説明

ビタミンK2を含む医薬及び栄養補助製品

任意選択で、かつ好ましくは精製された形態にあるか、又は海産物油(すなわち魚油及び/又はオキアミ油)としての1つ又は複数の多価不飽和脂肪酸と組み合わせて、ビタミンK又はビタミンKクラス化合物内の一化合物を含む医薬及び栄養補助製品を提供する。好ましくは精製された形態にあるか、海産物油としての1つ又は複数の多価不飽和脂肪酸と組み合わせた、骨、軟骨、及び心血管系に関連した障害の治療又は予防におけるビタミンK又はビタミンKクラスの化合物内の一化合物の使用も提供する。ビタミンKクラスの化合物内の好ましい化合物はMK−7、MK−8、MK−9、及びMK−10であり、MK−7又はMK−9がとりわけ好ましい。上記海産物油はオキアミ油又は魚油が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ、多価不飽和脂肪酸、魚油、及びオキアミ油のうちの1つ又は複数と組み合わせて、ビタミンK又はビタミンKクラスの化合物内の一化合物を含む医薬及び栄養補助製品、並びに骨、軟骨、及び心血管系に関連した障害の治療又は予防におけるそれらの使用に関する。詳細には、本発明は、骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化症、及び骨関節炎の治療及び/又は予防におけるそのような製品の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンK
ビタミンKは、メナキノン(「MK」)と呼ばれる化合物の一群であり、これらはすべて、以下の構造式、すなわち、
【化1】


を有する2−メチル−3−all−trans−ポリプレニル化−1,4−ナフトキノンである。
【0003】
様々なMK相互の化学的相違は、側鎖におけるイソプレン単位の数に関するものである。様々なMKが、通常、MK−2、MK−3、MK−4、MK−6(以下略)と呼ばれる。数字はイソプレン単位の数(n=2、n=3、n=4、n=6、...)を意味する。
【0004】
ビタミンKという用語は、様々なMK物質の、天然に存在する混合物を指す。MK−2からMK−13までは、動物及びヒト組織内に天然に存在している。ビタミンKの食物性供給源は、典型的には発酵食品であり、特筆するべきものは、チーズ及びカードチーズである。ある種のヒラメ及びウナギも、なんらかのビタミンKを含有していることがある。「納豆」は、発酵したダイズから産生され、日本では、「健康食品」として、人気のあるビタミンKの供給源となっている。ビタミンKの1日当たりの摂取量は、広範囲にわたって相違している可能性があり、通常は、数μgから数ミリグラムまででありえ、概ね50μg未満である。ビタミンKは、主として心血管系及び骨代謝に関連したヒト健康にいくつかの有益な作用を有することが主張されている。
【0005】
骨粗鬆症
骨粗鬆症は、骨量の低減及び骨の微細構造の変化を特徴とする医学的状態である。世界中で2億人を超える女性が骨粗鬆症を有すると推定されている。骨粗鬆症及び骨粗鬆症性骨折は、主として高齢者人口の急速な増大の結果として、世界中で増加している。骨粗鬆症の治療には、現在、典型的なホルモン療法、カルシウム及びビタミンDの摂取、並びにビスホスホネートを用いた薬物治療が含まれる。
【0006】
アテローム性硬化症
アテローム性硬化症は、腕及び脚に加えて、脳、心臓、及び腎臓を含めたいくつかの重要臓器の動脈に影響を与えうる心臓血管疾患である。ほとんどの西側諸国では、アテローム性硬化症が主要死亡原因となっている。アテローム性硬化症による死亡の数は、すべての癌疾患による死亡を併せた数の約2倍である。アテローム性硬化症は、小児期ほどの早期に開始しうる緩徐に進行する疾患である。アテローム性硬化症では、動脈がそれらの弾性を失い、硬化する。この疾患の発症及び進行に関連した状態がいくつかあり、それらには、肥満、糖尿病、高血圧症、及び喫煙などの危険因子が含まれる。厳密に医学的に言えば、通常、アテローム性動脈硬化症は動脈内膜の炎症性疾患と定義されるが、動脈硬化症は、より広く定義され、中膜メンケベルク硬化症などの血管疾患の他の形態も含む。
【0007】
関節症及び関節炎
関節症、炎症性関節炎、関節リウマチ、及び骨関節炎は、軟骨の疾患であり、それらは関節の変性を特徴とする。病理学的には、軟骨構造の変化がある。これらの疾患は関節で発症し、しばしば、X線によってこれらの疾患を容易に診断できる。これらの疾患の治療には、今日、いくつかのタイプの薬物が使用されている。これらには、単純な鎮痛剤、NSAID、COX2阻害薬、コルチコステロイド、及びグルコサミンが含まれる。
【0008】
骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化症、関節症、及び関節炎へのビタミンKの影響
最近何年かの間に、いくつかの刊行物が、骨粗鬆症へのビタミンK摂取の正の効果について記載している。例えば、W.Sakamotoら、Osteoporosis International 16,1604−1610(2005年);M.Kaneki、Clinical Calcium 15,605−610(2005年);J.Iwamotoら、Current Pharmaceutical Design 10,2557−2576(2004年);K.Nakayama、Horumon to Rinsho 52,339−349(2004年);S.Shiomiら、American Journal of Gastroenterology 97,978−981(2002年)及びT.Hosoi、Bone(Osaka) 14,95−97(2000年)を参照されたい。
【0009】
アテローム性動脈硬化又は同様な状態を治療するためのビタミンK又は納豆の使用に関するいくつかの刊行物がある。例えば、Y.Ozawa、Gifu Daigaku Igakubu 50,20−26(2002年);L.J.Schurgersら、Zeitschrift fur Kardiologie 90(Suppl.3),iii57−iii63(2001年);Y.Seyama、Clinical Calcium 9,873−878(1999年);H.Kawashimaら、Jap.Journal of Pharmacology 75,135−143(1997年)及びJ.M.Geleijnseら、the Journal of Nutrition 134,3100−3105(2004年)を参照されたい。
【0010】
最近の論文において、T.Neoqiら(Arthritis&Rheumatism 54,1255−1261(2006年))は、血清ビタミンKの低レベル状態が骨関節炎の罹患率の増加と関連していると報告した。
【0011】
魚油、オキアミ油、及びn−3 PUFA
多価不飽和脂肪酸、別名PUFAは、2つ以上の二重結合を含有する長鎖脂肪酸である。治療への応用、並びに食物的及び栄養的適用におけるそれらの可能性から、それらへの関心が生じている。それらは、動物、植物、藻類、真菌類、及び細菌類に存在し、膜、貯蔵油、糖脂質、リン脂質、スフィンゴ脂質、及びリポタンパク質などの多くの脂質化合物で広範に見出される。それらは、選択された種子植物、及び一部の海産物供給源から商業的に生産されている。
【0012】
PUFAは、末端二重結合の位置が、その脂肪酸鎖の末端炭素原子から3Cであるか、又は6Cであるかに基づいて二系列に分類される。以下に一部の例を示す。オメガ−3又は(n−3) PUFAとも呼ばれるn−3系列PUFAには、魚油及びオキアミ油などのオメガ−3脂肪酸に富んだ食用油、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、リノレン酸(LA)、並びにα−リノレン酸(ALA)が含まれる。n−6系列PUFAには、γ−リノレン酸(GLA)及びアラキドン酸(AA)が含まれる。
【0013】
オキアミは、北極域及び南極域に生息しているエビのような海洋動物の一群である。オキアミのサイズは、通常5から50mmの間である。数種のオキアミが存在する。北極種には、T.イナーミス(T.inermis)、T.ラッシイ(T.rashii)、T.ロンギカウダ(T.longicauda)、及びM.ノルベジア(M.norvegia)が含まれ、一方、南極種には、ナンキョクオキアミ(E.superba)及びコオリオキアミ(E.crystallorophias)が含まれる。オキアミ及びオキアミ関連製品は、魚用の餌の成分として提案されている。例えば、韓国特許第2005031319号、同第2004087618号、特開2003−070426号、米国特許第6153251号、欧州特許第729708号、ソビエト特許第1784152号、特開平05−030923号、JP0465454号、及び特開昭61−274653号を参照されたい。
