説明

ビスマス系酸化物超電導線材、その製造方法および超電導機器

【課題】 中間圧延の際に発生するクラックや凹凸を平滑化して、優れた特性を有するビスマス系酸化物超電導線材およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 超電導相を含むビスマス系酸化物超電導線材原料を金属シースに充填し、金属シースに少なくとも1回の塑性加工および熱処理を施して、Bi2223相の比率を92%以下にする工程と、中間圧延を行う工程と、Bi2223相の凹凸を平滑化させるように焼結を行う工程と、を包含する、ビスマス系酸化物超電導線材の製造方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスマス系の酸化物超電導線材、その製造方法および超電導機器に関し、より詳細には、Bi2223相が平滑化されていることを特徴とする、ビスマス系の酸化物超電導線材、その製造方法および超電導機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化物超電導線材の1つとして、ビスマス(Bi)系の酸化物超電導線材が知られている。このBi系の酸化物超電導線材は、液体窒素温度での使用が可能であり、比較的高い臨界電流密度を得ることができる。また、このBi系の酸化物超電導線材は、長尺化が比較的容易なため、超電導ケーブルやマグネットへの応用が期待されている。
【0003】
このようなBi系の酸化物超電導材料においては、粉末を熱処理した後に金属シースにて被覆し、伸線加工および圧延加工を施した後、さらに熱処理することにより、高い臨界電流密度を有する単芯の酸化物超電導線材が得られている。
【0004】
また、酸化物超電導材料を主成分とする粉末を熱処理した後に金属シースにて被覆し、伸線加工を施した後嵌合して多芯線とし、伸線加工および圧延加工を施した後、さらに熱処理することにより、同様に高い臨界電流密度を有する酸化物超電導多芯線材が得られている。
【0005】
さらに、従来、このような酸化物超電導線材の製造において、圧延加工および熱処理のステップを複数回繰返すことにより、より高い臨界電流密度を有する酸化物超電導線材が得られることが知られている。
【0006】
ところで、下記特許文献1には、Bi系の酸化物超電導線材の製造方法において、超電導体の密度を高めるために中間圧延を行うことが記載されている。すなわち、熱処理の温度よりも低い温度にし、かつ大気よりも低酸素雰囲気の条件下で線材を加熱する処理が記載されている。
【0007】
しかし、当該中間圧延によりフィラメントとして線材全体の一部を構成する線材中のBi2223結晶にクラックや凹凸が発生し、当該クラックや凹凸は中間圧延後の焼結によっても完全には修復されることなく、前記結晶中に残存することになる。
【0008】
このようなクラックや凹凸は、Bi2223相の結晶間および結晶内の電流の流れを阻害し、超電導線材としての特性を大きく低下させるものであるので、問題であった。
【特許文献1】特開2003−203532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、中間圧延の際に発生するクラックや凹凸を平滑化して、優れた特性を有するビスマス系酸化物超電導線材、その製造方法および超電導機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの局面によれば、Bi2223相の比率が98%以上であり、かつ前記Bi2223相の凹凸が平滑化されていることを特徴とするビスマス系酸化物超電導線材が提供される。
【0011】
本発明の別の局面によれば、上記ビスマス系酸化物超電導線材をフィラメントとして複数本含み、この線材が金属シースに内包されかつテープ状である、ビスマス系酸化物超電導多芯線材が提供される。
【0012】
本発明の別の局面によれば、超電導相を含むビスマス系酸化物超電導線材原料を金属シースに充填し、金属シースに少なくとも1回の塑性加工および熱処理を施して、Bi2223相の比率を92%以下にする工程と、中間圧延を行う工程と、Bi2223相の凹凸を平滑化させるように焼結を行う工程と、を包含する、ビスマス系酸化物超電導線材の製造方法が提供される。
【0013】
好ましくは、Bi2223相の凹凸を平滑化させるように焼結を行う工程は、酸素分圧を6kPa〜15kPaの範囲内、温度を815℃〜835℃の範囲内の条件下で30時間〜100時間焼結を行う工程である。
【0014】
好ましくは、中間圧延を行う工程は、圧延前の厚みに対して10%〜25%の範囲内の圧下率で行う。
【0015】
好ましくは、Bi2223相の凹凸を平滑化させるように焼結を行う工程は、Bi2223相の比率を98%以上にする。
