説明

ビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノンを含むNIR不活性基体

ポリマー成形品、フィルム、繊維およびコーティングならびに他の有機および無機物質をはじめとする赤外不活性基体を製造する方法であって、基体中、または基体の表面上に、有効量の分散されたビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤を組み込むことによる方法。このようにして得られた、権利を請求する基体は、反射性であり、反射されない近赤外線放射線のほとんどに対して透過性である。電子部品、屋外建築要素、屋外用家具、自動車、船舶もしくは航空宇宙産業部品、積層体、人工皮革または織物材料を含む装置のケース、ならびに多色印刷プロセスおよび光ファイバーにおいて多数の用途がある。このようにして得られた基体をレーザー溶接に付すこともできる。新規ビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン化合物も請求される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー成形品、フィルム、繊維およびコーティングならびに他の有機および無機物質をはじめとする近赤外不活性基体を製造する方法であって、基体中または基体の表面上に、有効量のビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤を組み込むことによる方法に関する。本発明の着色剤は、反射されない近赤外(NIR)線のほとんどに対して透過性であるというさらなる性質を有する。したがって、ごくわずかのNIR線しかこれらの暗色着色剤によって吸収されず、さらに発熱も制限され、レーザー溶接品の製造が可能になる。
【0002】
近赤外(NIR)反射率特性を有する物質は、多くの現行の用途で重要であることが証明されている。このような物質は、NIRにより誘発される発熱を減少させ、自動車塗料および船舶用塗装、コンテナ、有色プラスチック、たとえばビニルサイディング等において使用できる。耐熱性組成物も、発熱を減少させることが望まれる無機および有機グレージングおよび航空宇宙産業、建築用等のガラスならびにセラミック装飾用途において使用できる。
【0003】
NIR反射性物質を利用する他の用途としては、軍事用保護カモフラージュが挙げられる。
【0004】
どちらも内容全体が参考として本明細書で援用されるUS6,171,383およびUS6,221,147は、改善された発熱性を有するIR反射性酸化ビスマスマンガン緑色顔料を開示している。
【0005】
内容全体が参考として本明細書で援用されるUS6,989,056は、ハロゲン化銅フタロシアニンおよびペリレンテトラカルボン酸ジイミドを含むIR反射性黒色顔料組成物を開示している。
【0006】
DE3111650およびDE3311375は、高いIR緩和を有する、帯緑色、帯赤色または帯青色黒色イソインドリン着色剤を開示している。
【0007】
US2003/0083407は、赤、紫、青または褐色ビスメチンベンゾジフラノン着色剤を含むポリマー物品を開示し、式
【化1】

(実施例12b)
の化合物を開示しているWO00/24736のイサチン系ベンゾジフラノンを排除するように述べている。
【0008】
EP1217044は、近赤外線透過有機顔料、特に好適には式
【化2】

の黒色顔料でコーティングされた白色顔料を含む近赤外線反射性複合顔料を開示している。
【0009】
DE19540682は、少なくとも1つの黒色顔料、少なくとも1色の顔料、高分散ケイ酸および場合によって白色顔料もしくは他の顔料、フィラー、および/またはコーティング添加剤を含む熱放射反射性コーティング用コーティング組成物を開示している。実施例1において、Chromofine(登録商標)Black A 1103(大日精化工業株式会社、Coulor Index区分のない、構造が未開示のアゾメチン型顔料)を使用している。
【0010】
WO01/32577は、着色ガラス状物質を開示し、その中には、テトラエトキシシラン、水性硝酸および式
【化3】

(実施例41)
の着色剤でコーティングされたガラスプレートが含まれ、これは200℃で加熱後に760〜765nmで吸収最大値を有する。
【0011】
当該分野での進歩にも関わらず、新規の安定なIR不活性組成物が依然として必要とされている。
【0012】
驚くべきことに、ビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤(顔料または染料)をプラスチックまたはコーティング中に組み込むことによって、プラスチックまたはコーティングは、NIR不活性になることが判明した。本発明の着色剤は、暗色(黒色、褐色、および特に灰色、ならびに明灰色の色相を包含する)NIR不活性基体の製造を可能にする。
【0013】
本明細書において用いられる場合、「NIR不活性」という用語は、750nm〜2μmの波長での物質の特性を意味する。すなわち、750nm〜2μmの波長の電磁放射線は、部分的に反射され、そして部分的に透過し、そのエネルギーは、基体中に全くまたはほとんど蓄積されない。本発明にしたがって製造される物品のNIR特性は、NIR放射線の吸収による発熱が最小限に抑えられるか、またはNIRセンサーによる検出が最小限に抑えられる用途において非常に有利である。
【0014】
暗色、一般的には黒色または黒色に近い同様の着色剤も、一部の近赤外放射線を反射するが、同時に非反射性NIR放射線のほとんどに対しては透過性であることが判明した。着色剤を、たとえばNIR吸収物質、たとえばカーボンブラック着色ポリマーを含む基体と接触した層中に組み込むことによって、レーザーからのようなNIR放射線を、本発明の顔料を含む層を通って下にある基体へと通過させ、照射点で「レーザー溶接」、または2つの物質を一緒に溶融させるために十分な熱を発生させる。
【0015】
近赤外線不活性有機もしくは無機基体を製造するための方法が提供され、この方法は、式
【化4】

のビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤またはその異性体もしくは互変異性体、好ましくは式(Ia)もしくは(Ib)の顔料またはその異性体もしくは互変異性体を含む組成物を基体中に組み込むか、または基体上に適用することを含み、ここで、式(Ia)もしくは(Ib)のビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤またはその異性体もしくは互変異性体は、≦0.5μmの平均サイズもしくは≧0.5μmの平均サイズおよび≧0.4μmの厚さの粒子であって、組成物中に、十分分散された粒子の形態で、反射性有機もしくは無機基体に、≧20%の赤外線反射率、透明有機もしくは無機基体に≧30%の赤外線透過率、または半透明有機もしくは無機基体に≧25%の赤外点反射率および透過率の組み合わせ(それぞれ850〜1600nmの波長)を付与するために十分な量であり、式(Ia)および(Ib)中、
1およびR6は、それぞれ他と独立して、H、CH3、CF3、FまたはCl、好ましくはHもしくはF、最も好ましくはHであり;
2、R3、R4、R5、R7、R8、R9およびR10は、それぞれ他の全てと独立して、H、ハロゲン、R11、COOH、COOR11、COO-、CONH2、CONHR11、CONR11I2、CN、OH、OR11、OOCR11、OOCNH2、OOCNHR11、OOCNR1112、NO2、NH2、NHR11、NR1112、NHCOR12、NR11COR12、N=CH2、N=CHR11、N=CR1112、SH、SR11、SOR11、SO211、SO311、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHR11またはSO2NR11R12であり;これによって、R2およびR3、R3およびR4、R4およびR5、R7およびR8、R8およびR9、および/またはR9およびR10は、場合によって、直接結合またはO、S、NHもしくはNR11架橋によって結合させることができ;
11およびR12は、それぞれ他と独立して、C1−C12アルキル、C1−C12シクロアルキル、C1−C12アルケニル、C1−C12シクロアルケニルまたはC1−C12アルキニル(それぞれは、連続しているか、またはO、NH、NR13および/またはSによって、それぞれが少なくとも2個のC原子を含む2以上のフラグメントに分断され、そのそれぞれはさらに、置換されていないか、またはCOOH、COOR13、COO-、CONH2、CONHR13、CONRR1314、CN、O、OH、OR13、OOCR13、OOCNH2、OOCNHR13、OOCNR1314、NR13、NH2、NHR13、NR1314、NHCOR14、NR13COR14、N=CH2、N=CHR13、N=CR1314、SH、SR13、SOR13、SO213、SO313、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHR13、SO2NR1314またはハロゲンで1回以上置換されている);あるいはC7−C12アラルキル、C1−C11ヘテロアリールまたはC6−C12アリール(それぞれは、置換されていないか、またはCOOH、COOR13、COO-、CONH2、CONHR13、CONR1314、CN、OH、OR13、OOCR13、OOCNH2、OOCNHR13、OOCNR1314、NO2、NH2、NHR13、NR1314、NHCOR14、NR13COR14、N=CH2、N=CHR13、N=CR1314、SH、SR13、SOR13、SO213、SO313、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHR13、SO2NR1314もしくはハロゲンで1回以上置換されている);そして
各R13またはR14は、他のR13またはR14のいずれかと独立して、C1−C6アルキル、ベンジルはフェニルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、または前段落で定義したような置換基で1回以上置換されている。ただし、R13およびR14の任意の置換基中の原子の合計数は1〜8であり;これによって、全てのR13およびR14からなる群から選択される置換基対は、場合によって、直接結合またはO、S、NHもしくはNR11架橋によって結合して、環を形成することができる。
【0016】
一般的に、環を形成するR13およびR14は、たとえばNR1314またはCR1314におけるように、同じ原子に結合している。しかし、2以上の原子により隔てられているR13および/またはR14が結合して、より大きな環を形成することも可能である。
【0017】
式(Ia)もしくは(Ib)の化合物がアニオン性である場合、その電荷を、既知の好適なカチオン、たとえば金属、有機、無機または金属有機カチオン、たとえば好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属もしくは遷移金属、アンモニウム、第1アンモニウム、第2アンモニウム、第3アンモニウム、第4アンモニウムまたは有機金属錯体によって相殺することができる。
【0018】
平均サイズ(粒子質量によって計算される)は、たとえば、電子顕微鏡法またはJoyce−Loebl遠心分離(たとえばEP出願07122749.0に記載)によって容易に決定することができる。粒径分布は、最も適切には、穏和な条件を用いることによって、結果として残存する凝集体の脱凝集を回避しつつ、溶媒および/またはバインダー中の着色剤の分散液から直接決定される。
【0019】
無機または有機基体は、たとえば、天然ポリマーまたは合成ポリマー、たとえば熱可塑性ポリマー、エラストマーポリマー、もともと架橋したポリマーまたは架橋ポリマーである。たとえば、熱可塑性ポリマー、エラストマーポリマー、架橋ポリマーまたはもともと架橋したポリマー中に、ある量の式(Ia)もしくは(Ib)の脱凝集ビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤を組み込むことを含む方法は、熱可塑性ポリマー、エラストマーポリマー、架橋ポリマーまたはもともと架橋したポリマーに、≧20%の赤外線反射率、≧30%の赤外線透過率、または≧25%の赤外線反射率および透過率の組み合わせ(それぞれ、850〜1600nmの波長)を付与するために有効である。好ましくは、赤外線反射率は≧25%であるか、赤外線透過率は≧40%であるか、または赤外線反射率および透過率の組み合わせは≧30%である(それぞれ、850〜1600nmの波長)。最も好適には、赤外線反射率は≧30%であるか、赤外線透過率は≧50%であるか、または赤外線反射率および透過率の組み合わせは≧40%である(それぞれ850〜1600nmの波長)。
【0020】
式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤は、反射性かつ透過性であるが、反射率と透過率との比は、これらの粒径によって変わる。反射率(回折反射率を包含する)は、大きな粒子、たとえば≧0.4μmの厚さを有するものではかなり顕著であるが、透過率は、小さな粒子、たとえば0.01〜0.3μmのサイズを有するものの場合、ならびに基体中に溶解する染料の場合が優勢である。
【0021】
本発明の式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤は、通常、地味な暗色の非常に大きな凝集体および集合体の形態で合成から得られ、分散させるのが非常に困難であり、たとえば、WO00/24736の実施例12bにしたがって得られる紫色粉末である。しかし、これらの粗粉末は、粉砕助剤を用いて、溶媒、好ましくはアルコール、アミド、エステル、エーテルもしくはケトンの存在下で単に湿式粉砕することによって、好適な着色剤に容易に変形させることができ、このようにして≦0.5μm、好ましくは0.01〜0.3μmの平均サイズの粒子が得られ、これは、意外にもカーボンブラックに類似した、非常に魅力的な黒色を示すことが判明した。湿式粉砕は、たとえば、磨砕機、たとえばDyno(登録商標)またはNetzsch(登録商標)ミル、Skandex(登録商標)塗料シェーカーなどで、たとえば、好ましくは0.1〜3.0mm、特に0.5〜1.0mmのサイズのガラスもしくはセラミック(たとえばジルコニア)パールを用いて実施することができる。アルコール、アミド、エステル、エーテルまたはケトンの量は、適切には、着色剤1部あたり0.1〜1000部、好ましくは着色剤1部あたり1〜10部である。
