説明

ビス−陽イオン化合物およびそれらの使用

【課題】ホスホリパーゼB阻害剤、および微生物感染症の治療または予防のためのビス陽イオン化合物の提供。
【解決手段】下式のビス陽イオン化合物。(式中、Y1およびY2は同じであってもまたは異なってもよく、独立に、NおよびPから選択され、R1〜R6は同じであってもまたは異なってもよく、独立に、置換されていてもよいC1-10アルキルなどであり、R7、R7'、R8およびR8'は同じであってもまたは異なってもよく、独立に、水素、FおよびClから選択され、Aは、置換されていてもよいアルキレン、置換されていてもよいアルケニレン、置換されていてもよいアルキニレン、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいC5-7シクロアルキルおよび-C(O)-から選択される1つまたは複数の基を含み、Aの長さは炭素原子数5〜18である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、四級アンモニウム基および/または四級ホスホニウム基を含むビス-陽イオン(bis-cationic)化合物に関する。本発明はまた、ホスホリパーゼB阻害剤としてのビス-陽イオン化合物の使用および微生物感染症を治療または予防するためのビス-陽イオン化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
改善された抗微生物薬の必要性が治療および産業において存在する。ホスホリパーゼは病原性因子の属性を有する。従って真菌、細菌、ウイルスまたは寄生虫感染症などの微生物感染症の治療、阻止および予防の少なくとも1つの有用な標的となりうる。
【0003】
Hanel et al.,(Mycosis, 1995, 38: 252-264)(非特許文献1)は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)感染症のマウスモデルにおける薬物標的としての真菌ホスホリパーゼの役割を検討した。卵黄プレートアッセイで分泌ホスホリパーゼ活性を阻害するβ遮断剤および関連化合物でマウスを治療した。しかし、Ashraf et al. Microbiology(1997), 143, 331-340(非特許文献2)によって考察されるように、Hanel et al.が使用したアッセイはホスホリパーゼに特異的ではない。
【0004】
ビス-陽イオン化合物アンモニウムには、抗コリン特性および神経筋遮断特性を有することが知られているものがある(例えば、Merck Index 13版(2001年), MERCK & CO, Inc., Whitehouse Station NJ USA;Entry number 4364, ページ772 ガラミン;Entry number 4660, ページ828 ヘミコリニウム;Entry number 9878, ページ1746 ツボクラリン(非特許文献3))。
【0005】
他のビス-陽イオンアンモニウム化合物は、例えば、S. M. Menger and J. S. Keiper, Angew. Chem. Int. Ed., 2000, 39, 1906-1920(非特許文献4)に記載されているように、「ジェミニ」界面活性剤として挙動することが知られている。
【0006】
本発明は、四級アンモニウム基および/または四級ホスホニウム基を含むビス-陽イオン化合物および抗微生物剤としてのそれらの用途に関する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Hanel et al., Mycosis, (1995), 38: 252-264
【非特許文献2】Ashraf et al. Microbiology(1997), 143, 331-340
【非特許文献3】Merck Index 13版(2001年), MERCK & CO, Inc., Whitehouse Station NJ USA;Entry number 4364, ページ772 ガラミン;Entry number 4660, ページ828 ヘミコリニウム;Entry number 9878, ページ1746 ツボクラリン
【非特許文献4】S. M. Menger and J. S. Keiper, Angew. Chem. Int. Ed., (2000), 39, 1906-1920
【発明の概要】
【0008】
本発明の第一の局面によると、式(I)

(I)
(式中
Y1およびY2は同じであってもまたは異なってもよく、独立に、NおよびPから選択され;
R1〜R6は同じであってもまたは異なってもよく、独立に、置換されていてもよいC1-10アルキル、置換されていてもよいC2-10アルケニル、置換されていてもよい C2-10アルキニル、置換されていてもよい C3-10シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアラルキル、置換されていてもよいヘテロアリールおよび置換されていてもよいヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、該置換基は、独立に、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、O(C1-6アルキル)、C(O)O(C1-6アルキル)、OC(O)(C1-6アルキル)、NO2、アミノ、ヒドロキシCl-6アルキル、アリール、OC(O)Phおよび=C(Ph)2から選択される;または
R1およびR2は、それらが結合しているY1基と一体として、またはR1、R2およびR3は、それらが結合しているY1基と一体として任意にヘテロシクロアルキル基を形成してもよく;R4およびR5は、それらが結合しているY2基と一体として、またはR4、R5およびR6は、それらが結合しているY2基と一体として任意にヘテロシクロアルキル基を形成してもよく;該ヘテロシクロアルキル基の各々は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、O(C1-6アルキル)、C(O)O(C1-6アルキル)、OC(O)(C1-6アルキル)、NO2、アミノ、ヒドロキシCl-6アルキル、アリール、OC(O)Phおよび=C(Ph)2から選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;
R7、R7'、R8およびR8'は同じであってもまたは異なってもよく、独立に、水素、FおよびClから選択され;
Aは、置換されていてもよいアルキレン、置換されていてもよいアルケニレン、置換されていてもよいアルキニレン、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいC5-7シクロアルキルおよび-C(O)-から選択される1つまたは複数の基を含み、Aの長さは炭素原子数5〜18であり、置換基は、独立に、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、N02、C(O)R10、OR11、CH20R11、CH2NR12R13、SR11、NR12R13、CONR12R13、アミノ酸、ジペプチジル、トリペプチジル、テトラペプチジルおよびペンタペプチジルから選択され;
R10は、OH、OR11、C1-6アルキルから選択され;
R11は、水素、置換されていてもよいC1-10アルキル、置換されていてもよいC2-10アルケニル、置換されていてもよい C2-10アルキニル、置換されていてもよい C3-10シクロアルキル、置換されていてもよいアリールおよび置換されていてもよいアラルキルからなる群から選択され、該任意の置換基は、独立に、C1-4アルキル、ヒドロキシルおよびハロゲンから選択され;
R12およびR13は、独立に、水素、置換されていてもよいC1-10アルキル、置換されていてもよいC2-10アルケニル、置換されていてもよい C2-10アルキニル、置換されていてもよい C3-10シクロアルキル、置換されていてもよいアラルキル、置換されていてもよいアルキルヘテロアリールからなる群から選択され、該置換基は、独立に、C1-4アルキル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノおよびC(O)OR11から選択される;または
R12およびR13は、それらが結合している窒素原子と一体として、置換されていてもよいヘテロシクロアルキル基を形成してもよく、該置換基は、独立に、C1-4アルキル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノおよびC(O)OR11から選択される)の化合物およびその塩であるが、ただし式(I)の化合物が以下:




から選択されない化合物およびその塩が提供される。
【0009】
本発明の一態様において、Y1はNであり、Y2はNである。本発明の別の態様において、Y1はNであり、Y2はPである。本発明の別の態様において、Y1はPであり、Y2はNである。本発明のさらに別の態様において、Y1はPであり、Y2はPである。
【0010】
R1〜R6は同じであってもまたは異なってもよく、一態様において、独立に、置換されていてもよいC2-10アルキルから選択される。別の態様において、R1〜R6は独立に、置換されていてもよいC2-8アルキルから選択される。さらに別の態様において、R1〜R6は独立に、置換されていてもよいC3-6アルキルから選択される。
【0011】
本発明の一態様において、Y1およびY2は各々Nであり、R1〜R6は独立に、C2-10アルキルから選択される。
【0012】
本発明のいくつかの態様において、R1、R2およびR3の相対的な長さは互いに対して2〜6炭素、例えば、2、3、4、5または6炭素異なってもよい。本発明の他の態様において、R1、R2およびR3の相対的な長さは3または4炭素異なってもよい。本発明のいくつかの態様において、R4、R5およびR6の相対的な長さは互いに対して2〜6炭素、例えば、2、3、4、5または6炭素異なってもよい。本発明の他の態様において、R4、R5およびR6の相対的な長さは3または4炭素異なっても良い。
【0013】
本発明の一態様において、R1〜R3は同じである。別の態様において、R4〜R6は同じである。さらに別の態様において、R1〜R6は同じである。
【0014】
本発明の一態様において、Aの長さは炭素原子数5〜9である。
【0015】
一態様において、Y1およびY2が各々Nであり、R1〜R6が各々C1-10アルキルであり、R7、R7'、R8およびR8'が各々水素である場合には、Aは、C1-3アルキル置換基で置換されたC10-18アルキレンではない。本発明の別の態様において、Y1およびY2が各々Nであり、R1〜R6が各々C1-10アルキルであり、R7、R7'、R8およびR8'が各々水素である場合には、AはC1-3アルキル置換基および少なくとも1つの他の置換基で置換されたC10-18アルキレンである。
【0016】
本発明のさらに別の態様において、Y1およびY2が各々Nであり;R3およびR6が各々C1-10アルキルであり;R1およびR2が、それらが結合しているNと一体として、ならびにR4およびR5が、それらが結合しているNと一体として、各々、1つのSまたはOを含み、ヒドロキシC1-3アルキルまたはハロC1-3アルキルで置換された4-または5-員環ヘテロシクロアルキル環であり;R7、R7'、R8およびR8'が各々水素である場合には、Aは、C1-3アルキル置換基で置換されたC10-18アルキレンではない。
【0017】
本発明の一態様において、Aは、1つまたは複数のアルキレン基「(CR9R9a)n」(式中、R9およびR9aは同じであってもまたは異なってもよく、独立に、水素、ハロゲン、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、 C(O) R10、 OR11、 CH2OR11、 CH20H、 SR11、NR12R13、CON12R13、OH、SH、アミノ酸、ジペプチジル、トリペプチジル、テトラペプチジルおよびペンタペプチジルからなる群から選択され、nは1〜18から選択される整数である)を含んでもよい。例えば、Aの総長が5〜18炭素であるという条件で、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18であってもよい。一態様において、nは5〜18の整数である。
【0018】
本発明の一態様において、Aは、置換されていてもよいアルキレン(置換されていてもよいメチレン「CR9R9a」を含む)、置換されていてもよいフェニルおよび置換されていてもよいC5-6シクロアルキルから選択される1つまたは複数の基を含み、該置換基は、独立に、C1-6アルキル、ヒドロキシルおよびハロゲンから選択される。本発明の一態様において、Aは少なくとも1つのアルキレン基「CR9R9a」を含む。本発明の一態様において、Aは少なくとも1つのフェニレンを含む。本発明の別の態様において、Aは少なくとも1つのシクロヘキシレンを含む。
【0019】
本発明の一態様において、R9およびR9aは共に水素である。別の態様において、R9は水素であり、R9aは、水素、C1-6アルキル、C(O) R10、OR11、CONR11R12、NR12R13、OHおよびSHから選択される。例えば、本発明の一態様において、R9は水素であり、R9aは、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、COOH、C02Me、CO2Et、CO2Bu、CONHMe、CONMe2、CONHEt、CONEt2、CONH (CH2Ph)、CON(CH2Ph) 2、 CO2But、 OMe、OEt、NMe2またはNEt2である。
【0020】
Aは未置換C8-12もしくはC5-9アルキレンまたは置換されていてもよいC8-12もしくはC5-9アルキレンであってもよい。Aは未置換C8-12もしくはC5-9アルケニレンまたは置換されていてもよいC8-12もしくはC5-9アルケニレンであってもよい。本発明の一態様において、Aは未置換C8-12もしくはC5-9アルキレンまたはC8-12もしくはC5-9未置換アルケニレンである。
【0021】
本発明の一態様において、nは8、9または10であり、各AはCR9R9aであり、R9およびR9aは各々水素である。
【0022】
いくつかの態様において、R12およびR13は、それらが結合している窒素原子と一体として、置換されていてもよいヘテロシクロアルキル環を形成してもよい。例えば、NR12R13基は、任意に、3-アミノピロリジニル、3-アミノキヌクリジニル、3-アミノピリジニル、1-(3-アミノプロピル)-2-ピペコリニル(pipecolinyl)基であってもよい。
【0023】
本発明の一態様において、化合物は式(Ia):

(Ia)
(式中
Y1およびY2は同じであってもまたは異なってもよく、独立に、NおよびPから選択され;
R1〜R6は同じであってもまたは異なってもよく、独立に、置換されていてもよいC1-10アルキル、置換されていてもよいC2-10アルケニル、置換されていてもよい C2-10アルキニル、置換されていてもよい C3-10シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリールおよび置換されていてもよいヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、該置換基は、独立に、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、ヒドロキシル、ハロゲン、O(C1-6アルキル)、C(O)O(C1-6アルキル)、NO2、アミノ、ヒドロキシCl-6アルキル、アリール、およびOC(O)Phから選択される;または
R1およびR2は、それらが結合しているY1基と一体として任意にヘテロシクロアルキル基を形成してもよく;R4およびR5は、それらが結合しているY2基と一体として任意にヘテロシクロアルキル基を形成してもよく;該ヘテロシクロアルキル基の各々は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、ヒドロキシル、ハロゲン、O(C1-6アルキル)、C(O)O(C1-6アルキル)、アミノ、ヒドロキシCl-6アルキルおよびアリールから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;
Aは、置換されていてもよいアルキレン、置換されていてもよいアルケニレンおよび置換されていてもよいフェニルから選択される1つまたは複数の基を含み、Aの長さが炭素原子数5〜18であり、置換基は、独立に、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ハロゲン、C(O)R10、OR11、SR11、CH2OR11、CH2NR12R13、NR12R13、CONR12R13、アミノ酸、ジペプチジル、トリペプチジル、テトラペプチジルおよびペンタペプチジルから選択され;
R10は、OH、OR11、C1-6アルキルから選択され;
R11は、水素、置換されていてもよいC1-10アルキル、置換されていてもよいC2-10アルケニル、置換されていてもよい C2-10アルキニル、および置換されていてもよい C3-10シクロアルキルからなる群から選択され、該任意の置換基は、独立に、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、アリールおよびヒドロキシルから選択され;
R12およびR13は、独立に、水素、置換されていてもよいC1-10アルキル、置換されていてもよいC2-10アルケニル、置換されていてもよい C2-10アルキニル、置換されていてもよい C3-10シクロアルキル、置換されていてもよいアルキルヘテロアリールからなる群から選択され、該置換基は、独立に、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、アリール、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノおよびC(O)OR11から選択される;または
R12およびR13は、それらが結合している窒素原子と一体として、置換されていてもよいヘテロシクロアルキル基またはヘテロアリール基を形成してもよく、該置換基は、独立に、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノおよびC(O)OR11から選択される)
の化合物およびその塩である。
【0024】
また、式(II):

