説明

ビスカルバゾール誘導体およびこれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率および発光寿命を向上させることができるビスカルバゾール誘導体およびこれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】下記式で代表されるビスカルバゾール誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスカルバゾール誘導体およびこれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という。)に電圧を印加すると、陽極から正孔が、また陰極から電子が、それぞれ発光層に注入される。そして、発光層において、注入された正孔と電子とが再結合し、励起子が形成される。このとき、電子スピンの統計則により、一重項励起子、及び三重項励起子が25%:75%の割合で生成する。発光原理に従って分類した場合、蛍光型では、一重項励起子による発光を用いるため、有機EL素子の内部量子効率は25%が限界といわれている。一方、燐光型では、三重項励起子による発光を用いるため、一重項励起子から項間交差が効率的に行われた場合には内部量子効率が100%まで高められることが知られている。
従来、有機EL素子においては、蛍光型、及び燐光型の発光メカニズムに応じ、最適な素子設計がなされてきた。特に燐光型の有機EL素子については、その発光特性から、蛍光素子技術の単純な転用では高性能な素子が得られないことが知られている。その理由は、一般的に以下のように考えられている。
まず、燐光発光は、三重項励起子を利用した発光であるため、発光層に用いる化合物のエネルギーギャップが大きくなくてはならない。何故なら、ある化合物のエネルギーギャップ(以下、一重項エネルギーともいう。)の値は、通常、その化合物の三重項エネルギー(本発明では、最低励起三重項状態と基底状態とのエネルギー差をいう。)の値よりも大きいからである。
【0003】
従って、燐光発光性ドーパント材料の三重項エネルギーを効率的に素子内に閉じ込めるためには、まず、燐光発光性ドーパント材料の三重項エネルギーよりも大きい三重項エネルギーのホスト材料を発光層に用いなければならない。さらに、発光層に隣接する電子輸送層、及び正孔輸送層を設け、電子輸送層、及び正孔輸送層に燐光発光性ドーパント材料の三重項エネルギーよりも大きい化合物を用いなければならない。このように、従来の有機EL素子の素子設計思想に基づく場合、蛍光型の有機EL素子に用いる化合物と比べて大きなエネルギーギャップを有する化合物を燐光型の有機EL素子に用いることにつながり、有機EL素子全体の駆動電圧が上昇する。
また、蛍光素子で有用であった酸化耐性や還元耐性の高い炭化水素系の化合物はπ電子雲の広がりが大きいため、エネルギーギャップが小さい。そのため、燐光型の有機EL素子では、このような炭化水素系の化合物が選択され難く、酸素や窒素などのヘテロ原子を含んだ有機化合物が選択され、その結果、燐光型の有機EL素子は、蛍光型の有機EL素子と比較して寿命が短いという問題を有する。
さらに、燐光発光性ドーパント材料の三重項励起子の励起子緩和速度が一重項励起子と比較して非常に長いことも素子性能に大きな影響を与える。即ち、一重項励起子からの発光は、発光に繋がる緩和速度が速いため、発光層の周辺層(例えば、正孔輸送層や電子輸送層)への励起子の拡散が起きにくく、効率的な発光が期待される。一方、三重項励起子からの発光は、スピン禁制であり緩和速度が遅いため、周辺層への励起子の拡散が起きやすく、特定の燐光発光性化合物以外からは熱的なエネルギー失活が起きてしまう。つまり、電子、及び正孔の再結合領域のコントロールが蛍光型の有機EL素子よりも重要である。
以上のような理由から燐光型の有機EL素子の高性能化には、蛍光型の有機EL素子と異なる材料選択、及び素子設計が必要になっている。
【0004】
このような燐光発光性ドーパント材料と組み合わせるホスト材料(燐光ホスト材料)としては、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、キノリノール金属錯体等を用いる技術が開示されているが、いずれも充分な発光効率と低駆動電圧を示すものは無かった。
これらの燐光ホスト材料に代わるものとして、近年、ビスカルバゾール誘導体を燐光ホスト材料として用いる技術が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4357781号公報
【特許文献2】特開2008−135498号公報
【特許文献3】国際公開第2011/019156号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3には、カルバゾリル基の3位同士を結合させたビスカルバゾール誘導体を燐光ホスト材料として用いた有機EL素子が開示されている。
しかしながら、特許文献1〜3に記載された有機EL素子は、当該ビスカルバゾール誘導体を緑色発光に適した燐光ホスト材料として用いる。
【0007】
本発明の目的は、カルバゾリル基の結合位を変えることで、緑色より長波長側の発光に適した有機EL素子に用いることができる、新規なビスカルバゾール誘導体およびこれを用いた有機EL素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、2つのカルバゾリル基の2位同士を結合させ、さらに2つのカルバゾリル基の少なくとも一方のN位に環形成炭素数1〜4の含窒素芳香族複素環基を直接または連結基を介して結合させたビスカルバゾール誘導体が、有機EL素子の発光効率および発光寿命を向上させることを見出した。
本発明者らは、このような知見をもとに本発明を完成させた。
【0009】
本発明のビスカルバゾール誘導体は、下記一般式(1)で表される。
【0010】
【化1】

