説明

ビシクロ環置換アルキル基を有する2,4−ジアミノピリミジン化合物

【課題】PKCθ阻害活性を有する医薬、特に移植における急性拒絶反応の抑制用医薬組成物の有効成分として有用な化合物を提供する。
【解決手段】本発明者らは、PKCθ阻害活性を有する化合物について検討し、2,4-ジアミノピリミジンの2位アミノ基上にアラルキル等の構造を有し、さらに4位アミノ基上にビシクロ環置換アルキル基を有することを特徴とする化合物又はその塩が、優れたPKCθ阻害活性を有することを確認し、本発明を完成した。本発明の、ビシクロ環置換アルキル基を有する2,4-ジアミノピリミジン化合物は、PKCθ阻害剤、移植における急性拒絶反応抑制剤として使用しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬組成物、殊に移植における急性拒絶反応の抑制用医薬組成物の有効成分として有用なビシクロ環置換アルキル基を有する2,4-ジアミノピリミジン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテインキナーゼC(PKC)は、プロテインキナーゼファミリーのひとつで、現在までに少なくとも10種類のisozyme が同定されており、一次構造上の違いから3つのサブファミリーに分類されている。
【0003】
これら3つのサブファミリーの活性化機構は、サブファミリー間で非常に異なっている。カルシウムとジアシルグリセロール(DAG)によって活性化されるタイプのPKCはclassical PKC (cPKC)、DAGによって活性化されるが、その活性化においてカルシウムを必要としないタイプのPKCはnovel PKC (nPKC)、活性化にカルシウム・DAGともに必要としないタイプのPKCはatypical PKC (aPKC)と、それぞれ呼ばれている。
【0004】
さらに、各サブファミリーは、複数のisozymeから成り、cPKCはPKCα、PKCβ、PKCγ、nPKCはPKCδ、PKCε、PKCη、PKCθ、aPKCはPKCζ、PKCλに分類される。
各isozymeの発現分布は比較的広範にわたっているが、nPKCのひとつであるPKCθの発現は、Tリンパ球と骨格筋に限局している。また、PKCθのノックアウトマウスの表現型が、T細胞シグナル伝達阻害やT cell anergyの誘導であり、また、骨格筋の異常はみとめられていないことから、PKCθが副作用の少ない免疫抑制剤のターゲットとして有望である。
【0005】
また、T細胞レセプターシグナル伝達経路において、現行の移植医療において広く使用されているFK506やサイクロスポリンAのターゲット分子であるカルシニューリンと、PKCθが相補的な関係にあることから、カルシニューリン阻害剤とPKCθ阻害剤の併用により、相乗的な免疫抑制効果を発現する可能性がある。
【0006】
従って、PKCθを選択的に阻害することによって、副作用が少ない状態で免疫抑制活性を発現し、さらに、移植医療においては、カルシニューリン阻害剤との併用時に、相乗的な免疫抑制活性を発現出来る可能性があると考えられる。
【0007】
特許文献1では、式(A)で示される化合物がPKCθを阻害し、免疫抑制剤として有用であることが報告されている。具体的な化合物としてピリミジン構造を有する化合物が開示されているが、本発明化合物の具体的開示はない。
【化1】

(式中のR2は
【化2】

等を表す。その他の記号は当該公報参照。)
【0008】
特許文献2では、式(B)で示される化合物がPKCθを阻害し、免疫抑制剤として有用であることが報告されている。具体的な化合物としてピリミジン構造を有する化合物が開示されているが、本発明化合物の具体的開示はない。
【化3】

(式中のR3は
【化4】

を表す。その他の記号は当該公報参照。)
【0009】
特許文献3では、式(C)で示される化合物がPKCθを阻害し、免疫抑制剤として有用であることが報告されている。具体的な化合物としてピリミジン構造を有する化合物が開示されているが、本発明化合物の具体的開示はない。
【化5】

(式中のR1は
【化6】

を表す。その他の記号は当該公報参照。)
【0010】
特許文献4では、式(D)で示される化合物がサイクリン依存性キナーゼ(CDK)、オーロラBのキナーゼ等に対する阻害活性を有し、過度又は異常な細胞増殖を特徴とする疾患の治療および予防に有用であることが報告されている。具体的な化合物としてピリミジン構造を有する化合物が開示されており、臓器移植における免疫抑制に有益であるとの記載があるが、本発明化合物の具体的開示はない。
【化7】

(式中の記号は当該公報参照。)
【0011】
特許文献5では、式(E)で示される化合物がポロ様キナーゼ(PLK)を阻害し、腫瘍、神経変性疾患、免疫系の活性化に関わる疾患の予防および/または治療に有用であることが報告されている。具体的な化合物としてピリミジン構造を有する化合物が開示されているが、本発明化合物の具体的開示はなく、またPKCθ阻害活性に関する記述や移植における急性拒絶反応の抑制に有用であるとの記載はない。
【化8】

(式中の記号は当該公報参照。)
【0012】
特許文献6では、式(F)で示される化合物がG蛋白質共役型レセプター蛋白質88(GPR88)を阻害し、中枢疾患の予防および/または治療に有用であることが報告されている。具体的な化合物としてピリミジン構造を有する化合物が開示されているが、本発明化合物の具体的開示はなく、またPKCθ阻害活性に関する記述や移植における急性拒絶反応の抑制に有用であるとの記載はない。
【化9】