【0016】
本発明の別の局面によれば、上記のいずれかに記載のビスマス系酸化物超電導線材の製造方法によって製造されたビスマス系酸化物超電導線材をフィラメントとして複数本含み、この線材は金属シースに内包されかつテープ状であることを特徴とする、ビスマス系酸化物超電導多芯線材が提供される。
【0017】
本発明の別の局面によれば、上記ビスマス系酸化物超電導多芯線材を含む超電導機器が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明のビスマス系酸化物超電導線材およびその製造方法によれば、Bi2223相中のクラックや凹凸が低減されて、優れた特性を示す超電導線材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のビスマス系酸化物超電導線材は、Bi2223相の比率が98%以上であり、かつBi2223相の凹凸が平滑化されていることを特徴とする。
【0020】
このように、Bi2223相中の凹凸が平滑化されていることにより、得られる線材の特性が優れたものになる。
【0021】
Bi2223相中の凹凸が平滑化されることにより、超電導線材の特性に優れる理由は図1により次のように理解することができる。図1において、(A)はBi2223相の結晶が平滑である場合を示す模式図であり、(B)は、Bi2223相の結晶が凹凸である場合を示す模式図である。なお、図1において、四角で囲まれた領域は1つの結晶相を模式的に示すものである。また、結晶が平滑な場合のSEM写真を図1に示し、結晶に凹凸がある場合のSEM写真を図2に示す。
【0022】
超電導線材を流れる電流は、線材を構成するフィラメント内に成長したBi2223結晶内および結晶間である。図1(B)に示すように、Bi2223相中に凹凸が存在すると結晶内における電流の流れの経路(たとえば、矢印1B)が図1(A)に示す平滑な場合(たとえば、矢印1A)と比べて凹凸になって阻害され、線材全体として得られる電流も低減する。
【0023】
また、Bi2223結晶間においては、Bi2223相中に凹凸が存在すると、Bi2223相の結晶同士の結合性が低下するため、図1(B)に示すように、当該結晶間を流れる電流の経路(たとえば、矢印2B)が結晶の結合性の低下により減少し、図1(A)と比べて(たとえば、矢印1B)線材全体として得られる電流も低減されることになる。
【0024】
そこで、本発明においては、Bi2223相の結晶を平滑化することにより、結晶内においては、電流の流れる経路を増大させ、結晶間においては、Bi2223相の結晶同士の結合性を良好にし、線材全体として得られる電流を向上させるものである。
【0025】
また、本発明のビスマス系酸化物超電導線材において、Bi2223相の比率は98%以上である。98%未満であると、Bi2223相の量が少なく、Bi2212相の存在量が大きくなり、超電導特性に悪影響を及ぼすためである。
【0026】
ここで、本発明において、Bi2223相とは、ビスマス(必要に応じて、ビスマスと共に鉛を含む)とストロンチウムとカルシウムと銅と酸素とを含み、その組成、すなわち原子比(酸素を除く)として、ビスマス(またはビスマス+鉛):ストロンチウム:カルシウム:銅が2:2:2:3と近似して表されるBi−Sr−Ca−Cu−O系の酸化物超電導体相のことである。なお、Bi2223組成とは、上記のとおり上記原子比の近似値比をいう。また、Bi2223結晶とは、Bi2223相および組成を有する結晶のことをいう。
【0027】
同様に、本発明において、Bi2212相とは、ビスマス(必要に応じて、ビスマスと共に鉛を含む)とストロンチウムとカルシウムと銅と酸素とを含み、その原子比(酸素を除く)として、ビスマス(またはビスマス+鉛):ストロンチウム:カルシウム:銅が2:2:1:2と近似して表されるBi−Sr−Ca−Cu−O系の酸化物超電導体相のことである。なお、Bi2212組成とは、上記のとおり上記原子比の近似値比をいう。また、Bi2212結晶とは、Bi2212相および組成を有する結晶のことをいう。
【0028】
また、本発明において、平滑化とは、Bi2223相の表面を平坦にし、かつ、滑らかにすることをいう。当該平滑化は、線材を、線材の長軸方向と平行な方向によって線材を切断した際の線材表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により確認し、画像解析により結晶に乱れがない(大きな波うちがない)場合は平滑であると判断することができる。
【0029】
なお、本発明において、上述したビスマス系酸化物超電導線材の複数本をフィラメントとして含有させてビスマス系酸化物超電導多芯線材として用いることができる。この際、フィラメントとしての線材はテープ状である。このように、多芯線材とすることにより、線材の強度を向上することができる。