【0011】
前記一般式(1)において、
およびAは、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または
置換もしくは無置換の環形成炭素数1〜30の芳香族複素環基
を表す。
ただし、AおよびAの少なくとも一方は、置換もしくは無置換の環形成炭素数1〜4の含窒素芳香族複素環基を表す。
【0012】
前記一般式(1)において、Y〜Yは、下記Rと結合する炭素原子または窒素原子である。ただし、Y〜Yのうち、隣り合う二つが炭素原子である場合、Rと結合せずに、当該隣り合う炭素原子を含む環を形成しても良い。
〜Yは、下記Rと結合する炭素原子または窒素原子である。ただし、YおよびYが炭素原子である場合、Rと結合せずに、YおよびYの炭素原子を含む環を形成しても良い。
〜Y10は、下記Rと結合する炭素原子または窒素原子である。ただし、YおよびY10が炭素原子である場合、Rと結合せずに、YおよびY10の炭素原子を含む環を形成しても良い。
11〜Y14は、下記Rと結合する炭素原子または窒素原子である。ただし、Y11〜Y14のうち、隣り合う二つが炭素原子である場合、Rと結合せずに、当該隣り合う炭素原子を含む環を形成しても良い。
ここで、Y〜Y14について具体的に説明する。ビスカルバゾール骨格において隣り合う二つ、例えば、YおよびYが炭素原子であって環を形成する場合、YおよびYは、Rと結合せずに、これらYおよびYを含んだ環構造を、Y〜Yを含むビスカルバゾール骨格の6員環とは別に形成することをいう。そして、YおよびYが当該環構造を形成する場合、YおよびYは、炭素原子または窒素原子であり、YおよびYが炭素原子であれば、Rと結合せずに、YおよびYを含んだ環構造を、Y〜Yを含むビスカルバゾール骨格の6員環とは別に形成してもよいし、環を形成せずにRと結合してもよい。その他のY〜Y、Y〜Y10、Y11〜Y14においても同様である。
【0013】
前記一般式(1)において、Rは、互いに独立して
水素原子、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数1〜30の芳香族複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30の直鎖、分岐、または環状のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、
置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基、
置換若しくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のハロアルコキシ基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のトリアルキルシリル基、
置換もしくは無置換の炭素数8〜40のジアルキルアリールシリル基、
置換もしくは無置換の炭素数13〜50のアルキルジアリールシリル基、
置換もしくは無置換の炭素数18〜60のトリアリールシリル基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ヒドロキシル基、
ニトロ基、または
カルボキシ基
を表す。
〜Lは、単結合もしくは2価の連結基を表す。
【0014】
本発明のビスカルバゾール誘導体において、
前記一般式(1)におけるLは、単結合である
ことが好ましい。
【0015】
本発明のビスカルバゾール誘導体において、
前記一般式(1)における前記含窒素芳香族複素環基は、
置換もしくは無置換のピリミジニル基、または
置換もしくは無置換のトリアジニル基である
ことが好ましい。
【0016】
本発明のビスカルバゾール誘導体において、
前記一般式(1)におけるLおよびLの少なくとも一方は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素化合物の二価の基、または
置換もしくは無置換の環形成炭素数1〜30の芳香族複素環式化合物の二価の基である
ことが好ましい。
【0017】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、
陰極と陽極との間に有機化合物層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機化合物層は、上記本発明のビスカルバゾール誘導体のいずれかを含む
ことを特徴とする。
【0018】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記有機化合物層は、発光層を含む複数の有機薄膜層を備え、
前記複数の有機薄膜層のうち少なくとも一つの層は、上記本発明のビスカルバゾール誘導体のいずれかを含む
ことが好ましい。
【0019】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記発光層は、上記本発明のビスカルバゾール誘導体のいずれかを含む
ことが好ましい。
【0020】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記発光層は、燐光発光性材料を含む
ことが好ましい。
【0021】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記燐光発光性材料は、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、および白金(Pt)から選択される金属原子のオルトメタル化錯体を含む
ことが好ましい。
【0022】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記発光層は、芳香族アミン誘導体をさらに含む
ことが好ましい。
【0023】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記複数の有機薄膜層は、正孔輸送層、発光層および電子輸送層を含む
ことが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明のビスカルバゾール誘導体を有機EL素子に用いると、発光効率および発光寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の一例の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について具体的に説明する。
(ビスカルバゾール誘導体)
本発明のビスカルバゾール誘導体は、上記一般式(1)で表される。
本発明のビスカルバゾール誘導体は、上記一般式(1)に示されるように、2つのカルバゾリル基の2位同士が結合した構造を有する。2つのカルバゾリル基の2位同士で結合させることにより、三重項エネルギーを小さくすることができる。そのため、本発明のビスカルバゾール誘導体をホスト材料として用いる場合、赤や黄緑色を発色するドーパント材料に対しては、効率よくホスト材料からドーパント材料にエネルギーを伝えることができる。
さらに、本発明のビスカルバゾール誘導体は、上記一般式(1)に示されるように、カルバゾリル基のN位(9位)に対して直接または連結基L〜Lを介して結合するAまたはAの少なくとも一方は、置換もしくは無置換の環形成炭素数1〜4の含窒素芳香族複素環基である。本発明のビスカルバゾール誘導体は、このような構造であるため、カルバゾリル基のベンゼン環に含窒素芳香族複素環基を結合させた構造と比べて、HOMOとLUMOとを明確に分離できる。そのため、本発明のビスカルバゾール誘導体は、正孔および電子に対する耐性が優れると考えられる。
【0027】
上記一般式(1)における環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基としては、縮合芳香族炭化水素基も含まれ、例えば、フェニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基、m−ターフェニル−2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、p−(2−フェニルプロピル)フェニル基、4’−メチルビフェニルイル基、4”−t−ブチル−p−ターフェニル−4−イル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、2,3−キシリル基、3,4−キシリル基、2,5−キシリル基、メシチル基,m−クウォーターフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−フェナントレニル基、2−フェナントレニル基、3−フェナントレニル基、4−フェナントレニル基、9−フェナントレニル基、1−トリフェニレニル基、2−トリフェニレニル基、3−トリフェニレニル基、4−トリフェニレニル基、1−クリセニル基、2−クリセニル基、3−クリセニル基、4−クリセニル基、5−クリセニル基、6−クリセニル基が挙げられる。
【0028】
上記一般式(1)における環形成炭素数1〜30の芳香族複素環基としては、縮合芳香族複素環基も含まれ、例えば、ピロリル基、ピラジニル基、ピリジニル基、インドリル基、イソインドリル基、フリル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、チエニル基、およびピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、インドール環、キノリン環、アクリジン環、ピロリジン環、ジオキサン環、ピペリジン環、モルフォリン環、ピペラジン環、カルバゾール環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラン環、ジベンゾフラン環から形成される基が挙げられる。
さらに具体的には、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、2−ピリミジニル基、4−ピリミジニル基、5−ピリミジニル基、6−ピリミジニル基、1,2,3−トリアジン−4−イル基、1,2,4−トリアジン−3−イル基、1,3,5−トリアジン−2−イル基、1−イミダゾリル基、2−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、1−インドリジニル基、2−インドリジニル基、3−インドリジニル基、5−インドリジニル基、6−インドリジニル基、7−インドリジニル基、8−インドリジニル基、2−イミダゾピリジニル基、3−イミダゾピリジニル基、5−イミダゾピリジニル基、6−イミダゾピリジニル基、7−イミダゾピリジニル基、8−イミダゾピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、アザカルバゾリル−1−イル基、アザカルバゾリル−2−イル基、アザカルバゾリル−3−イル基、アザカルバゾリル−4−イル基、アザカルバゾリル−5−イル基、アザカルバゾリル−6−イル基、アザカルバゾリル−7−イル基、アザカルバゾリル−8−イル基、アザカルバゾリル−9−イル基、1−フェナントリジニル基、2−フェナントリジニル基、3−フェナントリジニル基、4−フェナントリジニル基、6−フェナントリジニル基、7−フェナントリジニル基、8−フェナントリジニル基、9−フェナントリジニル基、10−フェナントリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,7−フェナントロリン−2−イル基、1,7−フェナントロリン−3−イル基、1,7−フェナントロリン−4−イル基、1,7−フェナントロリン−5−イル基、1,7−フェナントロリン−6−イル基、1,7−フェナントロリン−8−イル基、1,7−フェナントロリン−9−イル基、1,7−フェナントロリン−10−イル基、1,8−フェナントロリン−2−イル基、1,8−フェナントロリン−3−イル基、1,8−フェナントロリン−4−イル基、1,8−フェナントロリン−5−イル基、1,8−フェナントロリン−6−イル基、1,8−フェナントロリン−7−イル基、1,8−フェナントロリン−9−イル基、1,8−フェナントロリン−10−イル基、1,9−フェナントロリン−2−イル基、1,9−フェナントロリン−3−イル基、1,9−フェナントロリン−4−イル基、1,9−フェナントロリン−5−イル基、1,9−フェナントロリン−6−イル基、1,9−フェナントロリン−7−イル基、1,9−フェナントロリン−8−イル基、1,9−フェナントロリン−10−イル基、1,10−フェナントロリン−2−イル基、1,10−フェナントロリン−3−イル基、1,10−フェナントロリン−4−イル基、1,10−フェナントロリン−5−イル基、2,9−フェナントロリン−1−イル基、2,9−フェナントロリン−3−イル基、2,9−フェナントロリン−4−イル基、2,9−フェナントロリン−5−イル基、2,9−フェナントロリン−6−イル基、2,9−フェナントロリン−7−イル基、2,9−フェナントロリン−8−イル基、2,9−フェナントロリン−10−イル基、2,8−フェナントロリン−1−イル基、2,8−フェナントロリン−3−イル基、2,8−フェナントロリン−4−イル基、2,8−フェナントロリン−5−イル基、2,8−フェナントロリン−6−イル基、2,8−フェナントロリン−7−イル基、2,8−フェナントロリン−9−イル基、2,8−フェナントロリン−10−イル基、2,7−フェナントロリン−1−イル基、2,7−フェナントロリン−3−イル基、2,7−フェナントロリン−4−イル基、2,7−フェナントロリン−5−イル基、2,7−フェナントロリン−6−イル基、2,7−フェナントロリン−8−イル基、2,7−フェナントロリン−9−イル基、2,7−フェナントロリン−10−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノチアジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、4−フェノチアジニル基、10−フェノチアジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、10−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、3−フラザニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−メチルピロール−1−イル基、2−メチルピロール−3−イル基、2−メチルピロール−4−イル基、2−メチルピロール−5−イル基、3−メチルピロール−1−イル基、3−メチルピロール−2−イル基、3−メチルピロール−4−イル基、3−メチルピロール−5−イル基、2−t−ブチルピロール−4−イル基、3−(2−フェニルプロピル)ピロール−1−イル基、2−メチル−1−インドリル基、4−メチル−1−インドリル基、2−メチル−3−インドリル基、4−メチル−3−インドリル基、2−t−ブチル−1−インドリル基、4−t−ブチル−1−インドリル基、2−t−ブチル−3−インドリル基、4−t−ブチル−3−インドリル基、1−ジベンゾフラニル基、2−ジベンゾフラニル基、3−ジベンゾフラニル基、4−ジベンゾフラニル基、1−ジベンゾチオフェニル基、2−ジベンゾチオフェニル基、3−ジベンゾチオフェニル基、4−ジベンゾチオフェニル基、1−シラフルオレニル基、2−シラフルオレニル基、3−シラフルオレニル基、4−シラフルオレニル基、1−ゲルマフルオレニル基、2−ゲルマフルオレニル基、3−ゲルマフルオレニル基、4−ゲルマフルオレニル基が挙げられる。
【0029】
上記一般式(1)における炭素数1〜30の直鎖、分岐、または環状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、ネオペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−ペンチルヘキシル基、1−ブチルペンチル基、1−ヘプチルオクチル基、3−メチルペンチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、1,2−ジニトロエチル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基等が挙げられる。
【0030】
上記一般式(1)における炭素数1〜30のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0031】
上記一般式(1)における環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基は、−OArと表される基である。ここで、Arの具体例としては、上記芳香族炭化水素基で説明したものと同様のものが挙げられる。
【0032】
上記一般式(1)における炭素数7〜30のアラルキル基は、例えば、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルイソプロピル基、2−フェニルイソプロピル基、フェニル−t−ブチル基、α−ナフチルメチル基、1−α−ナフチルエチル基、2−α−ナフチルエチル基、1−α−ナフチルイソプロピル基、2−α−ナフチルイソプロピル基、β−ナフチルメチル基、1−β−ナフチルエチル基、2−β−ナフチルエチル基、1−β−ナフチルイソプロピル基、2−β−ナフチルイソプロピル基、1−ピロリルメチル基、2−(1−ピロリル)エチル基、p−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、o−メチルベンジル基、p−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、o−クロロベンジル基、p−ブロモベンジル基、m−ブロモベンジル基、o−ブロモベンジル基、p−ヨードベンジル基、m−ヨードベンジル基、o−ヨードベンジル基、p−ヒドロキシベンジル基、m−ヒドロキシベンジル基、o−ヒドロキシベンジル基、p−アミノベンジル基、m−アミノベンジル基、o−アミノベンジル基、p−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、o−ニトロベンジル基、p−シアノベンジル基、m−シアノベンジル基、o−シアノベンジル基、1−ヒドロキシ−2−フェニルイソプロピル基、1−クロロ−2−フェニルイソプロピル基等が挙げられる。
【0033】
上記一般式(1)における炭素数1〜30のハロアルキル基は、例えば、上記炭素数1〜30のアルキル基が1以上のハロゲン基で置換されたものが挙げられる。
【0034】
上記一般式(1)における炭素数1〜30のハロアルコキシ基は、例えば、上記炭素数1〜30のアルコキシ基が1以上のハロゲン基で置換されたものが挙げられる。
【0035】
上記一般式(1)における炭素数3〜30のトリアルキルシリル基は、例えば、上記炭素数1〜30のアルキル基で例示したアルキル基を有するトリアルキルシリル基が挙げられ、具体的にはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ−n−ブチルシリル基、トリ−n−オクチルシリル基、トリイソブチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジメチル−n−プロピルシリル基、ジメチル−n−ブチルシリル基、ジメチル−t−ブチルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基等が挙げられる。3つのアルキル基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0036】
上記一般式(1)における炭素数8〜40のジアルキルアリールシリル基は、例えば、上記炭素数1〜30のアルキル基で例示したアルキル基を2つ有し、上記環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を1つ有するジアルキルアリールシリル基が挙げられる。
【0037】
上記一般式(1)における炭素数13〜50のアルキルジアリールシリル基は、例えば、上記炭素数1〜30のアルキル基で例示したアルキル基を1つ有し、上記環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を2つ有するアルキルジアリールシリル基が挙げられる。
【0038】
上記一般式(1)における炭素数18〜60のトリアリールシリル基は、例えば、上記環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を3つ有するトリアリールシリル基が挙げられる。
【0039】
前記一般式(1)におけるLは、単結合であることが好ましい。
【0040】
前記一般式(1)におけるAまたはAとしての前記含窒素芳香族複素環基は、置換もしくは無置換のピリミジニル基または置換もしくは無置換のトリアジニル基であることが好ましい。ピリミジニル基としては、2−ピリミジニル基、4−ピリミジニル基、5−ピリミジニル基、6−ピリミジニル基が挙げられる。トリアジニル基は、トリアジン環から形成される基であって、トリアジン環には、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジンの3種がある。トリアジニル基としては、1,2,3−トリアジン−4−イル基、1,2,4−トリアジン−3−イル基、1,3,5−トリアジン−2−イル基などが挙げられる。
またはAの位置にピリミジニル基またはトリアジニル基を結合させることで、他の含窒素芳香族複素環基である、例えば、イミダゾピリジニル基の場合と比べて、ビスカルバゾール誘導体の正孔および電子に対する耐性が向上すると考えられる。
【0041】
前記一般式(1)におけるLおよびLの少なくとも一方は、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素化合物の二価の基、および置換もしくは無置換の環形成炭素数1〜30の芳香族複素環式化合物の二価の基のうちいずれかであることが好ましい。
およびLの少なくとも一方が単結合である場合、正孔輸送性が向上する。
およびLの少なくとも一方が置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素化合物の二価の基、または置換もしくは無置換の環形成炭素数1〜30の芳香族複素環式化合物の二価の基である場合、電子輸送性が向上する傾向がある。
それゆえ、ビスカルバゾール誘導体のキャリア輸送性のバランス調整を目的として、LおよびLを適宜選択することが望ましい。このように、LおよびLを適宜選択することは、本発明のビスカルバゾール誘導体をホスト材料に用いる場合にも有効である。
【0042】
本発明のビスカルバゾール誘導体の具体的な構造としては、例えば、次のようなものが挙げられる。但し、本発明は、これらの構造のビスカルバゾール誘導体に限定されない。
【0043】
【化2】

