説明

ビスベンゾジチオール化合物の製造方法

【課題】安全かつ安価な原料を用いて、有機電子材料、紫外線吸収剤およびその合成中間体として有用なビスベンゾジチオール化合物を簡便に収率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】1,4−ベンゾキノン又は1,2−ベンゾキノンと下記一般式(2)で表されるジチオカルバメート化合物とを反応させる、下記一般式(1)で表される化合物の製造方法。


[式中、R1及びR2は、各々独立に水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表し、R1及びR2は同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。Xは電荷を中和するイオンを表す。mは1又は2の整数を表し、nは1又は2の整数を表す。Mは水素原子、金属原子または塩基の共役酸を表す。pは1〜4の整数を表し、qは1〜4の整数を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスベンゾジチオール化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロキノンの2,3位及び5,6位に2つのジチオール環が縮合し、さらに各々のジチオール環の2位にエキソメチレン基を介してシアノ基が2個置換した化合物が知られている。また、各々のジチオール環の2位の炭素原子にジメチルイミノ基が置換した化合物が知られている。これらの化合物は有機半導体等の有機電子材料、紫外線吸収剤等の合成中間体として有用である(例えば、特許文献1及び2を参照。)。
前者の化合物は、二硫化炭素とマロノニトリルを水酸化ナトリウムの存在下で反応させて得られるジナトリウム塩をクロラニルと反応させることによって合成する方法が知られている(例えば、非特許文献1を参照。)。後者の化合物は、二硫化炭素とジメチルアミンから得られるジメチルジチオカルバメートのジメチルアンモニウム塩をクロラニルと反応させることによって合成する方法が知られている(例えば、非特許文献2及び3を参照。)。
これらの合成法は、いずれも環境に有害な化合物であるクロラニルを原料として使用することが問題であり、より安全な原料を用いて簡便に収率よく合成する方法が望まれていた。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−150273号公報
【特許文献2】特開昭63−225382号公報
【非特許文献1】Liebibs Ann.Chem.,1969年,726巻,103−109ページ
【非特許文献2】Tetrahedron Letters,1977年,26巻,2225ページ
【非特許文献3】Tetrahedron Letters,1991年,32巻,4897〜4900ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、安全かつ安価な原料を用いて、有機電子材料、紫外線吸収剤およびその合成中間体として有用なビスベンゾジチオール化合物を簡便に収率よく製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、強度の変異原性が認められしかも環境に有害な化合物であるクロラニルを、1,4−ベンゾキノンに替えて、従来と同様の反応条件で反応を行ったところ、ハイドロキノンの片側にのみジチオール環が縮環した化合物が得られた。これは、生成物(ハイドロキノンの片側にのみジチオール環が縮環した化合物)の溶解性が低く、生成と同時にその化合物の結晶が析出するためそれ以上の反応が全く進行しなかったことによるものである。
本発明者らは、さらに鋭意検討を重ねた結果、反応に使用する溶媒を工夫することにより、合成中間体の結晶析出を抑制し、1,4−ベンゾキノン又は1,2−ベンゾキノンを原料として目的のハイドロキノン又はカテコールの両側にジチオール環が縮環した化合物を簡便に製造することができることを見出した。本発明はこのような知見に基づきなされるに至ったものである。
【0006】
本発明の課題は、以下の方法によって達成された。
[1]1,4−ベンゾキノン又は1,2−ベンゾキノンと下記一般式(2)で表されるジチオカルバメート化合物とを極性溶媒中で反応させることを特徴とする下記一般式(1)で表される化合物の製造方法。
【0007】
【化1】

【0008】
[一般式(1)中、R1及びR2は、互いに独立して水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R1及びR2は同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。Xは電荷を中和するイオンを表す。mは1ないし2の整数を表し、nは1ないし2の整数を表す。]
【0009】
【化2】

【0010】
[一般式(2)中、R1及びR2は前記と同義である。Mは水素原子、金属原子または塩基の共役酸を表す。pは1ないし4の整数を表し、qは1ないし4の整数を表す。]
[2]前記一般式(1)で表される化合物と下記一般式(4)で表される化合物とを反応させて、続いて下記一般式(5)で表される化合物を反応させることを特徴とする、下記一般式(3)で表される化合物の製造方法。
【0011】
【化3】

【0012】
[一般式(3)中、R3、R4、R5及びR6は互いに独立して水素原子または1価の置換基を表す。但し、R3及びR4、R5及びR6のうち少なくとも1つはハメットの置換基定数σp値が0.2以上の置換基を表す。]
【0013】
【化4】