(式中のR1は水素等、Aは置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよい複素環アルキル、置換されていてもよいC3-8シクロアルキル等を表す。その他の記号は当該公報参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2004/067516号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2006/014482号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2007/076247号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2003/032997号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2004/043936号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2004/054617号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、PKCθ阻害活性を有する医薬、特に移植における急性拒絶反応の抑制用医薬組成物の有効成分として有用なビシクロ環置換アルキル基を有する2,4-ジアミノピリミジン化合物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、PKCθ阻害活性を有する化合物について検討した結果、2,4-ジアミノピリミジンの2位アミノ基上にアラルキル等の構造を有し、さらに4位アミノ基上にビシクロ環置換アルキル基を有することを特徴とする化合物又はその塩が、優れたPKCθ阻害活性を有することを知見し本発明を完成した。
即ち、本発明は、式(I)の化合物又はその製薬学的に許容される塩、並びに、式(I)の化合物又はその製薬学的に許容される塩及び製薬学的に許容される賦形剤を含有する医薬組成物に関する。
【化10】

(式中、
R1は、
【化11】

又は
【化12】

を示し;
R2は、ハロゲン又は-Q-(置換されていてもよいC1-6アルキル)を示し;
Qは、O又はSを示し;
nは、1又は2を示し;及び
Aは、CH又はNを示す。)
なお、特に記載がない限り、本明細書中のある化学式中の記号が他の化学式においても用いられる場合、同一の記号は同一の意味を示す。
【0016】
また、本発明は、式(I)の化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有するPKCθ阻害剤、及び移植における急性拒絶反応抑制剤に関する。
さらに、本発明は、移植における急性拒絶反応抑制剤の製造のための式(I)の化合物又はその製薬学的に許容される塩の使用、並びに、式(I)の化合物又はその製薬学的に許容される塩の有効量を患者に投与することからなる移植における急性拒絶反応の抑制方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
式(I)の化合物又はその製薬学的に許容される塩は、PKCθ阻害作用を有し、移植における急性拒絶反応の抑制剤として使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書中において、「C1-6アルキル」とは、直鎖又は分枝状の炭素数が1から6のアルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル基等であり、別の態様としては、C1-4アルキルであり、さらに別の態様としては、メチル及びエチルである。
【0019】
本明細書中において、「ハロゲン」とは、F、Cl、Br及びIを意味する。
【0020】
本明細書中において、「-Q-(置換されていてもよいC1-6アルキル)」における「置換されていてもよい」とは、C1-6アルキル部分が、無置換、若しくは置換基を1〜5個有していることを意味し、別の態様としては、無置換、若しくは1〜5個のハロゲンで置換されていることを意味し、さらに別の態様としては、無置換、若しくは1〜3個の-Fで置換されていることを意味する。なお、複数個の置換基を有する場合、それらの置換基は同一であっても、互いに異なっていてもよい。
【0021】
式(I)の化合物のある態様を以下に示す。
(1)R1が、
【化13】

であり、別の態様として、R1が、
【化14】

であり、さらに別の態様として、R1が、
【化15】

である化合物。
(2)R2が、ハロゲン又は-Q-(ハロゲンで置換されていてもよいC1-6アルキル)であり、別の態様としては、-Cl、-O-(ハロゲンで置換されていてもよいC1-6アルキル)又は-S-(C1-6アルキル)であり、さらに別の態様としては、-Cl、-O-CH3、-O-CHF2、-O-CF3、-O-CH2CF3又は-S-CH3である化合物。
(3)nが、1であり、別の態様としては、2である化合物。
(4)AがCHであり、別の態様としては、AがNである化合物。
(5)上記(1)〜(4)に記載の態様の二以上の組み合わせである化合物。
【0022】
式(I)の化合物には、置換基の種類によって、互変異性体や幾何異性体が存在しうる。本明細書中、式(I)の化合物が異性体の一形態のみで記載されることがあるが、本発明は、それ以外の異性体も包含し、異性体の分離されたもの、あるいはそれらの混合物も包含する。
また、式(I)の化合物には、不斉炭素原子や軸不斉を有する場合があり、これに基づく光学異性体が存在しうる。本発明は、式(I)の化合物の光学異性体の分離されたもの、あるいはそれらの混合物も包含する。
【0023】
さらに、本発明は、式(I)で示される化合物の製薬学的に許容されるプロドラッグも包含する。製薬学的に許容されるプロドラッグとは、加溶媒分解により又は生理学的条件下で、本発明化合物に変換される化合物である。プロドラッグを形成する基としては、例えば、Prog. Med., 5, 2157-2161(1985)や、「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 分子設計163-198に記載の基が挙げられる。
【0024】
また、式(I)の化合物の塩とは、式(I)の化合物の製薬学的に許容される塩であり、置換基の種類によって、酸付加塩又は塩基との塩を形成する場合がある。具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基や、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リシン、オルニチン等の有機塩基との塩、アセチルロイシン等の各種アミノ酸及びアミノ酸誘導体との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
【0025】
さらに、本発明は、式(I)の化合物及びその製薬学的に許容される塩の各種の水和物や溶媒和物、及び結晶多形の物質も包含する。また、本発明は、種々の放射性又は非放射性同位体でラベルされた化合物も包含する。
【0026】
(製造法)
式(I)の化合物及びその製薬学的に許容される塩は、その基本構造あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成法を適用して製造することができる。その際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料から中間体へ至る段階で適当な保護基(容易に当該官能基に転化可能な基)に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。このような保護基としては、例えば、ウッツ(P. G. M. Wuts)及びグリーン(T. W. Greene)著、「Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis(第4版、2006年)」に記載の保護基等を挙げることができ、これらの反応条件に応じて適宜選択して用いればよい。このような方法では、当該保護基を導入して反応を行なったあと、必要に応じて保護基を除去することにより、所望の化合物を得ることができる。
また、式(I)の化合物のプロドラッグは、上記保護基と同様、原料から中間体へ至る段階で特定の基を導入、あるいは得られた式(I)の化合物を用いてさらに反応を行なうことで製造できる。反応は通常のエステル化、アミド化、脱水等、当業者に公知の方法を適用することにより行うことができる。
以下、式(I)の化合物の代表的な製造法を説明する。各製法は、当該説明に付した参考文献を参照して行うこともできる。なお、本発明化合物の製造法は以下に示した例には限定されない。
【0027】
製法1
【化16】