【0022】
≦0.5μm、好ましくは0.01〜0.3μmのサイズの粒子を、極性溶媒、好ましくは2.8〜6.0・10-18esuの双極子モーメントμを有する中性の極性液体中で、≧0.4μmの厚さを有する大きな粒子が得られるまでさらに再結晶することができる。通常、これは高温、たとえば60〜150℃、場合によって圧力下で、特に溶媒の沸点を超える温度で行われる。所望により、湿式粉砕および再結晶を同時に行うことができ、その場合、大きな粒子が望ましいならば、プロセスの最後に穏和な(低剪断、低速)湿式粉砕条件を使用するのが適切である。
【0023】
粉砕および/または再結晶に適切な溶媒は当該分野で周知であり、たとえばEP0774494、EP0934364およびWO02/068541で開示されている溶媒が特に本明細書で参考として援用される。
【0024】
2、R4、R5、R7、R9、およびR10は、好ましくは、H、FまたはCl、特にHである。R3およびR8は、好ましくはH、NO2、OCH3、OC25、Br、Cl、CH3、C25、N(CH32、N(CH3)(C25)、N(C2Hs)2、α−ナフチル、β−ナフチルまたはSO3-である。好ましくは、R1はR6と同一、R2はR7と同一、R3はR8と同一、R4はR9と同一、および/またはR5はR10と同一である。
【0025】
1−C12アルキルは、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル,イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、2−メチル−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、ヘプチル、n−オクチル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシルまたはドデシルである。
【0026】
3−C12シクロアルキルは、たとえば、シクロプロピル、シクロプロピル−メチル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキシル−メチル、トリメチルシクロヘキシル、ツジル、ノルボルニル、ボルニル、ノルカリル、カリル、メンチル、ノルピニル、ピニル、1−アダマンチルまたは2−アダマンチルである。
【0027】
2−C12アルケニルは、たとえば、ビニル、アリル、2−プロペン−2−イル、2−ブテン−1−イル、3−ブテン−1−イル、1,3−ブタジエン−2−イル、2−ペンテン−1−イル、3−ペンテン−2−イル、2−メチル−1−ブテン−3−イル、2−メチル−3−ブテン−2−イル、3−メチル−2−ブテン−1−イル、1,4−ペンタジエン−3−イル、またはヘキセニル、オクテニル、ノネニル、デセニルもしくはドデセニルの任意の所望の異性体である。
【0028】
3−C12シクロアルケニルは、たとえば、2−シクロブテン−1−イル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、3−シクロヘキセン−1−イル、2,4−シクロヘキサジエン−1−イル、1−p−メンテン−8−イル、4(10)−ツジェン−10−イル、2−ノルボルネン−1−イル、2,5−ノルボルナジエン−1−イル、7,7−ジメチル−2,4−ノルカラジエン−3−イルまたはカンフェニルである。
【0029】
2−C12アルキニルは、たとえば、1−プロピン−3−イル、1−ブチン−4−イル、1−ペンチン−5−イル、2−メチル−3−ブチン−2−イル、1,4−ペンタジイン−3−イル、1,3−ペンタジイン−5−イル、1−ヘキシン−6−イル、シス−3−メチル−2−ペンテン−4−イン−1−イル、トランス−3−メチル−2−ペンテン−4−イン−1−イル、1,3−ヘキサジイン−5−イル、1−オクチン−8−イル、1−ノニン−9−イル、1−デシン−10−イルまたは1−ドデシン−12−イルである。
【0030】
7−C12アラルキルは、例えば、ベンジル、2−ベンジル−2−プロピル、β−フェニル−エチル、9−フルオレニル、α,α−ジメチルベンジル、ω−フェニル−ブチル、ω−フェニル−ペンチルまたはω−フェニル−ヘキシルである。C7−C12アラルキルが置換されている場合、アラルキル基のアルキル部分もしくはアリール部分のいずれかを置換することができる。
【0031】
6−C12アリールは、たとえば、フェニル、ナフチルまたは1−ビフェニルである。
【0032】
ハロゲンは、たとえばF、Cl、BrもしくはI、好ましくはアルキル上のFおよびアリール上のClまたはBrである。
【0033】
1−C11ヘテロアリールは、4n+2個の共役π電子を有する不飽和もしくは芳香族基、たとえば2−チエニル、2−フリル、1−ピラゾリル、2−ピリジル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル、2−イミダゾリル,イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリルまたはチオフェン、フラン、チアゾール、オキサゾール、イミダゾール、イソチアゾール、チアジアゾール、トリアゾ−ル、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジンおよびベンゼン環からなり、置換されていないか、もしくは1〜6個のエチル置換基によって置換されている任意の他の環系である。
【0034】
複素環基は、たとえば、
【化5】

である。
【0035】
複素環基は、アリールの隣接する置換基を結合させることによっても形成することができ、たとえば
【化6】

である。
【0036】
ビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤を含む組成物は、完全に顔料もしくは染料、またはその2以上(特に2〜10)の混合物もしくは固体溶液から構成されていてよく、あるいは本明細書において開示する他の物質が存在してもよい。顔料およびその混合物は染料よりもずっと好適である。
【0037】
本発明のビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤は、たとえば、WO00/24736の実施例12bで開示されている方法にしたがって、またはこの方法と同様にして製造される。
【0038】
本明細書において用いられる場合、「NIR不活性」という用語は、750nm〜2μmの波長での物質の特性を意味する。すなわち、750nm〜2μmの波長の電磁放射線は反射および/または透過する。本発明の着色剤を含む基体、または本発明の着色剤を含む組成物でコーティングされた物品は、典型的には、≧20%の近赤外線反射率、≧30%の近赤外線透過率、または≧25%の近赤外線反射率と透過率の組み合わせ(それぞれ、850〜1600nm、特に1000〜1200nmの波長)を有する。
【0039】
本発明の組成物および基体は、可視光範囲(400〜700nm)において低い彩度を示し、好ましくは≦10、さらに好ましくは≦5、最も好ましくは≦3の彩度C*を示す非常に予想外の特性を有する。これによってカーボンブラックと類似した、優れた黒い色調を製造することが可能になる。このことは、既知の有機黒色着色剤には当てはまらない。当然、式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤を白色顔料、黒色顔料、有色顔料、メタリック顔料または干渉顔料と組み合わせて使用することも可能であり、非常に興味深い暗色、特に、既知の有機黒色着色剤を用いることによって得られない灰色の色調が得られる。
【0040】
特に好適な実施形態は、式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤の、プライマー、好ましくは灰色プライマーにおける使用である。本発明のプライマーは、式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤および少なくとも1つの白色顔料を、適切には1:99〜99:1、特に1:95〜95:1の質量比で含む。好適な白色顔料はColour Indexに列挙されている。
【0041】
本発明の灰色プライマーは、好ましくは前記のような低彩度を有し、このようなプライマーは、低もしくは非NIR吸収黒色顔料、有色顔料、メタリック顔料または干渉顔料を含むベースコートと組み合わせて使用される場合、非常に著しく低温度の原因となるというさらなる利点を有する。これらの明度L*はあまり重要ではなく、たとえば特定の目的の要件に応じて、約10〜20(黒色がかった色から暗灰色)から40〜60(中灰色)を越えて70〜90(非常に明るい灰色)までさまざまである。ベースコートは、好ましくは1、2または3層中に、プライマーコーティング上に直接適用し、トップコートによって再度覆う。好ましくは、これは、いわゆるウェット・オン・ウェット法によって行うことができる。場合によって、1以上の中間コーティングをプライマーコーティング、ベースコートおよびトップコートの間に適用してもよい。
【0042】
したがって、本発明は、
・ 式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤、またはその異性体もしくは互変異性体、好ましくは式(Ia)もしくは(Ib)の顔料またはその異性体もしくは互変異性体、および白色顔料を1:99〜99:1、特に1:95〜95:1の質量比で含むプライマーコーティング;
・ 黒色顔料、有色顔料、メタリック顔料、または干渉顔料を含むベースコート;ならびに
・ 場合によって透明なトップコート
を含む多層コーティングにも関する。
【0043】
このような多層コーティングは、車体に特に有利である。ベースコートが黒色顔料を含む場合、このような黒色顔料は、適切にはカーボンブラックを含まず、赤外線光を透過または反射しなければならない。好ましくは、このような黒色顔料も、式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤であるか、または式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤を含む。
【0044】
これらの反射率および透過率特性は、近赤外線放射線吸収による発熱が最小限に抑えられ、IRセンサーによる検出が最小限に抑えられるべき用途において、非常に有利である。特に有利には、本発明の式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤を、電子部品を含む装置、たとえばラップトップ型コンピュータ、携帯電話、ウォークマンもしくはMP3プレーヤー、無線装置、TV受像機、デジタルカメラ、測定装置、たとえばGPS受信機、道路レーダー、宇宙レーダーもしくは他のレーダー、テレメーター、傾斜計もしくはセオドライト、リモコンもしくはラジコンもしくはさらなる電子装置、車両のダッシュボードもしくは車体、特にフロントフードカバー電子制御エンジン、空調装置、ブレーキおよび高機能路面密着性制御機器、たとえばABSもしくはEPSのケース中もしくはケース上に適用する。電子用途におけるさらなる利点は、本発明の式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤で着色された物質の低い導電性である。
【0045】
さらに、有利には、本発明の式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤を、屋外建築要素(建築材料)、たとえば屋根および壁用タイル、サイディング、扉および窓枠、プロファイル、建築用グレージング、パイプ、ローラーブラインドまたはベネチアンブラインド、座席および車体をはじめとする自動車、船舶もしくは航空宇宙産業用部品、屋外用家具、たとえばガーデン・チェアおよびテーブル、またはかかる物品上の積層体、特に自動車座席を包含する人工皮革もしくは織物材料、ならびにあらゆる種類の糸および織物(場合によって、ロープ、ネット、オーニング、フェルト、ベルベット、合成毛皮製品などにさらに変形される)、たとえば儀式用または伝統的衣装および他の衣類(たとえばチューダーボンネット、角帽、ガーディアン用ベルベットジャケット、大修道院長用帽子、チャドル、カソック、シュトレイメル、神道の烏帽子など)、あるいは温室用ホイル中に適用して、変形および経年劣化を減少させ、かかる物品の寿命を増大させ、同時に使用時の快適性を増大させ、空調装置用エネルギーを節約する。本発明の低加熱物質は、カモフラージュ用途およびレジャー、スポーツまたは軍装備品においても非常に有用である。
【0046】
加熱の利点は、本発明の式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤を、白色、低もしくは非NIR吸収黒色顔料、有色顔料、メタリック顔料または干渉顔料と、たとえば1:99〜99:1、特に1:95〜95:1の質量比で組み合わせて適用する場合に、特にすばらしい。
【0047】
本発明の式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤の特性は、光ファイバーおよびこれらと接触している物品のために使用することも可能にする。
【0048】
さらなる有利な用途、特に印刷用インクにおいて、本発明の式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤を、750nm〜2μmの赤外範囲で吸収する化合物と、たとえば1:99〜99:1、特に1:95〜95:1の質量比で組み合わせて適用する。特に有用には、本発明の式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤を、多色印刷プロセス、たとえば、プロセス、たとえばスクリーン印刷、オフセット印刷、リソグラフィー印刷、フレキソグラフィー印刷、グラビア印刷またはインクジェット印刷プロセス(その詳細は当業者に周知である)で、750nm〜2μmの赤外範囲で吸収する化合物上で、反射性顔料、たとえば白色顔料、有色顔料、メタリック顔料もしくは干渉顔料を含む基体上に印刷する。この場合、近赤外線吸収化合物で印刷されない基体部分の、本発明の式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤を含む層を通しての反射率は優れており、日光のもとでは見えない近赤外線吸収化合物のパターンの同定を可能にする。
