説明

ビソプロロール含有貼付製剤

【課題】皮膚面に対して刺激性が少なく、製剤中でのビソプロロールの安定性に優れ、更に治療又は予防に有効な量のビソプロロールを生体内へ持続的に投与可能な貼付製剤を提供すること。
【解決手段】貼付製剤10は、支持体1と、該支持体1の片面に積層された粘着剤層2とを備えるものである。粘着剤層2は、ビソプロロール、ポリイソブチレン、タッキファイヤー、並びにポリイソブチレン及びタッキファイヤーと相溶可能な有機液状成分を含有することを特徴とする。これにより、皮膚接着性が良好で皮膚刺激性が少なく、しかも皮膚面から剥離除去した際の痛みや糊残りが抑制された貼付製剤を提供することができる。さらに、貼付製剤中のビソプロロールの安定性に優れ、治療又は予防に有効な量のビソプロロールを、皮膚面を通して生体内に持続的に投与することが可能な貼付製剤が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビソプロロールを皮膚面から体内に持続的に吸収させるための、ビソプロロール含有貼付製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
交感神経のβ受容体の高選択性拮抗薬であるビソプロロールは、本態性高血圧、狭心症、不整脈の改善に使用されており、そのフマル酸塩が錠剤として経口的に投与されている。
【0003】
一方、生体内へ薬物を投与して疾患治療又は予防を行うための製剤として、肝臓の初回通過効果による薬物代謝や各種副作用が防止でき、しかも薬物を長時間にわたって投与可能であることから経皮吸収型の製剤が近年注目されている。中でも、投与作業が容易で投与量を厳格に制御できることから、薬物を含有する粘着剤層を皮膚面に貼付する経皮吸収貼付製剤の開発が盛んに行われている。かかる貼付製剤に要求される特性としては、粘着剤層中からの薬物の放出性(経皮吸収性)、粘着剤層内に含有する薬物の経日安定性(薬物含有量の低下防止)、皮膚面への密着性(接着性)、皮膚面への糊残りをなくすための適度な凝集性(剥離除去時の糊残り防止)、皮膚に対する低刺激性(安全性)等が挙げられ、薬物の種類に応じて前述の要求特性を満たすように貼付製剤を開発する必要がある。
【0004】
経皮吸収貼付製剤として、例えば、特許文献1には、生理活性物質の経皮吸収促進を意図して、メントールメチルチオメチルエーテルを含有する貼付製剤が開示されており、生理活性物質の一例としてビソプロロールが挙げられている。また、特許文献2には、特定のゴムとポリアクリル酸の混合物に第三成分としてポリビニルピロリドンを混合する貼付製剤とすることで薬物の送達速度に悪影響を与えずに薬物溶解度を増大できることが報告されており、薬物としてビソプロロールが例示されている。これらの特許文献においては、薬物としてビソプロロールが例示されているに過ぎず、ビソプロロールと粘着剤自体との相互作用に関する検討が不十分でビソプロロールの投与を目的とした貼付製剤について実質的に検討されていない。さらに、特許文献3には、アクリル系粘着剤にビソプロロールを含有せしめた経皮吸収貼付製剤が提案されているが、薬物安定性や、薬物に起因する皮膚刺激性等について十分検討されているとは言い難く、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−29496号公報
【特許文献2】特表平09−511987号公報
【特許文献3】特開2003−313122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みなされたものであり、その解決しようとする課題は皮膚面に対して刺激性が少なく、製剤中でのビソプロロールの安定性に優れ、更に治療又は予防に有効な量のビソプロロールを生体内へ持続的に投与可能な貼付製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、貼付製剤の粘着剤層を特定成分を含む組成物で構成することにより、ビソプロロールの投与に適した貼付製剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)支持体の片面に、ビソプロロール、ポリイソブチレン、タッキファイヤー、並びにポリイソブチレン及びタッキファイヤーと相溶可能な有機液状成分を含有する粘着剤層を積層してなる、ビソプロロール含有貼付製剤。
(2)当該貼付製剤の貼付面積当たりに占めるビソプロロールの含有割合が0.1〜1mg/cmである、上記(1)記載のビソプロロール含有貼付製剤。
(3)粘着剤層の全重量に占めるビソプロロールの含有割合が0.5〜5重量%である、上記(1)記載のビソプロロール含有貼付製剤。
(4)粘着剤層の全重量に占める有機液状成分の含有割合が20〜40重量%である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のビソプロロール含有貼付製剤。
(5)有機液状成分として脂肪酸アルキルエステルと、所望により長鎖アルコールとを含む、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のビソプロロール含有貼付製剤。
