説明

ビス[チオヒドラジドアミド]化合物の遷移金属錯体

本発明は、遷移金属カチオンと錯体を形成している、構造式(I)で表されるビス[チオヒドラジドアミド]もしくはその脱プロトン化形態、またはそのプロドラッグ、異性体、エステル、塩、水和物、溶媒和物、多形もしくは脱プロトン化形態を含む、化合物に関する。一つの態様において、化合物は、構造式(II)で表されるか、またはそのプロドラッグ、異性体、エステル、塩、水和物、溶媒和物、もしくは多形である。本発明はまた、本発明の化合物を含む薬学的組成物、およびその使用方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は2008年10月22日出願の米国仮出願第61/196,932号の恩典を主張し、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
米国特許第6,800,660号(特許文献1); 第6,762,204号(特許文献2); 第7,037,940号(特許文献3); 第7,001,923号(特許文献4); および第6,924,312号(特許文献5)において、ある種のビス[チオ-ヒドラジドアミド]化合物がパクリタキセルおよびパクリタキセル類似体の抗がん活性を著しく増強することが報告された。特に、N-マロニル-ビス(N'-メチル-N'-チオベンゾイルヒドラジド)とパクリタキセルとの組み合わせは、ステージIV転移性黒色腫に罹患する患者の進行までの時間を、パクリタキセル単独で処置する患者に比べて増加させることがわかった。さらに活性の高いビス[チオヒドラジドアミド]抗がん化合物を有することが有利であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,800,660号
【特許文献2】米国特許第6,762,204号
【特許文献3】米国特許第7,037,940号
【特許文献4】米国特許第7,001,923号
【特許文献5】米国特許第6,924,312号
【発明の概要】
【0004】
本発明は、遷移金属カチオンと錯体を形成しているか、それに配位しているかまたはそれとキレートを形成している、構造式(I)で表されるビス[チオヒドラジドアミド]またはそのプロドラッグ、異性体、エステル、塩、水和物、溶媒和物、多形もしくは脱プロトン化形態を含む、化合物に関する:

式中、
R1〜R4は独立して、-H、置換されていてもよい脂肪族基、置換されていてもよいアリール基であり、あるいは、R1およびR3は、それらが結合している炭素原子および窒素原子と一緒になって、かつ/または、R2およびR4は、それらが結合している炭素原子および窒素原子と一緒になって、アリール基に縮合していてもよい非芳香族複素環を形成し;
Yは共有結合、または置換もしくは非置換の直鎖ヒドロカルビル基であり、あるいは、Yは、それが結合している両>C=Z基と一緒になって、置換もしくは非置換のアリール基となり;
R7およびR8は独立して、-H、置換されていてもよい脂肪族基または置換されていてもよいアリール基であり;
ZはOまたはSである。
【0005】
この種類の化合物の一例は、構造式(II)またはそのプロドラッグ、異性体、エステル、塩、水和物、溶媒和物もしくは多形で表される:

式中、
R5およびR6は各々独立して、-H、脂肪族または置換脂肪族基であり、あるいは、R5は-Hであり、R6は置換されていてもよいアリール基であり、あるいは、R5およびR6は一緒になって、置換されていてもよいC2〜C6アルキレン基となり;
Xは+2の電荷を有する遷移金属カチオンであり; 変動要素の残りは構造式(I)について先に記載の通りである。
【0006】
別の態様は、本発明の化合物と薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、薬学的組成物である。薬学的組成物は、治療に、例えば抗増殖剤(例えば抗がん剤)として使用することができる。さらに、薬学的組成物は、Hsp70誘導に応答性の障害を処置する治療に使用することができ、あるいは、薬学的組成物は、細菌感染症、真菌感染症、ウイルス感染症または寄生虫感染症などの、ナチュラルキラー細胞誘導に応答性の障害を処置する治療に使用することもできる。薬学的組成物は、それを必要とする対象において血管新生を処置し、減少させまたは阻害する治療に使用することもできる。
【0007】
本発明はまた、がんを有する対象を処置する方法、Hsp70応答性障害を有する対象を処置する方法、ナチュラルキラー細胞誘導に応答性の障害を有する対象を処置する方法、またはそれを必要とする対象において血管新生を処置し、減少させもしくは阻害する方法を提供する。本方法は、有効量の本発明の化合物または本発明の薬学的組成物を対象に投与する段階を含む。一態様では、本発明の化合物をパクリタキセル(タキソール(登録商標))またはパクリタキセル類似体と共に投与する。
【0008】
がんを有する対象を処置するための医薬、Hsp70応答性障害を有する対象を処置するための医薬、ナチュラルキラー細胞誘導に応答性の障害を有する対象を処置するための医薬、またはそれを必要とする対象において血管新生を処置し、減少させもしくは阻害するための医薬の製造のための、本発明の化合物の使用も、本発明において提供される。
【0009】
本発明はまた、がんを有する対象を処置するための、Hsp70応答性障害を有する対象を処置するための、ナチュラルキラー細胞誘導に応答性の障害を有する対象を処置するための、またはそれを必要とする対象において血管新生を処置し、減少させもしくは阻害するための、本発明の化合物の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】パクリタキセル(タキソール(登録商標))の構造である。
【図2】ドセタキソール(タキソテール(登録商標))の構造である。
【図3】パクリタキセル類似体の構造である。
【図4】パクリタキセル類似体の構造である。
【図5】パクリタキセル類似体の構造である。
【図6】パクリタキセル類似体の構造である。
【図7】パクリタキセル類似体の構造である。
【図8】パクリタキセル類似体の構造である。
【図9】パクリタキセル類似体の構造である。
【図10】パクリタキセル類似体の構造である。
【図11】パクリタキセル類似体の構造である。
【図12】パクリタキセル類似体の構造である。
【図13】パクリタキセル類似体の構造である。
【図14】パクリタキセル類似体の構造である。
【図15】パクリタキセル類似体の構造である。
【図16】パクリタキセル類似体の構造である。
【図17】パクリタキセル類似体の構造である。
【図18】パクリタキセル類似体の構造である。
【図19】パクリタキセル類似体の構造である。
【図20】パクリタキセル類似体の構造である。
【図21】パクリタキセル類似体の構造である。
【図22】パクリタキセル類似体の構造である。
【図23】パクリタキセル類似体の構造である。
【図24】ポリマー主鎖から懸垂するパクリタキセル類似体基を含むポリマーの構造である。ポリマーは、図示する3つの単量体単位の三元共重合体である。
【図25】コンフルエントM14細胞中での本発明の化合物の細胞毒性を示す。
【図26】50%熱楕円体を示す化合物1のORTEP図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本発明は、構造式(I)で表されるビス[チオヒドラジドアミド]またはそのプロドラッグ、異性体、エステル、塩、水和物、溶媒和物、多形もしくは脱プロトン化形態の遷移金属錯体(配位体またはキレート)に関する。この種類の錯体の一例は、先に記載の構造式(II)で表される。
【0012】
本明細書で使用する「錯体を形成する」とは、ビス[チオヒドラジドアミド]またはそのプロドラッグ、異性体、エステル、塩、水和物、溶媒和物、多形もしくは脱プロトン化形態が、1つまたは複数の配位共有結合または配位結合を通じて遷移金属イオンに結合することを意味する。
【0013】
本明細書で使用する「キレートを形成する」とは、ビス[チオヒドラジドアミド]またはそのプロドラッグ、異性体、エステル、塩、水和物、溶媒和物、多形もしくは脱プロトン化形態が、配位共有結合または配位結合を通じて、2つ以上の結合点において遷移金属イオンに結合することを意味する。
【0014】
本明細書で使用する「配位体」、「配位する」、「配位共有結合」および「配位結合」は、当業者に一般的に知られる意味を有する。
【0015】
本明細書で使用するビス[チオヒドラジドアミド]の「脱プロトン化形態」とは、ビス[チオヒドラジドアミド]またはそのプロドラッグ、異性体、エステル、塩、水和物、溶媒和物もしくは多形の1個または複数のプロトンが除去された、分子を意味する。例えば、R7およびR8がいずれも-Hである構造式(I)のビス[チオヒドラジドアミド]の脱プロトン化形態は、下記構造式で表される。

【0016】
「遷移金属カチオン」とは、周期表の3〜12族の金属の正に帯電したイオンを意味する。例としてはNi2+、Cu+、Cu2+、Co2+、Co3+、Fe2+、Fe3+、Zn2+、Pt2+、Pd2+、V4+、V5+、Cr2+、Cr3+、Cr4+、Mn2+、Mn3+、Mn4+およびMn5+が挙げられる。具体的な態様では、遷移金属カチオンは+2の電荷を有する。例としてはNi2+、Cu2+、Co2+、Fe2+、Zn2+、Pt2+およびPd2+が挙げられる。具体的な態様では、遷移金属カチオンはCu+、Cu2+またはNi2+である。より具体的な態様では、遷移金属カチオンはCu2+である。ビス[チオヒドラジドアミド]またはそのプロドラッグ、異性体、エステル、塩、水和物、溶媒和物、多形もしくは脱プロトン化形態対この段落に記載の遷移金属カチオンのモル比は、例えば0.5以上および2.0以下(すなわち0.5≦比≦2.0)または1である。
【0017】
別の態様では、本発明の化合物は、構造式(II)またはそのプロドラッグ、異性体、エステル、塩、水和物、溶媒和物もしくは多形で表される:

式中、変動要素は先に記載の通りである。Xの例としてはNi2+、Cu2+、Co2+、Fe2+、Zn2+、Pt2+およびPd2+が挙げられる。
【0018】
別の態様では、本化合物は、下記構造式またはそのプロドラッグ、異性体、エステル、塩、水和物、溶媒和物もしくは多形で表される。

変動要素は構造式(II)について先に記載の通りである。
【0019】
別の態様では、本化合物は、下記構造式またはそのプロドラッグ、異性体、エステル、塩、水和物、溶媒和物もしくは多形で表される。

変動要素は構造式(II)について先に記載の通りである。
【0020】
一態様では、構造式(I)のビス[チオヒドラジドアミド]は、構造式(III)またはそのプロドラッグ、異性体、エステル、塩、水和物、溶媒和物、多形もしくは脱プロトン化形態で表される。

構造式(III)の変動要素は、構造式(II)について定義の通りである。好ましくは、構造式(IIa)および(IIb)を含む構造式(I)〜(III)では、ZはOであり、R1およびR2は同一であり、かつR3およびR4は同一である。
【0021】
別の態様では、本化合物は、構造式(IV)またはそのプロドラッグ、異性体、エステル、塩、水和物、溶媒和物もしくは多形で表される。

変動要素は構造式(II)について先に記載の通りであるが、但し、R1およびR2がいずれもフェニルであり、両Z原子がOであり、R3およびR4がいずれもメチルである場合、R5およびR6がいずれも-Hであるということはない。構造式(IV)の別の態様では、XはCu2+またはNi2+ではない。
【0022】
別の態様では、構造式(I)のビス[チオヒドラジドアミド]は、構造式(V)またはそのプロドラッグ、異性体、エステル、塩、水和物、溶媒和物、多形もしくは脱プロトン化形態で表される。

構造式(V)の変動要素は構造式(II)について定義の通りであるが、但し、R1およびR2がいずれもフェニルであり、両Z原子がOであり、かつR3およびR4がいずれもメチルである場合、R5およびR6がいずれも-Hであるということはない。
【0023】
あるいは、構造式(II)、(IIa)、(IIb)、(III)、(IV)および(IV)では、R1およびR2は各々、置換されていてもよいアリール基であり; R3およびR4は各々、置換されていてもよい脂肪族基であり; R5およびR6は各々独立して、-H、脂肪族または置換脂肪族基であり、あるいは、R5は-Hであり、R6は置換されていてもよいアリール基であり、あるいは、R5およびR6は一緒になって、置換されていてもよいC2〜C6アルキレン基となり; かつ各ZはOである。アリール基および脂肪族基に好適な置換基は以下に示す。
【0024】
構造式(II)、(IIa)、(IIb)、(III)、(IV)および(IV)の別の代替案では、R1およびR2は各々、置換されていてもよいフェニル基であり; R3およびR4は各々、置換されていてもよいアルキル基であり; R5は-Hであり; R6は-H、アルキルまたは置換アルキル基であり; かつ各ZはOである。アリール基および脂肪族基に好適な置換基は以下に示す。
【0025】
構造式(II)、(IIa)、(IIb)、(III)、(IV)および(IV)の別の代替案では、R1およびR2で表されるフェニル基は、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルキル、C1〜C4ハロアルコキシ、フェニル、ベンジル、ピリジル、-OH、-NH2、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2および-CNからなる群より独立して選択される1個または複数(例えば2個、3個、4個、5個など)の基で置換されていてもよく、フェニルおよびベンジル置換基は、ハロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルキルおよびC1〜C4ハロアルコキシからなる群より独立して選択される1個または複数(例えば2個、3個、4個、5個など)の置換基で置換されていてもよく; R3およびR4で表されるアルキル基は、-OH、ハロゲン、フェニル、ベンジル、ピリジルおよびC1〜C8アルコキシからなる群より独立して選択される1個または複数(例えば2個、3個、4個、5個など)の置換基で置換されていてもよく、フェニルおよびベンジル置換基は、ハロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルキルおよびC1〜C4ハロアルコキシからなる群より独立して選択される1個または複数(例えば2個、3個、4個、5個など)の置換基で置換されていてもよく; R5はHであり; R6は-Hまたはメチルであり; かつ各ZはOである。
【0026】
構造式(II)、(IIa)、(IIb)、(III)、(IV)および(IV)の別の代替案では、R1およびR2は各々、置換されていてもよい脂肪族基であり; R3およびR4は各々、置換されていてもよい脂肪族基であり; R5およびR6は各々独立して、-H、脂肪族または置換脂肪族基であり、あるいは、R5は-Hであり、R6は置換されていてもよいアリール基であり、あるいは、R5およびR6は一緒になって、置換されていてもよいC2〜C6アルキレン基となり; かつ各ZはOである。脂肪族基に好適な置換基は以下に示す。
【0027】
構造式(II)、(IIa)、(IIb)、(III)、(IV)および(IV)の別の代替案では、R1およびR2はいずれも、少なくとも1個のアルキル基で置換されていてもよいC3〜C8シクロアルキル基であり; R3およびR4は各々、置換されていてもよいアルキル基であり; R5は-Hであり; R6は-H、アルキルまたは置換アルキル基であり; かつ各ZはOである。
【0028】
構造式(II)、(IIa)、(IIb)、(III)、(IV)および(IV)の別の代替案では、R1およびR2はいずれも、少なくとも1個のアルキル基で置換されていてもよいC3〜C8シクロアルキル基であり; R3およびR4で表されるアルキル基は、-OH、ハロゲン、フェニル、ベンジル、ピリジルおよびC1〜C8アルコキシからなる群より独立して選択される1個または複数(例えば2個、3個、4個、5個など)の置換基で置換されていてもよく、フェニルおよびベンジル置換基は、ハロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルキルおよびC1〜C4ハロアルコキシからなる群より独立して選択される1個または複数(例えば2個、3個、4個、5個など)の置換基で置換されていてもよく; R5はHであり; R6は-Hまたはメチルであり; かつ各ZはOである。R1およびR2は、シクロプロピルまたは1-メチルシクロプロピルであることが好ましい。
【0029】
先に記載の態様では、好ましくは、R1およびR2は同一であり、R3およびR4は同一である。
【0030】
構造式(II)、(IIa)、(IIb)または(III)の変動要素の値の具体例では、各ZはOであり、変動要素の残りは以下のように定義される:
R1およびR2はいずれもフェニルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれもフェニルであり、R3およびR4はいずれもエチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれも4-シアノフェニルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、R5はメチルであり、かつR6は-Hであり;
R1およびR2はいずれも4-メトキシフェニルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれもフェニルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、R5はメチルであり、かつR6は-Hであり;
R1およびR2はいずれもフェニルであり、R3およびR4はいずれもエチルであり、R5はメチルであり、かつR6は-Hであり;
R1およびR2はいずれも4-シアノフェニルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれも2,5-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれも2,5-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、R5はメチルであり、かつR6は-Hであり;
R1およびR2はいずれも3-シアノフェニルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれも3-フルオロフェニルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれも4-クロロフェニルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、R5はメチルであり、かつR6は-Hであり;
R1およびR2はいずれも2-メトキシフェニルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれも3-メトキシフェニルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれも2,3-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれも2,3-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、R5はメチルであり、かつR6は-Hであり;
R1およびR2はいずれも2,5-ジフルオロフェニルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれも2,5-ジフルオロフェニルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、R5はメチルであり、かつR6は-Hであり;
R1およびR2はいずれも2,5-ジクロロフェニルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれも2,5-ジメチルフェニルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれもシクロプロピルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれもシクロプロピルであり、R3およびR4はいずれもエチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれもシクロプロピルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、R5はメチルであり、かつR6は-Hであり;
R1およびR2はいずれも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、R5はメチルであり、かつR6は-Hであり;
R1およびR2はいずれも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、R5はエチルであり、かつR6は-Hであり;
R1およびR2はいずれも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、R5はn-プロピルであり、かつR6は-Hであり;
R1およびR2はいずれも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれもメチルであり;
R1およびR2はいずれも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4はいずれもエチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれも1-メチルシクロプロピルであり、R3はメチルであり、R4はエチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれも2-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれも2-フェニルシクロプロピルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれも1-フェニルシクロプロピルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれもシクロブチルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれもシクロペンチルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれもシクロヘキシルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれもシクロヘキシルであり、R3およびR4はいずれもフェニルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれもメチルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれもメチルであり、R3およびR4はいずれもt-ブチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれもメチルであり、R3およびR4はいずれもフェニルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はいずれもt-ブチルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり;
R1およびR2はエチルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hであり; あるいは
R1およびR2はいずれもn-プロピルであり、R3およびR4はいずれもメチルであり、かつR5およびR6はいずれも-Hである。
【0031】
例示的ビス[チオヒドラジドアミド]は、下記構造式またはそのプロドラッグ、異性体、エステル、塩、水和物、溶媒和物もしくは多形で表される。

