説明

ビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有する化合物及び酸触媒、並びにその製造方法

【課題】有機合成反応において、廃棄物を軽減でき、反応装置の腐食もなく、更に毒性もない酸触媒を提供する。
【解決手段】
ビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有するフェノール系化合物を用いることで、前記課題が解決する。
当該化合物は、有機化学の種々の反応、ディールス・アルダー反応、フリーデル・クラフツ反応、マイケル付加反応、エステル化反応等の有機合成反応における触媒として利用できる。
従来のルイス酸と比べて高活性であり、化学量論量の触媒を用いる必要がなく、極めて少量の触媒でもって、所望の有機反応が進行する。
また、様々な溶剤に溶解することから、均一系で反応が行うことが可能であり、更に反応後の目的物と触媒の分離が簡便である。常温付近の比較的低い温度でも反応が行えることが特徴であり、工業的な製造方法としても有用性が高いものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有する化合物及び酸触媒、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の酸触媒、例えば発煙硫酸等のブレンステッド酸、塩化アルミニウムや四塩化チタンなどのルイス酸においては、化学量論量の反応であったり、反応溶媒が限定されるなどの欠点があり、環境に調和した合成プロセスへの変更が望まれていた。発煙硫酸によるベックマン転位や、塩化アルミニウムによるフリーデルクラフツアシル化は触媒的ではなく、生成物と触媒とが安定な付加物を生成するため酸を中和あるいは分解して生成物を取り出す必要があり、化学量論あるいはそれ以上の酸を消費している。また、ベンゼンと塩化アセチルによるアセトフェノンの合成では廃塩化アルミニウムの中和後の廃棄物は目的物の7.3倍にも達する。
【0003】
そこで、グリーンケミストリーの観点から、固体酸触媒の開発がなされるようになってきた。従来、主として塩化アルミニウムが用いられていた芳香族アルキル化にも固体酸触媒が使用されるようになってきており、エチルベンゼンやクメンの合成プロセスは大半がゼオライト触媒(MCM−22(MWW))などにおきかえられている。これによって廃触媒や塩などの廃棄物が大幅に削減され、装置の腐食の問題や毒性の問題もなくなり、環境調和と同時に安定した連続生産性の改善もみられている。この様に、流通型の高温プロセスが適用可能な比較的単純な構造の有機化合物の合成反応に対しては、固体触媒の利点が十分に生かされている。これら固体酸触媒は不均一系触媒とも言われ、特に基幹化成品の合成や自動車エンジンの排気ガス浄化などに有用であり、大量に使用されている。
【0004】
その一方で、有機合成反応では、有機金属錯体や有機酸が触媒として、さまざまな条件で使用されてきた。これら触媒作用を持つ化合物は各種有機溶剤に溶けやすい為、液相での有機合成や高分子合成にたいへん有用であり、従来から知られる硫酸やメタンスルホン酸などと同じく、スルホン酸骨格を持った分子も触媒として開発されてきた。
【0005】
中でも非常に強い電子求引性を示すトリフルオロメタンスルホニル基(トリフリル、CFSO)基で置換された有機酸は、硫酸以上の酸性度を持つ超強酸として知られている。同一炭素にトリフリル基が2個ついたビス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンや、同一炭素にトリフリル基が3個ついたトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドも強い酸性を示す化合物の例である。
【0006】
強酸性を呈する化合物の製造、並びに、これらを医薬、農薬、ポリマーあるいはそれらの合成中間体等の合成反応(例えば、フリーデル・クラフツアルキル化反応、ディールス・アルダー反応等)における触媒として応用する試みが以前よりなされてきた。例えば、特許文献1には、アリールビス(パーフルオロアルキルスルホニル)メタン及びその金属塩、並びにそれらの製造法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、求電子反応による有機合成反応での触媒活性を増大させたルイス酸触媒として、一般式M[RfSO−N−SORf’]あるいはM[RfSO−N−SORf’]・mH2O(Rf及びRf’は、炭素原子数1〜8のパーフルオロアルキル基を表し、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、セレン、テルルから選ばれた元素を表し、nは該当する金属の原子価と同数の整数を表し、mは0.5〜20の自然数を表す)で示される化合物が、特許文献3でも種々のパーフルオロアルカンスルホニルイミド基を有する錯体、並びにそれを触媒とする種々の求電子反応による有機合成反応が開示されている。
【0008】
また、特許文献4には、一般式M(X)q(式中、Mは周期律表IIIA族からVB族の元素からなる群から選ばれる少なくとも1 種の金属を表し、Xはハロゲン原子を表し、qはMの原子価数と同一の整数を表す。)で示される、特定の金属ハロゲン化物と四級塩型陰イオン交換樹脂とからなる、水共存下でも使用できうる高活性なルイス酸触媒が開示されている。
【0009】
さらに、特許文献5では、次式[(RfSOC](但し、Rfは炭素数1以上のパーフルオロアルキル基を、Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類を含む遷移金属、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン、ビスマス、セレン、テルルから選ばれる元素を表す。nはMの原子価と同数の整数を表す。)で示される、トリス(パーフルオロアルキルスルホニル)メチドの金属塩からなる酸触媒を開示されている。
【0010】
さらに、本願発明に関連する技術として、特許文献6に、炭素−炭素結合形成反応に有用な酸触媒として1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメタンスルホニル)プロパン((CFSOCHCHCH(SOCF;TfCHCHCHTf)が開示されており、特許文献7では、当該プロパンの原料となりうる、1,1−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)エテン((CFSOC=CH)の製造方法が開示されている。また、非特許文献1では、1,1−ビス((トリフルオロメチル)スルホニル)エタン、1,1−ビス((トリフルオロメチル)スルホニル)フェニルエタンの製造方法も開示されている。
【0011】
なお、非特許文献2では、上述の1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメタンスルホニル)プロパンを酸触媒として用いた、種々の炭素−炭素骨格形成反応が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2002−048098号公報
【特許文献2】特開平7−246338号公報
【特許文献3】特開平9−57110号公報
【特許文献4】特開平9−262479号公報
【特許文献5】特開2000−219692号公報
【特許文献6】米国特許第4053519号
【特許文献7】米国特許第3962346号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】R.J.Koshar et al.,J.Org.Chem.,38,3358−3363(1973).
【非特許文献2】T.Taguchi et al.,J.Org.Chem.,75,5375−5378(2010).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
触媒活性、選択性の優れた触媒は、本質的に製造プロセスを簡略化できる。加えて、均一系触媒を用いた工業プロセスでは、触媒反応過程のみならず触媒分離過程での触媒劣化をいかに制御するかが重要であり、触媒分離工程を含めたエネルギー効率のよい新しい概念のプロセス設計が望まれている。前述した有機金属錯体を触媒とする合成反応は、中心金属、配位子ならびに反応溶媒等を巧みに組合わせることにより、温和な状況下で高い触媒活性と選択性を発現させることができる。しかし、有機金属錯体は不均一系触媒に比べると熱安定性が低く、触媒分離プロセスでの触媒劣化、脱メタル化、配位子の分解などの副反応の制御も考慮しなければならないため、分離プロセスが煩雑となる欠点を有している。
【0015】
本発明の課題は、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有する炭素酸化合物を、廃棄物を軽減しつつ、反応装置の腐食もなく、かつ毒性もない、様々な有機合成反応における酸触媒として提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有する特定のフェノール系化合物を見出すに至った。
【0017】
また、この化合物が種々の有機合成反応、例えば、ディールス・アルダー反応、フリーデル・クラフツ反応、マイケル付加反応、エステル化反応等における酸触媒として利用できるという、極めて有用な知見を得た。
【0018】
中でも、このフェノール系化合物のうち、下記式[1]で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有する化合物
【化1】

