説明

ビタミンC強化乳成分含有食品

【課題】
ビタミンCを強化した乳成分含有食品における劣化臭の発生を効果的に抑制する。
【解決手段】
上記乳成分含有食品において、ビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを添加してビタミンC強化乳成分含有食品を調製する。これにより、光及び/又は熱により生じる劣化臭の発生を抑えることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栄養強化の目的でビタミンC源を配合した乳成分含有食品(ビタミンC強化乳成分含有食品)及びその調製方法に関する。より詳細には、本発明は、保存や、熱及び/又は光照射による劣化臭の発生を有意に抑制したビタミンC強化乳成分含有食品及びその調製方法に関する。
【0002】
また本発明は、乳成分含有食品について、劣化臭の発生を抑制しながら、ビタミンCを強化する方法に関する。さらにまた本発明は、ビタミンC強化乳成分含有食品について、ビタミンC源や乳成分に由来する劣化臭の発生を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
乳成分を含有する食品は、マイルドな風味を有し、乳成分に由来して種々の機能を備えている食品である。近年、消費者の健康嗜好から、乳成分を含有する食品は、単にフレーバーバリエーションという観点だけでなく、様々な健康素材を配合した食品として提供されている。代表的な例としては、乳成分を含有するカルシウム強化食品、乳成分を含有する鉄強化食品、乳成分を含有するビタミンD強化食品、乳成分を含有するビタミンE強化食品などが挙げられる。
【0004】
しかし、代表的な健康素材であるビタミンCを配合した乳成分含有食品(ビタミンC強化乳成分含有食品)は、ビタミンCに起因していわゆるビタミン臭が食品の風味を損なうという問題、又、光照射によって乳成分とビタミンCが相互作用して劣化臭が発生するという問題(特許文献1)、さらに熱による乳成分とビタミンCの相互作用により劣化臭が発生するという問題がある。こうした劣化臭の発生は、食品の品質を劣化させて商品価値を低下させることとなるため、従来よりその解決策が求められていた。
【0005】
特に、乳成分を含有する食品は、ビタミンCを含んでいなくても、製造時における加熱殺菌、保存時における加温、並びに太陽光や蛍光灯等による光照射など、製造時から流通工程を経て店頭に陳列されるに至るまで光や熱の影響を受け、その結果、劣化臭を発生し食品の商品価値を低下させる場合がある。
【0006】
このような劣化臭の原因となる乳成分の劣化を防止するために、通常は酸化防止剤等を添加することにより、乳を含有する食品の安定性の改善が図られている。これに関して、例えば特許文献2には乳含有酸性飲料にフラボノイドの一種であるルチン、モリン、ケルセチンを添加する方法、特許文献3にはアスコルビン酸または(および)アスコルビン酸ナトリウムを添加して豆乳乳酸飲料を製造する方法、特許文献4にはグルコン酸カルシウムとL−アスコルビン酸を添加してpHを3.8以下に調製し乳酸菌飲料の安定化を図る方法、特許文献5にはL−アスコルビン酸、コレカルシフェロールおよびフラボノールから選ばれた少なくとも2種以上を配合して乳含有酸性飲料を調製する方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、これらの技術を持ってしても、ビタミンC源と乳成分を含むビタミンC強化乳含有食品における劣化臭を抑えることは不十分であった。
【特許文献1】特許第3460063号公報
【特許文献2】特開昭60−203174号公報
【特許文献3】特開昭50−48162号公報
【特許文献4】特開昭57−129642号公報
【特許文献5】特開平3−272643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の技術は、上述のように乳成分の劣化を抑制する技術について検討されているにすぎず、ビタミンC強化乳含有食品における乳成分とビタミンCの相互作用によって生じる劣化臭を抑える方法については充分に検討されていなかった。
【0009】