【0014】
さらに、オキアミ及びオキアミベースの製品は、魚の釣り餌(fish bait)として(例えば中国特許第1820626号を参照)、共役リノール酸と併用して、疾患を治療及び予防するために(米国特許出願公開第2006078625号)、脂質の酸化を抑制するための添加物として(国際公開第2005075613号)、肥料として(中国特許第1502589号)として、食品中で(特開2004−065152号及び国際公開第2003/003857号)、心臓血管疾患、関節炎、皮膚癌、糖尿病、及び月経前症候群を治療するために(国際公開第2002/102394号)、ざ瘡及び他の疾患を治療するための酵素の供給源として(米国特許第5958406号、同第5945102号、同第6030612号、国際公開第96/24371号、及び国際公開第93/24142号)、並びに多機能性酵素の供給源として(米国特許第6030612号)使用される。オキアミ酵素は、さらに、血栓症治療に用いること(国際公開第95/33471号)、及び歯科使用向け組成物を製造するための使用(国際公開第95/33470号)が提案されている。
【0015】
オキアミ又はオキアミベースの産物は、殺菌剤として(特開平07−033619)、及び抗糖尿病薬として(JP04042369)も提案されており、オキアミ由来のタンパク質は、健康食品の製造用(特開平01−137952)に提案されている。オキアミ及びオキアミ成分に関する他の特許文献は以下の通りである。すなわち、オキアミ脂肪酸を含む歯磨き剤(日本特許第2568833号)、クリルから抽出されたプロテアーゼを含有する皮膚洗浄用化粧品(特開昭63−218610)、クリル由来の抗炎症性プロテイナーゼ(特開昭61−068419)、血栓溶解剤(欧州特許第170115号)、消化促進剤としての酵素組成物(国際公開第85/04809号)、キチン調製物(ポーランド国特許第114387号)、カロテノイド調製物(ポーランド国特許第113328号)、カニ肉様食品(特開昭57−125677、特開昭57−079863、及び特開昭67−050848)、降圧剤(特開昭54−119011)、及びオキアミベースの食品(特開昭60−046947号、特開昭61−023987号、及び特開昭55−040218号)である。
【0016】
オキアミの総脂質含有量は種によって異なる。年間を通した総脂質含有量の変動もある。オキアミの脂質組成も、各種ごとに年間を通して変動する。オキアミの総脂質は、通常5から60%の間である。オキアミの総脂質における総トリグリセリン及びワックスエステルのパーセントは、それぞれほぼゼロから70%まで、広範にわたって変動しうる。トリグリセリン及びワックスエステルに加えて、オキアミ脂質、以下ではオキアミ油は、リン脂質、ステロール、遊離脂肪酸、及び脂肪族アルコールを含む。典型的なリン脂質には、ホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールアミンのような化合物が含まれる。オキアミ油は、オキアミから得られた未精製油の形態にも、精製油又は加工油の形態にもなりうる。不飽和化合物及び多価不飽和化合物は、オキアミ油中の脂肪族化合物における大きい部分を形成している。オキアミ油中の主な脂肪酸成分は、以下の脂肪酸、すなわち、14:0、16:0、16:1(n−7)、18:0、18:1、18:1(n−9)、18:1(n−7)、18:2 15(n−6)、18:3(n−3)、18:4(n−3)、20:1(n−9)、20:5(n−3)、22:1(n−11)、22:6(n−3)である。
【0017】
オキアミ油の組成に関する参照には、例えば、S.Falk−Perdersenら、Can.J.Fish Aquat.Sci.57(Suppl.3)178−191(2000年)、F.Alonzoら、Marine Ecology:Progress Series 296,65−79(2005年)、N.Kusumotoら、J.Oleo Science 53,45−51(2004年)、及び本明細書中の参考文献を参照されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
骨粗鬆症及び心臓血管疾患を治療するための医薬製品がいくつか市販されているが、代替アプローチの緊急な必要性がまだ存在している。
【課題を解決するための手段】
【0019】
驚いたことに、いまや、ビタミンK及び多価不飽和脂肪酸(PUFA)を、長期の貯蔵期限を有する安定した製剤中に共に処方できることが見出されている。
【0020】
したがって、第1の態様では、本発明は、精製されているか、又は魚油若しくはオキアミ油の形態にある少なくとも1つのPUFAと組み合わせて、ビタミンK又はビタミンKクラスの化合物(MK)内の少なくとも1つの化合物を含む医薬又は栄養補助製品を提供する。
【0021】
ビタミンK、とりわけMK−7は、海産物油又はn−3 PUFAの抗凝固作用を打ち消さないことも見出された。
【0022】
より高分子のメナキノン、とりわけMK−7及びそれより高分子のものは、海産物油の潜在的動脈石灰化誘導作用を打ち消すことがさらに見出された。
【0023】
より高分子のメナキノン、とりわけMK−7及びそれより高分子のものは、骨の健康への海産物油の潜在的に否定的な側面を打ち消すことがさらに見出された。
【0024】
より高分子のメナキノン、とりわけMK−7及びそれより高分子のものは、軟骨の健康への海産物油の潜在的に否定的な側面を打ち消すことがさらに見出された。
【0025】
MK−7が他のK群ビタミンより良好に摂取されることが細胞培養研究でさらに見出された。MK−8及びMK−9は、それよりいくらか少ないが、匹敵するレベルで摂取され、一方、MK−4及びビタミンKは、はるかに低い程度までしか摂取されない。
【0026】
長鎖メナキノン、とりわけMK−8及びMK−9は、他の形態のビタミンKより、経口抗凝固薬治療を妨げる可能性が小さいことが細胞培養研究でさらに見出された。
【0027】
したがって、第2の態様では、本発明は、ヒト及び動物の心臓血管の健康、骨の健康、及び軟骨の健康のうちの少なくとも1つを増進するための、好ましくは、精製されているか、又は魚油若しくはオキアミ油の形態にある少なくとも1つのPUFAと組み合わせて、MK−7、MK−8、MK−9、及びMK−10のうちの少なくとも1つを含む医薬又は栄養補助製品を提供する。
【0028】
第3の態様では、本発明は、ヒト及び動物の心臓血管の健康、骨の健康、及び軟骨の健康のうちの少なくとも1つを増進するための、好ましくは、精製されているか、又は魚油若しくはオキアミ油の形態にある少なくとも1つのPUFAと組み合わせた、MK−7、MK−8、MK−9、及びMK−10のうちの少なくとも1つの使用を提供する。前記使用の典型的かつ好ましい例は、心臓血管関連、骨関連、及び軟骨関連の疾患又は障害の1つを予防又は治療するための薬物を調製するための使用である。上記薬物は、単独の薬物として提供しても、キットとして提供してもよい。
【0029】
第4の態様では、本発明は、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、骨粗鬆症、骨関節炎、又は軟骨の炎症性疾患若しくは変性疾患のうちの少なくとも1つの予防又は治療の方法であって、上記に定義された医薬若しくは栄養補助製品又は薬物をヒト又は動物に投与するステップを含む方法を提供する。
【0030】
第5の態様では、本発明は、魚油、オキアミ油、及びPUFAを含有する食品及び食品栄養補助剤の負の側面を打ち消し、それによって前記海産物油及びPUFAの、公衆衛生に有益な側面を強化することに関する。
【0031】
第6の態様では、本発明は、ビタミンK又はビタミンKクラスの化合物(MK)内の一化合物と、精製されているか、又は魚油若しくはオキアミ油の形態にある少なくとも1つのPUFAとを含むキットを提供する。
【0032】