(6)脂肪酸アルキルエステル(A)と長鎖アルコール(B)との配合割合が重量比(A:B)で1:0〜1:0.5である、上記(5)記載のビソプロロール含有貼付製剤。
(7)脂肪酸アルキルエステルがミリスチン酸イソプロピルである、上記(5)又は(6)記載のビソプロロール含有貼付製剤。
(8)ポリイソブチレンが分子量の異なる2種以上のポリイソブチレンを含む、上記(1)〜(7)のいずれかに記載のビソプロロール含有貼付製剤。
(9)ポリイソブチレンが第1のポリイソブチレンと、該第1のポリイソブチレンよりも分子量の低い第2のポリイソブチレンとから構成される、上記(1)〜(8)のいずれかに記載のビソプロロール含有貼付製剤。
(10)第1のポリイソブチレンの粘度平均分子量が1,800,000〜5,500,000であり、第2のポリイソブチレンの粘度平均分子量が40,000〜85,000である、上記(9)記載のビソプロロール含有貼付製剤。
(11)第1のポリイソブチレン(C)と、第2のポリイソブチレン(D)との配合割合が重量比(C:D)で1:0.1〜1:3である、上記(9)又は(10)記載のビソプロロール含有貼付製剤。
(12)タッキファイヤーが脂環族飽和炭化水素樹脂である、上記(1)〜(11)のいずれかに記載のビソプロロール含有貼付製剤。
(13)タッキファイヤーの軟化点が90〜150℃である、上記(1)〜(12)のいずれかに記載のビソプロロール含有貼付製剤。
(14)粘着剤層の全重量に占めるタッキファイヤーの含有割合が15〜55重量%である、上記(1)〜(13)のいずれかに記載のビソプロロール含有貼付製剤。
なお、本発明において、粘着剤層を形成すべき各成分の含有量は、その合計含有量が100重量%となるように適宜調整される。また、本明細書に記載の例示は本発明を特に限定するものではない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、皮膚接着性が良好で皮膚刺激性が少なく、しかも皮膚面から剥離除去した際の痛みや糊残りが抑制された貼付製剤を提供することができる。また、かかる貼付製剤によれば、製剤中でのビソプロロールの安定性に優れており、治療又は予防に有効な量のビソプロロールを皮膚面を通して生体内に持続的に投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のビソプロロール含有貼付製剤の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0012】
図1は、本発明のビソプロロール含有貼付製剤(以下、単に「貼付製剤」という)の一実施形態を示す断面図である。貼付製剤10は、支持体1と、該支持体1の片面に積層された粘着剤層2と、その表面に積層された剥離ライナー3とを備えるものである。粘着剤層2は、ビソプロロール、ポリイソブチレン、タッキファイヤー、並びにポリイソブチレン及びタッキファイヤーと相溶可能な有機液状成分を含有することを特徴とする。
【0013】
貼付製剤の粘着剤層に含有されるビソプロロールはすでに経口剤として市販されており、錠剤の場合、フマル酸ビソプロロールといった酸塩の形態で含有されている。本発明においてビソプロロールとは、フリー体(遊離塩基)のビソプロロールだけでなく、薬学的に許容される塩も含むものである。よって、本発明においては、塩の形態でビソプロロールを粘着剤層に含有することができるが、塩形態のビソプロロールはフリー体よりも皮膚透過性が低いため、より透過性の高いフリー体のビソプロロールを粘着剤層に含有することが望ましい。また、ポリイソブチレンを含むことで、接着性はもちろんのこと、ビソプロロールの放出性が良好となる。更に、有機液状成分を含むことで、皮膚透過性が良好となる。また更に、タッキファイヤーを含むことで皮膚接着性が良好となる。したがって、フリー体のビソプロロールを含む場合の本発明の貼付製剤は、フリー体のビソプロロール、ポリイソブチレン、タッキファイヤー及び有機液状成分を含むことで、ビソプロロールの放出性、皮膚接着性及び皮膚透過性が良好になり、貼付製剤を皮膚に貼付した場合に、好ましい実施態様では、貼付製剤中のビソプロロールの少なくとも約70重量%が生体内へ移行することが可能になる。このように、本発明の貼付製剤は、粘着剤層が薬物の利用率の非常に高い組成物で構成されていることを特徴とする。
【0014】
貼付製剤の貼付面積当たりのビソプロロールの含有割合は、好ましくは0.1〜1mg/cm、より好ましくは0.1〜0.8mg/cm、更に好ましくは0.1〜0.5mg/cmである。ビソプロロールの含有割合が0.1mg/cm未満であると、充分な薬理効果を得難くなる虞があり、他方1mg/cmを超えると薬物による皮膚刺激が発現する虞がある。
【0015】
また、粘着剤層の全重量に占めるビソプロロールの含有割合は、好ましくは0.5〜5重量%、より好ましくは0.5〜4重量%、更に好ましくは0.5〜3重量%である。ビソプロロールの含有割合が0.5重量%未満であると、充分な薬理効果が得難くなる虞がある。他方、5重量%を超えると、粘着剤層からのビソプロロールの滲み出し(ブリード)が発生する場合があり、その結果、皮膚への接着性が低下する虞がある。
【0016】
