説明

ビデオカメラのフレームタイミングに同期した同期タイミング信号生成器

【課題】実時間映像伝送・処理システムの撮影ビデオカメラのフレームタイミングに同期しているタイミング信号を、同期信号を授受することなく生成し出力することを可能にする。
【解決手段】タイミング信号生成器1は、撮影地Aに配置の撮影ビデオカメラ91と、可変周期信号発生器2と、点灯制御器3と、位相マーカ4と、提示地Bに配置の映像提示装置93と、位相マーカ像PMPの点灯度MVを検出する点灯センサ5あるいは人61と、点灯度MVを撮影地Aに配置の可変周期信号発生器2に伝送するデータ伝送手段72と、を備えている。位相マーカ像PMPの点灯のパターンQMFおよびに点灯度MVに従って基本周期信号XOSの周期を調整して、撮影ビデオカメラ91の映像フレームFLMに同期しているフレーム同期タイミング信号FSTを、同期信号を授受することなく生成し出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の実時間映像伝送システム、または、実時間映像処理システムにおける撮影ビデオカメラのフレームタイミングに同期しているタイミング信号を、当該システムとの間で同期信号の授受を行わずに独立に生成して出力するタイミング信号生成器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の情報処理技術の発達に伴い実時間映像の処理システムや伝送システムが広く用いられている。映像は、通常、実景を単位時間毎の画像フレーム(以下、フレームと呼ぶ)の時系列として撮影用のビデオカメラ(以下、撮影ビデオカメラと呼ぶ)で撮像して形成され、撮像したフレームもしくはインターレース走査においてはフィールド(以下、あわせて撮像フレームと呼ぶ)単位毎に、あるいは、複数の撮像フレーム毎にまとめて処理されて送受信され、提示装置画面上で描画されて提示される。そして、実時間映像処理を行う応用ソフトウェアも等価的には伝送路であるものとして扱われる。このようなシステムにおいては実景の撮像完了から描画完了までに総合遅延時間が経過する。
【0003】
総合遅延時間は、実時間映像を扱うシステムではその大きさを知っておくことが要求される。たとえば、遠隔操作システム、遠隔会議システムのように実時間映像をユーザインターフェースとする対話的システムにおいては、総合遅延時間がシステムの使い勝手を決めるので、その特性を知っておくことは重要である。さらには、パケット伝送による映像データ伝送においてはバッファの存在が不可欠で、総合遅延時間の変化特性を把握した上で提示画面生成を行うことが必要であり、また、スレテオ映像の表示においては、左眼用と右眼用に描画する映像間の時間ずれを両映像の総合遅延時間から知ることができるならば、良好な視聴環境を構築できる。
【0004】
ところで、一般的な実時間映像伝送システムの総合遅延時間特性を非侵襲で精度良く測定する方法として点滅マーカ付きタイマを用いる方法(以下、点滅マーカ法と呼ぶ)がある。
【先行技術文献】

【学術論文1】
新居ほか「点滅マーカ付きタイマを用いる総合映像伝送遅延時間計測」日本バーチャルリアリティ学会第12回大会論文集、215頁(平成19年)。
【0005】
【学術論文2】
新居ほか「実時間映像伝送システムの総合遅延時間の一計測法」日本バーチャルリアリティ学会論文誌第14巻第3号、399頁(平成21年)。
【0006】
【特許文献1】特開2009−171334号公報
【0007】
点滅マーカ法によると、計測するシステム(以下、計測システムと呼ぶ)と計測対象のシステム(以下、被計測システムと呼ぶ)との間で同期信号の授受を行わないので、撮影ビデオカメラのフレーム周期と点滅マーカの点滅周期が異なっていて非同期であり、撮影ビデオカメラが撮像したフレームのうちの一部が計測原理を満足しないために総合遅延時間が得られなかったり、得られても大きな誤りを含んでいたりする。
【0008】
上述の点滅マーカ法に存在する課題は、撮影ビデオカメラのフレームタイミングを用いる点滅マーカ法(以下、同期式点滅マーカ法と呼ぶ)で解決されている。
【先行技術文献】

【学術論文3】
松尾ほか「撮影側でモニタ可能な場合の点滅マーカ法による実時間映像の総合遅延時間計測」日本バーチャルリアリティ学会第14回大会論文集、3C4−2(平成21年)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、同期式点滅マーカ法によれば、提示装置画面上で描画された全撮像フレームについて総合遅延時間を詳細に計測できるものの、計測システムと被計測システムとの間で同期信号の授受を行い撮影ビデオカメラのフレームタイミングを利用可能であることが計測を実施できる条件であって、同期信号の授受を行えなくて撮影ビデオカメラのフレームタイミングを利用することができない被計測システムを対象とすることができない(課題)。
【0010】
本発明は、上記課題を解消するものであって、前記撮影ビデオカメラのフレームタイミングに同期しているタイミング信号(以下、フレーム同期タイミング信号と呼ぶ)を前記計測システムと前記被計測システムとの間で同期信号を授受することなく生成して出力できるようにしたものである。(課題の解決)
