説明

ビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体とその製造方法、並びにこれを含有する殺菌剤

【課題】効果の持続性やスペクトルの広さ等の特性に優れた殺菌性化合物となり得る新規ベンゾイソチアゾール誘導体の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で示されるビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体を提供する。


(式中、Aは、C2〜C12のアルキレン、C2〜C12のハロゲン化アルキレン、C2〜C10のアルケニレン、C2〜C10のハロゲン化アルケニレン、C2〜C10のアルキニレン、(C2〜C4アルキレンオキシ)p(C2〜C4アルキレン)(pは、1〜3から選択される整数を表す)、(C1〜C4アルキレン)フェニレン(C1〜C4アルキレン)又は(C1〜C4アルキレン)ピリジンジイル(C1〜C4アルキレン)を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ベンゾイソチアゾール誘導体とその製造方法及び用途に関する。より詳しくは、ビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体、該誘導体の製造方法、及び該誘導体を有効成分として含有する殺菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用分野で用いられる殺菌剤には、従来、多様な特性が求められている。殺菌剤に求められる特性としては、例えば、効果の持続性やスペクトルの広さ、使用時の安全性、他の薬剤や製剤補助材との併用し易さ等が挙げられる。また、当然に、価格が安価であることが求められる。
【0003】
従来、ベンゾイソチアゾール構造を有する殺菌性化合物が知られている(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭48−22627号公報
【特許文献2】特開昭58−21672号公報
【特許文献3】特公昭45−14301号公報
【特許文献4】特公昭45−38080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
農業用分野で用いられる殺菌剤では、特定の薬剤を長期間使用することによる薬剤抵抗性を備えた耐性菌の出現が問題となっている。耐性菌の出現を防止するため、また出現した耐性菌を駆除するため、上述した種々の特性を備えた新規の殺菌剤の開発が今もなお求められている。
【0006】
ベンゾイソチアゾール構造を有する殺菌性化合物としては、上記特許文献1〜4に開示される合成例が知られている。しかしながら、本発明に係る新規ビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体のような構造を有する化合物は報告されておらず、またこのような化合物の有用性についても報告されていない。
【0007】
そこで、本発明は、効果の持続性やスペクトルの広さ等の特性に優れた殺菌性化合物となり得る新規ベンゾイソチアゾール誘導体を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題解決のため、本発明は、下記一般式(1)で示されるビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体を提供する。
【化1】

(式(1)中、Aは、C2〜C12のアルキレン、C2〜C12のハロゲン化アルキレン、C2〜C10のアルケニレン、C2〜C10のハロゲン化アルケニレン、C2〜C10のアルキニレン、(C2〜C4アルキレンオキシ)p(C2〜C4アルキレン)(pは、1〜3から選択される整数を表す)、(C1〜C4アルキレン)フェニレン(C1〜C4アルキレン)又は(C1〜C4アルキレン)ピリジンジイル(C1〜C4アルキレン)を表す。)
【0009】
また、本発明は、下記一般式(2)で示されるハロゲン化ベンゾイソチアゾール化合物と、下記一般式(3)で示されるジオール化合物と、を反応させる工程を含む、前記一般式(1)で示されるビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体の製造方法を提供する。
【化2】

(式(2)中、Xは、CI、Br、I、OSOCH、OSO又はOSOCHを表す。)
【化3】

(式(3)中、Aは、C2〜C12のアルキレン、C2〜C12のハロゲン化アルキレン、C2〜C10のアルケニレン、C2〜C10のハロゲン化アルケニレン、C2〜C10のアルキニレン、(C2〜C4アルキレンオキシ)p(C2〜C4アルキレン)(pは、1〜3から選択される整数を表す)、(C1〜C4アルキレン)フェニレン(C1〜C4アルキレン)又は(C1〜C4アルキレン)ピリジンジイル(C1〜C4アルキレン)を表す。)
【0010】
さらに、本発明は、前記一般式(1)で示されるビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体を有効成分として含有する殺菌剤を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、効果の持続性やスペクトルの広さ等の特性に優れた殺菌性化合物となり得る新規ベンゾイソチアゾール誘導体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0013】
1.ビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体
本発明に係る新規ベンゾイソチアゾール誘導体は、下記一般式(1)で示される。以下、このビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体について詳細に説明する。
【0014】
【化4】