【0049】
本発明の式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤は、エフェクト顔料、特に、赤外において明るさまたはゴニオクロマティックフロップ効果を示すエフェクト顔料をはじめとする多層干渉顔料と組み合わせて使用する場合に、コントラストを著しく改善することも判明した。
【0050】
したがって、本発明の式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤は、印刷、特に多色印刷によって、対象上にセキュリティーもしくは同定用エレメントを製造するため、またはさらにはプリンターもしくは他の装置を調整するための優れた手段を提供する。
【0051】
多色印刷に関して、本発明の式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤を、好ましくは黒色インク中に組み込む。1より多い黒色インクを印刷する場合、本発明の式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤を、好ましくは最後に印刷される黒色インク中に組み込む。好ましくは、近赤外線吸収化合物は実質的に無色であり、したがってNIR吸収パターンを、その上に重ねて印刷される画像を考慮することなく、基体上に印刷することができるか、または有色もしくは黒色NIR吸収化合物、たとえばカーボンブラックを使用することができ、この場合、本発明の式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤を含む黒色インクによって完全に再度覆われる基体の部分上に、NIR吸収パターンを印刷する。
【0052】
したがって、本発明は、物品の表面に対して同一もしくは異なる二面角下で、400nm〜2μmの範囲で異なる発光スペクトルを有する2つの電磁波によって連続して照射して見るか、または記録する場合、あるいは物品の表面に対して異なる二面角下で400nm〜2μmの範囲で同じ発光スペクトルを有する電磁波によって照射して観察するか、または記録する場合に異なるパターンを示すマークがその上に存在する物品にも関し、このマークは、少なくとも2つの異なる着色剤、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10または11〜25の着色剤(それぞれの着色剤は、着色剤の一部もしくは全部について同一であっても、異なっていてもよい湿潤、乾燥もしくは硬化インク中に埋め込まれ、少なくとも2つの湿潤、乾燥もしくは硬化インクは、好ましくは400nm〜2μmの範囲の発光スペクトルの電磁波によって照射すると異なって反射する)を含み、マークが、有効量の式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤、またはその異性体もしくは互変異性体、好ましくは式(Ia)もしくは(Ib)の顔料またはその異性体もしくは互変異性体を、湿潤、乾燥もしくは硬化インク中の少なくとも1つに含むことを特徴とする。
【0053】
好ましくは、マークは、本発明の式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤を含む異なるパターンに加えて、赤外吸収体を含むパターンを含む。十分に識別可能なパターンを形成するために適切な赤外吸収体は、インクビヒクル中で715〜2000nmの波長で約≧5000l・mol-1・cm-1のε値を有する任意の物質である。このような赤外吸収体は、当該分野において周知であり、その化学構造は、本発明の実施に関係がない。
【0054】
本発明のインクは、適切には、バインダーならびに所望により当該分野において通常どおり溶媒および/または硬化性化合物を含み、その成分のそれぞれは、通常、同じかまたは異なる化学種のさまざまな化合物の混合物である。
【0055】
異なるスペクトルの2つの電磁波は、400nm〜2μmの範囲の2つの異なる波長の第1電磁波の放射エネルギーを第2電磁波の放射エネルギーで割った2つの商の比が少なくとも3:2、好ましくは10:1である場合に、適切に異なっている。
【0056】
本出願は、好ましくは印刷することによって実施されるが、他の手段によって、たとえば手書きで、たとえば万年筆、フェルトペンまたはボールペンを使用して、連続して異なった色のマーカーを用いて、マークをつけることも可能である。
【0057】
当然、物品上に複数の同一もしくは異なるマークが存在して、セキュリティー用および装飾用マークの両方を作成できるようにすることもでき、このマークを同じ物品上で組み合わせることもできる。物品は任意の物体、たとえば紙、ボール紙もしくはポリマーシート、たとえば袋およびラベル、キャップ、シール、任意の種類の容器、たとえば箱、ケーシング、または自動車および他の部品などの物体、消耗品、たとえばインクジェットおよびトナーカートリッジ、磁気テープまたはコンピュータで読み取り可能なディスク、たとえばCD−R、CD−RW、DVD±RもしくはBlu−Ray(登録商標)または類似のディスクであるが、これらに限定されない。
【0058】
マークを、特に、たとえばこれらに限定されないが、身分証明書、銀行のクレジットカード、クレジットカードもしくは社員証、小切手、紙幣、運転免許証または任意の他のバッジ、パスもしくは許可証等のセキュリティー用物品上に印刷することができる。本発明の式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤を含む偽造防止品は、当業者には明らかであるが、当然本明細書では開示されるべきではない理由から、潜在的な偽造者にとってはますます難解になっている。
【0059】
マークは、場合によって、自動的に認識されるように設計することができる。特に、これは、見かけ上は平坦な黒色部分上に隠されたバーコードもしくはモザイクコードに当てはまる。マークは、通常、物品の一部にのみ、たとえば物品表面の0.1〜99.9%に適用されるが、単に装飾的な目的で物品全体上に均一に適用することもできる。
【0060】
本発明は、したがって、物品を同定するための方法であって、前記物品が、有効量の式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤、またはその異性体もしくは互変異性体、好ましくは式(Ia)もしくは(Ib)の顔料またはその異性体もしくは互変異性体を含むマークを含むことを特徴とする方法も提供し、ここで、前記マークは、715〜2000nmの波長の電磁波による照射下で記録され、物品を同定するために、このマークの画像を使用する。
【0061】
好ましくは、マークの画像は、可視光(400〜700nm)下で見えないか、または異なっていない。赤外線下でのマークの画像を、通常の方法で視覚的にまたは機器によって加工し、場合によって、可視画像に変換する。
【0062】
さらに、典型的には、式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤を、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、エラストマーポリマー、もともと架橋したポリマーまたは架橋ポリマーを含む組成物中に組み込む。ポリマーは、たとえば、フィルム、シート、射出成形品、押出加工品、繊維、積層体、フェルトまたは不織布の形態であってよい。ポリマーは、コーティング組成物の一部であってもよい。
【0063】
式(Ia)もしくは(Ib)の分散性着色剤を、基体中に直接組み込むか、または基体の表面に適用する。
【0064】
基体の表面に適用する場合、式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤は、コーティング組成物の一部であってよい。コーティングは、任意のコーティング系、またはさらにはあらかじめ形成されたフィルム(どちらも基体に接着し、式(Ia)または(Ib)の着色剤と適合性である)、たとえば、自動車コーティング、船舶用塗装、塗料、インク、積層体、印刷アプリケーション用受理層、または他の保護もしくは装飾用コーティング、たとえばグレージング用途において使用されるコーティングもしくはフィルムを含むことができる。着色剤は、式(Ia)もしくは(Ib)の織物処理剤の一部であってもよい。
【0065】
本発明の着色剤をその中に組み込むことができるか、またはその上にコーティングすることができる熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、エラストマーポリマー、もともと架橋したポリマー、もしくは架橋ポリマーの例を以下に記載する。
【0066】
1.モノオレフィンおよびジオレフィンのポリマー、たとえばポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリイソプレンもしくはポリブタジエンならびにシクロ−オレフィン、たとえばシクロペンテンもしくはノルボルネンの重合体;ならびにポリエチレン(場合によって架橋していてもよい)、たとえば高密度ポリエチレン(HDPE)、高分子量の高密度ポリエチレン(HDPE−HMW)、超高分子量の高密度ポリエチレン(HDPE−UHMW)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、および直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、(VLDPE)ならびに(ULDPE)。
【0067】
ポリオレフィン、つまり前段落で一例として記載するようなモノオレフィンのポリマー、特にポリエチレンおよびポリプロピレンを、様々な方法、特に以下の方法によって製造することができる:
a)(通常、高圧および高温での)フリーラジカル重合;
b)通常は、IVb、Vb、VIbもしくはVIII族の1以上の金属を含む触媒を用いることによる触媒。これらの金属は、一般的に1以上のリガンド、たとえば、πまたはσ配位のいずれかであってよい酸化物、ハロゲン化物、アルコラート、エステル、エーテル、アミン、アルキル、アルケニルおよび/またはアリールを有する。このような金属錯体は、遊離していてもよいし、あるいは担体、たとえば活性化塩化マグネシウム、塩化チタン(III)、酸化アルミニウムもしくは酸化ケイ素に固定されていてもよい。このような触媒は、重合媒体中に可溶性であっても、あるいは不溶性であってもよい。触媒は重合においてそれ自体活性であってもよいし、あるいはさらなる活性剤、たとえば金属アルキル、金属水素化物、金属アルキルハロゲン化物、金属アルキル酸化物もしくは金属アルキルオキサンを使用してもよく、金属は、Ia、IIaおよび/またはIIIa族の元素である。活性剤をさらなるエステル、エーテル、アミンもしくはシリルエーテル基で修飾しておいてもよい。
【0068】
2.1)で記載したポリマーの混合物、たとえばポリプロピレンとポリイソブチレンとの混合物、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合物(たとえば、PP/HDPE、PP/LDPE)および異なる種類のポリエチレンの混合物(たとえば、LDPE/HDPE)。
【0069】
3.モノオレフィンおよびジオレフィンの相互のコポリマーもしくは他のビニルモノマーとのコポリマー、たとえばエチレン/プロピレンコポリマー、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)およびこれらの混合物と低密度ポリエチレン(LDPE)とのコポリマー、プロピレン/ブテン−1コポリマー、プロピレン/イソブチレンコポリマー、エチレン/ブテン−1コポリマー、エチレン/ヘキセンコポリマー、エチレン/メチル−ペンテンコポリマー、エチレン/ヘプテンコポリマー、エチレン/オクテンコポリマー、プロピレン/ブタジエンコポリマー、イソブチレン/イソプレンコポリマー、エチレン/アルキルアクリレートコポリマー、エチレン/アルキルメタクリレートコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマーおよびこれらと一酸化炭素とのコポリマー、またはエチレン/アクリル酸コポリマーおよびこれらの塩(イオノマー)、ならびにエチレンとプロピレンおよびジエン、たとえばヘキサジエン、ジシクロペンタジエンまたはエチリデンノルボルネンとのターポリマー;ならびにこのようなコポリマーの相互の混合物、または1)で記載したポリマーとの混合物、たとえばポリプロピレン−エチレン/プロピレンコポリマー、LDPE−エチレン/酢酸ビニルコポリマー、LDPE−エチレン/アクリル酸コポリマー、LLDPE−エチレン/酢酸ビニルコポリマー、LLDPE−エチレン/アクリル酸コポリマーおよび交互もしくはランダム構造のポリアルキレン−一酸化炭素コポリマーおよびこれらと他のポリマー、たとえばポリアミドとの混合物。
【0070】
4.炭化水素樹脂(たとえばC5−C9)、たとえばこれらの水素化修飾物(たとえば粘着付与樹脂)ならびにポリアルキレンおよびデンプンの混合物。
【0071】
5.ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(α−メチルスチレン)。
【0072】
6.たとえばスチレン/ブタジエン、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/アルキルメタクリレート、スチレン/ブタジエン/アルキルアクリレートおよびメタクリレート、スチレン/無水マレイン酸、スチレン/アクリロニトリル/メチルアクリレートなどのスチレンまたはα−メチルスチレンのジエンまたはアクリル誘導体とのコポリマー;スチレンコポリマーおよび別のポリマー、たとえばポリアクリレート、ジエンポリマーもしくはエチレン/プロピレン/ジエンターポリマーからなる高衝撃強度混合物;ならびにたとえばスチレン/ブタジエン/スチレン、スチレン/イソプレン/スチレン、スチレン/エチレン−ブチレン/スチレンもしくはスチレン/エチレン−プロピレン/スチレン等のスチレンのブロックコポリマー。
【0073】