本発明の好ましい実施形態では、PUFAは、本明細書で使用される場合、オメガ−3 PUFA、例えば、エイコサペンタエン酸(EPA)又はドコサヘキサエン酸(DHA)である。
【0033】
本発明のこれらの態様及び他の態様について、以下の詳細な説明及び実施例で、より詳細に論じる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】凝固中の総トロンビン活性を反映する内因性トロンビン産生能(ETP)を示す図である。プールされた正常血漿を参照として用い、高次構造特異的抗体に基づいたサンドイッチELISAを用いて、カルボキシ化及び非カルボキシ化マトリックスGla−タンパク質(MGP)分子種をモニターした。MGPカルボキシ化の変化は、1カ月後に有意であったが、3及び4カ月目の間には有意性が失われていた。下記実験2を参照されたい。
【図2】図1と同じ実験で、高次構造特異的なオステオカルシンキットを用いた、血清中のカルボキシ化及び非カルボキシ化オステオカルシン分子種を示す図である。オステオカルシンカルボキシ化の変化は、1カ月後に有意であったが、3及び4カ月目の間には有意性が失われていた。下記実験3を参照されたい。
【図3】魚油及びオキアミ油中に溶解したMK−7の非常に優れた安定性を示す図である。試料を、密封されたガラスビン内に調製し、それぞれ室温、40℃及び100℃で暗所に保持した。規則的な時点に、試料を採取し、それらのMK−7含有量を分析した。100℃で2週間の後でさえ、MK−7の減失は観察されなかった。下記実験4を参照されたい。
【図4】細胞が存在しない3種の細胞培地(それぞれ、下記の3種の異なった細胞型を増殖させるのに使用した培地)中におけるビタミンK、MK−4、MK−7、MK−8、及びMK−9の安定性を示す図である。下記実験5を参照されたい。
【図5】図5A−Cは、3種の異なった細胞型における細胞性ビタミンK摂取の用量反応曲線を示す。細胞を80%集密状態まで培養し、その後、ビタミンK(すなわち、K、MK−4、MK−7、MK−8、及びMK−9)を様々な濃度で添加した。図5Dは、3種の細胞型におけるMK−7摂取のプロットを同じスケールで示す。下記実験6を参照されたい。
【図6】図6A−Cは、3種の異なった細胞型におけるビタミンK、MK−4、MK−7、MK−8、及びMK−9の細胞内摂取を時間の関数として示す。細胞は、実験5に記載の培地中で培養した。すべての場合で、細胞が80%集密状態に増殖した後に、これらのK群ビタミンの混合物を細胞に添加した。下記実験7を参照されたい。
【図7】図7A−Cは、(Kエポキシド形成によって測定される)様々な形態のビタミンKによって、ワルファリンの作用が迂回される程度を示す。より多くのKOが形成されるほど、DT−ジアホラーゼ酵素を介した迂回の程度が高い。実験8を参照されたい。
【図8】図8A−Cは、ワルファリンの非存在下、但し細胞飢餓条件下で、様々な形態のビタミンKが利用される程度を示す。再生されるビタミンK分子が少なくなる下記実験9を参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0035】
定義
「多価不飽和脂肪酸」という用語は、本明細書で使用される場合、多価不飽和脂肪酸のトリグリセリド、生理的に許容できるエステル、遊離脂肪酸、又は生理的に許容できる塩の形態にあるいかなる多価不飽和脂肪酸も指す。より詳細には、この用語は、オメガ−3脂肪酸、並びに魚油及びオキアミ油などのオメガ−3脂肪性酸性に富んだ食用油を指すのに使用される。文献中では、オメガ−3脂肪酸は、(n−3)多価不飽和脂肪酸又はn−3 PUFAとして知られている。
【0036】
本明細書で使用される場合、「オキアミ油」という用語は、オキアミにおけるすべての親油性成分を示すことが意図されており、未精製のオキアミ油、精製されたオキアミ油、オキアミ油由来の化合物、及びオキアミ油由来の成分の誘導体でありうる。
【0037】
本明細書で使用される場合、魚油及びオキアミ油は、集合的に「海産物油」と呼ばれる。
【0038】
「ビタミンK」という用語は、本明細書で使用される場合、天然存在のメナキノン(MK)又はそれらの混合物を指す。
【0039】
「ビタミンKクラスの化合物のうちの一化合物」という用語は、本明細書で使用される場合、単一のメナキノン(MK)化合物を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「主としてMK−7」という用語は、HPLC分析に従って、その組成物の全ビタミンK化合物のうち少なくとも90%がMK−7である組成物を指す。
【0041】
発明の詳細な説明
本発明は、ビタミンKの薬理特性、及びとりわけ、より高分子のメナキノン(MK−7、MK−8、MK−9、及びMK−10)、並びに純粋な形態、又は魚油若しくはオキアミ油の形態にあるPUFAとのこれらの化合物の組み合わせに対する徹底的な研究における驚くべき特定の新知見に主として基づいている。これらの新知見は、特定の心臓血管関連、骨関連、及び軟骨関連の障害の予防又は治療に関する、医薬及び栄養補助食品分野の改善された製品についての新規な可能性及び課題を提供し、さらに、一般的に、ヒト及び動物の健康への有益な効果をもたらす。
【0042】
これらの新知見について、以下に、より詳細に論じる。
【0043】
魚油、オキアミ油、及びn−3 PUFAの健康効果
心臓血管疾患への顕著な有益な効果を含めた、n−3 PUFAに関するいくつかの健康的側面が報告されている。Van Schoonbeekら(Journal of Nutrition 133,657−660(2003年))によって概説されているように、n−3 PUFA及び海産物油の有益な効果は、血小板活性の低減、より好ましい血液脂質プロフィール、及び血液凝固性の低減を含めた複数の機構に基づいている。
【0044】
海産物油及びn−3 PUFAの血液凝固低下効果は、主として、肝臓のビタミンK状態が低下し、同時にビタミンK依存性の第II、VII、IX、及びX凝固因子が減少して、トロンビン産生能の低減がもたらされる結果と考えられる。C.M.A.Nieuwenhuysらは、「n−6ではなく、n−3 PUFAの長期投与は、アンチトロンビンIIIによるトロンビン不活性化は不変のまま、ビタミンK依存性のトロンビン産生能の低減を介して、血漿の凝固低下状態をもたらしうる」と結論した。ビタミンK依存性凝固因子合成の特異的阻害も、C.Lerayら(Arteriosclerosis,Thrombosis,and Vascular Biology 22,459−463(2001年))によって報告された。これは、一部の食用油はヒトボランティアにおけるビタミンKの吸収及び代謝を妨げうるというL.J.Schurgersら(Journal of Lipid Research 43,878−884(2002年)の観察と一致している。ビタミンK代謝の妨害に関する直接的証明は、魚油及びn−3 PUFAが肝臓(すなわち凝固因子が合成される場所)のビタミンKレベルを減少させたことを示したC.M.A.Nieuwenhuysら(Thrombosis Research 104,137−147(2001年))によって与えられた。さらに、M.Andriamampandryら(Medical Sciences 321,415−421(1998年))は、魚油の穏やかな抗凝固効果がビタミンK摂取のわずかな増大によって完全に反転されたことを実証した。
【0045】
驚いたことに、いまや、ビタミンK(顕著にはMK−7)が魚油の有益な効果を反転させないことが見出されている。通常、1から10μg/日の用量では、MK−7は、外因性トロンビン産生能(ETP)に影響を与えなかった。ETPは、血栓症リスクの最も高感度な尺度である。したがって、n−3 PUFA又は海産物油とビタミンKとの混合物は、両方の種類の化合物の有益な効果を複合する。また、それらは、動物モデル及びヒトボランティアで相乗効果さえ示した。1日当たりの100μg MK−7以上の用量では、海産物油のETP低下効果が完全に反転された。MK−7のこれらの用量は1日当たり5グラムの海産物油摂取と結びついていることに留意するべきである。魚油又はオキアミ油の消費がさらに多い場合にも、ETPの妨害に必要な用量はさらに高い。
【0046】
心臓血管の健康