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題の解決を達成するために、請求項1の発明は、撮影地に配置された撮影ビデオカメラと、前記撮影ビデオカメラによって撮像された映像を処理し提示地に伝送する映像伝送手段と、提示地に配置され前記映像伝送手段によって伝送された映像を受信し処理して提示する映像提示装置とを備えた実時間映像伝送システムを対象とする、または、撮影地に配置された撮影ビデオカメラと、映像処理手段と、提示地に配置され前記映像処理手段によって処理された映像を提示する映像提示装置とを備えた実時間映像処理システムを対象とする、前記撮影ビデオカメラのフレームタイミングに同期したフレーム同期タイミング信号を生成するタイミング信号生成器において、撮影地に配置されて前記撮影ビデオカメラによって撮像される複数の光源で構築された位相マーカと、撮影地に配置されて同期タイミング信号を生成して出力する可変周期信号発生器と、撮影地に配置されて前記可変周期信号発生器の出力する同期タイミング信号に駆動されて前記位相マーカの点灯状態を制御する点灯制御器と、提示地に配置されて前記映像提示装置によって提示される前記位相マーカの像の点灯度を測定すると共に点灯度を出力する点灯センサと、提示地に配置されて前記点灯センサが出力する点灯度を撮影地に向けて送出するデータ送信器と、提示地と撮影地との間でデータを伝送する伝送路と、撮影地に配置されて前記データ送信器から前記伝送路を介して送られて来たデータを受信し前記可変周期信号発生器に入力するデータ受信器と、を備え、前記撮影ビデオカメラによって前記位相マーカを撮像し、その撮像された映像を前記実時間映像システムの映像伝送手段によって伝送するか前期実時間映像処理システムの映像処理手段によって処理するかした後、前記映像提示装置によって提示し、前記映像提示装置によって提示された前記位相マーカの像から前記位相マーカの点灯度を前記点灯センサで測定すると共に点灯度を出力して前記データ送信器で撮影地に前記伝送路で伝送し、前記データ受信器で受信して、受信した前記位相マーカ像の前記点灯度に依って前記可変周期信号発生器の出力する前記同期タイミング信号の周期を調整することにより前記実時間映像伝送システム、または、前記実時間映像処理システムとの間で同期信号を授受することなく前記撮影ビデオカメラのフレームタイミングに同期したフレーム同期タイミング信号を生成して出力するようにしたものである。
【0012】
請求項2の発明は、提示地に配置されて前記映像提示装置によって提示される前記位相マーカの像の点灯度を前記点灯センサに依らずに人が読み取って点灯度とし、提示地に配置されて前記点灯度を入力することができる点灯度入力器を用いて前記点灯度を入力し、前記データ送信器で撮影地に前記伝送路で伝送し、前記データ受信器で受信して、受信した前記位相マーカ像の前記点灯度に依って前記可変周期信号発生器の出力する前記同期タイミング信号の周期を調整することにより前記実時間映像伝送システム、または、前記実時間映像処理システムとの間で同期信号を授受することなく前記撮影ビデオカメラのフレームタイミングに同期したフレーム同期タイミング信号を生成して出力するようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、撮影ビデオカメラによって前記位相マーカを撮像し、その撮像された映像を前記実時間映像システムの映像伝送手段によって伝送するか前期実時間映像処理システムの映像処理手段によって処理するかした後、前記映像提示装置によって提示し、前記映像提示装置によって提示された前記位相マーカの像から前記位相マーカの点灯度を前記点灯センサで測定すると共に点灯度を出力して前記データ送信器で撮影地に前記伝送路で伝送し、前記データ受信器で受信して、受信した前記位相マーカ像の前記点灯度に依って前記可変周期信号発生器の出力する前記同期タイミング信号の周期を調整することにより、前記実時間映像伝送システム、または、前記実時間映像処理システムとの間で同期信号を授受することなく前記撮影ビデオカメラのフレームタイミングに同期したフレーム同期タイミング信号を生成して出力することができる。これによって既存の同期式点滅マーカ法を総合遅延時間の計測に採用する際に必須であった前記被計測システムとの間の同期信号の授受が不要になり、前記撮影ビデオカメラのフレームタイミングを利用することができない被計測システム(以下、同期対象システムと呼ぶ)についても前記同期式点滅マーカ法による計測と同一の結果を得ることを期待できる総合遅延時間計測ができるようになる。
【0014】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明により可能とした前記同期対象システムとの間で同期信号の授受を行わずに独立に前記撮影ビデオカメラのフレームタイミングに同期したフレーム同期タイミング信号を生成して出力する際に、前記位相マーカの像から前記位相マーカの点灯度を測定する前記点灯センサを用いることなく、人が前記可変周期信号発生器の出力する同期タイミング信号の周期を調整することができる。
【0015】
請求項1及び請求項2の発明によれば、同期対象システムの撮影ビデオカメラのフレームタイミングに同期して前記可変周期信号発生器が生成するフレーム同期タイミング信号を、総合遅延時間計測を目的とすることの以外に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るタイミング信号生成器のブロック構成図。
【図2】位相マーカの光源素子の配置の例。
【図3】位相マーカ像の例を含めたタイミング信号生成器の模式的構成図。
【図4】可変周期信号発生器の構成図。
【図5】位相マーカの点灯信号を生成する点灯制御器の構成図。
【図6】シャッタ開口期間と位相マーカの点灯期間との関係で決まる位相マーカ像のパターンの説明図(シャッタ開口は1回)。
【図7】同期タイミング信号生成器を位相同期系として扱う時の位相比較器特性を表す図