【0019】
が、各種有機合成反応に特に優れた酸触媒であるという知見も得た。
【0020】
更に、これらの知見に関連し、本発明で対象とするフェノール系化合物の製造方法において新たな知見を得た。
【0021】
すなわち、本願発明は下記の[発明1]〜[発明8]を提供するものである。
【0022】
[発明1]
下記式[1]、[2]、又は[3]で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有する化合物。
【化2】

【化3】

【化4】

【0023】
[式[1]、[2]、又は[3]中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基、芳香族炭化水素基、又はハロゲン原子を表し、該アルキル基又は該芳香族炭化水素基の水素原子の一部にハロゲン(フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素)、酸素原子、カルボニル結合を含んでも良い。R、R、及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基を表す。式[1]又は[2]中、lは0〜2の任意の整数、nはそれぞれ独立に1〜5の任意の整数、mはそれぞれ独立に0〜4の任意の整数、oはそれぞれ独立に1〜3の任意の整数を表し、かつm+n+o≦6を満たす。また、式[3]中、nはそれぞれ独立に1〜5の任意の整数、mはそれぞれ独立に0〜4の任意の整数、oはそれぞれ独立に1〜3の任意の整数を表し、かつm+n+o≦5を満たす。RとR、RとRが複数の場合、それぞれ同一でも異なっても良い。]
[発明2]
式[1]、[2]、又は[3]で表される化合物のうち、Rがそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基であり、Rがそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖のアルキル基である、発明1に記載の化合物。
【0024】
[発明3]
下記式[1]、[2]、又は[3]で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有する化合物からなる酸触媒。
【化5】

【化6】

【化7】

【0025】
[式[1]、[2]、又は[3]中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基、芳香族炭化水素基、又はハロゲン原子を表し、該アルキル基又は該芳香族炭化水素基の水素原子の一部にハロゲン(フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素)、酸素原子、カルボニル結合を含んでも良い。R、R、及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基を表す。式[1]又は[2]中、lは0〜2の任意の整数、nはそれぞれ独立に1〜5の任意の整数、mはそれぞれ独立に0〜4の任意の整数、oはそれぞれ独立に1〜3の任意の整数を表し、かつm+n+o≦6を満たす。また、式[3]中、nはそれぞれ独立に1〜5の任意の整数、mはそれぞれ独立に0〜4の任意の整数、oはそれぞれ独立に1〜3の任意の整数を表し、かつm+n+o≦5を満たす。RとR、RとRが複数の場合、それぞれ同一でも異なっても良い。]
[発明4]
式[1]、[2]、又は[3]で表される化合物のうち、Rがそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基であり、Rがそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖のアルキル基である、発明3に記載の酸触媒。
【0026】
[発明5]
発明3又は4に記載の酸触媒を用いたディールズ・アルダー反応、アルドール型反応、フリーデル・クラフツ型反応、又はエステル化反応への使用。
【0027】
[発明6]
式[4]で表される1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメタンスルホニル)プロパン
【化8】

【0028】
に、式[5]で表される化合物
【化9】

【0029】
[式[5]中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基、又は芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基もしくは該芳香族炭化水素基の水素原子の一部にハロゲン(フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素)、酸素原子、カルボニル結合を含んでも良い。Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基を表す。lは0〜2の任意の整数、nはそれぞれ独立に1〜5の任意の整数、mはそれぞれ独立に0〜(6−n)の任意の整数を表す。RとRが複数の場合、それぞれ同一でも異なっても良い。]
を反応させることを特徴とする、式[1]で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有する化合物
【化10】

【0030】
[式[1]中、R、R、l、m、nは前記に同じ。oはそれぞれ独立に1〜3の任意の整数を表し、かつm+n+o≦6を満たす。]
の製造方法。
【0031】
[発明7]
式[4]で表される1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメタンスルホニル)プロパン
【化11】

【0032】
に、式[6]で表される化合物
【化12】

【0033】
[式[6]中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基、又は芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基又は該芳香族炭化水素基の水素原子の一部にハロゲン(フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素)、酸素原子、カルボニル結合を含んでも良い。R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基を表す。lは0〜2の任意の整数、nはそれぞれ独立に1〜5の任意の整数、mはそれぞれ独立に0〜(6−n)の任意の整数を表す。RとR、RとRが複数の場合、それぞれ同一でも異なっても良い。]
を反応させることを特徴とする、式[2]で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有する化合物
【化13】

【0034】
[式[2]中、R、R、R、l、m、nは前記に同じ。oはそれぞれ独立に1〜3の任意の整数を表し、かつm+n+o≦6を満たす。]
の製造方法。
【0035】
[発明8]
式[4]で表される1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメタンスルホニル)プロパン
【化14】

【0036】
に、式[7]で表される化合物
【化15】

【0037】
[式[7]中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基、又は芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基、又は該芳香族炭化水素基の水素原子の一部にハロゲン(フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素)、酸素原子、カルボニル結合を含んでも良い。Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基を表す。nはそれぞれ独立に1〜5の任意の整数、mはそれぞれ独立に0〜(5−n)の任意の整数を表す。RとRが複数の場合、それぞれ同一でも異なっても良い。]
を反応させることを特徴とする、式[3]で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有する化合物
【化16】

【0038】
[式[3]中、R、R、m、nは前記に同じ。oは1〜3の任意の整数を表し、かつm+n+o≦5を満たす。]
の製造方法。
【発明の効果】
【0039】
本願発明の対象とする化合物は様々な溶剤に易溶であるため、種々の有機合成反応における酸触媒として利用すると、均一系で反応が行え、また、適度な酸性度をもつと同時に対応する共役塩基の求核性が低いため、原料や目的物の分解反応を起こし難く、反応後の目的物と触媒の分離が簡便である。加えて、常温付近の比較的低い温度でも本願発明の対象とする化合物を製造できるため、工業的な製造方法としても有用性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜実施することができる。
【0041】
1.本願発明の化合物
まず、本願発明の対象とする化合物のうち、式[1]〜式[3]で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有する化合物について説明する。
【0042】
式[1]〜式[3]について、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基、芳香族炭化水素基、又はハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素)を表す。
【0043】
のうち、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基について具体的に表すと、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、i−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチルメチル基等を挙げることができる。
【0044】
芳香族炭化水素基については、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、1−フェナントリル基等を挙げることができる。
【0045】
また、該アルキル基又は該芳香族炭化水素基の水素原子の一部にハロゲン(フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素)、酸素原子、カルボニル結合が置換することが可能である。
【0046】
また、式[1]中、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基を表す。当該アルキル基の具体的な構造については、前述した内容(式[1]中、Rの定義)が同様に適用できる。
【0047】
また、式[2]又は式[3]で表される化合物における、R、及びRの定義は、前述したように、式[1]におけるRの説明と同様の定義が適用できる。
【0048】
式[1]、又は[2]のlは0〜2の任意の整数、nはそれぞれ独立に1〜5の任意の整数、mはそれぞれ独立に0〜4の任意の整数、oはそれぞれ独立に1〜3の任意の整数を表し、かつm+n+o≦6を満たす。
【0049】
一方、式[3]中のnはそれぞれ独立に1〜5の任意の整数、mはそれぞれ独立に0〜4の任意の整数、oはそれぞれ独立に1〜3の任意の整数を表し、かつm+n+o≦5を満たす。
【0050】
なお、式[1]〜式[3]のうち、芳香環に置換する置換基(具体的には「(R」、「(OR」、「(NR」、「(CHCH(CFSO)」)の位置については特に制限はなく、これらの置換基は、構造上、とりうる範囲内で存在しても良い。
【0051】
式[1]〜式[3]で表される化合物は、より具体的には下記のように例示することができる。
【化17】

