/min Heキャリアガス,1:100スプリット;カラム温度プログラム:60℃で5分。その後、80℃まで2℃/min、その後、300℃まで10℃/minで昇温した:注入温度:200℃。他のカラムおよび条件もまた、BCHD純度の決定に用いられることは、当業者に理解されるべきである。
【0051】
精製中、および精製された生成物の取り扱い中における適切な予防措置は、特に重要である。系および生成物の容器は、使用前に注意深く清浄し、乾燥しなければならないリークを避けるためには十分に注意を払わなければならず、水分および炭化水素のような他の汚染物質のない雰囲気を用いて、空気および光に曝されるのを避け、装置の適切な清浄性を保ち、および、精製中またはその直後、好ましくは1時間未満のうちに、精製されたBCHDに抑制剤を導入し、予め収集容器内に抑制剤が存在することがより好ましい。抑制剤は、どちらかの精製ユニット(すなわち、蒸留または蒸発装置)の加熱容器内のBCHD出発物質に添加することもできる。抑制剤は、精製されたBCHDとよく混合すべきであり、例えば、少量のBHCDまたは他の溶媒中で抑制剤を予備溶解することにより行なう。粒子状の汚染物質に曝すことは、精製システムおよび収納金属容器の準備において抑制しなければならない。粒子、特に金属粒子は、重合の開始剤として作用するかもしれない。
【0052】
オリゴマー化は露光により開始することができるので、蒸留および/または蒸発装置は、光を通さないように構成するべきである。仮に光透過性材料が用いられる場合には、光の透過を避けるために、それらは金属箔のような不透明材料で包まれるべきである。この予備措置は、精製された物質を含む装置の部分のために特に重要である。
【0053】
BCHDは、軽い汚染物質および重い汚染物質の両方を分離するために、通常の手段を用いて、蒸留により精製することができる。
【0054】
あるいはまた、BCHDは、窒素のようなものであるが限定されない不活性ガス流の下、数時間にわたってサンプルをゆっくりと蒸発することにより精製してもよく、それは加熱された容器10の中で行なわれ、図1に示されるように、不活性ガス流が通過するディップ管12を有し、冷却容器20内で精製された濃縮物を集める。オイルバス11は、加熱された容器10を85℃まで維持し、一方、冷却器21は、冷却された容器20を20℃未満に維持する。不活性ガスは、配管31を通してマスフローコントローラー30に、配管32およびディップ管12を通して加熱された容器10に、配管33を通して冷却された容器20に、ベント22を通して外部に供給される。例で用いられる配管31,32、および33は、1/8インチのステンレススチール管である。ここでの開示から逸脱せずに他の配管も使用できることは、当業者に理解されるはずである。バルブ35,36、および37は、配管31,32、および33に設けられる。ガス流を制御するため、および容器の脱着/除去を可能とするために適切な位置にバルブが設けられることは、当業者に理解されるであろう。
【0055】
あるいは、上述の精製方法は組み合わせることができる。蒸留または蒸発により精製されたBCHDサンプルは、蒸発によりさらに精製することができる。抑制剤は、引き続く蒸留または濃縮の前に、蒸留物または濃縮物に加えられる。
【0056】
BCHDの精製に加えて、図1に示す装置1は、気化器内の条件の大まかな見当を与え、それゆえ、BCHD/添加剤組成物のサンプルの蒸発後に加熱された容器内に残った残渣の量を測定することによって、添加剤の有効性の評価に用いることができる。この装置1は、残渣を形成する不純物の除去のために特に有効である。揮発性不純物の除去のための有効性は少ないかもしれないが、揮発性不純物は蒸着装置の詰まりをもたらさないので、多くの用途において懸念はより少ない。図1に示される装置1は、出発物質の約20%の損失を引き起こすことがわかったが、この損失は明白な方法により減らすことができる。例えば、生成物の冷却および捕捉を改善するために、冷却容器の前の管をコイル状とし、このコイルを冷却浴に浸漬することである。
【0057】
BCHD/添加剤組成物は、その後、蒸着プロセスで使用するのに適切な容器内で、不活性雰囲気中に保存される。適切な容器は、蒸着薬液用にルーチン的に用いられるようなステンレススチール容器を含む。BCHD/添加剤組成物は、また、通常の高純度薬液輸送システムを用いて、金属容器から使用場所へ輸送することができる。輸送システムは、Girardらによる論文Contamination−free delivery of advanced precursors for new materials introduction in IC manufacturing,13 Future Fab International 157−162 (July, 2002)に記載されているようなものである。これは、薬液の汚染、または金属容器の内容物に使用者が曝すことなしに、金属容器の交換を可能とするために、よく適合する。
