説明

ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,6−ジイルを有する化合物、液晶組成物および液晶表示素子

【課題】熱、光などに対する高い安定性、高い透明点、液晶相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学的異方性、大きな負の誘電率異方性、適切な弾性定数、他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する液晶性化合物、この化合物を含有する液晶組成物、この組成物を含む液晶表示素子を提供する。
【解決手段】式(1−1)で表される化合物。



式中、例えば、RおよびRは炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数1〜9のアルコキシであり;環Aおよび環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;ZおよびZは単結合または−(CH22−であり;>W−W−および>W−W−は、>CH−CH−または>C=CH−であり;mおよびnは、0、1または2であり、mおよびnの和は1または2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶性化合物、液晶組成物および液晶表示素子に関する。さらに詳しくはビシクロ[3.3.0]オクタン−2,6−ジイルと2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンとを有する化合物、この化合物を含有する液晶組成物、およびこの組成物を含む液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、パソコン、テレビなどのディスプレイに広く利用されている。この素子は、液晶性化合物の光学的異方性、誘電率異方性などを利用したものである。液晶表示素子の動作モードとしては、PC(phase change)モード、TN(twisted nematic)モード、STN(super twisted nematic)モード、BTN(bistable twisted nematic)モード、ECB(electrically controlled birefringence)モード、OCB(optically compensated bend)モード、IPS(in-plane switching)モード、VA(vertical alignment)モード、PSA(Polymer sustained alignment)などのモードが知られている。
【0003】
これらのうち、ECBモード、IPSモード、VAモードなどは、液晶分子の垂直配向を利用した動作モードである。特にIPSモードおよびVAモードは、TNモード、STNモードなどの動作モードの欠点である視野角の狭さを改善できることが知られている。
【0004】
IPSモードまたはVAモードで動作する液晶表示素子では、負の誘電率異方性を有する液晶組成物が主に使われている。液晶表示素子の特性をさらに向上させるには、この組成物に含まれる液晶性化合物が、下記の(1)〜(8)で示す物性を有することが好ましい。
(1)熱、光などに対する高い安定性、
(2)高い透明点、
(3)液晶相の低い下限温度、
(4)小さな粘度(η)、
(5)適切な光学的異方性(Δn)、
(6)大きな負の誘電率異方性(Δε)、
(7)適切な弾性定数(K33:ベンド弾性定数)、
(8)他の液晶性化合物との優れた相溶性。
【0005】
液晶性化合物の物性が素子の特性に及ぼす効果は、次のとおりである。(1)のように、熱、光などに対する高い安定性を有する化合物は、素子の電圧保持率を大きくする。これによって、素子の寿命が長くなる。(2)のように、高い透明点を有する化合物は、素子の使用可能な温度範囲を広げる。(3)のように、ネマチック相、スメクチック相などのような液晶相の低い下限温度、特にネマチック相の低い下限温度を有する化合物も、素子の使用可能な温度範囲を広げる。(4)のように、粘度の小さな化合物は、素子の応答時間を短くする。
【0006】
(5)のように、適切な光学的異方性を有する化合物は、素子のコントラストを向上する。素子の設計に応じて、大きな光学的異方性または小さな光学的異方性、すなわち適切な光学的異方性を有する化合物が必要である。素子のセルギャップを小さくすることにより応答時間を短くする場合には、大きな光学的異方性を有する化合物が適している。(6)のように大きな負の誘電率異方性を有する化合物は、素子のしきい値電圧を下げる。これによって、素子の消費電力が小さくなる。
【0007】
(7)に関しては、大きな弾性定数を有する化合物は、素子の応答時間を短くする。小さな弾性定数を有する化合物は、素子のしきい値電圧を下げる。したがって、向上させたい特性に応じて適切な弾性定数が必要になる。(8)のように他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する化合物が好ましい。これは、異なった物性を有する液晶性化合物を混合して、組成物の物性を調節するからである。
【0008】
これまでに、大きな誘電率異方性を有する液晶性化合物が種々合成されてきた。従来の化合物にはない優れた物性が期待されるからである。液晶組成物を調製する際に必要な2つの物性の間の適切なバランスが、新規な化合物には期待されるからである。ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,6−ジイルを有する化合物(A)が報告されている(特許文献1参照)。この化合物は、正の誘電率異方性を有する。しかしながら、ビシクロ[3.3.0]オクタン−3,7−ジイルを有し、誘電率異方性が負である化合物は知られていない。この状況を考慮すると、ある種の新規化合物には優れた性質が期待される。
【0009】


【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】中国公開1548412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の第一の課題は、熱、光などに対する高い安定性、高い透明点、液晶相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学的異方性、大きな負の誘電率異方性、適切な弾性定数、他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する液晶性化合物を提供することである。この課題は、特に大きな負の誘電率異方性を有する化合物を提供することである。この課題は、特に優れた相溶性を有する化合物を提供することである。第二の課題は、この化合物を含有し、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学的異方性、大きな負の誘電率異方性、および適切な弾性定数を有する液晶組成物を提供することである。この課題は、少なくとも2つの物性に関して適切なバランスを有する液晶組成物を提供することである。第三の課題は、この組成物を含み、素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、および長い寿命を有する液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、式(1-1)で表される化合物、この化合物を含有する液晶組成物、およびこの組成物を含む液晶表示素子に関する。


式(1−1)において、
およびRは独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環Aおよび環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
およびZは独立して、単結合、−(CH22−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、または−OCO−であり;
>W−W−および>W−W−は独立して、>CH−CH−または>C=CH−であり;
mおよびnは独立して、0、1または2であり、mおよびnの和は1または2である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第一の長所は、熱、光などに対する高い安定性、高い透明点、液晶相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学的異方性、大きな負の誘電率異方性、適切な弾性定数、他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する液晶性化合物を提供することである。この長所は、特に大きな負の誘電率異方性を有する化合物を提供することである。この長所は、特に優れた相溶性を有する化合物を提供することである。第二の長所は、この化合物を含有し、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学的異方性、大きな負の誘電率異方性、および適切な弾性定数を有する液晶組成物を提供することである。この長所は、少なくとも2つの物性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。第三の長所は、この組成物を含み、素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、および長い寿命を有する液晶表示素子を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。液晶性化合物は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物、および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。液晶性化合物、液晶組成物、液晶表示素子をそれぞれ化合物、組成物、素子と略すことがある。液晶表示素子は、液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。透明点は、液晶性化合物における液晶相−等方相の転移温度である。液晶相の下限温度は、液晶性化合物における固体−液晶相(スメクチック相、ネマチック相など)の転移温度である。ネマチック相の上限温度は、液晶組成物におけるネマチック相−等方相の転移温度であり、上限温度と略すことがある。ネマチック相の下限温度を下限温度と略すことがある。式(1−1)で表わされる化合物を化合物(1−1)と略すことがある。この略記は式(2)などで表される化合物にも適用することがある。式(1−1)、式(2)などにおいて、六角形で囲んだA、Dなどの記号はそれぞれ環A、環Dなどに対応する。複数のRを同一の式または異なった式に記載した。これらの化合物において、任意の2つのRが表わす2つの基は、同一であってもよいし、または異なってもよい。このルールは、環A、Zなどの記号にも適用される。百分率で表した化合物の量は、組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。
【0015】
「少なくとも1つの“A”は、“B”で置き換えられてもよい」の表現は、“A”が1つのとき、“A”の位置は任意であり、“A”の数が2つ以上のときも、それらの位置は制限なく選択できることを意味する。「少なくとも1つのAが、B、CまたはDで置き換えられてもよい」という表現は、任意のAがBで置き換えられる場合、任意のAがCで置き換えられる場合、および任意のAがDで置き換えられる場合、さらに複数のAがB、C、Dの少なくとも2つで置き換えられる場合を含むことを意味する。例えば、少なくとも1つの−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキルには、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルが含まれる。なお、連続する2つの−CH−が−O−で置き換えられて、−O−O−のようになることは好ましくない。アルキルなどにおいて、メチル部分(−CH−H)の−CH−が−O−で置き換えられて−O−Hになることも好ましくない。
【0016】
2−フルオロ−1,4−フェニレンは、下記の2つの二価基を意味する。フッ素は左向きであってもよいし、右向きであってもよい。このルールは、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルのような、非対称の二価基にも適用される。