(式中、Lv1、Lv2は脱離基を示す。以下同様。)
本製法は、化合物(1)とアミン化合物(2)の求核置換反応により化合物(3)を製造し、さらに得られた化合物(3)とアミン化合物(4)の求核置換反応により、化合物(5)を得た後、脱保護することにより式(I-1)の化合物を製造する方法である。ここで、脱離基の例には、ハロゲン、メタンスルホニルオキシ、メチルスルフィニル、メチルスルホニル、p-トルエンスルホニルオキシ基等が含まれる。
この反応では、化合物(1)と化合物(2)、もしくは化合物(3)と化合物(4)を等量若しくは一方を過剰量用い、これらの混合物を、反応に不活性な溶媒中、又は無溶媒下、冷却下から加熱還流下、好ましくは0℃〜80℃において、通常0.1時間〜5日間撹拌する。ここで用いられる溶媒の例としては、特に限定はされないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、アセトニトリル及びこれらの混合物が挙げられる。トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン若しくはN-メチルモルホリン等の有機塩基、又は炭酸カリウム、炭酸ナトリウム若しくは水酸化カリウム等の無機塩基の存在下で反応を行うのが、反応を円滑に進行させる上で有利な場合がある。なお、先に化合物(1)と(4)を反応させた後、化合物(2)を反応させても良い。
〔文献〕
S. R. Sandler及びW. Karo著、「Organic Functional Group Preparations」、第2版、第1巻、Academic Press Inc.、1991年
日本化学会編「実験化学講座(第5版)」14巻(2005年)(丸善)
製法2
【化17】

本製法は、化合物(I-1)にR1基のケトン体またはアルデヒド体を反応させて還元的にアルキル化し、式(I-2)の化合物を製造する方法である。
この反応では、化合物(I-1)とR1基のケトン体またはアルデヒド体を還元剤の存在下、反応に不活性な溶媒中、-45℃〜加熱還流下、好ましくは0℃〜室温において、通常0.1時間〜5日間撹拌する。ここで用いられる溶媒の例としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール等のアルコール類、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン若しくはクロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド及びこれらの混合物が挙げられる。還元剤としては、シアン化水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム等が挙げられる。モレキュラーシーブス等の脱水剤、又は酢酸、塩酸、チタニウム(IV)イソプロポキシド錯体等の酸存在下で反応を行うことが好ましい場合がある。反応によっては、カルボニル化合物と一級又は二級アミン化合物との縮合によりイミンが生成し、安定な中間体として単離できる場合がある。そのような場合には、イミン中間体を単離した後に、還元反応により目的物を得ることもできる。また、前記還元剤での処理の代わりに、メタノール、エタノール、酢酸エチル等の溶媒中、酢酸、塩酸等の酸の存在下又は非存在下で、還元触媒(例えば、パラジウム炭素、ラネーニッケル等)を用いて反応を行うこともできる。この場合、反応を常圧から50気圧の水素雰囲気下で、冷却下から加熱下で行うことが好ましい。
〔文献〕
A. R. Katritzky及びR. J. K. Taylor著、「Comprehensive Organic Functional Group Transformations II」、第2巻、Elsevier Pergamon、2005年
日本化学会編「実験化学講座(第5版)」14巻(2005年)(丸善)
【0028】
(原料化合物の製法)
本発明化合物の製造に使用する原料は、例えば、後述の製造例に記載の方法または当業者にとって自明な方法、あるいはそれらの変法等を適用することによって、入手可能な公知化合物から製造することができる。
【0029】
式(I)の化合物は、遊離化合物、その製薬学的に許容される塩、これらの水和物や溶媒和物、あるいは結晶多形の物質として単離され、精製される。式(I)の化合物の製薬学的に許容される塩は、常法の造塩反応に付すことにより製造することもできる。
単離、精製は、抽出、分別結晶化、各種分画クロマトグラフィー等、通常の化学操作を適用して行なわれる。
各種の異性体は、適当な原料化合物を選択することにより製造でき、あるいは異性体間の物理化学的性質の差を利用して分離することができる。例えば、光学異性体は、ラセミ体の一般的な光学分割法(例えば、光学活性な塩基又は酸とのジアステレオマー塩に導く分別結晶化や、キラルカラム等を用いたクロマトグラフィー等)により得られ、また、適当な光学活性な原料化合物から製造することもできる。
【0030】
式(I)の化合物の薬理活性は、以下の試験により確認した。
【0031】
試験方法1:ヒトPKCθ酵素阻害活性測定
HTRFR KinEASETM S1キット(CIS bio)を使用して試験を実施した。384穴プレート(CORNING)へ薬液4μL、STK Substrate 1-biotin(final 250nM)およびFull-length human PKCθ(Carna Biosciences、final 31ng/mL)混合液3μLを入れて室温で30分静置後、ATP液(final 30μM)3μLを分注し、酵素反応を室温で1時間行った。その後、Sa-XL665(final 31.25nM)および抗体STK-Antibody-Cryptate(final 800倍希釈)を含む反応停止液10μLを分注し、室温で1時間放置した。Discovery(PACKARD)にて620nm(Cryptate)および665nm(XL665)の蛍光強度を測定し、Vehicleを0%、Blankを100%抑制として、抑制率およびIC50値を算出した。
試験結果を、表1に示す。Exは後記実施例化合物番号を示す。
【表1】