(II)
(式中
Y1およびY2は同じであってもまたは異なってもよく、独立に、NおよびPから選択され;
R1〜R6は同じであってもまたは異なってもよく、独立に、置換されていてもよいC1-10アルキル、置換されていてもよいC2-10アルケニル、置換されていてもよい C2-10アルキニル、置換されていてもよい C3-10シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアラルキル、置換されていてもよいヘテロアリールおよび置換されていてもよいヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、該置換基は、独立に、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、O(C1-6アルキル)、C(O)O(C1-6アルキル)、NO2、アミノ、ヒドロキシCl-6アルキル、アリール、OC(O)Phおよび=C(Ph)2から選択される;または
R1およびR2は、それらが結合しているY1基と一体として、またはR1、R2およびR3は、それらが結合しているY1基と一体として任意にヘテロシクロアルキル基を形成してもよく;R4およびR5は、それらが結合しているY2基と一体として、またはR4、R5およびR6は、それらが結合しているY2基と一体として任意にヘテロシクロアルキル基を形成してもよく;該ヘテロシクロアルキル基の各々は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシル、およびハロゲン、O(C1-6アルキル)、C(O)O(C1-6アルキル)、NO2、アミノ、ヒドロキシCl-6アルキル、アリールおよび=C(Ph)2から選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;
R7、R7'、R8およびR8'は同じであってもまたは異なってもよく、独立に、水素、FおよびClから選択され;
Aは、置換されていてもよいアルキレン、置換されていてもよいアルケニレン、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいC5-7シクロアルキルおよび-C(O)-から選択される1つまたは複数の基を含み、Aの長さは炭素原子数4〜18であり、置換基は、独立に、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、ヒドロキシル、ハロゲン、ニトロ、C(O)R10、OR11、CH20R11、CH2NR12R13、SR11、NR12R13、CONR12R13、アミノ酸、ジペプチジル、トリペプチジル、テトラペプチジルおよびペンタペプチジルから選択され;
R10は、OH、OR11、C1-6アルキル、置換されていてもよいアミノ-C1-6-アルキルスルホネート、置換されていてもよいアミノ-C1-6-アルキルホスホネート、置換されていてもよいアミノ-Cl-6-アルキル-グアニジニルおよび置換されていてもよいアミノ-C1-6-アルキル-トリ (C1-6-アルキル)アンモニウムから選択され;
R11は、水素、置換されていてもよいC1-10アルキル、置換されていてもよいC2-10アルケニル、置換されていてもよい C2-10アルキニル、置換されていてもよい C3-10シクロアルキル、置換されていてもよいアリールおよび置換されていてもよいアリールアルキル、置換されていてもよいアミノ-C1-6-アルキルスルホネート、置換されていてもよいアミノ-C1-6-アルキルホスホネート、置換されていてもよいアミノ-Cl-6-アルキル-グアニジニルおよび置換されていてもよいアミノ-C1-6-アルキル-トリ (C1-6-アルキル)アンモニウムからなる群から選択され、該任意の置換基は、独立に、C1-4アルキル、ヒドロキシルおよびハロゲンから選択され;
R12およびR13は、独立に、水素、置換されていてもよいC1-10アルキル、置換されていてもよいC2-10アルケニル、置換されていてもよい C2-10アルキニル、置換されていてもよい C3-10シクロアルキル、置換されていてもよいアリールアルキル、置換されていてもよいアルキルヘテロアリール、置換されていてもよいアミノ-C1-6-アルキルスルホネート、置換されていてもよいアミノ-C1-6-アルキルホスホネート、置換されていてもよいアミノ-Cl-6-アルキル-グアニジニルおよび置換されていてもよいアミノ-C1-6-アルキル-トリ (C1-6-アルキル)アンモニウムからなる群から選択され、該置換基は、独立に、C1-3アルキル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノおよびC(O)OR11から選択される;または
R12およびR13は、それらが結合している窒素原子と一体として、置換されていてもよいヘテロシクロアルキル基を形成してもよく、該置換基は、独立に、C1-3アルキル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノおよびC(O)OR11から選択される)
の化合物も本明細書において開示されている。
【0025】
式(II)を参照すると、アミノ-C1-6-アルキルスルホネート基には、例えば、アミノメチル-スルホネート(すなわち、「-NH-CH2-SO3-」基)、アミノエチル-スルホネートおよびアミノプロピル-スルホネートが含まれる;アミノ-C1-6-アルキルホスホネートには、例えば、アミノメチル-、アミノエチル-およびアミノプロピル-ホスホネートが含まれる;アミノ-Cl-6-アルキル-グアニジニルには、例えば、4-アミノブチル-グアニジニルが含まれる;アミノ-C1-6-アルキル-トリ (C1-6-アルキル)アンモニウムには、例えば、1-(3-アミノプロピル)トリメチルアンモニウムが含まれる。
【0026】
R1〜R6は同じであってもまたは異なってもよく、独立に、置換されていてもよいC1-10アルキル、置換されていてもよいC2-10アルケニル、置換されていてもよい C2-10アルキニル、置換されていてもよい C3-10シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、および置換されていてもよいアラルキルからなる群から選択され、該置換基は、独立に、C1-6アルキル、ヒドロキシルおよびハロゲンから選択される;または
R1およびR2は、それらが結合しているY1基と一体として、またはR1、R2およびR3は、それらが結合しているY1基と一体として任意にヘテロシクロアルキル基を形成してもよく;R4およびR5は、それらが結合しているY2基と一体として、またはR4、R5およびR6は、それらが結合しているY2基と一体として任意にヘテロシクロアルキル基を形成してもよく;該ヘテロシクロアルキル基のは、C1-6アルキル、ヒドロキシルおよびハロゲンから選択される一つまたは複数の基で置換されていてもよく;
Aは、置換されていてもよいメチレン基「CR9R9a」、置換されていてもよいフェニルおよび置換されていてもよいC5-7シクロアルキルから選択される1つまたは複数の基を含み、Aの長さは炭素原子数4〜18であり、該置換基は、独立に、C1-6アルキル、ヒドロキシルおよびハロゲンから選択され;
R9およびR9aは同じであってもまたは異なってもよく、独立に、水素、ハロゲン、C1-6アルキレン、C1-6アルケニレン、C(O)R10、OR11、SR11、NR12R13、CONR12R13、アミノ酸、ジペプチジル、トリペプチジル、テトラペプチジルおよびペンタペプチジルからなる群から選択され;
R10は、OHまたはOR11であり;
R11は、水素、置換されていてもよいC1-10アルキル、置換されていてもよいC2-10アルケニル、置換されていてもよい C2-10アルキニル、置換されていてもよい C3-10シクロアルキルおよび置換されていてもよいアラルキルからなる群から選択され、該置換基は、独立に、C1-6アルキル、ヒドロキシルおよびハロゲンから選択され;
R12およびR13は、独立に、水素、置換されていてもよいC1-10アルキル、置換されていてもよいC2-10アルケニル、置換されていてもよい C2-10アルキニル、置換されていてもよい C3-10シクロアルキル、置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、置換されていてもよいヘテロアラルキルおよび置換されていてもよいアラルキルからなる群から選択され、該置換基は、独立に、C1-6アルキル、ヒドロキシル、ハロゲンおよびC(O)OR11から選択される;またはR12およびR13は、それらが結合しているNと一体として、任意にヘテロシクロアルキル基を形成してもよい。
【0027】
本発明の一態様において、化合物は式(I)または(II)(式中、R7、R7'、R8およびR8'は各々水素であり;Aは置換されていてもよいC8-10アルキレンであり、R1〜R3は各々ブチルである)の化合物である。別の態様において、化合物は式(I)または(II)(式中、R7、R7'、R8およびR8'は各々水素であり;Aは未置換のC8-10アルキレンであり、R1〜R3は各々ブチルである)の化合物である。
【0028】
本発明の第二の局面によると、微生物感染症の治療、阻止および予防の1つまたは複数のための医薬品を製造するための式(I)または式(II)の少なくとも1つの化合物の用途が提供される。
【0029】
微生物感染症は、細菌、真菌、ウイルスおよび寄生虫の1つまたは複数を含んでもよい。
【0030】
本発明の第三の局面によると、脊椎動物の微生物感染症の治療、阻止および予防の1つまたは複数の方法であって、式(I)または式(II)の少なくとも1つの化合物の有効量を脊椎動物に投与する段階を含む方法が提供される。
【0031】
本発明の第四の局面によると、植物の微生物感染症の治療、阻止および予防の1つまたは複数の方法であって、式(I)または式(II)の少なくとも1つの化合物の有効量を植物に接触させる段階を含む方法が提供される。
【0032】
本発明の第五の局面によると、式(I)の少なくとも1つの化合物または式(II)の化合物および産業的、獣医学的、農業的または薬学的に好適な担体、希釈剤または担体を含む抗分析異物組成物が提供される。
【0033】
本発明の第五の局面を参照すると、組成物は抗真菌、抗細菌、抗ウイルスおよび抗寄生虫組成物の1つまたは複数であってもよい。一態様において、組成物は抗真菌組成物である。別の態様において、組成物は抗菌組成物である。
【0034】
本発明の第六の局面によると、式(I)または式(II)の少なくとも1つの化合物および薬学的に有効な担体、補助剤または希釈剤を含む薬学的組成物が提供される。
【0035】
本発明の第七の局面によると、生物においてホスホリパーゼを阻害する方法であって、生物に式(I)の少なくとも1つの化合物または式(II)の少なくとも1つの化合物または本発明の第四もしくは第五の局面による組成物の有効量を接触させる段階を含む方法が提供される。
【0036】
本発明の第七の局面を参照すると、生物は、細菌、真菌、ウイルスまたは原虫を含む寄生虫などの微生物であってもよい。ホスホリパーゼはホスホリパーゼBであってもよい。
【0037】
本発明の第八の局面によると、抗微生物剤を同定する方法であって、微生物細胞に抗微生物特性を有すると思われる化合物を接触させる段階と、化合物が微生物ホスホリパーゼ酵素を阻害するかどうかを判定する段階であって、ホスホリパーゼ酵素の阻害が抗微生物活性を示す段階と、それによって抗微生物剤を同定する段階を含む方法が提供される。
【0038】
本発明の第七の局面を参照すると、化合物は本明細書に定義する式(I)または式(II)の化合物であってもよい。ホスホリパーゼはホスホリパーゼBであってもよい。
【0039】
本発明の第九の局面によると、微生物感染症または寄生虫感染症の治療、阻止または予防の1つまたは複数に使用される場合の、式(I)の化合物または式(II)の化合物または本発明の第五もしくは第六の局面による組成物が提供される。
【0040】
定義
以下は、本発明の説明を理解する際に有用となりうるいくつかの定義である。これらは一般的な定義として意図されており、いかなる意味においても本発明の範囲をそのような用語のみに限定するべきではなく、以下の説明をより良く理解するために記載されている。
【0041】
内容がそうでないことを要求しているまたはそうでないことを具体的に記載しない限り、単数の整数、段階または要素として本明細書において引用されている本発明の整数、段階または要素は引用されている整数、段階または要素の単数および複数の形態の両方を含む。
【0042】
本明細書全体において、内容がそうでないことを要求しない限り、「含む」または「含んでいる」などの変形は、記載されている段階もしくは要素もしくは整数または段階もしくは整数もしくは要素のグループを含むという意味を含むが、任意の他の段階もしくは要素もしくは整数または要素もしくは整数のグループも排除しないことが理解される。従って、本明細書に関連して、「含む」という用語は、「主に含むが、必ずしもそれだけではない」ことを意味する。
【0043】
当業者は、本明細書に記載する発明は、具体的に記載されているもの以外の変形および改良を受けやすいことを理解している。本発明はこのような変形および改良を全て含むことが理解されるべきである。本発明はまた、本明細書において個別または集合的に言及されるまたは示される段階、特徴、組成物および化合物の全て、ならびに段階または特徴の任意および全ての組み合わせまたは任意の2つ以上を含む。
【0044】
本明細書に関連して、「アミノ酸」という用語は、少なくとも1つの一級、二級、三級または四級アミノ基および少なくとも1つの酸基を有すると定義され、酸基はカルボン酸、スルホン酸もしくはホスホン酸またはそれらの混合物であってもよい。アミノ基は、酸基に対して「α」、「β」、「γ」...「ω」であってもよい。「アミノ酸」の骨格は、ハロゲン、ヒドロキシ、グアニド、複素環基から選択される1つまたは複数の基で置換されてもよい。従って、「アミノ酸」という用語は、その範囲内に、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパルテート、グルタミン、リジン、アルギニンおよびヒスチジン、タウリン、ベタイン、N-メチルアラニン等を含む。(L)および(D)型のアミノ酸は本発明の範囲に含まれる。
【0045】
本明細書において使用する「アルキル基」という用語は、その意味に、炭素原子数1〜10、例えば、炭素原子数1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の一価(「アルキル」)および二価(「アルキレン」)直鎖状または分岐鎖状飽和脂肪族基を含む。例えば、アルキルという用語は、メチル、エチル、1-プロピル、イソプロピル、1-ブチル、2-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、アミル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、1,2,2-トリメチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、ヘプチル、1-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、4,4-ジメチルペンチル、1,2- ジメチルペンチル、1,3-ジメチルペンチル、1,4-ジメチルペンチル、1,2,3-トリメチルブチル、1,1,2-トリメチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、5-メチルヘプチル、1-メチルヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等を含むが、それに限定されるわけではない。
【0046】
「アルケニル基」という用語は、その意味に、炭素原子数2〜10、例えば、炭素原子数2、3、4、5、6、7、8、9または10の一価(「アルケニル」)および二価(「アルケニレン」)直鎖状または分岐鎖状不飽和脂肪族炭化水素基を含む。アルケニル基の例には、エテニル、ビニル、アリル、1-メチルビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、2-メチル-l-プロペニル、2-メチル-l-プロペニル、1- ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1,3-ブタジエニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1,3-ペンタジエニル、2,4-ペンタジエニル、1,4-ペンタジエニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、2-メチルペンテニル、1-ヘプテニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、1-オクテニル、1-ノネニル、1-デセニル等が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0047】
本明細書において使用する「アルキニル基」という用語は、その意味に、炭素原子数2〜10で、少なくとも1つの三重結合を有する一価(「アルキニル」)および二価(「アルキニレン」)直鎖状または分岐鎖状不飽和脂肪族炭化水素基を含む。アルキニル基の例には、エチニル、1-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、1-メチル-2-ブチニル、3-メチル-l-ブチニル、1-ペンチニル、1-ヘキシル、メチルペンチニル、1-ヘプチニル、2-ヘプチニル、1-オクチニル、2-オクチニル、1-ノニル、1-デシニル等が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0048】
本明細書において使用する「シクロアルキル」という用語は、環状飽和脂肪族基をいい、その意味に、炭素原子数3〜10、例えば、炭素原子数3、4、5、6、7、8、9または10の一価(「シクロアルキル」)および二価(「シクロアルキレン」)飽和、単環式、二環式、多環式または融合多環式炭化水素ラジカルを含む。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、2-メチルシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、2-メチルシクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0049】
本明細書において使用する「シクロアルケニル」という用語は、環状不飽和脂肪族基をいい、その意味に、炭素原子数3〜10で、アルキル鎖のどこかに適宜E、Z、cisまたはtrans立体化学の少なくとも1つの二重結合を有する一価(「シクロアルケニル」)および二価(「シクロアルケニレン」)単環式、二環式、多環式または融合多環式炭化水素ラジカルを含む。シクロアルケニル基の例には、シクロプロペニル、 シクロペンテニル、 シクロヘキセニル等が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0050】
本明細書において使用する「ヘテロシクロアルキル」という用語は、その意味に、環原子数3〜10で、1〜5の環原子はO、N、NHまたはSから選択されるヘテロ原子である一価(「ヘテロシクロアルキル」)および二価(「ヘテロシクロアルキレン」)飽和、単環式、二環式、多環式または融合炭化水素ラジカルを含む。例には、ピロリジニル、ピペリジニル、キヌクリジニル、アゼチジニル、モルホリニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニルが挙げられる。
【0051】
本明細書において使用する「ヘテロシクロアルケニル」という用語は、その意味に、環原子数3〜10で、少なくとも1つの二重結合を有し、1〜5の環原子はO、N、NHまたはSから選択されるヘテロ原子である一価(「ヘテロシクロアルケニル」)および二価(「ヘテロシクロアルケニレン」)飽和、単環式、二環式、多環式または融合炭化水素ラジカルを含む。
【0052】
本明細書において使用する「芳香族複素環基」および「ヘテロアリール」または「ヘテロアリーレン」などの変形は、その意味に、原子数6〜20であって、1〜6の原子がO、N、NHまたはSから選択されるヘテロ原子である一価(「ヘテロアリール」)および二価(「ヘテロアリーレン」)単一(single)、多核(polynuclear)、結合(conjugated)および融合(fused)芳香族ラジカルを含む。このような基の例には、ピリジル、2,2'-ビピリジル、フェナントロリニル、キノリニル、チオフェニル等が挙げられる。
【0053】
本明細書において使用する「ハロゲン」という用語または「ハロゲン化物」もしくは「ハロ」などの変形はフッ素、塩素、臭素およびヨウ素をいう。
【0054】
本明細書において使用する「ヘテロ原子」という用語または「ヘテロ-」などの変形はO、N、NHまたはSをいう。
【0055】
本明細書において使用する「アルコキシ」という用語は、直鎖状または分岐鎖状アルキルオキシ基をいう。例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシ等が挙げられる。
【0056】
本明細書において使用する「アミノ」という用語は-NRaRb(式中、RaおよびRbは、独立に、水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニルおよび置換されていてもよいアリール基を含むが、それに限定されるわけではない基から選択される)の形態の基をいう。
【0057】
本明細書において使用する「芳香族基」または「アリール」もしくは「アリーレン」などの変形は、炭素原子数6〜10の芳香族炭化水素の一価(「アリール」)および二価(「アリーレン」)単一、多核、結合および融合残基をいう。このような基の例には、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントレニル等が挙げられる。
【0058】
本明細書において使用する「アラルキル」という用語は、その意味に、二価、飽和、直鎖状および分岐鎖状アルキレンラジカルに結合した一価(「アリール」)および二価(「アリーレン」)単一、多核、結合および融合芳香族炭化水素ラジカルを含む。
【0059】
本明細書において使用する「ヘテロアラルキル」という用語は、その意味に、二価、飽和、直鎖状および分岐鎖状アルキレンラジカルに結合した一価(「ヘテロアリール」)および二価(「ヘテロアリーレン」)単一、多核、結合および融合芳香族炭化水素ラジカルを含む。
【0060】
本明細書において使用する「置換されていてもよい」という用語は、この用語が言及する基が未置換であっても、またはアルキル、 アルケニル、 アルキニル、 チオアルキル、 シクロアルキル、 シクロアルケニル、 ヘテロシクロアルキル、 ハロ、 カルボキシル、 ハロアルキル、 ハロアルキニル、 ヒドロキシル、 アルコキシ、 チオアルコキシ、アルケニルオキシ、ハロアルコキシ、ハロアルケニルオキシ、 ニトロ、 アミノ、 ニトロアルキル、ニトロアルケニル、ニトロアルキニル、ニトロヘテロシクリル、アルキルアミノ、 ジアルキルアミノ、アルケニルアミン、アルキニルアミノ、 アシル、 アルケノイル、 アルキノイル、 アシルアミノ、 ジアシルアミノ、 アシルオキシ、 アルキルスルホニルオキシ、 ヘテロシクロキシ(heterocycloxy)、 ヘテロシクロアミノ、ハロヘテロシクロアルキル、アルキルスルフェニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルチオ、アシルチオ、ホスホノおよびホスフィニルなどのリン含有基、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、シアノ、シアネート、イソシアネート、-C(O)NH(アルキル)ならびに-C(O)N(アルキル)2から独立に選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよいことを意味する。
【0061】
本明細書において使用する「実質的に非-極性」という用語は、水素結合を形成することができる2つ以上の極性置換基を含有せず、生理的pHにおいてプロトン化/脱プロトン化を受けない基をいう。
【0062】
「抗微生物(antimicrobial)」という用語は、その範囲に、抗真菌、抗菌、抗ウイルスおよび抗寄生虫を含む。
【0063】
本明細書において使用し、反対の記載がない限り、「抗真菌性」という用語は、その範囲に、静真菌活性および殺真菌活性を含む。
【0064】
本明細書において使用し、反対の記載がない限り、「抗菌性」という用語は、その範囲に、静菌活性および殺菌活性を含む。
【0065】
本明細書において使用し、反対の記載がない限り、「抗ウイルス性」という用語は、その範囲に、静ウイルス活性および殺ウイルス活性を含む。
【0066】
本明細書において使用する「ホスホリパーゼB」という用語は、ホスホリパーゼB(PLB)活性、リゾホスホリパーゼ(LPL)活性およびリゾホスホリパーゼトランスアシラーゼ(LPTA)活性から選択される1つまたは複数の活性を有するタンパク質をいう。タンパク質は他の酵素活性を有してもよい。この用語は、細胞関連(細胞内および膜結合)および分泌ホスホリパーゼB酵素を含む。従って、本明細書に関連して、「ホスホリパーゼB」という用語は、PLB、LPLまたはLPTA活性の1つまたは複数を示すことができるタンパク質をいう。
【0067】
本発明に関連して、「投与すること」ならびに「投与する」および「投与」を含むその用語の変形は、任意の適当な手段によって本発明の化合物または組成物を生物または表面に接触させる、適用する、送達するまたは提供することを含む。
【0068】
本明細書に関連して、「脊椎動物」という用語は、ヒトならびにヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、ネコ、イヌ、霊長類(ヒトおよびヒト以外の霊長類を含む)、げっ歯類、マウス、ヤギ、ウサギおよびトリ属のメンバーを含むが、それに限定されるわけではない社会的、経済的または研究に重要な任意の種の個体を含む。
【0069】
本明細書に関連して、「治療」という用語は、疾病状態もしくは症状を治療する、疾病の確立を予防する、または疾病もしくは他の望ましくない症状の進行を多少なりとも予防する、妨害する、遅延するもしくは回復させる任意のおよび全ての用途をいう。
【0070】
本明細書に関連して、「治療的に有効な量」および「診断的に有効な量」は、その意味に、望ましい治療または診断効果を提供するのに十分な量であるが、無-毒性の本発明の化合物または組成物の量を含む。必要とされる正確な量は、治療する種、被験者の年齢および全身状態、治療する状態の重症度、投与する特定の薬剤、投与様式等の因子に応じて被験者によって異なる。従って、正確な「有効な量」を明記することができない。しかし、任意の所定の場合について、「有効な量」は、日常的な実験を使用して当業者が設定することができる。
【0071】
略語
「PLB」-ホスホリパーゼ B 活性
「LPL」-リゾホスホリパーゼ 活性
「LPTA」-リゾホスホリパーゼトランスアシラーゼ活性
「MIC」-最小阻止濃度
「EDTA」-エチレンジアミン4酢酸
「EGTA」-エチレングリコールジアミン4酢酸
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1a】(ジ-アシル)リン脂質に対するいくつかのホスホリパーゼの作用部位である。
【図1b】クリプトコッカスのホスホリパーゼ「PLB」の3つの活性である。
【図2】本発明による例示的なビス-陽イオン化合物の構造である。
【図3】膜結合ホスホリパーゼ活性に対するタンパク質濃度の影響である。示すポイントは3つのアッセイの平均およびSEMである。
【図4】細胞質ゾルホスホリパーゼ活性に対する基質濃度の影響である。示すポイントは3つのアッセイの平均およびSEMである。
【図5】膜結合ホスホリパーゼ活性に対するpHの影響である。Aにおいて、LPL/LPTAは30秒のインキュベーションを使用して測定した。Cにおいて、LPL/LPTAは10分のインキュベーションを使用して測定した。Bにおいて、PLBは10分のインキュベーションを使用して測定した。示すポイントは3つのアッセイの平均およびSEMである。
【図6】PLAおよびPLD活性対PHである。
【発明を実施するための形態】
【0073】
発明の詳細な説明
本発明は、ビス-アンモニウム化合物、ビス-ホスホニウム化合物およびアンモニウム/ホスホニウム化合物を含むビス-陽イオン化合物、ならびに抗微生物剤、例えば、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤および/または抗原虫剤としてのそれらの用途に関する。本明細書に開示する式(I)および式(II)のビス-陽イオン化合物は広範囲の抗微生物活性を示すことができる。
【0074】
本明細書に開示するビス-陽イオン化合物は、微生物ホスホリパーゼを阻害することができる可能性がある。しかし、本発明は、ホスホリパーゼ阻害剤であるビス-陽イオン化合物に限定されない。細胞内ホスホリパーゼ、例えば、細胞質ゾルまたは膜結合ホスホリパーゼを阻害することができる化合物は抗微生物特性を有する可能性がある。細胞外ホスホリパーゼの阻害は静真菌特性および/または静菌特性および/または静ウイルス特性を有する可能性がある。
【0075】
本発明によるビス-陽イオン化合物は、非-極性または実質的に非-極性基で置換されている2つの陽イオン頭部基を含む。頭部基は非-極性または実質的に非-極性スペーサー基が結合している。
【0076】
本発明の範囲内の化合物には、本明細書に定義する式(I)および式(II)のビス-陽イオン化合物が挙げられる。
【0077】
式(I)および式(II)において、陽イオン頭部基「Y1(R1R2R3)」および「Y2(R4R5R6)」は同じであってもまたは異なってもよく、独立に、四級アンモニウム基および四級ホスホニウム基から選択される。従って、陽イオン頭部基は共に四級アンモニウム基であっても、一方が四級アンモニウム基で、他方がホスホニウム基であっても、または共にホスホニウム基であってもよい。
【0078】
陽イオン四級NまたはPに結合しているR1〜R6基は同じであってもまたは異なってもよい。本発明の一態様において、R1〜R3は同じである。別の態様において、R4〜R6は同じである。さらに別の態様において、R1〜R6基は同じである。
【0079】
陽イオン四級NまたはP原子に結合しているR1〜R6基は、一般に、非-極性または実質的に非-極性である。従って、R1〜R6基は、水素結合に関与する可能性のある極性基を2つ以上含有しなくてもよい。従って、例えば、それぞれのR1〜R6基は各々1つのヒドロキシル基で置換されていてもよい。いくつかの態様において、R1〜R6基は、プロトン化されて正電苛を形成することができる、または解離してpH範囲約4〜約9の負電苛を形成することができる基を含有しなくてもよい。
【0080】
R1〜R6は同じであってもまたは異なってもよく、一態様において、独立に、置換されていてもよいC2-10アルキルから選択される。別の態様において、R1〜R6は、独立に、置換されていてもよいC2-8アルキルから選択される。さらに別の態様において、R1〜R6は、独立に、置換されていてもよいC3-6アルキルから選択される。
【0081】
本発明の一態様において、Y1およびY2は各々Nであり、R1〜R6は独立に、C2-10アルキルから選択される。
【0082】
それぞれの陽イオンNまたはPに結合している異なる基は、互いに長さが、例えば、2〜6炭素異なってもよい。例えば、陽イオン頭部基は:

等を含んでもよい。
【0083】
スペーサー基「C(R7R7')-A-C(R8R8')」は非-極性または実質的に非-極性残基であり、極性陽イオン頭部基を結合する置換されていてもよい炭素骨格を含む。スペーサー部分は、式(I)化合物では長さが炭素原子数7〜20であってもよく、式(II)化合物では長さが炭素原子数6〜20であってもよい。例えば、スペーサーは、式(I)の化合物では長さが炭素原子数7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20であってもよく、式(II)の化合物では長さが6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20であってもよい。本発明の種々の態様において、スペーサーは長さが炭素原子数C10-16、C10-18またはC10-20であってもよく、それぞれの炭素原子は置換されていてもよい。別の態様において、スペーサーは長さが炭素原子数6〜11または7〜11であってもよい。
【0084】
スペーサー基は、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、アリーレンおよびカルボニル基から選択される1つまたは複数の置換されていてもよい基を含んでもよい。任意の置換基の例には、ハロゲン化物、アルキル、アルケニル、アルコキシ、カルボン酸、エステル、エーテル、チオエーテル、二級または三級アミン、二級または三級アミド、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、 アミノ酸、低分子ペプチド(例えば、長さが2、3、4または 5のアミノ酸)等から選択される1つまたは複数の基が挙げられる。それぞれの陽イオン基のすぐ隣に位置するスペーサー基のそれぞれの末端の基(本明細書において「α」および「ω」炭素といわれることもある)は、独立に、-CH2-、-CC12-、-CFCl-および-CF2-基から選択されてもよい。
【0085】
式(I)および式(II)の化合物は、スペーサー基の1つまたは複数の炭素に結合している1つまたは複数のアミノ酸(本明細書において定義されるとおり)またはオリゴアミノ酸(例えば、長さが2、3、4または5のアミノ酸)を含んでもよい。本明細書に関連して、「オリゴアミノ酸」は、それぞれのアミノ基および酸基を介して結合されて、ジペプチジル、トリペプチジル、テトラペプチジルおよびペンタペプチジル残基を形成しているアミノ酸をいう。本発明による化合物は、任意に、「デプシ」(ペプチド)、すなわち、(例えば、アミノ酸またはグリコール酸、乳酸等のヒドロキシ酸のヒドロキシル基を介する)エステル結合を含むペプチドをさらに含んでもよい。α、βまたはγアミノ酸を使用してもよく、(L)および(D)異性体を使用してもよい。アミノ酸置換基の例には、グリシニル、アラニニル、バリニル、ロイシニル、イソロイシニル、メチオニニル、プロリニル、フェニルアラニニル、トリプトファニル、セリニル、スレオニニル、システイニル、チロシニル、アスパラギニル、グルタミニル、アスパルチル、グルタミル、リジニル、アルギニニルおよびヒスチジニルが挙げられる。他のアミノ酸は当技術分野において公知である。アミノ酸基は、化合物のスペーサー部分にN-またはC-結合していてもよい。アミノ酸基は、アミノ酸側鎖、例えば、アスパラギン酸またはグルタミン酸の-COOH置換基、メチオニンまたはシステインの-SH基等を介して結合されてもよい。
【0086】
本発明の別の態様において、式(I)の化合物は:

である。
【0087】
本発明のさらに別の態様において、式(I)の化合物は:

である。
【0088】
本発明の別の態様において、式(I)の化合物は:

である。
【0089】
本発明のさらに別の態様において、式(I)の化合物は:

である。
【0090】
本発明の別の態様において、式(I)の化合物は:

である。
【0091】
本発明のさらに別の態様において、式(I)の化合物は:

である。
【0092】
本発明の別の態様において、式(I)の化合物は:

である。
【0093】
本発明のさらに別の態様において、式(I)の化合物は:

である。
【0094】
本発明の他の態様において、式(I)の化合物は:
1,11-ビス-(トリブチルアンモニウム)ウンデカン、
1,16-ビス-(トリブチルアンモニウム)ヘキサデカン、
1,12-ビス-(トリペンチルアンモニウム)ドデカン、
1,12-ビス-(トリヘキシルアンモニウム)ドデカン、
1,12-ビス-(トリオクチルアンモニウム)ドデカン、
1,12-ビス-(トリイソブチルアンモニウム)ドデカン、
1,12-ビス-(トリイソペンチルアンモニウム)ドデカン、および
1,12-ビス-(1-ブチルピロリジニウム)ドデカンならびにそれらの塩
から選択される。
【0095】
本発明の一態様において、式(II)の化合物は:

である。
【0096】
本発明の別の態様において、式(II)の化合物は:

である。
【0097】
本発明の別の態様において、式(II)の化合物は:

である。
【0098】
本発明のさらに別の態様において、式(II)の化合物は:

である。
【0099】
本発明の別の態様において、式(II)の化合物は:

である。
【0100】
本発明のさらに別の態様において、式(II)の化合物は:

である。
【0101】
本発明の別の態様において、式(II)の化合物は:

である。
【0102】
本発明の別の態様において、式(II)の化合物は:

である。
【0103】
本発明のさらに別の態様において、式(II)の化合物は:

である。
【0104】
本発明のビス-陽イオン化合物は微生物のホスホリパーゼB酵素を阻害することができるが、本発明は、その活性を有する化合物だけに制限されない。ホスホリパーゼB酵素は、ホスホリパーゼB(PLB)活性、リゾホスホリパーゼ(LPL)活性およびリゾホスホリパーゼトランスアシラーゼ(LPTA)活性の1つまたは複数を含む活性を有することによって識別される。ホスホリパーゼBは細胞結合(すなわち、細胞内または膜結合)酵素または分泌ホスホリパーゼB酵素であってもよい。従って、このクラスの酵素は「ホスホリパーゼB」といわれ、ホスホリパーゼB酵素は、ホスホリパーゼB(PLB)活性を含む1つまたは複数の活性を示すことができる。従って、本明細書に関連して、「PLB」は酵素の作用をいい、「ホスホリパーゼB」は酵素のクラスをいう。ホスホリパーゼBの特徴づけおよび活性の概説は、Wilton et al.によってBiochemistry of Lipids, Lipoproteins and Membranes (4th Edition), D. E. Vance and J. E. Vance (Eds.) 2002, pp.291-314に提供されている。
【0105】
化合物の合成
式(I)および式(II)の化合物は当業者に公知の方法によって調製することができる。好適な方法および中間体は、一般に、Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie; J. March, Advanced Organic Chemistry, 4th Edition (John Wiley & Sons, New York, 1992); D. C. Liotta and M. Volmer,eds, Organic Syntheses Reaction Guide (John Wiley & Sons, Inc., New York, 1991); R. C. Larock, Comprehensive Organic Transformations (VCH, New York, 1989), H. O. House, Modern Synthetic Reactions 2nd Edition (W. A. Benjamin, Inc., Menlo Park, 1972)に記載されている。
【0106】
当業者は、種々の保護基を合成に使用することができることも理解するだろう。保護基の例は当業者に公知であり、例えば、Greene et al., Protective Groups in Organic Synthesis; John Wiley & Sons, 2nd Edition, 1991に記載されている。
【0107】
式(I)および式(II)のビス-陽イオン化合物は塩として製造することができ、任意の好適な対イオンの1つまたは複数を含んでもよいことも当業者は理解するだろう。対イオンは陰イオン、2価陰イオンまたはポリアニオンであってもよい。2つ以上の対イオンが存在する場合には、対イオンは同じであってもまたは異なってもよい。対イオンの例には、ハロゲン化物(Cl-、Br-、I-など)、カルボン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、CF3CO2-、トシレート、硝酸塩、BF4-、PF6-およびOH-が挙げられるが、それに限定されるわけではない。対イオンは、当業者に公知の技法、例えば、イオン交換および結晶化を使用して変更することができる。
【0108】
本発明は、その範囲に、全てのジアステレオマー異性体、ラセミ体およびエナンチオマーを含む本明細書に開示する化合物の全ての異性体形態を含む。従って、式(I)および(II)は、各場合において、適宜、E、Z、cis、trans、(R)、(S)、(L)、(D)、(+)および/または(-)形態の化合物を含むことが理解されるべきである。
【0109】
式(I)および式(II)の化合物は以下の一般的なスキーム(a)〜(f)により調製することができる。