ビタミンK状態が乏しいことは、穏やかな抗凝固(すなわち抗血栓)効果を有しうるが、ビタミンKは血管の健康の別の側面で必要である。マトリックスGlaタンパク質(MGP)は、動脈血管壁で合成されるビタミンK依存性のタンパク質である。それは、ビタミンK依存性のカルボキシ化によって活性化され、そのカルボキシ化形態で、血管石灰化の強力な阻害剤として働く。アテローム性動脈硬化及び血管石灰化は血管壁のビタミンK状態が乏しいことと密接に関連していることがSchurgersら(Arteriosclerosis,Thrombosis and Vascular Biology 25,1629−1633(2005年))によって、高次構造特異的抗体を用いて実証された。また、前向き臨床試験において、L.A.J.L.M.Braamら(Thrombosis&Haemostasis 91,373−380(2004年))は、高用量のビタミンK栄養補助(1mg/日)が、血管弾性について主要な利点を有することを見出した。本発明者らは、海産物油及びn−3 PUFAが肝臓におけるビタミンK依存性タンパク質(凝固因子)の産生を好ましく低減するだけでなく、肝外組織のビタミンK状態も低減し、それゆえ、オステオカルシン及びマトリックスGla−タンパク質(MGP)を含めた、肝外のビタミンK依存性タンパク質の活性化(グルタミン酸カルボキシ化による)も低減することを見出した。これは、心臓血管の健康、骨の健康、及び軟骨疾患発生への潜在的な有害転帰をもたらす、海産物油及びn−3 PUFAの好ましくない副作用である。血管石灰化阻害剤であるMGPのカルボキシ化の低減は、例えば、血管石灰化、高血圧症、心筋梗塞、及び心臓血管死の主要な危険因子である。
【0047】
驚いたことに、いまや、より高分子のメナキノン、顕著にはMK−7が、1から10μg/日の間の用量で、海産物油の穏やかな抗凝固効果(ETPによって測定される)を打ち消さないが、同時にそれらは、MGPカルボキシ化を、海産物油を用いていない対象におけるレベルに近いレベルか、それを超えたレベルにさえ効果的に刺激することが見出されている。これは、下記実験2に記載されている。したがって、MK−7は、心臓血管の健康用に直接適用されている、海産物油及びn−3 PUFAを含有する食品及び食品栄養補助剤から最大限に利益を得る必須成分である。
【0048】
骨の健康
海産物油及びn−3 PUFAは、骨の健康にも有益な効果を有することが見出されている。実験動物モデルでは、そのような油は、卵巣切除マウス及び食餌制限ラットの骨喪失を著しく減少させる(D.Sunら、Journal of Bone and Mineral Research 18,1206−1216(2003年);Sunら、Bioscience,Biotechnology and Biochemistry 68,2613−2615(2004年))。ビタミンK摂取量が低いこと、ビタミンK状態が乏しいこと、及びオステオカルシンカルボキシ化に障害があることが、骨粗鬆症の発症及び進行の危険因子であると多くの著者らによって報告されている。例えば、S.L.Boothら、American Journal of Clinical Nutrition 77,512−516(2003年)、P.Szulcら、Journal of Clinical Investigation 91,1769−1774(1993年)、C.Vermeerら、European Journal of Nutrition 43,325−325(2004年)を参照されたい。ビタミンK摂取の増大によって、閉経後の女性の骨喪失速度の減少がもたらされることも実証されている(L.A.J.L.M.Braamら、Calcified Tissue International 73,21−26(2003年)、M. Shirakiら、Journal of Bone and Mineral Research 15,515−521(2000年))。これらの研究で用いられる用量は、Kの1mg/日からKの45mg/日までの範囲である。この観点では、オステオカルシンカルボキシ化の、海産油によって誘導された減少は、骨の健康に関する海産物油の利点を部分的に不明瞭にしうる有害な副作用と見なされなければならない。報告されている高用量ビタミンK治療は、この副作用を打ち消しうるが、心臓血管疾病予防に有益であると報告されている穏やかな抗凝固効果も無効にするであろう。
【0049】
驚いたことに、いまや、より高分子のメナキノン、顕著にはMK−7が、1から10μg/日の用量では、海産物油の穏やかな抗凝固効果(ETPによって測定される)を打ち消さず、同時に、オステオカルシンカルボキシ化を、海産物油を用いていない対象におけるレベルに近いレベルか、それを超えたレベルにさえ効果的に刺激することが見出されている。これは下記実験3に記載されている。したがって、MK−7は、骨の健康用に直接適用されている、海産物油及びn−3 PUFAを含有する食品及び食品栄養補助剤から最大限に利益を得る必須成分である。
【0050】
軟骨の健康
海産物油及びn−3 PUFAは、骨関節炎、関節リウマチ、及び強直性脊椎炎で観測されるものなど、変性性関節疾患及び炎症性関節疾患を打ち消すことも見出されている。n−6 PUFAではなく、n−3 PUFAでの栄養補助は、変性性及び炎症性両方の側面の軟骨細胞代謝の低減を引き起こし、一方、正常組織のホメオスタシスには影響を与えないことが細胞培養研究で実証された(C.L.Curtisら、Proc.Nutr.Soc.61,381−389(2002年))。地域住民をベースにした研究も、骨関節炎、関節リウマチ、及び他の軟骨疾患の治療についての魚油及びn−3 PUFAの積極的役割を示唆している(例えば、L.G.Clelandら、Drugs 63,845−853(2003年)及びM.J.Jamesら、Prostaglandins,Leukotriens and Essential Fatty Acids 68,399−405(2003年)を参照されたい)。上述の通り、海産物油及びn−3 PUFAは、肝臓におけるビタミンK依存性タンパク質(凝固因子)の産生を低減するだけでなく、肝外組織のビタミンK状態も低減して、それによって、オステオカルシン及びマトリックスGlaタンパク質(MGP)を含めた、肝外のビタミンK依存性タンパク質の活性化(グルタミン酸カルボキシ化による)を低減する。MGPは、軟骨によって合成されるタンパク質の中で最も量が多いものの1つであり、ビタミンKは、グルタミン酸カルボキシ化によるその活性化に必要である。MGPカルボキシ化が乏しいことは、骨関節炎、関節リウマチ、及び強直性脊椎炎と関連している。明らかに、海産油によって誘導される、軟骨におけるビタミンK状態の低減を打ち消す方法が必要である。
【0051】
驚いたことに、いまや、栄養的に適切な用量では、MK−7は、軟骨の健康に対する、海産物油の潜在的に否定的な側面を打ち消すことが見出されている。より高分子のメナキノン、顕著にはMK−7は、1から10μg/日の用量では、海産物油の穏やかな抗凝固効果(ETPによって測定される)を打ち消さず、同時に、オステオカルシンカルボキシ化及びMGPカルボキシ化の両方を、海産物油を用いていない対象におけるレベルに近いレベルに、又はそれを超えたレベルにまで効果的に刺激したという事実は、海産油の栄養補助中において、MK−7が、関節中の軟骨を含めた、骨における最適なビタミンK状態を提供できることを実証している。したがって、MK−7は、軟骨の健康用に直接適用されている、海産物油及びn−3 PUFAを含有する食品及び食品栄養補助剤から最大限に利益を得る必須成分である。
【0052】
細胞培養研究
一連の細胞培養実験で、様々な条件下におけるビタミンK摂取及び代謝を調査した。以下の形態のビタミンK、すなわち、K、MK−4、MK−7、MK−8、及びMK−9を比較した。3種の異なった細胞型、すなわち、血管平滑筋細胞、骨芽細胞様のMG−63細胞系、及び肝細胞様のHepG2細胞系でそれらを試験した。すべての実験において、各ビタミンを1μmol/L含有する混合物としてビタミンを用いた。
【0053】
すべての細胞で、MK−7が、他のK群ビタミンより良好に摂取されることが見出された。MK−8及びMK−9は、幾分少なく摂取され、K及びMK−4は、さらに少なく摂取された。
【0054】