【図8】位相誤差と点灯パターンの関係の説明図(位相マーカの点灯周期が短い)
【図9】位相誤差と点灯パターンの関係の説明図(位相マーカの点灯周期が長い)
【図10】シャッタ開口期間と位相マーカの点灯期間との関係で決まる位相マーカ像のパターンの説明図(シャッタ開口は複数回)。
【図11】フレーム同期タイミング信号を生成できて総合遅延時間を測定した結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る同期タイミング信号生成器および同期タイミング信号生成方法について、図面を参照して説明する。図1はタイミング信号生成器のブロック構成を示し、図2は位相マーカの光源素子の配置の例を示し、図3はタイミング信号生成器の模式的構成を示し、図4は可変周期信号発生器のブロック構成を示し、図5は点灯制御器のブロック構成を示し、図6ではシャッタ開口1回の場合のシャッタ開口期間と位相マーカの点灯期間との関係で決まる位相マーカ像の点灯パターンを示し、図7は同期タイミング信号生成器を位相同期系として扱う時の位相比較器特性を表し、図8、図9は位相誤差と点灯パターンの関係を示し、図10ではシャッタ開口複数回の場合のシャッタ開口期間と位相マーカの点灯期間との関係で決まる位相マーカ像の点灯パターンを示し、図11は同期タイミング信号生成器および同期タイミング信号生成方法を同期式点滅マーカ法に適用して総合遅延時間を計測できている例である。
【0018】
また、図4、図5において、破線枠による囲いは信号および作用を示し、それを含有する機器(実線枠により囲ってある)の内部で発生するものである。図中の符号は、信号、作用、調整設定に注目したものである。図6、図10において、信号、作用に関してその存在の順番に依って符号を変える必要のあるものは符号の前に文字「#」を付与して記述することとする。(例、図6におけるシャッタ開口期間#6su、#6sy、#6sw)
【0019】
図1に示すように、同期対象システム90は、撮影地Aに配置された撮影ビデオカメラ91と、撮影ビデオカメラ91によって撮像された映像のフレームを伝送する映像伝送手段または処理する映像処理手段92(以下、映像伝送路92とも称する)と、投影地Bに配置され映像伝送路92によって伝えられた映像を提示する映像提示装置93とを備えている。
【0020】
この映像提示装置93は、総合遅延時間を計る対象としての提示装置であってもよく、そうでなくてもよい。たとえば、ビデオカメラに付属しているモニタ画面や、ビデオカメラを内蔵しているノート型コンピュータのモニタ画面を、映像提示装置93とすることができる。これらビデオカメラが撮った映像が映像提示装置93とは別個の映像提示装置に映されていて、この別個の映像提示装置が総合遅延時間を計る対象とされていてもよい。このような場合には、映像伝送路92はビデオカメラとモニタ画面を一体で有している機器内に存在し、同期対象システム90はこのビデオカメラとモニタ画面を一体で有している単体の機器であることになる。
【0021】
図1において、太い矢印は位相マーカ4の点灯状態を表す情報がタイミング信号生成器1と同期対象システム90との間で同期対象システム90が伝送する映像を介してやり取りされる様子を表す。
【0022】
タイミング信号生成器1は、既存の同期対象システム90との間で同期信号の授受を行わずに、同期対象システム90の撮影ビデオカメラ91のフレームタイミングに同期したフレーム同期タイミング信号を生成して出力する。
【0023】
このために、タイミング信号生成器1は、前記位相マーカ4の点灯状態を調整することによって前記撮影ビデオカメラのフレームタイミングに同期したフレーム同期タイミング信号を生成して出力するようにした負帰還制御系を構成している。
【0024】
図1、図3、図4、図5に示すように、負帰還制御系を構成するためにタイミング信号生成器1は、撮影地Aに配置されてデータ受信器71によって受信した位相マーカの点灯程度の測定値(以下、点灯度と呼ぶ)MVを調整し基本周期信号発振器22に依って基本周期信号XOSを出力する可変周期信号発生器2と、基本周期信号XOSを基にして点灯信号PMS並びにフレーム同期タイミング信号FSTを生成する点灯制御器3と、点灯信号PMSに従って点灯する位相マーカ4と、提示地Bに設置されて同期対象システム90の映像提示装置93が提示する位相マーカ4の像から位相マーカ4aの点灯度MVを測定する点灯センサ5と、人61が目視によって測定した点灯度MVを入力する点灯度入力器62と、点灯センサ5からの出力かもしくは点灯度入力器62からの出力かのいずれかを選択してデータ送信器73へ送る選択器63と、データ送信器73からのデータを撮影地Aに配置されたデータ受信器71に伝送する伝送路72(以下、データ伝送手段72とも称する)と、を備えている。
【0025】
なお、同期対象システム90の構造に依存して、単一機器内において同期対象システム90を構成している場合や、撮影ビデオカメラ91と映像提示装置93とが近接して配置されている場合には、撮影地Aと提示地Bは遠隔に存在することにはならない。
【0026】
(位相マーカ)
次に、図2を参照して、位相マーカ4の構成と機能を説明する。図2には、個数Nの光源から成る光源群42が横向きに配置されている様子を表してある。
【0027】
光源群42中の1個の光源の点灯は左端に配置されてある光源41Lから時間とともに右端に配置されてある光源41Rに順次移行して行く。光源41Aは点灯中であることを表してある。光源群42の個々の光源は、点灯した後に送り時間間隔STTが経過すると消灯する。したがって、位相マーカ4の光源群42の光源がすべて点灯する延べ時間は、光源の個数Nと送り時間間隔STTとの積に等しくなる。位相マーカ4の光源素子の点灯制御の詳細は後述する。(図5参照)
