説明

ビタミンK2の回収方法

【課題】ビタミンK2を簡便に回収する方法を提供すること。
【解決手段】ビタミンK2を含有する試料をキトサン処理する工程、および該キトサンに吸着したビタミンK2を有機溶媒で抽出する工程を含むビタミンK2の回収方法が提供される。好ましくは、ビタミンK2を含有する試料が納豆菌培養液である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、納豆菌培養液からビタミンK2を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
納豆菌が血栓溶解酵素であるナットウキナーゼを生産することは、須見らによって発見され(非特許文献1)、納豆の栄養価はもちろん、健康食品としての価値が見直されている。ナットウキナーゼは、それ自身が線溶酵素として作用することが知られており、食品として摂取されると、血栓を溶解する。このナットウキナーゼは、半減期が長く、長時間効果が持続するという、極めて優れた特徴を有している。そして、同じ血栓溶解作用を有するウロキナーゼでは明確でなかった切迫期網膜中心静脈閉塞症の治療効果が、ナットウキナーゼで明確に現れたことが報告されている(非特許文献2)。
【0003】
そこで、ナットウキナーゼを多量に含む食品、例えば、納豆菌培養エキスを粉末あるいはカプセル化した商品が健康食品として販売されている。
【0004】
他方で、納豆菌は、培養によりビタミンK2を多く生産することが知られている。このビタミンK2は、血液凝固系の必須成分として知られている。ビタミンK2は、また、別の生理作用を有しており、その欠乏症としては、新生児の吸収障害、老人性骨粗鬆症を引き起こし、過剰症としては、溶血性貧血、脾腫、腎・肝などの障害を引き起こすといわれている。このように納豆菌培養エキスにはナットウキナーゼという血栓溶解系の作用因子とビタミンK2という血液凝固系の作用因子とが同時に含まれている。
【0005】
ところで、一般に、ビタミンK2の一日の必要摂取量は成人で55〜65μgであるといわれている。ビタミンK類は、海藻、ブロッコリーなどの食物に多く含まれており、さらに腸内細菌により生産される、あるいは納豆を摂取した際の納豆菌が腸内で生育し、ビタミンK2を生産する可能性があるため、ビタミンK2の必要摂取量は、通常の食事により満たされているといわれている。このようにビタミンK2は、一般的には別途摂取する必要がないほどである。
【0006】
他方で、血栓予防のため、ビタミンK依存性凝固因子(例えば、プロトロンビンVII、IX、Xなど)の合成抑制剤を服用している患者が、血栓予防等を目的として血栓溶解酵素であるナットウキナーゼを含む納豆あるいは納豆菌培養エキスを摂取すると、ビタミンK2も同時に摂取することになり、そのビタミンK依存性凝固因子合成抑制剤の効果が打ち消されるという問題が生じる。
【0007】
そこで、血栓形成予防のため、ビタミンK2含量が低減された納豆菌培養エキス食品が望まれており、ビタミンK2を減少させる方法が試みられている。ビタミンK2を減少させる方法としては、ヘキサンなどの有機溶媒を用いて脂溶性のビタミンK2を抽出する方法がある。
【0008】
しかし、この方法では、ビタミンK2以外の脂溶性の栄養分も抽出されて除かれるという栄養学上の問題、ヘキサンなどの有機溶媒の除去が必要となるため、製造コストアップにつながるなどの製造技術面での問題、さらに、食品に有機溶媒が残留する可能性、有機溶媒の使用に対する消費者の抵抗感などの問題がある。一方で、ビタミンK2は、骨粗鬆症などに有効であるとされており、その有効利用が望まれている。
【非特許文献1】須見ら、Experientia 43巻、1110頁(1987)
【非特許文献2】西村ら、眼科臨床医報 第88巻、第9号 53〜57頁(1994年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、納豆菌培養液から安全性を考慮したビタミンK2の回収方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ビタミンK2を含有する試料をキトサン処理する工程、および該キトサンに吸着したビタミンK2を有機溶媒で抽出する工程を含む、ビタミンK2の回収方法を提供する。
