説明

ビスホスホネートを含む医薬製剤

【課題】プラスチック材からなる容器は発熱性物質除去および滅菌に広く汎用される高温の加熱処理が困難なため、容易に加熱処理が出来るガラス材の容器にビスホスホネート成分を保存する注射溶液の提供。
【解決手段】少なくとも1つのビスホスホネート成分および非イオン性界面活性剤であるポリソルベート80を含有し、ガラス容器に保存するビスホスホネート溶液注射剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ビスホスホネート溶液を含むガラス材の容器からなる医薬製剤であって、注射溶液を提供する。
【背景技術】
【0002】
ビスホスホネートは破骨細胞性骨吸収阻害作用を有していることが知られており、種々の骨吸収異常を伴う疾患の治療に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−505861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、ビスホスホネートが悪性腫瘍による高カルシウム血症および多発性骨髄腫の処置のために採られる投与形態は、静脈注射溶液である。
しかしながら、ビスホスホネート溶液は、化学的に安定であるが、二価および多価陽イオンと反応し、またガラス中のシリコンと反応し不溶性の沈殿を形成することが知られている。さらに、標準的なガラス容器ではかなりの量の二価および多価イオンが浸出されることが示されていることから、ビスホスホネート溶液製剤のガラス容器での長期保存は不可能とされている。従って、当該製剤はプラスチック材からなる容器中で保存されているのが現状である。また、プラスチック材からなる容器は発熱性物質除去および滅菌に広く汎用される高温の加熱処理が困難なため容易に加熱処理が出来るガラス容器が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、溶液注射剤の形態で提供される、少なくとも1つのビスホスホネート成分および溶解補助剤を含有し、ビスホスホネート溶液注射剤を発熱性物質を除去したガラス容器で安定に長期貯蔵することに成功した。
【0006】
本発明は、ビスホスホネート溶液製剤に少量の非イオン性界面活性剤を添加することによりガラス容器中で微粒子生成を抑制することを可能にした。
非イオン性界面活性剤は、好ましくはポリソルベート80である。
【0007】
本発明の使用に最も好ましいビスホスホネートは、2−(イミダゾール−1−イル)−1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸(ゾレドロン酸)又はその塩である。
【発明の効果】
【0008】
ビスホスホネート溶液注射剤が、汎用されているガラスバイアル中で安定に長期貯蔵することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ビスホスホネート注射溶液製剤
【実施例】
【0010】
実施例1:ゾレドロン酸 4mg/4mL
【表1】

【0011】
注射用水の全量の約90%を、ステンレススチール配合容器に充填する。緩衝剤であるクエン酸及びクエン酸ナトリウムを撹拌下で加え、溶解する。更に溶解剤であるポリソルベート80水溶液を別途調製し混和する。製剤原料であるゾレドロン酸を撹拌下で加え、溶解する。その液をpH調整剤であるクエン酸ナトリウム水溶液にて、pH6.3に調整する。調製液を注射用水で最終容量に調整する。バルク溶液を、0.2μm孔サイズのフィルターを通し充填する。洗浄および乾燥したガラスバイアルにバルク溶液を充填する。滅菌したHelvoet社のFM259/オムニフレックスプラスでコートした栓をバイアルにはめこみ、その栓をしたガラスバイアルをアルミニウムキャップでシールする。
前記生成物は、40℃/75%RH(相対湿度)の条件下で安定である。
【0012】
【表2】

【0013】
実施例2:ゾレドロン酸 4mg/4mL
【表3】

【0014】
注射用水の全量の約90%を、ステンレススチール配合容器に充填する。緩衝剤であるクエン酸及びクエン酸ナトリウムを撹拌下で加え、溶解する。更に溶解剤であるポリソルベート80水溶液を別途調製し混和する。製剤原料であるゾレドロン酸を撹拌下で加え、溶解する。その液をpH調整剤であるクエン酸ナトリウム水溶液にて、pH6.3に調整する。調製液を注射用水で最終容量に調整する。バルク溶液を、0.2μm孔サイズのフィルターを通し充填する。洗浄および乾燥したガラスバイアルにバルク溶液を充填する。滅菌したゴム栓をバイアルにはめこみ、その栓をしたガラスバイアルをアルミニウムキャップでシールする。
前記生成物は、50℃の苛酷条件下で安定である。
【0015】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0016】
種々の骨吸収異常を伴う疾患の治療に用いられるビスホスホネートを長期保存安定な注射液として提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスホスホネート溶液を含むガラス材の容器からなる溶液の形態の医薬製剤。
【請求項2】
前記ビスホスホネートがゾレドロン酸である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
緩衝剤および非イオン性界面活性剤を含んでなる請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤がポリソルベート80である、請求項2に記載の製剤。
【請求項5】
前記ポリソルベート80がゾレドロン酸に対して1%〜5%を含んでなる請求項1に記載の製剤。

【公開番号】特開2013−56875(P2013−56875A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213392(P2011−213392)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(391026368)エール薬品株式会社 (1)
【Fターム(参考)】