【0015】
一般式(1)において、Aは、C2〜C12のアルキレン、C2〜C12のハロゲン化アルキレン、C2〜C10のアルケニレン、C2〜C10のハロゲン化アルケニレン又はC2〜C10のアルキニレンを表す。C2〜C10のアルキニレンには、炭素原子間の三重結合を1〜3個有するC4〜C10のアルキニレンが含まれる。
この場合、Aから出ている2本の結合手のA上の結合位置は、炭素数が3個以上の場合、互いに隣接している炭素であっても、隣接位置よりも離れた位置の炭素であってもよい。
【0016】
また、Aは、(C2〜C4アルキレンオキシ)p(C2〜C4アルキレン)を表す。pは、1〜3から選択される整数を表す。pは、1もしくは2が好ましい。(C2〜C4アルキレンオキシ)p(C2〜C4アルキレン)には、(CHCHO)、(CHCHCHO)及び(CHCHCHCHO)からなる群より選択される構造と酸素を介して結合しているC2〜C4アルキレンが含まれる。
この場合、Aから出ている2本の結合手のうちの1本と、酸素の2本の結合手のうちの1本との同じアルキレン上の結合位置は、炭素数が3個以上の場合、互いに隣接している炭素であっても、隣接位置よりも離れた位置の炭素であってもよい。また、酸素の2本の結合手のうちの1本と他の酸素の2本の結合手のうちの1本との同じアルキレン上の結合位置も、炭素数が3個以上の場合、互いに隣接している炭素であっても、隣接位置よりも離れた位置の炭素であってもよい。
【0017】
さらに、Aは、(C1〜C4アルキレン)フェニレン(C1〜C4アルキレン)又は(C1〜C4アルキレン)ピリジンジイル(C1〜C4アルキレン)を表す。このAには、(CH−Ar−(CH(m、nは、それぞれ1〜3から選択される整数を表す。Arは、フェニレンあるいはピリジンジイルを表す。)が含まれる。
この場合、Aから出ている2本の結合手のうちの1本と、フェニレン又はピリジンジイルの2本の結合手のうちの1本との同じアルキレン上の結合位置は、炭素数が2個以上の場合、同じ炭素であっても、互いに異なる炭素であってもよい。また、フェニレン及びピリジンジイルの2本の結合手の位置は、オルソ位、メタ位あるいはパラ位であってもよい。
【0018】
本発明に係るビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体は、広範な植物病害菌に対して優れた殺菌性作用等を示す。このため、この化合物は、農園芸用殺菌剤の有効成分として有用である。
【0019】
2.ビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体の製造方法
本発明に係るビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体の製造方法について以下に説明する。
【0020】
下記一般式(1)で示されるビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体は、下記一般式(2)で示されるハロゲン化ベンゾイソチアゾール化合物と、下記一般式(3)で示されるジオール化合物と、を塩基の存在下で反応させることによって製造できる(反応式(1)参照)。
【0021】
反応式(1)
【化5】