【0017】
本発明は、下記の項1〜項14に記載された内容を包含する。
【0018】
項1. 式(1−1)で表される化合物。



式(1−1)において、
およびRは独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環Aおよび環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
およびZは独立して、単結合、−(CH22−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、または−OCO−であり;
>W−W−および>W−W−は独立して、>CH−CH−または>C=CH−であり;
mおよびnは独立して、0、1または2であり、mおよびnの和は1または2である。
【0019】
項2. 式(1−2)で表される、項1に記載の化合物。


式(1−2)において、RおよびRは独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;Zは、単結合、−(CH22−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、または−OCO−であり;>W−W−は、>CH−CH−または>C=CH−であり;nは0または1である。
【0020】
項3. 項2に記載の式(1−2)において、Zが単結合である、項2に記載の化合物。
【0021】
項4. 式(1−3)で表される、項2に記載の化合物。



式(1−3)において、RおよびRは独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;Zは、単結合、−(CH22−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、または−OCO−であり;>W−W−は、>CH−CH−または>C=CH−である。
【0022】
項5. 式(1−4)で表される、項2に記載の化合物。



式(1−4)において、RおよびRは独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;Zは、単結合、−(CH22−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、または−OCO−であり;>W−W−は、>CH−CH−または>C=CH−である。
【0023】
項6. 式(1−5)で表される、項1に記載の化合物。


式(1−5)において、RおよびRは独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;>W−W−および>W−W−は独立して、>CH−CH−または>C=CH−である。
【0024】
項7. 項1〜6のいずれか1項に記載の少なくとも1つの化合物の、液晶組成物の成分としての使用。
【0025】
項8. 項1〜6のいずれか1項に記載の化合物を少なくとも1つ含有する液晶組成物。
【0026】
項9. 式(2)〜(7)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項8に記載の液晶組成物。


式(2)〜(7)において、
およびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;
環D、環D、環D、および環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;
、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−(CH22−、−COO−、−CHO−、−OCF−、または−OCF(CH22−であり;
およびLは独立して、フッ素または塩素であり;
q、r、s、t、u、およびvは独立して、0または1であり、r、s、t、およびuの和は1または2である。
【0027】
項10. 式(8)〜(10)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項8に記載の液晶組成物。


式(8)〜(10)において、
およびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;
環E、環E、および環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
およびZは独立して、単結合、−(CH22−、−CH=CH−、−C≡C−、または−COO−である。
【0028】
項11. 項10に記載の式(8)〜(10)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項9に記載の液晶組成物。
【0029】
項12. 少なくとも1つの光学活性化合物および/または重合可能な化合物をさらに含有する、項8〜11のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0030】
項13. 少なくとも1つの酸化防止剤および/または紫外線吸収剤をさらに含有する、項8〜12のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0031】
項14. 項8〜13のいずれか1項に記載の液晶組成物を含む液晶表示素子。
【0032】
本発明の化合物、液晶組成物、液晶表示素子について、順に説明する。
【0033】
1−1.化合物(1−1)
本発明の化合物(1−1)について説明をする。化合物(1−1)における末端基、環構造、結合基などの好ましい例、およびそれらの基が物性に及ぼす効果は、化合物(1−1)の下位式にも適用される。
【0034】

【0035】
式(1−1)において、RおよびRは独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシである。これらの基は、直鎖または分岐鎖であり、シクロヘキシルのような環状基を含まない。これらに基において分岐鎖よりも直鎖の方が好ましい。
【0036】
またはRの好ましい例は、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、およびアルケニルである。RまたはRのさらに好ましい例は、アルキル、アルコキシ、およびアルケニルである。
【0037】
アルキルの例は、−CH、−C、−C、−C、−C11、−C13、および−C15である。アルコキシの例は、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、および−OC13である。アルコキシアルキルの例は、−CHOCH、−CHOC、−CHOC、−(CHOCH、−(CHOC、−(CHOC、−(CHOCH、−(CHOCH、および−(CHOCHである。アルケニルの例は、−CH=CH、−CH=CHCH、−CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、−CH=CHC、−CHCH=CHC、−(CHCH=CHCH、および−(CHCH=CHである。アルケニルオキシの例は、−OCHCH=CH、−OCHCH=CHCH、および−OCHCH=CHCである。
【0038】
またはRの好ましい例は、−CH、−C、−C、−C、−C11、−OCH、−OC、−OC、−OC、−OC11、−CHOCH、−(CHOCH、−(CHOCH、−CHCH=CH、−CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、−CHCH=CHC、−(CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、−(CHCH=CHCH、−(CHCH=CHC、−(CHCH=CHC、−OCHCH=CH、−OCHCH=CHCH、および−OCHCH=CHCである。RまたはRのさらに好ましい例は、−CH、−C、−C、−OCH、−OC、−OC、−OC、−(CHCH=CH、−(CHCH=CHCH、および−(CHCH=CHCである。
【0039】
またはRが直鎖であるときは、液晶相の温度範囲が広く、そして粘度が小さい。RまたはRが分岐鎖であるときは、他の液晶性化合物との相溶性がよい。Rが光学活性である化合物は、キラルドーパントとして有用である。この化合物を組成物に添加することによって、液晶表示素子に発生するリバース・ツイスト・ドメイン(reverse twisted domain)を防止することができる。Rが光学活性でない化合物は、組成物の成分として有用である。
【0040】
アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。−CH=CHCH、−CH=CHC、−CH=CHC、−CH=CHC、−CCH=CHCH、および−CCH=CHCのような奇数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはトランス配置が好ましい。−CHCH=CHCH、−CHCH=CHC、および−CHCH=CHCのような偶数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはシス配置が好ましい。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、液晶相の広い温度範囲、小さな粘度、および大きな弾性定数(K33:ベンド弾性定数)を有する。
【0041】
式(1−1)において、環Aおよび環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。
【0042】
環Aまたは環Aの好ましい例は、1,4−シクロへキシレンおよび1,4−フェニレンである。1,4−シクロへキシレンには、シスおよびトランスの立体配置が存在する。高い上限温度の観点から、トランス配置が好ましい。環Aまたは環Aのさらに好ましい例は1,4−フェニレンである。
【0043】
環Aおよび環Aの少なくとも1つが、1,4−シクロヘキシレンであるときは、粘度が小さい。この化合物を添加することにより、組成物の粘度を小さくすることができる。環Aおよび環Aの少なくとも1つが、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであるときは、誘電率異方性が負に大きい。この化合物を添加することにより、組成物の誘電率異方性を負に大きくすることができる。
【0044】
式(1−1)において、ZおよびZは独立して、単結合、−(CH22−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、または−OCO−である。
【0045】
またはZが−COO−または−OCO−である化合物は、上限温度が高いので好ましい。ZまたはZが−CHO−または−OCH−である化合物は、誘電率異方性が負に大きいので好ましい。ZまたはZが単結合または−(CH−である化合物は、粘度が小さいので好ましい。
【0046】
化合物の安定性を考慮すると単結合、−(CH−、−CHO−、または−OCH−が好ましく、単結合または−(CH−がさらに好ましい。化合物の透明点を高くすることを考慮すると、ZおよびZの一方が、−(CH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、または−OCO−であるときは、他方は単結合であることが好ましい。ZおよびZの両方が単結合であることがさらに好ましい。
【0047】
式(1−1)において、>W−W−および>W−W−は独立して、>CH−CH−または>C=CH−である。すなわち、化合物(1−1)は、下記の4つの構造を有する。






【0048】
ビシクロ[3.3.0]オクタン環の位置番号を、下記の(a)で示す。

【0049】
ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,6−ジイルには、シスおよびトランスの立体配置がある。組成物に添加したとき、高い上限温度の観点から、2、6位はトランス配置であることが好ましく、1,5位(架橋部)は、シス配置であることが好ましい。好ましい異性体の例として化合物(b)が挙げられる。
【0050】