7.スチレンもしくはα−メチルスチレンのグラフトコポリマー、たとえばポリブタジエン上スチレン、ポリブタジエン/スチレンもしくはポリブタジエン/アクリロニトリルコポリマー上スチレン、ポリブタジエン上スチレンおよびアクリロニトリル(もしくはメタクリロニトリル);ポリブタジエン上スチレン、アクリロニトリルおよびメチルメタクリレート;ポリブタジエン上スチレンおよび無水マレイン酸;ポリブタジエン上スチレン、アクリロニトリルおよび無水マレイン酸もしくはマレイン酸イミド;ポリブタジエン上スチレンおよびマレイン酸イミド、ポリブタジエン上スチレンおよびアルキルアクリレートもしくはアルキルメタクリレート、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマー上スチレンおよびアクリロニトリル、ポリアルキルアクリレートもしくはポリアルキルメタクリレート上スチレンおよびアクリロニトリル、アクリレート/ブタジエンコポリマー上スチレンおよびアクリロニトリル、ならびにこれらと6)で記載したコポリマーとの混合物、たとえばいわゆるABS、MBS、ASAもしくはAESポリマーなどの既知のもの。
【0074】
8.ハロゲン含有ポリマー、たとえばポリクロロプレン、塩化ゴム、イソブチレン/イソプレンの塩化および臭素化コポリマー(ハロブチルゴム)、塩化もしくはクロロスルホン化ポリエチレン、エチレンおよび塩化エチレンのコポリマー、エピクロロヒドリンホモポリマーおよびコポリマー、特に、ハロゲン含有ビニル化合物のポリマー、たとえばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン;ならびにたとえば塩化ビニル/塩化ビニリデン、塩化ビニル/酢酸ビニルまたは塩化ビニリデン/酢酸ビニルなどのこれらのコポリマー。
【0075】
9.α,β−不飽和酸およびこれらの誘導体由来のポリマー、たとえばポリアクリレートおよびポリメタクリレート、またはブチルアクリレートで耐衝撃修飾されたポリメチルメタクリレート、ポリアクリルアミドおよびポリアクリロニトリル。
【0076】
10.9)で記載したモノマの相互のコポリマーまたは他の不飽和モノマーとのコポリマー、たとえばアクリロニトリル/ブタジエンコポリマー、アクリロニトリル/アルキルアクリレートコポリマー、アクリロニトリル/アルコキシアルキルアクリレートコポリマー、アクリロニトリル/ハロゲン化ビニルコポリマーもしくはアクリロニトリル/アルキルメタクリレート/ブタジエンターポリマー。
【0077】
11.不飽和アルコールおよびアミンまたはこれらのアシル誘導体またはアセタール由来のポリマー、たとえばポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、ポリ安息香酸ビニルもしくはポリマレイン酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリアリルフタレート、ポリアリルメラミン;ならびにこれらの1)で記載したオレフィンとのコポリマー。
【0078】
12.環状エーテルのホモポリマーおよびコポリマー、たとえばポリアルキレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドもしくはこれらのビスグリシジルエーテルとのコポリマー。
【0079】
13.ポリアセタール、たとえばポリオキシメチレン、ならびにコモノマー、たとえばエチレンオキシドを含むポリオキシメチレン;熱可塑性ポリウレタン、アクリレートもしくはMBSで修飾されたポリアセタール。
【0080】
14.ポリフェニレンオキシドおよびスルフィドならびにこれらのスチレンポリマーもしくはポリアミドとの混合物。
【0081】
15.一方に末端ヒドロキシル基を有し、他方に脂肪族もしくは芳香族ポリイソシアネートを有するポリエーテル、ポリエステルおよびポリブタジエン由来のポリウレタン、ならびにこれらの初期生成物。
【0082】
16.ジアミンおよびジカルボン酸由来および/またはアミノカルボン酸または対応するラクタム由来のポリアミドおよびコポリアミド、たとえばポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド6/6、6/10、6/9、6/12、4/6、12/12、ポリアミド11、ポリアミド12、m−キシレン、ジアミンおよびアジピン酸由来の芳香族ポリアミド;ヘキサメチレンジアミンならびにイソフタル酸および/またはテレフタル酸および場合によって修飾剤としてのエラストマーから製造されるポリアミド、たとえばポリ−2,4,4−トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミドまたはポリ−m−フェニレンイソフタルアミド。前記ポリアミドとポリオレフィン、オレフィンコポリマー、イオノマーまたは化学的に結合もしくはグラフトしたエラストマーとのブロックコポリマー;またはポリエーテルとのブロックコポリマー、たとえばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールもしくはポリテトラメチレングリコールとのブロックコポリマー。さらには、EPDMもしくはABSで修飾されたポリアミドもしくはコポリアミド;ならびに加工中に縮合したポリアミド(「RIMポリアミド系」)。
【0083】
17.ポリ尿素、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリヒダントインおよびポリベンズイミダゾール。
【0084】
18.ジカルボン酸およびジアルコール由来および/またはヒドロキシカルボン酸もしくは対応するラクトン由来のポリエステル、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチロールシクロヘキサンテレフタレート、ポリヒドロキシベンゾエートまたはポリカプロラクトン、ならびにヒドロキシル末端基を有するポリエーテル由来のブロックポリエーテルエステル;ならびにポリカーボネートもしくはMBSで修飾されたポリエステル。
【0085】
19.ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネート。
【0086】
20.ポリスルホン、ポリエーテルスルホンおよびポリエーテルケトン。
【0087】
21.一方でアルデヒド、および他方でフェノール、尿素もしくはメラミン由来の架橋ポリマー、たとえばフェノール−ホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒドおよびメラミン−ホルムアルデヒド樹脂。
【0088】
22.乾燥および非乾燥アルキド樹脂。
【0089】
23.飽和および不飽和ジカルボン酸の多価アルコールとのコポリエステル、ならびに架橋剤としてのビニル化合物、ならびにそのハロゲン含有難燃性修飾物由来の不飽和ポリエステル樹脂。
【0090】
24.置換アクリル酸エステル由来、たとえばエポキシアクリレート、ウレタンアクリレートもしくはポリエステルアクリレート由来の架橋性アクリル樹脂。
【0091】
25.メラミン樹脂、尿素樹脂、イソシアネート、イソシアヌレート、ポリイソシアネートもしくはエポキシ樹脂と架橋したアルキド樹脂、ポリエステル樹脂およびアクリレート樹脂。
【0092】
26.脂肪族、脂環式、複素環式もしくは芳香族グリシジル化合物由来の架橋エポキシ樹脂、たとえば無水物もしくはアミンなどの慣例の硬化剤を用い、促進剤を用いるか、もしくは用いないで架橋させた、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテルの生成物。
【0093】
27.天然のポリマー、たとえばセルロース、天然ゴム、ゼラチン、またはポリマー−相同的に化学修飾されたこれらの誘導体、たとえば酢酸セルロース、プロピオン酸セルロースおよび酪酸セルロース、およびセルロースエーテル、たとえばメチルセルロース;ならびにコロフォニー樹脂および誘導体。
【0094】
28.前記ポリマー、たとえばPP/EPDM、ポリアミド/EPDMもしくはABS、PVC/EVA、PVC/ABS、PVC/MBS、PC/ABS、PBTP/ABS、PC/ASA、PC/PBT、PVC/CPE、PVC/アクリレート、POM/熱可塑性PUR、PC/熱可塑性PUR、POM/アクリレート、POM/MBS、PPO/HIPS、PPO/PA6.6およびコポリマー、PA/HDPE、PA/PP、PA/PPO、PBT/PC/ABSもしくはPBT/PET/PCの混合物(ポリブレンド)。
【0095】
熱可塑性ポリマー、エラストマーポリマー、架橋ポリマー、またはもともと架橋したポリマーは、たとえば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアセタール、天然もしくは合成ゴムまたはハロゲン化ビニルポリマー、たとえばPVCである。ポリマーは、コポリマー、ポリマーブレンドまたは複合体の一部であってよい。ポリアミドは最も好適でない。その理由は、いくつかの本発明の式(Ia)もしくは(Ib)のビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤はこれらの中に溶解する傾向があるためである。
【0096】
本発明のビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤を、様々な既知方法に従って、ポリマー樹脂中に組み込むことができる。ただし、これらの着色剤は分散された形態であるか、もしくは容易に分散可能な形態であるとする。たとえば、化合物を個々の成分として、ブレンド中、たとえば加工前の樹脂の乾式ブレンド中に添加してもよいし、あるいは化合物を、ブレンド、マスターバッチ、フラッシュ、もしくは他の濃縮物質として加工前に別の物質中に添加してもよい。化合物を、加工ステップ中に添加することもできる。ポリマー樹脂の標準的プロセス工程は、文献で周知であり、押出、共押出、圧縮成形、Brabender溶融加工、フィルム形成、射出成形、ブロー成形、回転成形、他の成形法およびシート形成プロセス、繊維形成等が挙げられる。
【0097】
式(Ia)もしくは(Ib)の分散性化合物を、乾式ブレンド、表面含浸、懸濁、分散およびコーティング技法で既知の他の方法によって組み込むこともできる。
【0098】
本発明の着色剤をフィルムで使用する場合、フィルムを表面に、たとえば接着剤を使用することによって適用するか、または表面上に共押出する。あらかじめ形成されたフィルムを、熱を加えながら適用することもでき、これには、カレンダー加工、溶融適用および収縮包装が含まれる。
【0099】
基体を、ビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤を含む近赤外線反射性および/または透過性コーティングでコーティングする場合、コーティングは、典型的には、原則として業界で慣習的なあらゆるポリマーバインダー、たとえばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5th Edition,Vol.A18,pp.368−426,VCH、Weinheim 1991に記載されているものを含む。一般的に、これは、熱可塑性もしくは熱硬化性樹脂、たとえば、熱硬化性樹脂に基づくフィルム形成バインダーである。これらの例は、アルキド樹脂、アクリル樹脂、アクリルアミド樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂およびポリウレタン樹脂である。
【0100】
たとえば、本発明において有用な一般的コーティングバインダーの非制限的例としては、ケイ素含有ポリマー、フッ素化ポリマー、不飽和ポリエステル、不飽和ポリアミド、ポリイミド、置換アクリル酸エステル由来、たとえばエポキシアクリレート由来の架橋性アクリル樹脂、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、酢酸ビニル、ビニルアルコールおよびビニルアミンのポリマーが挙げられる。コーティングバインダーポリマーは、コポリマー、ポリマーブレンドまたは複合体であってもよい。
【0101】
コーティングは、多くの場合、たとえば、メラミン樹脂、尿素樹脂、イソシアネート、イソシアヌレート、ポリイソシアネート、エポキシ樹脂、無水物、ポリ酸およびアミンと、促進剤を用いるか、または用いないで架橋される。
【0102】
バインダーは、低温硬化性もしくは熱硬化性バインダーであり得る。多くの場合、染料よりもビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン顔料を使用する方が望ましい。これらの場合、バインダーは低温硬化性もしくは熱硬化性であり得る。ただし、温度はビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン顔料の溶解を引き起こすほど高くないとする;硬化触媒の添加は有利である可能性がある。バインダーの硬化を促進する好適な触媒は、たとえば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5th Edition,Vol.A18,p.469,VCH Verlagsgesellschaft,Weinheim 1991に記載されている。
【0103】
バインダーは、空気中で乾燥するか、または室温で硬化する表面コーティング樹脂であってよい。このようなバインダーの例は、ニトロセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアクリレート、ポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、および特にアルキド樹脂である。バインダーは、異なる表面コーティング樹脂の混合物であってもよい。バインダーが硬化性バインダーであるならば、これらを、通常、硬化剤および/または促進剤とともに使用する。
【0104】
特定のバインダーを含むコーティング組成物の例は次のとおりである:
1.低温架橋性もしくは熱架橋性アルキド、アクリレート、ポリエステル、エポキシもしくはメラミン樹脂またはかかる樹脂の混合物(所望により硬化触媒を添加する)に基づくコーティング;
2.ヒドロキシル含有アクリレート、ポリエステルもしくはポリエーテル樹脂および脂肪族もしくは芳香族イソシアネート、イソシアヌレートもしくはポリイソシアネートに基づく二成分ポリウレタンコーティング;
3.焼成中に脱ブロック化するブロック化イソシアネート、イソシアヌレートまたはポリイソシアネートに基づく一成分ポリウレタンコーティング(所望により、メラミン樹脂を添加する);
4.トリスアルコキシカルボニルトリアジンクロスリンカーおよびヒドロキシル基含有樹脂、たとえばアクリレート、ポリエステルもしくはポリエーテル樹脂に基づく一成分ポリウレタンコーティング;