【0032】
試験方法2:ヒトIL-2産生抑制活性測定
i)プラスミドの調製
データベース記載のDNA塩基配列に対応するHuman IL-2 promoter領域のDNA断片(445bp)をクローニングし、レポータージーンアッセイ用VectorであるpGL3 basicに挿入し、pGL3-IL2-pro-43を取得した。
ii)Jurkat細胞の維持・継代
ヒトT細胞系培養細胞であるJurkat, Clone E6-1(ATCC No.TIB-152)を10%FBS RPMI 1640(シグマ)を培地として、37℃、5% CO2、飽和湿度条件下にて培養し、confluentの約90%状態になった時点で、継代を行った。
iii)トランスフェクションおよび播種
血球計数板を用いて細胞数を計測後、細胞濃度が2.5 x 107cells/mLになるように、10%FBS RPMI 1640(シグマ)を用いて細胞懸濁液を調製し、pGL3-IL2-pro-43 10μgを混合した。次いで、調製した各plasmid混合液に2.5x107cells/mLに調製したJurkat細胞を400μL加えて混ぜ、Gene PulsorR Cuvette(BIO-RAD)に全量添加した。Gene PulsorRII(BIO-RAD)により300V, 975μFにてplasmidを導入し、plasmid導入済みJurkat細胞全量を、10%FBS RPMI 1640 2.5mLに軽く懸濁した後、96 well plate(Corning Coster)に50μL/wellにて播種し、37℃、5% CO2、飽和湿度条件下で、約10時間培養した。
iv)ヒトIL-2産生抑制活性の測定
薬物溶液を25μL/wellずつ添加し、さらに抗CD3抗体、抗CD28抗体(Pharmingen)(ともに終濃度1μg/mLの1000倍液)を10%FBS RPMI1640で250倍希釈した混合液を25μL/wellずつ添加した。これを、37℃、5% CO2、飽和湿度条件下で、約14時間培養した。アッセイはduplicateにて実施した。
Bright-GloTM Luciferase Assay System(Promega)付属の基質溶液を100μL/wellずつ加え、穏やかに混和した。マルチラベルカウンター(ARVO SX、WALLAC)を反応温度:25℃、Shaking Duration:1sec、Measurement time:1secに設定し、各96 wells plateの測定wellを設定して、Firefly luciferase活性を測定した。
【0033】
試験方法3:チトクロームP450(CYP3A4)酵素阻害活性測定
i)阻害試験I (残存率Iの算出)
96穴プレートを用いて、基質2μM(ミダゾラム)、試験化合物5μM及びヒト肝ミクロソーム(0.1mg protein/mL)を0.1mM EDTA、1mM NADPHを含む100mMリン酸緩衝液(pH7.4)、総量150μL中で37℃で20分間インキュベーションした。その後アセトニトリル80%含有水溶液130μLを加えて反応を停止した。その後サンプルをLC/MS/MSで分析し、下記の数式1を用いて残存率Iを算出した。
(数式1)
残存率 I (%) = Ai,I/ Ao,I x 100
Ai,I=阻害試験Iで試験化合物存在下における反応後の代謝物の生成量
Ao,I=阻害試験Iで試験化合物非存在下における反応後の代謝物の生成量
ii)阻害試験II(残存率IIの算出)
96穴プレートを用いて、試験化合物5μM及びヒト肝ミクロソーム(0.1mg protein/mL)を0.1mM EDTA、1mM NADPHを含む100mMリン酸緩衝液(pH7.4)総量145μL中で、37℃で30分間インキュベーションした。その後、基質であるミダゾラム2μMを添加して総量を150μLにし、37℃で20分間インキュベーションした。インキュベーション後、アセトニトリル80%含有水溶液130μLを加えて反応を停止し、サンプルをLC/MS/MSで分析し、下記の式2を用いて残存率IIを算出した。
(数式2)
残存率 II(%) = Ai,II/Ao,II /(Ai,I/Ao,I)x 100
Ai,II=阻害試験IIで試験化合物存在下における反応後の代謝物の生成量
Ao,II=阻害試験IIで試験化合物非存在下における反応後の代謝物の生成量
試験結果を、表2に示す。Exは後記実施例化合物番号を示す。
【表2】