【0051】
>W−W−および>W−W−の両方が、>C=CH−であるときは、光学的異方性が大きい。この化合物を添加することにより、組成物の光学的異方性を大きくすることができる。化合物の安定性を考慮すると、>W−W−および>W−W−の両方が>CH−CH−であることが好ましい。
【0052】
式(1−1)において、mおよびnは独立して、0、1または2であり、mおよびnの和は1または2である。nおよびmの和が1であるときは粘度が小さい。nおよびmの和が2であるときは上限温度が高い。
【0053】
化合物(1−1)は、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,6−ジイルと、2位および3位の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンとを有する。このような構造の効果により、適切な光学的異方性、大きな負の誘電率異方性、適切な弾性定数を有する。この化合物は、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,6−ジイルの効果により、優れた相溶性を有する。この化合物は、大きな負の誘電率異方性、および優れた相溶性の観点から特に優れている。
【0054】
以上のように、末端基、環構造、結合基などの種類を適切に選択することによって目的の物性を有する化合物を得ることができる。化合物の物性に大きな差異がないので、化合物(1−1)は、H(重水素)、13Cなどの同位体を天然存在比の量より多く含んでもよい。
【0055】
1−2.好ましい化合物
好ましい化合物(1−1)の例として、項2に記載した化合物(1−2)、項4に記載した化合物(1−3)、項5に記載した化合物(1−4)、および項6に記載した化合物(1−5)が挙げられる。
【0056】
化合物(1−2)〜(1−4)は、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,6−ジイルと2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンとを有し、構造が非対称である。したがって、これらの化合物は、熱や光に対する高い安定性、液晶相の低い下限温度、高い上限温度、大きな負の誘電率異方性、および適切な弾性定数の観点からさらに好ましい。化合物(1−2)において、Zが単結合であるときは、高い上限温度の観点からさらに好ましい。
【0057】
化合物(1−5)は、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,6−ジイルと2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンとを有するので、熱や光に対する高い安定性、液晶相の低い下限温度、大きな光学的異方性、大きな負の誘電率異方性、および適切な弾性定数の観点からさらに好ましい。
【0058】
化合物(1−1)、特に化合物(1−2)〜(1−5)を含有する組成物は、高い上限温度、低い下限温度、小さな粘度、適切な光学的異方性、大きな負の誘電率異方性、および適切な弾性定数を有する。この組成物は、液晶表示素子が通常使用される条件下で安定であり、低い温度で保管してもこの化合物が結晶(またはスメクチック相)として析出することがない。したがって、化合物(1−1)はIPS、VA、またはPSAなどの動作モードの液晶表示素子に用いる液晶組成物に、好適に適用することができる。
【0059】
1−3.化合物(1−1)の合成
化合物(1−1)の合成法について説明する。化合物(1−1)は、有機合成化学の方法を適切に組み合わせることにより合成できる。出発物に目的の末端基、環、および結合基を導入する方法は、「オーガニックシンセシス」(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、「オーガニック・リアクションズ」(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、「コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス」(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、「新実験化学講座」(丸善)などの成書に記載されている。
【0060】
1−3−1.結合基の生成
化合物(1−1)における結合基を生成する方法の例は、下記のスキームのとおりである。このスキームにおいて、MSG(またはMSG)は、少なくとも1つの環を有する一価の有機基である。複数のMSG(またはMSG)が表わす一価の有機基は、同一であってもよいし、または異なってもよい。化合物(1A)〜(1D)は化合物(1−1)に相当する。
【0061】

【0062】

【0063】

【0064】
(1)−(CH−の生成
有機ハロゲン化合物(a1)を、ブチルリチウム(またはマグネシウム)と反応させて得られた中間体を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのホルムアミドと反応させて、アルデヒド(a2)を得る。このアルデヒド(a2)と、ホスホニウム塩(a3)をカリウムt−ブトキシド等の塩基で処理して得られるリンイリドとを反応させて、二重結合を有する化合物(a4)を得る。この化合物(a4)を炭素担持パラジウム(Pd/C)のような触媒の存在下で水素化することにより、化合物(1A)を合成する。
【0065】
(2)単結合の生成
有機ハロゲン化合物(a1)とマグネシウム(またはブチルリチウム)とを反応させて、グリニャール試薬(またはリチウム塩)を調製する。このグリニャール試薬(またはリチウム塩)とホウ酸トリメチルなどのホウ酸エステルとを反応させ、塩酸などの酸の存在下で加水分解することによりジヒドロキシボラン(a5)を得る。この化合物(a5)と有機ハロゲン化合物(a6)とを、炭酸塩水溶液中、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh)触媒の存在下で反応させることにより、化合物(1B)を合成する。
【0066】
次の方法も利用できる。有機ハロゲン化合物(a6)にブチルリチウムを反応させ、さらに塩化亜鉛を反応させる。得られた中間体をビストリフェニルホスフィンジクロロパラジウム(Pd(PPhCl)の存在下で化合物(a1)と反応させることにより、化合物(1B)を合成する。
【0067】
(3)−CHO−または−OCH−の生成
ジヒドロキシボラン(a5)を過酸化水素のような酸化剤により酸化し、アルコール(a7)を得る。別途、アルデヒド(a3)を水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元してアルコール(a8)を得る。このアルコール(a8)を臭化水素酸等でハロゲン化してハロゲン化物(a9)を得る。このハロゲン化物(a9)と、先に得られたアルコール(a7)とを炭酸カリウムなどの存在下で反応させることにより化合物(1C)を合成する。
【0068】
(4)−COO−または−OCO−の生成
化合物(a6)にn−ブチルリチウムを、続いて二酸化炭素を反応させてカルボン酸(a10)を得る。このカルボン酸(a10)と、フェノール(a11)とをDDC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)とDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)の存在下で脱水させて−COO−を有する化合物(1D)を合成する。この方法によって−OCO−を有する化合物も合成することができる。
【0069】
1−3−2.合成例


【0070】
化合物(1−1)を合成する方法の例は、次のとおりである。1,5−シクロオクタジエン(b1)と酢酸鉛(IV)とを、触媒量の酢酸パラジウム(II)の存在下、酢酸中で反応させて化合物(b2)を得る。この化合物(b2)を水素化リチウムアルミニウムで還元して化合物(b3)を得る。この化合物(b3)を水素化ナトリウムと反応させ、さらにトリイソプロピルシリルクロリドと反応させて化合物(b4)を得る。化合物(b4)をデスマーチンペルヨージナン(DMP)と反応させることにより化合物(b5)を得る。この化合物(b5)を、R基を有するWittig試薬と反応させ、さらにラネーニッケル等の触媒存在下で水素添加することにより、化合物(b6)を得る。化合物(b6)をテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)と反応させることにより化合物(b7)を得る。化合物(b7)をデスマーチンペルヨージナン(DMP)と反応させることにより化合物(b8)を得る。
【0071】
ジフルオロベンゼン(b9)とsec−ブチルリチウムとを反応させてリチウム塩を調製する。このリチウム塩と化合物(b8)とを反応させ、生成したアルコール誘導体の脱水反応をp−トルエンスルホン酸のような酸触媒の存在下で行い、化合物(1−1)の一例である化合物(b10)を合成する。化合物(b10)をラネーニッケルなどの触媒存在下で、水素添加することにより、化合物(1−1)の一例である化合物(b11)を合成する。
【0072】
2.組成物(1)
本発明の液晶組成物(1)について説明をする。この組成物(1)は、少なくとも1つの化合物(1−1)を成分Aとして含む。組成物(1)は、2つ以上の化合物(1−1)を含んでいてもよい。液晶性化合物の成分が化合物(1−1)のみであってもよい。組成物(1)は、化合物(1−1)の少なくとも1つを1〜99重量%の範囲で含有することが、優良な物性を発現させるために好ましい。さらに好ましい割合は、5〜60重量%の範囲である。組成物(1)は、化合物(1−1)と、本明細書中に記載しなかった種々の液晶性化合物とを含んでもよい。
【0073】
好ましい組成物は、以下に示す成分D、および成分Eから選択された化合物を含む。組成物(1)を調製するときには、例えば、化合物(1−1)の誘電率異方性を考慮して成分を選択することができる。成分を適切に選択した組成物は、高い上限温度、低い下限温度、小さな粘度、適切な光学的異方性、大きな負の誘電率異方性、および適切な弾性定数を有する。
【0074】
成分Dは、化合物(2)〜(7)である。これらは、負の誘電率異方性を有する化合物である。成分Eは、化合物(8)〜(10)である。これらは、小さな誘電率異方性を有する化合物である。これらの成分について、順を追って説明する。
【0075】
成分Dは、2、3−ジフルオロ−1,4−フェニレンのように、ラテラル位が2つのハロゲンで置換されたベンゼン環を有する。成分Dの好ましい例として、化合物(2−1)〜(2−6)、化合物(3−1)〜(3−15)、化合物(4−1)、化合物(5−1)〜(5−3)、化合物(6−1)〜(6−11)、および化合物(7−1)〜(7−10)を挙げることができる。
【0076】