【0044】
【化3】

【0045】
【化4】

【0046】
【化5】

【0047】
【化6】

【0048】
【化7】

【0049】
【化8】

【0050】
【化9】

【0051】
【化10】

【0052】
【化11】

【0053】
【化12】

【0054】
【化13】

【0055】
【化14】

【0056】
【化15】

【0057】
【化16】

【0058】
【化17】



【0059】
【化18】

【0060】
【化19】

【0061】
【化20】

【0062】
【化21】

【0063】
【化22】

【0064】
【化23】

【0065】
【化24】

【0066】
【化25】



【0067】
(有機EL素子用材料)
本発明のビスカルバゾール誘導体は、有機EL素子用材料として用いることができる。有機EL素子用材料は、本発明のビスカルバゾール誘導体を単独で含んでいても良いし、他の化合物を含んでいても良い。
【0068】
(有機EL素子の構成)
本発明の有機EL素子は、陰極と陽極との間に有機化合物層を備える。
本発明のビスカルバゾール誘導体は、有機化合物層に含まれる。有機化合物層は、本発明のビスカルバゾール誘導体を含む有機EL素子用材料を用いて形成される。
有機化合物層は、有機化合物で構成される有機薄膜層を少なくとも一つ以上、有する。有機薄膜層は、無機化合物を含んでいてもよい。
本発明の有機EL素子において、有機薄膜層のうち少なくとも1層は、発光層である。そのため、有機化合物層は、例えば、一層の発光層で構成されていてもよいし、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、正孔障壁層、電子障壁層等の公知の有機EL素子で採用される層を有していてもよい。有機薄膜層が複数であれば、少なくともいずれかの層に本発明のビスカルバゾール誘導体が含まれている。
【0069】
有機EL素子の代表的な素子構成としては、
(a)陽極/発光層/陰極
(b)陽極/正孔注入・輸送層/発光層/陰極
(c)陽極/発光層/電子注入・輸送層/陰極
(d)陽極/正孔注入・輸送層/発光層/電子注入・輸送層/陰極
(e)陽極/正孔注入・輸送層/発光層/障壁層/電子注入・輸送層/陰極
などの構造を挙げることができる。
上記の中で(d)の構成が好ましく用いられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
なお、上記「発光層」とは、発光機能を有する有機層であって、ドーピングシステムを採用する場合、ホスト材料とドーパント材料を含んでいる。このとき、ホスト材料は、主に電子と正孔の再結合を促し、励起子を発光層内に閉じ込める機能を有し、ドーパント材料は、再結合で得られた励起子を効率的に発光させる機能を有する。燐光素子の場合、ホスト材料は主にドーパントで生成された励起子を発光層内に閉じ込める機能を有する。
上記「正孔注入・輸送層」は「正孔注入層および正孔輸送層のうちの少なくともいずれか1つ」を意味し、「電子注入・輸送層」は「電子注入層および電子輸送層のうちの少なくともいずれか1つ」を意味する。ここで、正孔注入層および正孔輸送層を有する場合には、陽極側に正孔注入層が設けられていることが好ましい。また、電子注入層および電子輸送層を有する場合には、陰極側に電子注入層が設けられていることが好ましい。
本発明において電子輸送層といった場合には、発光層と陰極との間に存在する電子輸送領域の有機層のうち、最も電子移動度の高い有機層をいう。電子輸送領域が一層で構成されている場合には、当該層が電子輸送層である。また、燐光素子においては、構成(e)に示すように発光層で生成された励起エネルギーの拡散を防ぐ目的で必ずしも電子移動度が高くない障壁層を発光層と電子輸送層との間に採用することがあり、発光層に隣接する有機層が電子輸送層に必ずしも該当しない。
【0070】
図1に、本発明の実施形態における有機EL素子の一例の概略構成を示す。
有機EL素子1は、透明な基板2と、陽極3と、陰極4と、陽極3と陰極4との間に配置された有機化合物層10と、を有する。
有機化合物層10は、陽極3側から順に、正孔注入層5、正孔輸送層6、発光層7、電子輸送層8、電子注入層9を備える。
【0071】
(透明性基板)
本発明の有機EL素子は、透光性の基板上に作製する。ここでいう透光性基板は有機EL素子を支持する基板であり、400nm〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上で平滑な基板が好ましい。
具体的には、ガラス板、ポリマー板等が挙げられる。
ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を原料として用いてなるものが挙げられる。
またポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を原料として用いてなるものを挙げることができる。
【0072】
(陽極及び陰極)
有機EL素子の陽極は、正孔を正孔注入層、正孔輸送層または発光層に注入する役割を担うものであり、4.5eV以上の仕事関数を有することが効果的である。
陽極材料の具体例としては、酸化インジウム錫合金(ITO)、酸化錫(NESA)、酸化インジウム亜鉛酸化物、金、銀、白金、銅等が挙げられる。
陽極はこれらの電極物質を蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させることにより作製することができる。
本実施形態のように、発光層からの発光を陽極から取り出す場合、陽極の可視領域の光の透過率を10%より大きくすることが好ましい。また、陽極のシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。陽極の膜厚は、材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10nm〜200nmの範囲で選択される。
【0073】
陰極としては、電子注入層、電子輸送層または発光層に電子を注入する目的で、仕事関数の小さい材料が好ましい。
陰極材料は特に限定されないが、具体的にはインジウム、アルミニウム、マグネシウム、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−スカンジウム−リチウム合金、マグネシウム−銀合金等が使用できる。
陰極も、陽極と同様に、蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させることにより作製することができる。また、陰極側から、発光を取り出す態様を採用することもできる。
【0074】
(発光層)
発光層は、分子堆積膜であることが好ましい。
ここで分子堆積膜とは、気相状態の材料化合物から沈着され形成された薄膜や、溶液状態または液相状態の材料化合物から固体化され形成された膜のことであり、通常この分子堆積膜は、LB法により形成された薄膜(分子累積膜)とは凝集構造、高次構造の相違や、それに起因する機能的な相違により区分することができる。
また、特開昭57−51781号公報に開示されているように、樹脂等の結着剤と材料化合物とを溶剤に溶かして溶液とした後、これをスピンコート法等により薄膜化することによっても、発光層を形成することができる。
【0075】
(ホスト材料)
ホスト材料は、本発明のビスカルバゾール誘導体であることが好ましい。上述の通り、本発明のビスカルバゾール誘導体は、正孔および電子に対する耐性に優れるため、ホスト材料として用いることで、有機EL素子の耐久性を向上させることができる。
【0076】
(ドーパント材料)
ドーパント材料としては、公知の蛍光型発光を示す蛍光発光性材料または燐光型発光を示す燐光発光性材料から選ばれる。
ドーパント材料として用いられる蛍光発光性材料(以下、蛍光ドーパント材料と称する。)としては、フルオランテン誘導体、ピレン誘導体、アリールアセチレン誘導体、フルオレン誘導体、硼素錯体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アントラセン誘導体から選ばれる。好ましくは、フルオランテン誘導体、ピレン誘導体、硼素錯体が挙げられる。
【0077】
ドーパント材料として用いられる燐光発光性材料(以下、燐光ドーパント材料と称する。)は、金属錯体を含有するものが好ましい。該金属錯体としては、イリジウム(Ir),白金(Pt),オスミウム(Os),金(Au),レニウム(Re)、およびルテニウム(Ru)から選択される金属原子と配位子とを有するものが好ましい。特に、配位子と金属原子とが、オルトメタル結合を形成しているオルトメタル化錯体が好ましい。燐光ドーパント材料としては、燐光量子収率が高く、発光素子の外部量子効率をより向上させることができるという点で、イリジウム(Ir),オスミウム(Os)および白金(Pt)から選ばれる金属を含有するオルトメタル化錯体が好ましい。また、発光効率などの観点からフェニルキノリン、フェニルイソキノリン、フェニルピリジン、フェニルピリミジン、フェニルピラジンおよびフェニルイミダゾールから選択される配位子から構成される金属錯体が好ましい。
燐光ドーパント材料の具体例を次に示す。
【0078】
【化26】