有機液状成分としては、薬物であるビソプロロール以外に添加される液状の有機成分であって、ポリイソブチレン及びタッキファイヤーと相溶可能なものであれば特に限定されるものではない。有機液状成分としては、ビソプロロールの吸収促進及びビソプロロールの粘着剤層への溶解性向上に大きく寄与する点から、脂肪酸アルキルエステル、長鎖アルコールが好適に使用される。有機液状成分は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
脂肪酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素数が12〜16、好ましくは12〜14の高級脂肪酸と、炭素数が1〜4の低級1価アルコールとからなる脂肪酸アルキルエステルが挙げられる。高級脂肪酸としては、好ましくはラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)であり、更に好ましくはミリスチン酸である。1価アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられ、好ましくはイソプロピルアルコールである。したがって、最も好ましい脂肪酸アルキルエステルはミリスチン酸イソプロピルであり、該化合物を用いることでビソプロロールの吸収促進及び溶解性向上を高水準で達成することができる。
【0018】
また、長鎖アルコールとしては、炭素数が12〜28、好ましくは炭素数が12〜24の飽和又は不飽和のアルコールが挙げられる。長鎖アルコールとしては、保存安定性の面から飽和アルコールが好適に使用される。また、長鎖アルコールとしては、直鎖状又は分岐状のアルコールが挙げられ、これらは混合して使用することができる。直鎖アルコールとしては、1−ドデカノール、1−テトラデカノール、1−ヘキサデカノール、ステアリルアルコール等が挙げられ、中でも1−ドデカノールがポリイソブチレンとの相溶性や、ビソプロロールの安定性に優れる点で好ましい。また、ポリイソブチレンとの相溶性が得難い場合には、炭素数が16〜28、好ましくは炭素数が18〜24の分岐アルコールを用いることができる。具体的には、2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノール等が挙げられ、中でも2−オクチルドデカノールがポリイソブチレンとの相溶性に優れるとともに、ビソプロロールの溶解性を向上させることができる点で好ましい。
【0019】
有機液状成分として、脂肪酸アルキルエステルを単独で用いても前述した効果が充分に得られるが、脂肪酸アルキルエステル及び長鎖アルコールを組み合わせて用いると、ビソプロロールの透過性及び溶解性、更には粘着剤層の皮膚接着性が一層向上する点で好ましい。脂肪酸アルキルエステル(A)と長鎖アルコール(B)の配合割合(A:B)は、重量比(A:B)で好ましくは1:0〜1:0.5、より好ましくは1:0〜1:0.4、更に好ましくは1:0.05〜1:0.4である。これら2種の有機液状成分中、長鎖アルコール(B)の配合割合が上記上限を超えると、脂肪酸アルキルエステル(A)の割合が相対的に減少するため、高レベルで吸収促進を持続させることが困難になる虞がある。
【0020】
上記のように、有機液状成分は透過促進剤として有効に作用する場合が多く、その際には有機液状成分の含有量を増量することにより、皮膚透過性が向上する。すなわち、粘着剤層に有機液状成分を多量に含有することで、皮膚透過性がより高く、また皮膚透過性を制御し易い組成となるため、貼付製剤として理想的な粘着剤の組成といえる。また、粘着剤層に有機液状成分を含有させることで、粘着剤層に適度な柔軟性及び皮膚接着性を付与することができる。
【0021】
有機液状成分の含有割合は、粘着剤層の全重量に対して好ましくは20〜40重量%、より好ましくは25〜38重量%である。有機液状成分の含有割合が20重量%未満であると、粘着剤層より薬物の滲み出し(ブリード)が生じる場合もある。その結果、接着性が低下し、また充分な皮膚透過性を得ることが困難になる虞がある。また、有機液状成分の含有割合が40重量%を超えると、粘着剤層の凝集力が大きく低下する場合もあり、凝集破壊が生じる虞がある。
【0022】
粘着剤層は、1種単独でポリイソブチレンを含有することもできるし、分子量の異なる2種以上のポリイソブチレンを含有することもできる。
1種単独でポリイソブチレンを含有する場合、ポリイソブチレンの含有量は、粘着剤層の全重量に対して、好ましくは15〜60重量%、より好ましくは15〜55重量%である。ポリイソブチレンの含有量が15重量%未満であると、粘着剤層に必要な内部凝集力を付与し難くなる虞があり、他方、60重量%を超えると、粘着剤層の皮膚接着性やタックが低下する虞がある。
また、1種単独でポリイソブチレンを含有する場合、ポリイソブチレンの分子量は特に限定されないが、粘度平均分子量が好ましくは40,000〜5,500,000、より好ましくは45,000〜5,000,000である。粘度平均分子量が40,000未満であると、粘着剤層に必要な内部凝集力を付与し難くなる虞があり、他方、5,500,000を超えると、粘着剤層の皮膚接着性やタックが低下する虞がある。
【0023】