抗凝固物質であるワルファリンの存在下で、膜結合酵素VKORが阻害され、したがって、ビタミンKが再生できないことも見出された。使用された後、ビタミンKが酸化型(Kエポキシド)のまま残り、エポキシドの量が使用された程度を表す。長鎖メナキノン、とりわけMK−9は還元できず、したがって、これらの条件では、カルボキシラーゼの補酵素として使用されないことが見出された。しかし、より水溶性のビタミンK、及びMK−4は、細胞質酵素であるDT−ジアホラーゼを還元に用い、経口抗凝固薬治療を妨害しうる。したがって、長鎖メナキノンは、他の形態のビタミンKより、経口抗凝固薬治療を妨害する可能性が低い。これは重要な安全面であり、以前に公表されている動物実験(Craciun,A.M.、Groenen−van Dooren,M.M.C.L.、Thijssen,H.H.W.、Vermeer,C.(1998年)、「ビタミンK欠失ラット及びブロディファコウム処置ラットで比較した、K群ビタミンによるプロトロンビン合成の誘導(Induction of prothrombin synthesis by K−vitamins compared in vitamin K−deficient and in brodifacoum−treated rats)」、Biochim.Biophys.Acta 1380,75−81)と一致している。
【0055】
ワルファリンの非存在下、及び富栄養培地中では、エポキシドが全く形成されない。培養培地中のウシ胎児血清の濃度が低減すれば、細胞の栄養状態が最適以下となる。これらの条件下でも、主として、MK−4及びKエポキシドが見出された。ここでの結論は、ワルファリン実験の結論と異なっているが、VKORによる還元のレベルで、長鎖メナキノンが優先的に使用され、K及びMK−4との競合に成功する。したがって、長鎖メナキノンは、様々なタンパク質のγ−カルボキシ化に優先的に使用されると結論できる。これは、ビタミンKの側鎖の長さが増大するに従って、そのミカエリス定数(Km)が低減することを示す以前に公表された無細胞酵素動態研究(Buitenhuis,H.C.、Soute,B.A.M.、Vermeer,C.(1990年)、「肝臓のビタミンK依存性カルボキシラーゼの補因子としてのビタミンK、K、及びKの比較(Comparison of the vitamins K,K and K as cofactors for the hepatic vitamin K−dependent carboxylase)」、Biochim.Biophys.Acta 1034,170−175)と一致している。
【0056】
製品の製剤及び用量
いまや、ビタミンK及び多価不飽和脂肪酸を、長期の貯蔵期限を有する安定製剤中に共に処方ができることが見出されている。例えば、広範な濃度で魚油又はオキアミ油とMK−7を混合した。これらの組成物は、100℃で少なくとも2週間、40℃で6カ月間、また室温で3年間、これらの条件下で安定なままであった。これらの研究の詳細は下記実験4に示されている。
【0057】
上記に定義されているように、「多価不飽和脂肪酸」(PUFA)という用語は、そのトリグリセリド、生理的に許容できるエステル、遊離脂肪酸又は生理的に許容できる塩の形態にある、いかなるPUFAも指す。本発明によるPUFA及びメナキノンの好ましい組成物は、主としてMK−7と混合されたPUFAである。本発明によるPUFA及びMK物質の、より好ましい組成物は、HPLC分析による、組成物中の全ビタミンK化合物の少なくとも95%がMK−7であり、主要なビタミンK不純物がMK−6である組成物である。本発明による組成物における、MK−7とMK−6との間の典型的な比率は、90対10から95対5の範囲である。
【0058】
本発明による、ビタミンK又はビタミンKクラスの化合物内の一化合物とPUFAとの好ましい組成物は、n−3 PUFAから選択されたPUFAを含む組成物である。本発明による、より好ましいn−3 PUFAは、20:5脂肪酸であるエイコサペンタエノン酸(EPA)と、22:6脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA)である。
【0059】
本発明による製品中の、さらに好ましいn−3 PUFA成分は、EPAとDHAとの組み合わせである。EPA:DHAの最も好ましい比率は、2:1から1:2の範囲内である。
【0060】
本発明による最も好ましい組成物では、EPA及びDHAがトリグリセリド又はエチルエステルの形態にある。
【0061】
本発明の製品及びキットの製剤は、全身投与(例えば、経口又は非経口投与)することが好ましい。本発明による最も好ましい剤形は、経口剤形、とりわけカプセル剤及び錠剤である。投与の用量及び経路は、個体の年齢及び性別、並びに障害又は疾患の重度及び性質などの因子に依存する。それらは、当業者、すなわち通常は医師が容易に決定できる。又は、通常、製品に添付されている製造会社の説明書に従うべきである。
【0062】
錠剤及びカプセル剤は、当技術分野で知られている任意の従来法で調製できる。カプセル剤は、例えば、ビタミンK又はビタミンK化合物及び多不飽和脂肪酸に加えて、不活性な薬学的に許容できる成分、例えばデンプンを含む軟ゼラチンカプセル又は硬ゼラチンカプセルでありうる。本発明による錠剤は、例えば、直接圧縮法によって、又は粒剤の圧縮によって、通常の製錠機械を用いて調製されうる。本発明による錠剤は、ビタミンK又はビタミンK化合物及び不飽和脂肪酸に加えて、当技術分野でよく知られている薬学的に許容できる不活性成分を含みうる。そのような薬剤は、例えば、セルロース誘導体及びステアリン酸マグネシウムでありうる。本発明による錠剤は、胃抵抗性のコーティング、例えば、酢酸フタル酸セルロースでコーティングすることができる。
【0063】
本発明による経口剤形、カプセル剤、及び錠剤は、それぞれ100mgから2gの間の重量を有する。錠剤又はカプセル剤それぞれの中のビタミンK又はビタミンK化合物の量は、とりわけ、疾患又は障害の重度及び性質、並びに患者の状態、性別、及び年齢などの因子に応じて、広範囲にわたって変動しうる。錠剤又はカプセル剤1個の中のビタミンK又はビタミンKクラスの化合物内の1つのビタミンK化合物の量は、通常、1から500μgの間であるが、それより多い量も可能である。ビタミンK、及び顕著にはMK−7の好ましい用量は、1日当たり2から300μgの間、より好ましくは5〜50μg、最も好ましくは10〜20μgの間である。
【0064】
錠剤又はカプセル剤それぞれの中の不飽和脂肪酸の量は、不飽和脂肪酸の性質、疾患の重度及び性質、患者の年齢、並びに錠剤又はカプセル剤の投与頻度に応じて変動しうる。錠剤又はカプセル剤それぞれの中の不飽和脂肪酸の量は、通常300から1200mgの間、好ましくは400から1000mgの間、最も好ましくは500から900mgの間である。
【0065】
提示されたデータは、海産物油の穏やかな抗凝固効果を妨害しないで、1日分の海産物油(約5gの用量における)当たり10μgの用量で、MK−7を混合できることを示している。したがって、約1μgから少なくとも10μgの間のMK−7用量(明らかに、前記範囲内では、より高用量であるほどよい)は、ヒト又は動物に投与された場合に有益であることが証明された。1日当たり100μgという高用量は、これらの用量がワルファリンの作用を打ち消すことが判明したので、ここに記載した目的には適用できない。ワルファリンは、n−3 PUFAよりもさらに強い血液凝固因子カルボキシ化阻害剤である。Schurgers,L.J.、Teunissen,K.J.F.、Hamulyak,K.、Knapen,M.H.J.、Vik,H.、Vermeer,C.、「ビタミンK含有食品栄養補助剤:合成ビタミンKと納豆菌由来のメナキノン−7との比較(Vitamin K−containing dietary supplements:comparison of synthetic vitamin K,and natto−derived menaquinone−7)」、Blood 109(2007年)、3279−3283を参照されたい。
【0066】
ビタミンK及び海産物油の用量も、海産物油の種類及び品質に応じて変動しうることが理解されよう。したがって、組成物中の一定の比率を維持するために、海産物油の混合物を用いることが推奨される。
【0067】