【0011】
好ましい実施態様では、上記ビタミンK2を含有する試料が納豆菌培養液である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、納豆菌培養液中のビタミンK2をキトサンに吸着させ、これを回収するという簡便な手法で、効率的にビタミンK2が回収される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明で、納豆菌培養エキスには、ナットウキナーゼと、1μg/g乾燥重量以下のビタミンK2とが含有されている。好ましくは、ビタミンK2は0.5μg/g乾燥重量以下、さらに好ましくは0.1μg/g乾燥重量以下含有される。
【0014】
納豆菌培養エキスの形態には、納豆菌を培養し、培養液から菌体がすべて除去され、またビタミンK2のほとんど、またはすべてが除去された培養液自体を含む。納豆菌培養エキスの形態は、液体、粉末、固形であり得る。液体としては、培養液の濃縮液、あるいはペーストであり得る。粉末としては、濃縮液あるいはペーストをさらに乾燥した粉末あるいは顆粒であり得る。固体としては打錠等により得られる錠剤であり得る。錠剤は、糖衣錠など、種々の用途に応じて表面がコーティングされた錠剤であり得る。または、これらの濃縮液、ペースト、粉末、顆粒を含有するカプセルであり得る。また、ドリンクの状態でもあり得る。
【0015】
本発明の納豆菌培養エキスには、ナットウキナーゼが含まれる。ナットウキナーゼの含有量は特に制限がないが、1g当り、20FU以上が好ましく、より好ましくは1000FU以上、さらに好ましくは2500FU以上である。これらは濃度により変動する。乾燥粉末の場合は、上記濃度に加え、5000FU以上であり得、10000FU以上であり得る。ナットウキナーゼ活性の有無は、例えば、非特許文献1に記載された方法などに従い、フィブリンプレート上で溶解斑を形成するか否かで検出できる。なお、本発明で、ナットウキナーゼは、納豆菌により生産され、フィブリンプレート上でクリアなプラークを形成する能力のある酵素を意味する。
【0016】
本発明の納豆培養エキスに含まれるビタミンK2は、1μg/g乾燥重量以下であり、検出限界(0.001μg/g乾燥重量)以下の含量であり得る。ビタミンK2の除去は、キトサンを用いて行う。除去方法は、後述する。このキトサン処理により、ビタミンK2は、培養液から99%以上除去される。
【0017】
以下、納豆菌培養エキスの製造方法について、いわゆる納豆菌(Bacillus subtilis nattoがその代表である)を例に挙げて説明する。なお、この説明において、ビタミンK2などの数値は、用いる納豆菌の種類、培養条件などで変化するものであり、本発明を限定するものではない。
【0018】
納豆菌培養エキスの製造に用いられる微生物は、納豆菌に分類され、ナットウキナーゼを生産できる微生物であれば、いずれの微生物も使用できる。市販の納豆から分離した納豆菌を用いてもよい。
【0019】
納豆菌の培養に用いる培地には特に制限はないが、濃縮液自体が食品になることを考慮して決定することが好ましい。澱粉(例えば、コーンスターチ)、グルコース、蔗糖などの炭素源、脱脂大豆、肉エキスなどの窒素源、炭酸カルシウム、塩化マグネシウムなどの無機塩、必要に応じて脂肪酸などを培地成分として用いて、納豆菌を培養する。これらの培地に使用される成分は、食品添加物グレードであることが好ましい。
【0020】
納豆菌の培養方法には特に制限がないが、大量に培養するためには、通気攪拌培養が好ましい。培養温度は納豆菌が生育できる温度であれば特に制限はないが、30〜45℃が好ましく、32〜42℃がさらに好ましく、37℃前後が最も好ましい。培養は、3〜4日が好ましい。
【0021】
培養終了後の培養物上清中には、一般的には、ナットウキナーゼ活性が約300〜600FU/ml、ビタミンK2が約10〜100μg/g乾燥重量含まれている。この培養物をキトサンと接触させて、ビタミンK2をキトサンに吸着させる。キトサンは溶液でもよく、固体でもよいが溶液状で加えるのが好ましい。
【0022】