【0052】
なお、これらの化合物のうち、下記式
【化18】

【0053】
の構造は、式[2]で表される化合物自身が分子内で塩を形成することにより得られるものであり、本願発明では、当該化合物についても式[2]で表される化合物に包合するものとして扱う。
【0054】
2.式[1]〜式[3]で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有する化合物の酸触媒としての使用
次に、式[1]〜式[3]で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有する化合物の、酸触媒としての使用について説明する。
【0055】
本願発明で対象とする式[1]〜式[3]で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有する化合物は、各種有機合成反応における酸触媒として作用する。
【0056】
また、従来、知られている発煙硫酸等のブレンステッド酸、塩化アルミニウム、四塩化チタン、及び三フッ化ホウ素等のルイス酸と比べて高活性である。また、化学量論量の触媒を用いる必要がなく、後述の実施例で示すように、極めて少量の触媒を使用した場合でも、所望の有機反応が進行する。また、反応溶媒についても特に限定されず、汎用の有機溶媒の使用が可能である。
【0057】
本願発明の化合物は、アルドール型反応、フリーデル・クラフツ型反応、ディールズ・アルダー反応、マイケル反応、エン反応、エステル化反応等の各種有機合成反応における酸触媒として用いることが可能である。例えば後述の実施例に挙げるように、本願発明における化合物のうち、以下の化合物、
【化19】

【0058】
が、アルドール型反応、及びエステル化反応における酸触媒として特に優れた性能を発揮し、また、特定の基質について、極めて少量の触媒でもって効率よく該反応が進行することを見いだしたことは、本願発明における好ましい態様の一つである。
【0059】
各種有機合成反応における酸触媒の使用については、通常の固体触媒を用いるときと同様、液相反応にて行うと良い。溶媒としては反応に関与しないものであれば特に制限はなく、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、アセトン等のアルキルケトン類、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)等の非プロトン性極性溶媒が例示できる。
【0060】
当該化合物における酸触媒としての添加量については、反応基質に対して通常、0.001倍モル〜10倍モルであるが、好ましくは0.01倍モル〜5倍モルであり、更に好ましくは0.01倍モル〜3倍モルである。
【0061】
なお、後述の実施例に示すように、特定の酸触媒については、その使用量を、基質に対して0.05倍モルで行った場合でも、目的とする反応生成物の収率の低下が起こらず、高い収率で所望の生成物が製造できるという、工業的にも優位な知見を得た。
【0062】
各種有機合成反応における酸触媒としての使用の際、反応温度は反応基質及び添加する触媒の量により変化するが、通常−50〜100℃の範囲で行えば良い。
【0063】
反応容器としては、特に制限はなく、反応時に使用する圧力に耐えるもの、または反応に影響を与えない材質のものを使用することができる。反応は常圧でも加圧下でも良く、反応の種類により当業者が適宜調整することができる。
【0064】
また、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスを流通させながら反応を行っても良い。
【0065】
反応時間は、特に制限はないが、通常は24時間以内の範囲で行えばよく、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、NMR等の分析手段により反応の進行状況を追跡し、原料基質が殆ど消失した時点を終点とするのが好ましい。
【0066】
3.式[1]〜式[3]で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有する化合物の製造方法
次に、式[1]〜式[3]で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有する化合物の製造方法について説明する。
【0067】
前述した特許文献6では、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンとパラホルムアルデヒドとの反応によって、1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメタンスルホニル)プロパンを合成する方法が記載されている(下記スキーム参照)。
【化20】

【0068】
本発明で対象とするフェノール系化合物、すなわち、式[1]〜[3]で表される化合物は、1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメタンスルホニル)プロパンを、室温下で種々の有機溶媒に溶解させ、求核種であるフェノール系化合物と反応させることにより製造できる。このことは、1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメタンスルホニル)プロパンが、反応系内において1,1−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチレンと、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンへ可逆的に分解し、高度に求電子的な反応受容体である1,1−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチレンがフェノール系の求核種と反応することにより得られたものと推測される。
【化21】

【0069】
当該化合物は、溶媒の存在下で製造することができる。反応溶媒としては、反応に関与しないものであれば特に制限はなく、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、アセトン等のアルキルケトン類、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)等の非プロトン性極性溶媒が例示できる。
【0070】
しかしながら、反応原料、あるいは反応試剤が室温で液体か、反応温度で溶融する場合、それら自身、溶媒の役割も兼ねることから、敢えて別途溶媒を使用する必要はなく、その方が工業的にも負荷がかからず、経済的にも好ましい。
【0071】
当該化合物の製造方法における反応温度は、通常、20℃〜150℃程度であるが、反応溶媒の沸点に応じて、また、反応の進行に応じて当業者がこの温度範囲内で適宜調整できる。なお、本願発明において、有機溶媒としてアセトニトリルを用いた場合、当該反応が室温(約25℃)でも十分に進行することを見出した(後述の実施例参照)。このことは本願発明における特に好ましい態様の一つである。
【0072】
また、当該製造方法については、出発原料としてビス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンを用い、パラホルムアルデヒド、そして求核種であるフェノール系化合物と反応させるという方法(なお、この反応形態を「ワンポット反応」とも言う。以下、本明細書にて同じ。)についても、目的化合物を製造できる知見を得た。すなわち、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンとパラホルムアルデヒドとの反応により、反応系内で1,1−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチレンが発生し、それがフェノール系化合物と反応することにより式[1]〜[3]で表される化合物を得たものと考えられる。
【0073】
なお、当該ワンポット反応においても目的化合物を十分製造できるが、目的物以外の副生物(ジアリールメタン等)も同時に生成することから、前述した1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメタンスルホニル)プロパンを用いた反応条件の方が、目的物を高選択的かつ高収率で得ることができる有用な方法である。
【0074】
本願製造方法について、特に好ましい知見を得た。すなわち、1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメタンスルホニル)プロパンを用い、フェノール系化合物と反応させることにより、当該目的化合物を得ることができるが、同時に副生するビス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンを蒸留等で分離することで、高い回収率でもって得られることがわかった(後述の実施例参照)。当該メタンは、それ自身、ワンポット反応における反応試剤として用いたり、もしくは従来公知の方法を用いて1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメタンスルホニル)プロパンに誘導することもできる。副生物を回収できることから廃棄物の大幅な削減ができ、かつ出発原料としても再利用できることから、工業的な製造において極めて有用な知見である。
【0075】
本願製造方法における後処理方法については特に制限はなく、反応終了後の反応物の処理は、通常の有機合成の処理法(再結晶、蒸留またはカラムクロマトグラフィー等)に基づいて行えばよい。通常の手段に付して、式[1]〜式[3]で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有する化合物を得ることができるが、本製造において蒸留操作を行うと、容易に該目的物を高純度かつ高収率で供給することが可能であるため、該目的物を工業的規模で製造する上で非常に優れた方法である。
【0076】
なお、蒸留を行う場合には、常圧(0.1MPa)でも良いが、減圧条件にすることが好ましい。蒸留塔の材質には制限はなく、ガラス製のもの、ステンレス製のもの、四フッ化エチレン樹脂、クロロトリフルオロエチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、PFA樹脂、ガラスなどを内部にライニングしたもの等を、用いることができる。蒸留塔中には、充填剤を詰めることもできる。蒸留は、減圧条件下で行うと、比較的低い温度で達成できるため、簡便であり、好ましい。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、Meはメチル基、Tfはトリフリル基(CFSO)の略記号である。
【0078】
[調製例]
<1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメチルスルホニル)プロパン()TfCHCHCHTfの合成例>
塩化メチレン(50ml)に窒素を吹き込みながら攪拌して懸濁させたパラホルムアルデヒド(6.3g)を、窒素雰囲気下、40℃で還流しているビス(トリフルオロメチルスルホニル)メタン(112g,0.4mol)の塩化メチレン(300ml)溶液に、5時間かけてゆっくり加えた。
【0079】
混合物を1時間攪拌した後、15℃まで冷却し、水相を分離した。水相は塩化メチレンで抽出して有機相に加え、蒸留することによって1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメチルスルホニル)プロパン()(100g)が得られた。
【0080】
沸点:92−98℃(15mmHg)。さらに高純度のサンプルがクロロベンゼンからの再結晶で得られる。融点:51−53℃、元素分析:C、計算値:14.7%C,39.8%F,0.7%H、分析値:15.0%C、39.6%F、0.9%H
[実施例1]
1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメチルスルホニル)プロパン()(121.6mg,0.21mmol)を、フェノール(22.0mg,0.23mmol)のアセトニトリル(0.21ml)溶液に室温で加え、1時間反応させた。反応溶液を減圧下で濃縮した後、クーゲルロールによる蒸留精製(180−200℃/4mmHg)を経て、オルト/パラ異性体約2.3:1の混合物を得た。2−(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル)フェノール(1a)及び4−(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル)フェノール(1b)の混合物の収率は合計で72%であった(59.5mg,0.15mmol)。
【化22】