ビタミンK又はビタミンKクラスの化合物内の一化合物も、例えば医薬組成物又は栄養補助組成物(食品栄養補助剤)中に、1又は複数種の多価不飽和脂肪酸(魚油及びオキアミ油が含まれる)とは別々に独立して処方できることも理解されよう。適した医薬組成物及び典型的な用量は、上述したものと同様であるか、又は当業者には既知である。適した栄養補助組成物及び典型的な用量は、例えば、欧州特許第1153548号に記載されている。この開示を参照により本明細書に組み込む。
【0068】
本発明による組成物は、薬学的又は栄養補助的に活性な他の成分、例えば、ビタミンD及びビタミンD誘導体などのビタミン;ビスホスホネート、典型的にはアレンドロネートなどの活性薬化合物;又はACE阻害剤、例えばエナラプリル、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト、例えばロサルタン、β遮断断剤、例えばプロプラノロール、スタチンなどの血漿脂質還元成分、典型的にはシンバスタチンなどの心臓血管薬を任意選択で含むことができる。
【0069】
本明細書の開示から理解されるであろうが、より高分子のメナキノン、すなわちMK−7、MK−8、MK−9、及びMK−10の中では、通常、MK−7の使用が最も好ましい。MK−9の有益かつ有望な特性のため、及びMK−9が合成によって容易に生成されることによるその利用可能性のため、MK−9も好ましい。
【0070】
これより下記の実施例及び実験研究を参照して、本発明をさらに説明する。しかし、それらは、いかなる点でも、本発明を限定するものと理解するべきではない。
【実施例1】
【0071】
EPAエチルエステル、DHAエチルエステル、及びMK−7を含むカプセル
97%のMK−7及び3%のMK−6を含む油をEPAエチルエステル及びDHAエチルエステルと混合する。α−トコフェロールを添加し、この結果得られる油を5個の硬ゼラチンカプセルの中に充填する。
【0072】
各カプセルは、
MK−7 97μg
MK−6 3μg
EPAエチルエステル 463mg
DHAエチルエステル 375mg
α−トコフェロール 4mg
を含有する。
【実施例2】
【0073】
ビタミンKを含むタラ肝油
ビタミンKをタラ肝油(EPAX社(ノルウェー国所在))に溶解し、金属密封された緑色ガラスビン(250ml)の中に充填する。これらのビンは、ノルウェー市場販売用に「Vitamin K tran」と標識される。
【0074】
この製品の1日用量(5ml)は、
ビタミンA: 250μg
ビタミンD: 10μg
ビタミンK(MK−7): 10μg
魚油: 1.2g、そのうちDHAは0.4g、EPAは0.6gであった
α−トコフェロール: 4mg
を含有する。
【実施例3】
【0075】
オキアミ油及びMK−7を含むカプセル
トリグリセリン形態の多価不飽和脂肪酸、リン脂質、及び他の天然成分(Enzymotec社(イスラエル国所在)から入手)を含むオキアミ油を、MK−7及びα−トコフェロールと混合する。この結果得られる油組成物を軟ゲルカプセル若しくは硬ゼラチンカプセルの中に充填するか、又は油含有顆粒若しくは溶媒として調製する。
【0076】
各カプセルは、
MK−7 97μg
MK−6 3μg
オキアミ油 700mg
α−トコフェロール 4mg
を含有する。
【実施例4】
【0077】
ビタミンKを含むオキアミ油
ビタミンKをオキアミ油に溶解し、金属密封されたガラスビン(250ml)の中に充填する。これらのビンは、ノルウェー市場販売用に「Krilloljetran med Vitamin K」と標識されるか、又は米国市場用及び英国市場用に「Krill oil including vitamin K」と標識される。1日用量(オキアミ油5ml)は、5から500μgの範囲のビタミンKを含有する。
【実施例5】
【0078】
オキアミ油及びビタミンKを含む魚餌
ビタミンK(100mg)をオキアミ油(1kg)に溶解する。魚餌(Skretting AS社(ノルウェー国スタバンゲル(Stavanger)所在)より入手)を粉砕する。ブレンダーを用いて、粉砕した魚餌(20kg)をビタミンKを含むオキアミ油(1kg)と混合する。水を添加した。このセミウェット物質を篩(3mm)にかけ、40℃で24時間乾燥させて、粒状の魚餌を得る。
【0079】
この粒状の魚餌は、約5%のオキアミ油及び2〜100ppmのビタミンKを含有する。
【実施例6】
【0080】
MK−8カプセル
MK−8を含む油(HPCL分析は総ビタミンKの70%超がMK−8であることを示す)を軟ゼラチンカプセルの中に充填する。各カプセルは5μgのMK−8を含有する。
【実施例7】
【0081】
EPAエチルエステル、DHAエチルエステル、及びMK−8、MK−9、及びMK−10の混合物を含むカプセル
MK−8、MK−9、及びMK−10の混合物を含む油を、EPAエチルエステル及びDHAエチルエステルに混合する。α−トコフェロールを添加し、この結果得られる油を硬ゼラチンカプセルの中に充填する。
【0082】
各カプセルは、
MK−8、MK−9、MK−10 50μg
EPAエチルエステル 463mg
DHAエチルエステル 375mg
α−トコフェロール 4mg
を含有する。
【実施例8】
【0083】
MK8を含むタラ肝油
MK8(HPLC分析によれば65%超)をタラ肝油に溶解し、金属密封された緑色ガラスビン(250ml)の中に充填する。これらのビンは、ノルウェー市場販売用に「Vitamin K2 tran」と標識される。
【0084】
この製品の1日用量(5ml)は、
ビタミンA 250μg
ビタミンD 10μg
MK−8 10μg
オメガ−3脂肪酸 1.2g、そのうち、DHAは0.6g、EPAは0.4gであった
dl−α−トコフェリル酢酸 6mg
を含有する。
【0085】
実験1:骨関節炎、骨障害、及び関節リウマチにおけるオステオカルシンのカルボキシル化度
3つの患者群を募集し、同年齢及び同性の健常な対象と比較した。肝外のビタミンK状態の最も高感度な生物マーカーである、カルボキシル化オステオカルシンと非カルボキシル化オステオカルシンとの比率(cOC/ucOC比)を測定することによって、各対象のビタミンK状態を記録した(B.Panisら、Bone、2006年、39:1123−1129)。骨関節炎及び軟骨疾患を患っている患者は比較的若く、若年の参照群(A)と比較された。関節リウマチの患者は、より年配であり、したがって、より年配の参照群(B)と比較された。オステオカルシンの高次構造特異的アッセイは、Takara社(日本国所在)から入手した。下記表1を参照されたい。
【0086】
この実験は、骨関節炎、軟骨疾患、及び関節リウマチを有する対象におけるビタミンK状態(循環オステオカルシンのカルボキシル化度として表される)が、健康な集団と比較して有意に低減していることを実証する。
【0087】
表1
【表1】

【0088】
実験2:長期にわたる魚油摂取中のMGPカルボキシル化、及び10μg/日のMK−7摂取の効果
20人の健康男性(43±8歳)がこの試験に登録された。平均肥満度指数は25.1±3.5kg/mであった。すべての対象が、1日当たり5グラムの魚油(EPA 35%、DHA 25%、及び他のn−3 PUFA 10%を含有する)を4カ月間摂取した。この試験の最終3カ月の間、すべてのボランティアが、さらに10μgのMK−7を供給する軟ゲルカプセル1個を毎日摂取した。血小板強化血漿を調製するため、毎月、血液試料をクエン酸中に収集した。凝固中の総トロンビン活性を反映する、内因性トロンビン産生能(ETP)を、H.C.Hemkerら(Pathophysiology of Haemostasis and Thrombosis、2003年、33:4−15)に従ってモニターした。プールされた正常血漿を参照として用い、VitaK BV社(オランダ国マーストリヒト(Maastricht)所在)から入手した高次構造特異的抗体に基づいたサンドイッチELISAを用いて、カルボキシル化及び非カルボキシル化マトリックスGlaタンパク質(MGP)分子種をモニターした。図1を参照されたい。カルボキシル化MGPと非カルボキシル化MGPとの比率は、血管のビタミンK状態の尺度と考えられている。すべての値を、プールされた参照血漿の値に対する割合で表す。ETPの変化は、1カ月後に、統計的に有意であり(p<0.05)、その後の数ヶ月にわたって有意なままであった。MGPカルボキシル化の変化も1カ月後に有意であったが、2、3、及び4カ月目の間には有意性が失われていた。