【0077】

【0078】
これらの化合物(成分D)において、RおよびRの定義は、前記と同じである。
【0079】
成分Dは、誘電率異方性が負の化合物である。成分Dは、主としてVAモード用またはPSAモード用の組成物を調製する場合に用いられる。成分Dの含有量を増加させると組成物の誘電率異方性が大きくなるが、粘度が大きくなる。そこで、誘電率異方性の要求値を満たす限り、含有量は少ないほうが好ましい。したがって、誘電率異方性の絶対値が5程度であることを考慮すると、充分な電圧駆動をさせるには、含有量が40重量%以上であることが好ましい。
【0080】
成分Dのうち、化合物(2)は2環化合物であるので、主として、粘度の調整、光学的異方性の調整、または誘電率異方性の調整の効果がある。化合物(3)および(4)は3環化合物であるので、上限温度を高くする、光学的異方性を大きくする、または誘電率異方性を大きくするという効果がある。化合物(5)〜(7)は、誘電率異方性を大きくするという効果がある。
【0081】
VAモード用またはPSAモード用の組成物を調製する場合には、成分Dの含有量は、組成物の全重量に対して、好ましくは40重量%以上であり、より好ましくは50〜95重量%の範囲である。成分Dを添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧−透過率曲線を調整することが可能となる。成分Dを誘電率異方性が正である組成物に添加する場合は、成分Dの含有量が組成物の全重量に対して30重量%以下が好ましい。
【0082】
成分Eは、2つの末端基がアルキルなどである化合物である。成分Eの好ましい例として、化合物(8−1)〜(8−11)、化合物(9−1)〜(9−19)、および化合物(10−1)〜(10−6)を挙げることができる。
【0083】

【0084】

【0085】
これらの化合物(成分E)において、RおよびRの定義は、前記と同じである。
【0086】
成分Eは、誘電率異方性の絶対値が小さいので、中性に近い化合物である。化合物(8)は、主として粘度の調整または光学的異方性の調整の効果がある。化合物(9)および(10)は、上限温度を高くすることによってネマチック相の温度範囲を広げる効果、または光学的異方性の調整の効果がある。
【0087】
成分Eの含有量を増加させると組成物の粘度が小さくなるが、誘電率異方性が小さくなる。そこで、誘電率異方性の要求値を満たす限り、含有量は多いほうが好ましい。したがって、VAモード用またはPSAモード用の組成物を調製する場合には、成分Eの含有量は、組成物の全重量に対して、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上である。
【0088】
組成物(1)の調製は、必要な成分を高い温度で溶解させるなどの方法により行われる。用途に応じて、この組成物に添加物を添加してよい。添加物の例は、光学活性化合物、重合可能な化合物、重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などである。このような添加物は当業者によく知られており、文献に記載されている。
【0089】
組成物(1)は、少なくとも1つの光学活性化合物をさらに含有してもよい。光学活性化合物として、公知のキラルド−プ剤を添加することができる。このキラルド−プ剤は液晶のらせん構造を誘起して必要なねじれ角を与えることによって逆ねじれを防ぐ、という効果を有する。キラルド−プ剤の好ましい例として、下記の光学活性化合物(Op−1)〜(Op−13)を挙げることができる。
【0090】

【0091】
組成物(1)は、このような光学活性化合物を添加して、らせんピッチを調整する。らせんピッチは、TFTモード用およびTNモード用の組成物であれば40〜200μmの範囲に調整するのが好ましい。STNモード用の組成物であれば6〜20μmの範囲に調整するのが好ましい。BTNモード用の組成物の場合は、1.5〜4μmの範囲に調整するのが好ましい。らせんピッチの温度依存性を調整する目的で2つ以上の光学活性化合物を添加してもよい。
【0092】
組成物(1)は、重合可能な化合物を添加することによってPSAモード用に使用することもできる。重合可能な化合物の例は、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、ビニルケトンなどである。重合可能な化合物は、好ましくは光重合開始剤などの適切な開始剤存在下でUV照射などにより重合する。重合のための適切な条件、開始剤の適切なタイプ、および適切な量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。
【0093】
酸化防止剤は、大きな電圧保持率を維持するために有効である。酸化防止剤の好ましい例は、2,6−ジ−tert−ブチル−4−アルキルフェノールなどである。紫外線吸収剤は、上限温度の低下を防ぐために有効である。紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などである。立体障害のあるアミンのような光安定剤もまた好ましい。
【0094】
組成物(1)は、メロシアニン系、スチリル系、アゾ系、アゾメチン系、アゾキシ系、キノフタロン系、アントラキノン系、テトラジン系などの二色性色素を添加すれば、GH(guest host)モード用に使用することもできる。
【0095】
組成物(1)では、成分化合物の種類と割合とを適切に調整することによって上限温度を70℃以上とすること、下限温度を−10℃以下とすることができるので、ネマチック相の温度範囲が広い。したがって、この組成物を含む液晶表示素子は広い温度範囲で使用することが可能である。
【0096】
組成物(1)では、成分化合物の種類と割合とを適切に調整することによって、光学異方性を0.10〜0.13の範囲、または0.05〜0.18の範囲とすることができる。同様にして、誘電率異方性を−5.0〜−2.0の範囲に調整することができる。好ましい誘電率異方性は、−4.5〜−2.5の範囲である。この範囲の誘電率異方性を有する組成物(1)は、IPSモード、VAモード、またはPSAモードで動作する液晶表示素子に好適に使用することができる。
【0097】
3.液晶表示素子
組成物(1)は、PCモード、TNモード、STNモード、OCBモード、PSAモードなどの動作モードを有し、アクティブマトリックス(AM方式)で駆動する液晶表示素子に使用できる。組成物(1)は、PCモード、TNモード、STNモード、OCBモード、VAモード、IPSモードなどの動作モードを有し、パッシブマトリクス(PM)方式で駆動する液晶表示素子にも使用することができる。これらのAM方式およびPM方式の素子は、反射型、透過型、半透過型のいずれのタイプにも適用ができる。
【0098】
組成物(1)は、負の誘電率異方性を有するので、VAモード、IPSモード、またはPSAモードなどの動作モードを有し、AM方式で駆動する液晶表示素子に好適に用いることができる。この組成物は、VAモードを有し、AM方式で駆動する液晶表示素子に、特に好適に用いることができる。
【0099】
組成物(1)は、ネマチック液晶をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)素子、液晶中に三次元網目状高分子を形成して作製したポリマ−分散型液晶表示素子(PDLCD)、ポリマーネットワーク液晶表示素子(PNLCD)にも使用できる。
【0100】
TNモード、VAモードなどで動作する液晶表示素子においては、電場の方向は、液晶層に対して垂直である。一方、IPSモードなどで動作する液晶表示素子においては、電場の方向は、液晶層に対して平行である。VAモードで動作する液晶表示素子の構造は、K. Ohmuro, S. Kataoka, T. Sasaki and Y. Koike, SID ’97 Digest of Technical Papers, 28, 845 (1997) に報告されている。IPSモードで動作する液晶表示素子の構造は、国際公開91/10936号パンフレット(ファミリー:米国特許第5576867明細書)に報告されている。
【実施例】
【0101】
実施例により本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれら実施例によっては制限されない。
【0102】
1−1.化合物(1−1)の実施例
化合物(1−1)は、下記の手順により合成した。 合成した化合物は、NMR分析などの方法により同定した。化合物の物性は、下記に記載した方法により測定した。
【0103】
NMR分析
測定装置は、DRX−500(ブルカーバイオスピン(株)社製)を用いた。H−NMRの測定では、試料をCDClなどの重水素化溶媒に溶解させ、測定は、室温で、500MHz、積算回数16回の条件で行った。テトラメチルシランを内部標準として用いた。19F−NMRの測定では、CFClを内部標準として用い、積算回数24回で行った。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロードであることを意味する。
【0104】
測定試料
相構造および転移温度を測定するときには、液晶性化合物そのものを試料として用いた。ネマチック相の上限温度、粘度、光学的異方性、誘電率異方性などの物性を測定するときには、化合物を母液晶に混合して調製した組成物を試料として用いた。
【0105】
化合物を母液晶と混合した試料を用いる場合には、次の方法で測定を行った。化合物15重量%と母液晶85重量%とを混合して試料を調製した。この試料の測定値から、次の式で表わされる外挿法にしたがって、外挿値を計算し、この値を記載した。〈外挿値〉=(100×〈試料の測定値〉−〈母液晶の重量%〉×〈母液晶の測定値〉)/〈化合物の重量%〉
【0106】
化合物と母液晶との割合がこの割合であっても、結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出する場合には、化合物と母液晶との割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更をしていき、結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出しなくなった割合で試料の物性を測定した。なお、特に断りのない限り、化合物と母液晶との割合は、15重量%:85重量%である。
【0107】
母液晶としては、下記の母液晶(i)を用いた。母液晶(i)の成分の割合を重量%で示す。
【0108】