【0034】
この試験により、式(I)の化合物が、チトクロームP450(CYP3A4)の酵素活性をあまり低下させないことが確認できた。
【0035】
以上の各試験の結果、式(I)の化合物はPKCθ阻害作用を有し、またCYP阻害が低減されていることから、移植における急性拒絶反応の抑制剤等に有用であることは明らかである。
【0036】
式(I)の化合物又はその製薬学的に許容される塩の1種又は2種以上を有効成分として含有する医薬組成物は、当分野において通常用いられている薬剤用賦形剤、薬剤用担体等を用いて、通常使用されている方法によって調製することができる。
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、又は、関節内、静脈内、筋肉内等の注射剤、坐剤、点眼剤、眼軟膏、経皮用液剤、軟膏剤、経皮用貼付剤、経粘膜液剤、経粘膜貼付剤、吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
【0037】
経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、1種又は2種以上の有効成分を、少なくとも1種の不活性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、及び/又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えばステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤やカルボキシメチルスターチナトリウム等のような崩壊剤、安定化剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質のフィルムで被膜してもよい。
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤又はエリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水又はエタノールを含む。当該液体組成物は不活性な希釈剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
【0038】
非経口投与のための注射剤は、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤又は乳濁剤を含有する。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水又は生理食塩液が含まれる。非水性の溶剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はオリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、又はポリソルベート80(局方名)等がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、又は溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解又は懸濁して使用することもできる。
【0039】
外用剤としては、軟膏剤、硬膏剤、クリーム剤、ゼリー剤、パップ剤、噴霧剤、ローション剤、点眼剤、眼軟膏等を包含する。一般に用いられる軟膏基剤、ローション基剤、水性又は非水性の液剤、懸濁剤、乳剤等を含有する。例えば、軟膏又はローション基剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、白色ワセリン、サラシミツロウ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸グリセリン、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウロマクロゴール、セスキオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
【0040】
吸入剤や経鼻剤等の経粘膜剤は固体、液体又は半固体状のものが用いられ、従来公知の方法に従って製造することができる。例えば公知の賦形剤や、更に、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、滑沢剤、安定剤や増粘剤等が適宜添加されていてもよい。投与は、適当な吸入又は吹送のためのデバイスを使用することができる。例えば、計量投与吸入デバイス等の公知のデバイスや噴霧器を使用して、化合物を単独で又は処方された混合物の粉末として、もしくは医薬的に許容し得る担体と組み合わせて溶液又は懸濁液として投与することができる。乾燥粉末吸入器等は、単回又は多数回の投与用のものであってもよく、乾燥粉末又は粉末含有カプセルを利用することができる。あるいは、適当な駆出剤、例えば、クロロフルオロアルカン、ヒドロフルオロアルカン又は二酸化炭素等の好適な気体を使用した加圧エアゾールスプレー等の形態であってもよい。
【0041】
通常経口投与の場合、1日の投与量は、体重あたり約0.0001〜100 mg/kg程度であり、これを1回であるいは2乃至4回に分けて投与する。静脈内投与される場合は、1日の投与量は、体重当たり約0.0001〜10 mg/kgが適当で、1日1回〜複数回に分けて投与する。また、吸入の場合は、体重当たり約0.0001〜1 mg/kgを1日1回〜複数回に分けて投与する。投与量は症状、年令、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定される。
【0042】
式(I)の化合物は、前述の式(I)の化合物が有効性を示すと考えられる疾患の種々の治療剤又は予防剤と併用することができる。当該併用は、同時投与、或いは別個に連続して、若しくは所望の時間間隔をおいて投与してもよい。同時投与製剤は、配合剤であっても別個に製剤化されていてもよい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例に基づき、式(I)の化合物の製造法をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、下記実施例に記載の化合物に限定されるものではない。また、原料化合物の製法を製造例に示す。また、式(I)の化合物の製造法は、以下に示される具体的実施例の製造法のみに限定されるものではなく、式(I)の化合物はこれらの製造法の組み合わせ、あるいは当業者に自明である方法によっても製造されうる。
【0044】
また、実施例、製造例及び後記表中において、以下の略号を用いることがある。
PEx:製造例番号、Ex:実施例番号、Str:構造式(構造式中に、例えばHClの記載がある場合は、その化合物が塩酸塩であることを意味し、2HClの記載がある場合は、その化合物が2塩酸塩であることを意味する。)、Syn:製造法(数字のみの場合は同様に製造した実施例番号を、数字の前にPがある場合は同様に製造した製造例番号をそれぞれ示す。)、Dat:物理化学的データ、NMR1:DMSO-d6中の1H NMRにおけるδ(ppm)、NMR2:CDCl3中の1H NMRにおけるδ(ppm)、FAB+:FAB-MS (陽イオン)、ESI+:ESI-MS (陽イオン)、TEA:トリエチルアミン、TFA:トリフルオロ酢酸、THF:テトラヒドロフラン、DMF:N,N-ジメチルホルムアミド、DME:ジメトキシエタン、MeOH:メタノール、EtOAc:酢酸エチル、MeCN:アセトニトリル、HOBt:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン、MCPBA:m-クロロ過安息香酸、Pd/C:パラジウム炭素。
【0045】
製造例1