キトサン処理として、キトサン単独で培養液を処理する場合、0.1〜1重量%のキトサンを含むキトサン水溶液を用いることが好ましい。好ましいキトサン濃度は0.2〜0.8重量%であり、さらに好ましくは0.3〜0.6重量%である。キトサン単独では溶解しない場合、水溶液のpHを酸性側にすることにより、溶解することができる。食品用途とすることを考慮すると、酢酸を0.05〜1重量%、好ましくは0.1〜0.3重量%添加したキトサン水溶液(キトサン−酢酸混合溶液)を用いることがより好ましい。
【0023】
培養液に対して上記キトサン水溶液またはキトサン−酢酸混合溶液を1〜10重量%、好ましくは5〜10重量%、より好ましくは、6〜8重量%添加し、攪拌して十分に反応させる。その後、例えば、パーライト、珪藻土などの濾過助剤を用いて、加圧型濾過機で濾過して清澄な濾液を得る。また、キトサン溶液あるいはキトサン−酢酸水溶液を培養液に添加した後、パーライト、珪藻土などの濾過助剤を添加して、適切な時間、攪拌して、加圧型濾過機で濾過し、濾液を得ることができる。本明細書でキトサン処理とは、上記いくつかの方法に限定されることなく、キトサンと培養液とを接触させることをいう。
【0024】
なお、キトサンは、水溶液中に溶解しているものの、培養液中の菌体などを吸着し、濾過助剤で除去され、濾液中にはほとんど含まれない。上記キトサン処理により、濾液中のビタミンK2は、99%以上、場合によっては99.9%以上除去される。
【0025】
得られた濾液は、そのまま、あるいはさらに濾過助剤などを用いて精密濾過された後、濃縮機、例えば、逆浸透圧濃縮機を用いて濃縮される。この逆浸透圧濃縮機を用いることにより、分子量100以下の物質は大部分が除去される。さらに、必要に応じて、メンブレンフィルター、例えば、0.5μmおよび/または0.2μmのメンブランフィルターを用いて濃縮液を無菌濾過することにより、納豆菌培養液の濃縮液が得られる。このときの、濃縮液中のビタミンK2の濃度は、1μg/g乾燥重量以下となる。
【0026】
得られた濃縮液は、さらに濃縮されてペースト状となる。また、得られた濃縮液に対し適切な量の食品添加物、例えば、水溶性食物繊維、乳糖、セルロースなどを加え、凍結乾燥して、粉末状、あるいは顆粒状の納豆菌培養エキスが製造される。また、上記得られた濃縮液、ペースト状、粉末状、顆粒状のエキスをカプセルに封入し、納豆菌培養エキスを含有するカプセルが製造される。また、錠剤も製造される。錠剤は、糖衣錠など、種々の用途に応じて表面がコーティングされた錠剤であり得る。
【0027】
他方、キトサン処理した濾過残渣を有機溶媒、例えば、低級アルコール類、ヘキサン、エチルエーテル、アセトン、酢酸エチルまたはこれらの混合溶媒などで抽出し、濃縮することにより、ビタミンK2を含有する粗生成物が得られる。好ましい混合溶媒は、ヘキサン−イソプロピルアルコール(3:2重量比)である。この粗生成物からのビタミンK2の回収には、分子蒸留、水蒸気蒸留などの当業者が通常用いる方法が適用される。このようにして回収されたビタミンK2は、骨粗鬆症などの予防・治療に利用される。
【0028】
なお、ナットウキナーゼの活性とビタミンK2の定量は以下の方法によった。
(A:ナットウキナーゼの活性測定)
ナットウキナーゼをフィブリンに作用させ、フィブリンの分解に伴って増加する酸可溶性低分子分解産物の量を、紫外線(275nm)の吸光度を測定して求める方法で測定した。
【0029】
(a-1:フィブリノーゲン水溶液の調製)
50mMホウ砂緩衝液(pH8.5、150mM NaClを含む)10mlにフィブリノーゲン(シグマ社製、牛血漿由来フィブリノーゲンフラクションI、TYPEI−S)72mg相当分を溶解し、0.72%フィブリノーゲン水溶液を調製した。
【0030】
(a-2:トロンビン溶液の調製)
トロンビン(シグマ社製、牛血漿由来)を50mMホウ砂緩衝液に溶解し、1000U/mlの濃度に調製し、使用時に同じホウ砂緩衝液を用いて50倍に希釈(すなわち、20U/ml)する。
【0031】
(a-3:活性測定)
試験管に50mMホウ砂緩衝液1.4mlおよびフィブリノーゲン水溶液を0.4ml量り取り、37℃±0.3℃の恒温水槽で5分間加温した後、トロンビン溶液0.1mlを加え、攪拌する。混合液を10分間この恒温水槽に放置した後、試料溶液0.1mlを混合液に加え、5秒間攪拌して恒温水槽で放置する。試料溶液を添加してから20分後、および40分後にそれぞれ5秒間攪拌し、60分後に0.2Mトリクロロ酢酸溶液2mlを加えて攪拌し、さらに20分放置する。この反応液を15,000×gで5分間遠心分離し、上清の275nmにおける吸光度(Ar)を測定する。
