説明

ビスエポキシポリエステルおよびこのビスエポキシポリエステルを含む組成物でコーティングされた食品用缶

ポリオールと、モノおよび/またはジフェノール性のカルボン酸および/またはカルボン酸エステルと反応させたビスエポキシとの反応生成物を含むポリエステルが開示される。これらのポリエステルを含む組成物で内側の少なくとも一部をコーティングした食品用缶も開示される。食品用缶に用いられる組成物は、BPAおよびBPFを実質的に含まず、ならびにBADGEおよびBFDGEを実質的に含まない。酸性媒体中での分子量の減少が50%未満であるポリエステルを含む組成物で、内側の少なくとも一部をコーティングした食品用缶も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオールと、モノおよび/またはジフェノール性のカルボン酸および/またはカルボン酸エステルと反応したビスエポキシとの反応生成物を含むポリエステルに関する。本発明はさらに、そのようなポリエステルを含む組成物でコーティングされた食品用缶に関する。本発明はさらに、酸性媒体中での分子量の減少が50%未満であるポリエステルを含む組成物でコーティングされた食品用缶に関する。
【背景技術】
【0002】
腐食を遅延または抑制するための、様々な処理溶液および前処理溶液の金属への塗布は十分に確立されている。これは食品および飲料用金属缶の分野では特に当てはまる。そのような容器の内側にコーティングを施して、内容物が容器の金属に触れるのを防ぐ。金属と食品または飲料との間の接触は金属容器の腐食を引き起こし、これはひいては食品または飲料を汚染する恐れがある。缶の内容物が、トマトベースの製品およびソフトドリンクなど、本来酸性である場合、これは特に当てはまる。食品および飲料用缶の内側に塗布されたコーティングは、食品の上端線と缶のふたとの間の領域である、缶の上部空間の腐食を防ぐのにも役立ち得る。上部空間の腐食は、高い塩分含量を有する食品において特に問題となる。
【0003】
腐食からの保護に加えて、食品および飲料用缶のためのコーティングは非毒性であるべきであり、缶の中の食品または飲料の風味に悪影響を及ぼすべきでない。「ワキ(発泡跡)(popping)」、「白化」、および/または「膨れ」に対する耐性も望まれる。
【0004】
ある種のコーティングは特に、コイル状の金属素材、例えばそれを原料として缶の端面(end)が作られるコイル状の金属素材「缶端面素材(can end stock)」などへの塗布に適用できる。缶端面の素材に使用することを意図したコーティングは、缶端面がコイル状の金属素材から切り取られ打ち抜かれる前に施されるため、そのコーティングは通常柔軟性および/または伸長性でもある。例えば、缶端面の素材は通常両面にコーティングされる。その後、コーティングした金属素材を打ち抜き、「引き上げ式」の開け口のために切り込み線を入れ、次いで別々に製造された引き上げ式のリングをピンで取り付ける。次いで、縁部の圧延工程により端部を缶本体へ取り付ける。したがって、缶端面の素材に施されるコーティングは他の上記で論じた望ましい特徴のいくつかまたはすべてに加えて、通常、広範囲の製造工程に耐えることができるように、ある程度の強靱性および柔軟性を有する。
【0005】
様々なエポキシ系コーティングおよびポリ塩化ビニル系コーティングが、金属缶の内側を被覆して腐食を防ぐために過去に用いられてきた。ポリ塩化ビニルまたは関連するハロゲン化物含有ビニルポリマーを含む材料のリサイクルは、毒性の副生成物を生じる恐れがあるが、さらにこれらのポリマーは通常エポキシ官能性可塑剤と共に配合されている。さらに、エポキシ系コーティングは、ビスフェノールA(「BPA」)、ビスフェノールF(「BPF」)、およびこれらのジグリシジルエーテル(すなわち、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(「BADGE」)およびビスフェノールFジグリシジルエーテル(「BFDGE」))などのモノマーから調製され、これらの化合物のうちいくつかは健康への負の影響を有すると報告されてきた。