【0081】
無色液体:IR(neat)ν3547,3401,2940,1518,1391,1215,1110cm−1H−NMR(400MHz,CDCl)(1a):δ3.78(2H,d,J=6.7Hz),5.55(1H,S,OH),5.87(1H,t,J=6.7Hz),6.77(1H,t,J=8.0Hz),6.95(1H,t,J=8.0Hz),7.21−7.31(2H,m),(1b):δ3.74(2H,d,J=5.7Hz),5.00(1H,t,J=5.7Hz),5.11(1H,s,OH),6.83(2H,d,J=8.5Hz),7.19(2H,d,J=8.5Hz);13C−NMR(100MHz,CDCl)(1a):δ28.0,76.1,115.1,118.1,119.2(q,JC−F=330.0Hz),121.6,130.1,132.8,153.4,(1b):δ29.9,80.1,116.2,119.2(q,JC−F=330.0Hz),124.9,130.6,155.8;19F−NMR(282Hz,CDCl)(1a):δ−10.7(6F,s),(1b):δ−9.9(6F,s);MS(ESI−TOF)m/z 409[M+Na];HRMS calcd for C10NaO[M+Na],408.9615;found,408.9566.
[実施例2]
p−クレゾール(28.1mg,0.27mmol)のアセトニトリル(0.25ml)溶液に、1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメチルスルホニル)プロパン()(139.5mg,0.24mmol)を室温で加えた。3時間攪拌した後、反応溶液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をクーゲルロール蒸留によって精製し(180−200℃/3mmHg)、2−(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル−4−メチルフェノール(1c)がほぼ定量的な収率で得られた(97.0mg,0.24mmol)。
【化23】

【0082】
1c);無色液体:IR(neat)ν3552,2940,1513,1392,1218,1114,815,689cm−1H−NMR(400MHz,CDCl)δ2.27(3H,S),3.73(2H,d,J=6.8Hz),5.36−5.52(1H,br,OH),5.91−5.97(1H,m),6.66(1H,m),7.03(1H,d,J=8.1Hz),7.05(1H,s);13C−NMR(100MHz,CDCl)δ20.3,28.0,76.0,115.0,117.6,119.2(q,JC−F=330.0Hz),130.5,130.9,133.0,151.2;19F−NMR(282Hz,CDCl)δ−10.6(6F,s);MS(ESI−TOF)m/z 401[M+H];HRMS calcd for C1111[M+H],400.9952;found,400.9948.Anal.Calcd for C1110:C,33.00;H,2.52.Found:C,32.82;H,2.81.
[実施例3]
2,6−キシレノール(34.1mg,0.28mmol)のアセトニトリル(0.25ml)溶液に、1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメチルスルホニル)プロパン()(143.2mg,0.25mmol)を室温で加えた。3時間攪拌した後、反応溶液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をクーゲルロール蒸留によって精製し(180−200℃/3mmHg)、4−(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル−2,6−ジメチルフェノール(1d)を収率94%で得た(96.9mg,0.234mmol)。更に、ヘキサンから再結晶して無色結晶を得た。
【化24】

【0083】
1d);無色結晶;融点77.7−79.4℃;IR(KBr)ν3585,2932,1492,1393,1208,1109,694cm−1H−NMR(400MHz,CDCl)δ2.23(6H,S),3.67(2H,d,J=5.7Hz),4.76(1H,s,OH),5.03(1H,t,J=5.7Hz),6.90(2H,s);13C−NMR(100MHz,CDCl)δ15.8,29.8,80.2,119.2(q,JC−F=330.0Hz),123.9,124.3,129.2,152.3;19F−NMR(282Hz,CDCl)δ−9.8(6F,s);MS(ESI−TOF)m/z 437[M+H];HRMS calcd for C1212[M+Na],436.9928;found,436.9918.Anal.Calcd for C1212:C,34.78;H,2.92.Found:C,35.18;H,3.07.
[実施例4]2,6−キシレノールの代わりに2,4−ジメチルフェノール(33.6mg、0.275mmol)を用いた他は実施例3と操作、条件とも同様に行った。その結果、2−(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル)−4,6−ジメチルフェノール(1e
【化25】

【0084】
を、収率86%で得た(88.7mg,0.21mmol)。更に、ヘキサンから再結晶して無色結晶を得た。
【0085】
1e);無色結晶;融点68.8−70.6℃; IR (neat) ν 3572, 3016, 2944, 1492, 1393, 1214, 1110, 692 cm−1; H−NMR (400 MHz, CDCl) δ 2.22(3H,s),2.24(3H,s),3.73 (2H,d,J=6.7Hz),4.90(1H,s,OH),5.88(1H,t,J=6.7Hz),6.92(1H,s),6.93(1H,s);13C−NMR(100MHz,CDCl)δ 15.2,20.3,28.0,76.3,117.6,119.2(q,JC−F=330.0Hz),122.2,130.5,130.8,131.9,149.5;19F−NMR(282Hz,CDCl) δ −10.5(6F,s);MS(ESI−TOF)m/z 437[M+Na];HRMS calcd for C1212NaO [M+Na],436.9928;Found,436.9914.Anal.Calcd for C1212:C,34.78;H,2.92.Found:C,34.87;H,3.21.
[実施例5]2,6−キシレノールの代わりに2−ブロモ−4−メチルフェノール(33.2μL、0.275mmol)を用い、100℃で10時間反応させた他は実施例3と操作、条件とも同様に行った。その結果、2−(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル)−6−ブロモ−4−メチルフェノール(1f
【化26】