【0058】
一般的な予備措置
重合を避けるためのいくつかの一般的な予備措置は、以下を含む:
(1)材料に接触する全ての表面、例えば、容器、輸送ライン、および部品の内表面は、可能な限り乾燥するべきである。より長期にわたって接触する表面、例えば、貯蔵容器の内表面は、好ましくは真空下、数時間または一晩の熱処理によって厳密に乾燥すべきである。
【0059】
(2)容器は、電解研磨されたステンレススチールまたは注意深く清浄されたガラスのような、清浄な材料により作製されるべきである。ガラス容器は、酸洗浄に続くリンスおよび乾燥によって汚れを落とすことができる。ガスは、ろ過して低い水分レベル(好ましくは<1ppm、少なくとも<100ppm)を有するべきである。
【0060】
(3)バルブのような多量の粒子を発生する補助部品の使用は避けるべきである。
【0061】
(4)リークは除かれるべきである。
【0062】
(5)他の予備措置は、金属および水汚染物質を除くことが必要とされる際には、考慮されるべきである。ニッケルのような金属汚染物質は、微量でBCHDの重合の強力な触媒として作用する。
【0063】
組成物の使用
BCHD/添加剤組成物は、当業者に知られた蒸着プロセスによって、基板上に絶縁膜を形成するために用いることができ、基板上に他の層が予め形成されていても形成されていなくてもよい。典型的であるが限定されない蒸着プロセスは、米国特許第6,312,793号、第6,479,110号、第6,756,323号,第6,953,984号,第7,030,468号,第7,049,427号,第7,282,458号,第7,288,292号,および第7,312,524号、および米国特許出願公開公報No.2007/0057235に開示され、これらは参考として本明細書を構成する。例えば、米国特許出願公開公報No.2007/0057235の基板上にカーボンドープされた酸化シリコンの層を形成することが開示された方法において、本明細書に開示された組成物が環式アルケン組成物の替わりとなることが予測される。同様に、本明細書で開示された添加剤は、米国特許第6,312,793号、第6,479,110号、第6,756,323号、第7,030,468号、第7,049,427号、第7,282,458号、第7,288,292号、および第7,312,524号に開示された第二の前駆体(炭化水素分子または有機分子と称する)と組み合わせることができ、輸送中における第二の前駆体の重合を避けるため、蒸着法の前に行なわれる。これらのプロセスの通常の興味ある部分は、本明細書でさらに説明される。
【0064】
基板は、蒸着ツールの反応チャンバー内に設置する。絶縁膜を形成するために用いられる前駆体は、限定されない例であるが、従来技術に開示されたものを含み、BCHD/添加剤組成物は、ガスとして反応器に直接輸送することができ、気化された液体として反応器内に直接輸送され、あるいは、不活性ガスにより輸送される。不活性ガスは、ヘリウムまたはアルゴンを含むが限定されない。好ましくは、BCHD/添加剤組成物は、反応チャンバー内への導入前に、キャリアガスの存在下、約70℃から約110℃の間の温度で気化される。
【0065】
その上に絶縁膜が堆積される基板のタイプは、意図される最終用途に応じて変わるであろういくつかの態様において、基板は、ドープされたまたはアンドープのシリコンを含むことができ、MIM、DRAM、FeRam技術における絶縁材料として、またはCMOS技術におけるゲート絶縁体として用いられる酸化物(例えば、SiO2,SiON,またはHfO2ベースの材料、TiO2ベースの材料、ZrO2ベースの材料、希土類酸化物ベースの材料、三元酸化物ベースの材料など)、および、そのような用途において導電材料として用いられる金属、例えばタングステン、チタン、タンタル、ルテニウム、または銅に加えて、酸化シリコン層で任意に被覆される。他の態様において、基板は、銅配線および絶縁領域を含むことができ、もう一つのlow−k材料のようなものであり、それらはSiO2またはSiNのような封止層で任意に被覆される。その上の絶縁膜が被覆される基板の他の例は、次のものを含むが、それらに限定されない。金属基板(例えば、Ru,Al,Ni,Ti,Co,Pt、およびTiSi2,CoSi2,およびNiSi2のような金属シリサイド);金属窒化物を含む基板(例えば、TaN,TiN,WN,TaCN,TiCN,TaSiN,およびTiSiN);半導体材料(例えば、Si,SiGe,GaAs,InP,ダイアモンド,GaN,およびSiC);絶縁体(例えば、SiO2,Si34,HfO2,Ta25,ZrO2,TiO2,Al23,およびチタン酸バリウムストロンチウム);またはこれらの材料の任意の数の組み合わせを含む他の基板のような固体基板である。利用できる実際の基板は、利用できる絶縁層にも依存するであろう。