5.ウレタン構造内に遊離アミノ基を有する脂肪族もしくは芳香族ウレタンアクリレートまたはポリウレタンアクリレートおよびメラミン樹脂もしくはポリエーテル樹脂に基づく一成分ポリウレタンコーティング(必要ならば硬化触媒を含む);
6.(ポリ)ケチミンおよび脂肪族もしくは芳香族イソシアネート、イソシアヌレートまたはポリイソシアネートに基づく二成分コーティング;
7.(ポリ)ケチミンおよび不飽和アクリレート樹脂もしくはポリアセトアセテート樹脂またはメタクリルアミドグリコレートメチルエステルに基づく二成分コーティング;
8.カルボキシル含有ポリアクリレートもしくはアミノ含有ポリアクリレートおよびポリエポキシドに基づく二成分コーティング;
9.無水物基を含むアクリレート樹脂およびポリヒドロキシもしくはポリアミノ成分に基づく二成分コーティング;
10.アクリレート含有無水物およびポリエポキシドに基づく二成分コーティング;
11.(ポリ)オキサゾリンおよび無水物基を含むアクリレート樹脂、または不飽和アクリレート樹脂、または脂肪族もしくは芳香族イソシアネート、イソシアヌレートまたはポリイソシアネートに基づく二成分コーティング;
12.不飽和ポリアクリレートおよびポリマロネートに基づく二成分コーティング;
13.熱可塑性アクリレート樹脂もしくは外部架橋性アクリレート樹脂のエーテル化メラミン樹脂との組み合わせに基づく熱可塑性ポリアクリレートコーティング;ならびに
14.シロキサン修飾またはフッ素修飾アクリレート樹脂に基づく塗料系。
【0105】
水中に分散可能なアクリル、メタクリルおよびアクリルアミドポリマーならびにコポリマー、たとえば、アクリル、メタクリルおよびアクリルアミド分散ポリマーならびにコポリマーは、本発明においてバインダーとして容易に使用される。
【0106】
たとえば、アクリレートポリマーを含むコーティングもしくはフィルムが、本発明において有用である。
【0107】
コーティング組成物は、さらなる成分を含むこともでき、その例は、溶媒、顔料、染料、可塑剤、安定剤、チキソトロピー剤、乾燥触媒および/またはレベリング剤である。可能な成分の例は、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5th Edition,Vol.A18,pp.429−471,VCH、Weinheim 1991に記載されているものである。
【0108】
可能な乾燥触媒もしくは硬化触媒は、たとえば、有機金属化合物、アミン、アミノ含有樹脂および/またはホスフィンである。有機金属化合物の例は、金属カルボン酸塩、特に金属Pb、Mn、Co、Zn、ZrもしくはCuのカルボン酸塩、または金属キレート、特に金属Al、TiもしくはZrのキレート、または有機金属化合物、たとえば有機スズ化合物である。
【0109】
金属カルボキシレートの例は、Pb、MnもしくはZnのステアレート、Co、ZnもしくはCuのオクトエート、MnおよびCoのナフテネートまたは対応するリノレエート、レジネートまたはタレートである。
【0110】
金属キレートの例は、アセチルアセトン、アセチル酢酸エチル、サリチルアルデヒド、サリチルアルドキシム、o−ヒドロキシ−アセトフェノンまたはトリフルオロアセチル酢酸エチルのアルミニウム、チタンもしくはジルコニウムキレート、およびこれらの金属のアルコキシドである。
【0111】
有機スズ化合物の例は、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレートまたはジブチルスズジオクトエートである。
【0112】
アミンの例は、特に、第3アミン、たとえばトリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−ジメチルエタノールアミン、N−エチル−モルホリン、N−メチルモルホリンまたはジアザビシクロオクタン(トリエチレンジアミン)およびこれらの塩である。さらなる例は、第4アンモニウム塩、たとえばトリメチルベンジルアンモニウムクロリドである。
【0113】
アミノ含有樹脂は、同時にバインダーおよび硬化触媒である。これらの例は、アミノ含有アクリレートコポリマーである。
【0114】
使用される硬化触媒は、ホスフィン、たとえばトリフェニルホスフィンであってもよい。
【0115】
コーティング組成物は、放射線硬化性コーティング組成物であってもよい。この場合、バインダーは基本的に、エチレン性不飽和結合を含むモノマー化合物またはオリゴマー化合物を含み、これを適用後に化学線によって硬化させる、すなわち、架橋、高分子量形態に変換する。
【0116】
系がUV硬化性である場合、これは一般的に光開始剤も同様に含む。対応する系は、前記刊行物Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5th Edition,Vol.A18,pages451−453に記載されている。放射線硬化性コーティング組成物において、立体障害アミンを添加することなく、新規安定剤を用いることもできる。
【0117】
コーティングは、光重合性化合物の放射線硬化性無溶媒配合物であってもよい。具体例は、アクリレートもしくはメタクリレートの混合物、不飽和ポリエステル/スチレン混合物または他のエチレン性不飽和モノマーもしくはオリゴマーの混合物である。
【0118】
コーティング組成物は、その中にバインダーが溶解できる有機溶媒または溶媒混合物を含むことができる。コーティング組成物は別の方法では水溶液または分散液であり得る。ビヒクルは、有機溶媒および水の混合物であってもよい。コーティング組成物は、高固形分塗料であってもよいし、あるいは無溶媒(たとえば粉末コーティング物質)であり得る。粉末コーティングは、たとえば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5th Edition,Vol.A18,pages 438−444に記載されているものである。粉末コーティング物質は、粉末スラリー(粉末の好ましくは水中分散液)の形態を有していてもよい。
【0119】
ビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤がコーティング中に存在し、このコーティング自体を次に別のコーティング、たとえば保護コーティングでコーティングする多層系が可能である。
【0120】
コーティングにおいて使用する場合、式(1)の化合物を分散粒子として当該分野において一般的な技術によりコーティング中に組み込む。適切な溶媒を使用することによって、分散をコーティング組成物中への組み込みと組み合わせることができる。
【0121】
本発明のコーティング組成物を、任意の所望の基体、たとえば金属、木材、プラスチック、複合材料、ガラスまたはセラミック物質基体に、慣習的方法によって、たとえば刷毛塗り、噴霧、注入、ドローダウン、スピンコーティング、浸漬または電気泳動法によって適用することができる;Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5th Edition,Vol.A18,pp.491−500も参照。
【0122】
ビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤ならびに白色顔料、黒色顔料、有色顔料、メタリック顔料または干渉顔料は、互いに独立してこの低加熱組成物中に、それぞれ「有効な量」、すなわち、基体またはコーティングの所望のレベルの着色と、所望の近赤外線反射率および透過率との両方を提供する量で存在する。たとえば、ビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤、または白色顔料、黒色顔料、有色顔料、メタリック顔料もしくは干渉顔料は、式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤または白色顔料、黒色顔料、有色顔料、メタリック顔料または干渉顔料に対して組成物の合計質量基準で、約0.01〜約50質量%の量、特に0.01〜15%、好ましくは0.1〜10%または特に好適には、組成物の合計質量基準で0.1〜5質量%の量で存在する。コーティングの場合、組成物は十分に乾燥され、硬化したコーティングである。ビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤および白色顔料、黒色顔料、有色顔料、メタリック顔料または干渉顔料を異なる組成物中、たとえば複数のコーティングの異なる層中に組み込む場合、パーセンテージは、最終的な複合系の合計質量ではなく、それぞれの(均質な)組成物の質量に基づく。
【0123】
基体の表面に適用する場合、式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤は、さらに多量で、100%に近い量でも、たとえば薄層中、または積層構造の一部である層中に存在することも想定される。
【0124】
本発明の式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤を含む組成物は、場合によって、他の添加剤、たとえば酸化防止剤、UV吸収体、ヒンダードアミンまたは他の光安定剤、ホスファイトもしくはホスホナイト、ベンゾフラン−2−オン、チオ共力剤、ポリアミド安定剤、金属ステアリン酸塩、核形成剤、フィラー、強化剤、滑剤、乳化剤、染料、顔料、分散剤、光学的光沢剤、難燃剤、耐電防止剤、発泡剤等を組み込むか、それらに適用することもできる。
【0125】
本発明はまた、有機もしくは無機基体、典型的にはポリマー基体、および式(Ia)もしくは(Ib)のビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤、またはその異性体もしくは互変異性体、好ましくは式(Ia)もしくは(Ib)の顔料またはその異性体もしくは互変異性体を、有機もしくは無機基体に≧20%の赤外線反射率、≧30%の赤外線透過率、または≧25%の赤外線反射率と透過率の組み合わせ(それぞれ、850〜1600nmの波長)を付与するために有効な量で含む近赤外線不活性組成物もしくは物品も提供する。NIR不活性組成物もしくは物品は、コーティング、フィルム、シートまたは成型もしくは他の方法で成形された物品であってもよい。
【0126】
たとえば、熱可塑性ポリマー、エラストマーポリマー、架橋ポリマー、またはもともと架橋したポリマーおよび、組成物に≧20%の赤外線反射率、≧30%の赤外線透過率、または≧25%の赤外線反射率と赤外線透過率の組み合わせ(それぞれ850〜1600nmの波長)を付与するために有効な量の式(Ia)もしくは(Ib)のビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤を含む赤外線不活性組成物。
【0127】
式(Ia)もしくは(Ib)のビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤を含む近赤外線不活性コーティングもしくはフィルムでコーティングされた基体を含む近赤外線不活性物品も提供する。
【0128】
本発明のさらなる実施形態は、層状物品をレーザー溶接するための方法であって、式(Ia)もしくは(Ib)のビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤を、NIR吸収物質、たとえばカーボンブラック着色ポリマーを含む溶解可能な基体の表面、好ましくはポリマー基体の表面と接触しているポリマー組成物中に組み込み、次に、レーザーからなどのNIR放射線を、本発明の顔料を含む層を通って下にあるNIR吸収物質へと通過させて、照射点で「レーザー溶接」に十分な熱を発生させる、すなわち2つの物質を一緒に融解させる方法も提供する。
【0129】
使用するレーザーは、約700〜約2000nm、たとえば、約800〜約1500nmの波長を放射する、一般的に利用可能なレーザーである。
【0130】
図1Aは、実施例18の試料の日光写真である。図1Bは、フィルター(開口部715〜1000nm)を用いて赤外線光に暴露した実施例18の試料写真を示す。図2は、Lambda(商標)15UV−VIS分光光度計(Perkin−Elmer)を用いてブランクMelinex(登録商標)(参考306、厚さ100μm)に対して測定した、実施例18の印刷されたポリエステル基体の電子吸収スペクトルである。図3Aは、実施例19の試料の日光写真である。図3Bは、フィルター(開口部715〜1000nm)を用いた赤外線光暴露下での実施例19の試料の写真である。
【0131】
図4Aは、実施例21に従ってセットアップした試料の写真であって、実施例18のポリエステル上のプリントを、2つの隣接するラベルの右側の表面上に重ね、上面はIR吸収体を用いて印刷されたものであり、下面はC.I.Pigment Black7を用いて印刷されたものである。図4Bは、赤外線光暴露下、フィルター(開口部715〜1000nm)を用いて実施例21にしたがってセットアップされた同じ試料の写真である。
【0132】
図5Aは、実施例22に従ってセットアップされた試料の日光写真であり、ここでは、WO00/24736の実施例12bの化合物を含むインクを紙シート上に印刷し、その左半分にはあらかじめIR吸収体を含むインクで印刷しておいた。図5Bは、赤外線光露光下、フィルター(開口部715〜1000nm)を用いた、実施例22の同じ試料の写真である。
【0133】
図1A、図1B、図3A、図3B、図4A、図5Aおよび図5Bは、すべてカラー写真であって、デジタル化し、ついで灰色スケールに変換したものである。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1A】図1Aは、実施例18の試料の日光写真である。
【図1B】図1Bは、フィルター(開口部715〜1000nm)を用いて赤外線光に暴露した実施例18の試料写真を示す。
【図2】図2は、Lambda(商標)15UV−VIS分光光度計(Perkin−Elmer)を用いてブランクMelinex(登録商標)(参考306、厚さ100μm)に対して測定した、実施例18の印刷されたポリエステル基体の電子吸収スペクトルである。
【図3A】図3Aは、実施例19の試料の日光写真である。
【図3B】図3Bは、フィルター(開口部715〜1000nm)を用いた赤外線光暴露下での実施例19の試料の写真である。
【図4A】図4Aは、実施例21に従ってセットアップした試料の写真であって、実施例18のポリエステル上のプリントを、2つの隣接するラベルの右側の表面上に重ね、上面はIR吸収体を用いて印刷されたものであり、下面はC.I.Pigment Black7を用いて印刷されたものである。