【0014】
[一般式(4)中、R3及びR4は前記と同義である。]
【0015】
【化5】

【0016】
[一般式(5)中、R5及びR6は前記と同義である。]
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法によれば、有機電子材料や紫外線吸収剤等の合成中間体として有用なビスベンゾジチオール化合物を、安全かつ安価な原料を使用して、簡便に収率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、前記一般式(1)で表される化合物の製造方法である。まず、目的物である前記一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0019】
前記一般式(1)において、R1及びR2は、水素原子、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)の直鎖又は分岐のアルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリール基(例えばフェニル、ナフチル)、4〜7員環(好ましくは5〜6員環)のヘテロ環基(例えばピリジル、モルホリノ)などを挙げることができる。また、上記の置換基は更に置換されていても良く、置換基が複数ある場合は、同じでも異なってもよい。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。
1及びR2は、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基であり、最も好ましくはメチル基、エチル基である。
【0020】
Xは、ハイドロキノンのモノアニオン、ハイドロキノンのジアニオン、カテコールのモノアニオン、カテコールのジアニオン、プロトン酸の共役塩基を表す。Xは、好ましくはハイドロキノンのモノアニオン、カテコールのモノアニオン、酢酸アニオン、ハロゲン原子であり、より好ましくはハイドロキノンのモノアニオン、カテコールのモノアニオンである。
mは1ないし2の整数を表し、nは1ないし2の整数を表す。すなわち、前記一般式(1)で表される化合物は、電荷を中和するためにn価のイオンXをm個有し、m×n=2である。
【0021】
なお、前記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(1a)及び(1b)の両方を包含するものである。
【0022】
【化6】

【0023】
前記一般式(1a)及び(1b)中、R1、R2、X、m及びnは、前記一般式(1)におけるR1、R2、X、m及びnと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0024】
以下に、前記一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0025】
【化7】

【0026】
【化8】

【0027】
【化9】

【0028】
【化10】

【0029】
前記一般式(1)で表される化合物は、同位元素(例えば、2H、3H、13C、15N、17O、18Oなど)を含有していてもよい。
【0030】
次に、前記一般式(1)で表される化合物の原料である前記一般式(2)で表される化合物について説明する。
前記一般式(2)において、R1及びR2は、前記一般式(1)におけるR1及びR2と同義であり、好ましい範囲も同様である。
Mは、水素原子、金属原子または塩基の共役酸を表す。好ましい金属原子としては、K、Na、Li、Be、Ca、Mg、Al、Mn、Fe、Ni、Cu、B、Zn、Teが挙げられ、より好ましくはK、Na、Ca、Alであり、最も好ましくはK、Naである。塩基の共役酸としては、アンモニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、ピリジニウムなどが挙げられる。
pは1〜4の整数を表し、qは1〜4の整数を表し、p=qである。
【0031】
以下に、前記一般式(2)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0032】
【化11】