乳成分の原料となる牛乳には、カルシウムや鉄などのミネラル分、タンパク質や必須アミノ酸など豊富な栄養素が含まれている。一方、ビタミンC(アスコルビン酸)は、大人ひとり当たり75mg/日必要と言われている栄養素である。このような栄養素を同時に含むビタミンC強化乳含有食品によれば、簡単に効率よく身体に必要な栄養素を摂取することが可能となる。しかしながら、上述のように乳成分とビタミンCを併存させることにより、光及び/又は熱による影響をより一層受けやすくなり、それによって生じる劣化臭は、従来の方法で十分解消することができないことが判明した。この劣化臭は食品としての価値を低下させるものであり、早急な解決策が求められる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、劣化臭が生じにくい、特に光及び/又は熱の影響によっても劣化臭が生じにくい(耐劣化臭の)ビタミンC強化乳成分含有食品、及びその調製方法を提供することである。また本発明の目的は、劣化臭の発生を抑制しながらも、乳成分含有食品のビタミンC(ビタミンC作用)を強化する方法を提供することである。さらに本発明の目的は、ビタミンC強化乳成分含有食品について、光及び/又は熱による影響で生じる劣化臭を抑制する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、乳成分を含有する食品に栄養強化の目的でビタミンC源を添加したビタミンC強化乳成分含有食品について、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを用いて乳成分含有食品を調製することにより、光及び/又は熱等によって生じる劣化臭が抑制できるという知見を得て本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明はビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを用いることによって、劣化臭の発生が抑制されたビタミンC強化乳成分含有食品を提供する。また、本発明は、光及び/又は熱などの影響による劣化臭の発生を抑制しながらも、乳成分含有食品のビタミンCを強化する方法を提供するものである。
具体的には、本発明は下記の態様を包含する:
項1.乳成分、及びビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを含有するビタミンC強化乳成分含有食品。
項2.劣化臭の発生が抑制されてなるビタミンC強化乳成分含有食品の調製方法であって、乳成分とともに使用されるビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを用いることを特徴とする方法。
項3.乳成分を含有する食品のビタミンC強化方法であって、ビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを用いる方法。
項4.ビタミンC強化乳成分含有食品の熱及び/又は光に起因する劣化臭発生を抑制する方法であって、ビタミンC強化乳成分含有食品に配合するビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを用いる方法。
【0013】
以下、本発明をより詳細に説明する。
(1)ビタミンC強化乳成分含有食品、及びその調製方法
本発明が対象とする食品は、乳成分と共に栄養素強化等の目的でビタミンC源を含有する食品であって、劣化臭の発生が抑制されてなることを特徴とするビタミンC強化乳成分含有食品である。
【0014】
ここでビタミンC源とは、生体に投与後(または摂取後)、体内でビタミンC(アスコルビン酸)として吸収されるものを広く意味し、その限りにおいてビタミンCまたはその塩に限らず、ビタミンCの前駆体(プレドラッグ)として位置づけられるビタミンCの誘導体(アスコルビン酸の誘導体)が含まれる。本発明において「ビタミンC強化」食品とは、体内でのビタミンC作用が付加または強化されてなる食品を意味する。具体的には、食品に実際に配合されているビタミンC源の形態(誘導体の有無)に関わらず、生体に投与後(または摂取後)、体内でビタミンC(アスコルビン酸)として吸収され機能するものを含有する食品を意味する。また本発明が好適に対象とする「ビタミンC強化」食品は、ビタミンC源を人為的に配合して調製される食品である。
【0015】
本発明のビタミンC強化乳成分含有食品は、かかるビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを使用することを特徴とするものであり、斯くして、従来問題となっていた光および/または熱等による劣化臭の発生が抑制されるという効果を有するものである。
本発明でビタミンC源として使用するアスコルビン酸グルコシドは、ビタミンC(アスコルビン酸)にグルコースが結合した配糖体である。グルコースの結合部位は特に制限されず、通常、アスコルビン酸の2位にグルコースが結合した配糖体を挙げることができるが、5位または6位に結合した配糖体であってもよい。アスコルビン酸グルコシドは生体内で小腸粘膜酵素によって容易にビタミンC、即ちアスコルビン酸とグルコースに分解され吸収される。
【0016】
アスコルビン酸グルコシドは、いずれも市販されているものをそのまま利用することができる。具体的には、株式会社林原生物化学研究所製の「アスコルビン酸グルコシド」が例示できる。
【0017】