残留する未反応のエポキシを、例えば酸性官能性ポリマーで捕捉する試みがなされてきたが、これは問題に十分に対処しておらず、いくらかの遊離BADGE/BFDGEまたはそれらの副生成物が依然として残ることになる。政府当局、特に欧州では、遊離BPA、BPF、BADGE、BFDGE、および/またはそれらの副生成物の許容可能な量を制限している。しかしこれらの要求を満たす多くの組成物は、酸触媒の存在下で容易に分解するポリエステルなどのように、安定性が乏しいことがある。したがって、BPA、BPF、BADGE、BFDGE、および/またはハロゲン化ビニル製品を実質的に含まない食品用および飲料用缶のライナーが必要とされている。酸性媒体中での耐分解性を有するそのような缶のライナーが特に望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
a)ポリオールと
b)モノおよび/またはジフェノール性のカルボン酸および/またはカルボン酸エステルと反応させたビスエポキシと
の反応生成物を含むポリエステルを対象としている。
【0007】
本発明はさらに、
a)ポリオールと
b)モノおよび/またはジフェノール性のカルボン酸および/またはカルボン酸エステルと反応させたビスエポキシと
の反応生成物を含んだポリエステルを含む組成物で、内側の少なくとも一部をコーティングした食品用缶を対象としており、この組成物は実質的にBPAおよびBPFを含まず、実質的にBADGEおよびBFDGEを含まない。
【0008】
本発明はさらに、酸性媒体中での分子量の減少が50%未満であるポリエステルを含む組成物で、内側の少なくとも一部をコーティングした食品用缶を対象としている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、
a)ポリオールと
b)モノおよび/またはジフェノール性のカルボン酸および/またはカルボン酸エステルと反応させたビスエポキシと
の反応生成物を含むポリエステルを対象としている。「ポリオール」という用語は本明細書において、2つまたはそれを超えるヒドロキシ基を有する任意の化合物を指すのに用いられる。適切なポリオールには、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコール、水素化ビスフェノールA、シクロヘキサンジオール、1,3−プロパンジオール、グリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、カプロラクトンジオール(例えば、ε−カプロラクトンおよびエチレングリコールの反応生成物)、ヒドロキシアルキル化ビスフェノール、ポリエーテルグリコール(例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールなど)が含まれるが、それらに限定されない。より高い官能性のポリオールも、それらが柔軟性に悪影響を及ぼさないならば、限られた量で使用してもよい。トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどが例に含まれる。
【0010】
ポリオールを、ビスエポキシとモノおよび/またはジフェノール性のカルボン酸および/またはカルボン酸エステルとの反応生成物と反応させる。用語「ビスエポキシ」は、末端エポキシ基などの2つのエポキシ基を有する任意の化合物を指す。適切なビスエポキシ化合物には、ジグリシジルエステルおよび/またはエーテルが含まれる。水素化された2つのフェノール環を有するジグリシジルエステル(Hexionから市販されている、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルであるEponex1510など)、および1つのフェノール環を有するジグリシジルエーテル(レゾルシノールジグリシジルエーテルなど)が特に適切である。ある種のビスエポキシ化合物は、一般式(I):
【0011】
【化1】