粘着剤層の適度な凝集力と、適度な柔軟性及び皮膚刺激性とを容易に両立するためには、分子量の異なる2種以上のポリイソブチレンを含有することが好ましい。本明細書において「分子量の異なる2種以上のポリイソブチレン」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布のピークを、2つ以上の独立した領域に有するポリイソブチレンをいう。なお、各ポリイソブチレンの分子量分布のピークは概して1つである。よって、「分子量が異なる2種以上のポリイソブチレン」には、例えば、粘度平均分子量が異なる2種以上のポリイソブチレンが含有されている。ポリイソブチレンとしては、例えば、第1のポリイソブチレンと、第1のポリイソブチレンよりも相対的に分子量の低い第2のポリイソブチレンとから構成されることが好ましい。第1のポリイソブチレンは粘着剤層に適度な凝集力を付与し、また第2のポリイソブチレンは粘着剤層に適度な柔軟性及び皮膚接着性を付与することができる。
【0024】
第1のポリイソブチレンと第2のポリイソブチレンとの分子量は特に限定されるものではないが、良好な接着性やビソプロロールの充分な放出性を得るためには、第1のポリイソブチレンの粘度平均分子量が好ましくは1,800,000〜5,500,000、より好ましくは2,000,000〜5,000,000であり、かつ第2のポリイソブチレンの粘度平均分子量が好ましくは40,000〜85,000、より好ましくは45,000〜65,000である。第1のポリイソブチレンの粘度平均分子量が1,800,000未満であると、粘着剤層に必要な内部凝集力を付与し難くなる虞があり、他方、5,500,000を超えると、粘着剤層の皮膚接着性やタックが低下する虞がある。また、第2のポリイソブチレンの粘度平均分子量が40,000未満であると、粘着剤層にベトツキ感が発現し、また皮膚面を汚染する虞があり、他方、85,000を超えると粘着剤層の皮膚接着性やタックが低下する虞がある。なお、第1及び第2のポリイソブチレンは、それぞれの分子量分布の範囲内で2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
なお、本明細書において、粘度平均分子量とは、シュタウディンガーインデックス(J)を200℃にてウベローデ粘度計のキャピラリーのフロータイムからSuhulz-Blaschke式により算出し、このJ値を用いて下式により求められる値をいう。
【0026】
=ηSP/c(1+0.31ηSP)(cm/g) (Suhulz-Blaschke式)
ηSP=t/t−1
t :溶液のフロータイム (Hagenbach-couette補正式による)
:溶媒のフロータイム (Hagenbach-couette補正式による)
c :溶液の濃度(g/cm
=3.06×10−2Mv0.65
Mv:粘度平均分子量
【0027】
粘着剤層が分子量の異なる2種以上のポリイソブチレンで構成される場合、ポリイソブチレンの合計含有量は、粘着剤層の全重量に対して、好ましくは15〜60重量%、より好ましくは15〜55重量%である。ポリイソブチレンの合計含有量が15重量%未満であると、粘着剤層に必要な内部凝集力を付与し難くなる虞があり、他方、60重量%を超えると、粘着剤層の皮膚接着性やタックが低下する虞がある。
また、ポリイソブチレンが分子量の異なる2種のポリイソブチレンで構成される場合、第1のポリイソブチレン(C)と、第2のポリイソブチレン(D)の配合割合(C:D)は、重量比で好ましくは1:0.1〜1:3、より好ましくは1:0.1〜1:2.5、更に好ましくは1:0.3〜1:2である。これら2種のポリイソブチレンのうち、第2のポリイソブチレン(D)の配合割合が上記上限を超えると、粘着剤層の内部凝集力の低下が大きくなる虞があり、他方下限未満であると、粘着剤層の皮膚接着力の低下が大きくなる虞がある。
【0028】
タッキファイヤーは、貼付製剤の分野で公知のものを適宜選択して用いればよい。タッキファイヤーとしては、例えば、石油系樹脂、テルペン樹脂、ロジン樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン樹脂、スチレン系樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂等が挙げられる。中でも、脂環族飽和炭化水素樹脂が薬物の保存安定性が良好になるため好適である。また、良好なタックおよび凝集力の獲得の点から、軟化点が90〜150℃、好ましくは95〜145℃のタッキファイヤーが好ましい。本発明のように、有機液状成分を多く含む貼付製剤においては、例えば脂環族飽和炭化水素樹脂の場合、軟化点が90℃未満であると、粘着剤層のタックおよび凝集力が低下する傾向にあり、他方150℃を超えると粘着剤層が固くなり、皮膚接着性が低下する傾向にある。したがって、タッキファイヤーの種類と軟化点とを適宜選択して有機液状成分を多く含む貼付製剤とすることで、皮膚接着性、凝集力および薬物安定性が良好になる。なお、本明細書において、軟化点とは、環球法により測定される値をいう。
【0029】
脂環族飽和炭化水素樹脂としては、例えば、市販品としてアルコンP−100、アルコンP−115、アルコンP−125、アルコンP−140(商品名、荒川化学工業製)が挙げられる。