【0032】
本発明の例示的化合物は、下記構造式またはそのプロドラッグ、異性体、エステル、塩、水和物、溶媒和物もしくは多形で表される。

【0033】
有利には、本発明の化合物は、実質的に純粋な形態、例えば50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、97重量%、99重量%、99.5重量%または99.9重量%を超えて純粋である。「重量パーセント純度」とは、化合物の重量を化合物の重量プラス不純物で割って100%を掛けたものを意味する。
【0034】
本発明の化合物は、本明細書に記載されるビス[チオヒドラジドアミド]またはそのプロドラッグ、異性体、エステル、塩、水和物、溶媒和物、もしくは多形と遷移金属塩とを反応させることで調製することができる。遷移金属塩は、遷移金属カチオンの任意の無機塩または有機塩であり得る。例えば、塩化、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩などと、本明細書に記載のビス[チオヒドラジドアミド]またはそのプロドラッグ、異性体、エステル、塩、水和物、溶媒和物、もしくは多形とを反応させることで、本発明の化合物を得ることができる。一態様では、遷移金属塩は、CuCl2などの銅(II)塩である。別の態様では、遷移金属塩は、NiCl2・6H2Oなどのニッケル(II)塩である。
【0035】
使用されるビス[チオヒドラジドアミド]またはそのプロドラッグ、異性体、エステル、塩、水和物、溶媒和物、もしくは多形と遷移金属カチオン源との比は、典型的には0.5〜2.0または0.8〜1.2の範囲である。一態様では、比は約1である。
【0036】
塩化メチレン、アセトニトリル、アセトン、アルコール(メタノール、エタノールなどの)、テトラヒドロフランおよび水などの溶媒を、ビス[チオヒドラジドアミド]またはそのプロドラッグ、異性体、エステル、塩、水和物、溶媒和物、もしくは多形と遷移金属塩との反応に使用することができる。一態様では、溶媒はエタノールである。
【0037】
開示される化合物を調製するために使用するビス[チオヒドラジドアミド]は、米国特許第6,800,660号、第6,762,204号および第6,825,235号ならびに米国特許出願公開第2008/0146842号に記載の方法に従って調製することができる。これらの特許および刊行物の教示全体は参照により本明細書に組み入れられる。
【0038】
本発明のある種の化合物は、異なる異性体(例えば立体異性体、配位異性体、結合異性体、水和異性体など)として得ることができる。本発明は、開示される化合物の異性体形態、および純粋な異性体とラセミ混合物を含むその混合物との両方を含む。クロマトグラフィーなどの任意の好適な方法を使用して異性体を分離および単離することができる。
【0039】
本発明の化合物は、1つまたは複数のキラル中心および/または二重結合を含有し得るものであり、したがって、二重結合異性体(すなわち幾何異性体)、鏡像異性体またはジアステレオマーなどの立体異性体として存在し得る。本発明によれば、本発明の化合物を含む、本明細書に示す化学構造は、すべての対応する化合物の鏡像異性体、ジアステレオマーおよび幾何異性体、すなわち、立体化学的に純粋な形態(例えば幾何的に純粋、鏡像異性的に純粋またはジアステレオマー的に純粋)と異性体混合物(例えば鏡像異性体混合物、ジアステレオマー混合物および幾何異性体混合物)との両方を包含する。いくつかの場合では、1つの鏡像異性体、ジアステレオマーまたは幾何異性体は、他の異性体に比べて優れた活性または改善された毒性もしくは動力学プロファイルを有する。それらの場合では、本発明の化合物のそのような鏡像異性体、ジアステレオマーおよび幾何異性体が好ましい。
【0040】
本明細書で使用する「多形」という用語は、本明細書に記載の本発明の化合物の固体結晶形態を意味する。同一化合物の異なる多形は、異なる物理特性、化学特性および/または分光特性を示し得る。異なる物理特性としては、安定性(例えば熱または光に対する)、圧縮率および密度(調剤および製品製造に重要である)、ならびに溶解速度(バイオアベイラビリティに影響し得る)が挙げられるがそれに限定されない。安定性の差は、化学反応性の変化(例えば、異なる酸化、これにより剤形は、1つの多形で構成される場合の方が別の多形で構成される場合よりも速やかに変色する)もしくは機械特性の変化(例えば、動力学的に好ましい多形が熱力学的により安定な多形に変換される場合、錠剤は貯蔵時に粉々になる)、またはその両方の変化(例えば、1つの多形の錠剤は、高湿度でより分解しやすい)により生じ得る。多形の異なる物理特性は、それらの加工に影響し得る。例えば、1つの多形は、例えばその粒子の形状または粒径分布が理由で、別の多形よりも、溶媒和物を形成しやすい可能性があるか、または不純物なしで濾過もしくは洗浄することが困難である可能性がある。
【0041】
本明細書で使用する「溶媒和物」という用語は、非共有結合的分子間力によって結合している化学量論的または非化学量論的量の溶媒をさらに含む、本明細書に記載の本発明の化合物を意味する。
【0042】
本明細書で使用する「水和物」という用語は、非共有結合的分子間力によって結合している化学量論的または非化学量論的量の水をさらに含む、本明細書に記載の本発明の化合物を意味する。
【0043】
本明細書で使用する「プロドラッグ」という用語は、特に他に示されない限り、生物学的条件下(インビトロまたはインビボ)で加水分解、酸化、そうでなければ反応することで本発明の化合物を与えることができる、化合物の誘導体を意味する。プロドラッグは、生物学的条件下でのそのような反応時に活性になり得るか、またはその未反応形態で活性を有し得る。
【0044】
本明細書に記載の本発明の化合物またはビス[チオヒドラジドアミド]は、塩の形態で存在し得る。一態様では、本発明の化合物の塩は、無毒の「薬学的に許容される塩」を意味する。別の態様は、塩はまた、トリフルオロ酢酸塩などの非薬学的に許容される塩を含む。
【0045】
薬学的に許容される塩形態は、薬学的に許容される酸性/アニオン性または塩基性/カチオン性塩を含む。
【0046】
薬学的に許容される酸性/アニオン性塩としては、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩、酒石酸水素塩、臭化物塩、カルシウムエデト酸塩、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩(estolate)、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩(glyceptate)、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ムチン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩およびトリエチオジド塩が挙げられる。
【0047】
本発明の化合物は薬学的に許容されるアニオン性塩形態を含み、アニオン性塩としては酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩、酒石酸水素塩、臭化物塩、カルシウムエデト酸塩、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ムチン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩およびトリエチオジド塩が挙げられる。
【0048】
「アルキル基」とは、飽和した直鎖もしくは分岐鎖線状または環状炭化水素基のことである。典型的には、直鎖または分岐アルキル基は1〜約20個、好ましくは1〜約10個の炭素原子を有し、環状アルキル基は3〜約10個、好ましくは3〜約8個の炭素原子を有する。アルキル基は、直鎖もしくは分岐アルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ペンチルもしくはオクチル、または3〜約8個の炭素原子を有するシクロアルキル基であることが好ましい。C1〜C8直鎖もしくは分岐アルキル基またはC3〜C8環状アルキル基を「低級アルキル」基とも呼ぶ。アルキル基に好適な置換基は、開示される化合物の抗がん活性に実質的に干渉しない置換基である。好適な置換基は、脂肪族基について以下に記載の通りである。アルキル基上の好ましい置換基としては、-OH、-NH2、-NO2、-CN、-COOH、ハロゲン、アリール、C1〜C8アルコキシ、C1〜C8ハロアルコキシおよび-CO(C1〜C8アルキル)が挙げられる。アルキル基上のより好ましい置換基としては、-OH、ハロゲン、フェニル、ベンジル、ピリジルおよびC1〜C8アルコキシが挙げられる。アルキル基上のさらに好ましい置換基としては、-OH、ハロゲンおよびC1〜C4アルコキシが挙げられる。
【0049】
「直鎖ヒドロカルビル基」とは、結合基で置き換えられていてもよい1個または複数(好ましくは1個)の内部メチレン基を有するアルキレン基、すなわち-(CH2)y-のことである。yは正の整数(例えば1〜10)、好ましくは1〜6、より好ましくは1または2である。「結合基」とは、直鎖ヒドロカルビル中のメチレンを置き換える官能基を意味する。好適な結合基の例としては、ケトン(-C(O)-)、アルケン、アルキン、フェニレン、エーテル(-O-)、チオエーテル(-S-)またはアミン(-N(Ra)-)が挙げられ、Raは以下で定義される。好ましい結合基は-C(R5R6)-であり、R5およびR6は上記で定義される。アルキレン基およびヒドロカルビル基に好適な置換基は、開示される化合物の抗がん活性に実質的に干渉しない置換基である。R5およびR6が、Yで表されるアルキレンまたはヒドロカルビル基に好ましい置換基である。
【0050】
脂肪族基とは、完全飽和しているかまたは1個もしくは複数の飽和単位を含有する、直鎖、分岐または環状非芳香族炭化水素のことである。典型的には、直鎖または分岐脂肪族基は1〜約20個、好ましくは1〜約10個の炭素原子を有し、環状脂肪族基は3〜約10個、好ましくは3〜約8個の炭素原子を有する。脂肪族基は、直鎖もしくは分岐アルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ペンチルもしくはオクチル、または3〜約8個の炭素原子を有するシクロアルキル基であることが好ましい。C1〜C8直鎖もしくは分岐アルキル基またはC3〜C8環状アルキル基を「低級アルキル」基とも呼ぶ。
【0051】
「芳香族基」という用語は、「アリール」、「アリール環」、「芳香環」、「アリール基」および「芳香族基」と互換的に使用することができる。芳香族基としては、フェニル、ナフチルおよびアントラシルなどの炭素環式芳香族基、ならびにイミダゾリル、チエニル、フラニル、ピリジル、ピリミジル、ピラニル、ピラゾリル、ピロリル、ピラジニル、チアゾール、オキサゾリルおよびテトラゾールなどのヘテロアリール基が挙げられる。「ヘテロアリール基」という用語は、「ヘテロアリール」、「ヘテロアリール環」、「ヘテロ芳香環」および「ヘテロ芳香族基」と互換的に使用することができる。ヘテロアリール基とは、環構造中に1個または複数の硫黄、酸素および窒素などのヘテロ原子を含む芳香族基のことである。好ましくは、ヘテロアリール基は1〜4個のヘテロ原子を含む。
【0052】
芳香族基はまた、炭素環式芳香環またはヘテロアリール環が1個または複数の他のヘテロアリール環に縮合している、縮合多環式芳香環系を含む。例としてはベンゾチエニル、ベンゾフラニル、インドリル、キノリニル、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、キノリニル、イソキノリニルおよびイソインドリルが挙げられる。
【0053】
「アリーレン」という用語は、2つの他の結合により分子の残りに接続しているアリール基を意味する。例として、1,4-フェニレン基の構造を以下に示す。