スキーム(a)

スキーム(b)

スキーム(c)

スキーム(d)

スキーム(e)

スキーム(f)
【0110】
上記スキーム(a)〜(f)を参照すると、「Y」はNまたはPを示す。「LG」は、求核アミンまたはホスフィンによって置換されうる離脱基を示す。好適な離脱基の例は当業者に公知であり、例えば、クロロ、ブロモ、ヨード、メシレート、トシレートおよびトリフレート基が挙げられる。上記スキーム(a)〜(f)の種々の離脱基は同じであってもまたは異なってもよく、反応性を改良するために適宜変更することができる。同様に、異なる離脱基および求核試薬(例えば、HYNRR)を異なる合成段階において使用することができる。上記スキームにおいて、R1、R2、R3、R4、R5およびR6基は、式(I)および式(II)について上記に定義する非-極性または実質的に非-極性の基、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、ベンジルなどのアラルキル基、ヘテロアリール基、ヘテロアルキル基等を示す。それぞれのR1、R2、R3、R4、R5およびR6基は同じであってもまたは異なってもよく、各々が例えば、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン化物、O(Cl-6アルキル)、C(O)O(C1-6アルキル)、NO2、アミノ、ヒドロキシCl-6 アルキル、アリール、OC(O)Phまたは=C(Ph)2から選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよい。
【0111】
スキーム(a)は、対称ビス-陽イオン化合物の合成経路を例示する。しかし、化学量論比および反応条件を変更することによって、またはR1、R2およびR3基を変更することによって、非対称化合物も上記の経路により製造することができることを当業者は理解するだろう。
【0112】
スキーム(f)を参照すると、好適な還元剤は当業者に公知であり、例えば、H2、 Pd/C、LiALH4、NaBH4、Zn/HCl、Sn/HCl等が挙げられる。
【0113】
上記のスキーム(a)〜(f)を参照すると、好適な試薬、反応条件等は当技術分野において公知である。例として、好適な溶媒には、アセトニトリル、エタノール、エーテル、メチルイソブチルアルコール、メチルイソブチルケトン等の比較的極性の溶媒を挙げることができる。反応温度は、反応速度を制御するように適宜調節することができる。例として、好適な反応温度は室温より高温、例えば、50℃より高い温度であってもよい。
【0114】
本発明のビス-陽イオン化合物は塩として調製してもよい。対イオンは、例えば、イオン交換カラムおよび結晶化技法を含む当業者に公知の方法を使用して変更することができる。
【0115】
本発明による化合物は、真菌、細菌、ウイルスおよび原虫感染症などの微生物感染症の治療、阻止または予防に有用となりうる。従って、本発明による化合物は、薬学的および獣医学的適用を含む治療的適用を服務。本発明による化合物は産業用適用も含み、例えば、殺菌剤として有用となりうる。本発明による化合物は農業用適用も含み、例えば、植物および作物の微生物感染症を治療、阻止または予防するために使用することができる。化合物は、目的の用途のために適当な方法で組成物として製剤化することができる。
【0116】
従って、本発明はまた、微生物感染症の治療、阻止および予防の1つまたは複数のための医薬品を製造するための、本明細書に定義する式(I)または式(II)の少なくとも1つの化合物の使用に関する。
【0117】
微生物感染は、物品の表面などの表面、例えば、手術用物品または装置、床、ベンチトップまたは産業加工物表面におけるものであってもよい。微生物感染症は、脊椎動物の感染症、例えば、脊椎動物の全身感染症または脊椎動物の皮膚表面の感染症であってもよい。
【0118】
微生物感染は、細菌、真菌、ウイルスおよび寄生虫の1つまたは複数を含んでもよい。
【0119】
本発明はまた、脊椎動物の微生物感染症の治療方法、阻止方法、および予防方法のうちの1つまたは複数であって、本明細書に定義する式(I)または式(II)の少なくとも1つの化合物の有効量を脊椎動物に投与する段階を含む方法に関する。
【0120】
本発明はまた、植物の微生物感染症の治療、阻止および予防の1つまたは複数の方法であって、本明細書に定義する式(I)または式(II)の少なくとも1つの化合物の有効量を植物に接触させる段階を含む方法に関する。
【0121】
式(I)または式(II)の化合物と、葉、果実、花、幹、塊茎または根を含む植物の任意の部分を接触させることができる。植物は農業的または園芸的に重要な植物であってもよい。一態様において、感染症は真菌感染症である。
【0122】
本発明はまた、本明細書に定義する式(I)の少なくとも1つの化合物または式(II)の化合物と、産業的、獣医学的、農業的または薬学的に好適な担体、希釈剤または担体を含む抗微生物組成物に関する。
【0123】
組成物は、抗真菌、抗菌、抗ウイルスおよび抗寄生虫組成物のうちの1つまたは複数であってもよい。一態様において、組成物は抗真菌組成物である。別の態様において、組成物は抗菌組成物である。
【0124】
本発明はまた、式(I)または式(II)の少なくとも1つの化合物と、薬学的に有効な担体、補助剤または希釈剤を含む薬学的組成物に関する。
【0125】
本発明はまた、生物のホスホリパーゼを阻害する方法であって、生物と式(I)の化合物の少なくとも1つ、もしくは式(II)の化合物の少なくとも1つ、またはその組成物の有効量を接触させる段階を含む方法に関する。
【0126】
生物は、例えば細菌、真菌、ウイルスまたは原虫を含む寄生虫などの微生物であってもよい。ホスホリパーゼはホスホリパーゼBであってもよい。
【0127】
本発明はまた、抗微生物的性質を有すると思われる化合物を微生物細胞に接触させる段階、化合物が微生物ホスホリパーゼ酵素を阻害するかどうかを判定する段階であって、ホスホリパーゼ酵素の阻害が抗微生物活性を示す段階およびそれによって抗微生物剤を同定する段階を含む、抗微生物剤を同定する方法に関する。化合物は、本明細書に定義する式(I)または式(II)の化合物であってもよい。ホスホリパーゼはホスホリパーゼBであってもよい。
【0128】
本発明の一態様において、真菌感染症の治療、予防または阻止に使用する場合には、化合物は、式(I)または式(II)(式中、Y1およびY2は各々Nであり;R7、R7'、R8、R8'は各々水素であり;Aは未置換C8-10アルキレンであり;R1〜R6は各々メチルであるかまたはR1〜R6は各々イソブチルである)の化合物ではない。
【0129】
本発明の別の態様において、マラリアおよびバベシア症から選択される寄生虫感染症の治療、予防または阻止に使用する場合には、化合物は、式(I)または式(II)(式中、Y1およびY2は各々Nであり;R7、R7'、R8、R8'は各々水素であり;AはC1-3アルキル基で置換されているC10-18アルキレンであり;R1〜R6は、独立に、C1-10アルキルである)の化合物でない。
【0130】
本発明のさらに別の態様において、マラリアおよびバベシア症から選択される寄生虫感染症の治療、予防または阻止に使用する場合には、化合物は、式(I)または式(II)(式中、Y1およびY2は各々Nであり;R3およびR6は各々C1-10アルキルであり;R1およびR2は、それらが結合しているNと一体として、ならびにR4およびR5は、それらが結合しているNと一体として、各々、SまたはOを1つ含み、ヒドロキシC1-3アルキルまたはハロC1-3アルキルで置換されている5-員環ヘテロシクロアルキル環であり;R7、R7'、R8、R8'は各々水素であり;AはC1-3アルキル置換基で置換されているC10-18アルキレンである)の化合物でない。
【0131】
本発明の別の態様において、真菌感染症の治療、予防または阻止に使用する場合には、化合物は式(I)または式(II)(式中、Y1およびR1〜R3は一体としてキヌクリジンであり;Y2およびR4〜R6は一体としてキヌクリジンであり;R7、R7'、R8、R8'は各々水素であり;Aは未置換C8-10アルキレンである)の化合物でない。
【0132】
微生物の種類およびクラスは当技術分野において公知である。微生物のクラスは、例えば、全体の内容が参照により本明細書に組み入れられる、Manual of Clinical Microbiology, 7th Edition, 1999, American Society of Microbilogyに掲載されている。微生物のいくつかの一般例には以下が挙げられるが、本発明の範囲は、公知の手段によって、これらの微生物に制限されることが理解されるべきである:
スタヒロコッカス属(Staphylococcus spp.)、スタヒロコッカス属、ストレプトコッカス属(Streptococcus spp.)、エンテロコッカス属(Enterococcus spp.)などのグラム陽性球菌;コリネフォルム(Coryneform)、リステリア属(Listeria spp.)、エリシペロトリックス属(Erysipelothrix spp.)およびクルシア属(Kurthia spp.)、バシラス属(Bacillus spp.)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium spp.)などのグラム陽性桿菌;エンテロバクテリアセエ属(Enterobacteriaceae sp.)、エシェリシア属(Escherichia spp.)、シゲラ属(Shigella spp.)、サルモネラ属(Salmonella spp.)、クレブシエラ属(Klebsiella spp.)、エンテロバクター属(Enterobacter spp.)、シトロバクター属(Citrobacter spp.)、セラチア属(Serratia spp.)、アエロモナス属(Aeromonas spp.)およびプレシオモナス属(Plesiomonas spp.)、シュードモナス属(Pseudomonas spp.)などのグラム陰性細菌;アシネトバクター属(Acinetobacter spp.)、アルカリゲネス属(Alcaligenes spp.)、モラクセラ属(Moraxella spp.)およびメチロバクテリウム属(Methylobacterim spp.);アクチノバシラス属(Actinobacillus spp.)、カプノシトファガ属(Capnocytophaga spp.)、エイケネラ属(Eikenella spp.)、レジオネラ属(Legionella spp.)などのキンゲラ属(Kingella spp.)、ナイセリア属(Neisseria spp.)、ブランハメラ属(Branhamella spp.);クロストリジウム属(Clostridium spp.)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus spp.)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium spp.)、ラクトバシラス属(Lactobacillus spp.)、アクチノマイセス属(Actinomyces spp.)を含む嫌気性菌; バクテロイデス属(Bacteroides spp.)、ポルフィロモナス(Porphyromonas spp.)、プレボテラ属(Prevotella spp.)、フソバクテリウム属(Fusobacterium spp.)ならびに他の嫌気性グラム陰性球菌;ヘリコバクター属(Helicobacter spp.)、ボレリア属(Borrelia spp.)を含む曲線状およびラセン-形状グラム陰性桿菌; マイコプラズマ属(Mycoplasma spp.)、ウレアプラズマ属(Ureaplasma spp.)、クラミジア属(Chlamydia spp.)、コクシエラ属(Coxiella spp.)などのマイコプラズマおよび偏性細胞内細菌を含む細菌;
ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency viruses)(HIV)、IおよびII型ヒトT細胞白血病ウイルス(Human T-Cell Lymphotropic Virus)、単純ヘルペスウイルス(Herpes Simplex Virus)、ヒトサイトメガロウイルス(Human cytomegalovirus)、水痘-帯状疱疹ウイルス(Varicella-Zoster Virus)、ヒトヘルペスウイルス(Human Herpesvirus) 6、7および8ならびにヘルペスBウイルス(Herpes B virus)、麻疹ウイルス(Measles Virus)、おたふく風邪ウイルス(Mumps Virus)、アデノウイルス(Adenovirus)、ライノウイルス(Rhinovirus)、ロタウイルス(Rotavirus)、BおよびD型肝炎ウイルス(Hepatitis Virus)、CおよびG型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス(Human papillomavirus)を含むウイルス;
カンジダ属(Candida spp.)、クリプトコッカス属(Cryptococcus spp.)および医学的に重要な酵母、ニューモシスティス・カリニ属(Pneumocystis carini spp.)、アスペルギルス属(Aspergillus spp.)、フサリウム属(Fusarium spp.)および他のカンジダ症を生ずる(Moniliaceous)真菌、リゾプス属(Rhizopus spp.)、リゾムコール属(Rhizomucor spp.)、アブシディア属(Absidia spp.)ならびに全身性および皮下接合菌症(Zygomycoses)の他の菌、トリコフィトン属(Trichophyton spp.)、ミクロスポルム属(Microsporum spp.)、エピデルモフィトン属(Epidermophyton spp.)、ビポラリス属(Bipolaris spp.)、エクソフィアラ属(Exophiala spp.)、セドスポリウム属(Scedosporium spp.)、スポロスリックス属(Sporothrix spp.)および他の黒色真菌、真菌性菌腫(Eumycotic Mycetoma)を生ずる真菌;コレクティトリカム・ココデス(Collectitrichum cocodes)、植物の饂飩粉病、ベト病、ボトリチス、黒点および黒色の表皮(black scurf)(紋枯病菌(Rhizoctonia))を生じる真菌、を含む真菌;
プラスモジウム属(Plasmodium spp.)、バベシア属(Babesia spp.)、リーシュマニア属(Leishmania spp.)、トリパノソーマ属(Trypanosoma spp.)、トキソプラズマ・ギアルディア属(Toxoplasma giardia spp.)、病原性および日和見性自由生活アメーバ、腸管および泌尿生殖器アメーバ、鞭毛虫および繊毛虫;クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)、シクロスポラ(Cyclospora)、イソスポラ(Isospora)、ミクロスポリジア(Microsporidia)および腸管蠕虫を含む寄生虫。
【0133】
製剤
本発明によると、微生物感染症の治療または予防に使用する場合には、本発明の化合物は単独で投与してもよい。または、化合物は、本発明による少なくとも1つの化合物を含む薬学的、獣医学的、農業的または産業的製剤として投与することができる。化合物はまた、薬学的に許容される塩を含む好適な塩として存在してもよい。
【0134】
本発明によると、本発明の化合物は、他の公知の治療または抗真菌治療、抗生物質、殺菌剤等を含む抗微生物剤と併用して使用してもよい。好適な薬剤は、例えば、全体の開示内容が参照により本明細書に組み入れられる、Merck Index, An Encyclopoedia of Chemicals, Drugs and Biologicals, 12th Ed., 1996に掲載されている。
【0135】
本発明の化合物を含む活性物質の併用は相乗的となりうる。
【0136】
薬学的に許容される塩は、健全な医学的判断の範囲において、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等を生じないでヒトおよび下等動物の組織と接触するのに好適であるような塩を意味する。薬学的に許容される塩は当技術分野において周知である。
【0137】
例えば、本発明による化合物の好適な薬学的に許容される塩は、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、炭酸、酒石酸またはクエン酸などの薬学的に許容される酸と本発明の化合物を混合することによって製造することができる。従って、本発明の化合物の薬学的に許容される塩は酸付加塩を含む。
【0138】
S. M. Berge et al.は、J. Pharmaceutical Sciences, 1977, 66: 1-19において薬学的に許容される塩を詳細に記載している。塩は本発明の化合物の最終的な単離および精製中にインサイチューにおいて製造しても、または別個に遊離塩基官能基を好適な有機酸と反応させることによって製造してもよい。代表的な酸付加塩には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、二硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、カンフォレート、カンフォスルホネート、クエン酸塩、二グルコン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトネート、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトネート、ヘキサン酸塩、集荷水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等が挙げられる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等およびをアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、トリエタノールアミン等含むが、それに限定されるわけではない無-毒性アンモニウム、四級アンモニウムおよびアミン陽イオンが挙げられる。
【0139】
便利な投与様式には、注射(皮下、静脈内等)、経口投与、吸入、経皮適用、局所クリームもしくはゲルまたは粉末、または直腸投与が挙げられる。投与経路に応じて、製剤および/または化合物は、酵素、酸および化合物の治療活性を不活性化する可能性のある他の天然条件から化合物を保護するための物質でコーティングすることができる。化合物は非経口的または腹腔内投与してもよい。
【0140】
本発明による化合物の分散剤も、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物ならびにオイル中で製剤化することができる。通常の保存および使用条件下において、製剤は、微生物の増殖を防止する保存剤を含有してもよい。
【0141】
注射に好適な薬学的組成物には、滅菌注射液または分散剤の即時調製のための滅菌水溶液(水溶解性の場合)または分散剤が挙げられる。理想的には、組成物は製造および保存条件下において安定であり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から組成物を安定化する保存剤を含んでもよい。
【0142】
本発明の一態様において、本発明の化合物は、例えば、不活性な希釈剤または吸収性の食用担体と共に経口投与することができる。化合物および他の成分は、硬もしくは軟シェルゼラチンカプセルに封入されても、錠剤に圧縮されても、または患者の食餌に直接組み入れてもよい。経口治療投与のためには、化合物は賦形剤と共に組み入れられ、経口摂取用錠剤、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェハー等の形態で使用してもよい。好適には、このような組成物および製剤は少なくとも1重量%の活性化合物を含有することができる。当然のことながら、薬学的組成物および製剤中の式(I)および/または(II)の化合物の割合は変わってもよく、例えば、便利なことに、単位剤形の約2重量%〜約90重量%、約5重量%〜約80重量%、約10重量%〜約75重量%、約15重量%〜約65重量%、約20重量%〜約60重量%、約25重量%〜約50重量%、約30重量%〜約45重量%または約35重量%〜約45重量%の範囲であってもよい。治療的に有用な組成物中の化合物の量は、好適な用量が得られるようである。
【0143】
「薬学的に許容される担体」は、溶媒、分散媒体、コーティング、抗-菌および抗-真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤を含むことが意図されている。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は当技術分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤が化合物と適合性のない場合を除いて、治療的組成物ならびに治療および予防方法におけるその使用が企図される。補助的な活性化合物を本発明による組成物に組み入れてもよい。投与の容易さおよび用量の均一性のために単位剤形で非経口組成物を製剤化することは特に有利である。本明細書において使用する「単位剤形」は、治療対象の患者の単回用量として好適な物理的に別個の単位をいう。各単位は、必要な薬学的担体に関連して望ましい治療効果を生ずるように算出されている所定の量の化合物を含有する。化合物は、許容される単位剤形において好適な薬学的に許容される担体と共に有効な量が便利かつ効果的に投与されるように製剤化することができる。補助的な活性成分を含有する組成物の場合には、剤形は、その成分の通常の投与量および投与様式を参照することによって決定される。
【0144】
一態様において、担体は経口投与可能な担体であってもよい。
【0145】
薬学的組成物の別の剤形は、経口投与に好適な腸溶コーティング顆粒、錠剤またはカプセルとして製剤化された剤形である。
【0146】
徐放性製剤も本発明の範囲に含まれる。
【0147】
本発明の化合物は「プロドラッグ」の形態でも投与することができる。プロドラッグは、インビボにおいて活性な形態に変換される不活性な形態の化合物である。好適なプロドラッグには、化合物の活性型のエステル、ホスホン酸エステル等が挙げられる。
【0148】
一態様において、化合物は注射によって投与することができる。注射液の場合には、担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール等)、それらの好適な混合液および植物油を含有する溶媒または分散媒体であってもよい。例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって、分散剤の場合には必要な粒子サイズを維持することによっておよび界面活性剤を使用することによって適切な流動性を維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌および/または抗真菌剤を含有させることによって実施することができる。好適な薬剤は当業者に周知であり、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ベンジルアルコール、アスコルビン酸、チメロサール等が挙げられる。多数の場合において、組成物に、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリオール、塩かナトリウムなどの等張剤を含有させることが好ましいだろう。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延する薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に含有させることによって実施されうる。
【0149】
滅菌注射液は、必要な量のアナログを適宜上記に列挙した成分の1つまたは組み合わせと共に導入し、次にろ過滅菌することによって製剤化することができる。一般に、分散剤は、基本的な分散媒体および上記に列挙する中の必要な他の成分を含有する滅菌基剤にアナログを組み入れることによって製剤化される。
【0150】
錠剤、トローチ、ピル、カプセル等は以下も含有してもよい:トラガカントガム、アカシア、トウモロコシデンプンまたはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤およびスクロース、ラクトースもしくはサッカリンなどの甘味剤またはペパーミント、ウィンターグリーン油もしくはチェリーフレーバーなどの矯味矯臭剤。単位剤形がカプセルの場合には、上記の種類の物質以外に、液体の担体を含有してもよい。種々の他の物質がコーティングとしてまたは単位剤形の物理的形態を改良するために含有されてもよい。例えば、錠剤、ピルまたはカプセルはシェラック、糖または両方がコーティングされてもよい。シロップまたはエリキシルは、アナログ、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、チェリーまたはオレンジフレーバーなどの染料および矯味矯臭剤を含有してもよい。当然のことながら、任意の単位剤形を製剤化する際に使用する任意の物質は薬学的に純粋で、使用する量において実質的に無毒性であるべきである。また、アナログを徐放性製剤(preparations)および製剤(formulations)に組み入れてもよい。
【0151】
好ましくは、薬学的組成物は、酸加水分解を最小にするのに好適な緩衝液をさらに含んでもよい。好適な緩衝剤は当業者に周知であり、リン酸塩、クエン酸塩、炭酸塩およびそれらの混合物が挙げられるが、それに限定されるわけではない。
【0152】
本発明による薬学的組成物の単回投与または複数回投与を実施することができる。当業者は、通常の実験によって、化合物および組成物が適用可能である疾病および/または感染症を治療するのに好適であると思われる本発明の化合物および/または組成物の有効で無-毒性の用量および投与パターンを設定することができると思われる。
【0153】
さらに、定義された日数にわたって1日あたり投与される本発明の化合物または組成物の投与回数などの最適な治療経過は従来の治療判定試験を使用して確かめることができることは当業者に明らかである。
【0154】
一般に、24時間あたりの有効量は約0.0001mg〜約1000mg/体重1kgの範囲であってもよく;好適には、約0.001mg〜約750mg/体重1kg;約0.01mg〜約500mg/体重1kg;約0.1mg〜約500mg/体重1kg;約0.1mg〜約250mg/体重1kg;または約1.0mg〜約250mg/体重1kgの範囲であってもよい。さらに好適には、24時間あたりの有効量は、約1.0mg〜約200mg/体重1kg;約1.0mg〜約100mg/体重1kg;約1.0mg〜約50mg/体重1kg;約1.0mg〜約25mg/体重1kg;約5.0mg〜約50mg/体重1kg;約5.0mg〜約20mg/体重1kg;または約5.0mg〜約15mg/体重1kgの範囲であってもよい。
【0155】
または、有効量は最高約500mg/m2であってもよい。例えば一般に、有効量は約25〜約500mg/m2、約25〜約350mg/m2、約25〜約300mg/m2、約25〜約250mg/m2、約50〜約250mg/m2および約75〜約150mg/m2の範囲であることが予想される。
【実施例】
【0156】
本発明は、以下の実施例に関して例示のためだけにここでさらに詳細に記載される。実施例は、本発明を例示する働きをすることが意図されており、本明細書全体にわたる記載の開示の一般性を限定すると解釈されるべきではない。
【0157】
実施例 1
ビス-陽イオン化合物の合成および特徴づけ
1,12-ビス-(キヌクリジニウム)ドデカンジブロミド
1,12-ジブロモドデカン(0.50g, 1.52mmol)のメチルイソブチルケトン(1ml)溶液にキヌクリジン (0.34g, 3.0mmol)を添加した。混合物を凍結/融解によって脱酸素化し、24時間還流して撹拌し、その間に沈殿が形成された。粗混合物を冷却し、沈殿をろ別して、望ましい化合物を白色の固体(0.45g, 54%)として得た。