【0032】
他方で、50mMホウ砂緩衝液1.4mlおよびフィブリノーゲン水溶液を0.4ml量り取り、37℃±0.3℃の恒温水槽で5分間加温した後、トロンビン溶液0.1mlを加え、攪拌する。混合液を10分間この恒温水槽に放置した後、0.2Mトリクロロ酢酸溶液2mlを混合液に加えて攪拌する。次に、試料溶液を0.1ml加えて攪拌し、20分放置する。この反応液を15,000×gで5分間遠心分離し、上清の275nmにおける吸光度(Ac)を測定し、コントロールとする。
【0033】
ナットウキナーゼの活性は以下の式により求められる。
A(FU/ml)={(Ar−Ac)/(0.01×60×0.1)}×D
(Dは希釈倍率)
【0034】
(B:ビタミンK2の定量)
また、ビタミンK2は、以下の方法でHPLC用サンプルを調製し、HPLCで測定した。
(b-1:HPLC用試料の調製)
測定試料0.5ml、水0.5ml、イソプロパノール1.5mlを混和し、その後ヘキサン5mlを加えて攪拌する。遠心分離(1700×g、10分、20℃)を行い、上清(有機層)4mlを濃縮乾固し、100μlのエタノールに溶解して、サンプル溶液とする。
【0035】
(b-2:HPLCの条件)
HPLCの条件は以下の通りである。
カラム:Simazu STR ODS−2 4.6×250mm
溶出液:97%エタノール
流速: 0.7ml/分
検出:UV254nm
この条件におけるビタミンK2の保持時間は16分の後半である。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(試験例1〜2、試験比較例1〜2)
ポリペプトン1重量%、グルコース1重量%、肉エキス0.5重量%、NaCl0.2重量%、pH7.0の培地を含む丸底フラスコにBacillus Nattoを接種後、37℃で18時間培養した。得られた培養液を、同じ組成の培地を含むシード培養槽に接種し、22時間培養してシード培養液を得た。
【0037】
他方で、コーンスターチ6.25重量%、脱脂大豆 3.09重量%、食品添加物グレードの炭酸カルシウム0.15重量%、大豆油1.5重量%、シリコン0.008重量%を含む、pH7.3の本培養培地を準備し、これに上記シード培養液を添加して、通気量0.5VVM、温度37℃で、69時間培養した。得られた培養液中には、470FU/mlのナットウキナーゼと55μg/g培養液のビタミンK2が含まれていた。
【0038】
得られた培養液の一部をとり、培養液200Lに対して、キトサン(株式会社共和テクノス製)0.4重量%、酢酸0.18重量%を含むキトサン水溶液を15kg加え、さらにパーライトを5kg添加し、攪拌した(試験例1)。別の培養液200Lにはこのキトサン水溶液を15kgのみを添加し、攪拌した(試験例2)。さらに別の培養液200Lにはパーライト(商品名:トプコパーライト;日本酵研株式会社製)5kgのみを添加する(試験比較例1)か、珪藻土(商品名:セライト#505、Celite Corporation製:Lompoc CA、93438-0519、米国)5kgのみを添加した(試験比較例2)。それぞれの培養液を1時間攪拌後、加圧型濾過機で濾過して濾液を得た。なお、試験例2では、珪藻土を濾過助剤として濾過した。それぞれの濾液についてビタミンK2量を測定した結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1から明らかなように、キトサン溶液を用いて処理した試験例1および2では、ビタミンK2がほとんど除去されていた。すなわち、キトサンとパーライトとを組合せた場合、ビタミンK2が99.99%除去された。キトサンのみでもビタミンK2が99.72%除去された。これに対して、パーライトのみを用いた場合(試験比較例1)および珪藻土のみを用いた場合(試験比較例2)、ビタミンK2はほとんど除去されなかった。
【0041】
(試験例3)