【0033】
前記一般式(2)で表される化合物は、任意の方法で合成することができる。例えば、Synthesis,1996年,10巻,1193-1195ページ文献中1194ページ左4行目からの実験項、Journal of the Chemical Society Dalton Transactions,1992年,9巻,1477-1484ページ文献中1483ページ左33行目からの実験項、同2000年,4巻,605-610ページ文献中606ページ左15行目からの実験項、などに記載されている合成法を用いることにより得ることができる。
例えば、例示化合物(A−1)は、N,N−ジメチルアミン塩酸塩のメタノール溶液に二硫化炭素および水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応させることにより合成することができる。例示化合物(A−2)は、水酸化カリウムと二硫化炭素の水溶液にジエチルアミンを加えて反応させることによって合成することができる。例示化合物(A−12)は、二硫化炭素とピペリジンとを反応させることにより合成することができる。
【0034】
本発明の方法では、1,4−ベンゾキノン又は1,2−ベンゾキノンと前記一般式(2)で表されるジチオカルバメート化合物とを極性溶媒中で反応させることで、前記一般式(1)で表される化合物を製造する。
1,4−ベンゾキノン又は1,2−ベンゾキノンと前記一般式(2)で表される化合物との好ましいモル比は3/1〜1/1の範囲であり、より好ましくは2/1の範囲である。
【0035】
前記一般式(1)で表される化合物を合成する反応条件について詳細に説明する。
用いることができる反応溶媒としては極性溶媒であり、プロトン性、非プロトン性のどちらでもよい。プロトン性極性溶媒の具体例としては、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール)、カルボン酸類(例えば、酢酸、プロピオン酸)、グリコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル)などが挙げられ、好ましいのは、水、アルコール類およびカルボン酸類である。一方、非プロトン性極性溶媒の具体例としては、アミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン)、酢酸エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル)、尿素系溶媒(例えば、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン)、ケトン類(例えば、アセトン、2−ブタノン)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル)、およびジメチルスルホキシドなどが挙げられ、好ましくは、より極性が高いアミド系溶媒、尿素系溶媒およびニトリル類である。上記溶媒は化合物の溶解性などを考慮して単独または2種以上組み合わせて用いることができる。2種以上組み合わせる場合の好ましい組み合わせとしては、少なくとも一種のプロトン性極性溶媒を含むことが好ましい。好ましい組み合わせとしては、水/カルボン酸類/アミド系溶媒、アルコール類/カルボン酸類/アミド系溶媒、水/カルボン酸類、水/アミド系溶媒、アルコール類/アミド系溶媒、水/カルボン酸類/尿素系溶媒、水/カルボン酸類/ニトリル類、水/カルボン酸類/ジメチルスルホキシド、などが挙げられる。より好ましい組み合わせとしては、水/カルボン酸類/アミド系溶媒、アルコール類/カルボン酸類/アミド系溶媒などが挙げられる。反応溶媒の組み合わせの好ましい具体例としては、水/酢酸/N−メチルピロリドン、水/酢酸/N,N−ジメチルホルムアミド、水/酢酸/N,N−ジメチルアセトアミド、水/酢酸、水/N−メチルピロリドン、メタノール/酢酸/N−メチルピロリドン、エタノール/酢酸/N,N−ジメチルアセトアミド、水/酢酸/アセトニトリルなどが挙げられ、より好ましくは水/酢酸/N−メチルピロリドン、水/酢酸/N,N−ジメチルホルムアミド、水/酢酸/N,N−ジメチルアセトアミド、水/酢酸、水/N−メチルピロリドン、などが挙げられ基質により適宜選択される。前記一般式(2)で表される化合物のMが水素原子である場合は、前記一般式(2)で表される化合物に対して少なくとも当量の塩基を使用するものとする。
【0036】
反応温度は基質によって適宜選択されるが、好ましくは−10〜80℃であり、より好ましくは0〜60℃、最も好ましくは0〜50℃である。反応時間は基質によって適宜調整されるが、好ましくは10分〜5時間、より好ましくは20分〜3時間である。
【0037】
また、本発明は、前記一般式(3)で表される化合物の製造方法である。まず、目的物である前記一般式(3)で表される化合物について説明する。
【0038】
前記一般式(3)において、R3、R4、R5及びR6は互いに独立して水素原子または1価の置換基を表す。但し、R3及びR4、R5及びR6のうち少なくとも1つはハメットの置換基定数σp値が0.2以上の置換基を表す。
【0039】
3とR4又はR5とR6の置換基について説明する。1価の置換基としては例えば、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)の直鎖又は分岐のアルキル基(例えばメチル、エチル)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリール基(例えばフェニル、ナフチル)、シアノ基、カルボキシル基、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル)、炭素数0〜20(好ましくは0〜10)の置換又は無置換のカルバモイル基(例えばカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルキルカルボニル基(例えばアセチル)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリールカルボニル基(例えばベンゾイル)、ニトロ基、炭素数0〜20(好ましくは0〜10)の置換または無置換のアミノ基(例えばアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアシルアミノ基(例えばアセトアミド、エトキシカルボニルアミノ)、炭素数0〜20(好ましくは0〜10)のスルホンアミド基(例えばメタンスルホンアミド)、
【0040】