【0158】
1,12-ビス-(l-メチルモルホリニウム)ドデカンジブロミド
1,12-ジブロモドデカン(0.50g, 1.52mmol)をN-メチルモルホリン (0.61g, 6.08mmol)に溶解した。凍結/融解によって混合物を脱酸素化し、80℃において24時間撹拌して、望ましい化合物を白色の吸湿性の固体として得、ろ過して回収し、乾燥ジエチルエーテルで洗浄した(0.52g, 65%)。

【0159】
1,11-ビス-(トリブチルアンモニウム)ウンデカンジクロライド
1,11-ジブロモウンデカン (0.10g, 0.32mmol)をトリブチルアミン (0.24g, 1.27mmol)に溶解した。得られた混合物を凍結/融解によって混合物を脱酸素化し、130℃において20時間撹拌した。減圧下溶媒を除去し、粗混合物をフラッシュクロマトグラフィー(90:10:1 CH2C12/MeOH/NH3(水溶液))で精製した。次いで、分画を合わせてLewatit MP-64 陰イオン樹脂 (Cl-)カラムに通した。得られた分画を合わせて、減圧下溶媒を除去して上記の化合物を淡褐色の油状物質として得た(0.13g, 69%)。

【0160】
1,12-ビス-(トリブチルアンモニウム)ドデカンジクロライド
1,12-ジブロモドデカン (1.0g, 3.05mmol)をメチルイソブチルケトン (5ml)に溶解した。トリブチルアミン (1.13g, 6.09mmol)を添加し、得られた混合物を凍結/融解によって脱酸素化した。混合物を24時間還流して撹拌し、減圧下溶媒を除去した。粗混合物をフラッシュクロマトグラフィー(90:10:1 CH2Cl2/MeOH/NH3 (水溶液))によって精製した。次いで、分画を合わせてLewatit MP-64 陰イオン樹脂 (Cl-)カラムに通した。得られた分画を合わせて、減圧下溶媒を除去して上記の化合物を黄色の油状物質として得た(0.5g, 27%)。

【0161】
1,12-ビス-(トリブチルアンモニウム)ドデカンジブロミド
1,12-ジアミンドデカン(0.25g, 1.25mmol)の無水エタノール(5mL)溶液に、ブチルブロミド (3.08g, 22.5mmol)およびK2CO3 (1.04g, 7.49mmol)を添加した。混合物を3日間還流して撹拌し、望ましい化合物を黄色の油状物質(0.76g, 87%)として得た。これは上記のものと同一の1Hおよび13C分光学的データを有した;m/z ESI (正イオン) 270[M-2Br-]2+ (100%), 619[M-Br-]+(70)。
【0162】
1,16-ビス-(トリブチルアンモニウム)ドデカンジクロライド
1,16-ジブロモヘキサデカン(0.15g, 0.39mmol)をトリブチルアミン (0.14g, 0.78mmol)に溶解した。得られた混合物を凍結/融解によって脱酸素化し、3日間130℃において撹拌した。粗混合物をフラッシュクロマトグラフィー(80:18:2 CH2C12/MeOH/NH3 (水溶液))によって精製した。分画を合わせてLewatit MP-64 陰イオン樹脂 (Cl-)カラムに通した。得られた分画を合わせて、減圧下溶媒を除去して上記の化合物を褐色の油状物質として得た(0.13g, 48%)。

【0163】
1,12-ビス-(トリペンチルアンモニウム)ドデカンジブロミド
1,12-ジブロモドデカン(0.50g, 1.52mmol)にトリイソブチルアミン(1.38g, 6.08mmol)を添加し、得られた混合物を凍結/融解によって脱酸素化した。混合物を3日間還流して撹拌した。粗生成物をエーテルで洗浄して、上記の化合物を褐色の油状物質として得た(0.95g, 80%)。

【0164】
1,12-ビス-(トリヘキシルアンモニウム)ドデカンジクロライド
1,12-ジブロモドデカン(0.50g, 1.52mmol)をメチルイソブチルケトン(5ml)に溶解した。トリヘキシルアミン(0.82g, 3.05mmol)を添加し、得られた混合物を凍結/融解によって脱酸素化した。混合物を4日間還流して撹拌し、減圧下溶媒を除去した。粗混合物をフラッシュクロマトグラフィー(90:10:1 CH2C12/MeOH/NH3 (水溶液))によって精製した。次いで、分画を合わせてLewatit MP-64 陰イオン樹脂 (Cl-)カラムに通した。得られた分画を合わせて、減圧下溶媒を除去して上記の化合物を黄色の油状物質として得た(0.14g, 12%)。

【0165】
1,12-ビス-(トリオクチルアンモニウム)ドデカンジクロライド
1,12-ジブロモドデカン(0.52g, 1.52mmol)をメチルイソブチルケトン(5ml)に溶解した。トリオクチルアミン(1.12g, 3.17mmol)を添加し、得られた混合物を凍結/融解によって脱酸素化した。混合物を7日間還流して撹拌し、減圧下溶媒を除去した。粗混合物をフラッシュクロマトグラフィー(90:30:1 CH2C12/MeOH/NH3 (水溶液))によって精製した。次いで、分画を合わせてLewatit MP-64 陰イオン樹脂 (Cl-)カラムに通した。得られた分画を合わせて、減圧下溶媒を除去して上記の化合物を黄色の油状物質として得た(0.11g, 11%)。

【0166】
1,12-ビス-(トリイソブチルアンモニウム)ドデカンジブロミド
1,12-ジブロモドデカン(0.50g, 1.52mmol)にトリイソブチルアミン(1.2g, 6.10mmol)を添加し、得られた混合物を凍結/融解によって脱酸素化した。混合物を48時間還流して撹拌した。混合物を冷却し、上記の化合物を白色の沈殿物として得た(0.014g, 2%)。

【0167】
1,12-ビス-(トリイソペンチルアンモニウム)ドデカンジクロライド
1,12-ジブロモドデカン (0.56g, 1.71mmol)をメチルイソブチルケトン(5ml)に溶解した。トリイソペンチルアミン(0.78g, 3.42mmol)を添加し、得られた混合物を凍結/融解によって脱酸素化した。混合物を48時間還流して撹拌し、減圧下溶媒を除去した。粗混合物をフラッシュクロマトグラフィー(90:10:1 CH2C12/MeOH/NH3 (水溶液))によって精製した。次いで、分画を合わせてLewatit MP-64 陰イオン樹脂 (Cl-)カラムに通した。得られた分画を合わせて、減圧下溶媒を除去して上記の化合物を淡黄色の油状物質として得た(0.37g, 31%)。

【0168】
1,12-ビス-(トリプロピルアンモニウム)ドデカンジブロミド
1,12-ジブロモドデカン (0.50g, 1.52mmol)をトリプロピルアミン (1.72g, 12.1mmol)に溶解した。得られた混合物を凍結/融解によって脱酸素化し、80℃において48時間撹拌した。減圧下溶媒を除去し、得られた油状物質をエーテルによって研和(triturate)し、上記の化合物を暗褐色の油状物質として得た(0.70g, 75%)。

【0169】
1,12-ビス-(トリエチルアンモニウム)ドデカンジブロミド
1,12-ジブロモドデカン(0.50g, 1.52mmol)をトリエチルアミン(0.92g, 9.12mmol)に溶解した。得られた混合物を凍結/融解によって脱酸素化し、80℃において24時間撹拌した。減圧下溶媒を除去し、得られた油状物質をエーテルによって研和し、上記の化合物を吸湿性の白色固体として得た(0.65g, 81%)。
【0170】
1,12-ビス-(トリメチルアンモニウム)ドデカンジブロミド
水酸化ナトリウム(0.25g, 6.1mmol)を塩酸トリメチルアミンの乾燥メタノール(10ml)溶液に添加した。混合物をろ過し、1,12-ジブロモドデカン(0.50g, 1.52mmol)をろ液に添加した。混合物を12時間還流し、減圧下溶媒を除去した。粗生成物をメタノール/エーテルから再結晶して、上記の化合物を白色の固体として得た(0.64g, 94%)。データはJ. Med. Chem., 1997, 40, 3557-3566と同じである。
【0171】
1,12-ビス-(l-メチルピロリジニウム)ドデカンジブロミド
1,12-ジブロモドデカン(0.50g, 1.52mmol)を1-メチルピロリジン(0.52g, 6.08mmol)に溶解した。得られた混合物を凍結/融解によって脱酸素化し、80℃において20時間撹拌した。減圧下溶媒を除去して上記化合物を白色の吸湿性の固体として得た(0.49g, 64%)。

【0172】
1,12-ビス-(ピロリジニウム)ドデカン
1,12-ジブロモドデカン(0.5g, 1.52mmol)をピロリジン(0.44g, 6.08mmol)に溶解した。混合物を90℃において20時間撹拌した。粗混合物を80:18:2 CH2C12/MeOH/NH3 (水溶液)で溶出してフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、上記化合物を黄色固体として得た(0.33g, 71%)。

【0173】
1,12-ビス-(N-ブチルピロリジニウム)ドデカンジブロミド
1,12-ビス-(ピロリジニウム)ドデカン(0.33g, 1.08mmol)のメチルイソブチルケトン(2ml)溶液にブチルブロミド (0.88g, 6.46mmol)を添加した。得られた混合物を20時間還流して撹拌した。粗混合物を80:18:2 CH2C12/MeOH/NH3 (水溶液)で溶出してフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、上記化合物を淡黄色の油状物質として得た(0.45g, 71%)。