【0109】
測定方法
物性の測定は下記の方法で行った。これらの多くは、社団法人電子情報技術産業協会(Japan Electronics and Information Technology Industries Association;以下、JEITAと略す)で審議制定されるJEITA規格(JEITA・ED−2521A)に記載された方法、またはこれを修飾した方法であった。測定に用いたTN素子には、TFTを取り付けなかった。
【0110】
(1)相構造
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に試料を置き、3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、相の種類を特定した。
【0111】
(2)転移温度(℃)
パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システム、またはDiamond DSCシステムを用いて、3℃/分速度で昇降温し、試料の相変化に伴う吸熱ピーク、または発熱ピークの開始点を外挿により求め、転移温度を決定した。化合物が固体からスメクチック相、ネマチック相などの液晶相に転移する温度を「液晶相の下限温度」と略すことがある。化合物が液晶相から液体に転移する温度を「透明点」と略すことがある。
【0112】
結晶はCと表した。結晶の種類区別がつく場合は、それぞれCまたはCと表した。スメクチック相はS、ネマチック相はNと表した。スメクチック相の中で、スメクチックA相、スメクチックB相、スメクチックC相、またはスメクチックF相の区別がつく場合は、それぞれS、S、S、またはSと表した。液体(アイソトロピック)はIと表した。転移温度は、例えば、「C 50.0 N 100.0 I」のように表記した。これは、結晶からネマチック相への転移温度が50.0℃であり、ネマチック相から液体への転移温度が100.0℃であることを示す。
【0113】
(3)低温相溶性
化合物の割合が、20重量%、15重量%、10重量%、5重量%、3重量%、および1重量%となるように母液晶と化合物とを混合した試料を調製し、試料をガラス瓶に入れた。このガラス瓶を、−10℃または−20℃のフリーザー中に一定期間保管したあと、結晶(または、スメクチック相)が析出しているかどうか観察をした。
【0114】
(4)ネマチック相の上限温度(TNIまたはNI;℃)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。試料が化合物と母液晶との混合物であるときは、TNIの記号で示した。試料が化合物と成分Bなどとの混合物であるときは、NIの記号で示した。
【0115】
(5)ネマチック相の下限温度(T;℃)
ネマチック相を有する試料を0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、Tを≦−20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0116】
(6)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s)
E型回転粘度計を用いて測定した。
【0117】
(7)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s)
測定は、M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmのVA素子に試料を入れた。この素子に30ボルト〜50ボルトの範囲で1ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算に必要な誘電率異方性は、下記の誘電率異方性で測定した値を用いた。
【0118】
(8)光学的異方性(屈折率異方性;25℃で測定;Δn)
測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学的異方性(Δn)の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。
【0119】
(9)誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。誘電率(ε‖およびε⊥)は次のように測定した。
1)誘電率(ε‖)の測定:よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであるVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。
2)誘電率(ε⊥)の測定:よく洗浄したガラス基板にポリイミド溶液を塗布した。このガラス基板を焼成した後、得られた配向膜にラビング処理をした。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。
【0120】
(10)弾性定数(K11およびK33;25℃で測定;pN)
測定には株式会社東陽テクニカ製のEC−1型弾性定数測定器を用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである垂直配向素子に試料を入れた。この素子に20ボルトから0ボルト電荷を印加し、静電容量および印加電圧を測定した。静電容量(C)と印加電圧(V)の値を、「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)、式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.100)から弾性定数の値を得た。
【0121】
(11)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V)
測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子に印加する電圧(60Hz、矩形波)は0Vから20Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が10%になったときの電圧である。
【0122】
(12)電圧保持率(VHR−1;25℃で測定;%)
測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。
【0123】
(13)電圧保持率(VHR−2;80℃で測定;%)
測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。
【0124】
原料
ソルミックスA−11(登録商標)は、エタノール(85.5%),メタノール(13.4%)とイソプロパノール(1.1%)の混合物であり、日本アルコール販売(株)から入手した。テトラヒドロフランをTHFと略すことがある。
【実施例1】
【0125】
化合物(No.22)の合成


【0126】
第1工程
窒素雰囲気下、反応器へ酢酸鉛(IV)(250g)、酢酸パラジウム(II)(5.0g)および酢酸(564ml)を入れた。1,5−シクロオクタジエン(s1)(40.7g)を室温で加え、16時間攪拌させた。反応混合物を水に注ぎこみ、トルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、トルエン:酢酸エチル=9:1)で精製して、化合物(s2)(73.2g;86.0%)を得た。
【0127】
第2工程
水素化リチウムアルミニウム(24.5g)をTHF(500ml)に懸濁させた。この懸濁液に化合物(s2)(73.2g)を、−20℃から−10℃の温度範囲で滴下し、この温度範囲でさらに2時間攪拌した。GC分析により反応終了を確認後、氷冷下、反応混合物に、酢酸エチル、飽和アンモニア水溶液を、順次加えた。析出物をセライト濾過により除去し、濾液を酢酸エチルにより抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和食塩水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮して、化合物(s3)(36.5g;79.3%)を得た。
【0128】
第3工程
反応器へ化合物(s3)(23.0g)、水素化ナトリウム(7.2g)、およびTHF(200ml)を入れた。トリイソプロピルシリルクロリド(TIPSCl)(32.7g)を室温でゆっくりと滴下し、次に8時間加熱還流した。反応混合物を30℃に冷却した後、飽和食塩水に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、トルエン:酢酸エチル=4:1)で精製して、化合物(s4)(45.0g;93.2%)を得た。
【0129】
第4工程
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(s4)(45.0g)および塩化メチレン(300ml)を入れた。この溶液を0℃に冷却し、デスマーチンペルヨージナン(DMP;76.7g)を3回に分けて加えた。室温に戻しながらさらに2時間攪拌した。反応混合物に飽和重曹水と飽和亜硫酸ナトリウム水溶液を注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、トルエン:酢酸エチル=4:1)精製して、化合物(s5)(42.0g;94.0%)を得た。
【0130】
第5工程
窒素雰囲気下、良く乾燥させたプロピルトリフェニルホスホニウムブロミド(35.1g)のTHF(300ml)溶液を−40℃に冷却した。そこへ、カリウムt−ブトキシド(10.2g)を−40℃〜−35℃の温度範囲で、2回に分けて投入した。−40℃で60分攪拌した後、化合物(s5)(22.5g)のTHF(100ml)溶液を−40℃〜−35℃の温度範囲で滴下した。室温に戻しながらさらに2時間攪拌した。反応混合物を水に注ぎこみ、トルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製した。この生成物の2−プロパノール(250ml)溶液にラネーニッケル(4.5g)を加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで室温で攪拌した。反応終了後、ラネーニッケルを除去して、さらに溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、化合物(s6)(23.0g;93.4%)を得た。
【0131】
第6工程
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(s6)(23.0g)とTHF(100ml)とを入れて、0℃に冷却した。そこへ、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF;141.8ml)を滴下し、室温に戻しながらさらに8時間攪拌した。反応混合物を水に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、トルエン:酢酸エチル=9:1)で精製して、化合物(s7)(10.8g;90.6%)を得た。
【0132】
第7工程
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(s7)(10.8g)と塩化メチレン(100ml)とを入れて、0℃に冷却した。そこへ、DMP(32.7g)を3回に分けて加え、室温に戻しながらさらに2時間攪拌した。反応混合物に飽和重曹水と飽和亜硫酸ナトリウム水溶液とを注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、トルエン:酢酸エチル=9:1)で精製して、化合物(s8)(10.6g;99.3%)を得た。
【0133】
第8工程
窒素雰囲気下、反応器へ4−エトキシ−2,3−ジフルオロベンゼン(s9)(5.7g)とTHF(100ml)とを入れて、−74℃に冷却した。そこへ、sec−ブチルリチウム(1.00M;n−ヘキサン/シクロヘキサン溶液;39ml)を−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに2時間攪拌した。化合物(s8)(10.6g)のTHF(20ml)溶液を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ8時間攪拌した。反応混合物を塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮した。残渣に、パラトルエンスルホン酸(p−TsOH)(0.2g)、およびトルエン(100ml)を加え、この混合物を、2時間加熱還流した。反応混合物を30℃に冷却した後、水に注ぎ込み、トルエンで抽出した。一緒にした有機層を飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製し、さらにソルミックスA−11からの再結晶により精製して、化合物(No.22)(7.4g;80.3%)を得た。
【0134】
H−NMR(δppm;CDCl):6.95(td,1H),6.67(t,1H),6.17(s,1H),4.11(q,2H),3.54(t,1H),2.85(quin,1H),2.48−2.35(m,2H),1.92(m,1H),1.73(m,1H),1.61(m,1H),1.53−1.42(m,4H),1.37(m,4H),1.11(m,1H),0.93(t,3H).
【0135】
化合物(No.22)の物性は次のとおりであった。転移温度:C 45.6 I.TNI=15.3℃;Δn=0.115;Δε=−6.26.
【実施例2】
【0136】
化合物(No.2)の合成