を有していてもよく、式中、Rはアルキル、シクロアルキル、またはアリール部分であり、各Xは同じまたは異なっており、O、CR、またはNRのいずれかであり、ここでRはHまたはアルキルである。
【0012】
ビスエポキシのエポキシ基はフェノール性カルボン酸および/またはカルボン酸エステルのヒドロキシ基と反応して、ビスカルボン酸またはビスエステルを生成することが認識されるであろう。次いでビスカルボン酸またはビスエステルはポリオールと反応してポリエステルを生成する。ビスエポキシは通常、フェノール性カルボン酸および/またはカルボン酸エステルと1.1:2、例えば1.5:2、または1:1.5、または1:>1〜2、または1:2の比で反応する。モノフェノールカルボン酸/エステルが特に適切であり、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、イソプロピルパラベン、および/またはベンジルパラベンなどの、パラヒドロキシ安息香酸すなわち「パラベン」のエステルが含まれる。適切なジフェノールカルボン酸/エステルには、ジフェノール酸が含まれる。1つを超えるOH基を有するフェノール性カルボン酸および/またはカルボン酸エステルを用いる場合、生成物のゲル化を防ぐように条件を維持するべきであることが認識されるであろう。
【0013】
通常、このポリエステルの重量平均分子量(「Mw」)は4,000以上、例えば11,000以上、例えば14,000〜15,000、またはこれよりさらに多い。本発明のある種のポリエステルは、酸性媒体中で特に良好な耐分解性を有することが見いだされている。より具体的には、これらのポリエステルは酸性媒体中での分子量の減少が50%未満、例えば40%未満、30%未満、または20%未満である。実施例で実証されるように、本発明のある種のポリエステル、およびそれらを入れたコーティングは、他のポリエステルおよびそれを含有するコーティングと比較して、酸性媒体中での耐分解性または分子量減少に対する耐性がはるかに高い。そのような分解はポリエステルコーティングの性能を制限する恐れがあるため、これは重要な発見である。本明細書で用いる場合「酸性媒体」および同様の用語は、5未満、例えば3未満のpK(1つを超える酸を用いる場合は平均のpK)を有する酸が、ポリエステル固体1グラムあたり約0.02当量の濃度で存在する媒体を指す。ポリエステル系組成物の硬化に通常用いられる任意の数の酸触媒を用いると、酸性媒体が生じ得ることが認識されるであろう。したがってそのような環境における耐分解性(例えば分子量の減少として測定される)は重要である。ポリエステルまたはポリエステルコーティングの分子量減少が50%未満、40%未満、30%未満、または20%未満であるかどうかは、そのポリエステルまたはポリエステルコーティングを酸性媒体中に置き、実施例に記載するように試料を処理し、分子量減少を測定することにより、当業者によって決定することができる。
【0014】
ある実施形態において、ポリエステルはアクリルをグラフト接合することができる部分を組み入れている。例えば、そのような部分は、無水マレイン酸をビスカルボン酸/エステルと反応させることにより導入することができる。マレイン酸、フマル酸/無水フマル酸、イタコン酸/無水イタコン酸、およびクロトン酸/無水クロトン酸などの、アクリルとグラフト化すると思われる他のモノマーも用いることができる。当技術分野の標準的な技術を用いて、例えばアクリルモノマーをポリエステルに加え、フリーラジカル開始剤を用いてアクリルを重合させることなどにより、グラフト共重合体を生成させることができる。
【0015】
本発明はさらに、上記の1つまたは複数のポリエステルを含む組成物で、内側の少なくとも一部をコーティングした食品用缶を対象としている。本明細書において用語「食品用缶」は、任意の種類の食品または飲料を入れるのに用いられる缶、容器、または任意の種類の金属容器またはその一部を指すのに用いられる。例えば、用語「食品用缶」は特に「缶の端面」を含み、これは典型的には缶端面の素材から打ち抜かれ、飲料のパッケージングと同時に用いられる。
【0016】
組成物はBPAおよびBPFを実質的に含まない。1つまたは複数のこれらの成分は、微量または少量、例えば10重量%以下、5重量%以下、2またはさらには1重量%以下(重量%は総固体重量を基準とする)で存在してもよく、まだなお「BPAおよびBPFを実質的に含まない」ことが理解されるであろう。組成物はBADGEおよびBFDGEも実質的に含まない。この場合も、BADGEは微量または少量、例えば10重量%以下、5重量%以下、2またはさらには1重量%以下(重量%は総固体重量を基準とする)で存在してもよく、まだなお「BADGEおよびBFDGEを実質的に含まない」ことが理解されるであろう。
【0017】
本発明のある実施形態は、
a)ポリオールと、
b)モノおよび/またはジフェノール性のカルボン酸および/またはカルボン酸エステルと反応させたビスエポキシと
の反応生成物を含んだポリエステルを含む、実質的にポリエステルから成る組成物で、内側の少なくとも一部をコーティングした食品用缶を対象としている。これらの組成物はBPAおよびBPFを実質的に含まない、および/またはBADGEおよびBFDGEを実質的に含まないものであってよい。
【0018】
本発明に従って用いられる組成物は、架橋剤をさらに含むことができる。適切な架橋剤は使用者の必要性および要望に基づいて決定することができ、例えばアミノプラスト架橋剤、フェノール架橋剤、ブロックイソシアナート、および1,3,5−トリアジンカルバマートが含まれうる。アミノプラスト架橋剤は、メラミン系、ウレア系、またはベンゾグアナミン系であってよい。メラミン架橋剤は、例えばCytec Industries,Inc.からCYMEL303、1130、325、327、および370としてなど、広く市販されている。フェノール架橋剤には、例えばノボラック、およびレゾールが含まれる。最終生成物がなお「実質的にBPAを含まない」ならば、ビルフェノールAも架橋剤として用いることができる。食品用缶の使用においては、ビルフェノールAに由来しないフェノールレゾールが特に適切である。