【0028】
図3において、位相マーカ4は一方の端の光源41Lから他方の端の光源41Rまで、例として、20個の光源から構成された光源群42を持つとし、さらに例として、光源41Bが点灯中であることを描いてある。
【0029】
おなじく図3において、撮像フレームを構成するための走査の方向と平行に位相マーカ4が設置され、映像提示装置93の画面には位相マーカ4の像4aが表示されていて、位相マーカ4の光源の複数が点灯状態にあることを映像提示装置93が提示している様子を表してある。また、点灯センサ5において、位相マーカ4の光源群42の像(以下、位相マーカ像と呼ぶ)42aを点灯センサ5の入力部ビデオカメラ51が感知して感知フレーム52を取得し、この感知フレーム52に写っている位相マーカ像42aの像42aaを画像処理して点灯状態にある光源の像の数を計数して点灯度MVを算出し、この点灯度MVを選択器63に送っている様子を表してある。ただし、図3はタイミング信号生成器1の動作原理を模式的に示したものであり、人61が目視によって点灯度MVを測定し点灯度値入力器を介して選択器63に送る場合の接続を略してある。
【0030】
タイミング信号生成器1は、上述の構成のもとで、位相マーカ像42aにおいて点灯状態にある光源の像の数を点灯センサ5もしくは人61によって測定して点灯度MVとし、この点灯度MVを可変周期信号発生器2に送り、点灯度MVが変化しないようにするために可変周期信号発生器2が生成する基本周期信号XOSの周期を負帰還制御によって調整する。
【0031】
また、タイミング信号生成器1は、点灯度MVが時間経過によって変化しない状態にある間は、基本周期信号XOSの存在時刻から位相調整値PCVだけ遅れたフレーム同期タイミング信号FSTを、撮影ビデオカメラ91のフレームタイミングに同期している信号として点灯制御器3から出力する。位相調整値PCVの設定の詳細は後述する。(図5乃至図10参照)
【0032】
(可変周期信号発生器)
次に、図4を参照して、可変周期信号発生器2における基本周期信号XOSの周期を調整する方法について説明する。データ受信器71は位相マーカ像42aの点灯度MVを受信して、可変周期信号発生器2の制御特性調整器21に入力する。制御特性調整器21は負帰還制御によって基本周期信号XOSの周期を調整するための制御応答特性を調整するためのものであり、図1で示した閉ループを構成する際に安定な制御を行うことができるように制御特性CTVを設定できるようにしてある。
【0033】
制御特性調整器21は、生成周期調整信号DASを出力して基本周期信号発振器22の生成する基本周期信号XOSの周期を調整する。基本周期信号発振器22は電圧制御発振器であって、基本周期信号XOSの周期の変化量は生成周期調整信号DASの大きさに比例する。すなわち、生成周期調整信号DASの大きさが時間経過とともに変化しなければ基本周期信号XOSの周期は変化しない。
【0034】
(点灯制御器)
次に、図5を参照して、点灯制御器3における点灯信号PMSの生成方法とフレーム同期タイミング信号FSTの生成方法について説明する。
【0035】
位相マーカ4が点灯を開始することの周期は、基本周期信号XOSの周期と等しく、基本周期信号XOSが存在する時刻から点灯開始遅れSOTだけ経過した後に光源41Lが点灯を開始するように、点灯制御器3の中の点灯信号生成器31が点灯信号PMSを生成し、位相マーカ4を駆動する。点灯開始遅れSOTは点灯制御器3において設定する。
【0036】
そして、点灯信号PMSが位相マーカ4に向けて送出され、光源41Lが点灯する。光源41Lは送り時間間隔STTの間は点灯が続き、その後に光源41Lの右の光源が点灯を開始するように点灯信号PMSが変化する。以降、光源41Rまで点灯状態にある光源が順次移っていく。
【0037】
このとき、点灯開始遅れSOTと送り時間間隔STTを調整することで撮影ビデオカメラ91のシャッタ開口と位相マーカ4の点灯との位相関係を調整することができる。(図6、図10参照)
【0038】
さらにまた、点灯制御器3は点灯信号PMSを生成することとは別に、基本周期信号XOSの存在時刻から位相調整値PCVだけ経過した時刻にフレーム同期タイミング信号FSTを出力する。位相調整値PCVを調整することで、フレーム同期タイミング信号FSTの位相を撮影ビデオカメラ91のフレームタイミングに合わせることができる。撮影ビデオカメラ91のフレームタイミングとしては、撮影ビデオカメラ91が出力しているであろう垂直同期タイミングを想定できる。
【0039】
(撮影カメラが撮像フレームを1回のシャッタ開口で取得している場合)
図6を参照して、1回のシャッタ開口で撮像フレームを取得する撮影ビデオカメラ91でもって位相マーカ4の光源群42を撮像した場合について、撮影ビデオカメラ91のシャッタ開口期間と光源群42の全光源の点灯延べ時間SPMとの重なり状況に依存して、映像提示装置93において光源群42の各々の光源の像の点滅状態が異なることを説明する。1回のシャッタ開口で撮像フレームを取得するビデオカメラの例としてはCCD素子を撮像部に使用しているカメラがある。
【0040】
図6においては、各機器の動作の相互関連を各機器に関連づけて説明するため、撮影ビデオカメラ91をQMA、撮影ビデオカメラQMAのシャッタをSHT、位相マーカ4をPMK、位相マーカ像42aをPMP、位相マーカ像PMP中に見られるの光源群42の像の点灯パターンをQMFによって表してある。すなわち、これらの符号は、機器に関連して時間変化する様子に注目してつけられた符号である。