炭素数2〜20(好ましくは2〜10)のイミド基(例えばスクシンイミド、フタルイミド)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のイミノ基(例えばベンジリデンアミノ)、ヒドロキシ基、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルコキシ基(例えばメトキシ)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリールオキシ基(例えばフェノキシ)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアシルオキシ基(例えばアセトキシ)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルキルスルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニルオキシ)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリールスルホニルオキシ基(例えばベンゼンスルホニルオキシ)、スルホ基、炭素数0〜20(好ましくは0〜10)の置換または無置換のスルファモイル基(例えばスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルキルチオ基(例えばメチルチオ)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリールチオ基(例えばフェニルチオ)、炭素数1〜20(好ましくは1〜10)のアルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル)、炭素数6〜20(好ましくは6〜10)のアリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル)、4〜7員環(好ましくは5〜6員環)のヘテロ環基(例えばピリジル、モルホリノ)などを挙げることができる。また、置換基は更に置換されていても良く、置換基が複数ある場合は、同じでも異なっても良い。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。
【0041】
3、R4、R5及びR6のうち少なくとも1つは、ハメットの置換基定数σp値が0.2以上の置換基を表す。
ハメットの置換基定数σ値について説明する。ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができる。例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版,1979年(McGraw−Hill)や「化学の領域」増刊,122号,96〜103頁,1979年(南光堂)、Chem.Rev.,1991年,91巻,165〜195ページなどに詳しい。本発明におけるハメットの置換基定数σp値が0.2以上の置換基とは電子求引性基であることを示している。σp値として好ましくは0.25以上であり、より好ましくは0.3以上であり、特に好ましくは0.35以上である。
【0042】
ハメットの置換基定数σp値が0.2以上の置換基の例としては、シアノ基(0.66)、カルボキシル基(−COOH:0.45)、アルコキシカルボニル基(−COOMe:0.45)、アリールオキシカルボニル基(−COOPh:0.44)、カルバモイル基(−CONH2:0.36)、アルキルカルボニル基(−COMe:0.50)、アリールカルボニル基(−COPh:0.43)、アルキルスルホニル基(−SO2Me:0.72)、またはアリールスルホニル基(−SO2Ph:0.68)などが挙げられる。本明細書において、Meはメチル基を、Phはフェニル基を表す。なお、括弧内の値は代表的な置換基のσp値をChem.Rev.,1991年,91巻,165〜195ページから抜粋したものである。
【0043】
3とR4並びにR5とR6とは互いに結合して環を形成しても良い。例えばR3とR4とで環を形成した場合、R3及びR4のσp値を規定することができないが、本発明においてはR3及びR4にそれぞれ環の部分構造が置換しているとみなして、環形成の場合のσp値を定義することとする。例えば1,3−インダンジオン環を形成している場合、R3及びR4にそれぞれベンゾイル基が置換したものとして考える。これはR5とR6とで環を形成した場合でも同様に定義される。
【0044】
3、R4、R5及びR6のうち少なくとも1つはハメットの置換基定数σp値が0.2以上の置換基を表すが、R3とR4との組またはR5とR6との組のいずれか一方がそれぞれこの置換基であることが好ましい。より好ましくはR3、R4、R5及びR6のうち3つがこの置換基の場合である。特に好ましくはR3、R4、R5及びR6がいずれもこの置換基の場合である。
【0045】
3、R4、R5及びR6のうち少なくとも1つとして、−CN、−COOR8、−CONR910、−COR11又は−SO212であることがより好ましい(ここで、R8、R9、R10、R11及びR12はそれぞれ水素原子または1価の置換基を表す。)。より好ましくは−CN、−COOR8、−COR11又は−SO212である。さらに好ましくは−CN又は−COOR8である。特に好ましくは−CNである。
また、R3、R4、R5及びR6のうち少なくとも1つは炭素数1以上のアルコキシカルボニル基であることが殊更に好ましい。より好ましくは炭素数1以上20以下であり、さらに好ましくは炭素数1以上10以下である。アルコキシ基上に任意の位置に置換基を有していても良い。置換基の例としては上述の置換基の例が挙げられる。アルコキシカルボニル基中のアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基などが挙げられる。
【0046】
3とR4との組み合わせ及びR5とR6との組み合わせは上述した条件を満たせばいずれの組み合わせであってもよいが、R3とR4との組およびR5とR6との組がそれぞれ同じ組み合わせであることがより好ましい。
【0047】
3とR4並びにR5とR6とは互いに結合して環を形成しても良い。形成する環としては、飽和および不飽和の炭化水素環およびヘテロ環のいずれであってもよい。但し、ジチオール環およびジチオラン環を形成することはない。例えば、前記一般式(3)中で定義されているR3及びR4が結合した炭素原子を含んでなる環として、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、ピロリジン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロチオフェン環、オキサゾリン環、チアゾリン環、ピロリン環、ピラゾリジン環、ピラゾリン環、イミダゾリジン環、イミダゾリン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピラン環などが挙げられる。これらは任意の位置に置換基を有していても良い。置換基としては上述した1価の置換基の例が挙げられる。また2価の置換基としてカルボニル基、イミノ基なども挙げられる。置換基が複数ある場合は、同じでも異なっても良い。また置換基同士で結合して環を形成することで縮環やスピロ環となっても良い。
【0048】
3とR4又はR5とR6の組み合わせの好ましい具体例について下記表1に示すが、本発明はこれらに限定されない。なお、本明細書において、Meはメチル基、Etはエチル基を、Buはブチル基、Phはフェニル基を表す。表中の波線は前記一般式(3)におけるヘテロ環への結合部位を示す。
【0049】
【表1−1】