【0086】
を、収率91%で得た(109.1mg,0.23mmol)。
【0087】
無色液体;IR(neat)ν 3500,2952,1484,1394,1212,1109cm−1H−NMR(400MHz,CDCl)δ 2.27(3H,s),3.75(2H,d,J=6.8Hz),5.79(1H,s,OH),5.80(1H,t,J=6.8Hz),7.04(1H,s),7.29(1H,s);13C−NMR(100MHz,CDCl)δ 20.2,28.4,75.8,109.9,118.7,119.2(q,JC−F=329.9 Hz),132.0,132.6,132.7,147.6;19F−NMR(282Hz,CDCl)δ −10.5(6F,s);MS(ESI−TOF)m/z 501[M+Na],503[M+2+Na];HRMS calcd for C11BrFNaO [M+Na], 500.8877; Found, 500.8931. Anal. Calcd for C11BrF: C, 27.57; H, 1.89. Found: C, 27.85; H, 2.23.
[実施例6]2,6−キシレノールの代わりにメチル 2−ヒドロキシ−5−メチルベンゾエート(45.7mg、0.275mmol)を用い、100℃で24時間反応させた他は実施例3と操作、条件とも同様に行った。その結果、メチル 3−(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル)−2−ヒドロキシ−5−メチルベンゾエート(1g
【化27】

【0088】
を、収率79%で得た(90.6mg,0.20mmol)。更に、ヘキサンから再結晶して無色結晶を得た。
【0089】
1g);無色結晶;融点55.4−57.2℃;IR(neat)ν 3104,3011,2957,1678,1394,1208,1112,801 cm−1H−NMR(400MHz,CDCl)δ 2.29(3H,s),3,74(2H,d,J=6.8Hz),3.96(3H,s),5.98(1H,t,J=6.8 Hz),7.30(1H,s),7.66(1H,s),11.23(1H,s,OH);13C−NMR(100MHz,CDCl)δ 20.3,28.0,52.6,75.2,112.2,119.2(d,JC−F=329.9 Hz),119.3,129.0,130.4,139.2, 157.0,170.6;19F−NMR(282Hz,CDCl)δ −10.6(6F,s);MS(ESI−TOF)m/z 459[M+H];HRMS calcd for C1313 [M+H], 459.0007;Found, 459.0003.
[実施例7]2,6−キシレノールの代わりにtert−ブチルフェノール(49.6mg、0.33mmol)、アセトニトリルを0.50mL用い、80℃で10時間反応させた他は実施例3と操作、条件とも同様に行った。その結果、2,6−ビス(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル)−4−tert−ブチルフェノール(1h
【化28】

【0090】
を、収率88%で得た(207.3mg,0.28mmol)。更に、ヘキサンから再結晶して無色結晶を得た。
【0091】
1h);無色結晶;融点73.3−75.7℃;IR(neat)ν 3537,2964,2911,1492,1395,1214,1108cm−1H−NMR(400MHz,CDCl−TMS)δ 1.28(9H,s),3.79(4H,d,J=5.8Hz),5.43(2H,t,J=5.8Hz),5.95(1H,s,OH),7.27(2H,s);13C−NMR(100MHz,CDCl)δ 27.0,31.0,34.3,78.0,119.2 (q,JC−F=329.9Hz),120.8,129.5,146.1,149.5;19F−NMR(282Hz,CDCl)δ −10.0(12F,s); MS (ESI−TOF) m/z 757[M+Na];HRMS calcd for C181812NaO[M+Na],756.9540; Found,756.9472.Anal.Calcd for C181812:C,29.43;H,2.47.Found:C,29.56;H, 2.58.
[実施例8]2,6−キシレノールの代わりに1−メトキシ−4−メチルベンゼン(34.2mg、0.28mmol)を用い、室温で5時間反応させた他は実施例3と操作、条件とも同様に行った。その結果、2−(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル)−1−メトキシ−4−メチルベンゼン(1i
【化29】

【0092】
を、収率90%で得た(93.6mg,0.23mmol)。更に、ヘキサンから再結晶して無色結晶を得た。
【0093】
1i);無色結晶;融点83.6−85.5℃;IR(KBr)ν 2959,1383,1216,1196,1134,1033,817cm−1H−NMR(400MHz,CDCl)δ 2.30(3H,s),3.70(2H, d,J=6.6Hz),3.86(3H,s),5.82(1H,t,J=6.6Hz),6.81(1H,d,J=8.4Hz),7.09(1H,s),7.14(1H,d,J=8.4Hz);13C−NMR(100MHz,CDCl) δ 20.3,28.3,55.3,76.0,110.3,119.1,119.2(q,JC−F=329.9Hz),130.4,130.5,133.1, 155.0;19F−NMR(282Hz,CDCl)δ −10.9(6F, s);MS(ESI−TOF)m/z 437[M+Na];HRMS calcd for C1212[M+Na],436.9928; Found,436.9950.Anal.Calcd for C1212:C,34.78;H,2.92.Found:C,34.70;H,3.01.
[実施例9]2,6−キシレノールの代わりに1−(ベンジルオキシ)−4−メチルベンゼン(54.5mg、0.275mmol)を用い、塩化メチレン(50μL)、80℃で6時間反応させた他は実施例3と操作、条件とも同様に行った。その結果、1−(ベンジルオキシ)−2−(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル)−4−メチルベンゼン(1j
【化30】

【0094】
を、収率70%で得た(86.0mg,0.18mmol)。更に、ヘキサンから再結晶して無色結晶を得た。
【0095】
1j);無色結晶;融点75.2−78.3℃;IR(KBr)ν 2948,1391,1221,1118,1009cm−1H−NMR(400MHz, CDCl)δ 2.29(3H,s),3.73(2H,d,J=7.0Hz),5.08(2H,s),5.89(1H,t,J=7.0Hz),6.88(1H,d,J=8.3Hz),7.10(1H,s),7.12(1H,d,J= 8.3Hz),7.33−7.45(5H,m);13C−NMR(100MHz, CDCl)δ 20.4,28.2,70.5,76.0,111.3,118.9,119.0(q,JC−F=330.2Hz),127.7,128.5,128.8,130.4,130.8,133.3,135.7,154.4; 19F−NMR (282Hz,CDCl)δ −10.7(6F,s);MS(ESI−TOF) m/z 491[M+H];HRMS calcd for C1817[M+H],491.0422;Found,491.0495.
[実施例10]2,6−キシレノールの代わりに1,4−ジメトキシベンゼン(34.5mg、0.25mmol)を用い、アセトニトリル(0.50mL)、室温で5時間反応させた他は実施例3と操作、条件とも同様に行った。その結果、2−(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル)−1,4−ジメトキシベンゼン(1k
【化31】