ドライアイス-アセトン浴で冷却した(メトキシメチル)(トリフェニル)ホスホニウム クロリド(164.57g)のTHF(500ml)懸濁液に、窒素気流下、-55度以下でn-ブチルリチウムのヘキサン溶液(濃度1.65M、281.3ml)を滴下した。滴下後、反応混合液を昇温させ、室温にて1時間撹拌した。撹拌後、反応混合液を氷冷し、4-ヒドロキシ-4-メチルシクロヘキサノン(20.51g)のTHF(205ml)溶液を滴下した。滴下後、反応混合液を室温まで昇温し、15時間撹拌した。反応混合液に水およびEtOAcを順次加えて撹拌した後、有機層を分取した。水層をさらにEtOAcで抽出し、有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を除去後、減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン-EtOAc)にて精製することにより、4-(メトキシメチレン)-1-メチルシクロヘキサノール(21.37g)を得た。
【0046】
製造例2、3
4-(メトキシメチレン)-1-メチルシクロヘキサノール(5.0g)のMeCN(50ml)溶液に、水(8.6ml)とTFA(3.6ml)を順次加え、室温にて4時間攪拌した。反応混合液を飽和重曹水にて中性に調節した後、EtOAcで4回抽出した。有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を除去後、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン-EtOAc)にて精製し、先ずシス-4-ヒドロキシ-4-メチルシクロヘキサンカルバルデヒド(2.37g)(製造例2)を溶出し、次いでトランス-4-ヒドロキシ-4-メチルシクロヘキサンカルバルデヒド(2.7g)(製造例3)を溶出した。
【0047】
製造例4
氷冷下、4-ヒドロキシビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルボン酸(100mg)のDMF(2ml)溶液にN,O-ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(86mg)、HOBt(120mg)、3-エチル-1-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(225mg)、DIPEA(352ul)を順次加え、室温で5時間撹拌した。反応混合物をEtOAc(50ml)で希釈後、水(20ml)で2回、飽和食塩水(20ml)で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を除去後、減圧下溶媒を留去し、4-ヒドロキシ-N-メトキシ-N-メチルビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルボキサミドを72mg得た。
【0048】
製造例5
窒素雰囲気下、-60℃で4-ヒドロキシ-N-メトキシ-N-メチルビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルボキサミド(130mg)のトルエン(3ml)溶液に1.01M水素化ジイソブチルアルミニウムのトルエン溶液(1.3 ml)を加え、同温度で1時間撹拌した。反応混合物にロシェル塩水溶液(5ml)を加え、室温で15分間撹拌し、セライトでろ過した。ろ液を減圧濃縮し、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-MeOH)にて精製することにより4-ヒドロキシビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルバルデヒドを81mg得た。
【0049】
製造例6
4-(メトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルボン酸(200mg)のトルエン(1.67ml)懸濁液に、室温でTEA(0.315ml)とジフェニルりん酸アジド(0.224ml)を加え、同温度で30分間撹拌し、その後、さらに90℃で1時間撹拌した。反応混合液をEtOAcで希釈し、飽和重曹水、水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。残渣をジクロロメタン(1.67ml)に溶解し、室温でtert-ブタノール(0.177ml)とクロロトリメチルシラン(0.024ml)を加えた。同温度で4時間撹拌した後、反応混合物をEtOAcで希釈し、飽和重曹水、水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去した残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン-EtOAc)で精製し、4-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルボン酸メチルを202.1mg得た。
【0050】
製造例8
4-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルボン酸メチル(216.7mg)の1,4-ジオキサン(1.73ml)溶液に水酸化リチウム一水和物(64.2mg)の水(1.08ml)溶液を加え、60℃で1時間撹拌した。室温に冷却後、1M塩酸(1.68mL)を加え、減圧下溶媒を留去した。水を加え、析出している粉末を濾取後、乾燥し、4-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルボン酸を191.8mg得た。
【0051】
製造例9
室温で、4-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルボン酸(185mg)のDME(1.85ml)懸濁液にN-メチルモルホリン(0.091ml)を加えて溶解した。氷冷下、クロロ炭酸イソブチル(0.107ml)を滴下し、同温度で40分間撹拌した。析出した白色不溶物を濾去し、DME(0.9ml)で洗浄した。濾液を氷冷し、水素化ホウ素ナトリウム(52.0mg)を加え、次いでMeOH(0.555ml)をゆっくりと滴下した。室温で50分間撹拌した後、反応液を氷冷し、EtOAcで希釈した。1M塩酸(2.06ml)を加えて酸性にし、有機層を分取した。有機層を水(2回)、飽和重曹水、水、次いで飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン-EtOAc)にて単離精製した。目的物を含むフラクションを減圧濃縮し、tert-ブチル [4-(ヒドロキシメチル)ビシクロ[2.2.2]オクト-1-イル]カルバマートを168.7mg得た。
【0052】
製造例10
氷冷下、tert-ブチル [4-(ヒドロキシメチル)ビシクロ[2.2.2]オクト-1-イル]カルバマート(165mg)とTEA(0.117ml)のジクロロメタン(0.825ml)-EtOAc(2.48ml)混合溶液にメタンスルホニル クロリド(0.055ml)を加え、同温で30分間撹拌した。反応液をEtOAcで希釈し、水、飽和重曹水、水、飽和食塩水の順で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を除き、減圧下溶媒を留去し、メタンスルホン酸{4-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ビシクロ[2.2.2]オクト-1-イル}メチルを213mg得た。
【0053】
製造例11
メタンスルホン酸{4-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ビシクロ[2.2.2]オクト-1-イル}メチル(212mg)とアジ化ナトリウム(124mg)のDMF(2.12ml)と水(0.212ml)懸濁液を120℃で27時間撹拌した。反応液を冷却後、EtOAcで希釈し、水、飽和食塩水の順で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を除き、減圧下溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ノルマルヘキサン-EtOAc)にて精製することにより、tert-ブチル [4-(アジドメチル)ビシクロ[2.2.2]オクト-1-イル]カルバマートを168mg得た。
【0054】
製造例12