【0041】
また、撮影ビデオカメラQMAのシャッタ開口期間の長さはSQMと表してあり、開口の周期、すなわち、フレームタイミングの周期はPQMと表してある。#6su、#6sy、#6swは個々のシャッタ開口期間を区別するために付与した呼称である。またさらに、基本周期信号XOSの周期はPXOと表してある。#6mu、#6my、#6mwは光源群42の全点灯期間(全点灯期間の長さは点灯延べ時間SPMに同じ)を区別するために付与した呼称である。
【0042】
時間変化する様子に注目してつけられた符号は図10においても同様である。
【0043】
図6を再度参照して、シャッタ開口SHTの期間と光源群42の全点灯期間との重なり方の違いに依存して、映像提示画面93上に提示される位相マーカ像PMPは異なる点灯パターンQMFになるので、図6における撮像フレーム出力#6fuで模式的に示した点灯パターンを左方光源像点灯パターンPTuと、撮像フレーム出力#6fyで模式的に示した点灯パターンを中央部光源像点灯パターンPTyと、撮像フレーム出力#6fwで模式的に示した点灯パターンを右方光源像点灯パターンPTwと呼ぶことにする。
【0044】
すなわち、左方光源像点灯パターンPTuは左方に配置された光源素子が点灯し右方に配置された光源素子が消灯している像である。中央部光源像点灯パターンPTyは中央付近に配置された光源素子が点灯し左方及び右方に配置された光源素子が消灯している像である。右方光源像点灯パターンPTwは右方に配置された光源素子が点灯し左方に配置された光源素子が消灯している像である。
【0045】
シャッタ開口期間#6suにおいて、シャッタ開口後に光源42の点灯期間#6muが始まり、シャッタ閉口後に点灯期間#6muが終了する。シャッタ閉口後に点灯する光源の像は、シャッタ開口期間中は消灯の状態が撮影ビデオカメラQMAによって撮像されたものになる。したがって、映像提示装置93において提示される位相マーカ像PMPは左方光源像点灯パターンPTuを示すことになる。
【0046】
シャッタ開口期間#6syにおいて、シャッタ開口前に光源42の点灯期間#6myが始まり、シャッタ閉口後に点灯期間#6myが終了する。したがって、映像提示装置93において提示される位相マーカ像PMPは中央部光源像点灯パターンPTyを示すことになる。
【0047】
シャッタ開口期間#6swにおいて、シャッタ開口前に光源42の点灯期間#6mwが始まり、シャッタ閉口前に点灯期間#6mwが終了する。したがって、映像提示装置93において提示される位相マーカ像PMPは右方光源像点灯パターンPTwを示すことになる。
【0048】
位相マーカ像42aには図6に示した点灯パターンQMFの他に2パターンがある。その一つは、撮影ビデオカメラQMAのシャッタ開口期間と位相マーカPMKの点灯期間との重なりが無い撮像フレームにおいて発現する。このパターンでは位相マーカ像PMPは全ての光源が消灯状態にある。以下、これを全光源像消灯パターンPTxと呼ぶことにする。また他の一つは、シャッタ開口期間内において位相マーカPMKが点灯を開始し、かつ、全光源が点灯を終了するような撮像フレームにおいて発現する。このパターンでは位相マーカ像42aは全ての光源が点灯状態にある。以下、これを全光源像点灯パターンPTaと呼ぶことにする。
【0049】
これらの5パターン、すなわち、左方光源像点灯パターンPTu、中央部光源像点灯パターンPTy、右方光源像点灯パターンPTw、全光源像点灯パターンPTa及び全光源像消灯パターンPTxに関して、点灯状態にある光源の像と消灯状態にある光源の像がパターン内に共に存在するのは左方光源像点灯パターンPTu、中央部光源像点灯パターンPTy、右方光源像点灯パターンPTwのいずれかのみである。
【0050】
したがって、基本周期信号XOSの位相と撮影ビデオカメラQMAのフレームタイミングの位相が一致しているかどうかについて知ることができるのは、これら左方光源像点灯パターンPTu、中央部光源像点灯パターンPTy、右方光源像点灯パターンPTwのいずれかである。全光源像点灯パターンPTa及び全光源像消灯パターンPTxは位相が一致していない状態においても発現する。
【0051】
基本周期信号XOSの周期PXOと撮影ビデオカメラQMAのフレームタイミングの周期PQMが等しくなければ、映像提示装置93上において位相マーカ像PMPは時間経過に従って異なる上述の点灯パターンQMFを順次示していくことになる。
【0052】
しかし、基本周期信号XOSとフレームタイミングの周期PQMとが等しければ、点灯パターンQMFが時間経過によっても変化しないだけでなく、位相マーカ像PMPにおいて点灯状態を示している光源の像の数、あるいは、消灯状態を示している光源の像の数も変化しない。
【0053】
すなわち、位相マーカ像PMPにおいて点灯状態を示している光源の像の数が点灯度MVとなる。このほか、点灯状態を示している光源の像の数と消灯状態を示している光源の像の数の比を点灯度MVとすることができる。
【0054】
(点灯センサ)
図3を再度参照して、点灯度MVの取得を説明する。負帰還制御を行うために点灯センサ5は、入力部ビデオカメラ51が映像提示装置93の画面を撮って感知フレーム52を取得し、この感知フレーム52に写っている光源群42の像42aの像42aa、すなわち、位相マーカ像PMPの像を画像処理して点灯状態にある光源の像の数を計数し、点灯度MVを算出する。
【0055】
(負帰還制御)