アリーレン基の置換基は、アリール基について以下に記載の通りである。
【0054】
非芳香族複素環とは、環中に1個または複数の窒素、酸素または硫黄などのヘテロ原子を含む非芳香環のことである。環は5員、6員、7員または8員であり得る。好ましくは、複素環基は1〜約4個のヘテロ原子を含む。例としてはテトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、モルホリノ、チオモルホリノ、ピロリジニル、ピペラジニル、ピペリジニルおよびチアゾリジニルが挙げられる。
【0055】
「低級アルコキシ」、「低級アシル」、「(低級アルコキシ)メチル」および「(低級アルキル)チオメチル」という用語は、-O-(低級アルキル)、-C(O)-(低級アルキル)、-CH2-O-(低級アルキル)および-CH2-S-(低級アルキル)をそれぞれ意味する。「置換低級アルコキシ」および「置換低級アシル」という用語は、-O-(置換低級アルキル)および-C(O)-(置換低級アルキル)をそれぞれ意味する。
【0056】
本明細書に記載の構造式の変動要素により表される、アリール基、非芳香族複素環基、脂肪族基、アルキレン基またはヒドロカルビル基に好適な置換基は、本化合物の生物活性を著しく減少させない置換基である。例としては-Ra、-OH、-Br、-Cl、-I、-F、-ORa、-O-CORa、-CORa、-CN、-NCS、-NO2、-COOH、-SO3H、-NH2、-NHRa、-N(RaRb)、-COORa、-CHO、-CONH2、-CONHRa、-CON(RaRb)、-NHCORa、-NRcCORa、-NHCONH2、-NHCONRaH、-NHCON(RaRb)、-NRcCONH2、-NRcCONRaH、-NRcCON(RaRb)、-C(=NH)-NH2、-C(=NH)-NHRa、-C(=NH)-N(RaRb)、-C(=NRc)-NH2、-C(=NRc)-NHRa、-C(=NRc)-N(RaRb)、-NH-C(=NH)-NH2、-NH-C(=NH)-NHRa、-NH-C(=NH)-N(RaRb)、-NH-C(=NRc)-NH2、-NH-C(=NRc)-NHRa、-NH-C(=NRc)-N(RaRb)、-NRd-C(=NH)-NH2、-NRd-C(=NH)-NHRa、-NRd-C(=NH)-N(RaRb)、-NRd-C(=NRc)-NH2、-NRd-C(=NRc)-NHRa、-NRd-C(=NRc)-N(RaRb)、-NHNH2、-NHNHRa、-NHNRaRb、-SO2NH2、-SO2NHRa、-SO2NRaRb、-CH=CHRa、-CH=CRaRb、-CRc=CRaRb,-CRc=CHRa、-CRc=CRaRb、-CCRa、-SH、-SRa、-S(O)Ra、-S(O)2Raが挙げられ、Ra〜Rdは、それぞれ独立してアルキル基、芳香族基、非芳香族複素環基であり; あるいは、-N(RaRb)は一緒になって、置換されていてもよい非芳香族複素環基を形成し、Ra〜Rdで表されるアルキル、アリールおよび非芳香族複素環基、ならびに-N(RaRb)で表される非芳香族複素環基は、各々独立して、R#で表される1個または複数の基で置換されていてもよく、R#はR+、-OR+、-O(ハロアルキル)、-SR+、-NO2、-CN、-NCS、-N(R+)2、-NHCO2R+、-NHC(O)R+、-NHNHC(O)R+、-NHC(O)N(R+)2、-NHNHC(O)N(R+)2、-NHNHCO2R+、-C(O)C(O)R+、-C(O)CH2C(O)R+、-CO2R+、-C(O)R+、C(O)N(R+)2、-OC(O)R+、-OC(O)N(R+)2、-S(O)2R+、-SO2N(R+)2、-S(O)R+、-NHSO2N(R+)2、-NHSO2R+、-C(=S)N(R+)2または-C(=NH)-N(R+)2であり; R+は-H、C1〜C4アルキル基、単環式ヘテロアリール基、非芳香族複素環基、または、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、ハロ、-CN、-NO2、アミン、アルキルアミンもしくはジアルキルアミンで置換されていてもよいフェニル基であり; あるいは、-N(R+)2は非芳香族複素環基であり、但し、第二級環アミンを含む、R+および-N(R+)2で表される非芳香族複素環基は、アシル化またはアルキル化されていてもよい。本明細書に記載の構造式の変動要素で表される、アリール基に一般的に使用される置換基としては、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルキル、C1〜C4ハロアルコキシ、フェニル(ハロC1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルキル、C1〜C4ハロアルコキシで置換されていてもよい)、ベンジル(ハロC1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルキル、C1〜C4ハロアルコキシで置換されていてもよい)、ピリジル、-OH、-NH2、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2および-CNが挙げられる。本明細書に記載の構造式の変動要素で表される、非芳香族複素環基、脂肪族基、アルキレン基またはヒドロカルビル基に一般的に使用される置換基としては、-OH、ハロゲン、フェニル(ハロC1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルキル、C1〜C4ハロアルコキシで置換されていてもよい)、ベンジル(ハロC1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルキル、C1〜C4ハロアルコキシで置換されていてもよい)、ピリジルおよびC1〜C8アルコキシが挙げられる。
【0057】
R1およびR2で表されるシクロアルキル基を含むシクロアルキル基に好ましい置換基は、メチル基またはエチル基などのアルキル基である。
【0058】
本発明の化合物は、カプセル剤、懸濁液剤もしくは錠剤での経口、または非経口投与を例えば含む、任意の好適な経路で投与される。非経口投与としては、筋肉内注射、静脈内注射、皮下注射または腹腔内注射などによる全身投与を例えば挙げることができる。処置されるがんの種類に応じて、本発明の化合物を、経口投与(例えば食事)、局所投与、吸入投与(例えば気管支内、鼻腔内、経口吸入もしくは点鼻薬)、または直腸投与することもできる。経口投与および非経口投与が好ましい投与様式である。
【0059】
本発明の一態様は、増殖性障害を有する対象を処置する方法であって、有効量の化合物またはその薬学的組成物を対象に投与する段階を含む方法である。多剤耐性がんを含むがんは、本発明の化合物で処置可能な増殖性障害の1種である。非悪性増殖性障害も本発明に含まれる。
【0060】
「がんを有する対象を処置する」は、以下のうち1つまたは複数を部分的または実質的に実現することを含む: がんの成長または拡散を停止させること、がんの程度を減少させること(例えば、腫瘍のサイズを減少させるかもしくは患部の数を減少させること)、がんの成長速度を阻害すること、がん(組織成分もしくは血清成分などの)に関連する臨床症状もしくは臨床指標を寛解させるかもしくは改善すること、および/または除去したかもしくは緩解させた時点でがんが再発する可能性を減少させること。
【0061】
驚くべきことに、本明細書に開示される遷移金属キレート、配位体または錯体が、単剤療法、および他の抗増殖治療薬または抗がん治療薬との組み合わせまたは併用療法に好適になるために十分な抗がん活性を示すことがわかった。特に、上記米国特許第6,800,660号; 第6,762,204号; 第7,037,940号; 第7,001,923号; および第6,924,312号の化合物の遷移金属キレート、配位体または錯体が、単剤療法、およびパクリタキセルなどの他の抗増殖治療薬または抗がん治療薬との組み合わせまたは併用療法に好適になるために十分な抗がん活性を有し得ることがわかった。
【0062】
他の抗増殖治療薬または抗がん治療薬と、本発明の化合物または薬学的組成物とを組み合わせることで、増殖性疾患およびがんを処置することができる。例としては、他の抗がん剤、手術、放射線療法(γ線、中性子ビーム放射線療法、電子ビーム放射線療法、プロトン療法、近接照射療法および全身性放射性同位体を含むがそれに限定されない)、熱療法(例えば、その教示全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2008/0119440号を参照)ならびに内分泌療法との併用療法が挙げられる。本発明の化合物または薬学的組成物との組み合わせで使用可能な他の抗がん剤としては、生体応答調節剤(インターフェロン、インターロイキンおよび腫瘍壊死因子(TNF)を含むがそれに限定されない)、任意の有害作用を減弱させる温熱療法薬および寒冷療法薬(例えば制吐薬)、ならびに他の承認された化学療法薬が挙げられる。抗がん剤の具体例を以下で詳細に説明する。好ましくは、同時投与する抗がん剤は、パクリタキセルまたはパクリタキセル類似体などの、微小管を安定化させる薬剤である。
【0063】
本発明の方法で処置または予防可能ながんとしては、ヒト肉腫および細胞腫、例えば線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸がん、膵がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、脂腺がん、乳頭がん、乳頭状腺がん、嚢胞腺がん、髄様がん、気管支原性がん、腎細胞がん、肝細胞がん、胆管がん、絨毛がん、セミノーマ、胎児性がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺がん、小細胞肺がん、膀胱がん、上皮がん、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、網膜芽腫; 白血病、例えば急性リンパ球性白血病ならびに急性骨髄球性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性および赤白血病); 慢性白血病(慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ球性白血病); ならびに真性多血症、リンパ腫(ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症および重鎖病が挙げられるがそれに限定されない。
【0064】
白血病の他の例としては、急性および/または慢性白血病、例えば、リンパ球性白血病(例えばp388(マウス)細胞系により例示される)、大顆粒リンパ球性白血病およびリンパ芽球性白血病; T細胞白血病、例えばT細胞白血病(例えばCEM、ジャーカット、およびHSB-2(急性)、YAC-1(マウス)細胞系により例示される)、Tリンパ球性白血病およびTリンパ芽球性白血病; B細胞白血病(例えばSB(急性)細胞系により例示される)およびBリンパ球性白血病; 混合細胞白血病、例えばBおよびT細胞白血病ならびにBおよびTリンパ球性白血病; 骨髄性白血病、例えば顆粒球性白血病、骨髄球性白血病(例えばHL-60(前骨髄球)細胞系により例示される)および骨髄性(myelogenous)白血病(例えばK562(慢性)細胞系により例示される); 好中球性白血病; 好酸球性白血病; 単球性白血病(例えばTHP-1(急性)細胞系により例示される); 骨髄単球性白血病; ネーゲリ型骨髄性白血病; ならびに非リンパ球性白血病が挙げられる。白血病の他の例は、The Chemotherapy Sourcebook, Michael C. Perry Ed., Williams & Williams (1992) and Section 36 of Holland Frie Cancer Medicine 5th Ed., Bast et al. Eds., B.C. Decker Inc. (2000)の60章に記載されている。前記参考文献の教示全体は参照により本明細書に組み入れられる。
【0065】
本発明の方法で処置または予防可能なさらなるがんとしては、舌がん、口がん、咽頭がんおよび他の口腔がんを含む口腔がんおよび咽頭がん; 食道、小腸、直腸、肛門、肛門管、肛門直腸、肝臓および肝内胆管、胆嚢および他の胆道、膵臓、ならびに他の消化器を含む消化器系がん; 喉頭および気管支を含む呼吸器系がん; 骨がんおよび関節がん; 軟部組織(心臓を含む)がん; 子宮頸部、子宮体部、卵巣、陰門、膣および他の女性器、精巣、陰茎および他の男性器を含む生殖器系がん; 腎臓および腎盂、ならびに尿管および他の泌尿器を含む泌尿器系がん; 眼がんおよび眼窩がん; 急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病を含む白血病が挙げられるがそれに限定されない。
【0066】
一態様では、開示される方法は、多発性骨髄腫などの非固形腫瘍を有する対象を処置する上で特に有効であると考えられる。別の態様では、開示される方法は、T白血病(例えばジャーカットおよびCEM細胞系により例示される); B白血病(例えばSB細胞系により例示される); 前骨髄球(例えばHL-60細胞系により例示される); 子宮肉腫(例えばMES-SA細胞系により例示される); 単球性白血病(例えばTHP-1(急性)細胞系により例示される); およびリンパ腫(例えばU937細胞系により例示される)に対して特に有効であると考えられる。
【0067】
別の態様では、開示される方法は、黒色腫を有する対象を処置する上で特に有効であると考えられる。
【0068】
別の態様では、開示される方法は、腎細胞がんを有する対象を処置する上で特に有効であると考えられる。
【0069】
開示される方法は、そのがんが「薬剤耐性」になった対象を処置する上で特に有効である。抗がん剤に最初に応答したがんは、がんを有する対象を処置する上で抗がん剤がもはや有効でなくなる場合、抗がん剤に耐性になる。例えば、多くの腫瘍は、最初は、サイズが低下するかまたは緩解さえすることで、抗がん剤での処置に応答するが、結局は薬剤に対する耐性を発生させる。薬剤耐性腫瘍は、増加した投与量の抗がん剤の投与にもかかわらず、見かけ上は緩解した後でその成長再開および/または再出現が生じることを特徴とする。2種以上の抗がん剤に対する耐性を発生させたがんは「多剤耐性」と言われる。例えば、がんが、3種以上の抗がん剤、しばしば5種以上の抗がん剤、時々10種以上の抗がん剤に耐性になることは一般的である。
【0070】
数多くの非がん疾患は、過形成と呼ばれる過剰なまたは過剰増殖性の細胞成長を包含する。本明細書で使用する「増殖性障害」、「過剰増殖性障害」および「細胞増殖障害」という用語は、細胞の病理的成長を包含する疾患または医学的状態を意味するように互変的に使用される。そのような障害としてはがんが挙げられる。
【0071】
非がん性増殖性障害としては、平滑筋細胞増殖、全身性硬化症、肝硬変、成人呼吸促迫症候群、特発性心筋症、エリテマトーデス、網膜症、例えば糖尿病性網膜症または他の網膜症、心肥大、良性前立腺肥大症および卵巣嚢胞などの生殖器系関連障害、肺線維症、子宮内膜症、線維腫症、過誤腫、リンパ管腫症、サルコイドーシス、類腱腫などが挙げられる。
【0072】
平滑筋細胞増殖としては、増殖性血管障害、例えば内膜平滑筋細胞過形成、再狭窄および血管閉塞、特に、生物学的または機械的に媒介された血管傷害、例えばバルーン血管形成術または血管狭窄に関連する血管傷害に続く狭窄が挙げられる。さらに、内膜平滑筋細胞過形成としては、脈管構造以外の平滑筋中の過形成、例えば、胆管閉塞における過形成、喘息患者の肺の気管支気道における過形成、間質性腎線維症を有する患者の腎臓における過形成、などを挙げることができる。
【0073】
非がん性増殖性障害としてはまた、乾癬およびその変種臨床形態などの、皮膚における細胞の過剰増殖、ライター症候群、毛孔性紅色粃糠疹、ならびに角質化障害の過剰増殖性変種(例えば日光角化症、老人性角化症)、強皮症などが挙げられる。
【0074】
がんなどの増殖性障害を有する患者を処置するために、またはがんなどの増殖性障害の再発の可能性を減少させるために、本発明の化合物との組み合わせで使用可能な薬剤としては、以下が挙げられるがそれに限定されない: 20-エピ-1,25ジヒドロキシビタミンD3; 5-エチニルウラシル; アビラテロン; アクラルビシン; アシルフルベン; アデシペノール; アドゼレシン; アルデスロイキン; ALL-TKアンタゴニスト; アルトレタミン; アンバムスチン; アミドックス; アミホスチン; アミノレブリン酸; アムルビシン; アムサクリン; アナグレリド; アナストロゾール; アンドログラホリド; 血管新生阻害剤; アンタゴニストD: アンタゴニストG: アンタレリックス; 抗背方化形態形成タンパク質-1; 抗アンドロゲン剤、前立腺がん; 抗エストロゲン剤; アンチネオプラストン; アンチセンスオリゴヌクレオチド; アフィディコリングリシネート; アポトーシス遺伝子調節剤; アポトーシス調節剤; アプリン酸; ara-CDP-DL-PTBA; アルギニンデアミナーゼ; アスラクリン; アタメスタン; アトリムスチン; アキシナスタチン1; アキシナスタチン2; アキシナスタチン3; アザセトロン; アザトキシン; アザチロシン; バッカチンIII誘導体; バラノール; バチマスタット; BCR/ABLアンタゴニスト; ベンゾクロリン; ベンゾイルスタウロスポリン; βラクタム誘導体; β-アレチン; ベタクラマイシンB; ベツリン酸; bFGF阻害剤; ビカルタミド; ビサントレン; ビスアジリジニルスペルミン; ビスナフィド; ビストラテンA; ビゼレシン; ブレフレート; ブロピリミン; ブドチタン(budotitane); ブチオニンスルホキシミン; カルシポトリオール; カルホスチンC; カンプトテシン誘導体; カナリアポックスIL-2; カペシタビン; カルボキサミド-アミノ-トリアゾール; カルボキシアミドトリアゾール; CaRest M3; CARN 700; 軟骨由来阻害剤; カルゼレシン; カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS); カスタノスペルミン; セクロピンB; セトロレリクス; クロリン; クロロキノキサリンスルホンアミド; シカプロスト; cis-ポルフィリン; クラドリビン; クロミフェン類似体; クロトリマゾール; コリスマイシンA; コリスマイシンB; コンブレタスタチンA4; コンブレタスタチン類似体; コナゲニン; クランベシジン816; クリスナトール; クリプトフィシン8; クリプトフィシンA誘導体; クラシンA; シクロペンタアントラキノン; シクロプラタム(cycloplatam); シペマイシン; シタラビンオクホスファート; 細胞溶解因子; シトスタチン; ダクリキシマブ(dacliximab); デシタビン; デヒドロジデムニンB; デスロレリン; デキサメタゾン; デキシホスファミド(dexifosfamide); デクスラゾキサン; デクスベラパミル; ジアジクオン; ジデムニンB; ジドックス; ジエチルノルスペルミン; ジヒドロ-5-アザシチジン; 9-ジオキサマイシン; ジフェニルスピロムスチン(diphenyl spiromustine); ドコサノール; ドラセトロン; ドキシフルリジン; ドロロキシフェン; ドロナビノール; デュオカルマイシンSA; エブセレン; エコムスチン; エデルホシン; エドレコロマブ; エフロールニチン; エレメン; エミテフル; エピルビシン; エプリステリド; エストラムスチン類似体; エストロゲンアゴニスト; エストロゲンアンタゴニスト; エタニダゾール; エトポシドホスフェート; エキセメスタン; ファドロゾール; ファザラビン; フェンレチニド; フィルグラスチム; フィナステリド; フラボピリドール; フレゼラスチン; フルアステロン; フルダラビン; フルオロダウノルビシン塩酸塩; ホルフェニメクス(forfenimex); ホルメスタン; ホストリエシン; ホテムスチン; ガドリニウムテキサフィリン; 硝酸ガリウム; ガロシタビン; ガニレリクス; ゼラチナーゼ阻害剤; ゲムシタビン; グルタチオン阻害剤; ヘプスルファム; ヘレグリン; ヘキサメチレンビスアセトアミド; ヒペリシン; イバンドロン酸; イダルビシン; イドキシフェン; イドラマントン; イルモホシン; イロマスタット; イミダゾアクリドン; イミキモド; 免疫賦活ペプチド; インスリン様成長因子-1受容体阻害剤; インターフェロンアゴニスト; インターフェロン; インターロイキン; ヨーベングアン; ヨードドキソルビシン; 4-イポメアノール; イロプラクト(iroplact); イルソグラジン; イソベンガゾール; イソホモハリコンドリン(isohomohalicondrin)B; イタセトロン; ジャスプラキノリド; カハラリドF; ラメラリン-Nトリアセテート; ランレオチド; レイナマイシン; レノグラスチム; レンチナンスルフェート; レプトルスタチン; レトロゾール; 白血病阻害因子; 白血球αインターフェロン; リュープロリド+エストロゲン+プロゲステロン; リュープロレリン; レバミソール; リアロゾール; 直鎖状ポリアミン類似体; 親油性二糖ペプチド; 親油性白金化合物; リッソクリナミド7; ロバプラチン(lobaplatin); ロンブリシン; ロメトレキソール; ロニダミン; ロソキサントロン; ロバスタチン; ロキソリビン; ルルトテカン; ルテチウムテキサフィリン; リソフィリン; 溶解性ペプチド; メイタンシン; マンノスタチンA; マリマスタット; マソプロコール; マスピン; マトリライシン阻害剤; マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤; メノガリル; メルバロン; メテレリン; メチオニナーゼ; メトクロプラミド; MIF阻害剤; ミフェプリストン; ミルテホシン; ミリモスチム; ミスマッチ二本鎖RNA; ミトグアゾン; ミトラクトール; マイトマイシン類似体; ミトナフィド; マイトトキシン線維芽細胞成長因子-サポリン; ミトキサントロン; モファロテン; モルグラモスチム; モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン; モノホスホリル脂質A+マイコバクテリア細胞壁sk; モピダモール; 多剤耐性遺伝子阻害剤; 複数腫瘍抑制因子1系治療薬; マスタード抗がん剤; ミカペルオキシドB; マイコバクテリア細胞壁抽出物; ミリアポロン; N-アセチルジナリン; N-置換ベンズアミド; ナファレリン; ナグレスチプ(nagrestip); ナロキソン+ペンタゾシン; ナパビン(napavin); ナフテルピン; ナルトグラスチム; ネダプラチン; ネモルビシン; ネリドロン酸; 中性エンドペプチダーゼ; ニルタミド; ニサマイシン; 一酸化窒素調節剤; 窒素酸化物抗酸化剤; ニトルリン(nitrullyn); O6-ベンジルグアニン; オクトレオチド; オキセノン; オリゴヌクレオチド; オナプリストン; オンダンセトロン; オンダンセトロン; オラシン(oracin); 経口用サイトカイン誘導剤; オルマプラチン(ormaplatin); オサテロン; オキサリプラチン; オキサウノマイシン; パラウアミン(palauamine); パルミトイルリゾキシン; パミドロン酸; パナキシトリオール; パノミフェン; パラバクチン; パゼリプチン; ペグアスパルガーゼ; ペルデシン; ペントサンポリ硫酸ナトリウム; ペントスタチン; ペントロゾール(pentrozole); ペルフルブロン; ペルホスファミド; ペリリルアルコール; フェナジノマイシン; 酢酸フェニル; ホスファターゼ阻害剤; ピシバニール; ピロカルピン塩酸塩; ピラルビシン; ピリトレキシム; プラセチン(placetin)A; プラセチンB; プラスミノーゲン活性化因子阻害剤; 白金錯体; 白金化合物; 白金−トリアミン錯体; ポルフィマーナトリウム; ポルフィロマイシン; プレドニゾン; プロピルビス-アクリドン; プロスタグランジンJ2; プロテアソーム阻害剤; タンパク質A系免疫調節剤; タンパク質キナーゼC阻害剤; タンパク質キナーゼC阻害剤、微細藻類; タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤; プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤; プルプリン; ピラゾロアクリジン; ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレン抱合体; rafアンタゴニスト; ラルチトレキセド; ラモセトロン; rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤; ras阻害剤; ras-GAP阻害剤; 脱メチル化レテリプチン; レニウムRe 186エチドロネート; リゾキシン; リボザイム; RIIレチンアミド; ログレチミド; ロヒツキン(rohitukine); ロムルチド; ロキニメクス; ルビギノンB1; ルボキシル; サフィンゴール; サイントピン; SarCNU; サルコフィトールA; サルグラモスチム; Sdi 1模倣体; セムスチン; 老化由来阻害剤1; センスオリゴヌクレオチド; シグナル伝達阻害剤; シグナル伝達調節剤; 単鎖抗原結合タンパク質; シゾフィラン; ソブゾキサン; ナトリウムボロカプテート(sodium borocaptate); フェニル酢酸ナトリウム; ソルベロール(solverol); ソマトメジン結合タンパク質; ソネルミン(sonermin); スパルホシン酸(sparfosic acid); スピカマイシンD; スピロムスチン; スプレノペンチン; スポンギスタチン1; スクアラミン; 幹細胞阻害剤; 幹細胞分裂阻害剤; スチピアミド; ストロメライシン阻害剤; スルフィノシン; 超活性血管作用性小腸ペプチドアンタゴニスト; スラジスタ(suradista); スラミン; スワインソニン; 合成グリコサミノグリカン; タリムスチン; タモキシフェンメチオジド; タウロムスチン; タザロテン; テコガランナトリウム(tecogalan sodium); テガフール; テルラピリリウム(tellurapyrylium); テロメラーゼ阻害剤; テモポルフィン; テモゾロミド; テニポシド; テトラクロロデカオキシド; テトラゾミン; タリブラスチン; チオコラリン; トロンボポエチン; トロンボポエチン模倣体; チマルファシン(thymalfasin); チモポエチン受容体アゴニスト; チモトリナン; 甲状腺刺激ホルモン; スズエチルエチオプルプリン; チラパザミン; 二塩化チタノセン; トプセンチン; トレミフェン; 全能性幹細胞因子; 翻訳阻害剤; トレチノイン; トリアセチルウリジン; トリシリビン; トリメトレキセート; トリプトレリン; トロピセトロン; ツロステリド; チロシンキナーゼ阻害剤; チルホスチン; UBC阻害剤; ウベニメクス; 泌尿生殖洞由来成長阻害因子; ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト; バプレオチド; バリオリンB; ベクター系、赤血球遺伝子治療薬; ベラレソール; ベラミン(veramine); ベルジン; ベルテポルフィン; ビノレルビン; ビンキサルチン(vinxaltine); ビタキシン(vitaxin); ボロゾール; ザノテロン; ゼニプラチン(zeniplatin); ジラスコルブ; およびジノスタチンスチマラマー。好ましいさらなる抗がん剤は、5-フルオロウラシルおよびロイコボリンである。
【0075】
がんなどの増殖性障害を処置するために、またはがんなどの増殖性障害の再発の可能性を減少させるために、本発明の化合物との組み合わせで使用可能な治療用抗体の例としては、以下が挙げられるがそれに限定されない: 転移性乳がんを有する患者の処置用のヒト化抗HER2モノクローナル抗体である、ハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)(カリフォルニア州、Genentech); 血餅形成の予防用の血小板上の抗糖タンパク質IIb/IIIa受容体である、レオプロ(登録商標)(アブシキシマブ)(Centocor); 急性腎臓同種移植片拒絶の予防用の免疫抑制性ヒト化抗CD25モノクローナル抗体である、ゼナパックス(登録商標)(ダクリズマブ)(スイス、Roche Pharmaceuticals); マウス抗17-IA細胞表面抗原IgG2a抗体である、パノレックス(PANOREX)(商標)(Glaxo Wellcome/Centocor); マウス抗イディオタイプ(GD3エピトープ)IgG抗体である、BEC2 (ImClone System); キメラ抗EGFR IgG抗体である、IMC-C225 (ImClone System); ヒト化抗αVβ3インテグリン抗体である、ビタキシン(VITAXIN)(商標)(Applied Molecular Evolution/MedImmune); ヒト化抗CD52 IgG1抗体である、キャンパス1H/LDP-03 (Leukosite); ヒト化抗CD33 IgG抗体である、Smart M195 (Protein Design Lab/Kanebo); キメラ抗CD20 IgG1抗体である、リツキサン(商標)(IDEC Pharm/Genentech, Roche/Zettyaku); ヒト化抗CD22 IgG抗体である、リンホシド(LYMPHOCIDE)(商標)(Immunomedics); リンホシド(商標)Y-90 (Immunomedics); リンフォスキャン(Lymphoscan)(Tc-99m標識; 放射性画像診断; Immunomedics); ヌヴィオン(CD3に対する; Protein Design Labs); ヒト化抗ICAM3抗体である、CM3 (ICOS Pharm); 霊長類化抗CD80抗体である、IDEC-114 (IDEC Pharm/Mitsubishi); 放射標識マウス抗CD20抗体である、ゼヴァリン(商標)(IDEC/Schering AG); ヒト化抗CD40L抗体である、IDEC-131 (IDEC/Eisai); 霊長類化抗CD4抗体である、IDEC-151 (IDEC); 霊長類化抗CD23抗体である、IDEC-152 (IDEC/Seikagaku); ヒト化抗CD3 IgGである、SMART抗CD3 (Protein Design Lab); ヒト化抗補体因子5 (C5)抗体である、5G1.1 (Alexion Pharm); ヒト化抗TNF-α抗体である、D2E7 (CAT/BASF); ヒト化抗TNF-α Fab断片である、CDP870 (Celltech); 霊長類化抗CD4 IgG1抗体である、IDEC-151 (IDEC Pharm/SmithKline Beecham); ヒト抗CD4 IgG抗体である、MDX-CD4 (Medarex/Eisai/Genmab); CD20-ストレプトアビジン(+ビオチン-イットリウム90; NeoRx); ヒト化抗TNF-α IgG4抗体である、CDP571 (Celltech); ヒト化抗α4β7抗体である、LDP-02 (LeukoSite/Genentech); ヒト化抗CD4 IgG抗体である、オルソクローン(OrthoClone)OKT4A (Ortho Biotech); ヒト化抗CD40L IgG抗体である、アントバ(ANTOVA)(商標)(Biogen); ヒト化抗VLA-4 IgG抗体である、アンテグレン(商標)(Elan); およびヒト抗TGF-β2抗体である、CAT-152 (Cambridge Ab Tech)。
【0076】
がんなどの増殖性障害を有する患者を処置するために、またはがんなどの増殖性障害の再発の可能性を減少させるために、本発明の化合物との組み合わせで使用可能な化学療法薬としては、アルキル化剤、代謝拮抗薬、天然物またはホルモンが挙げられるがそれに限定されない。
【0077】
本発明の方法および組成物における、がんなどの増殖性障害の処置または予防(発生の可能性もしくは再発の可能性の減少)に有用なアルキル化剤の例としては、ナイトロジェンマスタード(例えばメクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファランなど)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(例えばヘキサメチルメラミン、チオテパ)、アルキルスルホネート(例えばブスルファン)、ニトロソ尿素(例えばカルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシンなど)またはトリアゼン(ダカルバジンなど)が挙げられるがそれに限定されない。本発明の方法および組成物における、がんの処置または予防(発生の可能性もしくは再発の可能性の減少)に有用な代謝拮抗薬の例としては、葉酸類似体(例えばメトトレキサート)、またはピリミジン類似体(例えばフルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン)、プリン類似体(例えばメルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン)が挙げられるがそれに限定されない。本発明の方法および組成物における、がんの処置または予防(発生の可能性もしくは再発の可能性の減少)に有用な天然物の例としては、ビンカアルカロイド(例えばビンブラスチン、ビンクリスチン)、エピポドフィロトキシン(例えばエトポシド、テニポシド)、抗生物質(例えばアクチノマイシンD、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、マイトマイシン)、酵素(例えばL-アスパラギナーゼ)、または生体応答調節剤(例えばインターフェロンα)が挙げられるがそれに限定されない。本発明の方法および組成物における、がんの処置または予防(発生の可能性もしくは再発の可能性の減少)に有用なホルモンおよびアンタゴニストの例としては、副腎皮質ステロイド(例えばプレドニゾン)、プロゲスチン(例えばカプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、酢酸メドロキシプロゲステロン)、エストロゲン(例えばジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール)、抗エストロゲン剤(例えばタモキシフェン)、アンドロゲン(例えばプロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン)、抗アンドロゲン剤(例えばフルタミド)、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体(例えばリュープロリド)が挙げられるがそれに限定されない。がんの処置または予防(発生の可能性もしくは再発の可能性の減少)用に、本発明の方法および組成物において使用可能な他の薬剤としては、白金配位錯体(例えばシスプラチン、カルボプラチン)、アントラセンジオン(例えばミトキサントロン)、置換尿素(例えばヒドロキシ尿素)、メチルヒドラジン誘導体(例えばプロカルバジン)、副腎皮質抑制剤(例えばミトタン、アミノグルテチミド)が挙げられる。
【0078】
一態様では、本発明の化合物は、がんなどの増殖性障害の処置のために、またはがんなどの増殖性障害の再発の可能性を減少させるために、免疫療法薬との組み合わせで使用することができる。免疫療法(生体応答調節剤療法、生物療法(biologic therapy)、生物療法(biotherapy)、免疫療法または生物療法(biological therapy)とも呼ばれる)は、疾患と戦うために免疫系の一部を使用する処置である。免疫療法は、免疫系ががん細胞を認識するかまたはがん細胞に対する応答を増強するために役立ち得る。免疫療法としては能動免疫療法および受動免疫療法が挙げられる。能動免疫療法は、身体自体の免疫系を刺激し、一方、受動免疫療法は、身体の外側に作り出される免疫系成分を一般に使用する。
【0079】
能動免疫療法薬の例としては、がんワクチン、腫瘍細胞ワクチン(自家もしくは同種)、樹状細胞ワクチン、抗原ワクチン、抗イディオタイプワクチン、DNAワクチン、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞治療薬、またはインターロイキン-2 (IL-2)を有する腫瘍浸潤リンパ球(TIL)ワクチンが挙げられる。現在、能動免疫療法薬は、黒色腫、腎がん、膀胱がん、前立腺がん、卵巣がん、乳がん、結腸直腸がん、肺がん、白血病、前立腺がん、非ホジキンリンパ腫、膵がん、リンパ腫、多発性骨髄腫、頭頸部がん、肝がん、悪性脳腫瘍および進行性黒色腫を含む、各種のがんを処置するために使用されているかまたは処置するために試験されている。
【0080】
受動免疫療法薬の例としては、モノクローナル抗体、および毒素を含有する標的化治療薬が挙げられる。モノクローナル抗体としては、裸抗体および抱合抗体(タグ付き抗体、標識抗体または添加抗体とも呼ばれる)が挙げられる。裸モノクローナル抗体が、結合している薬剤または放射性材料を有さない一方で、抱合モノクローナル抗体は、化学療法薬(化学標識された)、放射性粒子(放射標識された)または毒素(免疫毒素)に連結している。以下を含むいくつかの裸モノクローナル抗体薬が、がんの処置用に承認された: B細胞非ホジキンリンパ腫を処置するために使用される、CD20抗原に対する抗体である、リツキシマブ(リツキサン); 進行性乳がんを処置するために使用される、HER2タンパク質に対する抗体である、トラスツズマブ(ハーセプチン); B細胞慢性リンパ球性白血病(B-CLL)を処置するために使用される、CD52抗原に対する抗体である、アレムツズマブ(キャンパス); 進行性結腸直腸がんを処置するために、および頭頸部がんを処置するために、イリノテカンとの組み合わせで使用される、EGFRタンパク質に対する抗体である、セツキシマブ(アービタックス); ならびにVEGFタンパク質に対して働き、かつ転移性結腸直腸がんを処置するために化学療法薬との組み合わせで使用される、抗血管新生治療薬である、ベバシズマブ(アバスチン)。以下を含むいくつかの抱合モノクローナル抗体が、がんの処置用に承認された: 放射能をがん性Bリンパ球に直接送達し、かつB細胞非ホジキンリンパ腫を処置するために使用される、放射標識抗体イブリツモマブチウキセタン(ゼヴァリン); ある種の非ホジキンリンパ腫を処置するために使用される、放射標識抗体トシツモマブ(ベキサール); およびカリチアマイシンを含有し、かつ急性骨髄性白血病(AML)を処置するために使用される、免疫毒素ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ)。BL22は、ヘアリーセル白血病を処置するために現在試験中の抱合モノクローナル抗体であり、白血病、リンパ腫および脳腫瘍を処置するためにいくつかの免疫毒素臨床試験が進行中である。結腸直腸がんおよび卵巣がんの検出用のオンコシント(OncoScint)、ならびに前立腺がんの検出用のプロスタシント(ProstaScint)を含む、がんを検出するために使用される承認された放射標識抗体も存在する。毒素を含有する標的化治療薬は、成長因子に連結した毒素であり、抗体を含有しない。毒素を含有する承認された標的化治療薬の一例は、皮膚リンパ腫の1種(皮膚T細胞リンパ腫)を処置するために使用されるデニロイキンジフチトクス(オンタック(Ontak))である。
【0081】
アジュバント免疫療法薬の例としては、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)-1-α、インターロイキン(IL-1、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21およびIL-27を含む)、腫瘍壊死因子(TNF-αを含む)ならびにインターフェロン(IFN-α、IFN-βおよびIFN-γを含む)などのサイトカイン; 水酸化アルミニウム(アラム); カルメット・ゲラン桿菌(BCG); キーホールリンペットヘモシアニン(KLH); 不完全フロイントアジュバント(IFA); QS-21; デトックス(DETOX); レバミソール; ならびにジニトロフェニル(DNP)が挙げられる。臨床試験は、IL-2とIFN-αなどの他のサイトカインとを組み合わせることで相乗的応答が生じ得ることを示した。
【0082】
いくつかの種類の免疫療法薬は、黒色腫患者を処置するために使用されている。IFN-αおよびIL-2は、転移性黒色腫を有する人々の処置用に承認されている。BCGは、黒色腫ワクチンおよび他の免疫療法薬との組み合わせで試験されている。腫瘍浸潤リンパ球は、フェーズ1臨床試験において黒色腫の腫瘍を収縮させることがわかった。ガングリオシド抗原に対するヒトモノクローナル抗体は、再発性皮膚黒色腫の腫瘍を消失させることがわかった。いくつかの自家および同種腫瘍細胞ワクチン、抗原ワクチン(多価抗原ワクチンを含む)、ウイルスワクチンならびに樹状細胞ワクチンも、腫瘍を収縮させることがわかった。これらおよび他の黒色腫免疫療法薬について臨床試験が続いている。高IgM応答を示す黒色腫患者は、IgM抗体を誘発しないかまたは不十分に誘発する患者よりもしばしば長く生存する(Morton et al., 1992)。IL-12/TNF-αの併用免疫療法は、対照、およびいずれかのサイトカイン単独で処置したマウスに比べて、マウスの3つの腫瘍モデル(B16F10黒色腫、ルイス肺(LL/2)がんおよびL1肉腫)において腫瘍成長を著しく遅延させることがわかった。IFNαは、悪性黒色腫、慢性骨髄性白血病(CML)、ヘアリーセル白血病およびカポジ肉腫の処置用に承認されている。
【0083】
いくつかの種類の免疫療法薬は、腎がんを有する患者を処置するために使用されている。IFN-αおよびIL-2は、転移性腎がんを有する人々の処置用に承認されている。IL-2、インターフェロンおよび化学療法薬を使用する併用療法は、腎がんの処置用に試験されている。腫瘍細胞ワクチンおよびアジュバントBCGによる処置は、一部の進行性腎がん患者において腫瘍を収縮させることがわかった。DNAワクチンおよび腫瘍浸潤リンパ球も、腎がん用処置薬として試験されている。キメラ二重特異性G250/抗CD3モノクローナル抗体は、クローン化ヒトCD8+ T細胞またはIL-2刺激末梢血リンパ球による腎細胞がん細胞系の細胞溶解を媒介することがわかった。
【0084】
本明細書で使用する「マイクロチューブリン安定剤」とは、微小管の安定化によりG2〜M期の細胞を停止させることで作用する抗がん剤を意味する。がんなどの増殖性障害を有する患者を処置するために、またはがんなどの増殖性障害の再発の可能性を減少させるために、マイクロチューブリン安定剤である薬剤を本発明の化合物との組み合わせで使用することができる。マイクロチューブリン安定剤の例としてはパクリタキセルおよびパクリタキセル類似体が挙げられる。マイクロチューブリン安定剤のさらなる例としては、以下の市販の薬剤および開発中の薬剤が非限定的に挙げられる: ディスコデルモリド(NVP-XX-A-296としても公知); エポチロン(エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC(デスオキシエポチロンAまたはdEpoAとしても公知); エポチロンD (KOS-862、dEpoBおよびデスオキシエポチロンBとも呼ばれる); エポチロンE; エポチロンF; エポチロンB N-オキシド; エポチロンA N-オキシド; 16-アザ-エポチロンB; 21-アミノエポチロンB (BMS-310705としても公知); 21-ヒドロキシエポチロンD (デスオキシエポチロンFおよびdEpoFとしても公知)、26-フルオロエポチロンなどの); FR-182877 (Fujisawa、WS-9885Bとしても公知)、BSF-223651 (BASF、ILX-651およびLU-223651としても公知); AC-7739 (Ajinomoto、AVE-8063AおよびCS-39.HClとしても公知); AC-7700 (Ajinomoto、AVE-8062、AVE-8062A、CS-39-L-Ser.HClおよびRPR-258062Aとしても公知); フィジアノリド(Fijianolide)B; ラウリマリド; カリベオシド; カリベオリン; タッカロノリド; エロイテロビン; サルコジクチイン; ラウリマリド; ジクチオスタチン-1; ジャトロファンエステル; ならびにその類似体および誘導体。
【0085】
本明細書で使用する「マイクロチューブリン阻害剤」とは、チューブリン重合または微小管集合を阻害することで作用する抗がん剤を意味する。がんなどの増殖性障害を有する患者を処置するために、またはがんなどの増殖性障害の再発の可能性を減少させるために、マイクロチューブリン阻害剤である薬剤を本発明の化合物との組み合わせで使用することができる。マイクロチューブリン阻害剤の例としては、以下の市販の薬剤および開発中の薬剤が非限定的に挙げられる: エルブロゾール(R-55104としても公知); ドラスタチン10 (DLS-10およびNSC-376128としても公知); イセチオン酸ミボブリン(CI-980としても公知); ビンクリスチン; NSC-639829; ABT-751 (Abbot、E-7010としても公知); アルトリルチン(Altorhyrtins)(アルトリルチンAおよびアルトリルチンCなどの); スポンギスタチン(スポンギスタチン1、スポンギスタチン2、スポンギスタチン3、スポンギスタチン4、スポンギスタチン5、スポンギスタチン6、スポンギスタチン7、スポンギスタチン8およびスポンギスタチン9などの); セマドチン塩酸塩(LU-103793およびNSC-D-669356としても公知); アウリスタチンPE (NSC-654663としても公知); ソブリドチン(TZT-1027としても公知)、LS-4559-P (Pharmacia、LS-4577としても公知); LS-4578 (Pharmacia、LS-477-Pとしても公知); LS-4477 (Pharmacia)、LS-4559 (Pharmacia); RPR-112378 (Aventis); 硫酸ビンクリスチン; DZ-3358 (Daiichi); GS-164 (Takeda); GS-198 (Takeda); KAR-2 (Hungarian Academy of Sciences); SAH-49960 (Lilly/Novartis); SDZ-268970 (Lilly/Novartis); AM-97 (Armad/Kyowa Hakko); AM-132 (Armad); AM-138 (Armad/Kyowa Hakko); IDN-5005 (Indena); クリプトフィシン52 (LY-355703としても公知); ビチレブアミド(Vitilevuamide); ツブリシンA; カナデンソール; センタウレイジン(NSC-106969としても公知); T-138067 (Tularik、T-67、TL-138067およびTI-138067としても公知); COBRA-1 (Parker Hughes Institute、DDE-261およびWHI-261としても公知); H10 (Kansas State University); H16 (Kansas State University); オンコシジンA1 (BTO-956およびDIMEとしても公知); DDE-313 (Parker Hughes Institute); SPA-2 (Parker Hughes Institute); SPA-1 (Parker Hughes Institute、SPIKET-Pとしても公知); 3-IAABU (Cytoskeleton/Mt. Sinai School of Medicine、MF-569としても公知); ナルコシン(NSC-5366としても公知); ナスカピン(Nascapine)、D-24851 (Asta Medica)、A-105972 (Abbott); ヘミアステリン; 3-BAABU (Cytoskeleton/Mt. Sinai School of Medicine、MF-191としても公知); TMPN (Arizona State University); バナドセンアセチルアセトネート; T-138026 (Tularik); モンサトロール(Monsatrol); イナノシン(Inanocine)(NSC-698666としても公知); 3-IAABE (Cytoskeleton/Mt. Sinai School of Medicine); A-204197 (Abbott); T-607 (Tularik、T-900607としても公知); RPR-115781 (Aventis); エロイテロビン(デスメチルエロイテロビン、デスアセチルエロイテロビン、イソエロイテロビンAおよびZ-エロイテロビンなどの); ハリコンドリンB; D-64131 (Asta Medica); D-68144 (Asta Medica); ジアゾナミドA; A-293620 (Abbott); NPI-2350 (Nereus); TUB-245 (Aventis); A-259754 (Abbott); ジオゾスタチン(Diozostatin); (-)-フェニルアヒスチン(NSCL-96F037としても公知); D-68838 (Asta Medica); D-68836 (Asta Medica); ミオセベリンB; D-43411 (Zentaris、D-81862としても公知); A-289099 (Abbott); A-318315 (Abbott); HTI-286 (SPA-110としても公知、トリフルオロ酢酸塩)(Wyeth); D-82317 (Zentaris); D-82318 (Zentaris); SC-12983 (NCI); リン酸レスベラスタチンナトリウム(Resverastatin phosphate sodium); BPR-0Y-007 (National Health Research Institutes); SSR-250411 (Sanofi); コンブレタスタチンA4; ならびにその類似体および誘導体。
【0086】
「タキソール(登録商標)」とも呼ばれるパクリタキセルは、微小管形成を増強および安定化することで作用する周知の抗がん剤である。パクリタキセルの構造を図1に示す。その構造を図2に示すタキソテール(登録商標)を含む、パクリタキセルの多くの類似体が周知である。ドセタキソールは「タキソテール(登録商標)」とも呼ばれる。他のパクリタキセル類似体の構造を図3〜23に示す。これらの化合物は、共通する構造特徴として基礎タキサン骨格を有しており、微小管の安定化によりG2〜M期において細胞を停止させる能力を有することがわかった。したがって、図3〜23からは、種々の置換基が、生物活性に悪影響を与えることなく、タキサン骨格を装飾することができることが明らかである。また、パクリタキセル類似体のシクロヘキサン環のうち0個、一方または両方が、指示される位置に二重結合を有し得ることも明らかである。明確さのために、基礎タキサン骨格を下記構造式(VI)に示す。

