説明

ビチューメン組成物

本発明は、(i)エラストマー0.1〜25重量%(全ビチューメン組成物重量に対し、以下同じ)、(ii)一般式(I)
【化1】


(但し、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜6のヒドロカルビル基を表わし、Rは、炭素原子数1〜6のヒドロカルビル基を表わすが、R及びRの炭素原子数の合計は、5〜7である。)で示される溶剤0.1〜40重量%、(iii)ビチューメン30〜99重量%、(iv)C10〜C40脂肪酸又はヒドロキシ脂肪酸のリチウム塩0.1〜30重量%、及び任意に(v)充填剤0〜70重量%を含むビチューメン組成物、該ビチューメン組成物の製造法、及び該組成物の常温塗布性接着剤としての使用法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビチューメン組成物、ビチューメン組成物の製造方法及びビチューメン組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ビチューメンは、土木工事に広く使用されている多目的材料である。ビチューメンの用法の1つは、建造物や道路表面の亀裂を補修するための接着剤、及び接合シーラントとしてである。接着剤として使用する場合、一般に、ビチューメンは、塗布(apply)する前に作業可能な温度まで加熱する必要がある。しかし、このような加熱は、特定の塗布には不便であり、常温で塗布可能なビチューメン組成物が開発されてきた。即ち、これら組成物は、加熱を必要としない接着剤として塗布できる。このような組成物の1つが、EP−A 37136に記載されている。
【0003】
EP−A 37136の組成物は、ビチューメン、エラストマー、及び脂肪酸のリチウム塩を含む常温塗布性接着剤である。このリチウム塩は、チキソトロープ剤として働き、組成物を塗布後、硬化させる。この組成物は、常温の湿った条件で多くの基体に接着する能力を有し、金属、コンクリートや煉瓦壁に、屋根葺き業界で、また水力用で、シーラントとして、例えば水路ライニング用又はセメントコンクリートダムの防水用のシーラントとして広く使用されている。
【0004】
塗布を容易にするため、EP−A 37136の組成物は、更に芳香族炭化水素溶剤(例えばベンゼン、トルエン、キシレン等)又はハロゲン化炭化水素溶剤(例えばジクロロメタン又は1,1,1−トリクロロエタン)を含有してよい。これらの溶剤は、塗布後、蒸発し、組成物を硬化させる。
【0005】
これまで、EP−A 37136に記載されるような常温塗布性組成物用に好適と考えられてきた溶剤は、芳香族炭化水素溶剤又はハロゲン化溶剤、特に好ましくは1,1,1−トリクロロエタンに過ぎない。しかし、近年、芳香族炭化水素やハロゲン化溶剤は、環境に有害で、人の健康に有害な影響を与えることが見い出されている。したがって、常温塗布性ビチューメン系接着剤の溶剤を置換する手段があれば、有利である。
【特許文献1】EP−A 37136
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エステル系溶剤を含むビチューメン組成物は、常温塗布性接着剤用として優れた特性を有することが、今回、意外にも見い出された。この組成物は、ハロゲン化溶剤又は芳香族炭化水素溶剤に近いか又は同等の特性を有すると共に、エステル系溶剤は、環境上の観点から一層望ましく、しかも人の健康に脅威を引き起こさない点で現存の配合物を改良したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、
(i)エラストマー0.1〜25重量%(全ビチューメン組成物重量に対し、以下同じ)、
(ii)下記一般式(I)で示される溶剤0.1〜40重量%、
(iii)ビチューメン30〜99重量%、
(iv)C10〜C40脂肪酸又はヒドロキシ脂肪酸のリチウム塩0.1〜30重量%、及び任意に
(v)充填剤0〜70重量%、
を含むビチューメン組成物を提供する。
一般式(I):
【化1】