tert-ブチル [4-(アジドメチル)ビシクロ[2.2.2]オクト-1-イル]カルバマート(165mg)のTHF(1.32ml)溶液にトリフェニルホスフィン(185.2mg)を加え室温で11時間撹拌した。次いで、反応混合物に水(0.063ml)を加え同温度で13時間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-MeOHで開始し、途中でクロロホルム-MeOH-濃アンモニア水に変更)にて精製し、tert-ブチル [4-(アミノメチル)ビシクロ[2.2.2]オクト-1-イル]カルバマートを145.5mg得た。
【0055】
製造例13
氷冷下、4-クロロ-2-(メチルスルファニル)ピリミジン-5-カルボニトリル(92mg)のDMF(0.736ml)溶液にDIPEA(0.104ml)、tert-ブチル [4-(アミノメチル)ビシクロ[2.2.2]オクト-1-イル]カルバマート(127.3mg)を加え、室温にて1.5時間撹拌した。1M塩酸(0.104ml)と水(4.5ml)を加え、析出する粉末を濾取して水洗後、乾燥し、tert-ブチル [4-({[5-シアノ-2-(メチルスルファニル)ピリミジン-4-イル]アミノ}メチル)ビシクロ[2.2.2]オクト-1-イル]カルバマートを192.7mg得た。
【0056】
製造例15
氷冷下、tert-ブチル [4-({[5-シアノ-2-(メチルスルファニル)ピリミジン-4-イル]アミノ}メチル)ビシクロ[2.2.2]オクト-1-イル]カルバマート(188.4mg)のジクロロメタン(2.26ml)溶液に75%MCPBA(含水品)(128.9mg)を加え、同温度で1時間撹拌した。反応液に飽和重曹水を加え、EtOAcで抽出した。有機層を飽和重曹水で2回、水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を除去後、減圧下溶媒を留去し、tert-ブチル [4-({[5-シアノ-2-(メチルスルフィニル)ピリミジン-4-イル]アミノ}メチル)ビシクロ[2.2.2]オクト-1-イル]カルバマートを212.6mg得た。
【0057】
製造例17
tert-ブチル [4-({[5-シアノ-2-(メチルスルフィニル)ピリミジン-4-イル]アミノ}メチル)ビシクロ[2.2.2]オクト-1-イル]カルバマート(200mg)のDMF(1.2ml)溶液に2-(トリフルオロメトキシ)ベンジルアミン(104.8mg)を室温で加え、3.5時間撹拌した。反応混合物に水(12mL)と1M塩酸(0.072ml)を加え、析出する粉末を濾取した。水とヘキサンで洗浄後、乾燥し、tert-ブチル (4-{[(5-シアノ-2-{[2-(トリフルオロメトキシ)ベンジル]アミノ}ピリミジン-4-イル)アミノ]メチル}ビシクロ[2.2.2]オクト-1-イル)カルバマートを239.4mg得た。
【0058】
製造例29
氷冷下、4-シアノビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボン酸メチル(1.2g)のMeOH(150ml)溶液に、窒素気流下、塩化ニッケル(II)六水和物(0.24g)、水素化ホウ素ナトリウム(2.53g)を順次加え、同温度で40分間撹拌した。氷冷下、反応混合液に水(80ml)を加え、同温度で40分間撹拌した。その後、反応混合液を濃塩酸でpH2以下に調節し、室温にて10分間撹拌した。次いで、1M水酸化ナトリウム水溶液でpH9.8に調節し、クロロぎ酸ベンジル(3.4g)を滴下し、室温にて2.5時間撹拌した。次いで、1M塩酸にてpH3.0に調節し、EtOAcと塩化ナトリウムを加え、有機層を分取した。有機層を水(2回)、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を除去後、減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン-EtOAc)にて精製することにより、4-({[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}メチル)ビシクロ[2.2.1]へプタン-1-カルボン酸メチルを1.4g得た。
【0059】
製造例30
4-({[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}メチル)ビシクロ[2.2.1]へプタン-1-カルボン酸メチル(1.4g)のMeOH(10ml)溶液に、水酸化カリウム(495mg)の水(1.4ml)溶液を加え、4時間加熱還流した。室温に冷却後、反応混合液を減圧濃縮し、残渣をEtOAcと水で溶解し、1M塩酸でpH4に調節した。有機層を分取し、水層をEtOAcで3回抽出した。有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を除去後、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン-EtOAc)にて精製することにより、4-({[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}メチル)ビシクロ[2.2.1]へプタン-1-カルボン酸を856mg得た。
【0060】
製造例31
ベンジル ({4-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]ビシクロ[2.2.1]ヘプト-1-イル}メチル)カルバマート(610mg)のMeOH(20ml)溶液に10%Pd/C(60mg)を加え、水素雰囲気下、常圧、室温にて3時間撹拌した。触媒をセライトで濾去し、濾液を減圧下濃縮した。得られた残渣をMeOH(20ml)に溶解し、再度10%Pd/C(60mg)を加え、水素雰囲気下、常圧、室温にて1時間撹拌した。触媒をセライトで濾去し、濾液を減圧下濃縮することでtert-ブチル [4-(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-1-イル]カルバマートを427mg得た。
【0061】
製造例32
氷冷下、4-{[(4-アミノビシクロ[2.2.2]オクト-1-イル)メチル]アミノ}-2-{[2-(トリフルオロメトキシ)ベンジル]アミノ}ピリミジン-5-カルボニトリル(40mg)のDMF(0.64ml)-ジクロロメタン(0.32ml)懸濁液にシス-4-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}シクロヘキサンカルバルデヒド(28.2mg)とトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(35.6mg)を加え、室温で1時間撹拌した。シス-4-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}シクロヘキサンカルバルデヒド(57mg)とトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(49mg)を追加し、室温でさらに30分間撹拌した。反応混合物をEtOAcで希釈し、飽和重曹水、水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾去し、減圧下溶媒を留去した残渣をアミノシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-ヘキサン)で精製し、4-{[(4-{[(シス-4-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}シクロヘキシル)メチル]アミノ}ビシクロ[2.2.2]オクト-1-イル)メチル]アミノ}-2-{[2-(トリフルオロメトキシ)ベンジル]アミノ}ピリミジン-5-カルボニトリルを60.3mg得た。
【0062】
上記製造例の方法と同様にして、各製造例化合物をそれぞれ対応する原料を使用して製造した。製造例化合物の構造と、製法及び物理化学的データを以下の表に示す。
【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
【表5】