【0019】
本発明に従って用いられる組成物は通常、本明細書に記載される70重量%を超えるポリエステルを含み、ここで重量%は組成物の総固体重量を基準とする。典型的には、ポリエステルは70〜99重量%、例えば80〜99重量%の範囲で存在するであろう。架橋剤は典型的には1〜30重量%、例えば2〜5重量%の量で存在し、この場合も重量%は総固体重量を基準とする。ある実施形態において、組成物中の架橋剤の重量%は総固体重量を基準として10重量%以下、例えば5重量%以下である。
【0020】
本発明に従って用いられる組成物は溶媒も含んでいてもよい。適切な溶媒には、水、エステル、グリコールエーテル、グリコール、ケトン、芳香族および脂肪族炭化水素、アルコールなどが含まれる。キシレン、プロピレングリコールモノメチルアセタート、および二塩基酸エステル(アジピン酸、グルタル酸、およびコハク酸のジメチルエステルなど)が特に適切である。通常、組成物は約30〜60重量%の固形分となるように調製される。あるいは、組成物は水性であってよい。本明細書で用いる場合、「水性」とはコーティングの非固形成分の50%以上が水であることを意味する。したがって、組成物の非固形成分は50%までの溶媒を含むことができ、なお「水性」であることが理解されるであろう。
【0021】
本発明の組成物は、顔料、着色剤、ワックス、光沢剤、消泡剤、湿潤剤、可塑剤、増強剤、および触媒など、任意の他の従来の添加剤も含有することができる。任意の無機酸またはスルホン酸触媒を使用することができる。食品用缶用途に特に適切なのは、リン酸およびドデシルベンゼンスルホン酸である。
【0022】
上記のコーティング組成物は、熱溶融押し出し、ロールコーティング、スプレー、および/または電着塗装などの、当技術分野で公知の任意の方法によって食品用缶に塗布することができる。2ピース構成の食品用缶において、通常コーティングは缶の製作後にスプレーされることが理解されるであろう。他方で3ピース構成の食品用缶においては、通常まずコイルまたはシートが1つまたは複数の本発明の組成物でロールコーティングされ、次いで缶が形成されることになる。コーティングは缶の内側の少なくとも一部に塗布されるが、缶の外側の少なくとも一部に塗布することもできる。缶端面の素材については、通常コイルまたはシートが本発明の組成物の1つでロールコーティングされ、次いでコーティングを硬化させ、端面を打ち抜き、最終製品へと組み立てる。
【0023】
塗布後、次いでコーティングを硬化させる。硬化は当技術分野の標準的な方法の影響を受ける。コイルのコーティングにおいて硬化は典型的には高温(すなわち485°Fの最高金属温度)で短い保持時間(すなわち9秒〜2分)であり、コーティングした金属シートのための硬化は典型的にはより長い(すなわち10分)が、より低温(すなわち400°Fの最高金属温度)である。
【0024】
食品用缶の形成に用いられる任意の材料は、本発明の方法に従って処理することができる。特に適切な基材には、クロム処理アルミニウム、ジルコニウム処理アルミニウム、ブリキ鋼、スズフリー鋼、および黒めっき鋼(black−plated steel)が含まれる。
【0025】
ある実施形態において、最初にいかなる前処理または接着補助も金属に加えずに、本発明のコーティングを金属へ直接塗布することができる。缶端面を製造する場合など、他のある実施形態においては、前処理したアルミニウムが望ましいこともある。さらに、本発明の方法で用いられるコーティングの上部にコーティングを施す必要はない。ある実施形態において、本明細書に記載されるコーティングは食品用缶に施される最終のコーティングである。
【0026】
本発明に従って用いられる組成物は、柔軟性および耐酸性の両方の領域において所望のように機能する。意義深いことに、これらの結果は、BPAおよびBPFを実質的に含まずBADGEおよびBFDGEを実質的に含まない組成物によってもたらされうる。したがって本発明は、他の缶コーティングによって提起される機能上および健康上の問題を回避する、特に望ましいコーティングされた食品用缶を提供する。
【0027】
本発明はさらに、酸性媒体中で分子量減少が50%未満、例えば40%未満、30%未満、または20%未満であるポリエステルを含む組成物で、内側の少なくとも一部をコーティングした食品用缶を対象としている。
【0028】
本明細書で用いる場合、別途明確に指定されない限り、値、範囲、量、または百分率を表すものなどのすべての数字は、「約」という言葉を前に置くかのごとく、その言葉が明確に現れなくとも、解釈することができる。また、本明細書で挙げられるいかなる数値範囲も、そこに包括されるあらゆる部分範囲を含むことを意図している。単数形は複数形を包含し、その逆も同様である。例えば、本明細書において「a」ポリオール、「a」ビスエポキシ、「a」フェノール酸、および/またはエステル、「a」架橋剤、および「a」溶媒には言及していないが、これらの各々の、および任意の他の成分の1つまたは複数を用いることができる。本明細書で用いる場合、「ポリマー」という用語は、オリゴマーならびにホモポリマーおよびコポリマーの両方を指し、接頭辞「ポリ」は2つまたはそれより多くを指す。
【実施例】
【0029】
下記の実施例は本発明を例示することを意図しており、決して本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【0030】
(実施例1)
ビスエポキシおよびメチルパラベンの反応生成物「A」を以下のように調製した。
【0031】
【表1】