【0022】
式中、XはCI、Br、I、OSOCH、OSO又はOSOCHを表す。なお、Aの定義内容は、上述の通りである。
【0023】
この製造工程において、一般式(2)で表されるハロゲン化ベンゾイソチアゾール化合物2倍モルと、一般式(3)で表されるジオール化合物1.0〜1.5倍モルとが反応することで、一般式(1)で表されるビス(ベンゾチアゾール)化合物が1倍モル量生成される。
【0024】
一般式(3)で表されるジオール化合物の添加量は、一般式(2)で表されるハロゲン化ベンゾイソチアゾール化合物2倍モルに対して好適には1.0〜1.3倍モルである。
【0025】
塩基は、特に限定されないが、好適には水素化ナトリウム(NaH)等のアルカリ金属水素化物、炭酸カリウム(KCO)や炭酸ナトリウム(NaCO)等の炭酸塩、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリ金属水酸化物、トリエチルアミン[(CN]等の第3級アミン類等を用いることができる。
【0026】
本製造工程では溶媒を用いることが望ましく、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類;エタノール、プロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;水等の溶媒を1種類又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0027】
また、反応混合物に、例えば、テトラブチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩、クラウンエーテルとその類似物等の相間移動触媒を添加してもよい。この場合において、用いる溶媒は特に限定されないが、ベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、ヘキサン、トルエン等を用いることができる。
【0028】
本製造工程の反応温度は、0〜200℃であることが好ましい。反応温度が0℃未満の場合には反応速度が遅くなり、200℃より高温の場合には反応速度が速くなりすぎ、副反応が進行しやすくなるため好ましくない。反応時間は、温度条件や圧力条件等を考慮して適宜適当な時間とすることができるが、30分〜24時間の範囲で行うことが好ましい。
【0029】
3.殺菌剤
本発明に係るビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体は、広汎な植物病害に対して防除効果を呈し、農園芸用殺菌剤の有効成分として好適に用いられる。適用病害の例として以下が挙げられる。
【0030】
ダイズさび病(Phakopsora pachyrhizi、Phakopsora meibomiae)、イネいもち病 (Pyricularia grisea)、イネごま葉枯病 (Cochliobolus miyabeanus)、イネ白葉枯病 (Xanthomonas oryzae)、イネ紋枯病 (Rhizoctonia solani)、イネ小黒菌核病 (Helminthosporium sigmoideun)、イネばか苗病 (Gibberella fujikuroi)、イネ苗立枯病 (Pythium aphanidermatum)、リンゴうどんこ病 (Podosphaera leucotricha)、リンゴ黒星病 (Venturia inaequalis)、リンゴモリニア病 (Monilinia mali)、リンゴ斑点落葉病 (Alternaria alternata)、リンゴ腐乱病 (Valsa mali)、ナシ黒斑病 (Alternaria kikuchiana)、ナシうどんこ病 (Phyllactinia pyri)、ナシ赤星病 (Gymnosporangium asiaticum)、ナシ黒星病 (Venturia nashicola)、ブドウうどんこ病 (Uncinula necator)、ブドウべと病 (Plasmopara viticola)、ブドウ晩腐病 (Glomerella cingulata)、オオムギうどんこ病 (Erysiphe graminis f. sp hordei)、オオムギ黒さび病 (Puccinia graminis)、オオムギ黄さび病 (Puccinia striiformis)、オオムギ斑葉病 (Pyrenophora graminea)、オオムギ雲形病 (Rhynchosporium secalis)、コムギうどんこ病 (Erysiphe graminis f. sp tritici)、コムギ赤さび病 (Puccinia recondita)、コムギ黄さび病 (Puccinia striiformis)、コムギ眼紋病 (Pseudocercosporella herpotrichoides)、コムギ赤かび病 (Fusarium graminearum、Microdochium nivale)、コムギふ枯病(Phaeosphaeria nodorum)、コムギ葉枯病 (Septoria tritici)、ウリ類うどんこ病 (Sphaerotheca fuliginea)、ウリ類の炭疸病 (Colletotrichum lagenarium)、キュウリべと病 (Pseudoperonospora cubensis)、キュウリ灰色疫病 (Phytophthora capsici)、トマトうどんこ病 (Erysiphe cichoracearum)、トマト輪紋病 (Alternaria solani)、ナスうどんこ病 (Erysiphe cichoracearum)、イチゴうどんこ病 (Sphaerotheca humuli)、タバコうどんこ病 (Erysiphe cichoracearum)、テンサイ褐斑病 (Cercospora beticola)、トウモロコシ黒穂病 (Ustillaga maydis)、核果類果樹の灰星病 (Monilinia fructicola)、種々の作物をおかす灰色かび病 (Botrytis cinerea)、菌核病 (Sclerotinia sclerotiorum) 等。
【0031】
また、適用植物の例としては、野生植物、植物栽培品種、異種交配もしくは原形質融合などの従来の生物育種によって得られる植物及び植物栽培品種、遺伝子操作によって得られる遺伝子組み換え植物及び植物栽培品種が挙げられる。遺伝子組み換え植物及び植物栽培品種としては、例えば、除草剤耐性作物、殺虫性タンパク産生遺伝子を組み込んだ害虫耐性作物、病害に対する抵抗性誘導物質産生遺伝子を組み込んだ病害耐性作物、食味向上作物、収量向上作物、保存性向上作物、収量向上作物等が挙げられる。遺伝子組み換え植物栽培品種としては、具体的に、ROUNDUP READY、LIBERTY LINK、CLEARFIELD、YIELDGARD、HERCULEX、BOLLGARD等の登録商標を含むものが挙げられる。
【0032】
本発明に係る殺菌剤の使用方法については、特に限定されず、例えば、そのまま使用してもよいし、水等の希釈剤により所望の濃度に希釈して使用してもよい。また、複数種類の本発明に係るビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体を混用してもよいし、殺菌剤の効果を阻害しない範囲で他の薬剤等と混用してもよい。混用できる薬剤としては、特に限定されず、例えば、他の殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、除草剤、植物生長調節剤、肥料等を用いることができる。