本発明の食品に用いられる乳成分は、特に制限無く通常の乳類を使用することができる。例えば牛乳、羊乳、及び山羊乳等の獣乳、大豆乳等の植物乳が挙げられ、これらを単独または2種以上を組み合わせて使用することもできる。またこれらの獣乳は、加工方法に応じて生乳、生山羊乳、牛乳、特別牛乳、殺菌山羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、及び加工乳に分類されるが、その別を問わず、いずれも使用することができる。その形態も特に問わず、全乳、発酵乳、ホエイ、クリーム、バター、バターオイル、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調整粉乳、等種々のものが利用でき、また、粉乳、濃縮乳から還元したものも利用できる。
【0018】
本発明のビタミンC強化乳成分含有食品は、ビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシド及び上記乳成分を含有する食品であれば、その種類や形態に特に制限はされない。好適には飲料を挙げることができる。具体的には牛乳、加工乳、乳飲料、乳酸菌飲料、乳製品乳酸菌飲料、発酵乳、乳入り酸性飲料、乳入り中性飲料、乳入りコーヒー、乳入り紅茶、乳清飲料、乳入り炭酸飲料、乳入り果汁入り飲料、シェーク飲料、ドリンクヨーグルト、乳入りカクテルや乳入りチューハイなどのアルコール飲料、乳入りニアウォーターや乳入りスポーツドリンクなどの飲料類が挙げられる。その他の食品として、乳入りゼリー、プリンやヨーグルト(ドリンクヨーグルトを含む)等の乳入りデザート類、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、乳入りジャーベット等の乳入り冷菓、並びに錠剤、カプセル、顆粒剤、粉末剤、またはドリンク等の形態を有するサプリメント製品が例示できる。
【0019】
本発明に係るビタミンC強化乳成分含有食品の調製は、対象とする乳成分含有食品の通常の調製工程において、調製する食品の一成分としてアスコルビン酸グルコシドを添加することによって行うことができる。このため、特別に製造装置や製造条件を整える必要がなく、工業的にも簡便に本発明を実施することができる。また、アスコルビン酸グルコシドの添加量や添加する時期については、調製する食品の種類、その用途及び風味、並びに食品の製造方法などに応じて適宜増減、調節することもできる。アスコルビン酸グルコシドの配合割合の例としては、制限はされないが、食品100重量%あたりアスコルビン酸グルコシド0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜2重量%が例示できる。
【0020】
かかるアスコルビン酸グルコシドの配合割合の範囲であれば、食品中に含まれる乳成分の量に影響を受けることなく、本発明の効果を得ることができる。このため、上記の範囲で製造者の所望する割合のビタミンC源(アスコルビン酸グルコシド)を、ビタミンC強化の目的で乳含有食品に添加することが可能となる。
【0021】
本発明のビタミンC強化乳成分含有食品には、本発明の構成に必要な乳成分とアスコルビン酸グルコシドに加え、食品に通常添加される各種成分を、本発明の効果を妨げない範囲で添加することもできる。例えばクエン酸、乳酸等の有機酸及び/又はその塩類;アラビアガム、タラガム、グルコマンナン、サイリウムシードガム、マクロホモプシスガム、微結晶セルロース、発酵セルロース、微小繊維状セルロース、化工澱粉、加工澱粉、ショ糖、果糖、ブドウ糖、麦芽糖、澱粉糖化物、還元澱粉水飴、デキストリン、トレハロース、黒糖、はちみつ等の糖類;ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール等の糖アルコール類;スクラロース、アスパルテーム、ステビア、アセスルファムカリウム、ソーマチン、サッカリン等の高甘味度甘味料;アミノ酸;ミネラル;ビタミン類;酸化防止剤;グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウム、カゼインナトリウム、レシチン等の乳化剤や分散安定剤を、1種または2種以上添加してもよい。
【0022】
以上、ビタミンC強化乳成分含有食品について説明したが、食品に限らず、乳成分を含有する経口医薬品や医薬部外品についても、ビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを配合することによって、同様に、ビタミンC強化乳成分含有経口医薬品または医薬部外品を調製することができる。この場合のアスコルビン酸グルコシドの配合割合としても、上記と同様に、医薬品または医薬部外品100重量%あたりにアスコルビン酸グルコシドが0.001〜5重量%の割合、好ましくは0.01〜2重量%の割合で含まれるように調製することができる。
【0023】