【0030】
次に、このような本発明のビスマス系酸化物超電導線材の製造方法について説明する。
【0031】
本発明のビスマス系酸化物超電導線材の製造方法は、超電導相を含むビスマス系酸化物超電導線材原料を金属シースに充填し、該金属シースに少なくとも1回の塑性加工および熱処理を施して、Bi2223相の比率を92%以下にする工程と、中間圧延を行う工程と、Bi2223相の凹凸を平滑化させるように焼結を行う工程と、を包含する。
【0032】
本発明において、ビスマス系酸化物超電導線材原料は、超電導線材の製品として用いる場合に77K以上の臨界温度を有するものが好ましく、具体的には、BiO、PbO、SrCO、CaCO、CuOなどを用いることができる。なお、77K以上の臨界温度を有するためには、線材製品において通常Bi2223相を有することが必要であり、すなわち、Bi:Sr:Ca:Cuの比が略2:2:2:3になるようにする必要がある。
【0033】
超電導線材の製品として上記の臨界温度を得るために、原料としてはBi2212相を主体とする粉末を調製し、その後、後述の工程によりBi2223相を得るものである。当該Bi2212相を得るために、当該分野で公知の手法を用いることができ、たとえば、上記の材料を、700〜870℃、10〜40時間、大気雰囲気下で少なくとも1回焼結し、粉砕することが挙げられるが、これに限定されるわけではない。
【0034】
また、本発明において、金属シースの材料としては、Ag、Cu、Fe、Ni、Cr、Ti、Mo、W、Pt、Pd、Rh、Ir、RuおよびOsよりなる群から選択される金属またはその金属の合金が好ましい。特に、酸化物超電導体との反応性や加工性からAgまたはAgの合金が好ましい。
【0035】
本発明のビスマス系酸化物超電導線材の製造方法は、上記の原料を金属シースに充填した後、該金属シースに少なくとも1回の塑性加工および熱処理を施すものである。
【0036】
ここで、塑性加工としては、種々の減面加工が含まれ、具体的には、伸線加工、圧延加工、プレス加工、スウェージなどが挙げられる。
【0037】
塑性加工を1回行う場合、塑性加工の具体的内容としては、上述のような原料粉末を充填した金属パイプを減面加工してクラッド線を作製し、次いで、クラッド線を束ねて挿入した金属パイプを減面加工して多芯線を製造し、その後、多芯線をテープ状に加工することが含まれる。多芯線からテープ線材に加工するのは、最終的に形成される超電導導体の結晶の向きを揃えるためである。一般に、酸化物系の超電導導体は結晶の方向により流すことができる電流密度に大きな違いがあり、結晶方向を揃えることでより大きな電流密度を得ることができる。
【0038】
塑性加工を2回以上行う場合、上述の1回目の塑性加工には前述したクラッド線の作製、多芯線の作製、テープ線材の加工に加え、テープ線材をさらに再圧延することを含む。この再圧延加工は、1回目の熱処理による反応で形成された空隙を押し潰し、後に行う二次熱処理で超電導体の結晶同士を強固に結合させるために行われる。1回目の塑性加工における減面率は20%以上95%未満、より好ましくは80%以上90%以下であることが望ましい。2回目以降の塑性加工における減面率は10%以上が好ましく、さらに好ましくは20%以上30%以下程度である。
【0039】
本発明において、熱処理は、少なくとも1回以上行うものであり、代表的に、1回目の熱処理と2回目の熱処理を行うことが好ましい。1回目の熱処理は、主としてBi2223相などの超電導相を生成させることを目的として行われる。2回目の熱処理は、主としてBi2223相などの結晶粒同士を強固に結合させるために行う。
【0040】
処理温度は、1回目の熱処理および2回目の熱処理共に815℃超860℃以下とすることが好ましい。より好ましくは830℃〜850℃程度である。特に、1回目の熱処理を840℃以上850℃以下とし、2回目の熱処理を830℃以上840℃以下とすることが好適である。なお、2回目より後の熱処理として、上記温度内の異なる温度で複数回行っても良い。
【0041】
熱処理時間は、50時間以上250時間以下とすることが好ましい。特に、2回目以降の熱処理を100時間以上とすることが好適である。
【0042】
熱処理の雰囲気は、大気雰囲気または低酸素雰囲気にて行えば良い。より好ましくは、大気と同成分からなる気流中で熱処理を施すことである。その際、熱処理雰囲気における水分の含有率を低下させることが好ましい。
【0043】
本発明において、上記少なくとも1回の塑性加工および熱処理の後において、線材中のBi2223相の比率を92%以下になるようにする。逆にいえば、Bi2223相の比率が92%以下になるまで上記塑性加工および熱処理を行うものである。