【0087】
構造式(VI)で表されるタキサン骨格において、シクロヘキサン環から二重結合を省略した。図3〜23ならびに下記構造式(VII)および(VIII)に示すように、基礎タキサン骨格は、一方または両方のシクロヘキサン環中に0個または1個の二重結合を含み得る。パクリタキセル類似体の間で構造上の変動が一般的に生じる部位を示すために、構造式(VI)よりいくつかの原子をやはり省略した。例えば、単に酸素原子によるタキサン骨格上の置換は、ヒドロキシル、アシル、アルコキシ、または他の酸素を有する置換基がその部位に一般的に見られることを示す。タキサン骨格上のこれらおよび他の置換は、微小管形成を増強および安定化する能力を失うことなく行うことができる。したがって、「パクリタキセル類似体」という用語は、基礎タキサン骨格を有しかつ微小管形成を促進する化合物を意味するように本明細書で定義される。点滴時間を改善するために、および一部の患者において過敏症反応を引き起こすクレモフォールと共にこの薬物を送達する必要性を除去するために、パクリタキセル類似体をナノ粒子コロイド組成物として調剤することができる。ナノ粒子コロイド組成物として調剤されるパクリタキセル類似体の一例は、食塩水中で元に戻されるタンパク質安定化パクリタキセルのナノ粒子コロイド組成物である、アブラキサンである。
【0088】
典型的には、本明細書で使用するパクリタキセル類似体は、構造式(VII)または(VIII)で表される。

【0089】
R10は、低級アルキル基、置換低級アルキル基、フェニル基、置換フェニル基、-SR19、-NHR19または-OR19である。
【0090】
R11は、低級アルキル基、置換低級アルキル基、アリール基または置換アリール基である。
【0091】
R12は、-H、-OH、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルコキシ、置換低級アルコキシ、-O-C(O)-(低級アルキル)、-O-C(O)-(置換低級アルキル)、-O-CH2-O-(低級アルキル)、-S-CH2-O-(低級アルキル)である。
【0092】
R13は、-H、-CH3、またはR14と一緒になって-CH2-である。
【0093】
R14は、-H、-OH、低級アルコキシ、-O-C(O)-(低級アルキル)、置換低級アルコキシ、-O-C(O)-(置換低級アルキル)、-O-CH2-O-P(O)(OH)2、-O-CH2-O-(低級アルキル)、-O-CH2-S-(低級アルキル)、またはR20と一緒になって二重結合である。
【0094】
R15は、-H、低級アシル、低級アルキル、置換低級アルキル、アルコキシメチル、アルクチオメチル、-OC(O)-O(低級アルキル)、-OC(O)-O(置換低級アルキル)、-OC(O)-NH(低級アルキル)または-OC(O)-NH(置換低級アルキル)である。
【0095】
R16は、フェニルまたは置換フェニルである。
【0096】
R17は、-H、低級アシル、置換低級アシル、低級アルキル、置換低級アルキル、(低級アルコキシ)メチルまたは(低級アルキル)チオメチルである。
【0097】
R18は、-H、-CH3、または、R17ならびにR17およびR18が結合している炭素原子と一緒になって5員もしくは6員非芳香族複素環である。
【0098】
R19は、低級アルキル基、置換低級アルキル基、フェニル基、置換フェニル基である。
【0099】
R20は、-Hまたはハロゲンである。
【0100】
R21は、-H、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アシルまたは置換低級アシルである。
【0101】
好ましくは、構造式(VII)および(VIII)の変動要素は以下のように定義される: R10は、フェニル、tert-ブトキシ、-S-CH2-CH-(CH3)2、-S-CH(CH3)3、-S-(CH2)3CH3、-O-CH(CH3)3、-NH-CH(CH3)3、-CH=C(CH3)2またはパラ-クロロフェニルであり; R11は、フェニル、(CH3)2CHCH2-、2-フラニル、シクロプロピルまたはパラ-トルイルであり; R12は、-H、-OH、CH3CO-または-(CH2)2-N-モルホリノであり; R13は、メチルであり、あるいはR13およびR14は、一緒になって-CH2-となり;
R14は、-H、-CH2SCH3または-CH2-O-P(O)(OH)2であり; R15は、CH3CO-であり;
R16は、フェニルであり; R17は、-Hであり、あるいは、R17およびR18は、一緒になって-O-CO-O-となり;
R18は、-Hであり; R20は、-Hまたは-Fであり; R21は、-H、-C(O)-CHBr-(CH2)13-CH3もしくは-C(O)-(CH2)14-CH3; -C(O)-CH2-CH(OH)-COOH、-C(O)-CH2-O-C(O)-CH2CH(NH2)-CONH2、-C(O)-CH2-O-CH2CH2OCH3または-C(O)-O-C(O)-CH2CH3である。
【0102】
パクリタキセル類似体は、ポリアクリルアミドなどの薬学的に許容されるポリマーに結合していても、それから懸垂していてもよい。この種類のポリマーの一例を図24に示す。本明細書で使用する「パクリタキセル類似体」という用語はそのようなポリマーを含む。
【0103】
いくつかの態様では、パクリタキセル類似体は、WがO、SまたはNRである構造式IXで表されるタキサン骨格を有する。例えば図3〜23に示すように、構造式IXに示すタキサン骨格を有するパクリタキセル類似体は、タキサン骨格に結合する各種置換基を有し得るものであり、シクロヘキサン環のうち0個、一方または両方において二重結合を有し得る。