【0079】
【化27】

【0080】
【化28】

【0081】
【化29】



【0082】
【化30】

【0083】
本発明のビスカルバゾール誘導体は、上述のような構造であるため、カルバゾリル基の3位同士を結合させたビスカルバゾール誘導体と比べて、三重項エネルギーEgTが小さくなる性質を有する。そのため、本発明の有機EL素子の発光層に、本発明のビスカルバゾール誘導体を燐光ホスト材料として用いる場合、赤から黄緑色の波長領域で燐光発光する燐光発光性材料を燐光ドーパント材料として用いることが好ましい。燐光素子において、このような燐光ドーパント材料と燐光ホスト材料との組み合わせとすることで、燐光ホスト材料は燐光ドーパント材料の三重項エネルギーを効率良く閉じ込めることができ、発光効率が向上する。
【0084】
(発光層に含まれるその他の材料)
本発明の有機EL素子の発光層は、さらに芳香族アミン誘導体を含んでいることが好ましい。発光層が、ホスト材料としての本発明のビスカルバゾール誘導体およびドーパント材料に加えて、芳香族アミン誘導体を含むことにより、正孔注入および正孔輸送が補助され、発光層における正孔と電子とのバランスを取り易くなる。
このような芳香族アミン誘導体としては、例えば、下記正孔注入・輸送層に用いられる化合物が挙げられる。
【0085】
(正孔注入・輸送層)
正孔注入・輸送層は、発光層への正孔注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、正孔移動度が大きく、イオン化エネルギーが小さい。
正孔注入・輸送層は、正孔注入層、または正孔輸送層で構成してもよいし、正孔注入層および正孔輸送層を積層させて構成してもよい。
正孔注入・輸送層を形成する材料としては、より低い電界強度で正孔を発光層に輸送する材料が好ましく、芳香族アミン化合物、例えば、下記一般式(A1)で表わされる芳香族アミン誘導体が好適に用いられる。
【0086】
【化31】

【0087】
前記一般式(A1)において、ArからArまでは、
環形成炭素数6以上50以下の芳香族炭化水素基、
環形成炭素数2以上40以下の芳香族複素環基、
それら芳香族炭化水素基とそれら芳香族複素環基とを結合させた基、
それら芳香族炭化水素基とそれら縮合芳香族複素環基とを結合させた基
を表す。但し、ここで挙げた芳香族炭化水素基、および芳香族複素環基は、置換基を有してもよい。
【0088】
前記一般式(A1)において、Lは、連結基であり、
環形成炭素数6以上50以下の2価の芳香族炭化水素基、
環形成炭素数5以上50以下の2価の芳香族複素環基、または
2個以上の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を
単結合、
エーテル結合、
チオエーテル結合、
炭素数1以上20以下のアルキレン基、
炭素数2以上20以下のアルケニレン基、もしくは
アミノ基
で結合して得られる2価の基、
を表す。但し、ここで挙げた2価の芳香族炭化水素基、および2価の芳香族複素環基は、置換基を有してもよい。
【0089】
前記一般式(A1)の化合物の具体例を以下に記すが、これらに限定されるものではない。
【0090】
【化32】

【0091】
また、下記一般式(A2)の芳香族アミンも、正孔注入・輸送層の形成に好適に用いられる。
【0092】
【化33】

【0093】
前記一般式(A2)において、ArからArまでの定義は前記一般式(A1)のArからArまでの定義と同様である。以下に一般式(A2)の化合物の具体例を記すがこれらに限定されるものではない。
【0094】
【化34】

【0095】
(電子注入・輸送層)
電子注入・輸送層は、発光層への電子の注入を助ける層であって、電子移動度が大きい。電子注入層はエネルギーレベルの急な変化を緩和するなど、エネルギーレベルを調整するために設ける。電子注入・輸送層は、電子注入層と電子輸送層とのうちの少なくともいずれか一方を備える。
本実施形態は、発光層と陰極との間に電子注入層を有し、前記電子注入層は、含窒素環誘導体を主成分として含有することが好ましい。ここで、電子注入層は電子輸送層として機能する層であってもよい。
なお、「主成分として」とは、電子注入層が50質量%以上の含窒素環誘導体を含有していることを意味する。
【0096】
電子注入層に用いる電子輸送性材料としては、分子内にヘテロ原子を1個以上含有する芳香族ヘテロ環化合物が好ましく用いられ、特に含窒素環誘導体が好ましい。また、含窒素環誘導体としては、含窒素6員環もしくは5員環骨格を有する芳香族環が好ましい。
この含窒素環誘導体としては、例えば、下記一般式(B1)で表される含窒素環金属キレート錯体が好ましい。
【0097】
【化35】

【0098】
一般式(B1)におけるRからRまでは、独立に、
水素原子、
重水素原子、
ハロゲン原子、
オキシ基、
アミノ基、
炭素数1以上40以下の炭化水素基、
アルコキシ基、
アリールオキシ基、
アルコキシカルボニル基、または、
芳香族複素環基であり、
これらは置換基を有してもよい。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。また、置換されていてもよいアミノ基の例としては、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アラルキルアミノ基が挙げられる。
【0099】
アルコキシカルボニル基は−COOY’と表され、Y’の例としては前記アルキル基と同様のものが挙げられる。アルキルアミノ基およびアラルキルアミノ基は−NQと表される。QおよびQの具体例としては、独立に、前記アルキル基、前記アラルキル基(アルキル基の水素原子がアリール基で置換された基)で説明したものと同様のものが挙げられ、好ましい例も同様である。QおよびQの一方は水素原子であってもよい。なお、アラルキル基は、前記アルキル基の水素原子が前記アリール基で置換された基である。
アリールアミノ基は−NArArと表され、ArおよびArの具体例としては、それぞれ独立に前記非縮合芳香族炭化水素基で説明した基と同様である。ArおよびArの一方は水素原子であってもよい。
【0100】
Mは、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)またはインジウム(In)であり、Inであると好ましい。
上記一般式(B1)のLは、下記一般式(B2)または(B3)で表される基である。
【0101】
【化36】