そして、点灯センサ5もしくは人61が位相マーカ像PMPから点灯度MVを得て周期PQMと周期PXOとが一致するようにするには、シャッタ開口のタイミングに着目して中央部光源像点灯パターンPTyもしくは右方光源像点灯パターンPTwとなるようにするか、シャッタ閉口のタイミングに着目して左方光源像点灯パターンPTuもしくは中央部光源像点灯パターンPTyとなるようにし、かつ、映像提示装置93において点灯度MVが時間経過とともに変化することなく提示されるように負帰還制御する。
【0056】
ところで、この負帰還制御においては、撮影ビデオカメラQMAのシャッタ開口が位相マーカPMKの光源点灯状況を標本化していること、すなわち、乗算していることに等しいので、乗算型位相比較器を持つ位相同期系(一般にPLLとも称される)の負帰還制御と同一である。したがって、負帰還制御については位相同期系に使われている技術を利用できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】高橋豊「PLLを個別部品で組むための知識[1]〜[10]」電子展望半導体技術、第11巻11号93頁(昭和49年)〜第12巻11号84頁(昭和50年)
【0057】
(位相誤差)
図6、図7、図8、図9を参照して、撮影ビデオカメラQMAのシャッタSHTが開口する時刻から位相マーカPMKの左端の光源41Lが点灯開始する時刻までに経過する時間と点灯度MVとの関係を説明する。この撮影ビデオカメラQMAのシャッタSHTの開口時刻から位相マーカPMKの点灯時刻までに経過する時間は、撮影ビデオカメラQMAのシャッタ開口繰返し周期と位相マーカ位相PMKの点灯繰返し周期に着目して取り扱うと、位相同期系における位相誤差にほかならない。図7における符号PERが位相誤差であり、点灯度MVは位相誤差PERに対する位相比較器出力であって、図7は位相比較器特性を表していることになる。
【0058】
そして、シャッタSHTの開口期間と位相マーカPMKの点灯期間が重なっている期間に点灯した位相マーカPMKの光源の数が点灯度MVで、点灯度MVは位相比較器出力である。
【0059】
図8は、シャッタSHTの開口の周期PQMに比べて位相マーカPMKの点灯周期PXOが短い場合の点灯パターンQMFの変化の様子であり、時間経過とともに全光源像消灯パターンPTx、左方光源像点灯パターンPTu、全光源像点灯パターンPTa、右方光源像点灯パターンPTw、そして、全光源像消灯パターンPTxの順に変化する。このとき、シャッタSHTの開口期間が位相マーカPMKの点灯期間よりも短い場合には、全光源像点灯パターンPTaを経由せずに中央部光源像点灯パターンPTyを経由する。
【0060】
右方光源像点灯パターンPTwとなるのは、図6におけるシャッタ開口期間#6swと位相マーカ点灯期間#6mwで示した関係の状態にある場合で、位相誤差PERは負の値となっている。
【0061】
また一方、シャッタSHTの開口の周期PQMに比べて位相マーカPMKの点灯周期PXOが長い場合には、点灯パターンQMFの変化の様子は図9となり、時間経過とともに全光源像消灯パターンPTx、右方光源像点灯パターンPTw、中央部光源像点灯パターンPTy、左方光源像点灯パターンPTu、そして、全光源像消灯パターンPTxの順に変化する。このとき、シャッタSHTの開口期間が位相マーカPMKの点灯期間よりも長い場合には、中央部光源像点灯パターンPTyを経由せずに全光源像点灯パターンPTaを経由する。
【0062】
とくに、シャッタSHTの開口期間が位相マーカPMKの点灯期間に等しい場合には、中央部光源像点灯パターンPTyは発現しない。
【0063】
以上において説明した点灯度MVを、データ送信器73がデータ伝送手段72を通じて可変周期信号発生器2に送り、点灯度MVが定常的に一定であるように負帰還制御する。
【0064】
位相同期系を構成するために必要なループフィルタの機能は、制御特性調整器21において実装する。また、自動制御系としてのダンピングファクタと自然角周波数は制御特性CTVで設定する。この制御特性CTVは同期対象システム90に依って異なるものにできる。
【0065】
あるいは、人61が映像提示装置93の画面上で描かれる光源42の像42aすなわち位相マーカ像PMPを目視して、左方光源像点灯パターンPTu、中央部光源像点灯パターンPTyもしくは右方光源像点灯パターンPTwとなるように、点灯度MVを点灯度値入力器を介して可変周期信号発生器2に送り、負帰還制御が可能である。
【0066】
(シャッタ開口期間が長い撮影ビデオカメラを対象とする場合)
ただし、シャッタSHTの開口期間が長い撮影ビデオカメラQMAに対しては、中央部光源像点灯パターンPTyとなるように撮像フレームを撮るためには、位相マーカPMKの光源の送り時間間隔STTを長くする必要があり、負帰還制御のための分解能が悪くなるので現実的ではない。これを避けるために送り時間間隔STTを短くして光源の数Nを多くすることは、位相マーカ像PMPの像を画像処理して点灯度MVを算出する際に個々の光源像の識別が困難になる。そこで、シャッタSHTの開口期間が長い撮影ビデオカメラQMAを対象とする場合は、隣り合った撮像フレームに跨がった期間において位相マーカPMKが点灯するようにし、特徴的な点灯パターンQMFが発現するようにして負帰還制御を行うことにする。(図10参照)
【0067】
(撮影ビデオカメラの撮像フレームを複数回のシャッタ開口で取得している場合)
ところで、CMOS素子を撮像部に使っているビデオカメラでは、走査方向に等価的に分割線を引いて撮像フレームを複数葉に分割し、分割数に等しい回数の走査によってデータを読み出し、撮像フレーム1枚を構築しているものがある。