【0104】
各種のパクリタキセル類似体およびパクリタキセル製剤はHennenfent et al. (2006) Annals of Oncology 17:735-749; Gradishar (2006) Expert Opin. Pharmacother. 7(8):1041-53; Attard et al. (2006) Pathol Biol 54(2):72-84; Straubinger et al. (2005) Methods Enzymol. 391:97-117; Ten Tije et al. (2003) Clin Pharmacokinet. 42(7):665-85; およびNuijen et al. (2001) Invest New Drugs. 19(2):143-53に記載されており、その教示全体は参照により本明細書に組み入れられる。
【0105】
1つまたは複数の他の治療薬(例えばパクリタキセルまたはパクリタキセル類似体)との組み合わせでの併用療法において、本明細書に開示される化合物または薬学的組成物を、他の治療薬と同時または別々に投与することができる。投与の正確な詳細は、互いの存在下での2つの物質の薬物動態に依存するものであり、薬物動態が好適である場合において、2つの物質を実質的に同時に投与すること、および1つの物質を他の物質の投与の一定期間内(例えば24時間以内)に投与することを含み得る。好適な投薬レジメンの設計は、当業者には日常的である。特定の態様では、2つの物質を実質的に同時に、すなわち互いの数分以内に、または両方の物質を含む単一組成物として投与する。
【0106】
一態様では、本発明は、Hsp70-応答性障害を有する対象を処置する方法に関する。本方法は、有効量の本明細書に記載の化合物または薬学的組成物を対象に投与する段階を含む。
【0107】
本明細書で使用する「Hsp70」は、約70キロダルトンの質量を有する熱ショックタンパク質のファミリーの各メンバーを含み、これは構成型、同族、細胞特異的、グルコース調節、誘導型などの形態を含む。特異的Hsp70タンパク質の例としてはhsp70、hsp70hom; hsc70; Grp78/BiP; mt-hsp70/Grp75などが挙げられる。典型的には、開示される方法は誘導型Hsp70の発現を増加させる。機能的には、70-kDa HSP (HSP70)ファミリーは、細胞質、ミトコンドリアおよび小胞体においてタンパク質のフォールディング、輸送および集合を補助するシャペロンの群である。ヒトにおいて、Hsp70ファミリーは、関連性の高いタンパク質の群をコードする少なくとも11の遺伝子を包含する。例えばTavaria, et al., Cell Stress Chaperones, 1996;1(1):23-28; Todryk, et al., Immunology. 2003, 110(1): 1-9; およびGeorgopoulos and Welch, Annu Rev Cell Biol. 1993;9:601-634を参照。これらの文献の教示全体が参照により参照により本明細書に組み入れられる。
【0108】
本明細書で使用する「Hsp70応答性障害」とは、ストレス負荷細胞をHsp70発現の増加により処置可能である医学的状態のことである。そのような障害は、アルツハイマー病; ハンチントン病; パーキンソン病; 脊髄性/延髄性筋萎縮症(例えばケネディ病)、脊髄小脳失調障害および他の神経筋萎縮症; 家族性筋萎縮性側索硬化症; 虚血; 発作; 低体温; 高体温; 熱傷; アテローム性動脈硬化症; 放射線曝露; 緑内障; 毒素曝露; 機械的傷害; 炎症; 自己免疫疾患; 感染症(細菌、ウイルス、真菌または寄生虫); などを含むがそれに限定されない多種多様な細胞ストレッサーにより引き起こされ得る。
【0109】
いくつかの態様では、Hsp70応答性障害は神経変性障害である。本明細書で使用する神経変性障害は、大脳、脊髄および末梢神経細胞(例えば神経筋接合部における)などのニューロンの分解、より典型的には大脳および脊髄ニューロンの分解、または好ましい態様では、大脳ニューロンの分解を包含する。神経変性障害としては、アルツハイマー病; ハンチントン病; パーキンソン病; 脊髄性/延髄性筋萎縮症および他の神経筋萎縮症; ならびにスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)変異に関連する家族性筋萎縮性側索硬化症または他の疾患を挙げることができる。神経変性障害はまた、虚血、発作、熱ストレス、放射線、毒素曝露、感染症、傷害などにより引き起こされるニューロンの分解を含み得る。
【0110】
いくつかの態様では、Hsp70応答性障害は、アルツハイマー病; ハンチントン病; パーキンソン病; 海綿状脳症などの、タンパク質凝集/ミスフォールディング障害である。
【0111】
別の態様では、Hsp70応答性障害は、神経損傷を引き起こすかまたは引き起こし得る、処置または状態である。i) 神経損傷を引き起こすかもしくは引き起こし得る障害に罹患しているか、またはii) 神経損傷を引き起こすかもしくは引き起こし得る処置を受けている対象において、神経損傷を減少させるかまたは予防する(発症を阻害する)(すなわち、神経保護を行う)ために、本発明の方法で使用される化合物を使用することができる。一態様では、神経損傷を引き起こすかまたは引き起こし得る処置は、放射線療法である。別の態様では、処置は化学療法である。一局面では、化学療法は有糸分裂阻害剤(例えばビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセルまたはパクリタキセル類似体)の投与を含む。一態様では、化学療法はパクリタキセルの投与を含む。別の局面では、化学療法は白金誘導体(例えばシスプラチン、カルボプラチンまたはオキサリプラチン)の投与を含む。ある種の態様では、本発明の方法で使用される化合物は、神経損傷を引き起こすかまたは引き起こし得る処置との併用療法として同時に投与することができる。他の態様では、本発明の方法で使用される化合物は、神経損傷を引き起こすかまたは引き起こし得る処置の前または後に投与することができる。ある種の態様では、本発明の方法で使用される化合物は、神経損傷を引き起こすかまたは引き起こし得る処置の30分〜12時間、1時間〜6時間前または後に投与することができる。
【0112】
神経損傷は、放射線療法; 化学療法薬、例えばシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、イホスファミド、メトトレキサート、クラドリビン、アルトレタミン、フルダラビン、プロカルバジン、チオテパ、テニポシド、三酸化ヒ素、アレムツズマブ、カペシタビン、ダカルバジン、デニロイキンジフチトクス、インターフェロンα、リポソームダウノルビシン、トレチノイン、エトポシド/VP-16、シタラビン、ヘキサメチルメラミン、スラミン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、サリドマイドおよびボルテゾミブ; 心臓または血圧用薬、例えばアミオダロン、ヒドララジン、ジゴキシンおよびペルヘキシリン; 感染症と戦う薬物、例えばメトロニダゾール、ニトロフラントイン、サリドマイドおよびINH; 皮膚状態を処置する薬物、例えばダプソン; 抗痙攣薬、例えばフェニトイン; 抗アルコール薬、例えばジスルフィラム; HIV薬、例えばジドブジン、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビン、リトナビル、d4T、ddC、ddlおよびアンプレナビル; コレステロール薬、例えばロバスタチン、プラバスタチン、インダパミド、シンバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチンおよびゲムフィブロジル; 抗リウマチ薬、例えばクロロキン、コルヒチン、有機金およびペニシラミン; 亜酸化窒素; リチウム; ならびに麦角を含むがそれに限定されない、いくつかの処置により引き起こされ得る。
【0113】
いくつかの態様では、Hsp70応答性障害は虚血である。虚血は、酸素欠乏、グルコース欠乏、再灌流時の酸化ストレス、および/またはグルタミン酸毒性を含む、複数の経路を通じて組織を損傷し得る。虚血は、内因性状態(例えば脳卒中、心発作など)、偶発的な機械的傷害、外科的傷害(例えば移植臓器に対する再灌流ストレス)などにより生じ得る。あるいは、虚血により損傷され得る組織としては、ニューロン、心筋、肝組織、骨格筋、腎組織、肺組織、膵組織などが挙げられる。好ましい一態様では、Hsp70応答性障害は脳虚血または脊髄虚血である。別の好ましい態様では、Hsp70応答性障害は心虚血である。
【0114】
各種態様では、Hsp70応答性障害は発作、例えばてんかん発作、傷害誘発性発作、化学誘発性発作などである。
【0115】
いくつかの態様では、Hsp70応答性障害は熱ストレスによる。熱ストレスとしては高体温(例えば発熱、熱中症、熱傷などによる)および低体温が挙げられる。好ましい態様では、障害は高体温である。別の好ましい態様では、Hsp70応答性障害は熱傷である。
【0116】
好ましい態様では、Hsp70応答性障害はアテローム性動脈硬化症である。
【0117】
各種態様では、Hsp70応答性障害は、例えば可視光、紫外線、マイクロ波、宇宙線、α線、β線、γ線、X線などによる放射線損傷である。例えば、この損傷は、がんを放射線療法で処置される対象における非がん性組織に対する放射線損傷である可能性がある。好ましい態様では、Hsp70応答性障害は、可視光または紫外線からの放射線損傷である。
【0118】
各種態様では、Hsp70応答性障害は、機械的傷害、例えば手術、事故、ある種の疾患状態(例えば緑内障における圧損傷)などによる外傷である。好ましい態様では、Hsp70応答性障害は脳外傷または脊髄外傷である。別の好ましい態様では、Hsp70応答性障害は緑内障(網膜神経節に対する圧損傷を導く)である。
【0119】
各種態様では、Hsp70応答性障害は毒素に対する曝露である。好ましい態様では、Hsp70応答性障害は、メタンフェタミン; 抗レトロウイルスHIV治療薬(例えばヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤); 重金属(例えば水銀、鉛、ヒ素、カドミウム、その化合物など)、アミノ酸類似体、化学酸化剤、エタノール、グルタメート、代謝阻害剤、抗生物質などより選択される神経毒に対する曝露である。
【0120】
本発明はまた、ナチュラルキラー細胞応答性障害を有する対象を処置する方法であって、有効量の本明細書に記載の化合物または組成物を対象に投与する段階を含む方法を提供する。
【0121】
本発明のある種の化合物はまた、ナチュラルキラー(NK)細胞活性を増加させる。本明細書で使用する「NK細胞応答性障害」とは、NK細胞活性の増加により改善される医学的状態のことである。例えば、NK細胞応答性障害を有する対象は、感染症またはその可能性が理由で、免疫系の増大を必要とすることがある。いくつかの態様では、そのような対象は、感染症を有する(あるいは、例えば病院内の、病原体が存在する感染性環境に曝露されていた)ことがあり、その症状は本明細書に開示される方法により軽減されることがある。例えば、処置を必要とする対象は、NK細胞を活性化する開示される方法がそれに対する処置となり得る、感染症(細菌、ウイルス、真菌または寄生虫(原生動物))を有することがある。
【0122】
いくつかの態様では、NK細胞応答性障害を有する対象は、免疫不全を有する。そのような対象、例えば、感染症に対する防御が不完全であるか、損傷しているかもしくはそうでなければ易感染性である対象、または感染性環境に晒されている対象などは、予防的治療の必要があるかまたはそれによる利益を享受し得る。例えば、対象は、例えば病院内の、病原体が存在する感染性環境にいることがあり; 開放創または熱傷を有することがあり; 遺伝性または後天性免疫不全症(例えば重症複合免疫不全症または「バブルボーイ」症候群、分類不能型免疫不全症候群、後天性免疫不全症候群(AIDS)など)を有することがあり; 身体状態、年齢、毒素曝露、薬効(例えば移植レシピエントにおける免疫抑制剤)または(例えば抗がん剤による)を理由とする抑制された免疫系を有することがある。
【0123】
いくつかの態様では、慢性疲労症候群(慢性疲労免疫機能不全症候群)またはエプスタイン・バーウイルス感染症、ウイルス後疲労症候群、移植後症候群(特に同種移植)または移植片対宿主病、抗がん剤または一酸化窒素合成酵素阻害剤などの薬剤に対する曝露、自然加齢、および重症複合免疫不全症、分類不能型免疫不全症候群などの各種免疫不全状態などの状態にある、低下または欠乏したNK細胞活性を有する対象において、NK細胞活性を増加させることができる。
【0124】
いくつかの態様では、NK細胞応答性障害を有する対象は、菌血症の処置を必要とする。菌血症とは、血流の細菌感染症の状態のことである。敗血症性ショックは、全身性炎症を伴う重大な限局性感染または菌血症性感染、言い換えれば、輸液療法に不応性の低灌流および低血圧を伴う敗血症を含む。敗血症、または全身性炎症反応症候群は、急性炎症を引き起こし得る感染症、膵炎、熱傷、外傷などの各種の重症状態を含む。典型的には、敗血症性ショックは、グラム陰性生物、ブドウ球菌または髄膜炎菌に関連している。敗血症性ショックは、低血圧を典型的には伴う急性循環不全、および多臓器不全を特徴とし得る。
【0125】
一過性菌血症は、手術創または外傷創により引き起こされ得る。グラム陰性菌血症は断続的かつ日和見性であり得る。それは健康な個人には作用を有し得ないが、衰弱性基礎疾患を有する、化学療法後の、および栄養不良条件下の、免疫無防備状態の患者においては深刻なほど重大であることがある。典型的には、この感染症は、肺内、尿生殖器(GU)もしくは胃腸(GI)管内、または軟部組織、例えば、褥瘡性潰瘍を有する患者の皮膚、心臓弁膜症の危険性がある患者およびそれを有する患者の口腔潰瘍、人工心臓弁、もしくは他の移植人工器官内に存在し得る。
【0126】
典型的には、グラム陰性菌血症は、臨床的に病気でかつ免疫無防備状態の患者において現れ得る。また、そのような患者では、血流感染症が好気性桿菌、嫌気性菌および真菌により引き起こされ得る。バクテロイデスは、特に女性において腹腔および骨盤感染性の合併症を導くことがある。一過性または持続性の菌血症は、心膜または大関節などの髄膜または漿膜腔の転移性感染を典型的に生じさせ得る。腸球菌、ブドウ球菌または真菌は、心内膜炎を導き得るが、グラム陰性菌血症ほど一般的ではない。ブドウ球菌性菌血症は、IV薬使用者に典型的であり得るものであり、グラム陽性細菌性心内膜炎の典型的な原因であり得る。
【0127】
易感染性の免疫系を有する患者、例えば、高齢AIDS患者、化学療法を経験した患者、熱傷患者、糖尿病性ケトアシドーシスを有する患者、および免疫抑制薬を服用中の移植患者の数の増加を部分的に理由として、全身性真菌感染症の発生率は、特にヒトにおいて著しい増加を経験した。ある研究は、入院中に感染した感染症による死亡の約40%が真菌症によることを発見した。例えば、その教示全体が参照により本明細書に組み入れられるSternberg et. al, Science, Vol. 266, (1994), pp.1632-1634を参照。
【0128】
各種態様では、NK細胞応答性障害を有する対象は、病原性皮膚糸状菌、病原性糸状菌および/または病原性非糸状菌、例えば酵母、などの真菌感染症などの処置を必要とすることがある。病原性皮膚糸状菌としては、例えばトリコフィトン属、白癬、ミクロスポルム属、エピデルモフィトン属などの種を挙げることができる。病原性糸状菌としては、例えばアスペルギルス属、ヒストプラズマ属、クリプトコッカス属、ミクロスポルム属などの属の種を挙げることができる。病原性非糸状菌、例えば酵母としては、例えばカンジダ属、マラセチア属、トリコスポロン属、ロドトルラ属、トルロプシス属、ブラストミセス属、パラコクシジオイデス属、コクシジオイデス属などの種を挙げることができる。各種態様では、アスペルギルス属またはトリコフィトン属の種による真菌感染症について、対象を処置することができる。トリコフィトン属の種としては、例えば毛瘡白癬菌(Trichophyton mentagrophytes)、紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)、シェーンライン白癬菌(Trichophyton schoenleinii)、断髪性白癬菌(Trichophyton tonsurans)、疣状白癬菌(Trichophyton verrucosum)および紫色白癬菌(Trichophyton violaceum)を挙げることができる。アスペルギルス属の種としては、例えばアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、黄色コウジ菌(Aspergillus flavus)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、アスペルギルス・アムステロダミ(Aspergillus amstelodami)、アスペルギルス・カンジダス(Aspergillus candidus)、アスペルギルス・カルネウス(Aspergillus carneus)、偽巣性コウジ菌(Aspergillus nidulans)、コウジカビ(A oryzae)、アスペルギルス・レストリクタス(Aspergillus restrictus)、アスペルギルス・シドウィ(Aspergillus sydowi)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、アスペルギルス・ウスタス(Aspergillus ustus)、アスペルギルス・ベジルコロル(Aspergillus versicolor)、アスペルギルス・セシェルス(Aspergillus caesiellus)、アスペルギルス・クラバタス(Aspergillus clavatus)、アスペルギルス・アベナセウス(Aspergillus avenaceus)およびアスペルギルス・デフレクタス(Aspergillus deflectus)を挙げることができる。いくつかの態様では、病原性皮膚糸状菌、例えばトリコフィトン属(例えば紅色白癬菌)、白癬、ミクロスポルム属もしくはエピデルモフィトン属; またはクリプトコッカス属(例えばクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans))、カンジダ属(例えばカンジダ・アルビカンス(Candida albicans))、パラコクシジオイデス属(例えばパラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis))もしくはコクシジオイデス属(例えばコクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis))に由来する真菌感染症について、対象を処置することができる。特定の態様では、紅色白癬菌、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、カンジダ・アルビカンス、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシスまたはコクシジオイデス・イミチスに由来する真菌感染症について、対象を処置することができる。
【0129】
したがって、各種態様では、対象は、トリコフィトン属、白癬、ミクロスポルム属、エピデルモフィトン属、アスペルギルス属、ヒストプラズマ属、クリプトコッカス属、ミクロスポルム属、カンジダ属、マラセチア属、トリコスポロン属、ロドトルラ属、トルロプシス属、ブラストミセス属、パラコクシジオイデス属およびコクシジオイデス属より選択される真菌が引き起こす感染症を有し得る。いくつかの態様では、対象は、トリコフィトン属、白癬、ミクロスポルム属、エピデルモフィトン属; クリプトコッカス属、カンジダ属、パラコクシジオイデス属およびコクシジオイデス属より選択される真菌が引き起こす感染症を有し得る。ある種の態様では、対象は、紅色白癬菌、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、カンジダ・アルビカンス、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシスおよびコクシジオイデス・イミチスより選択される真菌が引き起こす感染症を有し得る。
【0130】
各種態様では、NK細胞応答性障害を有する対象は、アロクロマチウム(Allochromatium)属、アシネトバクター属、バチルス属、カンピロバクター属、クラミジア属、クラミドフィラ属、クロストリジウム属、シトロバクター属、大腸菌属、エンテロバクター属、腸球菌属、フランシセラ属、ヘモフィルス属、ヘリコバクター属、クレブシエラ属、リステリア属、モラクセラ属、マイコバクテリウム属、ミクロコッカス属、ナイセリア属、プロテウス属、シュードモナス属、サルモネラ属、セラチア属、赤痢菌属、ステノトロホモナス属、スタフィロコッカス属、連鎖球菌属、シネココッカス属、ビブリオ属およびエルシニア属; またはペプト連鎖球菌属、ポルフィロモナス属、アクチノマイセス属、クロストリジウム属、バクテロイデス属、プレボテラ属、アナエロビオスピリルム属、フソバクテリウム属およびバイロフィラ属などの嫌気性菌属より選択される属の細菌が例えば引き起こす、細菌感染症の処置を必要とすることがある。いくつかの態様では、NK細胞応答性障害を有する対象は、アロクロマチウム・ビノスム(Allochromatium vinosum)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumanii)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)、クロストリジウム属菌(Clostridium spp.)、シトロバクター属菌(Citrobacter spp.)、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロバクター属菌(Enterobacter spp.)、フェカリス菌(Enterococcus faecalis)、フェシウム菌(Enterococcus faecium)、野兎病菌(Francisella tularensis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、クレブシエラ属菌(Klebsiella spp.)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、カタル球菌(Moraxella catarrhalis)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、サルモネラ属菌(Salmonella spp.)、セラチア属菌(Serratia spp.)、赤痢菌属菌(Shigella spp.)、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、黄色ブドウ球菌(Staphyloccocus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphyloccocus epidermidis)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)、ペスト菌(Yersina pestis)およびエンテロコリチカ菌(Yersina enterocolitica)など; またはペプトストレプトコッカス・アサッカロリチカス(Peptostreptococci asaccharolyticus)、ペプトストレプトコッカス・マグナス(Peptostreptococci magnus)、ペプトストレプトコッカス・ミクロス(Peptostreptococci micros)、ペプトストレプトコッカス・プレボッチイ(Peptostreptococci prevotii)、ポルフィロモナス・アサッカロリティカ(Porphyromonas asaccharolytica)、ポルフィロモナス・カノリス(Porphyromonas canoris)、ジンジバリス菌(Porphyromonas gingivalis)、ポルフィロモナス・マカカエ(Porphyromonas macaccae)、イスラエル放線菌(Actinomyces israelii)、アクチノマイセス・オドントリティカス(Actinomyces odontolyticus)、クロストリジウム・イノキューム(Clostridium innocuum)、クロストリジウム・クロストリディオフォルメ(Clostridium clostridioforme)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、バクテロイデス・テクタム(Bacteroides tectum)、バクテロイデス・ウレオリチカス(Bacteroides ureolyticus)、バクテロイデス・グラシリス(Bacteroides gracilis)(カンピロバクター・グラシリス(Campylobacter gracilis))、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、プレボテラ・ヘパリノリティカ(Prevotella heparinolytica)、プレボテラ・オリス-ブッカエ(Prevotella oris-buccae)、プレボテラ・ビビア(Prevotella bivia)、プレボテラ・メラニノゲニカ(Prevotella melaninogenica)、フソバクテリウム・ナビフォルメ(Fusobacterium naviforme)、フソバクテリウム・ネクロホラム(Fusobacterium necrophorum)、フソバクテリウム・バリウム(Fusobacterium varium)、フソバクテリウム・ウルセランス(Fusobacterium ulcerans)、フソバクテリウム・ルッシイ(Fusobacterium russii)、バイロフィラ・ワズワーシア(Bilophila wadsworthia)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi); 肉芽腫カリマトバクテリウム(Calymmatobacterium granulomatis)などに由来する細菌感染症の処置を必要とすることがある。
【0131】
本発明の化合物または薬学的組成物は、細胞内感染症を有する対象を処置するために特に有用であり得る。当技術分野では、NK細胞が細胞内感染症に対して特に有効であると一般に考えられている。細胞内感染症とは、感染性病原体の一部が対象の細胞内に存在する感染症のことである。
【0132】
例えば、細胞内感染症は、エーリキア属(例えば、エーリキア・センネツ(Ehrlichia sennetsu)、エーリキア・カニス(Ehrlichia canis)、エーリキア・シャフェンシス(Ehrlichia chaffeensis)、エーリキア・ファゴサイトフィラ(Ehrlichia phagocytophilia)などの、リンパ球および好中球中の小さな細胞質内封入体として現れ得る絶対細胞内細菌); リステリア属(例えばリステリア菌(Listeria monocytogenes)); レジオネラ属(例えば在郷軍人病菌(Legionella pneumophila)); リケッチア属(例えば発疹チフスリケッチア(Rickettsiae prowazekii)、発疹熱リケッチア(Rickettsiae typhi (Rickettsiae mooseri))、ロッキー山紅斑熱リケッチア(Rickettsiae rickettsii)、恙虫病リケッチア(Rickettsiae tsutsugamushi)、リケッチア・シビリカ(Rickettsiae sibirica); リケッチア・オーストラリス(Rickettsiae australis); リケッチア・コノリイ(Rickettsiae conorii); 痘瘡リケッチア(Rickettsiae akari); リケッチア・ブルネチイ(Rickettsiae burnetii)); クラミジア属(例えばオウム病クラミジア(Chlamydia psittaci); 肺炎クラミジア; トラコーマクラミジアなど); マイコバクテリウム属(結核菌; マイコバクテリウム・マリヌム(Mycobacterium marinum); マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(Mycobacterium Avium Complex); マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis); マイコバクテリウム・スクロフラセウム(Mycobacterium scrofulaceum); マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans); らい菌(Mycobacterium leprae)(ハンセン病、ハンセン菌)); ブルセラ属(例えばヤギ流産菌(Brucella melitensis); ウシ流産菌(Brucella abortus); ブタ流産菌(Brucella suis); イヌ流産菌(Brucella canis)); コクシエラ属(例えばQ熱コクシエラ(Coxiella burnetii)); などより選択される、1種または複数の細菌が引き起こし得る。したがって、いくつかの態様では、対象は、エーリキア属; リステリア属; レジオネラ属; リケッチア属; クラミジア属; マイコバクテリウム属; ブルセラ属; およびコクシエラ属より選択される細菌が引き起こす細胞内細菌感染症を有し得る。
【0133】
各種態様では、NK細胞応答性障害を有する対象は、1種または複数の上気道細菌に由来する細菌感染症の処置を必要とすることがある。上気道細菌の例としては、レジオネラ属、シュードモナス属などの属に属する細菌が挙げられる。いくつかの態様では、細菌は緑膿菌であり得る。特定の態様では、細菌は在郷軍人病菌(例えば血清型1、2、3、4、5、6、7、8などを含む)、レジオネラ・ダモフィイ(Legionella dumoffli)、レジオネラ・ロングビーチエ(Legionella longbeacheae)、レジオネラ・ミクダデイ(Legionella micdadei)、レジオネラ・オークリジェンシス(Legionella oakridgensis)、レジオネラ・フィーレイ(Legionella feelei)、レジオネラ・アニサ(Legionella anisa)、レジオネラ・セントヘレンシ(Legionella sainthelensi)、レジオネラ・ボゼマニイ(Legionella bozemanii)、レジオネラ・ゴルマニイ(Legionella gormanii)、レジオネラ・ワズワーシイ(Legionella wadsworthii)、レジオネラ・ジョルダニス(Legionella jordanis)またはレジオネラ・ゴルマニイであり得る。
【0134】
いくつかの態様では、NK細胞応答性障害を有する対象は、対象において慢性気管支炎の急性細菌性増悪(ABECB)を引き起こす細菌に由来する細菌感染症の処置を必要とすることがある。典型的には、ABECBは、肺炎球菌、インフルエンザ菌、パラインフルエンザ菌(Haemophilus parainfluenzae)またはカタル球菌が引き起こし得る。
【0135】
いくつかの態様では、NK細胞応答性障害を有する対象は、対象において市中肺炎(CAP)を引き起こす細菌に由来する細菌感染症の処置を必要とすることがある。典型的には、CAPは、肺炎球菌、インフルエンザ菌、カタル球菌、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)、肺炎クラミジアまたは肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)が引き起こし得る。特定の態様では、CAPは、薬剤耐性菌、例えば肺炎球菌の多剤耐性株が引き起こし得る。
【0136】