(但し、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜6のヒドロカルビル基を表わし、Rは、炭素原子数1〜6のヒドロカルビル基を表わすが、R及びRの炭素原子数の合計は、5〜7である。)
【0008】
発明の詳細な説明
本発明のビチューメン組成物は、一般式(I)の溶剤を0.1〜40重量%含有する。溶剤量は、ビチューメン組成物の塗布方法に応じて変化させてよい。例えばヘラ、手持ち式(hand−held)カートリッジ又は精密塗布用塗布ガンを用いて塗布する場合、溶剤量は、全ビチューメン組成物に対し、5〜15重量%、好ましくは9〜12重量%の範囲が便利かも知れない。しかし、広い表面を処理するため、ビチューメン組成物をスプレー塗布する場合、溶剤量は、全組成物に対し、15〜30重量%が便利かも知れない。
【0009】
一般式(I)において、R及びRは、各々独立に炭素原子数1〜6のヒドロカルビル基であることが好ましい。一般式(I)のヒドロカルビル基は、置換されていない。ヒドロカルビル基は、線状でも分岐鎖状でも、或いは飽和ても不飽和でもよく、好ましいヒドロカルビル基は、炭素原子数1〜6のアルキル又はアルケニル基であり、更に好ましくは炭素原子数2〜4のアルキル基、例えばエチル、プロピル及びブチル基である。炭素原子数2〜4のn−アルキル基が特に好ましい。
【0010】
一般式(I)において、R及びRの炭素原子数の合計は、5〜7である。これは、炭素原子数の合計が7を超えると、組成物の硬化時間が遅くなりすぎ、また炭素原子数の合計が5未満では、溶剤が極めて燃えやすく、組成物に安全に使用できないからである。R及びRの炭素原子数の合計は、6が好ましい。
【0011】
本発明のビチューメン組成物を塗布すると、一般式(I)の溶剤は、蒸発し、組成物は硬化する。組成物の硬化時間は、組成物の塗布厚に応じて変化できるが、硬化時間は、7〜60日、好ましくは10〜30日が便利である。これに関連して、一般式(I)の溶剤の沸点は、好ましくは110〜180℃、更に好ましくは120〜160℃である。
【0012】
本発明の好ましい実施態様では、ビチューメン組成物は、R及びRが、各々独立に炭素原子数2〜4のアルキル基であり、かつR及びRの炭素原子数の合計が6である。この実施態様で非常に都合よく使用できる溶剤の例としては、吉草酸エチル、イソ吉草酸エチル、2−メチル酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸イソプロピル、プロピオン酸n−ブチル、及びプロピオン酸イソブチルが挙げられる。
【0013】
一般式(I)の溶剤は、市販品として入手でき、及び/又は公知の化学的方法により容易に製造できる。本発明で使用して極めて良好な結果を与える一般式(I)の溶剤は、プロピオン酸n−ブチルで、Eastman Chemical Company Dow Chemical Companyから得られる(沸点145℃)。
【0014】
本発明のビチューメン(iii)は、天然産のビチューメンでも鉱油、例えば分解残留物から誘導されたビチューメンでも、或いは各種ビチューメンのブレンドでもよい。
本発明で都合よく使用できるビチューメンの例としては、蒸留又は“直留”ビチューメン、沈殿ビチューメン(例えばプロパンビチューメン)及び酸化又は空気吹き込みビチューメンが挙げられる。使用可能なその他のビチューメンとしては、これらビチューメンの1種以上と石油の抽出物、蒸留物又は残留物、及び油のような増量剤との混合物がある。好ましいビチューメンは、任意に増量剤を含む、蒸留又は“直留”ビチューメンである。
【0015】
ビチューメン(iii)の針入度は、好ましくは100〜300dmm、更に好ましくは140〜260dmm(EN 1426に従って25℃で測定)である。ビチューメンの軟化点は、好ましくは30〜50℃、更に好ましくは34〜43℃(EN 1427に従って測定)である。
ビチューメン組成物中のビチューメンの量は、全ビチューメン組成物に対し、好ましくは30〜75重量%、更に好ましくは30〜60重量%、最も好ましくは35〜50重量%である。
【0016】
本発明のビチューメン組成物は、エラストマー(i)を全ビチューメン組成物に対し、0.1〜25重量%含有する。エラストマー量は、好ましくは0.2〜10重量%、更に好ましくは0.5〜6重量%、最も好ましくは1〜3重量%である。
本発明のビチューメン組成物には、広範な種類のエラストマーを使用してよい。都合よく使用できるエラストマーの例としては、エラストマーの挙動を示す、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルフィド、ポリシリコーン及びポリエステルアミドが挙げられる。
【0017】
本発明に極めて都合よく使用できる種類のエラストマーは、ブタジエン又はイソプレンのようなジエンの重合体、又はこれらジエンと、スチレンのようなビニル芳香族化合物との共重合体をベースとするエラストマーである。
したがって、本発明の好ましい実施態様では、エラストマーは、少なくとも2つのポリ(モノビニル芳香族炭化水素)末端ブロック及び少なくとも1つのポリ(共役ジエン)中心ブロックを含み、連続網状構造を形成するブロック共重合体である。
【0018】
好ましい実施態様のブロック共重合体は、式A(BA)又は(AB) nXのブロック共重合体よりなる群から選ばれる。式中、Aは、主としてポリ(モノビニル芳香族炭化水素)のブロックを表わし、Bは、主としてポリ(共役ジエン)のブロックを表わし、xは、多価カップリング剤の残余を表わし、nは、1以上、好ましくは2以上の整数を表わし、mは、1以上の整数を表わすが、mは、好ましくは1である。
【0019】
更に好ましくはAブロックは、主としてポリ(スチレン)ブロックを表わし、またBブロックは、主としてポリ(ブタジエン)又はポリ(イソプレン)を表わす。最も好ましいBブロックは、主としてポリ(ブタジエン)である。使用される多価カップリング剤は、当該技術分野で普通に知られているものを含む。用語“主として”とは、ブロックA及びBのそれぞれが、主として、モノビニル芳香族炭化水素モノマー及び共役ジエンモノマーから誘導できることを意味する。但し、両モノマーは、構造的に関連し、又は関連しない他のコモノマーと混合でき、例えば主成分としてモノビニル芳香族炭化水素モノマー及び少量(10%以下)の他のモノマーを混合するか、又はイソプレンと混合したブタジエン又は少量のスチレンと混合したブタジエンであってよいことを意味する。この共重合体は、純ポリ(スチレン)ブロック、純ポリ(イソプレン)ブロック又は純ポリ(ブタジエン)ブロックを含有することが更に好ましい。
【0020】
ブロック共重合体のAブロックの見掛け分子量は、3,000〜100,000の範囲、好ましくは5,000〜50,000の範囲が好ましく、一方、Bブロックの見掛け分子量は、好ましくは10,000〜300,000の範囲、更に好ましくは40,000〜200,000の範囲、最も好ましくは45,000〜120,000の範囲である。
本来製造したポリ(共役ジエン)ブロックは、共役ジエン分子に関し1,2重合で生じるビニル基を通常、5〜50モル%の範囲含有し、好ましくは10〜25モル%の範囲のビニル含有量である。
【0021】
本発明で使用されるブロック共重合体は、重合したビニル芳香族モノマーを好ましくは10〜60重量%の範囲、更に好ましくは15〜45重量%の範囲含有する。
ブロック共重合体全体の見掛け分子量は、好ましくは50,000〜600,000の範囲、更に好ましくは150,000〜550,000の範囲である。
ブロック共重合体は、任意に水素化してよい。水素化は完全でも部分的でもよく、所望ならば、当該技術分野で周知の方法で達成できる。
【0022】
本発明で使用される好ましいエラストマーは、Kraton B.V.(Kratonは商標)から例えばKraton D−1184として得られる。
本発明のビチューメン組成物は、C10〜C40脂肪酸又はヒドロキシ脂肪酸のリチウム塩(iii)を含有する。リチウム塩の量は、全ビチューメン組成物に対し、好ましくは0.5〜20重量%、更に好ましくは1〜10重量%、最も好ましくは2〜6重量%の範囲である。
【0023】
本発明の好ましいリチウム塩は、炭素原子数12〜22の脂肪酸又はヒドロキシ脂肪酸のリチウム塩である。極めて都合よく使用できるリチウム塩の例としては、ステアリン酸リチウム、ヒドロキシステアリン酸リチウム、パルミチン酸リチウム及びヒドロキシパルミチン酸リチウムが挙げられるが、ステアリン酸リチウムが特に好ましい。不飽和脂肪酸のリチウム塩も各種脂肪酸又はヒドロキシ脂肪酸のリチウム塩の混合物と同様に利用してよい。
【0024】
本発明のビチューメン組成物は、任意に1つ以上の充填剤(v)を含有してよい。充填剤の量は、全ビチューメン組成物に対し70重量%以下であってよい。存在する場合、充填剤の量は、全ビチューメン組成物に対し、好ましくは15〜60重量%、更に好ましくは25〜50重量%の範囲である。充填剤は、本来、無機であっても有機であってもよい。都合よく使用できる充填剤の例としては、白亜、石灰石、未ベーク粉末石膏、タルク、フライアッシュ、石炭燃焼廃棄物、二酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、珪藻土及びその他の粘土のような顔料、石英粉(flour)、炭酸カルシウム及びヒュームドシリカが挙げられる。本発明で極めて良好な結果を与えることが見い出された充填剤は、炭酸カルシウムである。
【0025】
疑問を避けるため、当業者が容易に理解するように、本発明のビチューメン組成物において、成分(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v)の合計量は、全ビチューメン組成物に対し100重量%を超えない。
本発明のビチューメン組成物は、ビチューメン接着剤に従来使用されている酸化防止剤、殺菌剤及びはっ水剤のような他の添加物を更に含有してよい。
【0026】
本発明のビチューメン組成物は、当業者に公知の各種方法により製造できる。しかし、この組成物の好ましい製造方法は、エラストマーを前記溶剤中の溶液として、ビチューメンとリチウム塩との予備ブレンドに添加する工程を含む。ビチューメンとリチウム塩とを混合するには、多くの場合、ビチューメンを高温に加熱する必要であるが、存在するビチューメンを分解する恐れがあるので、この方法で組成物を製造することが好ましい。しかし、エラストマーをビチューメンとリチウム塩との予備ブレンドに直接混合するのは困難であるから、添加前に、エラストマーを溶剤に溶解するのが有利である。
【0027】
したがって、本発明は、(i)エラストマー0.1〜25重量%(全ビチューメン組成物重量に対し、以下同じ)及び(ii)下記一般式(I)で示される溶剤0.1〜40重量%を含む第一成分(A)を、(iii)ビチューメン30〜99重量%、(iv)C10〜C40脂肪酸又はヒドロキシ脂肪酸のリチウム塩0.1〜30重量%、及び任意に(v)充填剤0〜70重量%を含む第二成分(B)と混合する工程を含むビチューメン組成物の製造方法を更に提供する。
一般式(I):
【化2】