【0068】
その上、この種類のビデオカメラの場合には、シャッタ開口期間の長さはフレームタイミングの周期PQMの値にほぼ等しいので、走査によるデータ読出しに要す期間を除いて常に開口していることと同じであるとして扱うことになる。すなわち、シャッタSHTの開口期間が長い撮影ビデオカメラQMAを対象とする場合と同じであり、隣り合った撮像フレームに跨がった期間において位相マーカPMKが点灯するようにする。
【0069】
図10を参照して、複数回の走査によって撮像フレームを構築している撮影ビデオカメラQMAが撮像フレームを構築する様子を説明し、併せて、隣り合った撮像フレームに跨がった期間において位相マーカPMKが点灯するようにして特徴的な点灯パターンQMFを発現させる様子を説明する。
【0070】
撮像フレーム出力#7fuのためのシャッタ開口はシャッタ開口期間#7suにおいて発生し、撮像フレームFLM上端から下端に向って撮像素子からデータを順次読み出して1枚の撮像フレームを構築する。
【0071】
同様にして、撮像フレーム出力#7fyのためのシャッタ開口は期間#7syにおいて発生し、そして、撮像フレーム出力#7fwのためのシャッタ開口は期間#7swにおいて発生する。
【0072】
撮影ビデオカメラQMAのフレームタイミングと位相マーカPMKの点灯期間の時間関係、すなわち、位相関係が同じであっても、位相マーカPMKを写す際の撮像フレームFLM上の位置に依存して点灯パターンQFMが異なる。図10は撮像フレームFLMの中央に写るように位相マーカPMKを配置した場合で、この場合を表すために、位相マーカには符号PMKcを付与してあり、撮像素子には符号CMScを付与してある。
【0073】
撮像フレームFLMの中央で位相マーカPMKcを写す撮影ビデオカメラQMAの撮像素子CMScは、たとえば、シャッタ開口期間#7syにおいては期間#7sycの間はシャッタを開いている。
【0074】
したがって、位相マーカPMKcの点灯#7myが期間#7sycと期間#7swcにまたがるように基本周期信号XOSの位相を調整できれば、期間の重なり#7myfの間に点灯した光源を撮影ビデオカメラQMAが期間#7syにおいて写し、撮像フレーム出力#7fyは左方光源像点灯パターンPTuとなる。そして、期間の重なり#7myeの間に点灯した光源によって撮像フレーム出力#7fwは右方光源像点灯パターンPTwとなる。結果として、映像提示装置93の画面上では、位相マーカ像PMPは左方光源像点灯パターンPTuと右方光源像点灯パターンPTwの連続したひと組になって描かれ、特徴的な点灯パターンQMFが発現する。
【0075】
ところが、撮影ビデオカメラQMAのすべてのフレームタイミングについて位相マーカPMKcが点灯すれば、上述の左方光源像点灯パターンPTuと右方光源像点灯パターンPTwは出現せず、すべての光源の像が点灯状態になっている全光源像点灯パターンPTaに必ずなってしまうので、シャッタ開口期間#7suにおいては位相マーカPMKcが点灯しないようにしておかなければならない。
【0076】
もし、位相マーカPMKcが点灯しないようにしておくことができれけば、映像提示装置93の画面上では、左方光源像点灯パターンPTu、右方光源像点灯パターンPTwが組となって連続して描画されるので、点灯度MVを取得することができる。
【0077】
また、この場合には人61にとっては、左方光源像点灯パターンPTu、右方光源像点灯パターンPTwの連続描画がチラついて見え、点灯度MVを知ることができる。
【0078】
そこで、位相マーカPMKが点灯しないフレームタイミングが発生するように、図5における周期間引き数SCTを設定する。周期間引き数SCTを1に設定すれば、基本周期信号XOSの2回につき1回の点灯信号PMS生成が行われ、左方光源像点灯パターンPTuと右方光源像点灯パターンPTwの連続した組が発現する。なおもし、周期間引き数SCTを2以上に設定すれば、左方光源像点灯パターンPTuと右方光源像点灯パターンPTwの組に加えて、全光源像消灯パターンPTxが発現するようになる。
【0079】
以上によって、シャッタSHTの開口期間が長い撮影ビデオカメラQMAを持つ同期対象システム90であっても負帰還制御が可能である。
【0080】
すなわち、位相マーカPMKの写った撮像フレームFLMを複数回のシャッタ開口で取得する撮影ビデオカメラQMAを持つ同期対象システム90であっても、位相マーカPMKの配置に留意して負帰還制御が可能である。
【0081】
(フレーム同期タイミング信号の生成)
撮影ビデオカメラQMAのフレームタイミングと基本周期信号XOSについて位相が一致するように負帰還制御を行う際には、点灯開始遅れSOTが位相マーカPMKの点灯開始時刻の調整時に有用である。そして、位相が一致している状態にあると、この点灯開始遅れSOTと送り時間間隔STTを使ってシャッタ開口時刻及びシャッタ閉口時刻を算出することができる。
【0082】
また、点灯制御器3が持っている位相調整器32によって、基本周期信号XOSとは位相調整値PCVだけ位相の異なるフレーム同期タイミング信号FSTを生成し、出力することができる。
【0083】
図2を再度参照して、位相マーカ4の光源群42において各光源の点灯が光源41Rから始まって光源41Lで終わるように点灯信号PMSを生成することができるが、この場合であってもフレーム同期タイミング信号FSTを同様にして生成できる。
【0084】