各種態様では、NK細胞応答性障害を有する対象は、肺炎球菌、パラインフルエンザ菌、カタル球菌、肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミジア、肺炎桿菌、黄色ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌、アシネトバクター・ルオフィイ(Acinetobacter lwoffi)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、在郷軍人病菌またはプロテウス・ブルガリスに由来する細菌感染症の処置を必要とすることがある。
【0137】
各種態様では、NK細胞応答性障害を有する対象は、上顎洞病原菌に由来する細菌感染症の処置を必要とすることがある。本明細書で使用する上顎洞病原菌とは、急性もしくは慢性上顎洞炎より単離される菌株、または例えば、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、ヘモフィルス属菌、カタル球菌、非発酵性グラム陰性桿菌の嫌気性菌株、髄膜炎菌またはβ-溶血性連鎖球菌の上顎洞単離物のことである。各種態様では、上顎洞病原菌として、急性または慢性上顎洞炎より単離される菌株; 黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、ヘモフィルス属菌、カタル球菌、非発酵性グラム陰性桿菌の嫌気性菌株、髄膜炎菌、β-溶血性連鎖球菌、インフルエンザ菌、腸内細菌科、非発酵性グラム陰性桿菌、肺炎球菌、化膿性連鎖球菌、メチシリン耐性スタフィロコッカス属菌、在郷軍人病菌、マイコプラズマ属菌およびクラミジア属菌、インフルエンザ菌、パラインフルエンザ菌、ペプト連鎖球菌属、バクテロイデス属菌ならびにバクテロイデス・ウレオリチカス(Bacteroides urealyticus)の上顎洞単離物を挙げることができる。
【0138】
各種態様では、NK細胞応答性障害を有する対象は、対象において尿路感染症(UTI)を引き起こす細菌感染症の処置を必要とすることがある。UTIの例としては、尿道炎、膀胱炎、前立腺炎、腎盂腎炎(急性、慢性および黄色肉芽腫性)、ならびに血行性UTI(例えば、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌などの毒性桿菌による菌血症に由来する)が挙げられる。典型的には、UTIは、グラム陰性好気性菌、例えば大腸菌属(例えば大腸菌)、クレブシエラ属、プロテウス属、エンテロバクター属、シュードモナス属およびセラチア属; グラム陰性嫌気性菌; グラム陽性菌、例えば腸球菌属(例えばフェカリス菌)およびスタフィロコッカス属菌(例えばスタフィロコッカス・サプロフィチカス(Staphylococcus saprophyticus))、黄色ブドウ球菌など); 結核菌; ならびに細菌性性行為感染症(例えばトラコーマクラミジア、淋菌など)が引き起こし得る。
【0139】
ある種の態様では、NK細胞応答性障害を有する対象は、性行為感染症を引き起こす微生物、例えば梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum); 膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis); カンジダ属(カンジダ・アルビカンス); 淋菌; トラコーマクラミジア; マイコプラズマ・ゲニタリウム(Mycoplasma genitalium)、ウレアプラズマ・ウレアリチカム(Ureaplasma urealyticum); 軟性下疳菌; 肉芽腫カリマトバクテリウム(Calymmatobacterium granulomatis)(旧称ドノーヴァ肉芽腫菌(Donovania granulomatis)); 単純ヘルペスウイルス(HSV-1もしくはHSV-2); ヒトパピローマウイルス[HPV]; ヒト免疫不全ウイルス(HIV); 各種細菌(赤痢菌属、カンピロバクター属もしくはサルモネラ属)、ウイルス(A型肝炎)または寄生虫(ジアルジア属もしくはアメーバ類、例えばエントアメーバ・ディスパー(Entamoeba dispar)(旧称赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)); などに由来する感染症の処置を必要とすることがある。
【0140】
したがって、各種態様では、NK細胞応答性障害を有する対象は、上気道細菌感染症、慢性気管支炎の急性細菌性増悪; 急性市中肺炎、上顎洞病原菌; 尿路感染症; または性行為感染症を生じさせる感染症の処置を必要とすることがある。
【0141】
本発明の化合物および薬学的組成物は、ウイルス感染症を有する対象を処置するために特に有効であり得る。したがって、各種態様では、NK細胞応答性障害を有する対象は、ピコルナウイルス(例えばポリオウイルス、ライノウイルス、ならびにある種のエコーウイルスおよびコクサッキーウイルス); パルボウイルス科(ヒトパルボウイルスB19); 肝炎、例えばヘパドナウイルス(B型肝炎); パポーバウイルス(JCウイルス); アデノウイルス(ヒトアデノウイルス); ヘルペスウイルス(例えばサイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス(単核球症)、単核球症様症候群、小児ばら疹、水痘帯状疱疹ウイルス(水疱)、帯状疱疹(Herpes Zoster)(帯状疱疹(Shingles))、単純ヘルペスウイルス(口腔ヘルペス、性器ヘルペス))、ポックスウイルス(天然痘); カリシウイルス(ノーウォークウイルス)、アルボウイルス(例えばトガウイルス(風疹ウイルス、デングウイルス)、フラビウイルス(黄熱病ウイルス)、ブニヤウイルス(カリフォルニア脳炎ウイルス)、レオウイルス(ロタウイルス)); コロナウイルス(コロナウイルス); レトロウイルス(ヒト免疫不全ウイルス1、ヒト免疫不全ウイルス2); ラブドウイルス(狂犬病ウイルス)、フィロウイルス(マールブルグウイルス、エボラウイルス、他の出血性ウイルス疾患); パラミクソウイルス(麻疹ウイルス、ムンプスウイルス); オルソミクソウイルス(インフルエンザウイルス); アレナウイルス(ラッサ熱); ヒトTリンパ球向性ウイルスI型およびII型(HTLV-I、HTLV II); ヒトパピローマウイルス[HPV]などのウイルスに由来する感染症の処置を必要とすることがある。したがって、各種態様では、対象は、ピコルナウイルス; パルボウイルス科; 肝炎ウイルス; パポーバウイルス; アデノウイルス; ヘルペスウイルス、ポックスウイルス; カリシウイルス; アルボウイルス; コロナウイルス; レトロウイルス; ラブドウイルス; パラミクソウイルス; オルソミクソウイルス; アレナウイルス; ヒトTリンパ球向性ウイルス; ヒトパピローマウイルス; およびヒト免疫不全ウイルスより選択されるウイルスが引き起こす感染症を有し得る。
【0142】
いくつかの態様では、NK細胞応答性障害を有する対象は、ヒト免疫不全ウイルス-1、ヒト免疫不全ウイルス-2、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、単核球症様症候群、小児ばら疹、水痘帯状疱疹ウイルス、帯状疱疹、単純ヘルペスウイルスまたは肝炎などの、ウイルスまたはその感染症に由来する感染症の処置を必要とすることがある。
【0143】
本方法は、寄生虫感染症を有する対象を処置するために特に有効であり得ると考えられる。したがって、各種態様では、NK細胞応答性障害を有する対象は、プラスモジウム属(例えば熱帯熱マラリア原虫(Plasmodia falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodia vivax)、卵形マラリア原虫(Plasmodia ovale)および四日熱マラリア原虫(Plasmodia malariae)、典型的にはハマダラカが伝染させる); リーシュマニア属(スナバエが伝染させ、絶対細胞内原虫が引き起こす、例えばドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、小児リーシュマニア(Leishmania infantum)、シャーガスリーシュマニア(Leishmania chagasi)、メキシコリーシュマニア(Leishmania mexicana)、アマゾンリーシュマニア(Leishmania amazonensis)、ベネズエラリーシュマニア(Leishmania venezuelensis)、熱帯リーシュマニア(Leishmania tropica); 森林型熱帯リーシュマニア(Leishmania major); エチオピアリーシュマニア(Leishmania aethiopica); ならびにビアンニア亜属のビアンニアブラジルリーシュマニア(Leishmania Viannia braziliensis)、ビアンニアギアナリーシュマニア(Leishmania Viannia guyanensis)、ビアンニアパナマリーシュマニア(Leishmania Viannia panamensis)およびビアンニアペルーリーシュマニア(Leishmania Viannia peruviana)); トリパノソーマ属(例えばガンビアトリパノソーマ(Trypanosoma brucei gambiense)およびローデシアトリパノソーマ(Trypanosoma brucei rhodesiense)が引き起こす睡眠病); ネグレリア属またはアカントアメーバ属のアメーバ; エントアメーバ属(赤痢アメーバおよびエントアメーバ・ディスパー)などの病原体; ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia); クリプトスポリジウム属; イソスポラ属; シクロスポラ属; 微胞子虫門; 回虫(Ascaris lumbricoides); 住血吸虫属(例えばビルハルツ住血吸虫(S. haematobium); マンソン住血吸虫(S. mansoni); 日本住血吸虫(S. japonicum); メコン住血吸虫(S. mekongi); インターカラタム住血吸虫(S. intercalatum))の住血吸虫による感染症; トキソプラズマ症(例えばトキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)); 梅毒トレポネーマ; 膣トリコモナス; などに由来する感染症の処置を必要とすることがある。
【0144】
いくつかの態様では、NK細胞応答性障害を有する対象は、トキソプラズマ原虫、ガンビアトリパノソーマ、ローデシアトリパノソーマ、ドノバンリーシュマニア、小児リーシュマニア、シャーガスリーシュマニア、メキシコリーシュマニア、アマゾンリーシュマニア、ベネズエラリーシュマニア、熱帯リーシュマニア; 森林型熱帯リーシュマニア; エチオピアリーシュマニア; およびビアンニア亜属のビアンニアブラジルリーシュマニア、ビアンニアギアナリーシュマニア、ビアンニアパナマリーシュマニア、ビアンニアペルーリーシュマニア、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫ならびに四日熱マラリア原虫より選択される原虫が引き起こす感染症を有し得る。
【0145】
前世紀に、死亡率の著しい減少を導く抗生物質が開発された。残念ながら、広く使用されることで、抗生物質耐性菌、例えばメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)およびペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)が発生した。一部の細菌は、ある範囲の抗生物質に耐性があり、例えば、結核菌の菌株は、イソニアジド、リファンピン、エタンブトール、ストレプトマイシン、エチオナミド、カナマイシンおよびリファブチンに耐性がある。耐性の他に、世界規模の移動により、比較的未知の細菌が、隔離された地域から新たな集団に広がった。さらに、生物兵器としての細菌の脅威が存在する。これらの細菌は、既存の抗生物質では容易に処理することができない。
【0146】
本発明の化合物または薬学的組成物は、薬剤耐性病原体、例えば、薬剤耐性菌、またはそれに対する利用可能な薬剤がない病原体、例えば多くのウイルスについて対象を処置するために特に有効であり得る。理論に拘束されることは望まないが、本発明の化合物がNK細胞活性を増加させることで作用し得るため、NK細胞は、病原体または感染細胞に対する化合物の任意の直接作用とは別に、感染性微生物または感染細胞を死滅させることができると考えられる。したがって、本発明の化合物は、典型的には細菌自体に直接作用し得る抗生物質などの典型的な抗感染薬とは別の、少なくとも1つの作用様式を有し得ると考えられる。
【0147】
薬剤耐性病原体は、少なくとも1つの、典型的には複数の薬剤に耐性を有し得るものであり、例えば、薬剤耐性菌は、ペニシリン、メチシリン、第二世代セファロスポリン(例えばセフロキシムなど)、マクロライド、テトラサイクリン、トリメトプリム/メトキサゾール、バンコマイシンなどの1つの抗生物質、または典型的には少なくとも2つの抗生物質に耐性を有し得る。例えば、いくつかの態様では、多剤耐性肺炎球菌(MDRSP、ペニシリン耐性肺炎球菌PRSPとして既知)、バンコマイシン耐性腸球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、ペニシリン耐性肺炎球菌、抗生物質耐性サルモネラ菌、耐性および多剤耐性淋菌(例えばテトラサイクリン、ペニシリン、フルオロキノロン、セファロスポリン、セフトリアキソン(ロセフィン)、セフィキシム(スプラックス(Suprax))、アジスロマイシンなどのうち1つ、2つまたはそれ以上に耐性がある)、ならびに耐性および多剤耐性結核菌(例えばイソニアジド、リファンピン、エタンブトール、ピラジナミド、アミノグリコシド、カプレオマイシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、ゲミフロキサシン、サイクロセリン、エチオナミド、パラ-アミノサリチル酸のうち1つ、2つまたはそれ以上に耐性がある)の菌株より選択される細菌について、対象を処置することができる。
【0148】
いくつかの態様では、免疫不全を有する対象において、NK細胞活性を増加させることができる。各種態様では、これは低下または欠乏したNK細胞活性によるものであり得る。いくつかの態様では、免疫不全は、任意の公知の免疫不全、さらにはNK細胞に直接影響しないものであり得る。理論に拘束されることは望まないが、NK細胞活性を増進することで、多くの免疫不全条件下での免疫機能を増強して、NK細胞活性に直接関係する局面とは別の免疫不全の局面を少なくとも部分的に「補う」ことができると考えられる。
【0149】
各種態様では、免疫不全障害として、感染症に対する感受性の増加を伴う障害、例えば、循環障害および全身障害(鎌状赤血球症、糖尿病、ネフローゼ、静脈瘤、先天性心臓欠陥); 閉塞性障害(尿管または尿道狭窄、気管支喘息、気管支拡張症、アレルギー性鼻炎、耳管閉塞); 外被欠損(湿疹、熱傷、頭蓋骨骨折、正中(midline)洞管、毛様体異常); 原発性免疫不全症(X連鎖無ガンマグロブリン血症、ディジョージ異常、慢性肉芽腫症、C3欠損症); 続発性免疫不全症(栄養不良、未熟児、リンパ腫、脾摘出術、尿毒症、免疫抑制療法、蛋白漏出性腸症、慢性ウイルス疾患); 異例の微生物学的要因(抗生物質過成長、耐性生物による慢性感染症、連続再感染(汚染水の供給、感染性接触、汚染された吸入療法用設備)); 異物、外傷(心室シャント、中心静脈カテーテル、人工心臓弁、尿路カテーテル、嚥下異物)、同種移植、移植片対宿主病、子宮機能不全(例えば子宮内膜症)などより選択される1つまたは複数の障害を挙げることができる。
【0150】
各種態様では、免疫不全障害として、例えば乳児一過性低ガンマグロブリン血症、選択的IgA欠損症、X連鎖無ガンマグロブリン血症(ブルートン無ガンマグロブリン血症; 先天性無ガンマグロブリン血症)、分類不能型免疫不全症(後天性無ガンマグロブリン血症)、高IgM免疫不全症、IgGサブクラス欠損症、慢性粘膜皮膚カンジダ症、複合免疫不全症、ウィスコット・アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症、X連鎖リンパ球増殖性症候群、高IgE症候群(ヨブ・バックリー(Job-Buckley)症候群)、慢性肉芽腫症、白血球接着不全症(MAC-1/LFA-1/CR3欠損症)などを挙げることができる。
【0151】
各種態様では、免疫不全障害として、原発性免疫不全障害、例えば、B細胞(抗体)欠損症(X連鎖無ガンマグロブリン血症; 高IgM(XL)を伴うIg欠損症; IgA欠損症); IgGサブクラス欠損症、正常なまたは上昇したIgによる抗体欠損症、胸腺腫を伴う免疫不全症、分類不能型免疫不全症、乳児一過性低ガンマグロブリン血症); T細胞(細胞)欠損症(主要T細胞欠損症: ディジョージ異常、慢性皮膚粘膜カンジダ症、Igによる複合免疫不全症(ネゼロフ症候群)、ヌクレオシドホスホリラーゼ欠損症(AR)、ナチュラルキラー細胞欠損症、特発性CD4リンパ球減少症、複合T細胞およびB細胞欠損症: 重症複合免疫不全症(ARまたはXL)、アデノシンデアミナーゼ欠損症(AR)、細網異形成症、裸リンパ球症候群、毛細血管拡張性運動失調症(AR)、ウィスコット・アルドリッチ症候群(XL)、短肢性低身長症、XLリンパ球増殖性症候群); 食作用障害(細胞運動の異常: 高グロブリン血症E症候群、白血球接着不全症1型(AR)、殺菌活性の異常: 慢性肉芽腫症(XLまたはAR)、好中球G6PD欠損症、ミエロペルオキシダーゼ欠損症(AR)、チェディアック・東症候群(AR)); 補体障害(補体成分の異常: C1q欠損症、制御タンパク質の異常: C1阻害剤欠損症(D1)、因子I (C3b不活化因子)欠損症(ACD)、因子H欠損症(ACD)、因子D欠損症(ACD)、プロパージン欠損症(XL)); などを挙げることができる。
【0152】
各種態様では、免疫不全障害として、続発性免疫不全障害、例えば、未熟および新生児(免疫系の未熟による生理的免疫不全); 遺伝性および代謝疾患(染色体異常(例えばダウン症)、尿毒症、糖尿病(すなわち、末梢循環および神経機能不全に関連する壊疽などの、糖尿病に由来する合併症)、栄養不良、ビタミンおよびミネラル欠乏症、蛋白漏出性腸症、ネフローゼ症候群、筋緊張性ジストロフィー、鎌状赤血球症); 免疫抑制剤(放射線、免疫抑制薬、副腎皮質ステロイド、抗リンパ球または抗胸腺細胞グロブリン、抗T細胞モノクローナル抗体); 感染性疾患(先天性風疹、ウイルス性発疹(例えば麻疹、水痘)、HIV感染症、サイトメガロウイルス感染症、伝染性単核球症、急性細菌性疾患、重症マイコバクテリア性疾患または真菌性疾患); 浸潤性および血液疾患(組織球増殖症、サルコイドーシス、ホジキン病およびリンパ腫、白血病、骨髄腫、無顆粒球症および再生不良性貧血); 手術および外傷(熱傷、脾摘出術、麻酔、創傷); ならびにその他(SLE、慢性活動性肝炎、慢性活動性肝炎、加齢、抗痙攣薬、移植片対宿主病); などより選択される1つまたは複数の状態を挙げることができる。
【0153】
ある種の態様では、NK細胞応答性障害を有する対象は、熱傷または創傷の処置を必要とすることがある。典型的には、そのような創傷または熱傷は、対象の免疫防御に著しい重荷となる重症の傷害である。例えば、いくつかの態様では、対象の身体の表面積の少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、75%またはそれ以上を覆う2度または3度熱傷について対象を処置する。また、いくつかの態様では、1つまたは複数の創傷、例えば、少なくとも約1cm2、2cm2、5cm2、10cm2、20cm2、50cm2もしくはそれ以上、または対象の身体の表面積の1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%もしくはそれ以上の開放創; あるいは、長さが合計で少なくとも1cm、2cm、3cm、4cm、5cm、7cm、10cm、20cm、25cm、50cmの、皮膚を貫通する1つもしくは複数の切開; 切断; などについて対象を処置する。
【0154】
各種態様では、NK細胞応答性障害を有する対象は、抗生物質耐性菌が引き起こす感染症を有し得る。いくつかの態様では、対象は、多剤耐性肺炎球菌、バンコマイシン耐性腸球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、ペニシリン耐性肺炎球菌、抗生物質耐性サルモネラ菌、耐性/多剤耐性淋菌および耐性/多剤耐性結核より選択される細菌が引き起こす感染症を有し得る。いくつかの態様では、対象は、ペニシリン、メチシリン、第二世代セファロスポリン、マクロライド、テトラサイクリン、トリメトプリム/メトキサゾール、バンコマイシン、テトラサイクリン、フルオロキノロン、セフトリアキソン、セフィキシム、アジスロマイシン、イソニアジド、リファンピン、エタンブトール、ピラジナミド、アミノグリコシド、カプレオマイシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、ゲミフロキサシン、サイクロセリン、エチオナミドおよびパラ-アミノサリチル酸より選択される少なくとも1つの抗生物質に耐性がある細菌感染症を有し得る。
【0155】
したがって、各種態様では、NK細胞応答性障害を有する対象は、免疫不全障害を有し得る。いくつかの態様では、対象は原発性免疫不全障害を有し得る。いくつかの態様では、対象は続発性免疫不全障害を有し得る。
【0156】
いくつかの態様では、免疫不全障害として、尿毒症、糖尿病(その感染性合併症)、栄養不良、ビタミンおよびミネラル欠乏症、蛋白漏出性腸症、ネフローゼ症候群、筋緊張性ジストロフィー、鎌状赤血球症; などを挙げることができる。
【0157】
いくつかの態様では、免疫不全障害は、免疫抑制剤、例えば放射線、免疫抑制薬、副腎皮質ステロイド、抗リンパ球または抗胸腺細胞グロブリン、抗T細胞モノクローナル抗体; などが引き起こし得るかまたは部分的に引き起こし得る。
【0158】
いくつかの態様では、免疫不全障害は、手術および外傷、例えば熱傷、脾摘出術、麻酔、創傷、埋め込み式医療機器; などが引き起こし得るかまたは部分的に引き起こし得る。
【0159】
いくつかの態様では、免疫不全障害として、慢性疲労症候群(慢性疲労免疫機能不全症候群); エプスタイン・バーウイルス感染症、ウイルス後疲労症候群、移植後症候群(移植片対宿主病)、一酸化窒素合成酵素阻害剤に対する曝露、加齢、重症複合免疫不全症、分類不能型免疫不全症候群などを挙げることができる。
【0160】
NK細胞活性を増加させることは、神経変性障害を含むがそれに限定されない障害を有する対象を処置するためにも有益である可能性がある。本明細書で使用する神経変性障害は、大脳、脊髄および末梢ニューロン(例えば神経筋接合部における)などのニューロンの分解、より典型的には大脳および脊髄ニューロンの分解を包含する。経変性障害としては、アルツハイマー病; ハンチントン病; パーキンソン病; 脊髄性/延髄性筋萎縮症(例えばケネディ病)、脊髄小脳失調障害および他の神経筋萎縮症; 家族性筋萎縮性側索硬化症; 虚血; 発作; 低体温; 高体温; 熱傷; アテローム性動脈硬化症; 放射線曝露; 緑内障; 毒素曝露; 機械的傷害; 炎症; てんかん発作、傷害誘発性発作、化学誘発性発作、またはスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)変異に関連する他の疾患; などを挙げることができる。神経変性障害はまた、虚血、発作、熱ストレス、放射線、毒素曝露、感染症、傷害などにより引き起こされるニューロンの分解を含み得る。虚血は、酸素欠乏、グルコース欠乏、再灌流時の酸化ストレス、および/またはグルタミン酸毒性を含む、複数の経路を通じて組織を損傷し得る。虚血は、内因性状態(例えば脳卒中、心発作など)、偶発的な機械的傷害、外科的傷害(例えば移植臓器に対する再灌流ストレス)などにより生じ得る。あるいは、虚血により損傷され得る組織としては、ニューロン、心筋、肝組織、骨格筋、腎組織、肺組織、膵組織などが挙げられる。
【0161】
NK細胞活性を増加させることが有益である可能性がある他の障害としては、熱ストレスによる障害(熱ストレスとしては高体温(例えば発熱、熱中症、熱傷などによる)および低体温が挙げられる); 例えば可視光、紫外線、マイクロ波、宇宙線、α線、β線、γ線、X線などによる放射線損傷(例えば、この損傷は、放射線療法によりがんを処置した対象における非がん性組織に対する放射線損傷である可能性がある); 機械的傷害、例えば手術、事故、ある種の疾患状態(例えば緑内障における圧損傷)などによる外傷; ならびに毒素に対する曝露、例えばメタンフェタミン; 抗レトロウイルスHIV治療薬(例えばヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤); 重金属(例えば水銀、鉛、ヒ素、カドミウム、その化合物など)、アミノ酸類似体、化学酸化剤、エタノール、グルタメート、代謝阻害剤、抗生物質などより選択される神経毒素に対する曝露が挙げられる。
【0162】
いくつかの態様では、本発明は、それを必要とする対象において血管新生を処置または阻害するための方法であって、有効量の本明細書に記載の化合物を対象に投与する段階を含む方法を提供する。本明細書で使用する「血管新生」という用語は、組織または器官において新たな血管を生成する基礎プロセスを意味する。血管新生は、以下を含むがそれに限定されない多くの疾患または状態に関係または関連している: がん; 眼新生血管疾患; 加齢黄斑変性; 糖尿病性網膜症、未熟児網膜症; 角膜移植後拒絶反応; 血管新生緑内障; 後水晶体線維増殖症; 流行性角結膜炎; ビタミンA欠乏症; コンタクトレンズ過剰装着; アトピー性角膜炎; 上輪部角膜炎; 翼状片乾性角膜炎; シェーグレン症候群; 酒さ性ざ瘡; 疣贅; 湿疹; フィレクテヌローシス(phylectenulosis); 梅毒; マイコバクテリア感染症; 脂質変性; 化学熱傷; 細菌性潰瘍; 真菌性潰瘍; 単純ヘルペス感染症; 帯状疱疹感染症; 原虫感染症; カポジ肉腫; モーレン潰瘍; テリエン周辺角膜変性; 周辺角質溶解; 関節リウマチ; 全身性狼瘡; 多発動脈炎; 外傷; ウェゲナーサルコイドーシス; 強膜炎; スティーブンス・ジョンソン病; 類天疱瘡; 放射状角膜切開術; 角膜移植後拒絶反応; 糖尿病性網膜症; 黄斑変性症; 鎌状赤血球貧血; サルコイド; 梅毒; 弾力線維性仮性黄色腫; パジェット病; 静脈閉塞症; 動脈閉塞症; 頸動脈閉塞性疾患; 慢性ぶどう膜炎/硝子体炎; マイコバクテリア感染症; ライム病; 全身性エリテマトーデス; 未熟児網膜症; イールズ病; ベーチェット病; 網膜炎または脈絡膜炎を引き起こす感染症; 推定眼ヒストプラスマ症; ベスト病; 近視; 視窩; シュタルガルト病; 毛様体扁平部炎; 慢性網膜剥離; 過粘稠度症候群; トキソプラズマ症; 外傷およびレーザー後合併症; ルベオーシス(隅角血管新生)に関連する疾患; 増殖性硝子体網膜症の全形態を含む血管結合組織または線維組織の異常増殖が引き起こす疾患; 関節リウマチ; 変形性関節症; 潰瘍性大腸炎; クローン病; バルトネラ症; アテローム性動脈硬化症; オスラー・ウェーバー・ランデュ病; 遺伝性出血性末梢血管拡張症; 肺血管腫症; 子癇前症; 子宮内膜症; 肝線維症および腎線維症; 発生異常(器官形成); 皮膚変色(例えば血管腫、焔状母斑または単純母斑); 創傷治癒; 肥厚性瘢痕、すなわちケロイド; 創傷肉芽形成; 血管接着; 猫ひっかき病(Rochele ninalia quintosa); 潰瘍(ピロリ菌); 角結膜炎; 歯肉炎; 歯周病; 歯肉腫; 肝炎; 扁桃炎; 肥満; 鼻炎; 喉頭炎; 気管炎; 気管支炎; 細気管支炎; 肺炎; 間質性肺線維症; 肺水腫; 神経皮膚炎; 甲状腺炎; 甲状腺肥大; 子宮内膜症; 糸球体腎炎; 胃炎; 炎症性骨および軟骨破壊; 血栓塞栓性疾患; ならびにバージャー病。抗血管新生は、実施例10および11において本明細書に記載の方法などの、当業者に公知の任意の方法により実証することができる。
【0163】
「対象」は、哺乳動物、好ましくはヒトであるが、獣医学的処置を必要とする動物、例えば同伴動物(例えばイヌ、ネコなど)、家畜(例えば雌ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)および実験動物(例えばラット、マウス、モルモットなど)でもあり得る。
【0164】
好適な薬学的に許容される担体または希釈剤は、本明細書に記載の化合物の生物活性を阻害しない不活性成分を含有し得る。薬学的に許容される担体または希釈剤は、生体適合性、すなわち無毒、非炎症性、非免疫原性であり、かつ対象への投与の時点で他の望ましくない反応を欠いているべきである。Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PAに記載の技術などの標準的な薬学調剤技術を使用することができる。投与すべき化合物の調剤は、選択される投与経路(例えば溶液、乳濁液、カプセル)に従って変動する。非経口投与用の好適な薬学的担体としては、例えば滅菌水、生理食塩水、静菌食塩水(約0.9% mg/mlベンジルアルコールを含有する食塩水)、リン酸緩衝食塩水、ハンクス液、乳酸リンゲル液などが挙げられる。組成物を(例えば硬ゼラチンまたはシクロデキストリンのコーティング中に)カプセル化するための方法は当技術分野で公知である(Baker, et al., "Controlled Release of Biological Active Agents", John Wiley and Sons, 1986)。
【0165】
「有効量」とは、化合物を対象に投与する際に有益な臨床成績が得られる、化合物の量のことである。例えば、がんを有する対象に本発明の化合物を投与する場合、「有益な臨床成績」は、処置の非存在下と比較しての、腫瘍量の減少、転移の減少、がんに関連する症状の重症度の減少、および/または対象の寿命の増加を含む。Hsp70応答性障害またはNK細胞応答性障害を有する対象に本発明の化合物を投与する場合、「有益な臨床成績」は、処置の非存在下と比較しての、障害に関連する症状の重症度もしくは数の減少、感染症の除去、または対象の寿命の増加を含む。
【0166】
対象に投与する化合物の正確な量は、疾患または状態の種類および重症度、ならびに、全般的な健康、年齢、性別、体重および薬剤耐性などの対象の特徴に依存する。それは、がんの程度、重症度および種類にも依存し得る。当業者は、これらおよび他の要因に応じて適切な投与量を決定することができるであろう。開示される化合物の有効量は、典型的には1日当たり約1mg/mm2〜1日当たり約10グラム/mm2、好ましくは1日当たり10mg/mm2〜約5グラム/mm2の範囲である。いくつかの態様では、開示される化合物の有効量は、対象または試料の重量1キログラム当たりの化合物のマイクログラム〜ミリグラム量(例えば約1μg/kg〜約500mg/kg、約500μg/kg〜約250mg/kg、約1mg/kg〜約100mg/kg、約10mg/kg〜約50mg/kgなど)を含む。がんの処置用に別の抗がん剤と同時投与する場合、第2の抗がん剤の「有効量」は、使用する薬剤の種類に依存する。好適な投与量は、承認された抗がん剤について公知であり、対象の状態、処置されるがんの種類、および使用される本発明の化合物に応じて、当業者が調整することができる。
【0167】
本明細書に開示される化合物および薬学的組成物は、カプセル剤、懸濁液剤もしくは錠剤での経口、または非経口投与を例えば含む、任意の好適な経路で投与される。非経口投与としては、筋肉内注射、静脈内注射、皮下注射または腹腔内注射などによる全身投与を例えば挙げることができる。処置されるがんの種類に応じて、本明細書に開示される化合物および薬学的組成物を、経口投与(例えば食事)、局所投与、吸入投与(例えば気管支内、鼻腔内、経口吸入もしくは点鼻薬)、または直腸投与することもできる。経口投与および非経口投与が好ましい投与様式である。
【0168】
本発明を以下の実施例により説明するが、これらの実施例は限定的であるようには決して意図されていない。
【実施例】
【0169】
例示
実施例1:化合物の合成
化合物1の合成