(2)乳成分含有食品のビタミンC強化方法
本発明は、また乳成分含有食品に対するビタミンC強化方法を提供する。通常、乳成分含有食品にビタミンC強化の目的でビタミンC(アスコルビン酸)を配合すると、保存、または光又は熱の影響によって劣化臭が発生するようになる。これに対して、本発明の方法は、乳成分含有食品についてビタミンCを強化しても劣化臭の発生がないか又は有意に抑制されてなるビタミンC強化方法である。当該方法は、乳成分含有食品に配合するビタミンC源として、アスコルビン酸グルコシドを用いることによって実施することができる。
【0024】
なお、本発明において「食品についてビタミンCを強化する」または「食品のビタミン強化」とは、食品に対して体内でのビタミンC作用を付加または強化することを意味する。すなわち、ビタミン強化は、食品に実際に配合するビタミンC源の形態(誘導体の有無)の如何を問わず、生体に投与された後(または摂取後)、体内でビタミンC(アスコルビン酸)として吸収され機能するものを、食品に配合することによって行うことができる。
【0025】
本発明の効果(劣化臭発生の抑制)は、食品に含まれる乳成分の含有量に拘わらず、乳成分含有食品100重量%あたりビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜2重量%の割合となるように配合することによって得ることができる。よって、乳成分含有食品についてビタミンCを強化するために使用されるアスコルビン酸グルコシドの添加量は、上記の範囲内において、目的や食品の種類に応じて適宜設定することができる。
【0026】
本発明の方法が対象とする乳成分含有食品の種類、含有する乳成分の種類としては、上記(1)に記載するものを同様に挙げることができる。
【0027】
以上、乳成分含有食品のビタミンC強化方法について説明したが、食品に限らず、乳成分を含有する経口医薬品や医薬部外品についても、ビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを配合することによって、同様に、ビタミンC強化を達成することができる。この場合のアスコルビン酸グルコシドの配合割合としても、上記と同様に、医薬品または医薬部外品100重量%あたりアスコルビン酸グルコシドを0.001〜5重量%の割合、好ましくは0.01〜2重量%の割合を挙げることができる。
【0028】
(3)劣化臭発生抑制方法
本発明は、またビタミンC強化乳成分含有食品について劣化臭の発生を抑制する方法を提供する。前述するように、通常、乳成分含有食品にビタミンC強化の目的でビタミンC(アスコルビン酸)を配合すると、熱及び/又は光の影響によって劣化臭が発生するようになる。本発明の方法は、かかるビタミンC強化乳成分含有食品について、熱及び/又は光に起因して生じる劣化臭を抑制するための方法である。
【0029】
当該方法は、乳成分含有食品に配合するビタミンC源として、アスコルビン酸グルコシドを用いることによって実施することができる。乳成分含有食品に配合するアスコルビン酸グルコシドの割合は、乳成分含有食品100重量%当たりアスコルビン酸グルコシドが0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜2重量%となるような割合を挙げることができる。
【0030】
本発明の効果(劣化臭発生の抑制)は、乳成分含有食品に含まれる乳成分の量に拘わらず、乳成分含有食品に上記割合となるようにアスコルビン酸グルコシドを配合することによって得ることができる。
本発明の方法が対象とする乳成分含有食品の種類、及び含有する乳成分の種類としては、上記(1)に記載するものを同様に挙げることができる。
【0031】
以上、ビタミンC強化乳成分含有食品の劣化臭抑制方法について説明したが、食品に限らず、乳成分を含有するビタミンC強化経口医薬品や医薬部外品についても、ビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを配合することによって、同様に、熱及び/又は光に起因して生じる劣化臭を抑制することができる。この場合のアスコルビン酸グルコシドの配合割合としても、上記と同様に、医薬品または医薬部外品100重量%あたりアスコルビン酸グルコシドを0.001〜5重量%の割合、好ましくは0.01〜2重量%の割合を挙げることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ビタミンCを強化した乳成分含有食品の劣化臭、特に光及び/又は熱によって生じる劣化臭を抑制することができる。従って本発明によれば光及び/又は熱により生じる劣化臭が抑制された、ビタミンC強化乳成分含有食品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための最良の形態として試験例を用いて具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記に記載する処方の単位は特に言及しない限り、「部」は「重量部」を意味し、処方中「*」は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標を、「※」は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の製品であることを示す。また、アスコルビン酸グルコシドとして、株式会社株林原生物化学研究所製の「L-アスコルビン酸2グルコシド」を使用した。