【0096】
を、収率88%で得た(94.5mg,0.22mmol)。更に、ベンゼンから再結晶して無色結晶を得た。
【0097】
1k);無色結晶;融点76.0−77.8℃;IR(KBr)ν 3026,2974,2940,2845,1376,1235,1193,1122,1026cm−1H−NMR(400MHz,CDCl)δ 3.70(2H, d,J=6.7Hz),3.77(3H,s),3.84(3H,s),5.79 (1H,t,J=6.7Hz),6.79−6.88(3H,m);13C−NMR(400MHz,CDCl)δ 28.5,55.7,55.8,75.9, 111.2,114.6,118.4,119.2(q,JC−F=329.9Hz),120.4,151.2,153.6;19F−NMR(282Hz,CDCl)δ −10.9(6F,s);MS(ESI−TOF)m/z 431[M+H];HRMS calcd for C1213[M+H],431.0058;Found,431.0068.
[実施例11]2,6−キシレノールの代わりに1,2−ジメトキシベンゼン(34.5mg、0.25mmol)を用い、アセトニトリルを0.50mL用いた他は実施例3と操作、条件とも同様に行った。その結果、4−(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル)−1,2−ジメトキシベンゼン(1l
【化32】

【0098】
を、収率86%で得た(92.5mg,0.215mmol)。更に、ベンゼンから再結晶して無色結晶を得た。
【0099】
1l);無色結晶;融点78.0−79.5℃;IR(KBr)ν 2943,2843,1519,1391,1215,1110cm−1H−NMR(400MHz,CDCl)δ 3.74(2H,d,J=5.6Hz),3.87(6H,s),5.02(1H,t,J=5.6Hz),6.81(1H,brs),6.83(1H,d,J=8.1Hz),6.86(1H,d,J=8.1Hz);13C−NMR(400MHz,CDCl)δ 30.2,55.87,55.92,80.1,111.5,112.1,119.2(q,JC−F=329.9Hz),121.4,125.2,149.2,149.3;19F−NMR(282Hz,CDCl)δ −9.7(6F,s);MS(ESI−TOF)m/z 431[M+Na];HRMS calcd for C1213NaO[M+H],431.0058;Found, 431.0039.
[実施例12]
2−ナフトール(79.0mg,0.55mmol)のアセトニトリル(0.5ml)溶液に、1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメチルスルホニル)プロパン()(285.8mg,0.50mmol)を室温で加えた。1時間攪拌した後、クロロホルムから再結晶することによって無色結晶の1−(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル)ナフタレン−2−オール(1m)を収率70%で得た(152.7mg,0.35mmol)。
【化33】

【0100】
1m);無色結晶;融点102.4−104.9℃;IR(KBr)ν3544,3068,1361,1585,1391,1216,1109,811,696cm−1H−NMR(400MHz,CDCl)δ4.23(2H,d,J=6.9Hz),5.82(1H,s,OH),6.14(1H,t,J=6.9Hz),7.01(1H,d,J=8.8Hz),7.41(1H,dd,J=8.2,7.2Hz),7.59(1H,dd,J=8.6,7.2Hz),7.78(1H,d,J=8.8Hz),7.81(1H,d,J=8.2Hz),8.01(1H,d,J=8.6Hz);13C−NMR(100MHz,CDCl)δ22.3,75.8,110.0,116.7,119.2(q,JC−F=330.1Hz),122.3,123.9,127.6,128.9,129.4,130.9,132.7,151.5;19F−NMR(282Hz,CDCl)δ−10.6(6F,s);MS(ESI−TOF)m/z 437[M+H];HRMS calcd for C1411[M+H],436.9952;found,436.9993.
[実施例13]
1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメチルスルホニル)プロパン()(101.7mg,0.18mmol)に対して1.0当量のN,N−ジメチルアニリン(22.5μl,0.18mmol)を、アセトニトリル(0.20ml)中80℃で3時間作用させた後、生成した固体をろ別し、塩化メチレン(約3ml)で洗浄した。減圧下で乾燥することによって分子内で塩を形成したビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル化生成物(2a)を収率95%で得た(70.1mg,0.17mmol)。更に、アセトンから再結晶して無色結晶を得た。
【化34】

【0101】
2a);無色結晶;融点183.5−185.0℃(分解);IR(KBr)ν3140,3086,1336,1306,1185,1109,1034cm−1H−NMR(400MHz,CDCN)δ3.20(6H,s),3.73,(2H,s),7.44(2H,d,J=8.7Hz),7.58(2H,d,J=8.7Hz),8.82(br,NH);13C−NMR(100MHz,CDCN)δ33.8,48.0,65.6,120.8,122.4(q,JC−F=327.9Hz),131.3,140.9,146.5;19F−NMR(282MHz,CDCN)δ−16.8(6F,S);MS(ESI−TOF)m/z 414[M+H];HRMS calcd for C1214NO[M+H],414.0268;found,414.0280.
[実施例14]
2,6−ジフェニルフェノール(61.9mg,0.25mmol)のアセトニトリル(0.25ml)溶液に、1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメチルスルホニル)プロパン()(157.3mg,0.28mmol)を室温で加えた。9時間攪拌した後、クーゲルロール蒸留によって精製し(120℃/3mmHg)、4−(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル−2,6−ジフェニルフェノール(1n)を収率97%で得た(130.7mg,0.24mmol)。
【化35】

【0102】
1n);無色液体;IR(neat)ν3535,3060,2936,1394,1223,1108,778,739,700cm−1H−NMR(400MHz,CDCl)δ3.84(2H,d,J=5.8Hz),5.12(1H,t,J=5.8Hz),5.52(1H,s,OH),7.24(2H,s),7.41−7.47(2H,m),7.48−7.56(8H,m);13C−NMR(100MHz,CDCl)δ30.0,80.1,119.3(q,JC−F=330.2Hz),124.8,128.1,129.0,129.2,129.7,130.6,136.6,149.6;19F−NMR(282Hz,CDCl)δ−9.6(6F,s);MS(ESI−TOF)m/z 539[M+H];HRMS calcd for C2216[M+H],539.0442;found,539.0479.Anal.Calcd for C2216:C,49.07;H,2.99.Found:C,48.74;H,3.25.
[実施例15]
4−t−ブチルフェノール(43.6mg,0.29mmol)のアセトニトリル(0.25ml)溶液に、1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメチルスルホニル)プロパン()(148.8mg,0.264mmol)を室温で加えた。1時間攪拌した後、反応溶液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をクーゲルロール蒸留によって精製し(190−210℃/5mmHg)、2−(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル−4−t−ブチルフェノール(1o)がほぼ定量的な収率で得られた(97.0mg,0.24、mmol)。
【化36】

【0103】
1o);無色液体:IR(neat)ν3551,2965,1510,1392,1217,1110,827,695cm−1H−NMR(400MHz,CDCl)δ1.28(9H,S),3.77(2H,d,J=6.8Hz),5.21−5.29(1H,br,OH),5.85(1H,m),6.89(1H,d,J=8.4Hz),7.23(1H,d,J=8.4Hz),7.28(1H,s);13C−NMR(100MHz,CDCl)δ28.2,31.1,34.1,76.3,114.3,117.2,119.2(q,JC−F=330.0Hz),126.7,130.1,144.5,151.0;19F−NMR(282Hz,CDCl)δ−10.6(6F,s);MS(ESI−TOF)m/z 443[M+H];HRMS calcd for C1417[M+H],443.0422;found,443.0415.Anal.Calcd for C1416:C,38.01;H,3.65.Found:C,37.62;H,3.87.
[実施例16]
5−メチルビフェニル−2−オール(40.0mg,0.22mmol)のアセトニトリル(0.20ml)溶液に、1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメチルスルホニル)プロパン()(113.0mg,0.20mmol)を加えて80℃で2時間攪拌した。反応溶液をクーゲルロール蒸留によって精製し(195−210℃/3mmHg)、3−(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル)−5−メチルビフェニル−2−オール(1p)が収率51%で得られた(48.4mg,0.10mmol)。
【化37】