【0102】
前記一般式(B2)中、RからR12までは、独立に、
水素原子、または炭素数1以上40以下の炭化水素基であり、互いに隣接する基が環状構造を形成していてもよい。この炭化水素基は、置換基を有してもよい。
また、前記一般式(B3)中、R13からR27までは、独立に、
水素原子、または炭素数1以上40以下の炭化水素基であり、
互いに隣接する基が環状構造を形成していてもよい。この炭化水素基は、置換基を有してもよい。
前記一般式(B2)および一般式(B3)のRからR12まで、およびR13からR27までが示す炭素数1以上40以下の炭化水素基としては、前記一般式(B1)中のRからRまでの具体例と同様のものが挙げられる。
また、RからR12まで、およびR13からR27までの互いに隣接する基が環状構造を形成した場合の2価の基としては、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ジフェニルメタン−2,2’−ジイル基、ジフェニルエタン−3,3’−ジイル基、ジフェニルプロパン−4,4’−ジイル基などが挙げられる。
【0103】
また、電子輸送層は、下記一般式(B4)から(B6)までで表される含窒素複素環誘導体の少なくともいずれか1つを含有することが好ましい。
【0104】
【化37】

【0105】
前記一般式(B4)から(B6)までの式中、Rは、
水素原子、
環形成炭素数6以上60以下の芳香族炭化水素基、
ピリジル基、
キノリル基、
炭素数1以上20以下のアルキル基、または
炭素数1以上20以下のアルコキシ基である。
nは0以上4以下の整数である。
【0106】
前記一般式(B4)から(B6)までの式中、Rは、
環形成炭素数6以上60以下の芳香族炭化水素基
ピリジル基、
キノリル基、
炭素数1以上20以下のアルキル基、または
炭素数1以上20以下のアルコキシ基である。
【0107】
前記一般式(B4)から(B6)までの式中、RおよびRは、独立に、
水素原子、
環形成炭素数6以上60以下の芳香族炭化水素基
ピリジル基、
キノリル基、
炭素数1以上20以下のアルキル基、または
炭素数1以上20以下のアルコキシ基である。
【0108】
前記一般式(B4)から(B6)までの式中、Lは、
環形成炭素数6以上60以下の芳香族炭化水素基
ピリジニレン基、
キノリニレン基、または
フルオレニレン基である。
【0109】
前記一般式(B4)から(B6)までの式中、Arは、
環形成炭素数6以上60以下の芳香族炭化水素基
ピリジニレン基、
キノリニレン基である。
【0110】
前記一般式(B4)から(B6)までの式中、Arは、
環形成炭素数6以上60以下の芳香族炭化水素基
ピリジル基、
キノリル基、
炭素数1以上20以下のアルキル基、または
炭素数1以上20以下のアルコキシ基である。
【0111】
前記一般式(B4)から(B6)までの式中、Arは、
環形成炭素数6以上60以下の芳香族炭化水素基
ピリジル基、
キノリル基、
炭素数1以上20以下のアルキル基、
炭素数1以上20以下のアルコキシ基、または
「−Ar−Ar」で表される基(ArおよびArは、それぞれ前記と同じ)である。
【0112】
また、前記一般式(B4)から(B6)までの式中のR、R、R、R、L、Ar、Ar、およびArの説明で挙げた芳香族炭化水素基、ピリジル基、キノリル基、アルキル基、アルコキシ基、ピリジニレン基、キノリニレン基、フルオレニレン基は、置換基を有してもよい。
【0113】
電子注入層または電子輸送層に用いられる電子伝達性化合物としては、8−ヒドロキシキノリンまたはその誘導体の金属錯体、オキサジアゾール誘導体、含窒素複素環誘導体が好適である。上記8−ヒドロキシキノリンまたはその誘導体の金属錯体の具体例としては、オキシン(一般に8−キノリノールまたは8−ヒドロキシキノリン)のキレートを含む金属キレートオキシノイド化合物、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウムを用いることができる。そして、オキサジアゾール誘導体としては、下記のものを挙げることができる。
【0114】
【化38】

【0115】
これらオキサジアゾール誘導体の各一般式中、Ar17、Ar18、Ar19、Ar21、Ar22およびAr25は、
環形成炭素数6以上40以下の芳香族炭化水素基である。
但し、ここで挙げた芳香族炭化水素基は置換基を有してもよい。また、Ar17とAr18、Ar19とAr21、Ar22とAr25は、互いに同一でも異なっていてもよい。
ここで挙げた芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラニル基、ペリレニル基、ピレニル基などが挙げられる。そして、これらへの置換基としては炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数1以上10以下のアルコキシ基またはシアノ基などが挙げられる。
【0116】
これらオキサジアゾール誘導体の各一般式中、Ar20、Ar23およびAr24は、
環形成炭素数6以上40以下の2価の芳香族炭化水素基である。
但し、ここで挙げた芳香族炭化水素基は置換基を有してもよい。
また、Ar23とAr24は、互いに同一でも異なっていてもよい。
ここで挙げた2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、アントラニレン基、ペリレニレン基、ピレニレン基などが挙げられる。そして、これらへの置換基としては炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数1以上10以下のアルコキシ基またはシアノ基などが挙げられる。
【0117】
これらの電子伝達性化合物は、薄膜形成性の良好なものが好ましく用いられる。そして、これら電子伝達性化合物の具体例としては、下記のものを挙げることができる。
【0118】
【化39】

【0119】
電子伝達性化合物としての含窒素複素環誘導体は、以下の一般式を有する有機化合物からなる含窒素複素環誘導体であって、金属錯体でない含窒素化合物が挙げられる。例えば、下記一般式(B7)に示す骨格を含有する5員環もしくは6員環や、下記一般式(B8)に示す構造のものが挙げられる。
【0120】
【化40】

【0121】
前記一般式(B8)中、Xは炭素原子もしくは窒素原子を表す。ZならびにZは、それぞれ独立に含窒素ヘテロ環を形成可能な原子群を表す。
【0122】
含窒素複素環誘導体は、さらに好ましくは、5員環もしくは6員環からなる含窒素芳香多環族を有する有機化合物である。さらには、このような複数窒素原子を有する含窒素芳香多環族の場合は、上記一般式(B7)と(B8)もしくは上記一般式(B7)と下記一般式(B9)を組み合わせた骨格を有する含窒素芳香多環有機化合物が好ましい。
【0123】
【化41】

【0124】
前記の含窒素芳香多環有機化合物の含窒素基は、例えば、以下の一般式で表される含窒素複素環基から選択される。
【0125】
【化42】

【0126】
これら含窒素複素環基の各一般式中、Rは、
環形成炭素数6以上40以下の芳香族炭化水素基、
環形成炭素数2以上40以下の芳香族複素環基、
炭素数1以上20以下のアルキル基、または
炭素数1以上20以下のアルコキシ基
である。
これら含窒素複素環基の各一般式中、nは0以上5以下の整数であり、nが2以上の整数であるとき、複数のRは互いに同一または異なっていてもよい。
【0127】
さらに、好ましい具体的な化合物として、下記一般式(B10)で表される含窒素複素環誘導体が挙げられる。
HAr−L−Ar−Ar ・・・(B10)
前記一般式(B10)中、HArは、
環形成炭素数1以上40以下の含窒素複素環基である。
前記一般式(B10)中、Lは、
単結合、
環形成炭素数6以上40以下の芳香族炭化水素基、または
環形成炭素数2以上40以下の芳香族複素環基である。
【0128】
前記一般式(B10)中、Arは、
環形成炭素数6以上40以下の2価の芳香族炭化水素基である。
前記一般式(B10)中、Arは、
環形成炭素数6以上40以下の芳香族炭化水素基、または
環形成炭素数2以上40以下の芳香族複素環基である。
【0129】
また、前記一般式(B10)の式中のHAr、L、Ar、およびArの説明で挙げた含窒素複素環基、縮合芳香族炭化水素基、縮合芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、および縮合芳香族複素環基は置換基を有してもよい。
【0130】
前記一般式(B10)の式中のHArは、例えば、下記の群から選択される。
【0131】
【化43】

