説明

ビスフェノール化合物のジオキシアルキレンエーテルの製造方法および組成物

【課題】ビスフェノール化合物からビスフェノール化合物のジオキシアルキレンエーテルを製造する方法において、工業化にあたって効率的であり、かつ副生成物が少なく、純度の高いビスフェノール化合物のジオキシアルキレンエーテルの製造方法を提供する。
【解決手段】ビスフェノール化合物(A)に炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加して、該ビスフェノール化合物のジオキシアルキレンエーテル(B)を製造する方法において、触媒(C)の存在下、水及び下記溶剤(S1)との混合溶媒(S)中で30〜80℃の反応温度で反応させる工程(I)を含むことを特徴とするビスフェノール化合物のジオキシアルキレンエーテル(B)の製造方法。
溶剤(S1):該溶剤100gに該ビスフェノール化合物のジオキシアルキレンエーテル(B)を1g以上溶解する溶剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスフェノール化合物のジオキシアルキレンエーテルの製造方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂及びポリカーボネート樹脂等の原料としてビスフェノール類が使用されているが、ビスフェノール化合物が有するフェノール性の水酸基は多塩基酸等との反応性が低いため、反応性を改善する目的でビスフェノール化合物にアルキレンオキサイド(以下、AOと略記する場合がある。)を付加してアルコール性の水酸基とし、多塩基酸等との反応性を高めたものが前記樹脂の原料として知られている(特許文献1)。しかしながら、ビスフェノール化合物にAOを付加する場合、ビスフェノール化合物のベンゼン環へのAO直接付加物が多量に存在し、そのため樹脂等の反応中間体として使用したときに、成形時の作業性不良等の問題があった。
【0003】
ビスフェノール化合物のジオキシエチレンエーテルの製造方法としては、ビスフェノール類にエチレンクロロヒドリンを反応させる方法が知られている(特許文献2)。また、ビスフェノールAに、トリエチルアミン触媒存在下、60〜100℃でエチレンオキサイド(以下、EOと略記する。)を付加させ、有機カルボン酸で処理する方法が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−227540号公報
【特許文献2】米国特許第2331265号明細書
【特許文献3】特許第4021295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の方法では、触媒としてビスフェノール類と等量以上のアルカリを必要とし、反応後に触媒を精製するためには再結晶が必要であり、効率的な製造方法ではなかった。また、特許文献3の方法では、副生するビスフェノールAのベンゼン環へのEO直接付加物は0.5モル%が下限であった。反応時に副生する副生物は、ジオキシエチレンエーテルから除去することは困難であり、反応時の副生物の発生を抑制することが求められていた。
本発明は、ビスフェノール化合物からビスフェノール化合物のジオキシアルキレンエーテルを製造する方法において、工業化にあたって効率的であり、かつ副生物が少なく、純度の高いビスフェノール化合物のジオキシアルキレンエーテルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、ビスフェノール化合物(A)に炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加して、該ビスフェノール化合物のジオキシアルキレンエーテル(B)を製造する方法において、触媒(C)の存在下、水及び下記溶剤(S1)との混合溶媒(S)中で30〜80℃の反応温度で反応させる工程(I)を含むことを特徴とするビスフェノール化合物のジオキシアルキレンエーテル(B)の製造方法である。
溶剤(S1):該溶剤100gに該ビスフェノール化合物のジオキシアルキレンエーテル(B)を1g以上溶解する溶剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によると、反応後に再結晶、水洗等の精製を行うことがなく、工業化するにあたって効率的であり、かつビスフェノール化合物のベンゼン環へのAO直接付加
物といった副生成物が少なく、純度の高いビスフェノール化合物のジオキシアルキレンエーテルが得られるため、各種樹脂原料として用いるのに実用的であり、特に樹脂成形時の作業性(流動性)が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明におけるビスフェノール化合物(A)のジオキシアルキレンエーテル(B)[以下において、単に「ジオキシアルキレンエーテル(B)」又は「(B)」と表記する場合がある。]とは、ビスフェノール化合物(A)が有する2つのフェノール性水酸基の両方に1モルずつAOが付加した化合物(B2)[以下において、単に「AO2モル付加物(B2)」又は「(B2)」と表記する場合がある。]を主成分とし、AO2モル付加物(B2)を86モル%以上、好ましくは88モル%以上、更に好ましくは90モル%以上含み、かつビスフェノール化合物(A)のベンゼン環へのアルキレンオキサイド直接付加物(D)の含有量が0.5モル%以下である。