タッキファイヤーは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、2種以上を組み合わせて使用する場合には、例えば、樹脂の種類や軟化点の異なる樹脂を組み合わせてもよい。
タッキファイヤーの含有割合は、粘着剤層の全重量に対して、好ましくは15〜55重量%、より好ましくは20〜50重量%である。タッキファイヤーの含有割合が15重量%未満であるとタックおよび凝集力が乏しい場合があり、他方55重量%を超えると粘着剤層が固くなり、皮膚接着性が低下する傾向にある。
【0030】
本発明の貼付製剤は上記の各成分を含有することで、ビソプロロールの貼付製剤として必要な要求特性を得られる。各特性の調整は、上記のように各成分の種類や含量を変更することにより可能であるが、上記以外の成分を適宜加えても良い。
例えば、粘着剤層中での薬物の溶解性を更に高め、より良好な皮膚低刺激性を得るためには、必要に応じて粘着剤層中に上記以外の液状の有機成分からなる溶解助剤を配合することができる。溶解助剤は、粘着剤との相溶性に優れており、薬物を充分に溶解し、粘着剤成分からビソプロロールが滲み出す(ブリード)虞が少なく、粘着特性や薬物放出性に悪影響を及ぼさないものであればよい。具体的には、オレイン酸、ミリスチン酸、カプリン酸等の脂肪酸、アジピン酸、セバシン酸等のジカルボン酸等の有機酸と、エタノールや2−プロパノール等のアルコール類とのエステル類;グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコールやそれらのジ、トリエーテル類;多価アルコールと、トリアセチン等の有機酸とのエステル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリエーテル類;その他クロタミトン等が挙げられる。
また、凝集力を向上させるためには、所望により、粘着剤層に適当な充填剤を含有させることができる。このような充填剤としては特に限定されないが、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉄、水酸化アルミニウム、タルク、カオリン、ベントナイト、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機微粒子、乳糖、カーボンブラック、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、セルロース類、アクリル樹脂等の有機微粒子、更にはポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、セルロース類、アクリル樹脂、ガラス等の繊維が挙げられる。
また、皮膚接着力やタック、柔軟性を向上させる場合には、所望により、粘着剤層に適当な軟化剤を含有させることで、粘着剤層に適度な皮膚接着力やタックを付与することができる。このような軟化剤としては特に限定されないが、液状ポリブテンや液状ポリイソプレンなどの液状ゴムや、有機液状成分の中でも、流動パラフィン、スクワラン、スクワレンなどの液状炭化水素等が挙げられる。さらに、所望によりカバーテープなどを本発明の貼付製剤の一部や全面を覆うように貼付して皮膚接着性を補強し、皮膚への密着性を補ってもよい。
【0031】
本発明の中でも、粘着剤層に第1のポリイソブチレンを用いる場合、多量の有機液状成分を含有することが可能になり、その結果有機液状成分による薬物の吸収促進効果と溶解性向上効果とを充分に得ることができる。これにより、凝集力の低下を抑制し、糊残り等のない貼付製剤とすることが可能になる。さらに、タッキファイヤーにおいても、前述した軟化点の温度範囲の中でより高いものを用いることで凝集力の向上だけでなく、皮膚接着性の向上も同時に達成することが可能になる。なお、粘着剤層の厚みは、通常30〜300μm、好ましくは60〜250μmである。
【0032】
支持体としては特に限定されるものではないが、実質的に薬物等に対して不透過性を有するもの、即ち粘着剤層の活性成分であるビソプロロールや添加剤等が支持体中を通って背面から失われて含有量の低下を引き起こさないものが好ましい。支持体としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、アイオノマー樹脂、金属箔等の単独フィルム又はこれらの積層フィルム等を用いることができる。これらのうち、支持体と粘着剤層との接着性(投錨性)を良好とするために、支持体を上記材質からなる無孔のプラスチックフィルムと、多孔質フィルムとの積層フィルムとすることが好ましい。この場合、粘着剤層は多孔質フィルム側に形成することが望ましい。
【0033】
このような多孔質フィルムとしては、粘着剤層との投錨性が向上するものが採用されるが、具体的には紙、織布、不織布、編布、機械的に穿孔処理を施したシート等が挙げられる。これらのうち、取り扱い性等の観点から、特に紙、織布、不織布が好ましい。多孔質フィルムは、投錨性向上、貼付製剤全体の柔軟性及び貼付操作性等の点から、厚み10〜200μmの範囲のものが採用される。プラスタータイプや粘着テープタイプのような薄手の貼付製剤の場合、10〜100μmの範囲のものが採用される。