【図4B】図4Bは、赤外線光暴露下、フィルター(開口部715〜1000nm)を用いて実施例21にしたがってセットアップされた同じ試料の写真である。
【図5A】図5Aは、実施例22に従ってセットアップされた試料の日光写真であり、ここでは、WO00/24736の実施例12bの化合物を含むインクを紙シート上に印刷し、その左半分にはあらかじめIR吸収体を含むインクで印刷しておいた。
【図5B】図5Bは、赤外線光露光下、フィルター(開口部715〜1000nm)を用いた、実施例22の同じ試料の写真である。
【0135】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなく説明する(特記しない限り、「%」は常に質量%である):
実施例1:WO00/24736の実施例12bの化合物5.4部を酢酸ブチル9.0部中に15分間、Skandex(登録商標)分散機中で分散させることによって、12%のミルベースを製造する。Maprenal(登録商標)MF650(イソブタノール/n−ブタノール/キシレン(20:1:1)中30%、Solutia Inc.)25.4部を添加し、混合物を再度分散させる。次いで、25.4gのアセト酪酸セルロースおよび33.8gのDynapol(登録商標)H700を添加し、最終的に混合することによって、顔料濃度を6%まで下げる。100μmのスパイラルバーを用いて層をガラスプレート上にバーコーティングする。1200nmでの透過率は68%である。CIE−colouristicsは:L*=26.8、C*=1.3、h=290.2である。分散剤をさらに使用することによって透過率値を77%まで向上させる。
【0136】
実施例2:実施例1と同様にして、ただし、顔料濃度を1%に減少させておこなう。1200nmでの透過率は92%である。
【0137】
実施例3:WO00/24736の実施例12bの化合物を湿式粉砕によって1時間、40℃で、10倍量のイソプロパノール(Skandex(登録商標))中で処理し、次いで濾過し、乾燥する。容易に分散可能な顔料粉末を得る。
【0138】
実施例4:0.2%の実施例3の顔料粉末を含む厚さ約0.3mmのPVCシートを、2本ロールミルで、150〜160℃で通常の方法で製造する。850〜1600nmの波長範囲での透過率は、65%〜83%まで変化する。
【0139】
実施例5:0.2質量%の実施例3の顔料粉末を含む厚さ約0.4mmの柔軟性PVCフィルムを、2本ロールミルで、150〜160℃で通常の方法で製造する。温度増加を、ASTM D4803−97(2002)e1に準拠したヒートボックス中、市販の250W IRランプ下で測定する。PVCフィルムは、0.2%の市販のC Black FW 200(Evonik、C.I.Pigment Black7)を含む類似のフィルムと比較して約7℃未満の発熱を示す。
【0140】
実施例6:0.2%の実施例3の顔料粉末を含むポリプロピレン試料を、220℃での押出および射出成形によって製造する。結果は、実施例4の結果に匹敵する。特に注目に値するのは、1.2μm付近の吸収ピークの消失であり、この波長では、透過率(約77%)が無色ポリプロピレンの透過率(約74%)よりもさらに良好である。CIE−colouristicsは:L*=29.1、C*=3.5、h=79.4である。
【0141】
実施例7:実施例3の顔料粉末およびLDPEワックスの混合物(1:1)を、ポリプロピレン(HF 420 FB、Borealis)中0.1%で、260℃/56.2バール(800psi)圧力で導入し、紡糸して、80dtex/10繊維(伸張比1:4)にする。細い黒色糸を得、これを織って、C.I.Pigment Black7を含む類似の織物と比較して、約10℃未満の熱吸収および低いNIR特性を示すポリプロピレン織物にする。
【0142】
実施例8:1%の実施例3の顔料粉末を含む約25μm厚さのLDPE(Lupolen(登録商標)1840D、Basell)ブローフィルムを、200℃での押出およびブロー成形によって、通常の方法で製造する。800nm〜1500nmまでの波長範囲の透過率は、87〜90%まで変化する。商業的C Black FW 200(Evonik)を含む比較試料は、38〜56%の値を示す。
【0143】
実施例9:0.02%の実施例3の顔料粉末を含むポリエチレンテレフタレート(PET Arnite(登録商標)D04−300、DSM)試料を、280℃での押出および射出成形によって製造する。結果は、実施例4の結果と類似している。
【0144】
実施例10:0.05%の実施例3の顔料粉末を含むポリメチルメタクリレート(PMMA 6N Glasklar(商標)、Roehm GmbH、ドイツ国ダルムシュタット)試料を、200℃での押出および射出成形によって製造する。結果は、実施例4の結果と類似している。
【0145】
実施例11:実施例6と同様にして、ただし、1%のチタン白を組成物にさらに添加して行う。魅力的な中性灰色が得られ、その彩度および色相は、カーボンブラックとほとんど同じであるが、反射率がずっと高い:
【表1】

【0146】
実施例12:チタン白およびアルミニウムフレークを含むプライマーをあらかじめその上に適用しておいたスチールプレート上に、実施例3の顔料粉末を含むコーティングを噴霧し、黒色の外観を得る。反射率は、800nm〜1.35μmの領域でプライマー自体よりも著しく高く、1.35μm〜1.6μmでほとんど同じである。
【0147】
実施例13:Skandex(登録商標)中に、15.0部のWO00/24736の実施例12bの化合物、13.5部のCiba(登録商標)EFKA(登録商標)4585、1.2部のジメチルエタノールアミン(DMEA 10%)、0.3部のCiba(登録商標)EFKA(登録商標)2550および70.0部の脱イオン水を分散させることによって、ミルベースを製造する。2部のこのミルベースを次いで18部の水性ポリウレタン−アクリレートハイブリッドクリアシステム(0.54部のMaprenal(登録商標)MF900W/95、0.8部のSurfynol(登録商標)104E、0.3部のSurfynol(登録商標)MD20、0.4部のEnvirogen(登録商標)AE02、5.51部のブチルグリコール、2部のn−ブタノール、0.2部のDow(登録商標)DC57、3.5部のViscalex(登録商標)HV30、0.25部のDMEA、37.25部のAPU(登録商標)1012および49.25部の脱イオン水)中に分散させる。固体基準で4%顔料を含むコーティングを、白色プライマーをあらかじめ適用しておいたアルミニウムプレートおよびスチールプレート上に噴霧し、黒色外観を得る。
【0148】
実施例14:Skandex(登録商標)中に、PES−CAB2コートシステム中2%の実施例3の顔料粉末を分散させることによって、ミルベースを製造する。コーティングをアルミニウムプレート上に噴霧して、黒色外観を得る。
【0149】
実施例15:Skandex(登録商標)中に、6%のWO00/24736の実施例12bの化合物、ニトロセルロースおよびアルコールを分散させることによって、ワニスを製造する。若干着色したNIR吸収体を含むインクを用いて画像をあらかじめ適用しておいた白色基体上に、ハンドコーターを用いて、このインクを適用する(20μ湿潤フィルム厚)。視覚的には、試料全体は灰色に見え、画像は識別が非常に困難である。しかし、IRフィルター(715〜1000nm)を用いて試料を撮影すると、WO00/24736の実施例12bの化合物を適用する前の画像と非常に類似した画像が得られる。ペリレン黒をWO00/24736の実施例12bの化合物の代わりに使用すると、望ましい灰色プリントではなく、紫色プリントが得られる。
【0150】
実施例16:Skandex(登録商標)中に、ビニルバインダー系(Movital(登録商標)B20H、エトキシプロパノール、酢酸メトキシプロピル、ジアセトンアルコール)中3%の実施例3の顔料粉末を分散させることによって、ワニスを製造する。このインクを、ハンドコーターn°2(12μm湿潤フィルム厚)によって、アルミ箔上に適用して、灰色がかった黒色のプリントを得る。ペリレン黒を実施例3の顔料粉末の代わりに適用すると、望ましい灰色プリントではなく、紫色のプリントが得られる。
【0151】
実施例17(透明なワニス製造物):30gのCitrofoll(登録商標)BII(ATBC、Jungbunz−lauer)、20%のATBC(Christ)を含む150gのニトロセルロースチップAH27、10gのエチルセルロースN7(Herkules)、40gのKunstharz SK(Degussa)、100gの1−エトキシプロパノール、200gの酢酸エチルおよび470gのエタノールを含む配合物を23℃で穏やかに撹拌することによって、1Kgの透明ワニスを製造する。このようにして得られた透明ワニスは、18秒の粘度を有する(Ford Cup n°4)。
【0152】
実施例18:400mlガラスビン中、2時間、Skandex(登録商標)中に15部の実施例3の顔料粉末および230gの直径2mmのガラスビーズを、85部の実施例17の透明ワニス中に分散させることによって、ニトロセルロースインクを製造する。ハンドコーターn°2(12μm湿潤フィルム厚)によって透過性ポリエステル箔(Melinex(登録商標)、参考306、厚さ100μm)上に適用すると、結果として黒色プリントが得られる。日光中でフィルターを用いずに写真撮影すると、強く着色した黒色画像を示し(図1Aおよび図2参照)、一方、フィルター(開口部715〜1000nm)を用いて赤外線光下で撮影すると、無色透明画像のプリントを示す(図1B参照)。
【0153】
実施例19(比較):Dispermat(登録商標)を6000rpmで20分間400mlのガラスビン中で用い、25部のMicrolith(登録商標)Black C−A(60%C.I.Pigment Black7を含む)、2部のニトロセルロースChips AH27(20%のATBCを含有、Christ)、3部のJoncryl(登録商標)68(BASF)、5部のDowanol(登録商標)PM(Fluka)、18部の酢酸エチルおよび47部のエタノールを撹拌することによって、ニトロセルロースインクを製造する。ハンドコーターn°2(12μm湿潤フィルム厚)によって透明なポリエステル箔(Melinex(登録商標)、参考306、厚さ100μm)上に適用すると、結果として黒色プリントを得る。日光中およびフィルター(開口部715〜1000nm)を用いた赤外線光下のどちらの写真も、強く着色した黒色画像を示す(図3Aおよび図3B参照)。
【0154】
実施例20(実施例18および19の比較色測定):実施例18および19の試料を、Windows Version 2.61.05用CGRECを用いて色について測定する。実施例18を参考として、これに対して比較例19を測定する。比較例19にしたがって得られるプリントの色調は、実施例18にしたがって得られるものよりも黄色く(ΔH*=2.6)、比較例19にしたがって得られるプリントの色の濃さは、実施例18にしたがって得られるものよりも34%低い:
【表2】

【0155】
実施例21:実施例18のポリエステル上のプリントを2つの隣接するラベルの部分の上面上に重ね、第1のプリントはIR吸収体を含み、第2のプリントはC.I.Pigment Black7を含む。このセットアップを日光中(図4A参照)および赤外線光下でフィルター(開口部715〜1000nm)を使用して写真撮影する(図4B参照)。
【0156】
IR吸収体(上左)を用いて印刷したラベルは、日光の下ではほとんど無色であり、IR光下では灰色であるが、実施例18のポリエステル上のプリントによって覆われた場合(上右)、日光のもとで完全にマスクされ(図4A)、IR光の下でのみ見える(図4B).カーボンブラックを用いて印刷されたラベル(下左)は、日光のもとでは黒色に見え、IR光下では暗灰色に見えるが(部分的IR反射によるものと思われる)、実施例18のポリエステル上のプリントによって覆われる場合(下右)、日光のもとで完全にマスクされ(図4A)、IR光下でのみ見える(図4B)。すなわち、たとえばカーボンブラックまたは別の無色もしくは有色IR吸収体を用いて印刷され、実施例18の印刷層で覆われたパターンは、日光のもとでは隠れているが、フィルター(開口部715〜1000nm)を用いて赤外線光のもとでは明らかに認識可能であり、優れたマーキングもしくはセキュリティー用途を可能にする。
【0157】
実施例22:実施例3の顔料粉末を含むインクを、IR吸収体を含むプリントの上面上に刷り重ねることによって、セキュリティーエレメントを製造する。オフセットインクを含むIR吸収体をまず紙シートの左半分に、Pruefbau(登録商標)装置(1.3g/m2)を用いて印刷する。実施例18のインクを次いで、ハンドコーターn°2(12μm湿潤フィルム厚)によって先のプリントの下部分上に適用する。日光中での写真は、IR吸収体を含む下層上に印刷された実施例18のインクを含む左部分間でほとんど差を示さず(図5A参照)、一方、フィルター(開口部715〜1000nm)を用いた赤外線光下の写真は大きな違いを示す(図5B参照)。
【0158】
実施例23:実施例7と同様にし、ただし、実施例3の顔料粉末をポリプロピレン中に1.0%で導入し、織物を用いて、カモフラージュネットを製造する。
【0159】
実施例24:実施例1と同様にする。1.8部のWO00/24736の実施例12bの化合物を3.6部の酢酸ブチル中に15分間、Skandex(登録商標)分散機中で分散させることによって、ミルベースを製造する。26.5部のMaprenal(登録商標)MF650を添加し、混合物を再度分散させる。次いで、26.5部のアセト酪酸セルロースおよび35.0部のDynapol(登録商標)H700を添加し、最終的に混合することによって、顔料濃度を2%まで下げる。100μmのスパイラルバーを用いて層をガラス上にバーコーティングする。800〜1500nmの波長における透過率は、77%〜87%まで変化する。
【0160】
実施例25(比較):実施例24と同様にし、ただし、C Black FW 200(Evonik、C.I.Pigment Black7)をWO00/24736の実施例12bの化合物の代わりに使用しておこなう。800〜1500nmの波長における透過率は、22%付近の値を示す。
【0161】