【0044】
ここで、Bi2223相の比率とは、Bi2223相とBi2212相との全体の相に対するBi2223相の割合のことであり、式で表すと、(Bi2223相)/((Bi2223相)+(Bi2212相))となる。
【0045】
なお、92%以下になっていることを確認する方法としては、X線回折においてBi2223相とBi2212相の強度から上記式を用いて計算することができる。
【0046】
本発明において、焼結前のBi2223相の比率が92%を超えると、Bi2223相の結晶が成長しにくいのでその後の焼結後に結晶相が平滑にならないおそれがある。好ましくは、90%以下である。
【0047】
また、通常Bi2223相の比率を92%以下にするためには、上記塑性加工および熱処理として、Bi2223相の板状結晶を大きくするためにテープ状に加工された線材を熱処理することで得られる。
【0048】
上記Bi2223相の比率が92%以下にされた後、中間圧延を行う。なお、中間圧延は、線材を圧延し、フィラメントの密度を高める目的としている。
【0049】
ここで、中間圧延は、当該圧延前の厚みに対して10%以上、好ましくは、15%以上になるように行い、また、25%以下、好ましくは、20%以下の範囲内になるように行う。25%を超えると、Bi2223結晶同士は密着するが結晶に大きなクラックが入るおそれがあり、その後の焼結の後においてもクラックが回復せず超電導特性が向上しない場合がある。また、10%未満であると、Bi2223結晶同士を密着することが難しく、隙間が多くなるのでその後の焼結後でも超電導特性が向上しにくい。
【0050】
上記中間圧延の後、Bi2223相における凹凸を平滑化させるように焼結を行う。具体的には、酸素分圧を6kPa〜15kPaの範囲内、温度を815℃〜835℃の範囲内の条件下で30時間〜100時間焼結を行う。
【0051】
酸素分圧が6kPa未満であると、反応がすばやく進行しすぎるので、大きな結晶を回復できないおそれがあり、15kPaを超えると、逆にBi2223相が分解しやすくなる。好ましくは、7kPa以上であり、10kPa以下である。
【0052】
また、焼結温度が815℃未満では、Bi2223結晶が成長するのに十分な温度ではなく、835℃を超えると、Bi2223相が分解するおそれがある。好ましくは、820℃以上であり、830℃以下である。
【0053】
また、焼結時間が30時間未満であると、十分にBi2223相が成長するのに短く、また、100時間を超えるとBi2223相が分解するおそれがある。好ましくは、40時間以上であり、80時間未満である。
【0054】
本発明において、上記焼結後のBi2223相の比率は98%以上であることが好ましい。98%未満であると、Bi2223相が少なくBi2212相が多いため、十分なBi2223結晶が存在せず、得られる超電導特性が低いおそれがある。より好ましくは、99%以上である。
【0055】
なお、本発明において焼結の手法としては、大型な炉または管状炉などを用いて焼結を行うことが挙げられる。
【0056】
本発明は、上述の本発明のビスマス系酸化物超電導線材の製造方法によって製造されたビスマス系酸化物超電導線材を、フィラメントとして複数本含み、当該フィラメントとしの複数本の線材を金属シースに投入したビスマス系酸化物超電導線材が提供される。ここで、上記フィラメントとしての線材はテープ状であることが好ましい。
【0057】
本発明において、フィラメントとは、超電導線材中に含まれる1つずつの線材という意味である。すなわち、本発明のビスマス系酸化物超電導線材は、単芯線としても用いることができるが、これらフィラメントとして複数個合せて多芯線の超電導線材としても用いることができることを意味する。
【0058】
ここで、フィラメントとしての線材は、テープ状であることが好ましい。テープ状にすることにより、Bi2223相の結晶配向性が向上する。また、テープ状にするためには、プレス、圧延をすることが挙げられる。
【0059】
本発明のビスマス系酸化物超電導線材は、種々の超電導機器に用いることができる。当該機器としては、たとえば、ケーブル、マグネット、コイル、モーター、変圧器などが挙げられる。
【0060】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するがこれに限定されるわけではない。
【実施例】
【0061】
まず、原料粉末を調製し、これを原料粉末の金属シースへの充填した。すなわち、Bi、PbO、SrCO、CaCO、CuOの各粉末を1.70:0.30:1.98:2.00:3.00の割合で混合し、混合粉末を大気中にて減圧雰囲気において熱処理を順次行う。各熱処理後にはそれぞれ粉砕を行う。このようにして得られた粉末を熱処理して原料粉末を調整する。この原料粉末を外径26mm、内径22mmの銀パイプに充填し、直径2.4mmまで伸線してクラッド線を作製する。