【0089】
この実験は、MGPカルボキシル化を元のレベルに維持するのに必要な低用量のMK−7によって、魚油誘発性の凝固性低下が打ち消されないことを実証する。
【0090】
実験3:長期にわたる魚油摂取中のオステオカルシンカルボキシル化及び10μg/日のMK−7摂取の効果
上述の通りの同じ実験で、血清も収集し、Takara社(日本国所在)の高次構造特異的オステオカルシンキットを用いて、上記血清中のカルボキシル化及び非カルボキシル化オステオカルシン分子種もモニターした。オステオカルシンカルボキシル化の変化は、1カ月後に有意であったが、3及び4カ月目の間では、有意性が失われていた。図2を参照されたい。この実験は、オステオカルシンカルボキシル化を元のレベルに維持するのに必要な低用量のMK−7によって、魚油誘発性の凝固性低下が打ち消されないことを実証する。
【0091】
実験4:魚油及びオキアミ油中のMK−7の安定性
実施例2及び4に記載の組成物(それぞれ、魚油及びオキアミ油中にMK−7が溶解している)を油1g当たりMK−7 2μgの最終濃度で調製した。試料を、密封されたガラスビン内に調製し、それぞれ室温、40℃及び100℃で暗所に保持した。規則的な時点に、試料を採取し、それらのMK−7含有量を分析した。図3を参照されたい。100℃で2週間の後でさえ、MK−7の減失は観察されなかった。この実験は、魚油及びオキアミ油中に溶解したMK−7の非常に優れた安定性を実証する。
【0092】
実験5〜9:細胞培養試験
この系列の細胞培養実験は、様々な条件下でのビタミンK摂取及び代謝について記載する。以下の形態のビタミンK、すなわち、K、MK−4、MK−7、MK−8、及びMK−9を比較した。それらを、3種の異なった細胞型、すなわち血管平滑筋細胞、骨芽細胞様のMG−63細胞系、及び肝細胞様のHepG2細胞系で試験した。ビタミンは、すべての実験で、各ビタミンを1μmol/L含有する混合物として使用した。すべてのデータが、三連の実験の平均値である。
【0093】
様々な培地の組成(v/v)は以下の通りであった。
【表2】

【0094】
実験5
ここで、本発明者らは、細胞が存在していない3種の細胞培養培地における、様々な形態のビタミンK(各1μM)の安定性を検査した。データを図4に示す。
【0095】
結論:3種の増殖培地すべてで、ビタミンK、MK−7、MK−8、及びMK−9は、48時間超にわたってかなり安定であったが、MK−4は、最初の24時間で、ベースラインの70から80%の間の値にまでの減少を示し、48時間後には、ベースラインの60から70%にまでの減少を示した。この減少の理由はまだ明らかではないが、MK−4の消失がビタミンKの細胞内摂取のデータに影響を与えないような条件を選択しなければならない。MK−4の減失を最小限に抑えるために、以降のすべての実験を24時間以内に行った。
【0096】
実験6
細胞を80%集密状態まで培養し、その後、様々な濃度でビタミンKを添加した(図5A〜C参照)。添加されたビタミンK濃度は、nmol/L培養培地として示し、回収されたビタミンKは、nmol/g細胞性タンパク質として示す。各ビタミンごとの異なったスケールに注意されたい。
【0097】
結論:
1.すべてのビタミンの用量反応曲線は、500から1000nmol/Lの間で水平である。したがって、本発明者は飽和条件で作業し、MK4が減少(現在のところ理解されていない)しても、以降の試験結果に影響を与えないであろう。
2.驚いたことに、様々な細胞によるビタミンK摂取にはおびただしい相違があり、血管平滑筋細胞から最高値が得られ、MG63から最低値が得られた。これは図5Dに示されている。この図で、本発明者らは、3つの細胞型におけるMK−7摂取を同一のスケールでプロットした。
3.すべての系で、しかし特に肝外細胞で、驚いたことに、MK−7がK群のビタミンの中で最もよく摂取された。これは以下の実験でさらに実証される。
【0098】
実験7
K群ビタミンの細胞内摂取を経時的に追跡した。すべての場合で、細胞が80%集密状態まで増殖した後に様々なK群ビタミンの混合物(培養培地中に最終濃度1μmol/L)を細胞に添加した。データを図6に示す。驚いたことに、K群ビタミンの中で、MK−7が最もよく摂取された。MK−7を好む、この細胞の選択性の背後にある機序は十分に明らかではない。
【0099】
結論:
1.摂取は4時間後に横ばいになり、8時間でプラトーに達する。
2.摂取の速度及びプラトーレベルの値は各ビタミンごとに異なる。
3.3種の細胞系すべてにおいて、ビタミンの中で、MK−7が最もよく摂取される。
【0100】
実験8
正常条件下では、すべての形態のビタミンKが、それらのキノン形態で摂取され、それらがヒドロキノンに還元された後、γグルタミルカルボキシラーゼ酵素の補因子として活性となる。カルボキシル化中、それらはエポキシドへと酸化され、これらのエポキシドは、膜結合酵素であるVKORで還元することができる。VKORは、クマリン誘導体として知られている薬物の標的となっており、この薬物は、上記酵素を不活性化し、それによって、Kエポキシドの再生を阻止する。DT−ジアホラーゼとして知られている第2の酵素系によって、ビタミンKキノンは還元できる(エポキシドはできない)。したがって、ワルファリンなどのクマリン誘導体の作用は、余剰のビタミンKによって拮抗される。また、ワルファリンの存在下で用いられるビタミンKの各分子も、対応するエポキシドに変換され、それらは、それ以上使用できない。したがって、Kエポキシド濃度は、ワルファリン治療中に用いられるビタミンKの量の直接的測定である。クマリン誘導体は、経口抗凝固薬として広く用いられており、それらの作用様式は、肝臓における凝固因子のカルボキシル化の阻害に基づいている。クマリン誘導体を用いた妨害は、それゆえ、ビタミンK栄養補助剤の潜在的危険性である。したがって、本発明者らは、様々なK群ビタミンがワルファリンを妨げるかどうか、そして、それはどの程度であるか調査した。記載の試験では、ビタミンKを添加する18時間前に、10μmol/Lのワルファリンを培地に添加した。K群ビタミンと共にインキュベートしている間も、この濃度のワルファリンが存在していた。結果を図7に示す。
【0101】
MG63細胞系では、本発明者らは、MK−4エポキシド(MK4−O)を同定できたのみであったが、他の系では、さらに多くのK群ビタミンが、それらのエポキシド形態で検出された。すべての場合で、より水溶性な形態のビタミンK(MK−4及びK)は、ワルファリンの影響を迂回できるが、疎水性度が増大すると、ワルファリンの妨害は、より少なくなることは明らかである。HepG2細胞系は、血液凝固因子が合成される場所である肝細胞を代表するので、この系列で最も重要な細胞型はHepG2細胞系である。ワルファリンの妨害とビタミンK分子種の疎水性度との間には、逆相関関係があることが、図7から明白である。MK−9エポキシドはほとんど形成されなかった。現在、MK−10及びMK−11は市販されていないが、これらの長鎖メナキノンは全く妨害しないであろうと外挿によって予測でき、経口抗凝固薬(クマリン)治療を受けている患者にさえ、サプリメントとして安全に与えることができる。
【0102】
結論:
1.短鎖K群ビタミンであるK及びMK−4は、実質的にワルファリンを妨げるが、長鎖メナキノンによる妨害は、より少ない。
2.ワルファリンの存在下におけるK群ビタミンの利用率は、側鎖の長さに逆相関関係にあり、MK−7>MK−8>MK−9である。
3.これらの実験に基づいて、MK−9及びMK−10は、臨床的に適切な形では経口抗凝固薬治療を妨害しないであろうと予測できる。
【0103】
実験9