【0137】
第1工程
化合物(No.22)(6.0g)の2−プロパノール(250ml)溶液にラネーニッケルを(4.5g)加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで室温で攪拌した。反応終了後、ラネーニッケルを除去して、さらに溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製し、さらにソルミックスA−11からの再結晶により精製して、化合物(No.2)(4.5g;74.5%)を得た。
【0138】
H−NMR(δppm;CDCl):6.83(t,1H),6.64(t,1H),4.09(q,2H),3.31(m,1H),2.89(m,1H),2.60(m,1H),1.90(m,1H),1.79(m,1H),1.71−1.52(m,4H),1.44(t,3H),1.41−1.25(m,5H),1.06−0.87(m,5H).
【0139】
化合物(No.2)の物性は次のとおりであった。
転移温度:C 40.7 I.TNI=−52.7℃;Δn=0.038;Δε=−3.79.
【実施例3】
【0140】
化合物(No.62)の合成


【0141】
第1工程
窒素雰囲気下、良く乾燥させたメトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリド(MTC;14.4g)のTHF(100ml)溶液を−30℃に冷却した。そこへ、カリウムt−ブトキシド(4.7g)を−30℃〜−20℃の温度範囲で、4回に分けて投入した。−20℃で60分攪拌した後、化合物(s8)(5.8g)のTHF(50ml)溶液を−30℃〜−20℃の温度範囲で滴下した。室温に戻しながらさらに2時間攪拌した。反応混合物を水に注ぎこみ、トルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、3−プロピル−7−メトキシメチル−シス−4,8−ビシクロ[3,3,0]オクタンを得た。この化合物に、蟻酸(87%;4.8g)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB;3.4g)、およびトルエン(100ml)を加え、この混合物を、室温で2時間攪拌した。反応混合物を水に注ぎ込み、トルエンで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、化合物(s10)(5.1g;82.7%)を得た。
【0142】
第2工程
水素化リチウムアルミニウム(0.4g)をTHF(100ml)に懸濁した。この懸濁液に化合物(s10)(3.0g)を、−20℃から−10℃の温度範囲で滴下し、この温度範囲でさらに2時間攪拌した。GC分析により反応終了を確認後、氷冷下、反応混合物に、順次、酢酸エチル、飽和アンモニア水溶液を加えた。析出物をセライト濾過により除去し、濾液を酢酸エチルにより抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和食塩水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、トルエン:酢酸エチル=9:1)で精製して、化合物(s11)(1.9g;62.6%)を得た。
【0143】
第3工程
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(s11)(1.9g)、および塩化メチレン(100ml)を入れて、0℃に冷却した。p−トルエンスルホニルクロリド(p−TsCl;2.2g)とジアザビシクロオクタン(DABCO;3.5g)を加え、室温で8時間攪拌した。反応混合物を水に注ぎこみ、トルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、トルエン:ヘプタン=1:1)で精製して、化合物(s12)(3.2g;91.2%)を得た。
【0144】
第4工程
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(s12)(3.2g)、4−エトキシ−2,3−ジフルオロフェノール(1.8g)、リン酸三カリウム(KPO)、TBAB(0.9g)、およびトルエン(100ml)を入れて、70℃で5時間攪拌した。反応混合物を25℃まで冷却後、析出物を濾過し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、トルエン:ヘプタン=1:1)で精製し、さらにソルミックスA−11からの再結晶により精製して、化合物(No.62)(2.1g;65.2%)を得た。
【0145】
H−NMR(δppm;CDCl):6.62(d,2H),4.05(q,2H),3.98(m,1H),3.89(t,1H),2.43(quin,1H),2.15(q,1H),1.89(m,1H),1.82(m,1H),1.73(m,1H),1.66−1.51(m,3H),1.46(m,1H),1.42(t,3H),1.33−1.09(m,7H),0.90(m,3H).
【0146】
化合物(No.62)の物性は次のとおりであった。
転移温度:C 48.1 I.TNI=−19.4℃;Δn=0.058;Δε=−7.17.
【実施例4】
【0147】
化合物(No.222)の合成


【0148】
第1工程
窒素雰囲気下、良く乾燥させた化合物(s13)(7.6g)のTHF(100ml)溶液を−10℃に冷却した。そこへ、カリウムt−ブトキシド(1.6g)を−10℃〜−5℃の温度範囲で、2回に分けて投入した。−10℃で60分攪拌した後、化合物(s10)(2.1g)のTHF(30ml)溶液を−10℃〜−5℃の温度範囲で滴下した。室温に戻しながらさらに2時間攪拌した。反応混合物を水に注ぎこみ、トルエンで抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製した。この生成物の2−プロパノール(50ml)溶液にPd/C(0.2g)を加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで室温で攪拌した。反応終了後、Pd/Cを除去して、さらに溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製し、さらにソルミックスA−11からの再結晶により精製して、化合物(No.222)(0.95g;19.8%)を得た。
【0149】
H−NMR(δppm;CDCl):7.41(d,2H),7.25(d,2H),7.08(td,1H),6.78(t,1H),4.15(q,2H),2.66(m,2H),2.45−2.23(m,2H),2.00(m,1H),1.86−1.44(m,12H),1.23−0.95(m,4H),0.90(m,5H).
【0150】
化合物(No.222)の物性は次のとおりであった。
転移温度:C 45.2 N 57.4 I.TNI=53.3℃;Δn=0.104;Δε=−3.98.
【実施例5】
【0151】
化合物(No.447)の合成