【0009】
本発明は、触媒(C)の存在下、ビスフェノール化合物(A)と炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとを、水及び下記溶剤(S1)との混合溶媒(S)中で30〜80℃の反応温度で反応させる工程(I)を含む製造方法である。
本発明の製造方法において使用されるビスフェノール化合物(A)としては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、及び前記ビスフェノール化合物に炭素数1〜30のアルキル基又はハロゲン原子が1〜8個置換したもの(例えばトリクロロビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA及びジブロモビスフェノールF等のハロゲン置換体;2−メチルビスフェノールA(ビスフェノールC)、2,6−ジメチルビスフェノールA及び2,2‘−ジエチルビスフェノールF等のアルキル置換体)等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールSであり、更に好ましいのはビスフェノールAである。
【0010】
AOは炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを表し、中でも炭素数2のエチレンオキサイドおよび炭素数3のプロピレンオキサイドが好ましく、更に好ましいのは炭素数2のエチレンオキサイドである。
【0011】
ジオキシアルキレンエーテル(B)におけるAO平均付加モル数(以下、AOavと略記する。)は1.80〜2.40モルであり、好ましいのは1.95〜2.25モルであり、更に好ましいのは2.00〜2.20、最も好ましいのは2.05〜2.15である。AOavが1.80モル未満であると、ビスフェノール化合物(A)のAO1モル付加物(B1)[以下において、単に「AO1モル付加物(B1)」又は「(B1)」と表記する場合がある。]の含有量が多くなり、AOavが2.40モルより多いと、ビスフェノール化合物(A)のAO3モル以上付加物(B3)[以下において、単に「AO3モル以上付加物(B3)」又は「(B3)」と表記する場合がある。]が多くなり好ましくない。
【0012】
前記AOavは、JIS K0070の方法に準じて水酸基価を測定し、以下の計算式から算出することができる。
AOav=[(112,200/水酸基価)−ビスフェノール化合物(A)の分子量]/(AOの分子量)
【0013】
本発明の製造方法において、ジオキシアルキレンエーテル(B)を得るためのAOの仕込みモル数は、目的の付加モル数よりもやや多いモル数とすることが好ましい。好ましくは目的の付加モル数の1.01〜1.1倍モルである。
【0014】
AO付加反応における触媒(C)としては、一般に使用されるAO付加反応触媒であればよく、酸性触媒又は塩基性触媒が挙げられる。
酸性触媒としては、環状エーテルを開環付加重合させる酸性触媒であれば特に限定はない。硫酸(塩)、リン酸(塩)、過ハロゲン酸(塩)(過塩素酸のマグネシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、過臭素酸のマグネシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩等)等が挙げられる。
塩基性触媒としては、3級アミン(トリメチルアミン及びトリエチルアミン等)、四級アンモニウム塩(水酸化テトラメチルアンモニウム等)、アルカリ金属水酸化物(水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化セシウム等)及びアルカリ土類金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム及び水酸化バリウム等)等が挙げられる。
これらのうち、AO1モル付加物(B1)及びAO3モル以上付加物(B3)の含有量を更に少なくするという観点から塩基性触媒が好ましく、更に好ましいのは、3級アミン、四級アンモニウム塩及びアルカリ金属水酸化物であり、特に好ましいのは3級アミン及び四級アンモニウム塩である。触媒(C)の使用量は、ビスフェノール化合物(A)1モルに対して0.1〜7モル%であり、好ましいのは0.2〜5モル%である。7モル%を越えると、触媒の除去工程に時間がかかり、また、0.1%未満であると、AO付加反応に時間がかかり好ましくない。
【0015】