【0174】
実施例2-酵素活性の特徴づけ
クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)は、治療されないと致死的になる真菌性髄膜炎の最も一般的な原因菌である。病原性株のクリプトコッカスは数多くのいわゆる「病原性因子」を産生し、その1つがホスホリパーゼB(EC3.1.1.5)と名づけられている分泌型ホスホリパーゼである。このホスホリパーゼは、(i)リン脂質から両方のアシル鎖を同時に離脱するホスホリパーゼB活性(PLB)、(ii)リゾリン脂質から1つのアシル鎖を離脱するリゾホスホリパーゼ(LPL)、および(iii)アシル鎖をリゾリン脂質に付加して、リン脂質を形成するリゾホスホリパーゼトランスアシラーゼ(LPTA)を含む3つの別個の活性を有する単一タンパク質である(図1a、1b参照)。
【0175】
分泌型ホスホリパーゼBは、マクロファージにおけるクリプトコッカスの生存、肺組織の破壊および食作用を調節するエイコサノイドの産生に関与する。このホスホリパーゼBはまた、カンジダ・アルビカンスおよびアスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)などの医学的に重要な他の真菌の病原性にも関連する。結果として、分泌型ホスホリパーゼB酵素は、例えば、抗菌、抗真菌、抗ウイルスおよび抗寄生虫治療を含む微生物感染症の治療の有用と思われる標的となりうる。
【0176】
C.ネオフォルマンスにおける細胞-結合型(膜および細胞質ゾル)ホスホリパーゼB活性が特徴づけられた。
【0177】
材料および方法
真菌単離株および培地。高レベルの分泌型ホスホリパーゼB活性を産生するC.ネオフォルマンス・グルビイ(C. neoformans var. grubii)(血清型A)、H99を、細胞-結合ホスホリパーゼの特徴づけおよびホスホリパーゼ活性の阻害に使用した。単離株H99は親切なことにDr. Gray Cox(Duke University Medical Center, Durham, NC, USA)による供与を受け、30℃においてサブローデキストロース寒天(SDA)で継代培養した。
【0178】
分泌型ホスホリパーゼ活性を含有する上清の調製。単離株H99を、大気中で30℃において72時間径16cmのペトリ皿のSDAで集密化するまで増殖させた。10〜20の皿から掻き取った細胞を等張生理食塩液およびイミダゾール緩衝液((10mMイミダゾール、2mM CaCl2、2mM MgC12、56mM D-グルコース、等張生理食塩液で調製、pH5.5)で逐次的に洗浄し、約10%の細胞容量のこの緩衝液中で再懸濁し、37℃において24時間インキュベートした。以前に記載されているように、無細胞上清を遠心分離によって分離し、-70℃で保存した。
【0179】
膜および細胞質ゾル分画を調製するための細胞の破壊。上記の上清調製物からの細胞ペレットも-70℃で凍結した。イミダゾール緩衝液で2回洗浄後、MiniBeadbeater-8 Cell Disputer (MBB-8; Daintree Scientific, Tasmania, Australia)でプロテアーゼ阻害剤カクテル(真菌および酵母細胞はP8215;4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩、100mM、1,10-フェナントロリン、500mM、ペプスタチンA、2.2mM、E-64、1.4mM;Sigma)の存在下において、氷上での1分の冷却期間と交互に1分3サイクル破壊した。ホモジネートを14,000gで15分遠心分離して、膜(ペレット)および細胞質ゾル(上清)分画を得た。細胞質酵素活性は-70℃において最高3ヶ月間の保存中安定であったが、膜結合活性は安定性が悪かった(最高5週)。
【0180】
ホスホリパーゼの放射測定アッセイ。最終容量125μL、37℃において以前に記載されているように酵素活性を測定した。分泌型PLB活性の測定は、キャリヤージパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC、最終濃度800μM)および1,2-ジ[1-14C]パルミトイルホスファチジルコリン(20,000dpm)を窒素雰囲気下で乾燥し、125 mMイミダゾールアセテート緩衝液(アッセイ緩衝液、pH4.0)にBranson 450ソニファイアーを使用する超音波処理によって懸濁した。反応時間は、総タンパク質1μgを使用するとき22分で、PLB活性は、遊離酸に標識が出現し、放射性標識PC基質が減少する速度によって測定した。細胞質ゾルおよび膜分画アッセイのためのこれらの条件の変更を表1に示す。このアッセイはまた、ホスホリパーゼA、CおよびD活性の測定も同時に可能にする。これらの活性は、それぞれ、リゾPC、ジアシルグリセロールおよびホスファチジン酸におけるPCからの放射性標識の出現によって測定した。
【0181】
分泌型LPLおよびLPTA活性は、アッセイ緩衝液に1-[14C]パルミトイルリゾ-PC(25,000dpm)およびキャリヤーリゾ-PC(最終濃度200μM)を含有する反応混合物中で同時に測定した。反応時間は、総タンパク質1μgを使用するとき15秒で、LPL活性は、放射性標識脂肪酸が放出され、1-[14C]パルミトイルリゾ-PCが損失する速度によって測定した。LPTA活性は、放射性標識PCの形成速度から推定した。膜および細胞質ゾル分画のためのこれらの条件の変更を表1に示す。
【0182】
0.5mLのクロロホルム:メタノール(2:1 v/v)を添加することによって全ての反応を停止した。反応生成物は、Bligh, E. C. and W. J. Dyer.1959 「A rapid method of total lipid extraction and purification.」Can. J. Biochem. Physiol. 37:911-917に開示されている方法によって抽出し、TLCで分離し、以前に記載されているように定量した。PLC活性の場合には、TLCプレートを、クロロホルム:メタノール:水(65:25:4, v/v/v)の代わりに石油エーテル(BP 60〜80℃);ジエチルエーテル:酢酸(90:15:1, v/v/v)で展開した。
【0183】
(表1)H99細胞-結合型および分泌型ホスホリパーゼの最適条件

【0184】
酵素活性の特徴づけ
実験はすべて二つ組または三つ組で実施した。種々のホスホリパーゼ活性に対するpHの影響は、最終濃度50 mMのイミダゾール-アセテート緩衝液(pH範囲3〜5)、MES緩衝液(pH範囲6〜8)およびグリシン緩衝液(pH9〜10)を使用して測定した。基質の非-酵素的破壊の対照を全てのpH値に加えた。陽イオン、Triton X-100および金属キレートをストック水溶液として調製し、適当なアッセイ緩衝液で最終濃度に希釈した。
【0185】
タンパク質アッセイ
標準としてBSA(Pierce Chemical Co., IL, USA)を用いて、(分泌型酵素を含有する上清は)クーマシーブルー結合アッセイを使用し、または細胞-結合分画はビシンコニン酸(BCAキット)を使用して総タンパク質評価を実施した。
【0186】
細胞-結合分画におけるPLB、LPLおよびLPTAの同定
パルミトイルリゾ-ホスファチジルコリン(リゾ-PC)およびDPPCは天然状態および精製状態の両方において分泌型酵素の好ましい基質であり、酵素活性はpH4.0において最大であったので、細胞-結合型ホスホリパーゼ活性のアッセイは、これらの化合物を使用してpH4.0において実施した。クリプトコッカス膜および細胞質ゾル分画による基質リゾ-PCの加水分解によって、遊離脂肪酸およびPCだけが形成され、分泌型酵素について見られるようにLPLおよびLPTA両方の存在を示している。同様に、両方のアシル鎖が放射性標識されたDPPCが分解されて遊離の脂肪酸だけを生じ、活性はpH4.0においてPLBによることを示した。
【0187】
ホスホリパーゼ活性に対するタンパク質濃度および時間の影響
タンパク質濃度が漸増する細胞質ゾル分画の活性は、分泌型酵素の値と同様に(示していない)、LPL/LPTAではわずか1μgまで、PLBでは4μgまで直線状であった。一方、膜-結合型LPLおよびLPTA活性は80μgまでタンパク質濃度に伴って直線状であり、その後はさらには増加しなかった(図3A)。PLB活性はタンパク質160μgまで直線状であった(図3B)。
【0188】
細胞質ゾルおよび膜活性の時間経過は分泌型酵素と類似しており、LPL/LPTAはわずか20〜30秒まで直線状で、その後は増加しなかった。膜-結合PLB活性は30分まで直線状であったが、細胞質ゾル活性は22分まで直線状であった(示していない)。
【0189】
酵素活性に対する基質濃度の影響
細胞質ゾルLPL/LPTA活性は最大50〜200μMリゾ-PCに達し、その後基質濃度の増加と共に活性は急激に低下した(図4A)。細胞質PLB活性は400μM DPPCにおいて飽和に達し、1000μM以降低下した(図4B)。膜-結合LPL/LPTAは約50μMリゾ-PCで最大に達したが、600μMまで同じレベルの活性を維持し、その後低下した(示していない)。膜-結合PLB活性は200μM DPPCで最大に達し、800μM以降低下した(示していない)。
【0190】
酵素活性に対するpHの影響
さらなる検討のための最適条件を表1から選択した。細胞-結合ホスホリパーゼ活性の変動はpH範囲3〜10で観察された。細胞質ゾルLPL/LPTA活性は、4.0および6.0において2つのpH最適値を示し、活性はpH9.0において低下してゼロになった(示していない)。細胞質ゾルホスホリパーゼBのpHプロファイル(示していない)は、シャープさには欠けるが、膜-結合PLBと類似していた(図5B)。pH最適値は膜-結合LPLおよびLPTAともに3〜4であり、pH9.0では徐々に低下してゼロになった(図5A)。膜PLBの最適pH(pH4.0)は非常に狭く(図5B)、pH7.0では活性は実質的になかった。
【0191】
細胞結合(細胞質ゾルおよび膜-結合)活性と粗および精製分泌型酵素の活性との最も明らかな差は、pH6.0(PLB)および7〜8(LPL/LPTA)において細胞-結合酵素の活性は大きかった。興味深いことに、LPL/LPTAアッセイのインキュベーション時間を20〜30秒から10分に延長したとき、膜および細胞質ゾル酵素調製物ではpH7〜9の範囲では活性は増加したが、低いpH値では増加しなかった(図5C、膜結合酵素)。
【0192】
ホスホリパーゼB活性の細胞分布
3つ全ての活性の最適pHとして4.0を取ると(表1)、総活性の最も大きな割合は分泌される(表2)という点において、PLBの分布はLPLおよびLPTAの分布と異なることが明らかである。LPLおよびLPTAの場合には、活性のほとんどは細胞質ゾルである。3つ全ての活性の比活性および割合は膜分画において最も低かった(表2)。
【0193】
(表2)pH4.0において測定されたホスホリパーゼ活性の細胞分布

データは少なくとも3つのアッセイの平均およびSEMとして表し、活性は、細胞分画において分解される基質μmolまたは形成される産物(LPTA)/分/タンパク質1mgaまたは総タンパク質bとして算出した。*P<0.01、膜活性と比較;#P<0.01、細胞質ゾル活性と比較(ANOVA)
【0194】
調節剤(modifying agents)および細胞-結合活性
pH4.0において10 mMカルシウムまたはマグネシウムによって細胞質ゾルまたは膜-結合活性はいずれも刺激されなかった(表3A)。Triton X-100はpH4.0における唯一の顕著な阻害剤で、細胞質ゾルおよび膜-結合LPTAおよびPLBは最も影響された(表3A)。
【0195】
(表3)細胞質ゾルおよび膜-結合活性に対する調節剤の影響

a活性は、100%とした対照に対する割合として表す。値は三つ組またはb二つ組アッセイの平均である。調節剤の最終濃度は、0.1%(w/v)であったTriton X-100を除いて10mMであった。*対照からの有意差、P<0.01、ダネットの多重比較検定による。
【0196】
pH7.0でアッセイする場合には、細胞質ゾルおよび膜-結合活性の3つ全てはカルシウムで刺激した(表3B)。細胞質ゾルPLBおよび膜-結合活性の3つ全てはマグネシウムでも刺激した(表3B)。これは細胞質ゾルLPLおよびLPTAについてはEDTAおよびEGTAの存在下における低い活性において反映されていた。FeCl3およびTriton X-100は共に、細胞質ゾルおよび膜-結合分画の3つ全ての活性の阻害剤である。Triton X-100は、LPLおよびLPTA活性よりPLBを阻害する際に有効性が低かった(表3B)。
【0197】
ホスホリパーゼA、CおよびD
分泌型のホスホリパーゼA、CおよびDはクリプトコッカス上清では同定されていない。高レベルのホスホリパーゼA(PLA)は、膜調製物においてpH7〜8においてDPPCからの放射性標識リゾ-PCの形成によって検出されたが(図6A)、細胞質ゾルでは微量のPLAしか見られなかった(示していない)。少量のホスホリパーゼD(PLD)活性は、pH 7〜8において細胞質ゾルおよび膜分画からの放射性標識ホスファチジン酸の形成によって検出された(図6B、膜PLD)。基質としてDPPCを使用するとき、任意のpHにおいてPLCの痕跡は見られなかった。
【0198】
試験したアッセイ条件下では、ホスホリパーゼBは、C.ネオフォルマンスの細胞質ゾルおよび分泌型に存在する主要なホスホリパーゼであった。一方、ホスホリパーゼAおよびDは膜-結合型であり、細胞質ゾルでは弱冠のPLD活性が見られた。PLB活性のpH最適値は、分泌型、膜-結合または細胞質ゾルであっても、常に酸性(pH4.0)であったが、細胞質ゾルLPL/LPTAは二峰性であった(pH4.0および6.0)。PLAおよびPLD活性はpH7〜8においてのみ検出された。ホスホリパーゼBの作用部位であると推定されるところは、インビボにおいてマクロファージ-様細胞系統およびマウスマクロファージの酸性液胞であるので、これらの観察は、クリプトコッカス病原性における分泌型PLB活性の役割に一致している。
【0199】
膜-結合LPL/LPTA活性をカルシウムおよびマグネシウムの両方で刺激した(表3)。pH7.0におけるカルシウムおよびマグネシウムによる細胞-結合型PLB活性の予測されなかった刺激は、一部には、PLA活性による可能性がある。
【0200】
実施例3
潜在的ホスホリパーゼ阻害剤の選択および試験
材料および方法
潜在的ホスホリパーゼ阻害剤の選択。潜在的な阻害剤の選択は、基質、すなわちホスホリパーゼに構造的に関連する化合物を試験する従来の方法に基づいている。代謝的に安定で、アッセイにおける溶媒の使用を回避する程度に十分に水溶性であると思われるリン脂質の2つの主要な特徴を有する(1または2つの疎水性アルキル鎖および正に強く荷電したテトラ-アルキル化窒素原子)市販の化合物を最初に使用した。
【0201】
阻害剤の調製およびアッセイにおける使用。以下の化合物を試験した(構造は図2参照):化合物1、1,12-ビス(トリブチルホスホニウム)ドデカンジブロミド(Fluka AG, Buchs, Switzerland); 化合物2、1,10-ビス(トリブチルアンモニウム)-デカンジブロミド; 化合物3、1,12-ビス(トリブチルアンモニウム)ド-デカンジブロミド(共に自家合成);化合物4、1,10-ビス(トリメチルアンモニウム)デカンジブロミド[「デカメトニウム」] (Sigma, St. Louis MO, USA)。全ての化合物は、5 mM EDTAを含有するアッセイ緩衝液で700μMのストック溶液として調製し、次いで70、7、0.7および0.07μMの溶液が得られるように緩衝液で逐次的に希釈した。各アッセイにおいて、これらの溶液の45μLを使用し、最終容量125μLを基質、酵素および緩衝液から調製した。放射測定アッセイは上記のように実施した。阻害は、PLBおよびLPL活性の場合には残存する基質(DPPCまたはリゾ-PC)のパーセントまたはLPTA活性の場合には産生されるDPPCのパーセントとして算出した。無-阻害剤対照において変換または産生される量を100%に正規化し、それに対して阻害を算出した。全てのアッセイは三つ組で実施した。
【0202】
膵臓ホスホリパーゼアッセイ。ブタ膵臓ホスホリパーゼA2の3.2M硫酸アンモニウム懸濁液(タンパク質2.9mg/mL, Sigma St. Louis MO, USA)を使用した。十分に混合した酵素の1部を4部の緩衝液(10mM Tris/HCl、pH8.2;10mM CaCl2)に添加した。次いで、試験化合物による活性および阻害は、真菌PLB活性について実施例2に記載する放射測定方法によって測定した。しかし、25μL酵素液を使用し、反応時間は1時間であった。これらの条件により、無-阻害剤対照では基質変換は〜60%であった。
【0203】
抗真菌性感受性試験。標準的な微量希釈方法によって化合物の抗真菌活性を測定した。各化合物の最小阻止濃度(MIC)は、35℃において48時間(カンジダ)および72時間(クリプトコッカス)後に増殖が見られない濃度と定義した。試験した真菌株は、クリプトコッカス・ネオフォルマンスH99、クリプトコッカス・ネオフォルマンスATCC 90112およびカンジダ・アルビカンスATCC 10231を含んだ。全ての試験は二つ組で実施した。
【0204】
アンモニウム-およびホスホニウム化合物を調査した。検討した4つの化合物の構造および一般名を図2に示す。これらの化合物は各々強力な正電苛および脂肪酸様疎水性を有する。
【0205】
アッセイは、表1に要約する最適条件を使用して、陽イオンを添加しないでpH4において実施した。これらの条件下では、PLB、LPLおよびLPTA活性(分泌型および細胞-結合型)のみを測定した。最初は、阻害剤の可能性があると思われるものを25および250μMにおいてアッセイした。次いで、幾分かの阻害を示すものを2.5および0.25μMにおいてアッセイした。
【0206】
このビス-トリブチルホスホニウム化合物(1)は、LPLまたはLPTAよりPLB活性を阻害する。重要なことに、それは細胞質ゾルおよび分泌型酵素を阻害するが、膜-結合酵素に影響を与えない(表4)。興味深いことに、それは、真菌分泌型ホスホリパーゼBよりさらに強力にブタ膵臓PLA2を阻害する(表5)。これは、真菌酵素をより強力に阻害する2つのビス-トリブチルアンモニウム化合物(2および3)と対照的であり、さらに高い選択性を達成するプラットフォームを形成する。これら3つのトリブチルビス-陽イオン化合物の抗真菌作用は極めて強力で、最高は2.5μモルのMICを有する(表6)。長さが2 CH2基増加するとMICは急激に低下し、重要なことに、長さの増加は阻害効力を増加する(表5)。四級窒素にメチル-アルキル化のみを有する化合物(4)は、酵素阻害も抗真菌作用も示さない(表4および5)。
【0207】
(表4)1,12-ビス(トリブチルホスホニウム)ドデカンジブロミド(1)によるC.ネオフォルマンス株H99ホスホリパーゼ活性の阻害