【0062】
その後、塑性加工および熱処理(大気中)を少なくとも1回施し、中間圧延を行った後、Bi2223相の凹凸を平滑化させるように焼結を行った。
【0063】
塑性加工の際冷間加工することが好ましく、熱処理の際熱処理雰囲気を変えられる炉があることが好ましい。
【0064】
得られた線材をフィラメントとして、所定の処理により、55芯を持つ多芯構造で、外径サイズが幅4.1mm、厚さ0.23mmで、長さ100mm、銀比が1.5のテープ形状のBi系酸化物超電導線材を得た。
【0065】
表1に、塑性加工および熱処理の回数、熱処理後のBi2223相の比率、中間圧延後の圧下率、焼結の際の条件、焼結後のBi2223相の比率、Bi2223結晶の凹凸、線材の臨界電流についての結果を示す。
【0066】
【表1】

【0067】
なお、結晶の凹凸の有無はSEMにより測定した結果を上述の基準により判断した。
【0068】
試料No.2,8−11,13,14,16−18,21は実施例を示し、試料No.1,3−7,12,15,19,20は比較例を示す。
【0069】
表1の結果より、本発明の範囲内の試料は、優れた超電導特性を示すことが明らかとなった。
【0070】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】(A)は、Bi2223相の結晶が平滑な場合の模式図であり、(B)は、凹凸がある場合を示す模式図である。
【図2】平滑なBi2223相のSEMにより観察した写真を示す図である。
【図3】凹凸のあるBi2223相のSEMにより観察した写真を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1A,1B,2A,2B 電流の流れ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Bi2223相の比率が98%以上であり、かつ前記Bi2223相の凹凸が平滑化されていることを特徴とする、ビスマス系酸化物超電導線材。
【請求項2】
請求項1のビスマス系酸化物超電導線材をフィラメントとして複数本含み、該線材が金属シースに内包されかつテープ状であることを特徴とする、ビスマス系酸化物超電導多芯線材。
【請求項3】
超電導相を含むビスマス系酸化物超電導線材原料を金属シースに充填し、該金属シースに少なくとも1回の塑性加工および熱処理を施して、Bi2223相の比率を92%以下にする工程と、
中間圧延を行う工程と、
Bi2223相の凹凸を平滑化させるように焼結を行う工程と、
を包含する、ビスマス系酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項4】
前記Bi2223相の凹凸を平滑化させるように焼結を行う工程は、酸素分圧を6kPa〜15kPaの範囲内、温度を815℃〜835℃の範囲内の条件下で30時間〜100時間焼結を行う工程であることを特徴とする、請求項3に記載のビスマス系酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項5】
前記中間圧延を行う工程は、圧延前の厚みに対して10%〜25%の範囲内の圧下率で行うことを特徴とする、請求項3または4に記載のビスマス系酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項6】
前記Bi2223相の凹凸を平滑化させるように焼結を行う工程は、該Bi2223相の比率を98%以上にすることを特徴とする、請求項3〜5のいずれかに記載のビスマス系酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれかに記載のビスマス系酸化物超電導線材の製造方法によって製造されたビスマス系酸化物超電導線材をフィラメントとして複数本含み、該線材は金属シースに内包されかつテープ状であることを特徴とする、ビスマス系酸化物超電導多芯線材。
【請求項8】
請求項1のビスマス系酸化物超電導線材、あるいは請求項2または7に記載のビスマス系酸化物超電導多芯線材を含む超電導機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−236939(P2006−236939A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53778(P2005−53778)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】