ビスフェノール化合物(A)とアルキレンオキサイドとを反応させるAO付加反応において、ビスフェノール化合物(A)は、一般にその融点が150℃以上(例えば、ビスフェノールAの融点は158〜159℃)であり、また、ジオキシアルキレンエーテル(B)の融点は110℃以上(ビスフェノールAのEO2モル付加物は114〜116℃)であるため、AO付加反応を80℃以下の低温で行うためには、溶剤(S1)を使用する。溶剤(S1)としては、溶剤100gに対して、ジオキシエチレンエーテル(B)を1g以上溶解できるものであれば使用できるが、例えば、アルコール溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル溶剤、アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン溶剤並びにトルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤が挙げられる。(B)の溶解性、(S1)の除去しやすさ及び反応時の副生物の発生抑制の観点から、炭素数1〜4のアルコール溶剤及びテトラヒドロフラン等のエーテル溶剤が好ましく、更に好ましくは炭素数1〜4のアルコール溶剤である。
【0016】
さらに、ジオキシアルキレンエーテル(B)において、高含有量のAO2モル付加物(B2)を得る観点から、溶剤(S1)と水を混合溶媒(S)として使用する。水の含有量は、混合溶媒(S)の重量に基づき、0.5〜80重量%である。水の含有量がこの範囲内であると、AO2モル付加物(B2)含量が高いジオキシアルキレンエーテル(B)を得ることができる。さらに、水の含有量が80重量%を超えると、溶剤(S1)量が少なくなるため、反応後期に撹拌が困難になり好ましくない。
【0017】
また、混合溶媒(S)の使用量は、ビスフェノール化合物(A)の重量に基づき、5〜75重量%であり、好ましいのは10〜50重量%であり、更に好ましいのは15〜45重量%である。混合溶媒(S)の重量が5重量%より少ないと、低温でAO反応するのが難しくなり、75重量%より多いと、ジオキシアルキレンエーテル(B)の生産性が低下し好ましくない。
【0018】
AO付加反応としては、ビスフェノール化合物(A)、触媒(C)及び混合溶媒(S)を加圧反応容器に仕込み、AOを吹き込み、常圧又は加圧下に1段階又は多段階で反応を行なう方法が挙げられる。
AO付加反応条件の内、AOの付加反応時の反応温度は、30〜80℃であり、好ましいのは40〜75℃である。反応温度が80℃以下であると、ビスフェノール化合物のベンゼン環へのAO直接付加物(D)が生成し難くなるため好ましい。反応温度が30℃以上であると、製造に要する時間が短くなり、生産効率が上がるため好ましい。
通常、反応圧力は、安全性の観点から−0.1MPa〜0.5MPa(ゲージ圧)であることが好ましく、反応時間としては、生産性の観点から1〜24時間であることが好ましいが、この限りではなく、AOの滴下速度、触媒量等を変更することで調節可能である。
【0019】
AO付加反応終了後、触媒(C)、混合溶媒(S)および残存AOを除去する工程(II)を実施してもよい。除去方法としては、減圧下で留去する方法やろ過助剤による処理方法等が挙げられ、例えば、触媒(C)としてアミン触媒を使用した場合、減圧下160℃に昇温し、触媒(C)、混合溶媒(S)および残存AOを留去することができる。
【0020】
ジオキシアルキレンエーテル(B)において、ビスフェノール化合物(A)のベンゼン環へのAO直接付加物(D)が多くなると、樹脂等の反応中間体として使用したときに、成形時の作業性不良等が起こりやすくなる。これは(D)が架橋剤として作用し、不溶不融物(ゲル様ブツ)を生じることにより、成形時に作業性が悪くなったり、成形物の外観、強度等に難を与えたりするためと考えられる。よって、(D)の含有量はより少ない方が好ましく、(D)の含有量を0.5%以下に制御することは有用である。
【0021】
前記(B1)、前記(B2)、前記(B3)、未反応のビスフェノール類(A)及びビスフェノール化合物のベンゼン環へのAO直接付加物(D)の含有量(モル%)は、液体クロマトグラフィー(以下、LCと略記)分析により測定することができる。LC分析の測定条件としては、例えば下記の方法が挙げられる。
【0022】
<LCの測定条件>
LC測定装置 : LC−20AD[島津製作所(株)製]
カラム : CAPCELL PAK C18
(4.6mmOX 250mm)[(株)資生堂製]
溶離液 : アセトニトリル/水=30/70(体積%)
流速 : 1.0ml/min
検出器 : SPD−M20A[島津製作所(株)製]
検出波長 : 275nm
注入量 : 2μl
【0023】
本発明のジオキシアルキレンエーテル(B)の製造時には、その特性を損なわない範囲で、添加剤を含有してもよい。添加剤としては消泡剤(シリコーン系消泡剤、ポリオキシアルキレン系消泡剤及び鉱物油系消泡剤等)及び酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール及びベンゾトリアゾール類等)等が挙げられる。添加剤の含有量は、ビスフェノール化合物(A)の重量に基づき、好ましいのは0〜0.5重量%である。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%を示す。