【0066】
絶縁膜を形成するための前駆体、およびBCHD/添加剤組成物は、膜堆積チャンバー内に導入され、基板に接触して、基板の少なくとも一つの表面に絶縁層を形成する。膜堆積チャンバーは、その中で堆積法が行なわれるデバイスの任意のエンクロージャーまたはチャンバーとすることができ、平行板型リアクター、コールドウォール型リアクター、ホットウォール型リアクター、枚葉式リアクター、マルチウェハリアクター、または他のタイプの堆積システムのようなものであるが、限定されない。
【0067】
従来技術においてより詳細に述べたように、絶縁層の誘電率を低減する付加的な処理によって、絶縁層は、その後に多孔質とすることができる。そのような処理は、アニール、UV光、または電子ビームを含むが限定されない。
【0068】
本明細書における開示および参考として取り込まれた文献に基づいて、low−k膜の堆積の間の制御されたプロセス変数を、当業者は容易に選択できるであろう。それは、RF電力、前駆体混合物および流量、反応器内の圧力、および基板温度を含む。
【0069】

以下の例は、本明細書における開示に関連して行なわれた実験を示す。例は、全てを含むことは意図されず、本明細書に記載された開示の範囲を制限することは意図されない。
【0070】
例1
背景技術に記載したように、BCHDは、通常、重合を避けるためにBHT抑制剤とともに供給される。BHTは、20℃で0.01トル未満の蒸気圧と、265℃の沸点とを有する。
【0071】
約12ccの精製されたBCHDを、内径12mm、長さ150mmのステンレススチール管6つに収容した。管の4つに、それぞれ100ppmw,250ppmw,500ppmw,および1000ppmwの濃度でBHTを加えた。6つの管は全て、アルゴンで充填した。BCHDのみを含む管の1つは、標準として利用するために20℃のままとした。残りの5つの管は、128℃で7日間、シリコンオイルバス中に設置した。下記表は、7日後のGC−FID分析結果を示す。下記表に示されるように、GC−FID分析では、BHTの有無によらず、BCHD含有量には顕著な違いが示されない。BCHDにおける重合を評価するためには、直接残渣測定のような他の技術が必要とされる。
【表2】

【0072】
例2
重合に及ぼす種々のガス環境の影響を調査するために、99.4%の純度を有する蒸留されたBCHDを150mL、図1の装置1の加熱された容器10に加えた。0.5L/minの流量のガスを、装置1に通過させた。CO2の場合、液体BCHDを通したガスのバブリングとともに液体の上方を流すことで試験を行なった。他の全ての場合においては、ガスは液体の上方を流した。加熱された容器10は、シリコーンオイルバス11により85℃に維持した。冷却器21は、冷却された容器20を3℃に維持した。全残渣のパーセンテージは、2.5時間後に加熱された容器10内に残留する不揮発性残渣の量を反映する。CO2ガス処理は、以下の条件において僅かに負の影響を有することがわかった。バブリング条件において負の影響は低減され、これはおそらく、蒸発がより迅速に起こることに起因する。BCHDの重合を増やすことにおける酸素の影響が立証された。
【表3】

【0073】
例3
いずれの化合物が、適切な揮発性および抑制作用を示すかを決定するため、99,4%の純度を有する蒸留BCHD 150mLを、以下にまとめた添加剤のそれぞれ示された濃度と混合し、図1の装置1の加熱された容器10に加えた。0.5L/minの流量の窒素は、装置1を通過させた。加熱された容器10は、シリコーンオイルバス11により85℃に保った。冷却器21は、冷却された容器20を3℃に保った。全残渣のパーセンテージは、2.5時間後に加熱された容器10内に残る残渣の量を反映する。
【0074】