ビス[チオヒドラジドアミド] A (800mg、2.0mmol)のEtOH (10.0mL)溶液に、塩化銅(II) (277mg、2.0mmol)を加えた。混合物を室温で20分間攪拌した。水を加えた。固体を濾取した。固体を塩化メチレン中に取り込んだ。得られた溶液を水(2X)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、濃縮して粗固体を得た。固体をアセトンで洗浄して純粋な化合物1 (600mg)を得た。アセトニトリルからの再結晶により単結晶固体を得ることができる。MS (ESI) [M+H+]: 462. 融点: 198〜202℃(分解). C19H18CuN4O2S2の分析計算値: C, 49.39; H, 3.93; N, 12.13; 実測値: C, 49.36; H, 3.68; N, 11.92.
【0170】

50%熱楕円体を示す化合物1のORTEP図
【0171】
化合物1のオームストロング単位での結合距離の表

括弧内の数字は最下位の桁の推定標準偏差である。
【0172】
化合物1の度単位での結合角の表

括弧内の数字は最下位の桁の推定標準偏差である。
【0173】
化合物2の合成

化合物1の調製についての記載と同様にして、ビス[チオヒドラジドアミド] Aおよび塩化ニッケル(II)六水和物を使用して、化合物2を調製した。MS (ESI) [M+H+]: 457. 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 7.58-7.44 (m, 10H), 3.61 (s, 6H), 3.59 (s, 2H).
【0174】
化合物3の合成

化合物1の調製についての記載と同様にして、化合物3aを使用して化合物3を調製した。MS (ESI) [M+H+]: 470
【0175】
化合物4の合成

化合物1の調製についての記載と同様にして、化合物4aを使用して化合物4を調製した。MS (ESI) [M+H+]: 492
【0176】
化合物5の合成

化合物1の調製についての記載と同様にして、化合物5aを使用して化合物5を調製した。MS (ESI) [M+H+]: 442
【0177】
化合物6の合成

化合物1の調製についての記載と同様にして、化合物6aを使用して化合物6を調製した。MS (ESI) [M+H+]: 477
【0178】
化合物7の合成

化合物1の調製についての記載と同様にして、化合物7aを使用して化合物7を調製した。MS (ESI) [M+H+]: 366
【0179】
実施例2:本発明の化合物の生物活性
10%ウシ胎仔血清を補充したダルベッコ最小必須培地(DMEM) 100μl中に、M14黒色腫細胞を、96ウェルプレートの1ウェル当たり細胞50,000個で播種した。細胞を5% CO2-95%空気下、37℃で培養した。16時間のインキュベーション後、試験化合物を細胞培養液に加えた。最初に化合物を、100%ジメチルスルホキシド(DMSO)中に、アッセイに実際に使用する終濃度の400倍に希釈した。次に、DMSO溶液を培地で20倍希釈し、最後にさらに20倍希釈してアッセイウェルに加えた。アッセイ培地は、指示された濃度を有する試験化合物と0.25% DMSOとを含んでいた。試験化合物と共に48時間インキュベートした後の最後の15分において、CCK8アッセイ(the Technical Manual for Cell Counting Kit-8, Product #CK04-11, CK04-13 and CK04-20, Dojindo Molecular Technologies, Inc. MD; Tantular, I.S. et al. Tropical Medicine and International Health, 8(6), 569-574, 2003に記載の)を用いて、細胞生存率を測定した。図25に示すように、化合物1〜7のデータを化合物Aのそれと比較する。図の各棒線は、媒体(0.25% DMSO)対照に対する平均阻害パーセントを表す(n=4)。誤差棒線は標準偏差を示す。化合物1〜7のIC50値を表1に列挙する。