Resolution Performance Products製EPONEX1510エポキシ樹脂。
【0032】
モーター駆動ステンレス鋼撹拌翼、水冷コンデンサー、および温度フィードバック制御装置を介して接続された温度計を有する加熱マントルを備えた1リットルの4つ口フラスコに、投入物#1を加えた。フラスコの内容物を110℃に加熱し、その温度で30分間保持した。次いで温度を160℃に上昇させ、バッチを169℃まで発熱させる。次いでバッチを170℃で4時間35分保持し、その時間の間にエポキシの当量が>50,000g/当量に増加した。
【0033】
(実施例2)
ポリエステル「B」を下記のように作製した。
【0034】
【表2】

溶媒として用いられる、Dow Chemical製プロピレングリコールモノメチルエーテル。
【0035】
モーター駆動ステンレス鋼撹拌翼、充填カラム、水冷コンデンサー、受けフラスコ、および温度フィードバック制御装置を介して接続された温度計を有する加熱マントルを備えた1リットルの4つ口フラスコに、投入物#1を加えた。副生成物のメタノールが器具から失われるのを最小限にするため、すべてのジョイントをテフロン(登録商標)テープで包んだ。フラスコの内容物を加熱還流し(180℃)、カラムを通して受けフラスコへ副生成物のメタノールを留去した。5時間の反応時間の間、温度を徐々に215℃まで上昇させて蒸留を続けた。収集されるメタノールがなくなってしまったら、反応混合物を100℃まで冷却し、投入物#2を加えた。混合物を25分撹拌し、次いで投入物#3で希釈した。
【0036】
(実施例3)
ポリエステル「C」を下記のように作製した。
【0037】
【表3】