測定できる最低の残渣は約0.01%であり、そこから蒸発が起こる容器の重さの違いによるものである。すなわち、以下の表にまとめた残渣の最も少ない量は、方法の出限界であった。いくつかのケースにおいて、残渣の量は秤量されないが、ガラス製の濃縮容器内に確認できる残渣の量から見積もった。低揮発性(例えば、PBN,25℃で0.005トル、BHT,20℃で0.010トル)の添加剤については、添加剤自体は蒸発しないものとみなした。存在する添加剤の重量は、それゆえ、BCHD自体に起因する残渣(“BCHD残渣”と称する。)を算出するために、全残渣から差し引かれる。
【0075】
PBN(ニトロン)、TEMPO、およびベンゾキノンがBCHD残渣の最も低い量を与え、一方、他の添加剤のいくつかは、BCHD単独の場合よりも高濃度の残渣を引き起こすことが結果に示され、それらは重合を抑制せずに開始剤(アセチルアセトン、リモネンオキサイド)として作用することがわかる。
【表4】

【0076】
*−添加剤は揮発性なので、全残渣と同一
例4
5,5−ジメチル−1−ピロリン N−オキサイド(DMPO)およびベンゾキノンの最も有効な濃度を決定するため、約99.9%の純度を有する蒸留BCHDを以下に示す量で、DMPO、ベンゾキノン、およびベンゾキノンとTEMPOとの組み合わせに混合し、図1の装置1の加熱された容器10に加えた。BCHD(例3の99.4%と比較すると99.9%)の純度は、従来知られているように、圧力、温度、および生成物の輸送速度の精製条件を最適化することによって達成した。これは、BCHDの蒸発の際に得られる残渣のレベルの減少をもたらし、抑制剤の添加前の例3の0.07%から222ppmwすなわち約0.02%までである。
【0077】
0.5L/minの流量を有する窒素を、装置1に通過させた。加熱された容器10は、シリコーンオイルバス11により85℃に保たれた。冷却器21は、冷却された容器20を3℃に保った。全残渣は、3時間後に加熱された容器10の中に残る不揮発性物質のppmwでの量を反映する。
【0078】
残渣の秤量の正確さもまた、例3より実質的に改善された。これは、残渣を溶媒に溶解し、軽い重量の蒸発皿に溶液を移し、溶媒を再蒸発させ、蒸発皿内の残渣を秤量することにより達成された。標準実験は、溶解された残渣なしに等しい量の溶媒を蒸発させて行ない、この改善された技術による残渣測定の精度は約1ppmであることが示された。
【0079】
試験された全ての抑制剤は、抑制剤なしの試料と比較して、残渣の実質的な減少をもたらすことが結果に示される。5ppmwの残渣レベルは、150ppmwのベンゾキノン抑制剤を用いて遂に達成された。7ppmwの同等のレベル(実験誤差内)は、150ppmwTEMPO+150ppmwベンゾキノンの組み合わせを用いて達成された。先に示された予備措置にしたがって同様に慎重な手順で実行されたものであるが、初期の試験(表の上部のデータ)において、より高い残渣レベルが同じ濃度のベンゾキノンについて得られている。残渣に観察された液滴は、おそらく精製装置の“クリーンアップ”、すなわち、精製のための使用による微量の不揮発性汚染物質の除去に起因する。同様の改善は、DMPOについても達成されることが予測される。
【表5】

【0080】
例5
BCHD/ベンゾキノン組成物は、市販の気化器内で試験した。気化器は、400sccmのヘリウム流量、85℃80トルで操作した。406gの液体BCHD/ベンゾキノン組成物は、気化器により5時間かけて輸送し、これは2g/minの流量に設定した。組成物の輸送は、3分のオンと2分のオフとの間の周期とした。シミュレーションが終了したとき、気化器を脱着して気化器内に残渣が残されたかどうかを決定した。気化器による流れを妨げるには不十分であるが、少量の薄膜が検出された。
【0081】
本発明の本質を説明するために述べられ図示された細部、材料、工程、および部品の配置における多くの付加的な変更は、添付した特許請求の範囲に示される本質および範囲内であることが当業者に理解される。したがって、本発明は上述した実施例および/または添付された図面中の特定の実施形態に限定されることが意図されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエンと少なくとも一種の添加剤とを含有し、50ppmw未満の不揮発性物質を含む、low−k膜を与えるための組成物。
【請求項2】
前記少なくとも一種の添加剤は、ニトロン類、キノン類、ニトロン類とキノン類との混合物、ニトロン類と安定なニトロオキサイド類との混合物、およびキノン類と安定なニトロオキサイド類との混合物からなる群から選択される請求項1の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも一種の添加剤はキノンを含み、前記組成物は電子供与種をさらに含む請求項2の組成物。
【請求項4】