【試験例】
【0034】
下記の試験例1〜4において、乳成分を含有する食品として、酸性乳飲料(試験例1)、乳入り酸性飲料(試験例2)、チルド品の中性乳飲料(試験例3)、及びヨーグルト(試験例4)を用いて、それぞれビタミンC源を配合した場合における劣化臭発生の有無を、官能評価により評価した。具体的には、各乳成分含有食品に、各表に記載する処方に従って、ビタミンC源として、L-アスコルビン酸、またはアスコルビン酸グルコシドを配合し、これを5℃、25℃、40℃(中性乳飲料、ヨーグルトは5℃のみ)の温度条件下に2週間保存した。2週間後、各乳成分含有食品について、コントロールとして作成したビタミンC源無添加乳成分含有食品を標準として、L−アスコルビン酸添加、及びアスコルビン酸グルコシド添加による劣化臭の発生の有無を官能評価により比較した。
【0035】
更に、酸性乳飲料(試験例1)、乳入り酸性飲料(試験例2)、中性乳飲料(試験例3)については、上記評価に加えて、カーボンアークフェードメーター4時間照射した後の劣化臭の発生の有無を官能評価した。尚、ビタミンC源としての添加量が同程度になるように、各食品に対するアスコルビン酸グルコシドの配合量は、L−アスコルビン酸の2倍量とした。
【0036】
劣化臭発生の有無の評価は下記の基準に従って行った:
<評価>
ビタミンC源無添加乳成分含有食品を標準品とし、L−アスコルビン酸添加品(比較例)、アスコルビン酸グルコシド添加品(実施例)の劣化臭の有無を、次の基準にて評価した。
【0037】
1 標準品とほとんど差がない
2 わずかに標準品より劣化臭が感じられる
3 劣化臭が感じられ、食品として飲食することが困難
4 かなり劣化臭が感じられる
5 激しく劣化臭が発現している
試験例1 酸性乳飲料
表1の処方に基づき各種の酸性乳飲料(標準品、比較例1、実施例1)を調製し、5℃、25℃、40℃で2週間保存した後、及びカーボンアークフェードメーターで4時間照射した後に、ビタミンC源の違いによる劣化臭の有無を官能評価により調べた。表1に、結果を合わせて記す。
【0038】
【表1】

【0039】
<酸性乳飲料の調製方法>
大豆食物繊維、乳化剤、砂糖を粉体混合し、水に添加し、80℃で10分間加熱溶解し、次いで室温まで冷却した。この水溶液に牛乳、クエン酸(無水)50%水溶液、及びグルコン酸(50%)を順次添加し、さらに比較例1と実施例1については各ビタミンC源を添加して、水にて全量補正した。
【0040】
次いでこの溶液を75℃に加熱し、ホモジナイザー(イズミフードマシナリー社 14700kPa)で乳化し、これを93℃達温で200ml容ジュース瓶に全満詰めした。
<試験結果>
ビタミンC源としてL−アスコルビン酸を添加した酸性乳飲料(比較例1)では、2週間の保存及びカーボンアークフェードメーター照射により、乳の加熱様の臭いが発生しており、得られた飲料の商品価値は著しく低下していた。一方、ビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを添加した酸性乳飲料(実施例1)は、劣化臭の有無に関して標準品(ビタミンC源無添加)と同等であり、40℃下2週間の保存並びにフェードメーター4時間照射によっても乳加熱様の臭いの発生は抑えられていた。
【0041】
試験例2 乳入り酸性飲料
表2の処方に基づき、各種の乳入り酸性飲料(標準品、比較例2、実施例2)を調製し、5℃、25℃、40℃で2週間保存した後、及びカーボンアークフェードメーターで4時間照射した後、ビタミンC源の違いによる劣化臭の有無を官能評価により調べた。表2に、結果を合わせて記す。
【0042】
【表2】

【0043】
<乳入り酸性飲料の調製方法>
果糖ブドウ糖液糖に水を加え、これに大豆食物繊維を混合し、80℃で10分間加熱溶解し、次いでこれを常温まで冷却した。冷却後、脱脂粉乳、クエン酸三ナトリウム20%水溶液、及びクエン酸(無水)50%水溶液、更に比較例2及び実施例2については各ビタミンC源を添加混合し、水で全量補正した。その後75℃に加熱し、ホモジナイザー(イズミフードマシナリー社 14700kPa)で乳化して、これを93℃達温で200ml容ジュース瓶に全満詰めした。
【0044】
<試験結果>