試験例1で得られた濾液(キトサン−パーライト処理)180Lに、さらに珪藻土を5kg加えて加圧型濾過機を用いて精密濾過し、逆浸透膜を用いて35Lまで濃縮した。この濃縮液を、0.2μmのメンブランフィルターを通過させ、納豆菌培養エキスを得た。この納豆菌培養エキス5Lに対して0.2kgの水溶性食物繊維を加え、凍結乾燥した後粉砕して、納豆菌培養エキスの粉末約800gが得られた。得られた納豆菌培養エキスおよびその粉末中のナットウキナーゼおよびビタミンK2の含量を表2に示す。なお、対照として市販の納豆を22種類購入し、その約50g中のナットウキナーゼおよびビタミンK2の含量を併せて表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
表2の結果が示すように、本発明により、高いナットウキナーゼ活性と0.1μg/g乾燥重量以下の濃度のビタミンK2を含有する納豆菌培養エキスおよび納豆菌培養エキス粉末が得られた。特に、市販の納豆との比較により本発明の有用性が明らかになる。市販の納豆1パック(約50g)には、1000〜2000FUのナットウキナーゼ、および300〜600μgのビタミンK2が含まれている。すなわち、市販の納豆には1g当り、20〜40FUのナットウキナーゼが含まれているにすぎないが、本発明の納豆菌培養エキスおよびその粉末には、それぞれ、1g当り、2500FUおよび13,000FU含まれている。本発明の納豆菌培養エキスおよびその粉末には、ぞれぞれ、市販の納豆の約60〜120倍、および約300〜600倍のナットウキナーゼが含まれていることがわかる。
【0044】
さらに、市販の納豆が1g当り、6〜12μgのビタミンK2を含むのに対して、本発明の納豆菌培養エキスおよびその粉末には、それぞれ、0.01μg、0.05μgのビタミンK2が含まれるに過ぎない。すなわち、本発明の納豆菌培養エキスおよびその粉末には、それぞれ、市販の納豆の約1/500〜1/1000のビタミンK2が含まれているにすぎないことがわかる。
【0045】
なお、必要に応じて、得られた納豆菌培養エキス(濃縮液、ペースト状、粉末状、顆粒状)に、ビタミンK2を添加し、ビタミンK2を富化した納豆菌培養エキスとすることもできる。例えば、得られた納豆菌培養エキスとビタミンK2とを適切な割合、例えば、市販納豆の1パック分(約50g)のナットウキナーゼ活性値1000〜2000FUを含み、かつ、ビタミンK2を成人の1日に必要な摂取量である55〜65μg含むように混合して含有するカプセル、錠剤、ドリンクなどとすることもできる。
【0046】
(実施例1)
試験例1の製造プロセス(キトサン−パーライト処理)で生じた残渣を回収した。回収した残渣500gにへキサン750gとイソプロピルアルコール500gを加えてよく攪拌し、有機層をデカンテーションして集めた。有機層には、120μg/gのビタミンK2が含まれていた。この有機層を濃縮蒸発乾固(60℃)により、精製されたビタミンK2を150mg回収した。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、納豆菌培養液から簡便にビタミンK2を回収できるので、ナットウキナーゼやビタミンK2を利用する健康食品分野で特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンK2を含有する試料をキトサン処理する工程、および該キトサンに吸着したビタミンK2を有機溶媒で抽出する工程を含む、ビタミンK2の回収方法。
【請求項2】
前記ビタミンK2を含有する試料が納豆菌培養液である、請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2006−325597(P2006−325597A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166415(P2006−166415)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【分割の表示】特願2000−120539(P2000−120539)の分割
【原出願日】平成12年4月21日(2000.4.21)
【出願人】(397026458)株式会社日本生物科学研究所 (6)
【Fターム(参考)】