【0132】
前記一般式(B10)の式中のLは、例えば、下記の群から選択される。
【0133】
【化44】

【0134】
前記一般式(B10)の式中のArは、例えば、下記のアリールアントラニル基から選択される。
【0135】
【化45】

【0136】
前記アリールアントラニル基の一般式中、RからR14までは、独立して、
水素原子、
ハロゲン原子、
炭素数1以上20以下のアルキル基、
炭素数1以上20以下のアルコキシ基、
環形成炭素数6以上40以下のアリールオキシ基、
環形成炭素数6以上40以下の芳香族炭化水素基、または
環形成炭素数2以上40以下の芳香族複素環基である。
【0137】
前記アリールアントラニル基の一般式中、Arは、
環形成炭素数6以上40以下の芳香族炭化水素基、または
環形成炭素数2以上40以下の芳香族複素環基である。
【0138】
但し、前記アリールアントラニル基の一般式中のRからR14まで、およびArの説明で挙げた芳香族炭化水素基、および芳香族複素環基は、置換基を有してもよい。
また、RからRまでは、いずれも水素原子である含窒素複素環誘導体であってもよい。
【0139】
前記アリールアントラニル基の一般式中、Arは、例えば、下記の群から選択される。
【0140】
【化46】

【0141】
電子伝達性化合物としての含窒素芳香多環有機化合物には、この他、下記の化合物(特開平9−3448号公報参照)も好適に用いられる。
【0142】
【化47】

【0143】
この含窒素芳香多環有機化合物の一般式中、RからRまでは、独立に、
水素原子、
脂肪族基、
脂肪族式環基、
炭素環式芳香族環基、または
複素環基
を表す。但し、ここで挙げた脂肪族基、脂肪族式環基、炭素環式芳香族環基、および複素環基は、置換基を有してもよい。
この含窒素芳香多環有機化合物の一般式中、X、Xは、独立に、酸素原子、硫黄原子、またはジシアノメチレン基を表す。
【0144】
また、電子伝達性化合物として、下記の化合物(特開2000−173774号公報参照)も好適に用いられる。
【0145】
【化48】

【0146】
前記一般式中、R、R、RおよびRは互いに同一のまたは異なる基であって、下記一般式で表わされる芳香族炭化水素基または縮合芳香族炭化水素基である。
【0147】
【化49】

【0148】
前記一般式中、R、R、R、RおよびRは互いに同一のまたは異なる基であって、水素原子、或いはそれらの少なくとも1つが飽和もしくは不飽和アルコキシル基、アルキル基、アミノ基、またはアルキルアミノ基である。
【0149】
さらに、電子伝達性化合物は、該含窒素複素環基または含窒素複素環誘導体を含む高分子化合物であってもよい。
【0150】
なお、電子注入層または電子輸送層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは、1nm以上100nm以下である。
また、電子注入層の構成成分としては、含窒素環誘導体の他に、無機化合物として絶縁体または半導体を使用することが好ましい。電子注入層が絶縁体や半導体で構成されていれば、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。
【0151】
このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲニド、アルカリ土類金属カルコゲニド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用するのが好ましい。電子注入層がこれらのアルカリ金属カルコゲニドなどで構成されていれば、電子注入性をさらに向上させることができる点で好ましい。具体的に、好ましいアルカリ金属カルコゲニドとしては、例えば、酸化リチウム(LiO)、酸化カリウム(KO)、硫化ナトリウム(NaS)、セレン化ナトリウム(NaSe)および酸化ナトリウム(NaO)が挙げられる。好ましいアルカリ土類金属カルコゲニドとしては、例えば、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化ベリリウム(BeO)、硫化バリウム(BaS)およびセレン化カルシウム(CaSe)が挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、塩化リチウム(LiCl)、塩化カリウム(KCl)および塩化ナトリウム(NaCl)などが挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化ストロンチウム(SrF)、フッ化マグネシウム(MgF)およびフッ化ベリリウム(BeF)などのフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。
【0152】
また、半導体としては、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、イッテルビウム(Yb)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カドミウム(Cd)、マグネシウム(Mg)、ケイ素(Si)、タンタル(Ta)、アンチモン(Sb)および亜鉛(Zn)の少なくとも一つの元素を含む酸化物、窒化物または酸化窒化物などの一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。また、電子注入層を構成する無機化合物が、微結晶または非晶質の絶縁性薄膜であることが好ましい。電子注入層がこれらの絶縁性薄膜で構成されていれば、より均質な薄膜が形成されるために、ダークスポットなどの画素欠陥を減少させることができる。なお、このような無機化合物としては、アルカリ金属カルコゲニド、アルカリ土類金属カルコゲニド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物などが挙げられる。
このような絶縁体または半導体を使用する場合、その層の好ましい厚みは、0.1nm以上15nm以下程度である。また、本発明における電子注入層は、前述の還元性ドーパントを含有していても好ましい。
【0153】
(電子供与性ドーパントおよび有機金属錯体)
本発明の有機EL素子は、陰極と有機薄膜層との界面領域に電子供与性ドーパントおよび有機金属錯体の少なくともいずれかを有することも好ましい。
このような構成によれば、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
電子供与性ドーパントとしては、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物、希土類金属および希土類金属化合物などから選ばれた少なくとも一種類が挙げられる。
有機金属錯体としては、アルカリ金属を含む有機金属錯体、アルカリ土類金属を含む有機金属錯体、および希土類金属を含む有機金属錯体などから選ばれた少なくとも一種類が挙げられる。
【0154】
アルカリ金属としては、リチウム(Li)(仕事関数:2.93eV)、ナトリウム(Na)(仕事関数:2.36eV)、カリウム(K)(仕事関数:2.28eV)、ルビジウム(Rb)(仕事関数:2.16eV)、セシウム(Cs)(仕事関数:1.95eV)などが挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。これらのうち好ましくはK、Rb、Cs、さらに好ましくはRbまたはCsであり、最も好ましくはCsである。
アルカリ土類金属としては、カルシウム(Ca)(仕事関数:2.9eV)、ストロンチウム(Sr)(仕事関数:2.0eV以上2.5eV以下)、バリウム(Ba)(仕事関数:2.52eV)などが挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。
希土類金属としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、テルビウム(Tb)、イッテルビウム(Yb)などが挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。
以上の金属のうち好ましい金属は、特に還元能力が高く、電子注入域への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が可能である。
【0155】
アルカリ金属化合物としては、酸化リチウム(LiO)、酸化セシウム(CsO)、酸化カリウム(K2O)などのアルカリ酸化物、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カリウム(KF)などのアルカリハロゲン化物などが挙げられ、フッ化リチウム(LiF)、酸化リチウム(LiO)、フッ化ナトリウム(NaF)が好ましい。
アルカリ土類金属化合物としては、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)およびこれらを混合したストロンチウム酸バリウム(BaxSr1-xO)(0<x<1)、カルシウム酸バリウム(BaxCa1-xO)(0<x<1)などが挙げられ、BaO、SrO、CaOが好ましい。
希土類金属化合物としては、フッ化イッテルビウム(YbF)、フッ化スカンジウム(ScF)、酸化スカンジウム(ScO)、酸化イットリウム(Y)、酸化セリウム(Ce)、フッ化ガドリニウム(GdF)、フッ化テルビウム(TbF)などが挙げられ、YbF、ScF、TbFが好ましい。
【0156】
有機金属錯体としては、上記の通り、それぞれ金属イオンとしてアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、希土類金属イオンの少なくとも一つ含有するものであれば特に限定はない。また、配位子にはキノリノール、ベンゾキノリノール、アクリジノール、フェナントリジノール、ヒドロキシフェニルオキサゾール、ヒドロキシフェニルチアゾール、ヒドロキシジアリールオキサジアゾール、ヒドロキシジアリールチアジアゾール、ヒドロキシフェニルピリジン、ヒドロキシフェニルベンゾイミダゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ヒドロキシフルボラン、ビピリジル、フェナントロリン、フタロシアニン、ポルフィリン、シクロペンタジエン、β−ジケトン類、アゾメチン類、およびそれらの誘導体などが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0157】
電子供与性ドーパントおよび有機金属錯体の添加形態としては、界面領域に層状または島状に形成することが好ましい。形成方法としては、抵抗加熱蒸着法により電子供与性ドーパントおよび有機金属錯体の少なくともいずれかを蒸着しながら、界面領域を形成する発光材料や電子注入材料である有機物を同時に蒸着させ、有機物中に電子供与性ドーパントおよび有機金属錯体の少なくともいずれかを分散する方法が好ましい。分散濃度はモル比で有機物:電子供与性ドーパント,有機金属錯体=100:1から1:100まで、好ましくは5:1から1:5までである。
電子供与性ドーパントおよび有機金属錯体の少なくともいずれかを層状に形成する場合は、界面の有機層である発光材料や電子注入材料を層状に形成した後に、電子供与性ドーパントおよび有機金属錯体の少なくともいずれかを単独で抵抗加熱蒸着法により蒸着し、好ましくは層の厚み0.1nm以上15nm以下で形成する。
電子供与性ドーパントおよび有機金属錯体の少なくともいずれかを島状に形成する場合は、界面の有機層である発光材料や電子注入材料を島状に形成した後に、電子供与性ドーパントおよび有機金属錯体の少なくともいずれかを単独で抵抗加熱蒸着法により蒸着し、好ましくは島の厚み0.05nm以上1nm以下で形成する。
また、本発明の有機EL素子における、主成分と電子供与性ドーパントおよび有機金属錯体の少なくともいずれかとの割合としては、モル比で主成分:電子供与性ドーパント,有機金属錯体=5:1から1:5までであると好ましく、2:1から1:2までであるとさらに好ましい。
【0158】
(有機EL素子の各層の形成方法)
本発明の有機EL素子の各層の形成方法は特に限定されない。従来公知の真空蒸着法、スピンコーティング法等による形成方法を用いることができる。本発明の有機EL素子に用いる、前記一般式(1)で表される化合物を含有する有機化合物層は、真空蒸着法、分子線蒸着法(MBE法)あるいは溶媒に解かした溶液のディッピング法、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法等の塗布法による公知の方法で形成することができる。
【0159】
(有機EL素子の各層の膜厚)
発光層の膜厚は、好ましくは5nm以上50nm以下、より好ましくは7nm以上50nm以下、最も好ましくは10nm以上50nm以下である。発光層の膜厚を5nm以上とすることで、発光層を形成し易くなり、色度を調整し易くなる。発光層の膜厚を50nm以下とすることで、駆動電圧の上昇を抑制できる。
その他の各有機化合物層の膜厚は特に制限されないが、通常は数nmから1μmの範囲が好ましい。このような膜厚範囲とすることで、膜厚が薄すぎることに起因するピンホール等の欠陥を防止するとともに、膜厚が厚すぎることに起因する駆動電圧の上昇を抑制し、効率の悪化を防止できる。
【0160】
(三重項エネルギーの測定方法)
各化合物の三重項エネルギーEgTは、以下の方法により測定した。
各化合物を、公知の燐光測定法(例えば、「光化学の世界」(日本化学会編・1993)50頁
付近の記載の方法)により測定した。具体的には、各化合物を溶媒に溶解(試料10[μmol/リットル]、EPA(ジエチルエーテル:イソペンタン:エタノール=5:5:5(容積比)、各溶媒は分光用グレード)し、燐光測定用試料とした。石英セルへ入れた燐光測定用試料を77[K]に冷却し、励起光を燐光測定用試料に照射し、波長を変えながら燐光強度を測定した。燐光スペクトルは、縦軸を燐光強度、横軸を波長とした。
この燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]を求めた。この波長値を次に示す換算式でエネルギー値に換算した値をEgTとした。
換算式:EgT[eV]=1239.85/λedge
燐光の測定には、(株)日立ハイテクノロジー製のF−4500形分光蛍光光度計本体と低温測定用オプション備品を用いた。なお、測定装置はこの限りではなく、冷却装置及び低温用容器と、励起光源と、受光装置とを組み合わせることにより、測定してもよい。
【0161】
[実施形態の変形]
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変更、改良などは、本発明に含まれるものである。
【0162】
また、有機EL素子の構成は、図1に示した有機EL素子1の構成例に限定されない。例えば、発光層の陽極側に電子障壁層を、発光層の陰極側に正孔障壁層を、それぞれ設けてもよい。これにより、電子や正孔を発光層に閉じ込めて、発光層における励起子の生成確率を高めることができる。
【0163】
また、発光層は、1層に限られず、複数の発光層が積層されていてもよい。有機EL素子が複数の発光層を有する場合、少なくとも1つの発光層が本発明のビスカルバゾール誘導体を含んでいることが好ましい。
また、有機EL素子が複数の発光層を有する場合、これらの発光層が互いに隣接して設けられていてもよいし、その他の層(例えば、電荷発生層)を介して積層されていてもよい。
【実施例】
【0164】
次に、実施例を挙げて本願発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例の記載内容に何ら制限されるものではない。
【0165】
<化合物の合成>
・合成例1(化合物1の合成)
化合物1の合成スキームを次に示す。
【0166】
【化50】