【0152】
第1工程
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(s9)(6.9g)とTHF(100ml)とを入れて、−74℃に冷却した。そこへ、sec−ブチルリチウム(1.00M;n−ヘキサン/シクロヘキサン溶液(体積比、1:19);48ml)を−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに2時間攪拌した。続いて3−トリイソプロポキシ−シス−4,8−ビシクロ[3,3,0]オクタン−7−オン(s5)(11.8g)のTHF(50ml)溶液を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ8時間攪拌した。反応混合物を塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮した。残渣に、(メトキシカルボニルスルファモイル)トリエチルアンモニウムヒドロキシド分子内塩(Burgess試薬;10.0g)、およびトルエン(100ml)を加え、この混合物を、50℃で2時間攪拌した。反応混合物を30℃に冷却した後、水に注ぎ込み、トルエンで抽出した。一緒にした有機層を飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)により精製して、化合物(s14)(11.9g;68.5%)を得た。
【0153】
第2工程
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(s14)(11.9g)とTHF(50ml)とを入れて、0℃に冷却した。そこへ、テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF;54.5ml)を滴下し、室温に戻しながらさらに8時間攪拌した。反応混合物を水に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、トルエン:酢酸エチル=9:1)で精製して、化合物(s15)(7.4g;96.9%)を得た。
【0154】
第3工程
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(s15)(13.4g)と塩化メチレン(100ml)とを加えて、0℃に冷却した。そこへ、DMP(13.4g)を3回に分けて加え、室温に戻しながらさらに2時間攪拌した。反応混合物に飽和重曹水、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液を注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、トルエン:酢酸エチル=9:1)で精製して、化合物(s16)(7.3g;99.4%)を得た。
【0155】
第4工程
窒素雰囲気下、反応器へ4−ブトキシ−2,3−ジフルオロベンゼン(s17)(5.4g)とTHF(100ml)とを入れて、−74℃に冷却した。そこへ、sec−ブチルリチウム(1.00M;n−ヘキサン/シクロヘキサン溶液;33ml)を−74℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに2時間攪拌した。続いて化合物(s16)(7.3g)のTHF(50ml)溶液を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ8時間攪拌した。反応混合物を塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を、水、飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮した。残渣に、パラトルエンスルホン酸(p−TsOH;0.2g)、およびトルエン(100ml)を加え、この混合物を、2時間加熱還流した。反応混合物を30℃に冷却した後、水に注ぎ込み、トルエンで抽出した。一緒にした有機層を飽和重曹水、および水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製し、さらにソルミックスA−11からの再結晶により精製して、化合物(No.447)(6.8g;68.5%)を得た。
【0156】
H−NMR(δppm;CDCl):6.98(tt,2H),6.70(td,2H),6.05(s,2H),4.13(q,2H),4.05(t,2H),4.00(m,2H),2.86(m,2H),2.37(m,1H),2.34(m,1H),1.81(m,2H),1.52(m,2H),1.46(t,3H),0.98(t,3H).
【0157】
化合物(No.447)の物性は次のとおりであった。
転移温度:C 113.4 N 123.3 I.TNI=112.6℃;Δn=0.202;Δε=−7.67.
【実施例6】
【0158】
化合物(No.407)の合成


【0159】
第1工程
化合物(No.447)(5.8g)の2−プロパノール(100ml)溶液にラネーニッケル(0.6g)を加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで室温で攪拌した。反応終了後、ラネーニッケルを除去して、さらに溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製し、さらにソルミックスA−11からの再結晶により精製して、化合物(No.407)(3.0g;51.3%)を得た。
【0160】
H−NMR(δppm;CDCl):6.85(t,2H),6.67(t,2H),4.11(q,2H),4.03(t,2H),3.37(m,2H),3.09(m,2H),1.80(m,2H),1.74(m,2H),1.63(m,2H),1.54−1.43(m,7H),1.21(m,2H),0.98(t,3H).
【0161】
化合物(No.407)の物性は次のとおりであった。
転移温度:C 97.8 I.TNI=27.3℃;Δn=0.074;Δε=−12.69.
【実施例7】
【0162】
実施例1〜6に示した合成方法により、下記の化合物を対応する出発原料から合成した。
【0163】
化合物(No.122)


【0164】
H−NMR(δppm;CDCl):7.49(d,2H),7.45(d,2H),7.10(t,1H),6.79(t,1H),6.14(s,1H),5.36(m,1H),4.15(q,2H),3.57(m,1H),2.94(quin,1H),2.48−2.31(m,2H),1.96(m,1H),1.85−1.70(m,1H),1.63(m,1H),1.48(t,3H),1.42−1.27(m,4H),1.27−1.08(m,1H),0.93(t,3H).
【0165】
化合物(No.122)の物性は次のとおりであった。
転移温度:S 57.2 N 147.1 I.TNI=138.6℃;Δn=0.220;Δε=−5.67.
【0166】
化合物(No.102)


【0167】
H−NMR(δppm;CDCl):7.42(d,2H),7.28(d,2H),7.09(td,1H),6.78(t,1H),4.14(q,2H),3.29(m,1H),2.86(m,1H),2.61(m,1H),1.93(m,2H),1.74−1.55(m,4H),1.47(t,3H),1.43−1.28(m,5H),1.15(m,1H),1.12(m,1H),0.92(t,3H).
【0168】
化合物(No.102)の物性は次のとおりであった。
転移温度:C 98.0 N 100.2 I.TNI=98.6℃;Δn=0.160;Δε=−4.68.
【0169】
化合物(No.242)


【0170】
H−NMR(δppm;CDCl):7.42(d,2H),7.05(t,1H),6.96(d,2H),6.77(t,1H),4.13(q,2H),4.00(m,1H),3.90(t,1H),2.45(quin,1H),2.18(q,1H),1.91(m,1H),1.83(m,1H),1.74(m,1H),1.68−1.56(m,4H),1.47(t,3H),1.38−1.11(m,7H),0.91(t,3H).
【0171】
化合物(No.242)の物性は次のとおりであった。
転移温度:C 66.8 N 105.4 I.TNI=103.9℃;Δn=0.158;Δε=−4.98.
【0172】
化合物(No.362)


【0173】
H−NMR(δppm;CDCl):7.00(m,2H),6.79(m,2H),4.16(q,2H),4.08(q,1H),4.00(t,1H),2.46(quin,1H),2.19(q,1H),1.96−1.82(m,2H),1.75(m,1H),1.58−1.52(m,4H),1.48(t,3H),1.38−1.11(m,7H),0.91(t,3H).
【0174】
化合物(No.362)の物性は次のとおりであった。
転移温度:C 86.6 (N 75.1) I.TNI=71.3℃;Δn=0.142;Δε=−10.75.
【0175】
化合物(No.382)


【0176】
H−NMR(δppm;CDCl):7.11(t,1H),7.03(t,1H),6.99(t,1H),6.81(t,1H),4.17(q,2H),2.83(q,1H),2.59(quin,1H),2.54(m,1H),2.09(m,1H),1.85−1.68(m,3H),1.65(quin,2H),1.49(t,3H),1.35(m,5H),1.27−1.14(m,2H),0.92(t,3H).
【0177】
化合物(No.382)の物性は次のとおりであった。
転移温度:C 70.1 N 102.4 I.TNI=91.3℃;Δn=0.134;Δε=−7.89.
【実施例8】
【0178】
実施例1〜7に記載された合成方法と同様の方法により、以下に示す化合物(No.1)〜(No.460)を合成することができる。付記したデータは前記の方法に従って求めた。転移温度を測定するときには、化合物そのものを試料として用いた。上限温度(TNI)、光学的異方性(Δn)、および誘電率異方性(Δε)を測定するときは、化合物(15重量%)と母液晶(i)(85重量%)との混合物を試料として用いた。これらの測定値から、上記の外挿法に従って外挿値を算出して記載した。なお、合成した各化合物(15重量%)は、母液晶(i)(85重量%)によく溶けた。
【0179】

【0180】

【0181】

【0182】

【0183】

【0184】

【0185】

【0186】

【0187】

【0188】

【0189】

【0190】

【0191】

【0192】

【0193】

【0194】

【0195】

【0196】

【0197】

【0198】

【0199】

【0200】

【0201】

【0202】
1−2.組成物(1)の実施例
実施例により本発明の液晶組成物(1)を詳細に説明する。本発明は下記の実施例によって限定されない。実施例における化合物は、下記の表の定義に基づいて記号により表した。表において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。実施例において記号の後にあるかっこ内の番号は化合物の番号に対応する。(−)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。最後に、組成物の物性値をまとめた。物性は、先に記載した方法にしたがって測定し、測定値を外挿することなくそのまま記載した。
【0203】