aこれらの化合物の構造および略語を図2に示す。化合物4は、これらの濃度においていかなる酵素の活性のいずれも阻害しなかった。
bデータは、少なくとも3つのアッセイの平均およびSEM(括弧内)として表す。
*阻害剤を含まない対照からの有意差、P<0.01ダネットの多重比較検定による。
c濃度はμMである。
n. d. =未決定
【0208】
(表5)二量体陽イオン化合物による分泌型クリプトコッカスH99ホスホリパーゼおよびppPLA2の阻害a)

aデータは活性の阻害率として表し、少なくとも3つのアッセイの平均である。
b構造および略語を図2に示す。
n. d. =未決定
【0209】
実施例4-抗真菌活性
C.ネオフォルマンスの2つの株およびカンジダ・アルビカンスの1つの株に対する標準化されている連続希釈感受性試験において抗真菌活性について実施例3に言及する化合物1〜4をアッセイした(表6)。2つのより強力なホスホリパーゼ阻害剤(1および3)は極めて強力で、MICは2.5〜10μMの範囲であったが、非-阻害性デカメトニウム化合物(4)はMICがきわめて大きかった(88μM〜350μM)(表6)。
【0210】
実施例5-抗真菌活性
C.ネオフォルマンス(ATCC 90122)およびC.アルビカンス(ATCC 10231)に対する標準化されている連続希釈感受性試験において抗真菌活性についてある範囲の陽イオン化合物をアッセイした。結果を表7に示す。阻害と抗真菌活性の間に良好な相関が観察された。
【0211】
(表6)C.ネオフォルマンス基準株ATCC 90112およびカンジダ・アルビカンス基準株ATCC 10231に対して試験した合成化合物のMIC

【0212】
(表7)





【0213】
実施例6
溶血活性アッセイ
ヒト血液を、抗凝固剤としてカリウム-EDTAを含有する10mL Vacutainerチューブに採血した。各Vacutainerの血液を50mLの遠心管に移し、2000xgで15分遠心分離することによってカルシウムおよびマグネシウムを含まないリン酸緩衝生理食塩液(PBS)(Gibco)で3回洗浄した。3回目の上清は無色透明であった。細胞は最高2週間PBS中で保存した。細胞のPBS懸濁液(0.5mL)に、適当な濃度(約0.5×109/mLの最終赤血球濃度)において試験物質のストック溶液(0.5mL)と混合した。ゆっくり振とうしながら混合物を37℃において1時間インキュベートし、次いで2000xgにおいて10分遠心分離した。上清をPBSで10倍希釈し、光学密度を540nmで測定した。0%および100%溶血は、細胞をそれぞれPBSまたは0.1% Triton X-100(水溶液)と共にインキュベートすることによって求めた。アッセイは三つ組で実施した。結果を表7に示す。強力な抗真菌化合物の溶血活性は、MICを50倍以上上回る濃度においてごくわずかであることが見出された。
【0214】
実施例7-インビトロにおける抗菌活性
抗菌活性について2つのビス-陽イオン化合物を試験した。使用したアッセイは、米国臨床検査標準協議会(National Committee for Clinical Laboratory Standards)2003. Methods for Dilution Antimicrobial Susceptibility Tests for Bacteria That Grow Aerobically: Approved Standard-Sixth Edition. NCCLSドキュメントM7-A6. Villanova, Pa., USAによって発表されたものであった。結果を表8に示す。
【0215】
実施例8-インビトロにおける抗真菌活性
抗真菌活性について2つのビス-陽イオン化合物を試験した。
【0216】
糸状菌(アスペルギルス; セドスポリウム; フサリウム)に使用したアッセイは、米国臨床検査標準協議会2002. Reference Method for Broth Dilution Antifungal Susceptibility Testing of Filamentous Fungi: Approved Standard. NCCLSドキュメントM38-A. Villanova, Pa., USAによって発表されたものであった。
【0217】
酵母(カンジダ;クリプトコッカス)に使用したアッセイは、Ghannoum, M. A., A. S. Ibrahim, Y. Fu, M. C. Shafiq, J. E Edwards, Jr. and R. S. Criddle. 1992. Susceptibility testing of Cryptococcus neoformans : A microdilution technique. J. Clin. Microbiol. 30: 2881-2886に発表されている、米国臨床検査標準協議会1997. Reference Method for Broth Dilution Antifungal Susceptibility Testing of Yeasts: Approved Standard. NCCLSドキュメントM27-A. Villanova, Pa., USAのものである。結果を表9に示す。
【0218】
(表8)2つのビス-アンモニウム化合物のインビトロにおける抗菌特性(MICはμg/mlおよびμMとして報告されている)

a)陽性対照はアモキシリン(FW:365.4)であった。得られたMICは8〜16μg/mlであった。
b)陽性対照はゲンタマイシン(FW:470)であった。得られたMICは1.0μg/mlであった。
c)陽性対照はアモキシリン(FW:365.4)であった。得られたMICは0.25〜0.50μg/mlであった。
d)陽性対照はバンコマイシン(FW:1485)であった。得られたMICは1.0μg/mlであった。
e)陽性対照はアモキシリン(FW:365.4)であった。得られたMICは0.06〜0.12μg/mlであった。
f)陽性対照は存在しない。
【0219】
(表9)2つのビス-アンモニウム化合物のインビトロにおける抗真菌活性(MICはμg/mlおよびμMとして報告されている)


a)これらの皮膚糸状菌の陽性対照はイトラコナゾールであった。それは、T.ルブラム(T. rubrum)が0.3μg/ml、T.トンスランス(T. tonsurans)が1.1μg/ml、M.ジプセウム(M. gypseum)が0.9μg/ml、M. カニス(M. canis)が0.6μg/mlのMICを有する。
【0220】
実施例9
ホスホリパーゼ阻害剤に対すする皮膚糸状菌の感受性
糸状菌の米国臨床検査標準協議会(NCCLS)ドキュメントM38-Pに記載されている方法を使用し、Fernandez-Torres et al, Current topics in Medical Mycology, 14-19 Feb 1999によって記載されている皮膚糸状菌に特異的な改良を加えて単離株を試験した。
【0221】
材料および方法
試験生物
5種類の皮膚糸状菌単離株、すなわち;T. ルブラム、T. メンタグロフィテス(T. mentagrophytes)、T.トンスランス、M.カニスおよびM.ジプセウムで、それらは全てリパーゼを産生し、ホスホリパーゼを産生するものもある。これらの単離株は、選択した抗真菌剤に対する活性について、NCCLSドキュメントM38-Pによるブロス微量希釈方法によって試験した。また、無作為に選択したT.トンスランスの10の単離株も試験した。全ての単離株はSDA上で28℃において維持した。基準対照生物としてカンジダ・パラシローシス(Candida parapsilosis)(ATCC 20019)を使用した。
【0222】
抗真菌化合物
1,12ビス(トリブチルアンモニウム)ドデカン、ジブロミド(VS1-32)-以下:

イトラコナゾール(ITRA)(Janssen, Cilag, Beerse, Belgium)およびテルビナフィン(TRB) (Novartis, Basel, Switzerland)は標準的な粉末として業者からの提供を受け、基準薬剤として使用した。
【0223】
ブロス培地
使用した微量希釈プレートは、L-グルタミンを含有し、炭酸水素ナトリウムを含有せず、0.165M (MOPS)モルホリンプロパンスルホン酸(Sigma)でpH7.0に緩衝化した25℃の単一ロットのRPMI 1640基礎培地(JRH bioScience Inc. Lenexa, Kansas, USA)であった。
【0224】
ブロス微量希釈手法
ストック溶液の調製
ストック溶液の調製は、NCCLS M38-Pに記載されているガイドラインを幾分か変更したものによるかまたは製造業者の指示により実施した。
【0225】
粉末状の薬剤を100%ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、最終試験濃度より100倍高い濃度とした。化合物は全て100%(DMSO)で調製した。ITRAおよびTRBでは、100% DMSOで最終濃度の100倍の2倍薬剤希釈を調製し、次にRPMI培地でさらに1:50に希釈して試験に必要な最終強度の2×とした。
【0226】
イトラコナゾール10,000μg/ml溶液をさらに1:10に希釈して1:1000濃度とした。少量の薬剤を-70℃で凍結した。試験日に少量を融解し、さらに希釈して32μg/mlの2×薬剤濃度(例えば、7.56mlのRPMI中の0.25mgの1:1000薬剤溶液)。ITRAの試験濃度範囲は0.03〜16μg/mlであった。テルビナフィン、1000μg/ml溶液も少量を-70℃において凍結した。試験日に、さらに1:50希釈して、20μg/ml濃度とした(例えば、24.5mlのRPMIに対して0.5ml)。最後に、さらに1:10に希釈して、2μg/ml濃度(例えば、9mlのRPMIに対して1ml)とした。TRBについて試験した濃度範囲は0.0019〜1μg/mlであった。
【0227】
1,12ビス(トリブチルアンモニウム)ドデカン、ジブロミドの濃度範囲は0.45〜244μg/mlであった。
【0228】
真菌接種材料の調製
真菌培養物をジャガイモデキストロース寒天で継代培養し、28℃において7〜10日間増殖させた。真菌懸濁液を5mlの蒸留水で覆い、次いでコロニーを綿棒で掻き取った。得られた分生子と菌糸の混合物を取り、滅菌チューブに移し、次いでガラスビーズと共にボルテックスした。粒子が沈んだら、上層の均一な懸濁液を回収し、密度を530nmの波長の0.5McFarland標準にデンシトメーターで調整した。次いで、これらのストック懸濁液をRPMI培地で1:50に希釈して、0.3×104〜9×104CFU/mlの範囲の最終作業接種濃度を得た。接種材料の定量は、調整後の接種材料の1:1000希釈の100μlをSDAプレートで平板培養して実施し、28℃においてインキュベートし、7日のインキュベーション後、コロニーを数えた。
【0229】
試験手法
試験は、糸状菌を試験するNCCLS M38-Pドキュメントに基づいて行われた。試験は、滅菌した96-ウェル平底マイクロタイタープレートで実施した。カラム1および3〜12は100μlのRPMI培地を充填し、カラム2は何も充填しなかった。カラム1、2および3は2×薬剤濃度の100μlを充填した。次いで、カラム3の100μlをカラム11までの各カラムに移すことによって連続希釈を作製し、カラム11の100μlを破棄した。カラム12は薬剤を含まない増殖対照とした。最後に、接種材料懸濁液の100μlを、滅菌対照としたカラム1を除く全てのウェルに添加した(カラム1および12は、それぞれ滅菌および増殖対照とした)。プレートを28℃において7日間インキュベートし、インキュベーション3日目および7日目に読んだ。試験は全て二つ組で別個に3回実施した。
【0230】
MICエンドポイントの決定
マイクロタイタートレーにおける増殖は、照明付き-リバースミラーを使用することによって目視検査によって読んだ。各ウェルの増殖を「増殖対照」の薬剤を含まないウェルと比較した。全ての薬剤のMICエンドポイントは100%増殖阻止が見られた最初のウェルであるように選択した(すなわち、増殖を阻止する最も低い薬剤濃度)。
【0231】
結果
ITRAのMIC範囲は0.03〜2.0μg/mlで、TRBは0.007〜0.25μg/mlであった(表10および11)。
【0232】
1,12-ビス(トリブチルアンモニウム)ドデカン、ジブロミド、VS1-32はT.トンスランスおよびM.ジプセウムに対して1.9〜7.6μg/mlのMIC範囲を有した。最も低いGMはT.トンスランスに対してであった。最も高いGMはM.カニスであった。
【0233】
(表10)皮膚糸状菌単離株に対する選択した抗真菌化合物のMIC値