【0167】
化合物1の合成にあたって、まず、
カルバゾール−2−イル−トリフルオロメタンスルフォネート(6.3g, 20mmol)、
4,6-ジフェニルトリアジン-2-クロリド(5.4g, 20mmol)、および
炭酸カリウム(3.3g, 24mmol)
をジメチルスルフォキシド(20mL)に溶かして100℃で8時間攪拌させた。
析出した固体をメタノールで洗浄して中間体1−1(8.4g 収率77%)を得た。
次いで、
中間体1−1(5.5g, 10mmol)、
カルバゾール−2−ボロン酸ピナコールエステル(2.9g, 10mmol)、および
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.23g, 0.2mmol)
をトルエン(15mL)、および2M炭酸ナトリウム水溶液(15mL)の混合液に加えて80℃で8時間攪拌させた。有機層を分離し、減圧下溶媒を留去したのち、析出した固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、中間体1−2(4.0g, 収率71%)を得た。
次いで、
中間体1−2(2.8g, 5mmol)、
ブロモベンゼン(0.86g, 5.5mmol)、
トリス(ジベンジルデンアセトン)ジパラジウム(0.09g, 0.1mmol)、
テトラフルオロほう酸トリ−t−ブチルホスホニウム(0.11g, 0.4mmol)、および
t−ブトキシナトリウム(0.67g, 7mmol)
を無水トルエン(20mL)に加えて8時間還流させた。減圧下溶媒を留去したのち、析出した固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物1(2.4g, 収率75%)を得た。
FD−MS分析の結果、分子量640に対してm/e=640であった。
【0168】
・合成例2(化合物2の合成例)
化合物2の合成スキームを次に示す。
【0169】
【化51】

【0170】
化合物2の合成にあたって、まず、
カルバゾール−2−イル−トリフルオロメタンスルフォネート(6.3g, 20mmol)、
4,6-ジフェニルピリミジン-2-クロリド(5.3g, 20mmol)、および
炭酸カリウム(3.3g, 24mmol)
をジメチルスルフォキシド(20mL)に溶かして100℃で8時間攪拌させた。析出した固体をメタノールで洗浄して中間体2−1(8.8g、収率81%)を得た。
次いで、
中間体2−1(5.5g, 10mmol)、
カルバゾール−2−ボロン酸ピナコールエステル(2.9g, 10mmol)、および
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.23g, 0.2mmol)
をトルエン(15mL)および2M炭酸ナトリウム(15mL)混合液に加えて80℃で8時間攪拌させた。有機層を分離し、減圧下溶媒を留去したのち、析出した固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、中間体2−2(3.5g、収率63%)を得た。
次いで、
中間体2−2(2.8g, 5mmol)、
ブロモベンゼン(0.86g, 5.5mmol)、
トリス(ジベンジルデンアセトン)ジパラジウム(0.09g, 0.1mmol)、
テトラフルオロほう酸トリ−t−ブチルホスホニウム(0.11g, 0.4mmol)、および
t−ブトキシナトリウム(0.67g, 7mmol)
を無水トルエン(20mL)に加えて8時間還流させた。減圧下溶媒を留去したのち、析出した固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物2(2.2g、収率68%)を得た。
FD−MS分析の結果、分子量639に対してm/e=639であった。
化合物2のイオン化ポテンシャル(IP)は、5.69eVであった。
化合物2のアフィニティ(Af)は、2.57eVであった。
化合物2の三重項エネルギー(Eg(T))は、2.66eVであった。
【0171】
・合成例3(化合物3の合成例)
化合物3の合成スキームを次に示す。
【0172】
【化52】

【0173】
化合物3の合成にあたって、まず、アルゴン雰囲気下、3つ口フラスコに
2−ブロモカルバゾール(18g,73mmol)、
ヨードベンゼン(14.9g,73mmol)、
CuI(14g,73mmol)、
りん酸三カリウム(23.2g,110mmol)、
無水ジオキサン(100mL)、および
シクロヘキサンジアミン(8.3g,73mmol)
を、この順で加えて100℃で8時間攪拌した。
反応液に水を加えて固体を析出させ、この固体をヘキサン、次いでメタノールで洗浄した。さらに、得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体3−1(10.5g,収率45%)を得た。
次いで、中間体3−1(10g, 31mmol)を無水テトラヒドロフラン(100mL)に加え、0℃に冷却したのちにn-ブチルリチウム 1.6Mヘキサン(24mL, 38mmol)を滴下した。 30分後、ほう酸トリイソプロピル(11.7g, 62mmol)の無水テトラヒドロフラン(50mL)溶液を滴下した後、室温に昇温させて5時間攪拌させた。1N塩酸を加えて30分攪拌させた後、有機層を分離し、減圧下溶媒を留去した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、中間体3−2(4.9g,収率55%)を得た。
次いで、
中間体3−2(4.5g, 15.7mmol)、
カルバゾール−2−ボロン酸ピナコールエステル(4.9g, 15.7mmol)、および
テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.36g, 0.3mmol)
をトルエン(25mL)および2M炭酸ナトリウム混合液(25mL)に加えて80℃で8時間攪拌させた。有機層を分離し、減圧下溶媒を留去したのち、析出した固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、中間体3−3(4.5g,収率70%)を得た。
次いで、
中間体3−3(2.0g, 5mmol)、
中間体3−4(1.93g, 5mmol)、
トリス(ジベンジルデンアセトン)ジパラジウム(0.09g, 0.1mmol)、
テトラフルオロほう酸トリ−t−ブチルホスホニウム(0.11g, 0.4mmol)、および
t−ブトキシナトリウム(0.67g, 7mmol)
を無水トルエン(20mL)に加えて8時間還流させた。減圧下溶媒を留去したのち、析出した固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物3(2.1g, 収率60%)を得た。
FD−MS分析の結果、分子量715に対してm/e=715であった。
【0174】
<有機EL素子の作製、及び評価>
有機EL素子を以下のように作製し、評価した。
有機EL素子の作製に用いた化合物は、上記合成例1〜3で示した化合物1〜3の他、次の通りである。
【0175】
【化53】