【0180】
実施例3〜7
熱ショックタンパク質(Hsp)を、種々のストレス条件下で誘導し、他のタンパク質に結合させてそれらの変性を防止する。Hspは細胞をアポトーシス死より保護することができる。Hsp70の産生を誘導する薬剤は、広範な侵襲に対する保護活性を有し得るものであり、神経障害において特別な有用性を有し得る。本発明のHsp70誘導化合物の神経保護活性を、種々の動物神経疾患モデルにおいて評価することができる。具体的には、脳卒中、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、パーキンソン病およびアルツハイマー病の動物モデルが、有効性の試験に適切な設定である。いくつかの例示的動物モデルを以下に示す。
【0181】
実施例3:脳虚血(脳卒中)
本発明のHsp70誘導化合物を用いる、開示される処置の利点を、脳卒中のげっ歯類モデルにおいて評価することができる。例えばLongaら(Longa, E.Z., Weinstein, P.R., Carlson, S., and Cummins, R. (1989) Reversible middle cerebral artery occlusion without craniectomy in rats. Stroke 20:84-91)に記載の脳卒中モデルを利用することができる。
【0182】
ラットをケタミンで麻酔した後、頭蓋外血管閉塞により梗塞を誘導する。4-0ナイロン腔内縫合を、頸部内頸動脈内に配置し、頭蓋内に進めて中大脳動脈への血流を遮断する。外頸動脈のすべての分岐部および内頸動脈のすべての頭蓋外分岐部を妨害することで、側副血行を減少させる。梗塞の誘導の直前または直後に、本発明の化合物を投薬することができる。用量は例えば、任意の慣習的な投与様式、例えば経口または静脈内で週1回、週3回または毎日投与される、10〜100mg/kg体重であり得る。神経脱落、死亡率、肉眼病理(梗塞のサイズ)および組織化学的染色を分析することで、化合物の有効性を評価することができる。これは非常に急性のモデルであり、かつ梗塞の3日後までに死亡がしばしば観察されるため、モデリングは薬剤の単回投与のみからなることがある。
【0183】
実施例4:家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)
ALSの処置における本発明の化合物の有効性を、SOD1遺伝子導入マウスモデルを使用してモデリングすることができる(Gurney, M.E., Pu, H., Chiu, A.Y., Dal Canto, M.C., Polchow, C.Y., Alexander, D.D., Caliendo, J., Hentati, A., Kwon, Y.W., and Deng, H.X. (1994) Motor neuron degeneration in mice that express a human CuZn superoxide dismutase mutation. Science 264:1772-1775)。ヒトCuZnスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の変異は、家族性ALSを有する患者にみられる。アミノ酸93でのグリシンからアラニンへの置換を含むヒトSOD遺伝子の発現は、遺伝子導入マウスにおける運動ニューロン疾患を導く。脊髄からの運動ニューロン喪失の結果として、マウスは麻痺し、5〜6月齢までに死亡する。
【0184】
本発明のHsp70誘導化合物の有効性を試験するために、SOD1変異(SOD1G93A)を有する遺伝子導入マウスを化合物で処置し、疾患に対する作用をモニタリングする。症状は、これらの動物において2.5〜3月齢で臨床的に明らかになる。この時点で化合物の投薬を開始することができる。用量は例えば、経口または静脈内経路で週1回または週3回投与される、10〜100mg/kg体重であり得る。エンドポイントとしては、運動機能の機能障害、および組織学的変化が挙げられる。後者のエンドポイントとしては、運動ニューロンの変性と、脊髄運動ニューロン中の神経フィラメントに富む封入体の出現とを評価する、脳および脊髄の病理組織学が挙げられる。長期投与を行う場合、マウス生存に対する影響を評価することができる。
【0185】
実施例5:ハンチントン病(HD)
HDの遺伝子導入マウスモデルが存在し、この疾患設定における有効性に関する本発明のHsp70誘導化合物の試験を可能にする(Mangiarini, L., Sathasivam, K., Seller, M., Cozens, B., Harper, A., Hetherington, C., Lawton, M., Trottier, Y., Lehrach, H., Davies, S.W., and Bates, G.P. (1996) Exon 1 of the HD gene with an expanded CAG repeat is sufficient to cause a progressive neurological phenotype in transgenic mice. Cell 87:493-506; Carter, R.J., Lione, L.A., Humby, T., Mangiarini, L., Mahal, A., Bates, G.P., Dunnett, S.B., and Morton, A.J. (1999) Characterization of progressive motor deficits in mice transgenic for the human Huntington's disease mutation. J. Neuroscience 19:3248-3257)。HDは、CAG/ポリグルタミンの反復伸長が引き起こす。これらの遺伝子導入マウス(R6/2遺伝子導入)は、(CAG)115〜(CAG)150反復伸長を有するヒトHD遺伝子の5'末端を有する。マウスは、異常かつ不随意の運動、振戦およびてんかん発作を含む、HDと同様の進行性神経病理を示す。
【0186】
これらの遺伝子導入マウスは、約8週齢で顕性の挙動変化を示す。5〜6週齢という早期では、運動技能のより微妙な欠損を示す。本発明のHsp70誘導化合物は、様々な時点(例えば5〜6週齢)で開始する体重1kg当たり10〜100mgの用量での静脈内または経口投与により投与することができる。複数の異なる投薬スケジュール(例えば週1回対週3回)で化合物を与えることができる。水泳タンク、ビームウォーキング、ロータロッド装置およびフットプリント試験などの1つまたは複数のげっ歯類運動試験(Carter, et al., 1999参照)を行うことで、HDマウスにおいて神経機能の喪失を防ぐ上での化合物の活性を評価することができる。
【0187】
実施例6:パーキンソン病(PD)
疾患が化学的処理により誘導される、PDの2つの広く使用されるモデルが存在する。これらは6-OHDA (Zigmond, M.J. and Stricker, E.M. (1984) Parkinson's disease: studies with an animal model. Life Sci. 35:5-18; Sauer, H. and Oertel, W.H. (1994) Progressive degeneration of nigrostriatal dopamine neurons following intrastriatal terminal lesions with 6-hydroxydopamine: a combined retrograde tracing and immunocytochemical study in the rat. Neuroscience 59:401-415)およびMPTP (Langston, J.W., Forno, L.S., Rebert, C.S., and Irwin, I. (1984) Selective nigral toxicity after systemic administration of 1-methyl-4-phenyl-1,2,5,6-tetrahydropyrine (MPTP) in the squirrel monkey. Brain Res. 292:390-4)モデルである。6-OHDAを使用する本発明のHsp70誘導化合物の試験の一例を記載する。
【0188】
PDの部位である黒質内のニューロンの可視化を容易にするために、脳内の線条体への定位注射により、若い成体雄ラットにフルオロゴールド(FG)を注射する。麻酔下で、定位注射(十字縫合より1mm前側、3mm外側、および硬膜より両線条体中に4.5mm腹側)により、FGの4%溶液0.2μlを投与する。FG注射の1週間後、ラットは、脳の一側の線条体中への6-OHDA (食塩水4μlに溶解した20μg; Sigma)の定位注射を、FG注射と同一の座標において受ける。本発明のHsp70誘導化合物を、体重1kg当たり10〜100mgの用量での静脈内または経口投与により投与することができる。6-OHDA注射の時点、または6-OHDA処理に続くある時点(例えば2〜4週間)に化合物を与えることができる。6-OHDA注射の8週間および16週間後にラットを屠殺する。このモデルのエンドポイントは、1) 古典的な神経学的読み取りを使用する回転(旋回)挙動の評価による、生存中に様々な時点でモニタリングされる挙動変化であり、2) 屠殺後に脳を除去し、クリオスタットを用いて薄切片を作製し、Zigmond and Stricker (1984)に記載のように免疫組織化学的検査を行う。本発明のHsp70誘導化合物の有効性を、旋回挙動の低下、および黒質ドーパミン作動性ニューロンの喪失の減少により実証する。
【0189】
実施例7:アルツハイマー病(AD)
ADのいくつかの遺伝子導入マウスモデルが存在する。ADでの薬剤の有効性を試験するために広く使用されるそのような1つのモデルは、Holcombらが記述した(Holcomb, L., Gordon, M.N., McGowan, E., Yu, X., Benkovic, S., Jantzen, P., Wright, K., Saad, I., Mueller, R., Morgan, D., Sanders, S., Zehr, C., O'Campo, K., Hardy, J., Prada, C.M., Eckman, C., Younkin, S., Hsiao, K., and Duff, K. (1998) Accelerated Alzheimer-type phenotype in transgenic mice carrying both mutant amyloid precursor protein and presenilin 1 transgenes. Nature Medicine 4:97-100)。このモデルは、ADに関連する2つの異なる遺伝子を含む。1つはアミロイド前駆体タンパク質(APP)の変異である。変異体APP (K670N、M671L)遺伝子導入系Tg2576は、若年齢では上昇したアミロイドβタンパク質レベルを有し、後には細胞外AD-Aβ型沈着物を脳内に発生させる。もう1つの遺伝子は変異プレセニリン-1 (PS1)遺伝子である。Tg2576とPS1変異体PS1M146L遺伝子導入系との間の交雑種による二重遺伝子導入後代は、それらの単独遺伝子導入Tg2576マウスよりもはるかに早期に、多数の原線維Aβ沈着物を大脳皮質および海馬内に発生させる。
【0190】
本発明のHsp70誘導化合物を様々な時点でマウスに投薬することができる。投薬開始時のマウスの年齢を変動させることができる。例えば、処置開始時点は、脳内沈着物が最初に検出可能な時点である3月齢であり得る。用量は例えば、経口または静脈内経路で週1回または週3回投与される、10〜100mg/kg体重であり得る。脳内のAD型沈着物を測定しかつ迷路試験においてマウスの機能を評価することで、薬剤処置の作用を評価することができる。
【0191】
実施例8:熱ショックタンパク質70 (Hsp70)の測定
血漿Hsp70を、サンドイッチELISAキット(カナダ・ブリティッシュコロンビア州ビクトリア、Stressgen Bioreagents)により、室内用に修正したプロトコールに従って測定することができる。要するに、血漿検体中のHsp70、および段階濃度のHsp70標準物質を捕捉して、抗Hsp70抗体をコーティングした96ウェルプレート上に置く。次に、捕捉したHsp70をビオチン化抗Hsp70抗体で検出した後、ユーロピウム抱合ストレプトアビジンと共にインキュベートする。各インキュベーション後、未結合材料を洗浄により除去する。最後に、抗体-Hsp70複合体を、ユーロピウムの時間分解蛍光光度法により測定する。Hsp70の濃度を標準曲線より算出する。
【0192】
実施例9:ナチュラルキラー細胞の細胞毒性活性の測定
以下の手順を使用して、対象におけるNK細胞活性をアッセイすることができる。この手順はKantakamalakul W, Jaroenpool J, Pattanapanyasat K. A novel enhanced green fluorescent protein (EGFP)-K562 flow cytometric method for measuring natural killer (NK) cell cytotoxic activity. J Immunol Methods. 2003 Jan 15; 272:189-197を適応させたものであり、その教示全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0193】
材料および方法:
ヒト赤白血病細胞系K562を、American Type Culture Collection (CCL-243、バージニア州マナサス、American Type Culture Collection)より得て、10%熱不活化ウシ胎仔血清(Gibco)、2mM L-グルタミン、100μg/mlストレプトマイシンおよび100IU/mlペニシリンを補充したRPMI-1640培地(カタログ番号11875-093、カリフォルニア州カールスバッド、Gibco Invitrogen Corp)中にて、37℃および5% CO2で培養する。緑色蛍光タンパク質(eGFP)をコードするレトロウイルスベクターをK562細胞に形質導入する。抗生物質G418を用いて安定な細胞系を選択する。約99.6%のG418耐性細胞が、薄切後にeGFP陽性である。
【0194】
対象の末梢血単核細胞(PBMC)を、臨床研究施設で調製し、ヘパリンナトリウム付きのBD Vacutainer細胞調製管(製品番号: 362753、ニュージャージー州フランクリンレイクス、Becton Dickinson)中で受け取る。
【0195】
濃度1X106細胞/mLで開始する2倍段階希釈のエフェクター細胞(患者のPBMC) 800μlを、4本の個々のポリスチレン12x75mm管に入れる。対数期成長の標的細胞(K562/eGFP)を成長培地(RPMI-1640)で濃度1x105細胞/mLに調整した後、標的100μLを管内に加えて、エフェクター/標的(E/T)比80:1、40:1、20:1、10:1を得る。単独のエフェクター細胞および単独の標的細胞を対照として使用する。すべての管を37℃および5% CO2で約3.5時間インキュベートする。エフェクターおよび標的対照管を含む各管に、濃度1mg/mLのヨウ化プロピジウム(PI) 10ミリリットルを加えた後、室温で15分間インキュベートする。
【0196】
FACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson)を用いて細胞毒性活性を分析する。前方および側方散乱(FSC/SSC)シグナルの線形増幅、ならびに緑色および赤色蛍光でのeGFPおよびPI発光の対数増幅が得られる。取得においてゲーティングがない試料管当たり1万の事象を分析用に収集する。eGFP対PIの2パラメータドットプロットのデータ解析を、CELLQuest (Becton Dickinson Biosciences)ソフトウェアを使用して行い、標的の生細胞および死細胞を計数する。前方光散乱の閾値を設定することで細胞片および死細胞を除外する。
【0197】
実施例10:HUVEC細胞遊走の阻害
本発明の化合物が内皮細胞機能に影響するか否かを検査するために、本発明の化合物の存在下でインビトロヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)遊走アッセイを行う。HUVEC細胞(継代数4)を12ウェルプレート上で培養し、6〜7% CO2が供給される倒立顕微鏡上の生細胞イメージングシステムを用いて微速度イメージングを行う。温度を37℃に保持する。30分ごとに2X対物レンズを使用して最大106時間、または60秒ごとに20X対物レンズを使用して30分間、画像を撮影する。コンフルエントHUVEC培養物を同様に掻き取ってブランク領域を作製し、続いてHUVEC培地中で処理せずに15時間培養する。各ウェルについて微速度シーケンスとして画像形成される遊走領域を、遊走速度を標準化/補正する基礎として使用する。次に、異なる処理下での細胞の遊走を同時に画像形成して、各ウェルについて微速度画像シーケンスを生成する。遊走細胞が覆う領域を測定することで、微速度動画をさらに分析する。実験中、HUVEC細胞をVEGFおよび塩基性FGFの存在により活性化する。本発明の化合物(例えば100nMおよび1μM)は、ブランク領域へのHUVEC細胞の遊走を完全に遮断すると予測され、このことは、VEGFおよび塩基性FGFがインビトロで誘導する活性化HUVEC細胞の遊走に対する強力な阻害作用を本発明の化合物が有することを示している。
【0198】
上記処理中にHUVEC挙動を追跡することも可能である。本発明の化合物を用いる24時間の処理後にHUVEC細胞が収縮を始めると予測される。
【0199】
実施例11:HUVEC細胞の増強されたVE-カドヘリン接合部
抗VE-カドヘリン抗体を使用して免疫蛍光試験を行うことで、HUVEC細胞間のVE-カドヘリン接合部を検査する。HUVEC細胞を、DMSOまたは本発明の化合物(例えば10、100および1000nM)で24時間処理し、免疫染色用に固定する。DMSO濃度はすべての処理で1:100とする。免疫蛍光シグナルを増進するために、細胞を2つのポリクローナル抗ヒトVE-カドヘリンAbの混合物で染色した後、蛍光二次抗体の混合物で染色する。本発明の化合物を用いる場合、VE-カドヘリン染色は、DMSO処理培養物におけるそれに比べて、細胞-細胞接合区域では非常に強いが、非接触区域ではそうではないと予測される。本発明の化合物は、おそらくは接合部でのVE-カドヘリン分子の蓄積の誘導を通じて、活性化ヒト内皮細胞の細胞-細胞接合部の集合を増強すると予測される。この作用は、細胞の限定された運動性および内皮の浸透性の減少を生じさせ、したがって本発明の化合物の細胞遊走阻害および潜在的な抗血管新生作用に寄与する可能性がある。
【0200】
本発明をその例示的態様を参照して特に示しかつ説明したが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲より逸脱することなく形態および詳細の様々な変更を本発明において行うことができるということを、当業者は理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属カチオンと錯体を形成している、下記構造式で表されるビス[チオヒドラジドアミド]またはその脱プロトン化形態を含む、化合物:

式中、
R1〜R4は独立して、-H、置換されていてもよい脂肪族基、置換されていてもよいアリール基であり、あるいは、R1およびR3は、それらが結合している炭素原子および窒素原子と一緒になって、かつ/または、R2およびR4は、それらが結合している炭素原子および窒素原子と一緒になって、アリール基に縮合していてもよい非芳香族複素環を形成し;
Yは、置換もしくは非置換の直鎖ヒドロカルビル基の共有結合であり、あるいは、Yは、それが結合している両>C=Z基と一緒になって、置換もしくは非置換のアリール基となり;
R7およびR8は独立して、-H、置換されていてもよい脂肪族基、または置換されていてもよいアリール基であり; かつ
各Zは独立して、OまたはSである。
【請求項2】
50重量%を超えて純粋である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
90重量%を超えて純粋である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
遷移金属カチオンがNi2+、Cu2+、Co2+、Fe2+、Zn2+、Pt2+またはPd2+である、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
遷移金属カチオンがCu2+である、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
遷移金属カチオンに対するビス[チオヒドラジドアミド]またはその脱プロトン化形態のモル比が0.5以上および2.0以下である、請求項1〜6のいずれか一項記載の化合物。
【請求項7】
ビス[チオヒドラジドアミド]またはその脱プロトン化形態対遷移金属カチオンのモル比が1:1である、請求項8記載の化合物。
【請求項8】
下記構造式で表される、請求項9記載の化合物:

式中、R5およびR6は各々独立して、-H、脂肪族または置換脂肪族基であり、あるいは、R5は-Hであり、かつR6は置換されていてもよいアリール基であり、あるいは、R5およびR6は一緒になって、置換されていてもよいC2〜C6アルキレン基となる。
【請求項9】
R1およびR2が各々、置換されていてもよいフェニル基であり;
R3およびR4が各々、置換されていてもよいアルキル基であり; かつ
R5が-Hであり、かつR6が-H、アルキルまたは置換アルキル基である、
請求項8記載の化合物。
【請求項10】
R1およびR2が各々、置換されていてもよい脂肪族基であり; かつ
R3およびR4が各々、置換されていてもよい脂肪族基である、
請求項8記載の化合物。
【請求項11】
R1およびR2がいずれも、少なくとも1個のアルキル基で置換されていてもよいC3〜C8シクロアルキル基であり、
R3およびR4が各々、置換されていてもよいアルキル基であり; かつ
R5が-Hであり、かつR6が-H、アルキルまたは置換アルキル基である、
請求項10記載の化合物。
【請求項12】
R1およびR2がいずれもシクロプロピルまたは1-メチルシクロプロピルである、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
ビス[チオヒドラジドアミド]が、以下より選択される構造式で表される、請求項1〜12のいずれか一項記載の化合物:


【請求項14】
下記構造式で表される化合物:

式中、
Xは+2の電荷を有する遷移金属カチオンであり;
R1〜R4は独立して、-H、置換されていてもよい脂肪族基、置換されていてもよいアリール基であり、あるいは、R1およびR3は、それらが結合している炭素原子および窒素原子と一緒になって、かつ/または、R2およびR4は、それらが結合している炭素原子および窒素原子と一緒になって、アリール基に縮合していてもよい非芳香族複素環を形成し;
R5およびR6は各々独立して、-H、脂肪族または置換脂肪族基であり、あるいは、R5は-Hであり、かつR6は置換されていてもよいアリール基であり、あるいは、R5およびR6は一緒になって、置換されていてもよいC2〜C6アルキレン基となり; かつ
各Zは独立して、OまたはSである。
【請求項15】
50重量%を超えて純粋である、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
90重量%を超えて純粋である、請求項14記載の化合物。
【請求項17】
XがNi2+、Cu2+、Co2+、Fe2+、Zn2+、Pt2+またはPd2+である、請求項14〜16のいずれか一項記載の化合物。
【請求項18】
XがCu2+である、請求項14記載の化合物。
【請求項19】
XがNi2+である、請求項14記載の化合物。
【請求項20】
R1およびR2が各々、置換されていてもよいフェニル基であり;
R3およびR4が各々、置換されていてもよいアルキル基であり; かつ
R5が-Hであり、かつR6が-H、アルキルまたは置換アルキル基である、
請求項14記載の化合物。
【請求項21】
R1およびR2が各々、置換されていてもよい脂肪族基であり; かつ
R3およびR4が各々、置換されていてもよい脂肪族基である、
請求項14記載の化合物。
【請求項22】
R1およびR2がいずれも、少なくとも1個のアルキル基で置換されていてもよいC3〜C8シクロアルキル基であり、
R3およびR4が各々、置換されていてもよいアルキル基であり; かつ
R5が-Hであり、かつR6が-H、アルキルまたは置換アルキル基である、
請求項21記載の化合物。
【請求項23】
R1およびR2がいずれもシクロプロピルまたは1-メチルシクロプロピルである、請求項14記載の化合物。
【請求項24】
以下より選択される構造式で表される、請求項14〜23のいずれか一項記載の化合物:


【請求項25】
請求項1〜24のいずれか一項より選択される化合物と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項26】
がんを有する対象を処置する方法であって、有効量の請求項1〜24のいずれか一項記載の化合物または請求項25記載の薬学的組成物を対象に投与する段階を含む方法。
【請求項27】
さらなる抗がん剤を対象に投与する段階をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記さらなる抗がん剤が、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、ディスコデルモリド、エポチロンA、エポチロンB、エポチロンC、エポチロンD、エポチロンE、エポチロンF、エポチロンB N-オキシド、エポチロンA N-オキシド、16-アザ-エポチロンB、21-アミノエポチロンB、21-ヒドロキシエポチロンD、FR-182877、BSF-223651、AC-7739、AC-7700、フィジアノリド(Fijianolide)B、ラウリマリド、カリベオシド、カリベオリン、タッカロノリド、エロイテロビン、サルコジクチイン; ラウリマリド、ジクチオスタチン-1、ジャトロファンエステル、またはその類似体および誘導体からなる群より選択される微小管安定化剤である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
パクリタキセル類似体がドセタキソールである、請求項28記載の方法。
【請求項30】
がんが黒色腫である、請求項26〜29のいずれか一項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2012−506443(P2012−506443A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533295(P2011−533295)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/061480
【国際公開番号】WO2010/048284
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(504151848)シンタ ファーマシューティカルズ コーポレーション (72)
【Fターム(参考)】