【0104】
1p);無色液体:IR(neat)ν3541,3028,2950,1476,1394,1212,1109,704,661cm−1H−NMR(400MHz,CDCl)δ2.32(3H,S),3.79(2H,d,J=6.7Hz),5.52(1H,br,OH),5.95(1H,t,J=6.7Hz),7.05(1H,s),7.08(1H,s),7.39(2H,d,J=7.6Hz),7.44(1H,t,J=7.4Hz);13C−NMR(100MHz,CDCl)δ20.4,28.3,76.0,117.6,119.2(q,JC−F=330.0Hz),128.1,128.5,128.9,129.8,130.6,131.1,132.6,135.9,148.0;19F−NMR(282Hz,CDCl)δ−10.6(6F,s);MS(ESI−TOF)m/z 499[M+Na];HRMS calcd for C1714[M+Na],499.0085;found,499.0038.
[実施例17]
p−クレゾール(21.1mg,0.19mmol)のアセトニトリル(0.20ml)溶液に、1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメチルスルホニル)プロパン()(330.4mg,0.58mmol)を加えて80℃で10時間攪拌した。反応溶液をクーゲルロール蒸留によって精製し(210−230℃/3mmHg)、2,6−ビス(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル)−4−メチルフェノール(1q)が収率74%で得られた(97.0mg,0.14mmol)。
【化38】

【0105】
1q);無色液体:IR(neat)ν3546,2948,1490,1394,1210,1108,727cm−1H−NMR(400MHz,CDCl)δ2.29(3H,S),3.75(4H,d,J=6.2Hz),5.44(1H,t,J=6.2Hz),5.99(1H,s,OH),7.06(2H,s);13C−NMR(100MHz,CDCl)δ20.4,26.8,77.9,119.2(q,JC−F=329.9Hz),121.3,132.7,132.8,149.6;19F−NMR(282Hz,CDCl)δ−10.0(12F,s);MS(ESI−TOF)m/z 715[M+Na];HRMS calcd for C151212[M+Na],714.9070;found,714.9053.
[実施例18]
1,3−ジメトキシベンゼン(18)(34.5mg,0.25mmol)のアセトニトリル(0.50ml)溶液に、1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメチルスルホニル)プロパン()(172.5mg,0.30mmol)を室温で加えた。2時間攪拌した後、反応溶液をクーゲルロール蒸留によって精製し(180−190℃/3mmHg)、1−(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル)−2,4−ジメトキシベンゼン(1r)を収率80%で得た(86.3mg,0.201mmol)。更に、ベンゼンから再結晶して無色結晶を得た。
【化39】

【0106】
1r);無色結晶;融点47.2−48.0℃;IR(KBr)ν3009,2948,2843,1617,1510,1392,1211,1115cm−1H−NMR(400MHz,CDCl)δ3.68(2H,d,J=6.7Hz),3.81(3H,s),3.85(3H,s)5.66(1H,t,J=6.7Hz),6.46(1H,s),6.47(1H,d,J=8.0Hz),7.18(1H,d,J=8.0Hz);13C−NMR(100MHz,CDCl)δ27.7,55.4(2C),76.1,98.6,104.7,111.6,119.2(q,JC−F=330.0Hz),133.1,158.0,161.5;19F−NMR(282Hz,CDCl)δ−10.8(6F,s);MS(ESI−TOF)m/z 431[M+H];HRMS calcd for C1213[M+H],431.0058;found,431.0043.Anal.Calcd for C1212:C,33.49;H,2.81.Found:C,33.39;H,2.83.
[実施例19]
ベンゼン−1,3,5−トリオール(126mg,1.0mmol)のアセトニトリル(1.0ml)溶液に、1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメチルスルホニル)プロパン()(1.89g,3.3mmol)を室温で加えた。7時間攪拌した後、ろ別した沈殿をクロロホルム(約5ml)で洗浄した。減圧下で乾燥して2,4,6−トリス(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル)ベンゼン−1,3,5−トリオール(1s)を収率64%で得た(838mg,0.64mmol)。更に、ジエチルエーテルから再結晶して無色結晶を得た。
【化40】

【0107】
1s);無色結晶;融点176.9−180.3℃(分解);IR(neat)ν3545,3375,2950,1706,1618,1391,1213,1110cm−1H−NMR(400MHz,CDCN)δ3.70(6H,d,J=6.7Hz),5.88(3H,t,J=6.7Hz),7.29(3H,br,OH);13C−NMR(100MHz,CDCN)δ22.2,76.0,101.8,119.6(q,JC−F=328.9),154.5;19F−NMR(282Hz,CDCl)δ−10.5(18F,s);MS(ESI−TOF)m/z 1025[M+Na];HRMS calcd for C181218NaO15[M+Na],1024.8111;found,1024.8119.
[実施例20]
<向山アルドール反応触媒への応用>
触媒量の2,4,6−トリス(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル)ベンゼン−1,3,5−トリオール(1s)(0.5mg,0.5μmol)を含んだシクロヘキサノン(98.0mg,1.00mmol)の塩化メチレン(1.0ml)溶液に、2−TBSO−furan(詳細は後述の[表1]内に記述)(218mg,1.10mmol)のクロロホルム(1.0ml)溶液を室温でシリンジポンプを使用して120分かけて加えた。2時間攪拌した後、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液(20ml)を加え、酢酸エチル(20ml)で3回抽出した。有機層を合わせ、無水硫酸マグネシウム上で乾燥した。これを減圧下で濃縮し、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10:1〜1:1)を用いて精製した。得られた生成物は、シリル化体(8a)と少量の脱シリル化体(8b)を含んでおり、これらの合計として77%の収率で目的物であるアルドール付加体が得られた(227.3mg,0.77mmol)。シリル化体と脱シリル化体の比率は約97:3であった。
【0108】
8a):H−NMR(400MHz,CDCl)δ0.12(3H,s),0.14(3H,s),0.86(9H,s),1.25−1.74(10H,m),5.00−5.02(1H,brs),6.14(1H,dd,J=5.8,2.1Hz),7.48(1H,dd,J=5.8,1.5Hz);13C−NMR(100MHz,CDCl)δ−2.2,−1.7,18.6,22.0and22.2,25.3,25.9,34.4and35.1,76.3,87.9,122.6,154.1,173.1.
8b):H−NMR(400MHz,CDCl)δ1.15−1.28(1H,m),1.40−1.76(9H,m),4.85(1H,t,J=1.7Hz),6.81(1H,dd,J=5.8,1.7Hz),7.51(1H,J=5.8,1.7Hz);13C−NMR(100MHz,CDCl)δ21.0and21.1,25.4,33.4and33.5,72.6,89.3,122.7,153.5,173.0.
[実施例21]〜[実施例26]
4−(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル−2,6−ジメチルフェノール(1d)、2−(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル−4−メチルフェノール(1c)、2,6−ビス(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル)−4−tert−ブチルフェノール(1h)を用いて、各種当量を変更した他は、実施例20と同様に行った(なお、実施例21及び実施例26については、各種当量の変更の他に、反応時間を3〜5時間とした)。
【0109】
また、比較対照実験(参考例)として、1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメチルスルホニル)プロパン()を用いて同様の実験も行った。これらの結果を実施例20の結果と併せて表1に示す。
【表1】