【0176】
・実施例1
25mm×75mm×厚さ1.1mmのITO透明電極付きガラス基板(ジオマティック株式会社製)をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。
洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず透明電極ラインが形成されている側の面上に前記透明電極を覆うようにして上記電子受容性化合物(C−1)を蒸着し、膜厚5nmの化合物(C−1)膜を成膜し、この膜を正孔注入層とした。
この化合物(C−1)膜上に第1正孔輸送材料として上記芳香族アミン誘導体(X1)を蒸着し、膜厚50nmの芳香族アミン誘導体(X1)膜を成膜し、この膜を第1正孔輸送層とした。
第1正孔輸送層の成膜に続けて、第2正孔輸送材料として上記芳香族アミン誘導体(X2)を蒸着し、膜厚60nmの芳香族アミン誘導体(X2)膜を成膜し、この膜を第2正孔輸送層とした。
【0177】
さらに、この第2正孔輸送層上に前記合成例1で得た化合物1を蒸着し、膜厚45nmの発光層を成膜した。化合物1の蒸着と同時に燐光発光材料としての上記化合物(D3)を共蒸着した。化合物(D3)の濃度は8.0質量%であった。この共蒸着膜は、化合物1を燐光ホスト材料とし、化合物(D3)を燐光ドーパント材料とする発光層として機能する。なお、化合物(D3)は、赤色発光性材料である。
そして、この発光層の成膜に続けて上記化合物(ET2)を蒸着し、膜厚30nmの化合物(ET2)膜を成膜し、この膜を電子輸送層とした。
【0178】
次に、この電子輸送層上に成膜速度0.1オングストローム/minで、LiFを蒸着し、膜厚1nmのLiF膜を成膜し、この膜を電子注入性電極(陰極)とした。
さらに、このLiF膜上に金属Alを蒸着し、膜厚80nmの金属陰極を成膜した。
このようにして、実施例1の有機EL素子を作製した。
【0179】
・実施例2
実施例2の有機EL素子は、実施例1の有機EL素子の発光層の燐光ホスト材料について、化合物1に代えて、化合物2を用いた以外は、実施例1の有機EL素子と同様に作製した。
【0180】
・実施例3
実施例3の有機EL素子は、実施例1の有機EL素子の発光層の燐光ホスト材料について、化合物1に代えて、化合物3を用いた以外は、実施例1の有機EL素子と同様に作製した。
【0181】
〔有機EL素子の評価〕
作製した有機EL素子について、発光効率および輝度半減寿命の評価を行った。結果を表1に示す。
【0182】
・発光効率(電流効率)の測定
作製した有機EL素子を、室温下、直流定電流駆動(電流密度:10mA/cm)で発光させ、そのときの分光放射輝度スペクトルを分光放射輝度計(コミカミノルタ社製、CS−1000)にて計測した。得られた分光放射輝度スペクトルから、発光効率(単位:cd/A)を算出した。
【0183】
・半減寿命の測定
作製した有機EL素子を、室温下、直流定電流駆動で発光させ、初期輝度を5000cd/mとして、輝度が半減するまでの時間を測定した。
【0184】
【表1】

【0185】
表1に示されているように、実施例1〜3の赤色発光の有機EL素子は、良好な発光効率および輝度半減寿命を示す。
化合物2の三重項エネルギーEgTは、2.66eVであり、化合物F1の三重項エネルギーEgTは、2.91eVである。このように、カルバゾリル基同士の結合位置が3位同士である化合物F1のようなビスカルバゾール誘導体と、当該結合位置が2位同士である化合物2のようなビスカルバゾール誘導体とでは、物性が大きく異なることが分かった。
また、化合物1〜3は、カルバゾリル基のN位(9位)に、直接または連結基を介して含窒素芳香族複素環基が結合している。このような化合物の構造とすることで、カルバゾリル基のベンゼン環に含窒素芳香族複素環基を結合させた構造と比べて、HOMOとLUMOとを明確に分離できるため、化合物1〜3は、各電荷に対する耐性が向上したと考えられる。さらに、カルバゾリル基のN位(9位)に直接または連結基を介して結合する含窒素芳香族複素環基が、化合物1および化合物3においてはトリアジニル基であり、化合物2においてはピリミジニル基である。このような含窒素芳香族複素環基であることにより、化合物1〜3は、各電荷に対する耐性が向上したと考えられる。したがって、本発明のビスカルバゾール誘導体である化合物1〜3をホスト材料として用いた実施例1〜3の有機EL素子は、耐久性に優れ、輝度半減寿命が向上したと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明のビスカルバゾール誘導体は、有機EL素子用材料として利用できる。また、本発明のビスカルバゾール誘導体を用いた有機EL素子は、表示装置や照明装置における発光素子として利用できる。
【符号の説明】
【0187】
1…有機EL素子、2…基板、3…陽極、4…陰極、6…正孔輸送層、7…発光層、8…電子輸送層、10…有機化合物層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるビスカルバゾール誘導体。
【化1】

前記一般式(1)において、
およびAは、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、または
置換もしくは無置換の環形成炭素数1〜30の芳香族複素環基を表す。
ただし、AおよびAの少なくとも一方は、置換もしくは無置換の環形成炭素数1〜4の含窒素芳香族複素環基を表す。
〜Yは、下記Rと結合する炭素原子または窒素原子である。ただし、Y〜Yのうち、隣り合う二つが炭素原子である場合、Rと結合せずに、当該隣り合う炭素原子を含む環を形成しても良い。
〜Yは、下記Rと結合する炭素原子または窒素原子である。ただし、YおよびYが炭素原子である場合、Rと結合せずに、YおよびYの炭素原子を含む環を形成しても良い。
〜Y10は、下記Rと結合する炭素原子または窒素原子である。ただし、YおよびY10が炭素原子である場合、Rと結合せずに、YおよびY10の炭素原子を含む環を形成しても良い。
11〜Y14は、下記Rと結合する炭素原子または窒素原子である。ただし、Y11〜Y14のうち、隣り合う二つが炭素原子である場合、Rと結合せずに、当該隣り合う炭素原子を含む環を形成しても良い。
Rは、互いに独立して
水素原子、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の環形成炭素数1〜30の芳香族複素環基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30の直鎖、分岐、または環状のアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、
置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基、
置換若しくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のハロアルキル基、
置換もしくは無置換の炭素数1〜30のハロアルコキシ基、
置換もしくは無置換の炭素数3〜30のトリアルキルシリル基、
置換もしくは無置換の炭素数8〜40のジアルキルアリールシリル基、
置換もしくは無置換の炭素数13〜50のアルキルジアリールシリル基、
置換もしくは無置換の炭素数18〜60のトリアリールシリル基、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ヒドロキシル基、
ニトロ基、または
カルボキシ基
を表す。
〜Lは、単結合もしくは2価の連結基を表す。
【請求項2】
請求項1に記載のビスカルバゾール誘導体において、
前記一般式(1)におけるLは、単結合であることを特徴とするビスカルバゾール誘
導体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のビスカルバゾール誘導体において、
前記一般式(1)における前記含窒素芳香族複素環基は、置換もしくは無置換のピリミ
ジニル基、または置換もしくは無置換のトリアジニル基である
ことを特徴とするビスカルバゾール誘導体。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のビスカルバゾール誘導体において、
前記一般式(1)におけるLおよびLの少なくとも一方は、
置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素化合物の二価の基、また
は置換もしくは無置換の環形成炭素数1〜30の芳香族複素環式化合物の二価の基であ
ることを特徴とするビスカルバゾール誘導体。
【請求項5】
陰極と陽極との間に有機化合物層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機化合物層は、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のビスカルバゾール誘導体を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記有機化合物層は、発光層を含む複数の有機薄膜層を備え、
前記複数の有機薄膜層のうち少なくとも一つの層は、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のビスカルバゾール誘導体を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
請求項6に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記発光層は、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のビスカルバゾール誘導体を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記発光層は、燐光発光性材料を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記燐光発光性材料は、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、および白金(Pt)から選択される金属原子のオルトメタル化錯体を含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
請求項6から請求項9までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記発光層は、芳香族アミン誘導体をさらに含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
請求項6から請求項10までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記複数の有機薄膜層は、正孔輸送層、発光層および電子輸送層を含む
ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。

【図1】
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【公開番号】特開2013−35752(P2013−35752A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170205(P2011−170205)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】