(但し、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜6のヒドロカルビル基を表わし、Rは、炭素原子数1〜6のヒドロカルビル基を表わすが、R及びRの炭素原子数の合計は、5〜7である。)
本発明方法において、好ましい材料及び量は、本発明のビチューメン組成物について好ましいものとして先に説明した材料及び量と同様である。
【0028】
本方法の成分(A)は、エラストマーを一般式(I)の溶剤に周囲温度(25℃)で溶解することにより、都合よく製造できる。成分(A)中の溶剤に対するエラストマーの量は、変化できるが、全(A)成分に対しエラストマーを1〜25重量%含有できるのが都合よく、更に好ましくは5〜15重量%含有できる。ビチューメン組成物が、酸化防止剤又は撥水剤のような添加物を更に含有する場合、これらの添加物は、成分(A)中に取り込むことが好ましい。
【0029】
成分(B)は、好ましくは、ビチューメンを200〜300℃、更に好ましくは220〜280℃に加熱し、次いで前記リチウム塩を加えることにより製造される。次にビチューメンとリチウム塩とを、好ましくは機械的ミキサーにより500rpmを超える速度、更に好ましくは800〜1200rpmの速度で均質なブレンドが得られるまで、混合する。必要ならば、この混合物に充填剤を高温、好ましくは200〜300℃で添加する。
【0030】
成分(A)は、周囲温度(25℃)で成分(B)に混合してもよいが、必要ならば、(B)成分は、混合を容易にするため、80℃以下、好ましくは50〜80℃に加熱してもよい。成分(A)と成分(B)との相対量は、変化できるが、成分(A)と成分(B)との重量比は、(A)と(B)との合計量に対し1:12〜1:6の範囲が都合よく、1:20〜1:5の範囲が更に好ましいかも知れない。
【0031】
本発明のビチューメン組成物は、金属、コンクリート、木材及びフェルトを含む広範な各種基体上に湿潤条件下でさえ、常温塗布し、かつ使用可能である。したがって、本発明は、本発明のビチューメン組成物を常温塗布性接着剤として使用する方法を更に提供する。“常温塗布性”とは、組成物を、加熱する必要なく、周囲温度(25℃)で塗布できることを意味する。
【0032】
組成物は、常温塗布性接着剤として使用した場合、接合シーラントとして、またコンクリート表面の防水に特に有用である。組成物を特定部分に塗布する場合(例えば接合シーラントとして使用した場合)は、ヘラ、手持ち式カートリッジ又はその他、好適な塗布装置により、周囲温度で塗布するのが都合よいかも知れない。また組成物を広い表面部分に塗布する場合は、スプレー又はブラシで塗布するのが都合よいかも知れない。非常に低温状態で使用する場合は、高沸点(200℃以上)の希釈剤を少量組成物に添加するのが都合よいかも知れない。使用可能な希釈剤の例としては、沸点200℃以上の、脂肪族炭化水素、エーテル、及びジ−又はポリグリコールが挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は、下記実施例の説明から更に理解されよう。
【実施例1】
【0034】