【実施例9】
【0204】
3−hpB(2F,3F)−O2 (No.22) 9%
3−opB(2F,3F)−O2 (No.2) 3%
3−HB−O1 (8−5) 15%
3−HH−4 (8−1) 5%
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 10%
5−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 2%
2−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 13%
5−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 13%
3−HHB−1 (9−1) 6%
NI=84.3℃;Δn=0.093;η=37.9mPa・s;Δε=−3.5.
【実施例10】
【0205】
3−op1OB(2F,3F)−O2 (No.62) 4%
3−hpBB(2F,3F)−O2 (No.122) 3%
3−HH−4 (8−1) 8%
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−4) 18%
5−H2B(2F,3F)−O2 (2−4) 19%
2−HHB(2F,3CL)−O2 (3−12) 2%
3−HHB(2F,3CL)−O2 (3−12) 3%
4−HHB(2F,3CL)−O2 (3−12) 2%
5−HHB(2F,3CL)−O2 (3−12) 2%
3−HBB(2F,3F)−O2 (3−7) 9%
5−HBB(2F,3F)−O2 (3−7) 9%
V−HHB−1 (9−1) 6%
3−HHB−3 (9−1) 6%
3−HHEBH−3 (10−6) 3%
3−HHEBH−4 (10−6) 3%
3−HHEBH−5 (10−6) 3%
NI=94.0℃;Δn=0.104;η=33.0mPa・s;Δε=−4.1.
上記組成物100重量部に光学活性化合物(Op−5)を0.25重量部添加したときのらせんピッチは61.1μmであった。
【実施例11】
【0206】
3−opBB(2F,3F)−O2 (No.102) 3%
3−op2BB(2F,3F)−O2 (No.222) 3%
3−HB−O1 (8−5) 15%
3−HH−4 (8−1) 5%
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 12%
5−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 12%
2−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 7%
3−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 11%
3−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 13%
5−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 13%
6−HEB(2F,3F)−O2 (2−6) 6%
NI=80.3℃;Δn=0.090;η=37.7mPa・s;Δε=−3.8.
【実施例12】
【0207】
4O−B(2F,3F)bpB(2F,3F)−O2 (No.447) 3%
4O−B(2F,3F)opB(2F,3F)−O2 (No.407) 5%
2−HH−5 (8−1) 3%
3−HH−4 (8−1) 15%
3−HH−5 (8−1) 4%
3−HB−O2 (8−5) 12%
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−4) 10%
5−H2B(2F,3F)−O2 (2−4) 15%
3−HHB(2F,3CL)−O2 (3−12) 2%
2−HBB(2F,3F)−O2 (3−7) 3%
3−HBB(2F,3F)−O2 (3−7) 9%
5−HBB(2F,3F)−O2 (3−7) 9%
3−HHB−1 (9−1) 3%
3−HHB−3 (9−1) 4%
3−HHB−O1 (9−1) 3%
NI=75.7℃;Δn=0.096;η=26.8mPa・s;Δε=−4.5.
【実施例13】
【0208】
3−hpB(2F,3F)−O2 (No.2) 3%
3−opBB(2F,3F)−O2 (No.102) 3%
3−HB−O1 (8−5) 5%
3−HH−V (8−1) 15%
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 12%
5−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 9%
2−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 9%
3−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 13%
5−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 13%
3−HHB−1 (9−1) 6%
NI=88.1℃;Δn=0.090;η=35.3mPa・s;Δε=−3.4.
【実施例14】
【0209】
3−op1OBB(2F,3F)−O2 (No.242) 8%
3−op1OB(2F,3F)B(2F,3F)−O2 (No.362) 8%
3−HB−O1 (8−5) 15%
3−HH−V (8−1) 5%
3−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 12%
5−HB(2F,3F)−O2 (2−1) 3%
2−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−1 (3−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 6%
5−HHB(2F,3F)−O2 (3−1) 13%
3−HHB−1 (9−1) 6%
NI=87.7℃;Δn=0.099;Δε=−3.8.
【実施例15】
【0210】
3−op1OBB(2F,3F)−O2 (No.242) 7%
3−opEB(2F,3F)B(2F,3F)−O2 (No.382) 3%
3−HH−4 (8−1) 8%
3−H2B(2F,3F)−O2 (2−4) 22%
5−H2B(2F,3F)−O2 (2−4) 18%
3−HHB(2F,3CL)−O2 (3−12) 3%
3−HBB(2F,3F)−O2 (3−7) 9%
5−HBB(2F,3F)−O2 (3−7) 9%
V−HHB−1 (9−1) 6%
3−HHB−3 (9−1) 6%
3−HHEBH−3 (10−6) 3%
3−HHEBH−4 (10−6) 3%
3−HHEBH−5 (10−6) 3%
NI=92.4℃;Δn=0.106;η=35.2mPa・s;Δε=−4.1.
【産業上の利用可能性】
【0211】
本発明の液晶性化合物は、熱、光などに対する高い安定性、高い透明点、液晶相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学的異方性、大きな負の誘電率異方性、適切な弾性定数、他の液晶化合物との優れた相溶性を有する。本発明の液晶組成物は、この化合物を含有し、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学的異方性、大きな負の誘電率異方性、および適切な弾性定数を有する。この組成物は、少なくとも2つの物性に関して適切なバランスを有する。本発明の液晶表示素子は、この組成物を含み、素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、および長い寿命を有する。したがって、この素子は、パソコン、テレビなどのディスプレイに広く利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1−1)で表される化合物。



式(1−1)において、
およびRは独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環Aおよび環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
およびZは独立して、単結合、−(CH22−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、または−OCO−であり;
>W−W−および>W−W−は独立して、>CH−CH−または>C=CH−であり;
mおよびnは独立して、0、1または2であり、mおよびnの和は1または2である。
【請求項2】
式(1−2)で表される、請求項1に記載の化合物。



式(1−2)において、RおよびRは独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;Zは、単結合、−(CH22−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、または−OCO−であり;>W−W−は、>CH−CH−または>C=CH−であり;nは0または1である。
【請求項3】
請求項2に記載の式(1−2)において、Zが単結合である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
式(1−3)で表される、請求項2に記載の化合物。



式(1−3)において、RおよびRは独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;Zは、単結合、−(CH22−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、または−OCO−であり;>W−W−は、>CH−CH−または>C=CH−である。
【請求項5】
式(1−4)で表される、請求項2に記載の化合物。



式(1−4)において、RおよびRは独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;環Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、または2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;Zは、単結合、−(CH22−、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、または−OCO−であり;>W−W−は、>CH−CH−または>C=CH−である。
【請求項6】
式(1−5)で表される、請求項1に記載の化合物。



式(1−5)において、RおよびRは独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキル、または炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;>W−W−および>W−W−は独立して、>CH−CH−または>C=CH−である。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の少なくとも1つの化合物の、液晶組成物の成分としての使用。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物を少なくとも1つ含有する液晶組成物。
【請求項9】
式(2)〜(7)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項8に記載の液晶組成物。


式(2)〜(7)において、
およびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;
環D、環D、環D、および環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;
、Z、Z、およびZは独立して、単結合、−(CH22−、−COO−、−CHO−、−OCF−、または−OCF(CH22−であり;
およびLは独立して、フッ素または塩素であり;
q、r、s、t、u、およびvは独立して、0または1であり、r、s、t、およびuの和は1または2である。
【請求項10】
式(8)〜(10)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項8に記載の液晶組成物。


式(8)〜(10)において、
およびRは独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;
環E、環E、および環Eは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
およびZは独立して、単結合、−(CH22−、−CH=CH−、−C≡C−、または−COO−である。
【請求項11】
請求項10に記載の式(8)〜(10)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項9に記載の液晶組成物。
【請求項12】
少なくとも1つの光学活性化合物および/または重合可能な化合物をさらに含有する、請求項8〜11のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項13】
少なくとも1つの酸化防止剤および/または紫外線吸収剤をさらに含有する、請求項8〜12のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項14】
請求項8〜13のいずれか1項に記載の液晶組成物を含む液晶表示素子。

【公開番号】特開2012−250975(P2012−250975A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−61995(P2012−61995)
【出願日】平成24年3月19日(2012.3.19)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【出願人】(596032100)JNC石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】