【0050】
【表1−2】

【0051】
【表1−3】

【0052】
【表1−4】

【0053】
【表1−5】

【0054】
【表1−6】

【0055】
なお、前記一般式(3)で表される化合物は、下記一般式(3a)及び(3b)の両方を包含するものである。
【0056】
【化12】

【0057】
前記一般式(3a)及び(3b)中、R3、R4、R5及びR6は、前記一般式(3)におけるR3、R4、R5及びR6と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0058】
以下に、前記一般式(3)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0059】
【化13】

【0060】
【化14】

【0061】
【化15】

【0062】
【化16】

【0063】
【化17】

【0064】
前記一般式(3)で表される化合物は、構造とその置かれた環境によって互変異性体を取り得る。本明細書においては代表的な形の一つで記述しているが、本明細書の記述と異なる互変異性体も本発明に用いられる前記一般式(3)で表される化合物に含まれる。
【0065】
前記一般式(3)で表される化合物は、構造とその置かれた環境によって、適切な対イオンを伴ってカチオンあるいはアニオンになり得る。本明細書においては代表的な対イオンとして対カチオンに水素イオンあるいは対アニオンに水酸化物イオンを用いて記述しているが、これら以外の対イオンを有する場合も本発明に用いられる前記一般式(3)で表される化合物に含まれる。対イオンは1種類であってもよいし任意の比率からなる複数の種類からなってもよい。
【0066】
前記一般式(3)で表される化合物は、同位元素(例えば、2H、3H、13C、15N、17O、18Oなど)を含有していてもよい。
【0067】
次に、前記一般式(3)で表される化合物の原料である前記一般式(4)又は(5)で表される化合物について説明する。
前記一般式(4)及び(5)において、R3、R4、R5及びR6は、前記一般式(3)におけるR3、R4、R5及びR6と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0068】
以下に、前記一般式(4)又は(5)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0069】
【化18】