【0034】
また、多孔質フィルムとして織布や不織布を用いる場合、目付量を好ましくは5〜30g/m、より好ましくは6〜15g/mとするのがよい。最も好適な支持体としては、厚さ1.5〜6μmのポリエステルフィルム(好ましくは、ポリエチレンテレフタレートフィルム)と、目付量6〜15g/mのポリエステル(好ましくは、ポリエチレンテレフタレート)製不織布との積層フィルムが挙げられる。
【0035】
貼付製剤は、使用時まで粘着剤層の粘着面を保護するために、粘着面を剥離ライナーで積層することが望ましい。剥離ライナーとしては、剥離処理され、充分に軽い剥離力を確保できれば特に限定されるものではないが、例えば粘着剤層との接触面にシリコーン樹脂、フッ素樹脂等を塗布することによって剥離処理が施された、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルム、上質紙、グラシン紙等の紙、又は上質紙若しくはグラシン紙等とポリオレフィンとのラミネートフィルム等が用いられる。剥離ライナーの厚みは、好ましくは10〜200μm、より好ましくは25〜100μmである。
【0036】
剥離ライナーとしては、バリアー性、価格等の点から、ポリエステル(特に、ポリエチレンテレフタレート)樹脂からなるものが好ましい。さらに、この場合、取り扱い性の点から、25〜100μm程度の厚みを有するものが好ましい。
貼付製剤の形状としては特に限定されず、例えば、テープ状、シート状を含む。
貼付製剤は、例えば、分子量の異なる2種のポリイソブチレン、タッキファイヤー、有機液状成分及びビソプロロールをトルエン等の適当な溶媒に溶解し、得られた粘着剤溶液(粘着剤層形成用組成物、以下同じ)を剥離ライナー上に塗布、乾燥して粘着剤層を形成し、そして粘着剤層上に支持体を積層することで製造することができる。また、例えば、上記粘着剤溶液を支持体に直接塗布、乾燥して支持体上に粘着剤層を形成することで製造することができる。なお、粘着剤層を形成する際に粘着剤溶液を一度に厚く塗布すると均一に乾燥することが困難な場合があるため、粘着剤層の厚みを充分なものにするために、2度以上に分けて塗工してもよい。
【0037】
貼付製剤は、使用前まで包装体で密封して保存又は運搬することが好ましい。包装方法としては、例えば、1枚の貼付製剤、あるいは数枚重ねた貼付製剤を包装材料に包装し、その周辺をヒートシールして密封する方法が挙げられる。この包装材料は、例えば、シート状又はフィルム状のものが挙げられ特に限定されるものではないが、包装の容易さや気密性の観点からヒートシール可能なものが望ましい。具体的には、ポリエチレン、アイオノマー樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル系共重合体、ポリビニルアルコール系共重合体等のヒートシール性を有するプラスチックシートを用いた包装材料が適している。特に、貼付製剤に含有される活性成分であるビソプロロールの外気による汚染や酸化分解を防止するためには、ポリエステルフィルムや金属箔等のガス不透過性フィルムを積層したものを用いることが好ましい。また、この包装材料としては、厚さ10〜200μmのものが用いられる。上記包装材料の最内層にバリアー性の高いポリアクリロニトリル系共重合体を用いたものがより好ましい。さらに、貼付製剤の側面からの粘着成分の流れ出し等が起こった場合、包装体からの取り出し等の取り扱い性の悪化が懸念されるため、包装材料にエンボス加工を施したり、前述のライナー部分を貼付製剤より若干大きくするドライエッジ加工、接触面積が小さくなるように加工したブリスター成型等の包装形態を工夫することが好ましい。
【0038】
貼付製剤は、使用直前に上記包装体を破る等して取り出し、剥離ライナーを剥がして露出した粘着面を皮膚面に貼付して使用することができる。
貼付製剤の用法は、患者の年齢、体重、症状等により異なるが、通常成人に対してビソプロロールを、好ましくは0.1〜50mg、より好ましくは1〜20mgを含有する貼付製剤を皮膚に1日〜2日で1回程度貼付する。
【実施例】
【0039】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。なお、実施例等で使用する略称は以下のとおりである。
【0040】
BSP:ビソプロロール
B200:Oppanol(R)B200(BASF) ポリイソブチレン 粘度平均分子量4,000,000
B150:Oppanol(R)B150(BASF) ポリイソブチレン 粘度平均分子量2,600,000
B12:Oppanol(R)B12(BASF) ポリイソブチレン 粘度平均分子量55,000
6H:HIMOL6H(日本石油化学(株)) ポリイソブチレン 粘度平均分子量60,000
SIS:クレイトンD-1107CS(クレイトンポリマージャパン(株)) スチレン−イソプレン−スチレンゴム
P140:ARKON(R)P-140(荒川化学(株)) タッキファイヤー 脂環族飽和炭化水素樹脂
軟化点140℃
P100:ARKON(R)P-100(荒川化学(株)) タッキファイヤー 脂環族飽和炭化水素樹脂
軟化点100℃