以下の例において、エラストマーの溶解能力を評価するため、選択すべき溶剤についてテストし、また溶剤を含む常温塗布性ビチューメン接着剤の性能を、1,1,1−トリクロロエタンを含む公知の組成物と比較した。
溶解性テスト
各種溶剤を選択し、各溶剤についてエラストマーの10重量%溶剤溶液を作ることにより、エラストマー溶解能力を評価した。使用したエラストマーは、見掛け分子量が420,000で、スチレン含有量が30重量%の非水素化放射状スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(Kraton B.V.から得たKraton D−1184、“Kraton”は商標)である。
【0035】
テストの結果は、溶剤の一般的な3つの挙動として、a)“溶解”:エラストマーが溶剤に完全に溶解した状態、b)“膨潤”:エラストマーが膨潤してゲルを形成した状態、及びc)“散乱(scattering)”:エラストマーが溶剤中に分散した分散液を形成し、外観が乳状液(微細な散乱)又は粗粒子の懸濁液(粗い散乱)の状態を示した。
溶解性テストの結果を第1表に示す。エラストマーが溶解した場合、完全な溶解に要した時間を示した。
【0036】
第1表の溶解性結果から、非芳香族脂肪族炭化水素溶剤は、使用できないゲルを生じ、一方、乳酸エチルやメチルプロキシトールのようなヒドロキシ機能化溶剤は、分散液を形成することが判る。エラストマーを完全に溶解した1,1,1−トリクロロエタン以外の溶剤は、プロピオン酸n−ブチル、デカヒドロナフタレン(DHN)及び臭化n−プロピルであった。
【0037】
【表1】