【0070】
【化19】

【0071】
本発明の方法では、まず前記一般式(1)で表される化合物と前記一般式(4)で表される化合物とを反応させて、続いて下記一般式(5)で表される化合物を反応させることで、前記一般式(3)で表される化合物を製造する。
【0072】
前記一般式(1)で表される化合物と前記一般式(4)又は(5)で表される化合物との好ましいモル比は1/2〜1/4の範囲であり、より好ましくは1/2〜1/3の範囲である。
【0073】
前記一般式(3)で表される化合物を合成する反応条件について詳細に説明する。
用いることができる反応溶媒としては、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール)、酢酸エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル)、アミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、グリコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールものエチルエーテル)、アセトニトリル、酢酸およびジメチルスルホキシドなどが挙げられる。上記溶媒は化合物の溶解性を考慮して単独または2種以上組み合わせて用いることができる。基質によって酸、塩基を添加することもできる。
【0074】
反応温度は基質によって適宜選択されるが、好ましくは20〜150℃であり、より好ましくは30〜120℃、最も好ましくは40〜100℃である。反応時間は基質によって適宜調整されるが、好ましくは30分〜8時間、より好ましくは30分〜6時間である。
【0075】
本発明によれば、ベンゾキノン化合物とジチオカルバメート化合物(前記一般式(2)で表される化合物)とを反応させて前記一般式(1)で表される化合物を製造し、次いでこれに活性メチレン化合物(前記一般式(4)又は(5)で表される化合物)を反応させることで、前記一般式(3)で表される化合物を製造することができる。すなわち、本発明によれば、環境に有害な化合物であるクロラニルを用いることなく、前記一般式(1)又は(3)で表される化合物を簡便に収率よく製造することができる。
【0076】
前記一般式(1)又は(3)で表される化合物は、有機半導体等の有機電子材料、紫外線吸収剤等の合成中間体として有用である。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
実施例1
(例示化合物M−1の調製)
ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム二水和物20g(0.14モル)にN−メチルピロリドン120mlおよび水20mlを加えた。次いで氷冷下で酢酸80mlを添加した。氷冷下で攪拌しながら1,4−ベンゾキノン30.3g(0.28モル)を分割添加した。室温で2時間攪拌を行なった後、アセトン200mlを添加した。析出した結晶を濾過し、アセトンで洗浄して例示化合物M−1を25.7g得た(収率65.0%)。
1H NMR(CD3COOD)δ(ppm)6.70(s,8H),3.68(s,12H)
【0079】
実施例2
(例示化合物M−2の調製)
ジエチルジチオカルバミン酸カリウム(53%水溶液)40g(0.113モル)にN−メチルピロリドン100mlを加えた。次いで氷冷下で攪拌しながら酢酸60mlを添加した。氷冷下、1,4−ベンゾキノン24.5g(0.226モル)を分割添加した。室温で2時間攪拌を行なった後、アセトン150mlを添加した。析出した結晶を濾過し、アセトンで洗浄して例示化合物M−2を23.9g得た(収率68.0%)。
MS:m/z 402(M+)
1H NMR(CD3COOD)δ(ppm)6.70(s,8H),3.99(s,8H),1.51(t,12H)
【0080】
実施例3
(例示化合物M−2の調製)(別法)
ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム3水和物38.4g(0.17mol)を水19ml及びN−メチルピロリドン180mlに溶解し、続いて水冷下で攪拌しながら酢酸90mlを添加した。水冷下、1,4−ベンゾキノン18.4g(0.17mol)を内温25℃以下で30分かけて添加した。室温で2時間攪拌した後、1,4−ベンゾキノン9.2g(0.085mol)を添加し、さらに室温で2時間攪拌を行った。アセトン60mlを添加し、析出した結晶を濾過し、アセトンで洗浄して例示化合物M−2を35g得た(収率63%)。
質量分析計および1H NMRにて分析した結果、例示化合物M−2であることを同定した。
【0081】
比較例1
(例示化合物M−15の調製)
クロラニル24.6g(0.1モル)にエタノール/ジエチルエーテル(2/1)混合溶媒を加えた。室温攪拌下、ジメチルジチオカルバミン酸ジメチルアンモニウム塩33.3g(0.2モル)をエタノールに溶解した溶液を滴下した。加熱還流を1時間行なった後、析出した結晶を濾過した。0.5N塩酸水溶液で再結晶して例示化合物M−15を19.6g得た(収率47.0%)。
【0082】
実施例4
(例示化合物N−4の調製)
上記例示化合物M−2 12.4g(0.02モル)及びピバロイルアセトニトリル6.0g(0.048モル)にN−メチルピロリドン100mlを添加した。窒素雰囲気下、内温80℃で4時間攪拌を行なった。室温まで冷却し、攪拌下で1N塩酸30mlを添加した。析出した結晶を濾過、水で洗浄して例示化合物N−4を9.4g得た(収率98.0%)。
1H NMR(DMSO-d6)δ(ppm)1.32(s,18H)
【0083】
実施例5
(例示化合物N−12の調製)
上記例示化合物M−2 8.0g(0.0128モル)及び3−ヒドロキシ−3−メチルブチルシアノアセテート4.8g(0.028モル)にN−メチルピロリドン50mlを添加した。窒素雰囲気下、内温80℃で3時間攪拌を行なった。室温まで冷却し、酢酸エチル30mlおよび水50mlを添加した。攪拌下、濃塩酸2.5mlを添加した。析出した結晶を濾過、酢酸エチルおよび水で洗浄して例示化合物N−12を7.3g得た(収率95.5%)。
1H NMR(DMSO-d6)δ(ppm)11.5〜10.0(br,2H),4.90〜3.70(br,2H),4.30(t,4H),1.79(t,4H),1.16(s,12H)
【0084】
実施例6
(例示化合物N−17の調製)
上記例示化合物M−2 8.0g(0.02モル)及びシアノ酢酸2−エチルヘキシル5.7g(0.029モル)にN−メチルピロリドン30mlを添加した。窒素雰囲気下、内温70℃で3時間攪拌を行なった。室温まで冷却し、攪拌下メタノール40ml、次いで酢酸8mlを添加した。析出した結晶を濾過、メタノール洗浄して例示化合物N−17を8.0g得た(収率96.0%)。
1H NMR(DMSO-d6)δ(ppm)4.25〜4.05(m,4H),1.70〜1.54(m,2H),1.45〜1.20(m,16H),0.97〜0.78(m,12H)
【0085】
実施例7
(例示化合物N−19の調製)
上記例示化合物M−2 1.24g(0.002モル)とバルビツール酸0.77g(0.006モル)とをジメチルスルホキシド100mlに懸濁させ、窒素気流下で80℃に加熱しながら5時間撹拌したのち、室温まで冷却した。一度溶解したあと新たに析出してきた固体を濾別した。ジメチルスルホキシド、次いで水で洗浄し、乾燥させて例示化合物N−19(黄色結晶)を1.01g得た(収率99.0%)。
赤外吸収スペクトル(cm-1):3430−3450(s,br),1718(s),1647(s),1431(s),1348(m),582(m)
【0086】
実施例8
(例示化合物N−20の調製)