実施例26:実施例1と同様に、ただし、顔料濃度を1%まで減少させておこなう。塗料をアルミニウムプレート上に噴霧して、透明な黒色外観を得る。たとえばTinuvin(登録商標)900およびTinuvin(登録商標)292(どちらもCiba)と同様に、UV吸収体およびヒンダードアミン(HALS)の組み合わせを含む、典型的な熱硬化性アクリルトップコートを次に適用する。
【0162】
実施例27:実施例26のミルベースおよび60%アルミニウムペーストを含む8%のアルミニウムベース塗料(Silverline(登録商標)SS3334AR)を混合することによって、50:50顔料:アルミニウム縮分を製造する。塗料をアルミニウムプレート上に噴霧して、輝く黒色外観を得る。たとえばTinuvin(登録商標)900およびTinuvin(登録商標)292(どちらもCiba)と同様に、UV吸収体およびヒンダードアミン(HALS)の組み合わせを含む、典型的な熱硬化性アクリルトップコートを次いで適用する。
【0163】
実施例28:20:80顔料:TiO2白縮分を、実施例26のミルベースおよび20%の二酸化チタンを含む白色ベース塗料(Kronos(登録商標)2310)を混合することによって、製造する。塗料をアルミニウムプレート上に噴霧して、灰色の外観を得る。たとえばTinuvin(登録商標)900およびTinuvin(登録商標)292(どちらもCiba)と同様に、UV吸収体およびヒンダードアミン(HALS)の組み合わせを含む、典型的な熱硬化性アクリルトップコートを次いで適用する。
【0164】
実施例29:0.6部のWO00/24736の実施例12bの化合物および二酸化チタン(Kronos(登録商標)2310)を3.8部のキシレン中に分散させ、次いでF310(商標)(Solventnaphtha(登録商標)100中60%、Bayer)および5.0部のアミノプラストクロスリンカーCymel(登録商標)327(Cytec)に基づくアルキドメラミンラッカー中29.2部中にSkandex(登録商標)分散機中で分散させることによって、ミルベースを製造する。層を、アルミニウムプレート上に100μmスパイラルバーを用いてバーコーティングし、オーブン中、30分間130℃で焼成する。灰色が得られる。
【0165】
実施例30:実施例3の顔料粉末を、0.1%濃度でPES繊維(Polyester granulate GL6105型、Kuag Elana GmbH)に110dtex/24フィラメントで紡糸する。細い黒色糸を得、これを織って、0.1%C.I.Pigment Black7を含む比較織物として、より少ない熱吸収およびより低いNIR特性を示すポリエステル織物にする。
【0166】
実施例31:実施例30と同様にし、ただし、濃度の実施例3の顔料粉末の濃度を1%に増大させておこなう。
【0167】
実施例32(「レットダウン」クリア):29部のバインダーA(Bayhydrol(登録商標)VPLS2378、Bayer)および40部のバインダーB(Bayhydrol(登録商標)VPLS 2341、Bayer)を撹拌し、次いで2.5部のブチルグリコールおよび6部のn−メチル−ピロリドンを撹拌下で個々に添加することによって、「レットダウン」クリアを製造する。混合物を15分間撹拌した後、さらなる成分を添加する。15部のクロスリンカーA(Bayhydur(登録商標)BL5140、Bayer)および7.5部のクロスリンカーB(Trixene(登録商標)BI7986)を撹拌下で別々に添加する。結果としての混合物を1時間撹拌した後、さらに添加して、全ての成分が均質に混合されることを確実にする。
【0168】
実施例33(二酸化チタン顔料ペースト):Cowlesブレード(歯付ブレード)を備えた分散機を用いて、38.5部の脱イオン水、4.2部のEfka(登録商標)4580(顔料分散剤、Ciba)、0.3部のEfka(登録商標)2550(消泡剤、Ciba)および0.4部のOptigel(登録商標)SH(沈殿防止剤)を混合することによって、連続相を製造する。均質になったら、55.0部の二酸化チタン顔料(Kronos(登録商標)2310)を撹拌下で添加する。全ての顔料が組み込まれたら、ジメチルエタノールアミンの10%水溶液を使用することによって、スラリーのpHを7.5〜8.5の範囲で調節する。スラリーを次いで、同じ分散機/Cowlesブレード組み合わせを使用し、30分間予備分散させて、大きな顔料凝集体が連続相中で適切に「湿潤」されることを確実にする。「湿潤された」スラリーを、分散顔料の最大粒径が、Hegmann粉砕ゲージによって<10μmになるまで、ジルコニア粉砕媒体を充填した再循環式分散ミルに移す。
【0169】
実施例34(比較カーボンブラック顔料ペースト):65.7部の脱イオン水、10.0部のEfka(登録商標)4580(顔料分散剤、Ciba)および0.3部のEfka(登録商標)2550(消泡剤、Ciba)を、Cowlesブレード(歯付ブレード)を備えた分散機を用いて混合することによって、連続相を製造する。均質になったら、12.0部のColour Black(商標)FW 200(カーボンブラック顔料、Evonik)を撹拌下で添加する。全ての顔料が組み込まれたら、ジメチルエタノールアミンの10%水溶液を使用することによって、スラリーのpHを7.5〜8.5の範囲で調節する。スラリーを次いで、実施例33においてと同様にさらに処理する。
【0170】
実施例35(NIR不活性黒色顔料ペースト):Cowlesブレード(歯付ブレード)を備えた分散機を用いて撹拌することにより、61.2部の脱イオン水、12.5部のEfka(登録商標)4580(顔料分散剤、Ciba)および0.3部のEfka(登録商標)2550(消泡剤、Ciba)を混合することによって、連続相を製造する。均質になったら、20.0部の実施例3の顔料粉末を撹拌下で連続相に添加する。全ての顔料が組み込まれたら、ジメチルエタノールアミンの10%水溶液を使用することにより、スラリーのpHを7.5〜8.5の範囲で調節する。スラリーを次いで、実施例33においてと同様にさらに処理する。
【0171】
実施例36(濃灰色NIR反射性プライマー;70:30白色:黒色):39部の実施例32の「レットダウン」クリアに、28部の実施例33の二酸化チタン顔料ペーストおよび32部の実施例35のIR−反射性黒色ペーストを撹拌下で別々に添加する。全ペーストが完全に均質化したら、1部のEfka(登録商標)3570(レベリング添加剤、Ciba)を撹拌下で添加する。7.5〜8.5の範囲で安定なpHが得られるまでジメチルエタノールアミンの10%水性溶液を添加することによって、プライマーのpHを調節する。最終用途のためにプライマーを準備するために、DIN4粘度フローカップ(23℃)中で30〜35秒の粘度が得られるまで、脱イオン水を混合物に添加する。このプライマー配合物を厚さ1.0mmのガラスパネル上に、ドローダウンバーを用いて適用して、40〜50μmの乾燥フィルム厚にし、これは完全な光学的(可視光)不透明性に十分である。約23℃で30分のフラッシュオフ期間の後、パネルを15分間、80℃で予備焼成して、過剰の水および溶媒を除去し、続いて150℃で30分の充填サイクルをおこなって、完全に硬化させる。
【0172】
実施例37(中間灰色NIR反射性プライマー;85:15白色:黒色):44部の実施例32の「レットダウン」クリアに、37部の実施例33の二酸化チタン顔料ペーストおよび18部の実施例35のIR−反射性黒色ペーストを撹拌下で別々に添加する。全ペーストが完全に均質化したら、1部のEfka(登録商標)3570(レベリング添加剤、Ciba)を撹拌下で添加する。7.5〜8.5の範囲で安定なpHが得られるまでジメチルエタノールアミンの10%水性溶液を添加することによって、プライマーのpHを調節する。最終用途のためにプライマーを準備するために、DIN4粘度フローカップ(23℃)中で30〜35秒の粘度が得られるまで、脱イオン水を混合物に添加し、これを次に、実施例36の手順に従ってガラスパネル上に適用する。
【0173】
実施例38(黒色NIR不活性プライマー):実施例36と同様にして、ただし、顔料として実施例35のNIR不活性黒色ペーストのみを使用し、二酸化チタンを使用しないでおこなう。
【0174】
実施例39(比較中間灰色プライマー;95:5白色:黒色):46部の実施例32の「レットダウン」クリアに、43部の実施例33の二酸化チタン顔料ペーストおよび11部の実施例34のカーボンブラック顔料ペーストを別々の撹拌下で添加する。全ペーストが完全に均質化したら、1部のEfka(登録商標)3570(レベリング添加剤、Ciba)を撹拌下で添加する。7.5〜8.5の範囲で安定なpHが得られるまでジメチルエタノールアミンの10%水溶液を添加することによって、プライマーのpHを調節する。最終用途のためにプライマーを準備するために、DIN 4粘度フローカップ(23℃)中で30〜35秒の粘度が得られるまで、脱イオン水を混合物に添加する。このプライマー配合物を次いで実施例36の手順に従って、厚さ1.0mmのガラスパネル上に適用する。
【0175】
実施例40(比較黒色プライマー):実施例36にしたがって、ただし、実施例34のカーボンブラック顔料ペーストを唯一の顔料として使用して行う。
【0176】
実施例36、37、38、39および40の硬化ガラスパネルの近似透過および反射を次にLambda(商標)900UV/VIS分光光度計(Perkin Elmer)を用いて700〜1200nmの近赤外スペクトル域で測定する。比較例39の通常のカーボンブラックを含む灰色プライマーと比較すると、実施例36および37の灰色プライマーは、約3〜6倍高いNIR反射率ならびに約850nm超の顕著なNIR透過を示す(カーボンブラックを含む比較例39では透過は観察されない)。実施例38の黒色試料はまた、比較例40の黒色試料よりも、測定範囲全体にわたって透過および反射のいずれにおいても優れている。約1000nmを超えると、実施例38の試料は、ほとんどのNIR放射線を透過し、残りの透過されなかったNIR放射線の大部分を反射し、一方、比較例40の試料は、NIR放射線を透過せず、実施例38の試料よりも約4倍少ないNIR放射線を反射する。
【0177】
実施例32〜40の水性焼き付け配合物を、異なる硬化条件について処方された焼き付け溶媒性プライマーおよび、たとえば大気で硬化した、溶媒性および水性アクリル(および/またはポリエステル)+イソシアネートおよびエポキシド+ポリアミンと配合下プライマーの二成分プライマー系によって置換する場合に、同様の結果が得られる。
【0178】
実施例41:当業者に周知の手順にしたがって、実施例37の灰色プライマー配合物を、スケールモデルの車体に噴霧によって適用する。EP出願08157426.1の実施例2の顔料(C.I.Pigment Yellow 139)を含む着色層およびクリアコート(それぞれ、実施例32〜40のものに類似し、これらと適合性であるコーティング配合物に基づく)を次にウェット・オン・ウェットで適用する。次に、硬化によって、見る角度に関係なく非常に均一に着色される。モデル車体を次に、リモコンを備えたシャーシ上にのせる。比較的低い熱規格のリモコンを、日光暴露下で故障することなく使用でき、全体的なコストが減少する。
【0179】
実施例42:当業者に周知の手順にしたがって、実施例36のプライマー配合物を噴霧によって自動車ボンネットに適用する(乾燥フィルム厚約50μm)。硬化後、プライマー層を、EP1549706B1の実施例の赤色組成物の第1層(乾燥フィルム厚約20μm)を噴霧することによってオーバーコートし、次いでウェット・オン・ウェットプロセスにおいてUV吸収体および酸化防止剤を含む通常の保護用透明トップコート層(乾燥フィルム厚約50μm)でオーバーコートする。赤色の車のボンネットは、日光に暴露されるとごくわずかの熱しか吸収せず、コーティングの耐久性の向上につながり、搭載された電子装置(エンジンおよびブレーキ制御装置)が故障するまでの時間が長くなる

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線不活性有機もしくは無機基体を製造する方法であって、式
【化1】

のビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤、またはその異性体もしくは互変異性体、好ましくは式(Ia)もしくは(Ib)の顔料またはその異性体もしくは互変異性体を含む組成物を基体中に組み込むか、または基体の表面上に適用することを含み、ここで、式(Ia)もしくは(Ib)のビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤またはその異性体もしくは互変異性体が、平均サイズ≦0.5μmまたは平均サイズ≧0.5μmおよび厚さ≧0.4μmを有し、反射性有機もしくは無機基体に対して≧20%の赤外線反射率を付与するか、透明有機もしくは無機基体に対して≧30%の赤外線透過率を付与するか、または半透明有機もしくは無機基体に対して≧25%の赤外線反射率と透過率の組み合わせを付与する(それぞれ850〜1600nmの波長で)ために有効な量で、組成物中に十分に分散された粒子の形態であり、式(Ia)および(Ib)において、
1およびR6は、それぞれ他と独立して、H、CH3、CF3、FまたはCl、好ましくはHまたはF、最も好ましくはHであり;
2、R3、R4、R5、R7、R8、R9およびR10は、それぞれ他の全てと独立して、H、ハロゲン、R11、COOH、COOR11、COO-、CONH2、CONHR11、CONR11I2、CN、OH、OR11、OOCR11、OOCNH2、OOCNHR11、OOCNR1112、NO2、NH2、NHR11、NR1112、NHCOR12、NR11COR12、N=CH2、N=CHR11、N=CR1112、SH、SR11、SOR11、SO211、SO311、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHR11またはSO2NR1112であり;これによって、R2およびR3、R3およびR4、R4およびR5、R7およびR8、R8およびR9、および/またはR9およびR10は場合によって、直接結合またはO、S、NHもしくはNR11架橋によって結合してもよく;