【0033】
例えば混用可能な殺虫剤としては有機リン系殺虫剤(フェニトロチオン、マラチオン、アセフェート、ダイアジノンなど)、カーバメート系殺虫剤(ベンフラカルブ、メソミル、カルボスルファンなど)、ピレスロイド系殺虫剤(アレスリン、ペルメトリン、フェンバレレート、エトフェンプロックス、シラフルオフェンなど)、ネライストキシン系殺虫剤(カルタップ、チオシクラムなど)、ネオニコチノイド系殺虫剤(イミダクロプリド、アセタミプリド、チアメトキサム、ジノテフランなど)、IGR剤(ジフルベンズロン、シロマジンなど)、フィプロニル、エマメクチン安息香酸塩、ピリダリル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、BT剤などが挙げられる。
混用可能な殺菌剤としては、銅殺菌剤(無機銅、有機銅、ノニルフェニルエーテルスルホン酸銅など)、無機硫黄剤、有機硫黄殺菌剤(マンネブ、マンゼブ、アンバム、プロピネブ、チウラムなど)、有機リン系殺菌剤(ホセチル、トルクロホスメチルなど)、メラニン生合成阻害剤(フサライド、トリシクラゾール、ピロキロン、カルプロパミド、ジクロシメット、フェニキサニル)、ベンズイミダゾール系殺菌剤(チオファネートメチル、ベノミル、ジエトフェンカルブなど)、ジカルボキシイミド剤(イプロジオン、プロシミドンなど)、酸アミド系殺菌剤(メプロニル、フルトラニル、ボスカリド、フラメトピル、チフルザミド、メタラキシルなど)、ステロール生合成阻害剤(トリフルミゾール、テブコナゾール、イプコナゾール、メトコナゾール、エポキシコナゾールなど)、ストロビルリン系殺菌剤(アゾキシストロビン、クレソキシムメチル、トリフロキシストロビンなど)、アニリノピリミジン系殺菌剤(メパニピリム、シプロジニルなど)、抗細菌剤(オキソリニック酸、テクロフタラムなど)、抗生物質殺菌剤(カスガマイシン、ポリオキシン、ストレプトマイシンなど)、プロベナゾール、フェリムゾン、TPN、フルジオキソニル、イミノクタジン酢酸塩、シアゾファミド、シフルフェナミドなどが挙げられる。
混用可能な殺ダニ剤としてはビフェナゼート、ミルベメクチン、エトキサゾールなどが挙げられる。
混用可能な除草剤としては、フェノキシ酸系除草剤(2,4-D、クロメプロップ、フルアジホップなど)、カーバメート系除草剤(ベンチオカーブ、モリネート、ピリブチカルブなど)、酸アミド系除草剤(プレチラクロール、ダイフルフェニカン、メフェナセット、カフェンストロール、アシュラムなど)、尿素系除草剤(ダイムロン、イソウロンなど)、スルホニルウレア系除草剤(イマゾスルフロン、チフェンスルフロンメチル、ニコスルフロン、ハロスルフロンメチルなど)、トリアジン系除草剤(アトラジン、シメトリン、シマジン、トリアジフラムなど)、ダイアジン系除草剤(ベンタゾン、ブロマシルなど)、ダイアゾール系除草剤(ピラゾレート、オキサジアゾンなど)、ビピリジリウム系除草剤(パラコートなど)、ジニトロアニリン系除草剤(トリフルラリン、ペンディメタリン、オリザリンなど)、芳香族カルボン酸系除草剤(フェントラザミド、イマザピルなど)、ピリミジルオキシ安息香酸系除草剤(ビスピリバックナトリウム塩など)、脂肪酸系除草剤(テトラピオンなど)、アミノ酸系除草剤(グリホサート、グルホシネートなど)、ニトリル系除草剤(クロルチアミドなど)、シクロヘキサンジオン系除草剤(セトキシジム、クレトジムなど)、フェニルフタルイミド系除草剤(クロルフタリムなど)、ブタミホス、ペントキサゾン、ベンゾビシクロンなどが挙げられる。
混用可能な植物生長調節剤としては、ウニコナゾールP、ダミノジット、パラフィン、ワックス、ベンジルアミノプリンなどが挙げられる。
【0034】
本発明に係る殺菌剤は、通常担体と混合し、製剤化して使用する。また、必要に応じて、さらに界面活性剤、湿展剤、固着剤、増粘剤、安定剤等の各種製剤用補助剤を添加して、水和剤、粉剤、フロアブル剤等の剤型に製剤して用いることができる。
【0035】
担体の含有量は、通常、重量比で0.1〜80%の範囲である。担体としては、カオリン、アッタパルジャイト、ベントナイト、酸性白土、バイロフィライト、タルク、珪藻土、方解石、クルミ粉、尿素、硫酸アンモニウム、合成含水酸化ケイ素等の、微粉末あるいは粒状物等の固体担体が挙げられる。また、担体として、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素;イソプロパノール、エチレングリコール、セルソルブ等のアルコール;アセトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン;大豆油、綿実油等の植物油;ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、水等の液体担体も挙げられる。
【0036】
乳化、分散、湿展等のために用いられる界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、アルキル(アリール)スルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリカルボン酸型高分子等の陰イオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤などが挙げられる。この他、製剤用補助剤としては、リグニンスルホン酸塩、アルギン酸塩、ポリビニルアルコール、アラビアガム、CMC(カルボキシメチルセルロース)、PAP(酸性リン酸イソプロピル)、キサンタンガム等が挙げられる。
【0037】
前記製剤には、そのまま使用するものと、水等の希釈剤で所定濃度に希釈して使用するものがある。希釈して使用するときの本発明に係るビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体の濃度は、0.001〜1.0%の範囲が好ましい。また、本発明に係るビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体の使用量は、畑、田、果樹園、温室等の農園芸用地1haあたり、好ましくは、20〜5000g、より好ましくは50〜1000gである。これらの使用濃度及び使用量は剤形、使用時期、使用方法、使用場所、対象作物等によって、上記の範囲に限定されることなく、適宜増減できる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明に係るビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体及び殺菌剤の製造例及び製剤例、試験例を示し、本発明について具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下に示す製造例等に限定されない。以下の製造例等で使用される化合物は、適宜、市販品を用いることができる。各実施例で得られた目的化合物の物性値の測定は、以下の「表1」に示す条件で行った。
【0039】
【表1】