IPM:CRODAMOL IPM(クローダ ジャパン(株)) ミリスチン酸イソプロピル
DDO:和光純薬工業(株) 1−ドデカノール
【0041】
(実施例1〜9及び比較例1〜3)
表1に記載の配合割合にしたがって粘着剤層形成用組成物の粘稠トルエン溶液を調製し、得られた溶液をシリコーン剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)製ライナー(厚さ75μm)上に、乾燥後の厚みが80μmとなるように塗布し、これを熱風循環式乾燥機中で100℃、5分間乾燥して粘着剤層を形成した。この粘着剤層を、厚さ2μmのPETフィルムと、12g/mのPET不織布との積層フィルムの不織布側に貼り合わせ、シート状の貼付製剤を得た。この積層体のPET製ライナーを剥離し、露出した粘着剤面に、さらに上記と同様の組成、厚みの粘着剤層を1層又は2層積層して粘着剤層の厚みが160μm又は240μmの貼付製剤を得た。なお、表1に記載の各成分の配合量は、粘着剤層形成用組成物の全重量基準の割合(重量%)である。
【0042】
(比較例4)
表1の比較例4に記載の配合割合にしたがって粘着剤層形成用組成物の粘稠トルエン溶液を調製し、得られた溶液をシリコーン剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)製ライナー(厚さ75μm)上に、乾燥後の厚みが80μmとなるように塗布し、これを熱風循環式乾燥機中で100℃、5分間乾燥して粘着剤層を形成した。この粘着剤層を、厚さ2μmのPETフィルムと、12g/mのPET不織布との積層フィルムの不織布側に貼り合わせ、シート状の貼付製剤を得た。
【0043】
(比較例5)
不活性ガス雰囲気下、アクリル酸2−エチルヘキシル95重量部、アクリル酸5重量部及び過酸化ベンゾイル0.2重量部を酢酸エチル中、60℃にて溶液重合させてアクリル粘着剤の溶液を調製した。このアクリル粘着剤50重量部(固形分)、ミリスチン酸イソプロピル40重量部及びビソプロロール10重量部を容器中で均一になるように混合撹拌を行い、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート0.3重量%(対粘着剤固形分)を添加し、酢酸エチルで粘度調整した。得られた溶液をシリコーン剥離処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)製ライナー(厚さ75μm)上に、乾燥後の厚みが40μmとなるように塗布し、これを熱風循環式乾燥機中で100℃、5分間乾燥して粘着剤層を形成した。この粘着剤層を、厚さ2μmのPETフィルムと、12g/mのPET不織布との積層フィルムの不織布側に貼り合わせた後、70℃で48時間エージング処理してシート状の貼付製剤を得た。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例1〜3及び比較例5で得られた貼付製剤を用いて、ヘアレスマウス背部摘出皮膚透過性について試験を行なった。
【0046】
<試験方法>
直径16mmφの円形状に切断した上記貼付製剤を、ヘアレスマウス背部摘出皮膚の角質層面に貼り付け、フランツの透過セルに真皮層側を装着し、レセプター液に32℃のリン酸緩衝化生理食塩液(pH7.4)を用いて試験した。一定時間ごとにレセプター液をサンプリングし、サンプリング液中のビソプロロール量をHPLC法にて定量し、12時間目までの累積透過量を算出した。12時間皮膚移行率は12時間の透過試験終了後の貼付製剤を回収し、貼付製剤中の残存ビソプロロールをメタノール又はテトラヒドロフランで抽出し、HPLC法にて残存ビソプロロール量を定量した。この残存ビソプロロール量から12時間の透過試験後に減少したビソプロロール量を求め、初期のビソプロロール量に対する百分率で算出した。試験結果を表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
実施例1〜3では貼付製剤中の薬物の9割以上が皮膚へ移行しており、透過性も高く、薬物の利用率も高いことが確認された。一方、アクリル粘着剤を用いた比較例5では透過性が低くなった。
【0049】
実施例4〜6及び比較例1で得られた貼付製剤を用いてウサギ皮膚一次刺激試験を行なった。なお、ウサギ皮膚一次刺激試験はDraze法にしたがって実施した。試験結果を表3に示す。
【0050】
【表3】

【0051】
実施例4〜6のいずれの貼付製剤もP.I.Iが2以下で弱い刺激物の範疇にあり、プラセボテープの比較例1と比べても差は見られなかった。これにより、本実施例の貼付製剤は、皮膚刺激性が低いことが確認された。
【0052】
実施例1〜9及び比較例2〜4で得られた貼付製剤を用いて、タック感、凝集力及びブリード状態について試験を行なった。試験結果を表4に示す。
【0053】
<試験方法>
(1)タック感
実施例1〜9及び比較例2〜4で得られた貼付製剤の剥離ライナーを剥離後、粘着剤層の露出面を指で触った際のタックを次の指標で評価した。
○:タックは十分にあり、接着した。
×:タックはなく、十分に接着しなかった。
(2)凝集性
実施例1〜9及び比較例2〜4で得られた貼付製剤の剥離ライナーを剥離後、粘着剤層の露出面を指で触った際の粘着剤層の凝集性を次の指標で評価した。