1:Shell Chemicalsから得た、芳香族含有量の少ない炭化水素溶剤(“Shellsol”は商標)
2:Dercamから商品名“Evolve CH 10”、“Evolve CH 12”及び“Evolve CH 14”で得た非塩素化炭化水素溶剤(“Evolve”は商標)
3:Degussa−Huls A.G.から得たデカヒドロナフタレン(DHN)
4:Eastman Chemical Companyから得たEtCOBu
5:Shell Chemicalsから得た1−メトキシ−2−プロパノール(CHOCHCH(OH)CH
6:Shell Chemicalsから得た1−メトキシ−2−プロパノールアセテート(CHCOCH(CH)CHOCH
7:Dercamから得たCHCHCHBr
8:Dow Chemical Companyから得たCHCH(OH)COEt
9:Dow Chemical Companyから商品名Dowanol PNP(“Dowanol”は商標)で得たプロピレングリコールn−プロピルエーテル(n−PrOCHCH(OH)CH)(PGPE)
【0038】
接着性テスト
各種溶剤を用いてビチューメン組成物を製造し、接着剤としての性能を評価した。
エラストマーと溶剤との混合物(成分A)を、60℃の温度で、ビチューメンとステアリン酸リチウムと充填剤との予備製造混合物(成分B)中に手でブレンドすることにより、ビチューメン組成物を製造した。成分Aと成分Bとの重量比は、3:17(即ち、A 15重量%、B 85重量%)である。
【0039】
成分Bは、25℃での針入度が160〜220dmm(EN 1426に従って測定)のナフテン系直留ビチューメンを全B成分に対し(以下、同じ)48.4重量%、ステアリン酸リチウムを5.6重量%及び炭酸カルシウム充填剤を46.0重量%含有する。このB成分は、ビチューメンを約250℃の温度に加熱し、次いでリチウム塩を添加し、機械的ミキサーにより1000rpmの速度で1時間混合することにより製造した。次に充填剤を220℃の温度で加え、均質なブレンドが得られるまで混合物を撹拌した。
このビチューメン組成物を、広幅のヘラを用いて乾燥煉瓦表面、湿潤煉瓦表面及び水中の煉瓦表面に常温(25℃)塗布した。組成物の接着性能を評価し、またそれぞれの条件下で1週間後の硬化性能を評価した。
これらの結果を第2表に示す。
【0040】
【表2】