【0040】
上記一般式(1)で示されるビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体の実施例で得られた目的化合物について、その化学構造と融点を「表2」に、IRスペクトルとNMRスペクトル、融点の測定値を「表3」に示した。これらの中から一部実施例について、以下、製造例、製剤例、試験例を詳細に説明する。
【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
<製造例1>
3,3’−(オキシエチレンオキシ)ビス(1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド)(「表1」の化合物番号1)
3−クロロベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド(403mg, 2.0mmol)を少量ずつ、エチレングリコール(1ml)の中に室温下で攪拌しながら加えた。3時間攪拌した後、反応物を氷水(30ml)に注いだ。析出した固体を濾取し、水で固体を洗浄し乾燥した。得られた固体を溶媒として酢酸エチルを用いて再結晶化し、「化合物1」を得た。
収率:125mg(32%)
融点:168−170℃
【0044】
<製造例2>
3,3’−(オキシエチレンオキシエチレンオキシ)ビス(1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド)(「表1」の化合物番号7)
3−クロロベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド(403mg, 2.0mmol)を少量ずつ、ジエチレングリコール(106mg、1.65mol)とピリジン(5ml)の混合液の中に室温下で攪拌しながら加えた。一夜攪拌した後、反応物を氷水(20ml)に注いだ。析出した固体を濾取し、水で固体を洗浄し乾燥した。得られた固体を溶媒として酢酸エチルを用いて再結晶化し、「化合物7」を得た。
収率:174mg(40%)
融点:195−196℃
【0045】
<製造例3>
3,3’−[1,4−フェニレンビス(メチレンオキシ)]ビス(1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド)(「表1」の化合物番号9)
3−クロロベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド(403mg, 2.0mmol)を少量ずつ、p−キシレングリコール(138mg、1mmol)とトリエチルアミン(242mg, 2.4mmol)とテトラヒドロフラン(5ml)の混合液の中に室温下で攪拌しながら加えた。一夜攪拌した後、反応物を氷水(30ml)に注いだ。析出した固体を濾取し、水で固体を洗浄し乾燥した。得られた固体を溶媒として酢酸エチルを用いて再結晶化し、「化合物9」を得た。
収率:61mg(13%)
融点:245−250℃
【0046】
<製剤例1>
1.粉剤
「表1」の化合物番号1のビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体(製造例1で得た化合物1)を3重量部、クレー40重量部、タルク57重量部をそれぞれ粉砕混合することで粉剤を調製した。なお、ここに例示する製剤例は、有効成分、担体(希釈剤)及び助剤の混合比を広い範囲で変更し得るものである。
【0047】
<製剤例2>
2.水和剤
「表1」の化合物番号4のビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体を50重量部、リグニンスルホン酸塩5重量部、アルキルスルホン酸塩3重量部、珪藻土42重量部をそれぞれ粉砕混合することで水和剤を調製した。
【0048】
<製剤例3>
3.粒剤
「表1」の化合物番号5のビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体を5重量部、ベントナイト43重量部、クレー45重量部、リグニンスルホン酸塩7重量部を均一に混合して、水を加えて練り合わせた後、押し出し式造粒機で粒状に加工乾燥して粒剤とした。
【0049】
<製剤例4>
4.乳剤
「表1」の化合物番号9のビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体(製造例3で得た化合物9)を20重量部、ポリオキシエチレンアルキルアリルエ−テル10重量部、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレ−ト3重量部、キシレン67重量部を均一に混合溶解させて乳剤とした。
【0050】
<試験例1>
1.イネいもち病防除効果試験
水田土を詰めた1/5000aワグネルポットに3葉期のイネ(品種:コシヒカリ)を移植し、20〜35日後、製剤例2に準じて調製した「表1」の化合物を所定濃度(120g/10a)となるように水面施用した。薬剤処理10〜20日後に、イネ罹病上で形成させたイネいもち病菌の胞子懸濁液を噴霧接種し、ガラス温室内のビニールトンネル内で24〜32℃、高湿度下に保った。接種から5〜15日後にポットあたりの病斑数を計測し、下記計算式により防除価(%)を算出した。
防除価= ( 1− 処理区病斑数/無処理区病斑数)×100
【0051】
その結果、化合物番号1、2、3、4、5、6、7、8、9の化合物は、有効成分濃度120g/10aで、防除価50%以上の優れた効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係るビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体及びこれを有効成分として含有する殺菌剤は、農園芸上有害な生物に対し優れた防除効果を示す。従って、本発明は、農園芸生産現場で広く利用することができ、これらの産業に大きく貢献できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体。