【0234】
(表11)10種類のT.トンスランス単離株のMIC値


【0235】
VS1-32はクリプトコッカス・ネオフォルマンスH99およびC.アルビカンス(ATCC10231)ホスホリパーゼを阻害し、それらの酵母に対する殺真菌活性も有する。本発明の検討では、VS1-32の平均MICは全ての単離株において比較的高かった(2.625〜7.61μg/ml)。
【0236】
実施例10-製剤
本発明の抗微生物化合物は単独で投与してもよいが、それらは製剤として投与してもよい。例えば、活性成分は、局所投与には、製剤の0.001重量%〜10重量%、さらに典型的には、製剤の1重量%〜5重量%を含んでもよいが、10重量%までも含んでよい。
【0237】
例として、本発明による薬学的組成物の具体的な例を以下に概略する。以下は製剤の例示的にすぎない例として考慮されるべきであり、いかなる意味においても本発明の範囲を限定するものと考慮されるべきではない。
【0238】
実施例10(a)-局所クリーム組成物
局所クリームとして送達するための典型的な組成物を以下に概略する:
式(I)の化合物1.0g
ポラワックス(Polawax)GP200 25.0g
無水ラノリン3.0g
白色ミツロウ4.5g
ヒドロキシ安息香酸メチル0.1g
100.0gまでの脱イオンおよび滅菌水
【0239】
ポラワックス、ミツロウおよびラノリンを60℃において加熱し、ヒドロキシ安息香酸メチル溶液を添加し、高速撹拌を使用して均一にする。次いで、温度を50℃に低下させる。次いで、式(I)の化合物を添加し、全体に分散し、低速撹拌で組成物を冷却させる。
【0240】
実施例10(b)-局所ローション組成物
局所ローションとして送達するための典型的な組成物を以下に概略する:
式(I)の化合物1.2g
モノラウリン酸ソルビタン0.8g
ポリソルベート20 0.7g
セトステアリルアルコール1.5g
グリセリン7.0g
ヒドロキシ安息香酸メチル0.4g
約100.00mlまでの滅菌水
【0241】
ヒドロキシ安息香酸メチルおよびグリセリンを75℃において70mlの水に溶解する。モノラウリン酸ソルビタン、ポリソルベート20およびセトステアリルアルコールを一緒に75℃において融解し、水溶液に添加する。得られたエマルジョンを均一にし、連続的に撹拌して冷却させ、式(I)の化合物を、残りの水の懸濁液として添加する。懸濁液全体を均一になるまで撹拌する。
【0242】
実施例10(c)-点眼組成物
点眼剤として送達するための典型的な組成物を以下に概略する:
式(I)の化合物0.3g
ヒドロキシ安息香酸メチル0.005g
ヒドロキシ安息香酸プロピル0.06g
約100.00mlまでの精製水。
【0243】
ヒドロキシ安息香酸メチルおよびプロピルを75℃において70mlの精製水に溶解し、得られた溶液を冷却させる。次いで、式(I)の化合物を添加し、膜フィルター(孔サイズ0.22μm)でろ過して溶液を滅菌し、無菌的に滅菌容器に充填する。
【0244】
実施例10(d)-エアゾール組成物
容量20〜30 mlのエアゾール容器には:式(I)の化合物の10 mgとポリソルベート 85またはオレイン酸などの0.5〜0.8重量%の潤滑剤をフレオンなどの噴射剤に分散させ、鼻腔内もしくは経口吸入投与または局所適用に適当なエアゾール容器に充填する。
【0245】
実施例10(e)-非経口投与のための組成物
筋肉内注射のための本発明の薬学的組成物は、1mLの滅菌緩衝液および1mgの式(I)の化合物を含有するように調製してもよい。同様に、静脈内注入のための薬学的組成物は、250mlの滅菌リンガー液および5mgの式(I)の化合物を含んでもよい。
【0246】
実施例10(f)-カプセル組成物
カプセルの形態の式(I)の化合物の薬学的組成物は、標準的なツーピース硬ゼラチンカプセルに粉末状の50mgの式(I)の化合物、100mgのラクトース、35mgのタルクおよび10mgのステアリン酸マグネシウムを充填することによって調製することができる。
【0247】
実施例10(g)-注射用非経口組成物
注射による投与に好適な形態の本発明の薬学的組成物は、1重量%の式(I)の化合物を10容量%のプロピレングリコールおよび水中で混合することによって調製することができる。溶液をろ過滅菌する。
【0248】
実施例10(h)-軟膏
軟膏として送達するための典型的な組成物は、1.0gの式(I)の化合物と100.0gまでの白色軟パラフィンを分散させて、均一で滑らかな製品にしたものを含む。
【0249】
実施例10(i)-ゲル組成物
経皮的ゲルは以下に概略するように調製することができる:
式(I)の化合物1.0g
プロピレングリコール5.0g
イソプロピルアルコール20.0g
カルボキシビニルポリマー2.0g
アンモニア水溶液を適量
精製水72.0g
【0250】
式(I)の化合物をプロピレングリコールおよびイソプロピルアルコールの混合溶媒に分散する。精製水中で膨潤させてから、カルボキシビニルポリマーを溶液に添加する。撹拌後、アンモニア水溶液で混合物をpH7に調整する。
【0251】
実施例10(j)-粉末組成物
6.0gのカゼイン酸ナトリウム、3.0gのキサンタンガムおよび60.0gの水を室温において30分混合することによって粉末組成物を調製することができる。この水相に、溶液を撹拌しながら2.0gの式(I)の化合物を添加して、pH約7のエマルジョンを形成する。エマルジョンをホモジナイズし、エマルジョンを加熱することによって脱水して乾燥粉末粒子を形成する。次いで、乾燥後の粉末を篩過して、メッシュサイズ120〜180μmの微細な粉末粒子を得る。
【0252】
本発明の好ましい形態は、添付の図面を参照して例としてここで記載されている:

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)

(I)
(式中
Y1およびY2は同じであってもまたは異なってもよく、独立に、NおよびPから選択され;
R1〜R6は同じであってもまたは異なってもよく、独立に、置換されていてもよいC1-10アルキル、置換されていてもよいC2-10アルケニル、置換されていてもよい C2-10アルキニル、置換されていてもよい C3-10シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアラルキル、置換されていてもよいヘテロアリールおよび置換されていてもよいヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、該置換基は、独立に、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、O(C1-6アルキル)、C(O)O(C1-6アルキル)、OC(O)(C1-6アルキル)、NO2、アミノ、ヒドロキシCl-6アルキル、アリール、OC(O)Phおよび=C(Ph)2から選択される;または
R1およびR2は、それらが結合しているY1基と一体として、またはR1、R2およびR3は、それらが結合しているY1基と一体として任意にヘテロシクロアルキル基を形成してもよく;R4およびR5は、それらが結合しているY2基と一体として、またはR4、R5およびR6は、それらが結合しているY2基と一体として任意にヘテロシクロアルキル基を形成してもよく;該ヘテロシクロアルキル基の各々は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、O(C1-6アルキル)、C(O)O(C1-6アルキル)、OC(O)(C1-6アルキル)、NO2、アミノ、ヒドロキシCl-6アルキル、アリール、OC(O)Phおよび=C(Ph)2から選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;
R7、R7'、R8およびR8'は同じであってもまたは異なってもよく、独立に、水素、FおよびClから選択され;
Aは、置換されていてもよいアルキレン、置換されていてもよいアルケニレン、置換されていてもよいアルキニレン、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいC5-7シクロアルキルおよび-C(O)-から選択される1つまたは複数の基を含み、Aの長さは炭素原子数5〜18であり、置換基は、独立に、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、N02、C(O)R10、OR11、CH20R11、CH2NR12R13、SR11、NR12R13、CONR12R13、アミノ酸、ジペプチジル、トリペプチジル、テトラペプチジルおよびペンタペプチジルから選択され;
R10は、OH、OR11、C1-6アルキルから選択され;
R11は、水素、置換されていてもよいC1-10アルキル、置換されていてもよいC2-10アルケニル、置換されていてもよい C2-10アルキニル、置換されていてもよい C3-10シクロアルキル、置換されていてもよいアリールおよび置換されていてもよいアラルキルからなる群から選択され、該任意の置換基は、独立に、C1-4アルキル、ヒドロキシルおよびハロゲンから選択され;
R12およびR13は、独立に、水素、置換されていてもよいC1-10アルキル、置換されていてもよいC2-10アルケニル、置換されていてもよい C2-10アルキニル、置換されていてもよい C3-10シクロアルキル、置換されていてもよいアラルキル、置換されていてもよいアルキルヘテロアリールからなる群から選択され、該置換基は、独立に、C1-4アルキル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノおよびC(O)OR11から選択される;または
R12およびR13は、それらが結合している窒素原子と一体として、置換されていてもよいヘテロシクロアルキル基を形成してもよく、該置換基は、独立に、C1-4アルキル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノおよびC(O)OR11から選択される)の化合物およびその塩であるが、ただし式(I)の化合物が以下:




から選択されない化合物およびその塩。
【請求項2】
Y1およびY2が各々Nである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R7、R7'、R8およびR8'が各々水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
R1〜R6は、独立に、置換されていてもよいC1-10アルキル、置換されていてもよい C1-10アルキレン、置換されていてもよいアリールおよび置換されていてもよいヘテロシクロアルキルからなる群から選択されるか、
R1およびR2は、それらが結合しているY1基と一体として、またはR1、R2およびR3は、それらが結合しているY1基と一体としてヘテロシクロアルキル基を形成し;R4およびR5は、それらが結合しているY2基と一体として、またはR4、R5およびR6は、それらが結合しているY2基と一体としてヘテロシクロアルキル基を形成し;
任意の置換基は、独立に、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、O(C1-6アルキル)、C(O)O(C1-6アルキル)、OC(O)(C1-6アルキル)、NO2、アミノ、ヒドロキシCl-6アルキルおよびアリールから選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
Aは、置換されていてもよいアルキレン、置換されていてもよいアルケニレン、置換されていてもよいフェニルおよび-C(O)-から選択される1つまたは複数の基を含み、置換基は、独立に、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、ヒドロキシル、ハロゲン、N02、C(O)R10、OR11、CH20R11、CH2NR12R13、SR11、NR12R13、CONR12R13、アミノ酸、ジペプチジル、トリペプチジル、テトラペプチジルおよびペンタペプチジルから選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
Aの長さが炭素原子数5〜9である、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
式(Ia)

(Ia)
(式中
Y1およびY2は同じであってもまたは異なってもよく、独立に、NおよびPから選択され;
R1〜R6は同じであってもまたは異なってもよく、独立に、置換されていてもよいC1-10アルキル、置換されていてもよいC2-10アルケニル、置換されていてもよい C2-10アルキニル、置換されていてもよい C3-10シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリールおよび置換されていてもよいヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、該置換基は、独立に、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、ヒドロキシル、ハロゲン、O(C1-6アルキル)、C(O)O(C1-6アルキル)、NO2、アミノ、ヒドロキシCl-6アルキル、アリールおよびOC(O)Phから選択される;または
R1およびR2は、それらが結合しているY1基と一体として任意にヘテロシクロアルキル基を形成してもよく;R4およびR5は、それらが結合しているY2基と一体として任意にヘテロシクロアルキル基を形成してもよく;該ヘテロシクロアルキル基の各々は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、ヒドロキシル、ハロゲン、O(C1-6アルキル)、C(O)O(C1-6アルキル)、アミノ、ヒドロキシCl-6アルキルおよびアリールから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;
Aは、置換されていてもよいアルキレン、置換されていてもよいアルケニレンおよび置換されていてもよいフェニルから選択される1つまたは複数の基を含み、Aの長さは炭素原子数5〜18であり、置換基は、独立に、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ハロゲン、C(O)R10、OR11、SR11、CH2OR11、CH2NR12R13、NR12R13、CONR12R13、アミノ酸、ジペプチジル、トリペプチジル、テトラペプチジルおよびペンタペプチジルから選択され;
R10は、OH、OR11、C1-6アルキルから選択され;
R11は、水素、置換されていてもよいC1-10アルキル、置換されていてもよいC2-10アルケニル、置換されていてもよい C2-10アルキニル、および置換されていてもよい C3-10シクロアルキルからなる群から選択され、該任意の置換基は、独立に、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、アリールおよびヒドロキシルから選択され;
R12およびR13は、独立に、水素、置換されていてもよいC1-10アルキル、置換されていてもよいC2-10アルケニル、置換されていてもよい C2-10アルキニル、置換されていてもよい C3-10シクロアルキル、置換されていてもよいアルキルヘテロアリールからなる群から選択され、該置換基は、独立に、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、アリール、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノおよびC(O)OR11から選択される;または
R12およびR13は、それらが結合している窒素原子と一体として、置換されていてもよいヘテロシクロアルキル基を形成してもよく、該置換基は、独立に、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノおよびC(O)OR11から選択される)の化合物およびその塩。
【請求項8】
1,11-ビス-(トリブチルアンモニウム)ウンデカン、1,16-ビス-(トリブチルアンモニウム)ヘキサデカン、1,12-ビス-(トリペンチルアンモニウム)ドデカン、1,12-ビス-(トリヘキシルアンモニウム)ドデカン、1,12-ビス-(トリオクチルアンモニウム)ドデカン、1,12-ビス-(トリイソブチルアンモニウム)ドデカン、1,12-ビス- (トリイソペンチルアンモニウム)ドデカンおよび1,12-ビス- (1-ブチルピロリジニウム)ドデカンから選択される、請求項1記載の化合物ならびにその塩。
【請求項9】
脊椎動物の微生物感染症の治療方法、阻止方法および予防方法のうちの1つまたは複数であって、式(II)

(II)
(式中
Y1およびY2は同じであってもまたは異なってもよく、独立に、NおよびPから選択され;
R1〜R6は同じであってもまたは異なってもよく、独立に、置換されていてもよいC1-10アルキル、置換されていてもよいC2-10アルケニル、置換されていてもよい C2-10アルキニル、置換されていてもよい C3-10シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアラルキル、置換されていてもよいヘテロアリールおよび置換されていてもよいヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、該置換基は、独立に、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシル、ハロゲン、O(C1-6アルキル)、C(O)O(C1-6アルキル)、NO2、アミノ、ヒドロキシCl-6アルキル、アリール、OC(O)Phおよび=C(Ph)2から選択される;または
R1およびR2は、それらが結合しているY1基と一体として、またはR1、R2およびR3は、それらが結合しているY1基と一体として任意にヘテロシクロアルキル基を形成してもよく;R4およびR5は、それらが結合しているY2基と一体として、またはR4、R5およびR6は、それらが結合しているY2基と一体として任意にヘテロシクロアルキル基を形成してもよく;該ヘテロシクロアルキル基の各々は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、ヒドロキシル、およびハロゲン、O(C1-6アルキル)、C(O)O(C1-6アルキル)、NO2、アミノ、ヒドロキシCl-6アルキル、アリールおよび=C(Ph)2から選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;
R7、R7'、R8およびR8'は同じであってもまたは異なってもよく、独立に、水素、FおよびClから選択され;
Aは、置換されていてもよいアルキレン、置換されていてもよいアルケニレン、置換されていてもよいフェニル、置換されていてもよいC5-7シクロアルキルおよび-C(O)-から選択される1つまたは複数の基を含み、Aの長さは炭素原子数4〜18であり、置換基は、独立に、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、ヒドロキシル、ハロゲン、ニトロ、C(O)R10、OR11、CH20R11、CH2NR12R13、SR11、NR12R13、CONR12R13、アミノ酸、ジペプチジル、トリペプチジル、テトラペプチジルおよびペンタペプチジルから選択され;
R10は、OH、OR11、C1-6アルキル、置換されていてもよいアミノ-C1-6-アルキルスルホネート、置換されていてもよいアミノ-C1-6-アルキルホスホネート、置換されていてもよいアミノ-Cl-6-アルキル-グアニジニル および 置換されていてもよいアミノ-C1-6-アルキル-トリ (C1-6-アルキル)アンモニウムから選択され;
R11は、水素、置換されていてもよいC1-10アルキル、置換されていてもよいC2-10アルケニル、置換されていてもよい C2-10アルキニル、置換されていてもよい C3-10シクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアリールアルキル、置換されていてもよいアミノ-C1-6-アルキルスルホネート、置換されていてもよいアミノ-C1-6-アルキルホスホネート、置換されていてもよいアミノ-Cl-6-アルキル-グアニジニル および 置換されていてもよいアミノ-C1-6-アルキル-トリ (C1-6-アルキル)アンモニウムからなる群から選択され、該任意の置換基は、独立に、C1-4アルキル、ヒドロキシルおよびハロゲンから選択され;
R12およびR13は、独立に、水素、置換されていてもよいC1-10アルキル、置換されていてもよいC2-10アルケニル、置換されていてもよい C2-10アルキニル、置換されていてもよい C3-10シクロアルキル、置換されていてもよいアリールアルキル、置換されていてもよいアルキルヘテロアリール、置換されていてもよいアミノ-C1-6-アルキルスルホネート、置換されていてもよいアミノ-C1-6-アルキルホスホネート、置換されていてもよいアミノ-Cl-6-アルキル-グアニジニル および 置換されていてもよいアミノ-C1-6-アルキル-トリ (C1-6-アルキル)アンモニウムからなる群から選択され、該置換基は、独立に、C1-3アルキル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノおよびC(O)OR11から選択される;または
R12およびR13は、それらが結合している窒素原子と一体として、置換されていてもよいヘテロシクロアルキル基を形成してもよく、該置換基は、独立に、C1-3アルキル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノおよびC(O)OR11から選択される)
の少なくとも1つの化合物の有効量を該脊椎動物に投与する段階を含む方法。
【請求項10】
化合物が請求項1に定義される式(I)の化合物である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
微生物感染症が、細菌、真菌、ウイルスおよび寄生虫感染症の1つまたは複数から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項12】
感染症が真菌感染症である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
感染症が細菌感染症である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
式(I)の少なくとも1つの化合物または式(II)の少なくとも1つの化合物の有効量を生物に接触させる段階を含む、生物のホスホリパーゼを阻害する方法。
【請求項15】
生物が細菌、真菌、ウイルスおよび寄生虫から選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
ホスホリパーゼがホスホリパーゼBである、請求項14記載の方法。
【請求項17】
抗微生物的性質を有すると思われる式(I)または式(II)の化合物を微生物細胞に接触させる段階、ホスホリパーゼ酵素の阻害が抗微生物活性を示す該化合物が微生物ホスホリパーゼ酵素を阻害するかどうかを判定する段階、およびそれによって抗微生物剤を同定する段階を含む、抗微生物剤を同定する方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−102126(P2012−102126A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−288721(P2011−288721)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【分割の表示】特願2006−538605(P2006−538605)の分割
【原出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(500026418)ザ・ユニバーシティ・オブ・シドニー (13)
【Fターム(参考)】