上記例示化合物M−2 1.24g(0.002モル)とチオバルビツール酸0.90g(0.006モル)とをジメチルスルホキシド50mlに懸濁させ、窒素気流下で80℃に加熱しながら4時間撹拌したのち、室温まで冷却した。析出している固体を濾別し、ジメチルスルホキシド、水、メタノールの順に洗浄し、乾燥させて例示化合物N−20(黄褐色結晶)を0.55g得た(収率50.7%)。
赤外吸収スペクトル(cm-1):3430−3450(s,br),3109(m),3018(m),2901(m),1660(m),1616(s),1531(s),1443(s),1161(s)
【0087】
実施例9
(例示化合物N−21の調製)
上記例示化合物M−2 1.24g(0.002モル)と3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン1.05g(0.006モル)とをジメチルスルホキシド100mlに懸濁させ、窒素気流下で80℃に加熱しながら3時間撹拌したのち、室温まで冷却した。得られた均一溶液に1規定塩酸水溶液10mlを加え析出した固体を濾別し、水、ついでメタノールで洗浄した。乾燥させて例示化合物物N−21(黄色結晶)を1.90g得た(収率90.5%)。
赤外吸収スペクトル(cm-1):3400−3420(br,m),1643(m),1594(w),1497(s),1335(m)
【0088】
実施例10
(例示化合物N−1の調製)
ピバロイルアセトニトリルの代わりにマロノニトリルを用いたこと以外は実施例4と同様にして、例示化合物N−1を調製した。
融点:397℃以上(分解)
Mass:m/e 386(M+
赤外吸収スペクトル(cm-1):1460,1450(s),2210,1650(br),1360,1310(m),3200,2930,1690,1180,1100,670,500
【0089】
実施例11
(例示化合物N−2の調製)
シアノ酢酸2−エチルヘキシルの代わりにシアノ酢酸エチルを用いたこと以外は実施例6と同様にして、例示化合物N−2を調製した。
Mass:m/e 480(M+
【0090】
実施例12
(例示化合物N−3の調製)
ピバロイルアセトニトリルの代わりにマロン酸ジエチルを用いたこと以外は実施例4と同様にして、例示化合物N−3を調製した。
Mass:m/e 574(M+
【0091】
実施例13
(例示化合物N−7の調製)
シアノ酢酸3−ヒドロキシ−3−メチルブチルの代わりにフェニルスルホニル酢酸エチルを用いたこと以外は実施例5と同様にして、例示化合物N−7を調製した。
Mass:m/e 710(M+
【0092】
実施例14
(例示化合物N−22の調製)
上記例示化合物M−2 3.1gをN−メチルピロリドン20mlに分散し、次いでシアノ酢酸t−ブチル1.69gを添加後、80℃で6時間反応させた。室温に冷却後、酢酸5ml、メタノール20mlを添加することにより黄色粉末を得た。これをメタノールで再結晶することにより例示化合物N−22を得た(収率55%)。
Mass:m/e 536(M+
【0093】
実施例15
(例示化合物N−23の調製)
シアノ酢酸t−ブチルの代わりにシアノ酢酸iso-ブチルを用いたこと以外は実施例14の例示化合物M−2を用いた反応と同様にして、収率49%で例示化合物N−23を得た。
Mass:m/e 536(M+
【0094】
実施例16
(例示化合物N−24の調製)
シアノ酢酸t−ブチルの代わりに2−シアノ−N,N’−ジメチルアセトアミドを用いたこと以外は実施例14の例示化合物M−2を用いた反応と同様にして、収率59%で例示化合物N−24を得た。
Mass:m/e 478(M+
【0095】
実施例17
(例示化合物N−25の調製)
シアノ酢酸t−ブチルの代わりに2−シアノ−N−(2−メトキシフェニル)アセトアミドを用いたこと以外は実施例14の例示化合物M−2を用いた反応と同様にして、収率89%で例示化合物N−25を得た。
Mass:m/e 634(M+
【0096】
実施例18
(例示化合物N−26の調製)
シアノ酢酸t−ブチルの代わりにベンゾイルアセトニトリルを用いたこと以外は実施例14の例示化合物M−2を用いた反応と同様にして、収率85%で例示化合物N−26を得た。
Mass:m/e 544(M+
【0097】
実施例19
(例示化合物N−27の調製)
シアノ酢酸t−ブチルの代わりにフェニルスルホニルアセトニトリルを用いたこと以外は実施例14の例示化合物M−2を用いた反応と同様にして、収率44%で例示化合物N−27を得た。
Mass:m/e 616(M+
【0098】
実施例20
(例示化合物N−28の調製)
シアノ酢酸t−ブチルの代わりにメチルスルホニルアセトニトリルを用いたこと以外は実施例14の例示化合物M−2を用いた反応と同様にして、収率53%で例示化合物N−28を得た。
Mass:m/e 492(M+
【0099】
実施例21
(例示化合物N−29の調製)
上記例示化合物M−2 3.1gと3−アセチルアミド−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン2.4gとをジメチルスルホキシド20mlに懸濁させ、窒素気流下で80℃に加熱しながら5時間撹拌したのち、室温まで冷却した。得られた均一溶液に1規定塩酸水溶液10mlを加え、析出した固体を濾別し、水、ついでメタノールで洗浄した。乾燥させて3.0gの例示化合物N−29(黄色結晶)を得た。
Mass:m/e 688(M+
【0100】
実施例22
(例示化合物N−30の調製)
上記例示化合物M−2 1.55gと1,2−ジフェニル−ピラゾリジン−3,5−ジオン1.40gとをジメチルスルホキシド20mlに懸濁させ、窒素気流下で80℃に加熱しながら3時間撹拌したのち、室温まで冷却した。得られた均一溶液に1規定塩酸水溶液5mlを加え、析出した固体を濾別し、水、ついでメタノールで洗浄した。乾燥させて1.60gの例示化合物N−30(黄色結晶)を得た。
Mass:m/e 758(M+
【0101】
実施例23
(例示化合物N−31の調製)
上記例示化合物M−2 2.48gと3−カルバモイル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン 1.79gとをジメチルスルホキシド20mlに懸濁させ、窒素気流下で80℃に加熱しながら1.5時間撹拌したのち、室温まで冷却した。得られた均一溶液に1規定塩酸水溶液10mlを加え、析出した固体を濾別し、水、ついでメタノールで洗浄した。乾燥させて4gの例示化合物N−31を得た。
Mass:m/e 660(M+
【0102】
実施例24
(例示化合物N−32の調製)
上記例示化合物M−2 1.24gと例示化合物B−34 0.82gとをジメチルスルホキシド100mlに懸濁させ、窒素気流下で90℃に加熱しながら12時間撹拌したのち、室温まで冷却した。得られた均一溶液に1規定塩酸水溶液10mlを加え、析出した固体を濾別し、水、ついでメタノールで洗浄した。乾燥させて1gの例示化合物N−32を得た。
Mass:m/e 526(M+
【0103】
比較例2
(例示化合物N−1の調製)
水酸化ナトリウム80g(2モル)をエタノール800mlに溶解し、マロノニトリル66.1g(1モル)のエタノール100ml溶液を氷冷下で添加し、続いて二硫化炭素76g(1モル)を添加した。室温で1時間反応させ、得られた固体を濾過・エタノール洗浄してジ(ナトリウムメルカプト)メチレンマロノニトリルを166g得た(収率89.2%)。
クロラニル12.3g(0.05モル)をN,N−ジメチルアセトアミド100mlに分散し、ジ(ナトリウムメルカプト)メチレンマロノニトリル18.4g(0.099モル)を水50mlに溶解した溶液を氷冷下添加し、室温で5時間反応させた。反応液に水50mlを加え、生じた固体を濾過・水洗した。THF−メタノールから再結晶して例示化合物N−1を10.1g得た(収率52%)。
融点:397℃以上(分解)
Mass:m/e 386(M+
赤外吸収スペクトル(cm-1):1460,1450(s),2210,1650(br),1360,1310(m),3200,2930,1690,1180,1100,670,500