【0025】
<実施例1>
ガラス製オートクレーブにビスフェノールA849.3g(3.72mol)、イソプロピルアルコール(以下において、IPAと表記する場合がある。)120.0g、水120.0g、トリエチルアミン7.5g(ビスフェノールAに対して2モル%)を仕込み、窒素置換を行った後、60℃まで昇温し、ビスフェノールAを混合溶媒に分散させた。
次いで、EO350.7g(7.97mol)を55〜65℃、反応圧0.2MPa以下の範囲で滴下し、反応させた。反応時間は合計8時間であった。
反応後、160℃まで徐々に昇温し、減圧下で触媒、溶媒等を留去し、本発明のジオキシエチレンエーテル(B−1)を1174.7g(収率99.0%)得た。
この(B−1)をLCにて分析したところ、EO2モル付加物90.5モル%、ビスフェノールAのベンゼン環へのEO直接付加物0.19モル%であった。
【0026】
<実施例2>
実施例1の反応温度を80℃とする以外は同様にして、ジオキシエチレンエーテル(B−2)を1183.1g(収率99.0%)得た。
この(B−2)をLCにて分析したところ、EO2モル付加物89.0モル%、ビスフェノールAのベンゼン環へのEO直接付加物0.46モル%であった。
【0027】
<実施例3>
実施例1の溶媒をIPA60.0g、水139.4g、触媒を水酸化テトラメチルアンモニウム25%水溶液54.2g(ビスフェノールAに対して4モル%)とする以外は同様にして、ジオキシエチレンエーテル(B−3)を1180.0g(収率99.0%)得た。
この(B−3)をLCにて分析したところ、EO2モル付加物90.2モル%、ビスフェノールAのベンゼン環へのEO直接付加物0.28モル%であった。
【0028】
<実施例4>
実施例1の溶媒をトルエン240.0g、水2.4g、触媒を水酸化リチウム・1水和物1.6g(ビスフェノールAに対して1モル%)とする以外は同様にして、ジオキシエチレンエーテル(B−4)を1175.6g(収率99.0%)得た。
この(B−4)をLCにて分析したところ、EO2モル付加物86.5モル%、ビスフェノールAのベンゼン環へのEO直接付加物0.14モル%であった。
【0029】
<実施例5>
実施例4の水を120.0g、反応温度を50℃とする以外は同様にして、ジオキシエチレンエーテル(B−5)を1175.0g(収率99.0%)得た。
この(B−5)をLCにて分析したところ、EO2モル付加物92.2モル%、ビスフェノールAのベンゼン環へのEO直接付加物0.35モル%であった。
【0030】
<実施例6>
実施例1の溶媒をテトラヒドロフラン540.0g、水19.3g、触媒を水酸化テトラメチルアンモニウム25%水溶液54.2g(ビスフェノールAに対して4モル%)、反応温度を40℃とする以外は同様にして、ジオキシエチレンエーテル(B−6)を1175.0g(収率99.0%)得た。
この(B−6)をLCにて分析したところ、EO2モル付加物88.3モル%、ビスフェノールAのベンゼン環へのEO直接付加物0.21モル%であった。
【0031】
<実施例7>
実施例1の溶媒をテトラヒドロフラン60.0g、水24.0g、触媒をトリエチルアミン7.5g(ビスフェノールAに対して2モル%)、反応温度を80℃とする以外は同様にして、ジオキシエチレンエーテル(B−7)を1168.5g(収率99.0%)得た。
この(B−7)をLCにて分析したところ、EO2モル付加物88.6モル%、ビスフェノールAのベンゼン環へのEO直接付加物0.44モル%であった。
【0032】
<実施例8>
実施例1のビスフェノールAをビスフェノールF745.0g、IPA105.3g、水105.3gとする以外は同様にして、ジオキシエチレンエーテル(B−8)を1313.7g(収率99.0%)得た。
この(B−8)をLCにて分析したところ、EO2モル付加物87.8モル%、ビスフェノールFのベンゼン環へのEO直接付加物0.48モル%であった。
【0033】
<比較例1>
ガラス製オートクレーブにビスフェノールA849.3g(3.72mol)、水120.0g、水酸化リチウム・1水和物1.6g(ビスフェノールAに対して1モル%)を仕込み、窒素置換を行った後、80℃まで昇温し、ビスフェノールAを混合溶媒に分散させた。
次いで、EO350.7g(7.97mol)を75〜85℃、反応圧0.2MPa以下の範囲で滴下反応させた。反応時間は合計10時間であった。
反応後、160℃まで徐々に昇温し、減圧下で溶媒等を留去し、ジオキシエチレンエーテル(B’−1)を1167.5g(収率99.0%)得た。
この(B’−1)をLCにて分析したところ、EO2モル付加物93.6モル%、ビスフェノールAのベンゼン環へのEO直接付加物0.94モル%であった。
【0034】
<比較例2>