良好++;普通+;劣る−;不良−−
接着性
良好:塗布中、完全に接着。
普通:塗布中、若干の未接着部分あり。
劣る:塗布中、大部分接着せず。
不良:塗布中、全く接着せず。
硬化性
良好:溶剤が全て蒸発/移行し、硬い材料を残す。
普通:溶剤が殆ど蒸発/移行するが、材料は未だ十分には硬くならず。
劣る:溶剤が多量に残り、材料はなお柔らかい。
不良:硬化せず。材料は、塗布時から大部分変化せず。
【0041】
第2表から、例1の組成物(プロピオン酸n−ブチルを含有する)だけが、全ての条件で良好な接着性、十分な硬化性及び1,1,1−トリクロロエタン(例6)に近い全性能を示すことが判る。
本発明の組成物を、溶剤として1,1,1−トリクロロエタンを含む組成物と直接比較するため、例1〜6と同様な方法で2つの別の組成物を製造した。これらの組成物を煉瓦に塗布し、溶剤減量を評価するため、周期的にサンプルを計量して、乾燥条件及び水中で硬化性を監視した。
【0042】
これら組成物の内容物及び性能を第3表に示す。第3表では、指標:良好、普通、劣る、及び不良は、第2表に定義したとおりである。
第3表から判るように、本発明のビチューメン組成物(例7)は、乾燥条件下で1,1,1−トリクロロエタン含有組成物(例8)に近い硬化性を示すと共に、水中で硬化させるため、放置した場合は、例8よりも優れた性能を示した。
したがって、以上の例示から、本発明のビチューメン組成物は、全ての面で塩素化溶剤を含有する公知の常温塗布性ビチューメン接着剤に対する優れた代替物であることが判る。
【0043】
【表3】

良好++;普通+;劣る−;不良−−
(i)A成分の全重量に対し
(ii)A+Bの全重量に対し
(iii)ビチューメン組成物の全重量に対し
(iv)Cecaから得たオレイン酸アミン系撥水剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)エラストマー0.1〜25重量%(全ビチューメン組成物重量に対し、以下同じ)、
(ii)下記一般式(I)で示される溶剤0.1〜40重量%、
(iii)ビチューメン30〜99重量%、
(iv)C10〜C40脂肪酸又はヒドロキシ脂肪酸のリチウム塩0.1〜30重量%、及び任意に
(v)充填剤0〜70重量%、
を含むビチューメン組成物。
一般式(I):
【化1】


(但し、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜6のヒドロカルビル基を表わし、Rは、炭素原子数1〜6のヒドロカルビル基を表わすが、R及びRの炭素原子数の合計は、5〜7である。)
【請求項2】
前記エラストマーが、少なくとも2つのポリ(モノビニル芳香族炭化水素)末端ブロック及び少なくとも1つのポリ(共役ジエン)中心ブロックを含むブロック共重合体である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記一般式(I)の溶剤において、R及びRが、各々独立に炭素原子数2〜4のアルキル基を表わし、かつR及びRの炭素原子数の合計が6である請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記一般式(I)の溶剤が、プロピオン酸n−ブチルである請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ビチューメンの針入度が、100〜300dmm(EN 1426に従って25℃で測定)である請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記リチウム塩が、C12〜C22脂肪酸又はヒドロキシ脂肪酸のリチウム塩である請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のビチューメン組成物を常温塗布性接着剤として使用する方法。
【請求項8】
(i)エラストマー0.1〜25重量%(全ビチューメン組成物重量に対し、以下同じ)及び(ii)下記一般式(I)で示される溶剤0.1〜40重量%を含む第一成分(A)を、(iii)ビチューメン30〜99重量%、(iv)C10〜C40脂肪酸又はヒドロキシ脂肪酸のリチウム塩0.1〜30重量%、及び任意に(v)充填剤0〜70重量%を含む第二成分(B)と混合する工程を含むビチューメン組成物の製造方法。
一般式(I):
【化2】


(但し、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜6のヒドロカルビル基を表わし、Rは、炭素原子数1〜6のヒドロカルビル基を表わすが、R及びRの炭素原子数の合計は、5〜7である。)
【請求項9】
前記ビチューメンを200〜300℃に加熱し、次いで前記リチウム塩を加えることにより成分(B)を製造する工程が含まれる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
成分(A)と成分(B)との重量比が、1:20〜1:5の範囲である請求項8又は9に記載の方法。

【公表番号】特表2006−502271(P2006−502271A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−542506(P2004−542506)
【出願日】平成15年10月10日(2003.10.10)
【国際出願番号】PCT/EP2003/050707
【国際公開番号】WO2004/033547
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】