【0110】
[実施例27]
<エステル反応触媒への応用>
(+)−メントール( 156mg, 1.0mmol)、安息香酸無水物(339mg, 1.5mmol)、2,4,6−トリス(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル)ベンゼン−1,3,5−トリオール(1s)(30mg, 30μmol)の混合物を、70℃ で3時間攪拌した。反応後、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液(10mL)を加え、酢酸エチル(15mL)で3回抽出した。有機層を飽和食塩水(10mL)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。これを減圧下で濃縮後、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=30:1)で精製し、目的物である安息香酸メンチル()を収率は93%(241mg,0.93mmol)で得た。
【0111】
[実施例28]
<エステル反応触媒への応用>
2,4,6−トリス(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル)ベンゼン−1,3,5−トリオール(1s)の代わりに2,6−ビス(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル)−4−tert−ブチルフェノール(1h)を用いた他は、実施例27と同様に行った。その結果、目的物である安息香酸メンチル()を、収率は50%で得た。
【0112】
実施例27、及び実施例28をまとめて以下に示す。
【表2】

【0113】
[実施例29]
<2−(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル−4−メチルフェノール(1c)の製造、及び酸触媒回収の例>
実施例2の1cの合成例と同様にして、p−クレゾール(108.1mg,1.00mmol)のアセトニトリル(1.0ml)溶液に、1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメチルスルホニル)プロパン()(574.4mg,1.00mmol)を室温で加えた。3時間攪拌した後、反応溶液を減圧下で濃縮した。得られた残渣をクーゲルロール蒸留によって精製し(180−200℃/3mmHg)、2−(2,2−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)エチル−4−メチルフェノール(1c)を約90%の収率で得た(359.4mg,0.90mmol)。
【0114】
このときに、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン(TfCH)が89%の収率で回収された(248.4mg,0.89mmol)。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明で対照とするビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有する化合物は、種々の有機合成反応における酸触媒としてとして利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式[1]、[2]、又は[3]で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有する化合物。
【化1】

【化2】

【化3】

[式[1]、[2]、又は[3]中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基、芳香族炭化水素基、又はハロゲン原子を表し、該アルキル基又は該芳香族炭化水素基の水素原子の一部にハロゲン(フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素)、酸素原子、カルボニル結合を含んでも良い。R、R、及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基を表す。式[1]又は[2]中、lは0〜2の任意の整数、nはそれぞれ独立に1〜5の任意の整数、mはそれぞれ独立に0〜4の任意の整数、oはそれぞれ独立に1〜3の任意の整数を表し、かつm+n+o≦6を満たす。また、式[3]中、nはそれぞれ独立に1〜5の任意の整数、mはそれぞれ独立に0〜4の任意の整数、oはそれぞれ独立に1〜3の任意の整数を表し、かつm+n+o≦5を満たす。RとR、RとRが複数の場合、それぞれ同一でも異なっても良い。]
【請求項2】
式[1]、[2]、又は[3]で表される化合物のうち、Rがそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基であり、Rがそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖のアルキル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
下記式[1]、[2]、又は[3]で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有する化合物からなる酸触媒。
【化4】

【化5】

【化6】

[式[1]、[2]、又は[3]中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基、芳香族炭化水素基、又はハロゲン原子を表し、該アルキル基又は該芳香族炭化水素基の水素原子の一部にハロゲン(フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素)、酸素原子、カルボニル結合を含んでも良い。R、R、及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基を表す。式[1]又は[2]中、lは0〜2の任意の整数、nはそれぞれ独立に1〜5の任意の整数、mはそれぞれ独立に0〜4の任意の整数、oはそれぞれ独立に1〜3の任意の整数を表し、かつm+n+o≦6を満たす。また、式[3]中、nはそれぞれ独立に1〜5の任意の整数、mはそれぞれ独立に0〜4の任意の整数、oはそれぞれ独立に1〜3の任意の整数を表し、かつm+n+o≦5を満たす。RとR、RとRが複数の場合、それぞれ同一でも異なっても良い。]
【請求項4】
式[1]、[2]、又は[3]で表される化合物のうち、Rがそれぞれ独立に炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基であり、Rがそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖のアルキル基である、請求項3に記載の酸触媒。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の酸触媒を用いたディールズ・アルダー反応、アルドール型反応、フリーデル・クラフツ型反応、又はエステル化反応への使用。
【請求項6】
式[4]で表される1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメタンスルホニル)プロパン
【化7】

に、式[5]で表される化合物
【化8】

[式[5]中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基、又は芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基もしくは該芳香族炭化水素基の水素原子の一部にハロゲン(フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素)、酸素原子、カルボニル結合を含んでも良い。Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基を表す。lは0〜2の任意の整数、nはそれぞれ独立に1〜5の任意の整数、mはそれぞれ独立に0〜(6−n)の任意の整数を表す。RとRが複数の場合、それぞれ同一でも異なっても良い。]
を反応させることを特徴とする、式[1]で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有する化合物
【化9】

[式[1]中、R、R、l、m、nは前記に同じ。oはそれぞれ独立に1〜3の任意の整数を表し、かつm+n+o≦6を満たす。]
の製造方法。
【請求項7】
式[4]で表される1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメタンスルホニル)プロパン
【化10】

に、式[6]で表される化合物
【化11】

[式[6]中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基、又は芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基又は該芳香族炭化水素基の水素原子の一部にハロゲン(フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素)、酸素原子、カルボニル結合を含んでも良い。R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基を表す。lは0〜2の任意の整数、nはそれぞれ独立に1〜5の任意の整数、mはそれぞれ独立に0〜(6−n)の任意の整数を表す。RとR、RとRが複数の場合、それぞれ同一でも異なっても良い。]
を反応させることを特徴とする、式[2]で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有する化合物
【化12】

[式[2]中、R、R、R、l、m、nは前記に同じ。oはそれぞれ独立に1〜3の任意の整数を表し、かつm+n+o≦6を満たす。]
の製造方法。
【請求項8】
式[4]で表される1,1,3,3−テトラキス(トリフルオロメタンスルホニル)プロパン
【化13】

に、式[7]で表される化合物
【化14】

[式[7]中、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基、又は芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基、又は該芳香族炭化水素基の水素原子の一部にハロゲン(フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素)、酸素原子、カルボニル結合を含んでも良い。Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基を表す。nはそれぞれ独立に1〜5の任意の整数、mはそれぞれ独立に0〜(5−n)の任意の整数を表す。RとRが複数の場合、それぞれ同一でも異なっても良い。]
を反応させることを特徴とする、式[3]で表されるビス(トリフルオロメタンスルホニル)エチル基を有する化合物
【化15】

[式[3]中、R、R、m、nは前記に同じ。oはそれぞれ独立に1〜3の任意の整数を表し、かつm+n+o≦5を満たす。]
の製造方法。

【公開番号】特開2012−126688(P2012−126688A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281174(P2010−281174)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】