溶媒として用いられる、Dow Chemical製プロピレングリコールモノメチルエーテル。
【0038】
モーター駆動ステンレス鋼撹拌翼、充填カラム、水冷コンデンサー、受けフラスコ、および温度フィードバック制御装置を介して接続された温度計を有する加熱マントルを備えた1リットルの4つ口フラスコに、投入物#1を加えた。副生成物のメタノールが器具から失われるのを最小限にするため、すべてのジョイントをテフロン(登録商標)テープで包んだ。フラスコの内容物を加熱還流し(170℃)、カラムを通して受けフラスコへ副生成物のメタノールを留去した。5時間の反応時間の間、温度を徐々に195℃まで上昇させて蒸留を続けた。収集されるメタノールがなくなってしまったら、反応混合物を121℃に冷却し、投入物#2を加えた。反応混合物を50分置き、その間に混合物が131℃まで発熱した。混合物を投入物#3で希釈し、80℃まで冷却し、1時間撹拌した。
【0039】
(実施例4)
ポリエステル「C」を下記のように分散させた。
【0040】
【表4】

モーター駆動ステンレス鋼撹拌翼、水冷コンデンサー、および温度フィードバック制御装置を介して接続された温度計を有する加熱マントルを備えた1リットルの4つ口フラスコに、投入物#1を加えた。フラスコの内容物を60℃まで加熱し、その温度で30分維持した。投入物#2を4時間かけて加えた。
【0041】
(実施例5)
実施例2で記載したように調製されたポリエステルBを容器へ投入し、周囲条件下において表5に示す順番で下記の成分中に均一になるまで混合することにより、2つの異なる試料を調製した。
【0042】
【表5】

Durez Corporation製のMETHYLON75108溶液
イソプロパノールで10重量%に希釈したオルトリン酸溶液
溶液は1/1/1酢酸エチル/DOWANOL PM/二塩基酸エステルである。
【0043】
試料1〜2をクロム処理アルミニウム板上で#18巻き線ロッドを用いて引きのばすことにより、コーティングを調製した。コーティングを450°Fで10秒間ベークした。ウェッジ(2.0インチ×4.5インチ)の折り曲げおよび打ち抜きにより、塗工板を柔軟性について評価した。ウェッジ折り曲げについては、折り曲げ部分に沿ってクラックまたはひびが入ったコーティングの百分率を決定した(100=ひび割れ/非硬化)。平均の柔軟性を、3つのウェッジの結果から計算した。表面の硬化を測定するため、コーティングをメチルエチルケトンでこすった(MEK=コーティングが表面まで突き抜けて破壊される前の往復摩擦数)。塗工板の耐久性を、2つの食品模擬物中で塗工板を127℃にて30分処理する(レトルト処理する(retorting))ことにより測定した。2つの食品模擬物は、2重量%クエン酸の脱イオン水中溶液および3重量%酢酸の脱イオン水中溶液であった。レトルト溶液から取り出してすぐに、0が最良である0〜4の視覚スケールを用いて、コーティングを白化に対する耐久性能について評価した。接着試験においては、コーティングに網目模様の刻み目をつけ、粘着テープをかぶせた。テープを引きはがし、無傷で残ったコーティングの百分率を記録した(100=剥がれなし)。Instron Mini44 Unitにより50Nのロードセル(load cell)を用いて、10mm/分のクロスヘッドスピードで、長さおよそ25.4mm、幅12.7mm、厚さ0.3mmの独立フィルム、および1インチのゲージ長を用いて引張強さを測定した。示差走査熱量測定(DSC)によりTgを測定した。すべての結果を表6に示す。
【0044】
【表6】


【0045】
(比較実施例1)
ポリエステル「D」を下記のように作製した。
【0046】
【表7】

モーター駆動ステンレス鋼撹拌翼、充填カラム、水冷コンデンサー、受けフラスコ、および温度フィードバック制御装置を介して接続された温度計を有する加熱マントルを備えた12リットルの4つ口フラスコに、投入物#1を加えた。フラスコの内容物を125℃に加熱し、投入物#2をフラスコに加えた。反応混合物を148℃に加熱し、カラムを通して受けフラスコへ副生成物の水を留去した。16時間の反応時間の間、温度を徐々に200℃まで上昇させて蒸留を続けた。収集される水がなくなってしまったら、反応混合物を189℃に冷却し、キシレンを満たしたDean−Stark装置と充填カラムを取り替え、投入物#3を加えた。混合物をさらに8時間加熱還流し(188℃〜200℃)、次いで投入物#4で希釈した。
【0047】
(実施例6)
実施例2または比較実施例1にそれぞれ記載したように調製されたポリエステルBまたはDをガラス瓶に投入し、表8に示す順番で下記の成分中へ周囲条件で均一になるまで混合することにより、4つの異なる試料を調製した。
【0048】
【表8】