【0066】
【表6】

【0067】
【表7】

【0068】
【表8】

【0069】
実施例1
氷冷下、4-{[(4-アミノビシクロ[2.2.2]オクト-1-イル)メチル]アミノ}-2-{[2-(トリフルオロメトキシ)ベンジル]アミノ}ピリミジン-5-カルボニトリル(30mg)のDMF(0.48ml)-ジクロロメタン(0.24ml)懸濁液にシス-4-ヒドロキシ-4-メチルシクロヘキサンカルバルデヒド(23.9mg)とトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(35.6mg)を加え、室温で4時間撹拌した。反応混合物をEtOAcで希釈し、飽和重曹水、水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾去し、減圧下溶媒を留去した残渣をアミノシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-MeOH)で精製し、4-{[(4-{[(シス-4-ヒドロキシ-4-メチルシクロヘキシル)メチル]アミノ}ビシクロ[2.2.2]オクト-1-イル)メチル]アミノ}-2-{[2-(トリフルオロメトキシ)ベンジル]アミノ}ピリミジン-5-カルボニトリルを34.7mg得た。
【0070】
実施例21
tert-ブチル (4-{[(5-シアノ-2-{[2-(トリフルオロメトキシ)ベンジル]アミノ}ピリミジン-4-イル)アミノ]メチル}ビシクロ[2.2.2]オクト-1-イル)カルバマート(235mg)のジクロロメタン(1ml)懸濁液に室温でTFA(1ml)を加え、30分間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、残渣をそのままアミノシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-MeOH)で精製し、4-{[(4-アミノビシクロ[2.2.2]オクト-1-イル)メチル]アミノ}-2-{[2-(トリフルオロメトキシ)ベンジル]アミノ}ピリミジン-5-カルボニトリルを183.3mg得た。
【0071】
実施例33
4-{[(4-{[(シス-4-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}シクロヘキシル)メチル]アミノ}ビシクロ[2.2.2]オクト-1-イル)メチル]アミノ}-2-{[2-(トリフルオロメトキシ)ベンジル]アミノ}ピリミジン-5-カルボニトリル(59mg)のMeOH(1.18ml)懸濁液に1M塩酸(0.614ml)を室温で加え、3時間撹拌した。反応混合物をEtOAcで希釈し、20%炭酸カリウム水溶液を加えて撹拌後、有機層を分取した。有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾去し、減圧下溶媒を留去した残渣をアミノシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(クロロホルム-MeOH)で精製し、4-{[(4-{[(シス-4-ヒドロキシシクロヘキシル)メチル]アミノ}ビシクロ[2.2.2]オクト-1-イル)メチル]アミノ}-2-{[2-(トリフルオロメトキシ)ベンジル]アミノ}ピリミジン-5-カルボニトリルを31mg得た。
【0072】
上記実施例の方法と同様にして、各実施例化合物をそれぞれ対応する原料を使用して製造した。各実施例化合物の構造と、製法及び物理化学的データを以下の表に示す。
【0073】
【表9】

【0074】
【表10】

【0075】
【表11】

【0076】
【表12】

【0077】
【表13】

【0078】
【表14】

【0079】
【表15】

【0080】
【表16】

【産業上の利用可能性】
【0081】
式(I)の化合物又はその製薬学的に許容される塩は、PKCθ阻害作用を有し、移植における急性拒絶反応の抑制剤として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【化18】

(式中、
R1は、
【化19】

又は
【化20】

を示し;
R2は、ハロゲン又は-Q-(置換されていてもよいC1-6アルキル)を示し;
Qは、O又はSを示し;
nは、1又は2を示し;及び
Aは、CH又はNを示す。)
【請求項2】
R2が、ハロゲン又は-Q-(ハロゲンで置換されていてもよいC1-6アルキル)である請求項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項3】
R2が、-Cl、-O-(ハロゲンで置換されていてもよいC1-6アルキル)又は-S-(C1-6アルキル)である請求項2に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項4】
R2が、-Cl、-O-CH3、-O-CHF2、-O-CF3、-O-CH2CF3又は-S-CH3である請求項3に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有する医薬組成物。
【請求項6】
PKCθ阻害剤である請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
移植における急性拒絶反応の抑制用である請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
移植における急性拒絶反応抑制剤の製造のための請求項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩の使用。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物又はその塩の有効量を患者に投与することからなる移植における急性拒絶反応の抑制方法。

【公開番号】特開2011−173854(P2011−173854A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41148(P2010−41148)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】