長鎖メナキノンが様々な細胞によって良好に吸収されること、及びワルファリン治療中にはそれらがほとんど使用されないことが実証された後には、非抑制的な(ワルファリンなしの)条件下で、これらのビタミンK分子種が積極的に使用されるということが、実証するべきこととして残っている。標準的な細胞培養条件下では、エポキシドが形成されないので、本発明者らは、培養培地中のウシ胎児血清を1%(v/v)に低減することによって、最適以下の生育条件を適用した。これは実質的なエポキシド形成をもたらした。結果を図8に示す。この場合も、短鎖ビタミンKエポキシドは、血管平滑筋MG63細胞で顕著に蓄積されることが見出された。本発明者らは、細胞飢餓条件下における長鎖メナキノンの優先的再生として、これらのデータを解釈する。或いは、これらのデータは、長鎖メナキノンが利用されていないと説明されうる。これは、1%FCSでVSMC及びMG63を培養し、1形態のビタミンKのみが存在していた実験(1μmol/L)で除外された。カルボキシル化オステオカルシン(Takara社(日本国所在))及びカルボキシル化マトリックスGla−タンパク質(VitaK社(オランダ国所在))の高次構造特異的試験キットを用いて、血管平滑筋細胞MGPでは、ビタミンK、MK−4、及びMK−7によってカルボキシル化が刺激され、24時間のインキュベーションの後に培養培地中で以下のMGPレベルに達したことを見出した。
存在下におけるカルボキシル化マトリックスGlaタンパク質:12.4ng/mL、MK−4存在下:10.7ng/ml、及びMK−7存在下:13.5ng/ml。
存在下におけるカルボキシル化オステオカルシン:3.2ng/mL、MK−4存在下:4.1ng/mL、MK−7:3.9ng/mL。
【0104】
これらのデータは、K及びMK−4と同様に、長鎖メナキノンがビタミンK依存性カルボキシラーゼの活性な補因子であり、エポキシドの不在の結果、優先的再生が生じるにちがいないことを実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製されているか、又は海産物油の形態にある少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸と組み合わせて、ビタミンK又はビタミンKクラスの化合物内の少なくとも1つの化合物を含む医薬又は栄養補助製品。
【請求項2】
ヒト及び動物の心臓血管の健康、骨の健康、及び軟骨の健康のうちの少なくとも1つを増進するための、MK−7、MK−8、MK−9、及びMK−10から選択されたビタミンKクラスの化合物内の少なくとも1つの化合物を含む医薬又は栄養補助製品。
【請求項3】
精製されているか、又は海産物油の形態にある少なくとも1つの多価不飽和脂肪酸をさらに含む、請求項2に記載の医薬又は栄養補助製品。
【請求項4】
ヒト及び動物の心臓血管の健康、骨の健康、及び軟骨の健康のうちの少なくとも1つを増進するための、精製されているか、又は海産物油の形態にある多価不飽和脂肪酸のうちの少なくとも1つと組み合わせた、ビタミンK又はビタミンKクラスの化合物内の少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項5】
ヒト及び動物の心臓血管の健康、骨の健康、及び軟骨の健康のうちの少なくとも1つを増進するための、MK−7、MK−8、MK−9、及びMK−10から選択されたビタミンKクラスの化合物内の少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項6】
魚油、オキアミ油、及び多価不飽和脂肪酸を含有する食品及び食品栄養補助剤の特定の負の側面を打ち消し、それによって前記海産物油及び多価不飽和脂肪酸の公衆衛生に有益な側面を強化する際の、MK−7、MK−8、MK−9、及びMK−10から選択されたビタミンKクラスの化合物内の少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項7】
前記MK−7、MK−8、MK−9、及びMK−10のうちの少なくとも1つが、精製されているか、又は海産物油の形態にある多価不飽和脂肪酸のうちの少なくとも1つと組み合わせた状態にある、請求項5又は請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記使用が、心臓血管関連、骨関連、及び軟骨関連の疾患又は障害の少なくとも1つを予防又は治療するための薬物を調製するための使用である、請求項1から7までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、骨粗鬆症、骨関節炎、又は軟骨の炎症性疾患若しくは変性疾患のうちの少なくとも1つの予防又は治療の方法であって、精製されているか、又は海産物油の形態にある、有効量の多価不飽和脂肪酸のうちの少なくとも1つと任意選択で組み合わせて、有効量のビタミンK又はビタミンKクラスの化合物内の少なくとも1つの化合物をヒト又は動物に投与するステップを含む、上記方法。
【請求項10】
有効量の、MK−7、MK−8、MK−9、及びMK10から選択されたビタミンKクラスの化合物内の少なくとも1つの化合物をヒト又は動物に投与するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ビタミンKクラスの中の化合物が、MK−7又はMK−9である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
投与される前記有効量の多価不飽和脂肪酸のうちの少なくとも1つが、魚油又はオキアミ油の形態にある、請求項9から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ビタミンK又はビタミンKクラスの化合物内の化合物と、精製されているか、又は海産物油の形態にある多価不飽和脂肪酸のうちの少なくとも1つとを含むキット。
【請求項14】
前記ビタミンKクラスの化合物内の少なくとも1つの化合物が、MK−7、MK−8、MK−9、及びMK−10から選択される、請求項1に記載の製品又は請求項4に記載の使用。
【請求項15】
前記多価不飽和脂肪酸が魚油又はオキアミ油の形態にある、請求項1から3までのいずれか一項に記載の製品又は請求項4から8までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記多価不飽和脂肪酸がn−3多価不飽和脂肪酸である、請求項1から3までのいずれか一項に記載の製品又は請求項4から8までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記多価不飽和脂肪酸が、EPA、DHA、又はこれらの混合物である、請求項16に記載の製品。
【請求項18】
前記ビタミンK又はビタミンKクラスの化合物内の少なくとも1つの化合物、及び前記脂肪酸が同一の医薬組成物中に供給されている、請求項1に記載の製品。
【請求項19】
前記製品が経口投与用である、請求項1から18までのいずれか一項に記載の製品。
【請求項20】
前記製品が錠剤製剤又はカプセル製剤である、請求項19に記載の製品。
【請求項21】
前記脂肪酸が、トリグリセリド又はエチルエステルの形態にあるEPA及びDHAの組み合わせである、請求項17に記載の製品。
【請求項22】
アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、骨粗鬆症、骨関節炎、又は軟骨の別の炎症性障害若しくは変性障害を予防又は治療するための薬物を調製するための、ビタミンK又はビタミンKクラスの化合物内の少なくとも1つの化合物及び少なくとも1つのn−3多価不飽和脂肪酸の使用。
【請求項23】
請求項1から22までのいずれか一項に記載の、ビタミンK若しくはビタミンKクラスの化合物内の少なくとも1つの化合物の使用、又はビタミンK若しくはビタミンKクラスの化合物内の少なくとも1つの化合物を投与するステップを含む治療若しくは予防の方法であって、前記ビタミンK若しくはビタミンKクラスの化合物内の少なくとも1つの化合物、好ましくはMK−7若しくはMK−9の用量が、1日当たり1μgから500μg、好ましくは2μgから300μg、より好ましくは5μg〜50μg、最も好ましくは10μg〜20μgの範囲にある、上記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−544590(P2009−544590A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519843(P2009−519843)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006241
【国際公開番号】WO2008/006607
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(509014401)ナットファルマ エーエスエー (1)
【Fターム(参考)】