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4−ベンゾキノン又は1,2−ベンゾキノンと下記一般式(2)で表されるジチオカルバメート化合物とを極性溶媒中で反応させることを特徴とする下記一般式(1)で表される化合物の製造方法。
【化1】

[一般式(1)中、R1及びR2は、互いに独立して水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R1及びR2は同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。Xは電荷を中和するイオンを表す。mは1ないし2の整数を表し、nは1ないし2の整数を表す。]
【化2】

[一般式(2)中、R1及びR2は前記と同義である。Mは水素原子、金属原子または塩基の共役酸を表す。pは1ないし4の整数を表し、qは1ないし4の整数を表す。]
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物と下記一般式(4)で表される化合物とを反応させて、続いて下記一般式(5)で表される化合物を反応させることを特徴とする、下記一般式(3)で表される化合物の製造方法。
【化3】

[一般式(3)中、R3、R4、R5及びR6は互いに独立して水素原子または1価の置換基を表す。但し、R3及びR4、R5及びR6のうち少なくとも1つはハメットの置換基定数σp値が0.2以上の置換基を表す。]
【化4】

[一般式(4)中、R3及びR4は前記と同義である。]
【化5】

[一般式(5)中、R5及びR6は前記と同義である。]

【公開番号】特開2009−256304(P2009−256304A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187010(P2008−187010)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】