比較例1の触媒をトリエチルアミン3.8g(ビスフェノールAに対して1モル%)、反応温度を110℃とする以外は同様にして、ジオキシエチレンエーテル(B’−2)を1171.8g(収率99.0%)得た。
この(B’−2)をLCにて分析したところ、EO2モル付加物92.0モル%、ビスフェノールAのベンゼン環へのEO直接付加物1.13モル%であった。
【0035】
<比較例3>
実施例4の触媒をトリエチルアミン7.5g(ビスフェノールAに対して2モル%)、反応温度を100℃とする以外は同様にして、ジオキシエチレンエーテル(B’−3)を1182.8g(収率99.0%)得た。
この(B’−3)をLCにて分析したところ、EO2モル付加物92.0モル%、ビスフェノールAのベンゼン環へのEO直接付加物1.13モル%であった。
【0036】
<比較例4>
比較例3の溶媒をトルエン168.0g、水84.0g、反応温度を85℃とする以外は同様にして、ジオキシエチレンエーテル(B’−4)を1182.8g(収率99.0%)得た。
この(B’−4)をLCにて分析したところ、EO2モル付加物89.2モル%、ビスフェノールAのベンゼン環へのEO直接付加物1.20モル%であった。
【0037】
<比較例5>
実施例1の溶媒をIPA240.0gのみとする以外は同様にして、ジオキシエチレンエーテル(B’−5)を1176.6g(収率99.0%)得た。
この(B’−5)をLCにて分析したところ、EO2モル付加物82.1モル%、ビスフェノールAのベンゼン環へのEO直接付加物0.32モル%であった。
【0038】
実施例1〜8及び比較例1〜5の製造条件及び得られたジオキシアルキレンエーテルの分析結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1中における化合物の略号は以下のとおりである。
ビスA:ビスフェノールA
ビスF:ビスフェノールF
EO:エチレンオキサイド
TEA:トリエチルアミン
TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウム
LiOH:水酸化リチウム
IPA:イソプロパノール
THF:テトラヒドロフラン
【0041】
本発明の製造法により得られるビスフェノール化合物のジオキシアルキレンエーテルは、従来法により得られるものに比べ、ビスフェノール化合物のベンゼン環へAOが直接付加した不純物が大幅に低減し、かつAO2モル付加物の含有量が高いものが得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の製造法で得られたビスフェノール化合物のジオキシアルキレンエーテルは、従来品よりも、ビスフェノール化合物のベンゼン環へAOが直接付加した不純物や、AO3モル以上付加物が少ないため、ポリエステル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート等の樹脂改質剤として有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノール化合物(A)に炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加して、該ビスフェノール化合物のジオキシアルキレンエーテル(B)を製造する方法において、触媒(C)の存在下、水及び下記溶剤(S1)との混合溶媒(S)中で30〜80℃の反応温度で反応させる工程(I)を含むことを特徴とするビスフェノール化合物のジオキシアルキレンエーテル(B)の製造方法。
溶剤(S1):該溶剤100gにビスフェノール化合物のジオキシアルキレンエーテル(B)を1g以上溶解する溶剤。
【請求項2】
溶剤(S1)が、アルコール溶剤、芳香族炭化水素溶剤及びエーテル溶剤からなる群から選ばれる請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
溶剤(S1)が、炭素数1〜4のアルコール溶剤である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
工程(I)の後、溶媒(S)及び触媒(C)を除去する工程(II)を含む請求項1〜3いずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法により得られた生成物の合計重量に基づいて、ビスフェノール化合物(A)のベンゼン環へのアルキレンオキサイド直接付加物(D)が0.5モル%以下であり、かつビスフェノール化合物(A)のアルキレンオキサイド2モル付加物(B2)が86重量%以上である該ビスフェノール化合物のジオキシアルキレンエーテル(B)。

【公開番号】特開2013−28561(P2013−28561A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165669(P2011−165669)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】