(式(1)中、Aは、C2〜C12のアルキレン、C2〜C12のハロゲン化アルキレン、C2〜C10のアルケニレン、C2〜C10のハロゲン化アルケニレン、C2〜C10のアルキニレン、(C2〜C4アルキレンオキシ)p(C2〜C4アルキレン)(pは、1〜3から選択される整数を表す)、(C1〜C4アルキレン)フェニレン(C1〜C4アルキレン)又は(C1〜C4アルキレン)ピリジンジイル(C1〜C4アルキレン)を表す。)
【請求項2】
下記一般式(2)で示されるハロゲン化ベンゾイソチアゾール化合物と、下記一般式(3)で示されるジオール化合物と、を反応させる工程を含む、下記一般式(1)で示されるビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体の製造方法。

(式(2)中、Xは、CI、Br、I、OSOCH、OSO又はOSOCHを表す。)


(式(1)及び式(3)中、Aは、C2〜C12のアルキレン、C2〜C12のハロゲン化アルキレン、C2〜C10のアルケニレン、C2〜C10のハロゲン化アルケニレン、C2〜C10のアルキニレン、(C2〜C4アルキレンオキシ)p(C2〜C4アルキレン)(pは、1〜3から選択される整数を表す)、(C1〜C4アルキレン)フェニレン(C1〜C4アルキレン)又は(C1〜C4アルキレン)ピリジンジイル(C1〜C4アルキレン)を表す。)
【請求項3】
下記一般式(1)で示されるビス(ベンゾイソチアゾール)誘導体を有効成分として含有する殺菌剤。

(式(1)中、Aは、C2〜C12のアルキレン、C2〜C12のハロゲン化アルキレン、C2〜C10のアルケニレン、C2〜C10のハロゲン化アルケニレン、C2〜C10のアルキニレン、(C2〜C4アルキレンオキシ)p(C2〜C4アルキレン)(pは、1〜3から選択される整数を表す)、(C1〜C4アルキレン)フェニレン(C1〜C4アルキレン)又は(C1〜C4アルキレン)ピリジンジイル(C1〜C4アルキレン)を表す。)

【公開番号】特開2012−1443(P2012−1443A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134928(P2010−134928)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】