○:糸曳きはなく、指に糊残りしなかった。
×:糸曳きがひどく、指に糊残りした。
※:接着しなかったため、凝集力は分からなかった。
(3)ブリード状態
実施例1〜9及び比較例2〜4で得られた貼付製剤の剥離ライナーを剥離し、剥がした剥離ライナーに液状物が付着しているか否かを以下の判定基準にて判定した。
○:剥離ライナーに液状物が付着していない。
×:剥離ライナーに液状物が付着している。
【0054】
【表4】

【0055】
表4の結果から、有機液状成分やタッキファイヤーがないとタック(接着性)がなくなることが確認された。また、SIS粘着剤ではタックはあるものの凝集力が低く、指に糊残りが確認された。
【0056】
実施例1〜3及び比較例5で得られた貼付製剤を用いて、保存安定性について試験を行なった。試験結果を表5に示す。
【0057】
<試験方法>
実施例1〜3及び比較例5で得られた貼付製剤を、PET/Al/ハイトロン包材にて包装し、40℃で2ヶ月間保存した。次いで、保存期間後のビソプロロール量をHPLC法にて定量し、初期のビソプロロール量に対する、保存後のビソプロロール量を百分率で算出した。
【0058】
【表5】

【0059】
実施例1〜3の貼付製剤は保存安定性が良好であるが、アクリル粘着剤を用いた比較例5の貼付製剤は保存安定性が低いことが確認された。
【符号の説明】
【0060】
1 支持体
2 粘着剤層
3 剥離ライナー
10 貼付製剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の片面に、ビソプロロール、ポリイソブチレン、タッキファイヤー、並びにポリイソブチレン及びタッキファイヤーと相溶可能な有機液状成分を含有する粘着剤層を積層してなる、ビソプロロール含有貼付製剤(但し、アクリル系粘着剤を含有する貼付製剤を除く)。
【請求項2】
当該貼付製剤の貼付面積当たりに占めるビソプロロールの含有割合が0.1〜1mg/cmである、請求項1記載のビソプロロール含有貼付製剤。
【請求項3】
粘着剤層の全重量に占めるビソプロロールの含有割合が0.5〜5重量%である、請求項1記載のビソプロロール含有貼付製剤。
【請求項4】
粘着剤層の全重量に占める有機液状成分の含有割合が20〜40重量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のビソプロロール含有貼付製剤。
【請求項5】
有機液状成分として脂肪酸アルキルエステルと、所望により長鎖アルコールとを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のビソプロロール含有貼付製剤。
【請求項6】
脂肪酸アルキルエステル(A)と長鎖アルコール(B)との配合割合が重量比(A:B)で1:0〜1:0.5である、請求項5記載のビソプロロール含有貼付製剤。
【請求項7】
脂肪酸アルキルエステルがミリスチン酸イソプロピルである、請求項5又は6記載のビソプロロール含有貼付製剤。
【請求項8】
ポリイソブチレンが分子量の異なる2種以上のポリイソブチレンを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のビソプロロール含有貼付製剤。
【請求項9】
ポリイソブチレンが第1のポリイソブチレンと、該第1のポリイソブチレンよりも分子量の低い第2のポリイソブチレンとから構成される、請求項1〜8のいずれか一項に記載のビソプロロール含有貼付製剤。
【請求項10】
第1のポリイソブチレンの粘度平均分子量が1,800,000〜5,500,000であり、
第2のポリイソブチレンの粘度平均分子量が40,000〜85,000である、請求項9記載のビソプロロール含有貼付製剤。
【請求項11】
第1のポリイソブチレン(C)と、第2のポリイソブチレン(D)との配合割合が重量比(C:D)で1:0.1〜1:3である、請求項9又は10記載のビソプロロール含有貼付製剤。
【請求項12】
タッキファイヤーが脂環族飽和炭化水素樹脂である、請求項1〜11のいずれか一項に記載のビソプロロール含有貼付製剤。
【請求項13】
タッキファイヤーの軟化点が90〜150℃である、請求項1〜12のいずれか一項に記載のビソプロロール含有貼付製剤。
【請求項14】
粘着剤層の全重量に占めるタッキファイヤーの含有割合が15〜55重量%である、請求項1〜13のいずれか一項に記載のビソプロロール含有貼付製剤。

【図1】
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【公開番号】特開2012−158612(P2012−158612A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−120476(P2012−120476)
【出願日】平成24年5月28日(2012.5.28)
【分割の表示】特願2006−235270(P2006−235270)の分割
【原出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【出願人】(000109831)トーアエイヨー株式会社 (25)
【Fターム(参考)】