11およびR12は、それぞれ他と独立して、C1−C12アルキル、C1−C12シクロアルキル、C1−C12アルケニル、C1−C12シクロアルケニルまたはC1−C12アルキニルであり、それぞれは連続しているか、またはO、NH、NR13および/またはSによって、2以上のフラグメントに分断され、各フラグメントは、少なくとも2個のC原子を含み、そのそれぞれは、置換されていないか、またはCOOH、COOR13、COO-、CONH2、CONHR13、CONR1314、CN、O、OH、OR13、OOCR13、OOCNH2、OOCNHR13、OOCNR1314、NR13、NH2、NHR13、NR1314、NHCOR14、NR13COR14、N=CH2、N=CHR13、N=CR1314、SH、SR13、SOR13、SO213、SO313、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHR13、SO2NR1314もしくはハロゲンで1回以上置換されているか;
あるいはC7−C12アラルキル、C1−C11ヘテロアリールもしくはC6−C12アリールであり、そのそれぞれは、置換されていないか、またはCOOH、COOR13、COO-、CONH2、CONHR13、CONR1314、CN、OH、OR13、OOCR13、OOCNH2、OOCNHR13、OOCNR1314、NO2、NH2、NHR13、NR1314、NHCOR14、NR13COR14、N=CH2、N=CHR13、N=CR1314、SH、SR13、SOR13、SO213、SO313、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHR13、SO2NR1314もしくはハロゲンで1回以上置換され;そして
各R13もしくはR14は、任意の他のR13もしくはR14と独立して、C1−C6アルキル、ベンジルもしくはフェニルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、もしくは前段落で定義された置換基で1回以上置換され(ただし、R13およびR14の任意の置換基中の合計原子数は1〜8であるとする);これによって、全てのR13およびR14からなる群から選択される置換基対は、場合によって、直接結合またはO、S、NHもしくはNR11架橋によって結合して環を形成する、近赤外線不活性有機もしくは無機基体を製造する方法。
【請求項2】
式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤が、熱可塑性ポリマー、エラストマーポリマー、架橋ポリマー、またはもともと架橋したポリマー、好ましくはポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアセタール、天然もしくは合成ゴムまたはハロゲン化ビニルポリマー中に組み込まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ビスオキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノンを、コーティング組成物中に組み込み、これを、基体の表面、好ましくは基体の表面に適用されるフィルムもしくはコーティングの形態、または繊維、シートもしくは他の成型もしくは成形品の形態である、熱可塑性ポリマー、エラストマーポリマー、架橋ポリマー、またはもともと架橋したポリマーに適用する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
有機もしくは無機基体、好ましくはポリマー基体、最も好適には熱可塑性ポリマー、エラストマーポリマー、架橋ポリマーもしくはもともと架橋したポリマー、および、有機もしくは無機基体に、≧20%の赤外線反射率、≧30%の赤外線透過率、または≧25%の赤外線反射率および透過率の組み合わせ(それぞれ、850〜1600nmの波長で)を付与するために有効な量で、式
【化2】

のビス−オキソ−ジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤またはその異性体もしくは互変異性体、好ましくは式(Ia)もしくは(Ib)の顔料またはその異性体もしくは互変異性体(ここで、式(Ia)もしくは(Ib)のビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤またはその異性体もしくは互変異性体は、平均サイズ≦0.5μmまたは平均サイズ≧0.5μmおよび厚さ≧0.4μmを有し、組成物中に十分に分散された粒子の形態である)を、反射性有機もしくは無機基体に対して≧20%の赤外線反射率、透明な有機もしくは無機基体に対して≧30%の赤外線透過率、または半透明有機もしくは無機基体に対して≧25%の赤外線反射率および透過率の組み合わせ(それぞれ、850〜1600nmの波長)を付与するために十分な量で含む近赤外線不活性組成物もしくは物品であって、式(Ia)および(Ib)中、
1およびR6は、それぞれ互いに独立して、H、CH3、CF3、FもしくはCl、好ましくはHもしくはF、最も好ましくはHであり;
2、R3、R4、R5、R7、R8、R9およびR10はそれぞれ他の全てと独立して、H、ハロゲン、R11、COOH、COOR11、COO-、CONH2、CONHR11、CONR1112、CN、OH、OR11、OOCR11、OOCNH2、OOCNHR11、OOCNR1112、NO2、NH2、NHR11、NR1112、NHCOR12、NR11COR12、N=CH2、N=CHR11、N=CR1112、SH、SR11、SOR11、SO211、SO311、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHR11もしくはSO2NR1112であり;これによって、R2およびR3、R3およびR4、R4およびR5、R7およびR8、R8およびR9、および/またはR9およびR10は、場合によって、直接結合またはO、S、NHもしくはNR11架橋によって結合させることができ;
11およびR12は、それぞれ互いに独立して、C1−C12アルキル、C1−C12シクロアルキル、C1−C12アルケニル、C1−C12シクロアルケニルもしくはC1−C12アルキニルであり、そのそれぞれは、連続しているか、またはO、NH、NR13および/またはSによって2以上のフラグメントに分断され、各フラグメントは少なくとも2個のC原子を含み、そのそれぞれは、置換されていないか、またはCOOH、COOR13、COO-、CONH2、CONHR13、CONR1314、CN、O、OH、OR13、OOCR13、OOCNH2、OOCNHR13、OOCNR1314、NR13、NH2、NHR13、NR1314、NHCOR14、NR13COR14、N=CH2、N=CHR13、N=CR1314、SH、SR13、SOR13、SO213、SO313、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHR13、SO2NR1314もしくはハロゲンで1回以上置換されているか;
あるいはC7−C12アラルキル、C1−C11ヘテロアリールもしくはC6−C12アリールであり、そのそれぞれは、置換されていないか、またはCOOH、COOR13、COO-、CONH2、CONHR13、CONR1314、CN、OH、OR13、OOCR13、OOCNH2、OOCNHR13、OOCNR1314、NO2、NH2、NHR13、NR1314、NHCOR14、NR13COR14、N=CH2、N=CHR13、N=CR1314、SH、SR13、SOR13、SO213、SO313、SO3H、SO3-、SO2NH2、SO2NHR13、SO2NR1314もしくはハロゲンで1回以上置換されており;そして
各R13もしくはR13は、任意の他のR13もしくはR14と独立して、C1−C6アルキル、ベンジルもしくはフェニルであり、そのそれぞれは、置換されていないか、または前段落で定義した置換基で1回以上置換され(ただし、R13およびR14の任意の置換基中の合計原子数は1〜8であるとする);これによって、全てのR13およびR14からなる群から選択される置換基の対は、場合によって直接結合またはO、S、NHもしくはNR11架橋によって結合して環を形成する、近赤外線不活性組成物もしくは物品。
【請求項5】
ポリマーが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアセタール、天然もしくは合成ゴムまたはハロゲン化ビニルポリマーである、請求項4に記載の赤外線不活性組成物。
【請求項6】
コーティング組成物である、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
・ 式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤、またはその異性体もしくは互変異性体、好ましくは式(Ia)もしくは(Ib)の顔料またはその異性体もしくは互変異性体、および白色顔料を1:99〜99:1、特に1:95〜95:1の質量比で含むプライマーコーティング;
・ 黒色顔料、有色顔料、メタリック顔料、または干渉顔料を含むベースコート;ならびに
・ 場合によって透明なトップコートを含む多層コーティング。
【請求項8】
請求項4、5、6または7に記載の組成物でコーティングされた基体を含む物品。
【請求項9】
物品の表面に対して同じかもしくは異なる二面角で400nm〜2μmの範囲の異なる発光スペクトルの2つの電磁波による連続照射下で観察するか、または記録する場合、あるいは物品の表面に対して異なる二面角で400nm〜2μmの範囲の同じ発光スペクトルの電磁波による照射下で観察するか、もしくは記録する場合に、異なるパターンを示すマークであって、少なくとも2つの異なる着色剤、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10または11〜25の着色剤(それぞれの着色剤は、着色剤の一部または全部について同じかまたは異なる湿潤、乾燥、もしくは硬化インク中に埋め込まれており、少なくとも2つの湿潤、乾燥もしくは硬化インクは、400nm〜2μmの範囲の発光スペクトルの電磁波による照射下で好ましくは異なって反射する)を含むマークがその上にあり、前記マークが、有効量の請求項1に記載の式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤、またはその異性体もしくは互変異性体、好ましくは式(Ia)もしくは(Ib)の顔料またはその異性体もしくは互変異性体を、湿潤、乾燥もしくは硬化インク中の少なくとも1つに含むことを特徴とする物品。
【請求項10】
物品が、有効量の請求項1に記載の式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤、またはその異性体もしくは互変異性体、好ましくは式(Ia)もしくは(Ib)の顔料またはその異性体もしくは互変異性体を含むマークを含む物品を同定するための方法であって、前記マークが、715〜2000nmの波長の電磁波による照射下で記録され、マークの画像を物品の同定のために使用することを特徴とする前記方法。
【請求項11】
請求項1に記載の式(Ia)もしくは(Ib)のビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤、またはその異性体もしくは互変異性体、好ましくは式(Ia)もしくは(Ib)の顔料またはその異性体もしくは互変異性体を含むか、またはこれでコーティングされる電子部品を含む装置のケースであって、好ましくは式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤を、白色、低もしくは非NIR吸収黒色顔料、有色顔料、メタリック顔料または干渉顔料との、たとえば1:99〜99:1、特に1:95〜95:1の質量比の組み合わせで適用する、ケース。
【請求項12】
請求項1に記載の式(Ia)もしくは(Ib)のビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤、またはその異性体もしくは互変異性体、好ましくは式(Ia)もしくは(Ib)の顔料またはその異性体もしくは互変異性体を含むか、またはこれでコーティングされ、好ましくは式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤を、白色顔料、低もしくは非NIR吸収黒色顔料、有色顔料、メタリック顔料または干渉顔料と、たとえば1:99〜99:1、特に1:95〜95:1の質量比での組み合わせで適用する、屋外建築要素、屋外用家具、自動車、船舶もしくは航空宇宙産業用部品、積層体、人工皮革または織物材料。
【請求項13】
黒色インク、または黒色インクのうちの1つが、請求項1に記載の式(Ia)もしくは(Ib)のビス−オキソジヒドロインドリレン−ベンゾジフラノン着色剤、またはその異性体もしくは互変異性体、好ましくは式(Ia)もしくは(Ib)の顔料またはその異性体もしくは互変異性体を含む、多色印刷法。
【請求項14】
物品をレーザー溶接するための方法であって、請求項1に記載の式(Ia)もしくは(Ib)のビスオキソジヒドロインドリレン−ベンゾ−ジフラノン着色剤、またはその異性体もしくは互変異性体、好ましくは式(Ia)もしくは(Ib)の顔料またはその異性体もしくは互変異性体を、近赤外線吸収物質を含む溶解可能な基体の表面と接触しているポリマー組成物中に組み込み、次いで、好ましくは700〜2000nmの範囲の波長のレーザーからの近赤外線放射線を、式(Ia)もしくは(Ib)の着色剤を含む層を通って下にある基体まで通過させて、照射点で2つの物質を合わせて溶解させるために十分な熱を発生させる、物品をレーザー溶接するための方法。
【請求項15】
請求項1に記載の式(Ia)もしくは(Ib)の化合物、またはその異性体もしくは互変異性体(ただし、前記化合物は、式
【化3】

の化合物でないとする)。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2010−534726(P2010−534726A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516494(P2010−516494)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059265
【国際公開番号】WO2009/010521
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウオークマン
2.WINDOWS
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】