イソプロパノールで10重量%に希釈したオルトリン酸溶液。
【0049】
試料を120Fの高温室に置くことにより、耐分解性について試料を試験した。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量(M)の減少により、ポリマーの分解を定量化した。高温室中での5週間のエージングを通して、GPC用の試料を毎週取り出した。結果を表9にまとめる。
【0050】
【表9】

本発明の特定の実施形態を例示の目的で上記に説明してきたが、本発明の詳細の多数の変形が、付随の特許請求の範囲に定義される意図から逸脱することなく行われうることは、当業者にとって明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリオールと
b)モノおよび/またはジフェノール性のカルボン酸および/またはカルボン酸エステルと反応させたビスエポキシと
の反応生成物を含んだポリエステルを含み、BPAおよびBPFを実質的に含まず、ならびにBADGEおよびBFDGEを実質的に含まない組成物で、内側の少なくとも一部をコーティングした食品用缶。
【請求項2】
前記ポリエステルの重量平均分子量が14,000〜15,000である、請求項1に記載の食品用缶。
【請求項3】
前記組成物中のポリエステルの重量%が、総固体重量を基準として70〜99重量%である、請求項1に記載の食品用缶。
【請求項4】
前記ポリオールがエチレングリコールである、請求項1に記載の食品用缶。
【請求項5】
前記ビスエポキシが水素化ビスフェノールA部分を含む、請求項1に記載の食品用缶。
【請求項6】
前記組成物が、硬化したときに、前記缶に施される最終のコーティングである、請求項1に記載の食品用缶。
【請求項7】
前記カルボン酸がジフェノール酸を含む、請求項1に記載の食品用缶。
【請求項8】
前記カルボン酸エステルがパラベンを含む、請求項1に記載の食品用缶。
【請求項9】
前記パラベンがメチルパラベンを含む、請求項1に記載の食品用缶。
【請求項10】
前記コーティングが、ポリエステルにグラフト接合されたアクリルをさらに含む、請求項1に記載の食品用缶。
【請求項11】
前記組成物が溶媒をさらに含む、請求項1に記載の食品用缶。
【請求項12】
前記食品用缶の前記コーティングされた部分が缶の端面を含む、請求項1に記載の食品用缶。
【請求項13】
a)ポリオールと
b)モノおよび/またはジフェノール性のカルボン酸および/またはカルボン酸エステルと反応させたビスエポキシと
の反応生成物を含むポリエステルから本質的に成る組成物で、内側の少なくとも一部をコーティングした食品用缶。
【請求項14】
BPAおよびBPFを実質的に含まず、ならびにBADGEおよびBFDGEを実質的に含まない、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
酸性媒体中での分子量の減少が50%未満であるポリエステルを含む組成物で、内側の少なくとも一部をコーティングした食品用缶。
【請求項16】
酸性媒体中での分子量の減少が40%未満であるポリエステルを含む組成物で、内側の少なくとも一部をコーティングした、請求項15に記載の食品用缶。
【請求項17】
酸性媒体中での分子量の減少が30%未満であるポリエステルを含む組成物で、内側の少なくとも一部をコーティングした、請求項15に記載の食品用缶。
【請求項18】
酸性媒体中での分子量の減少が20%未満であるポリエステルを含む組成物で、内側の少なくとも一部をコーティングした、請求項15に記載の食品用缶。
【請求項19】
a)ポリオールと
b)モノおよび/またはジフェノール性のカルボン酸および/またはエステルと反応させたビスエポキシと
の反応生成物を含むポリエステル。
【請求項20】
前記ポリオールがエチレングリコールである、請求項19に記載のポリエステル。
【請求項21】
前記ビスエポキシが水素化ビスフェノールA部分を含む、請求項19に記載のポリエステル。
【請求項22】
前記カルボン酸がジフェノール酸を含む、請求項19に記載のポリエステル。
【請求項23】
前記カルボン酸エステルがパラベンを含む、請求項19に記載のポリエステル。
【請求項24】
前記パラベンがメチルパラベンを含む、請求項23に記載のポリエステル。

【公表番号】特表2009−538762(P2009−538762A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513388(P2009−513388)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/069610
【国際公開番号】WO2007/143407
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ インコーポレーテツド (267)
【Fターム(参考)】