前記添加剤は、20℃で約0.05トル〜約50トルの範囲内の蒸気圧を有する請求項1の組成物。
【請求項5】
前記蒸気圧は、20℃で約0.08トルから約10トルの範囲内である請求項4の組成物。
【請求項6】
前記添加剤は、5,5−ジメチル−1−ピロリン N−オキサイド(DMPO)を含む請求項2の組成物。
【請求項7】
前記添加剤は、約300ppmwから約1,000ppmwの量で存在する請求項6の組成物。
【請求項8】
前記添加剤はベンゾキノンを含む請求項5の組成物。
【請求項9】
前記添加剤は、約100ppmwから約500ppmwの間の量で存在する請求項8の組成物。
【請求項10】
前記添加剤は、ベンゾキノンとTEMPOとの混合物を含む請求項5の組成物。
【請求項11】
前記混合物は、約1ppmwから約150ppmwの間の量のベンゾキノンと、約100ppmwから約200ppmwの間のTEMPOとを含む請求項10の組成物。
【請求項12】
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン(BCHD)を安定化する方法であって、
BCHDを与える工程、および
ニトロン類、キノン類、ニトロン類とキノン類との混合物、ニトロン類と安定なニトロオキサイド類との混合物、およびキノン類と安定なニトロオキサイド類との混合物からなる群から選択される少なくとも一種の添加剤を前記BCHDに加える工程
を具備する方法。
【請求項13】
前記少なくとも一種の添加剤はキノンを含み、前記キノンに電子供与種を加える工程をさらに具備する請求項12の方法。
【請求項14】
前記BCHDを精製する工程をさらに具備し、前記添加剤は精製の1時間の間に加えられる請求項12の方法。
【請求項15】
前記BCHDは、少なくとも99.0%まで精製される請求項14の方法。
【請求項16】
前記添加剤は、蒸発容器内で前記BCHDに加えられる請求項15の方法。
【請求項17】
前記添加剤は、濃縮容器内で前記BCHDに加えられる請求項15の方法。
【請求項18】
約300ppmwと約1,000ppmwとの間の量の5,5−ジメチル−1−ピロリン N−オキサイドが、前記BCHDに加えられる請求項15の方法。
【請求項19】
約100ppmwと約500ppmwとの間の量のベンゾキノンが、前記BCHDに加えられる請求項15の方法。
【請求項20】
約1ppmwと約150ppmwとの間の量のベンゾキノン、および約100ppmwと約200ppmwとの間の量のTEMPOを含む混合物が、前記BCHDに加えられる請求項15の方法。
【請求項21】
基板上に絶縁膜層を形成する方法であって、
少なくとも1つの基板がその中に配置された反応チャンバーを与える工程、
前記反応チャンバー内に少なくとも一種の前駆体化合物を導入する工程、
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエンと、ニトロン類、キノン類、ニトロン類とキノン類との混合物、ニトロン類と安定なニトロオキサイド類との混合物、およびキノン類と安定なニトロオキサイド類との混合物からなる群から選択される少なくとも一種の添加剤とを含む組成物を、前記反応チャンバー内に導入する工程、および
前記少なくとも一種の前駆体化合物、前記組成物、および前記基板を接触させて、堆積プロセスを用いて前記基板の少なくとも1つの表面に絶縁膜を形成する工程
を具備する方法。
【請求項22】
前記少なくとも一種の添加剤はキノンを含み、前記組成物は電子供与種をさらに含む請求項21の方法。
【請求項23】
前記反応チャンバー内に導入する前に、キャリアガスの存在下、約70℃と約110℃との間の温度で前記組成物を気化する工程をさらに具備する請求項21の方法。
【請求項24】
前記添加剤は、約300ppmwと約1,000ppmwとの間の5,5−ジメチル−1−ピロリン N−オキサイドを含む請求項21の方法。
【請求項25】
前記添加剤は、約100ppmwと約500ppmwとの間の量のベンゾキノンを含む請求項21の方法。
【請求項26】
前記添加剤は、約1ppmwから約150ppmwのベンゾキノンと、約100ppmwと約200ppmwとの間のTEMPOとの混合物を含む請求項21の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−280652(P2010−280652A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−264748(P2009−264748)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】