ビタミンC源としてL−アスコルビン酸を添加した乳入り酸性飲料(比較例2)では、2週間の保存及びカーボンアークフェードメーター照射により、乳の加熱様の臭いが発生しており、得られた飲料の商品価値は著しく低下していた。一方、ビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを添加した飲料(実施例2)は、劣化臭の有無に関して標準品(ビタミンC源無添加)と同等であり、40℃下2週間の保存並びにフェードメーター4時間照射によっても乳加熱様の臭いの発生は抑えられていた。
【0045】
試験例3 中性乳飲料(チルド品)
表3の処方に基づき、各種のチルド品の中性乳飲料(標準品、比較例3、実施例2)を調製し、5℃で2週間保存した後、及びカーボンアークフェードメーターで4時間照射した後、ビタミンC源の違いによる劣化臭の有無を官能評価により調べた。結果を表3に合わせて記す。
【0046】
【表3】

【0047】
<中性乳飲料の調製方法>
脱脂粉乳と乳化剤を粉体混合して水に添加し、80℃で10分間加熱溶解し、これを常温まで冷却した。この溶液に、牛乳、及び炭酸水素ナトリウム、更に比較例3及び実施例3に対してはビタミンC源を添加混合し、水で全量補正した。その後75℃に加熱し、ホモジナイザー(イズミフードマシナリー社 14700kPa)で乳化し、これを85℃達温で200ml容ジュース瓶に全満詰めし、湯浴(85℃)で30分間殺菌した。
【0048】
<試験結果>
ビタミンC源としてL−アスコルビン酸を添加した中性乳飲料(比較例3)では、5℃2週間の保存及びカーボンアークフェードメーター照射により、乳の加熱様の臭いが発生しており、得られた飲料の商品価値は著しく低下していた。一方、ビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを添加した飲料(実施例3)は、劣化臭の有無に関して標準品(ビタミンC源無添加)と同等であり、5℃下2週間の保存並びにフェードメーター4時間照射によっても乳加熱様の臭いの発生は抑えられていた。
【0049】
試験例4 ヨーグルト
表4の処方に基づき、各種のヨーグルト(チルド品)(標準品、比較例4、実施例4)を調製した後、5℃で2週間保存し、ビタミンC源の違いによる劣化臭の有無を官能評価した。結果を表4に合わせて記す。
【0050】
【表4】

【0051】
<ヨーグルトの調製方法>
水、牛乳を攪拌しながら、砂糖、脱脂粉乳、ゲル化剤、及び比較例4及び実施例4については更に各種ビタミンC源を含有する粉体混合物を加え、90℃で10分間攪拌溶解した。これを40℃まで冷却し、スターターを添加し、全量補正した後、プラスチック容器に充填した。これを40℃の恒温室で約4〜6時間保持し、pH4.5まで発酵させた。この後5℃冷蔵庫にて2週間保存した。
【0052】
<試験結果>
ビタミンC源としてL−アスコルビン酸を添加したヨーグルト(比較例4)では、5℃2週間の保存により乳の加熱様の臭いが発生しており、得られたヨーグルトの商品価値は著しく低下していた。一方、ビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを添加したヨーグルト(実施例4)は、劣化臭の有無に関して標準品(ビタミンC源無添加)と同等であり、5℃下2週間の保存によっても乳加熱様の臭いの発生は抑えられていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳成分、及びビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを含有するビタミンC強化乳成分含有食品。
【請求項2】
劣化臭の発生が抑制されてなるビタミンC強化乳成分含有食品の調製方法であって、乳成分とともに使用されるビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを用いることを特徴とする方法。
【請求項3】
乳成分を含有する食品のビタミンC強化方法であって、ビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを用いる方法。
【請求項4】
ビタミンC強化乳成分含有食品の熱及び/又は光に起因する劣化臭発生を抑制する方法であって、ビタミンC強化乳成分含有食品に配合するビタミンC源としてアスコルビン酸グルコシドを用いる方法。

【公開番号】特開2006−320222(P2006−320222A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144698(P2005−144698)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【出願人】(000155908)株式会社林原生物化学研究所 (168)
【Fターム(参考)】