以上で説明した方法によって、同期タイミング信号生成器1は、撮影ビデオカメラQMAのフレームタイミングに同期しているフレーム同期タイミング信号FSTを、同期対象システムとの間で同期信号を授受することなく生成して出力することができる。フレーム同期タイミング信号FSTを用いることで同期式点滅マーカ法によって総合遅延時間を計測することができる。
【実施例】
【0085】
次に、具体的な実施例を説明する。図11は上述の同期タイミング信号生成器1によって撮影ビデオカメラ91のフレームタイミングに同期しているフレーム同期タイミング信号FSTを生成し、同期式点滅マーカ法における撮影ビデオカメラ91のフレームタイミングに用いて、撮影ビデオカメラ91が撮像した全撮影フレームについて総合遅延時間特性を詳細に測定できた例である。
【0086】
図11を得た実施例における同期対象システム90の構成は、撮影ビデオカメラ91をNTSCビデオカメラ(ただしディジタルテレビ仕様)とし、映像伝送路92についは撮影から提示までの順に、IEEE1394a、LINUXをオペレーティングシステムとするサーバコンピュータ上のDVTS(ディジタルテレビ転送システム)送信ソフトウェア、100BASE−TXイーサネット、LINUXをオペレーティングシステムとするクライアントコンピュータ上のDVTS受信ソフトウェア、DVTS−コンポジット信号変換器とし、映像提示装置93は液晶ディスプレイとした。
【0087】
この同期対象システム90は同一の室内で構築し、同期タイミング信号生成器1も同じ室内に設置した。そして、総合遅延時間は同期対象システム90を対象として計測した。すなわち、総合遅延時間を計測したシステムと同期対象システム90とは同一とした。
【0088】
基本周期信号XOSの周期PXOを調整して、その値を16.6832msに設定できた。この値は同期対象システム90においてはインターレース伝送が採用されていることを示している。また、総合遅延時間の計測時に取得できた同期対象システム90フレームタイミングの周期PQMは16.6835msであった。
【0089】
上記の計測で得た基本周期信号XOSの周期PXOと同期対象システム90フレームタイミングの周期PQMとの差は残留誤差であり、その大きさは0.0003msであって正の値である。
【0090】
図11において、総合遅延時間が鋸歯状に変化しているのは、同期対象システム90においてフレームタイミングが撮影ビデオカメラ91から映像提示装置93に向けて伝送されていないためである。また、総合遅延時間が全体的に時間経過とともに増加しているのは、基本周期信号XOSの周期PXOを撮影ビデオカメラQMAのフレームタイミングの周期PQMに完全に一致することができておらず、正の値の残留誤差によって基本周期信号XOSの周期PXOの方が短くなったためである。同図において、傾きINLの大きさは残留誤差の大きさに起因していた。
【0091】
以上で考察したように、基本周期信号XOSの周期PXOにわずかな残留誤差があったが、同期対象システム、すなわち、総合遅延時間の計測対象システムとの間で同期信号を授受することなくフレーム同期タイミング信号を生成して、総合遅延時間を計測できている。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上詳述したように、本発明は、既存の実時間映像伝送システム、または、実時間映像処理システムにおける撮影ビデオカメラのフレームタイミングに同期しているフレーム同期タイミング信号を、当該システムとの間で同期信号の授受を行わずに独立に生成して出力できるようにしたもので、総合遅延時間の詳細な特性取得のための非侵襲な計測を可能にするものである。総合遅延時間を計測することは、多くの実時間映像伝送システム、または、実時間映像処理システムの評価において重要であり、本発明はこれらシステムの発展・改良に寄与するものとして有用である。
【0093】
また、総合遅延時間の計測のためだけでなく、フレーム同期タイミング信号を非侵襲に生成できる新しい技術を提供するものであるので、広範囲な利用が可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 タイミング信号生成器
2 可変周期信号発生器
21 制御特性調整器(可変周期信号発生器に存在の)
22 基本周期信号発振器(可変周期信号発生器に存在の)
3 点灯制御器
31 点灯信号生成器(点灯制御器に存在の)
32 位相調整器(点灯制御器に存在の)
4 位相マーカ
4a 像(位相マーカの)
4aa 像(位相マーカの像の)
41A 光源(位相マーカにおいて点灯中の)
41B 光源(位相マーカにおいて点灯中の)
41L 光源(位相マーカの左端の)
41La 像(位相マーカの左端の光源の)
41Laa 像(位相マーカの左端の光源の像の)
41R 光源(位相マーカの右端の)
41Ra 像(位相マーカの右端の光源の)
41Raa 像(位相マーカの右端の光源の像の)
42 光源群(位相マーカとしての)
42a 像(位相マーカとしての光源群の)
42aa 像(位相マーカとしての光源群の像の)
5 点灯センサ
51 入力部ビデオカメラ(点灯センサに存在の)
52 感知フレーム(点灯センサに存在の入力部ビデオカメラが出力する)
61 人(点灯センサにとって代わる)
62 点灯度入力器(人が点灯度を入力するのに使う)
63 選択器(点灯センサの出力か点灯度入力器の出力かを選択する)
71 データ受信器(撮影地に存在の)
72 伝送路(提示地から撮影地へデータ伝送するための)
73 データ送信器(提示地に存在の)
90 実時間映像伝送システムまたは実時間映像処理システム(同期対象システム)
91 撮影ビデオカメラ(同期対象システムの)
92 映像伝送手段または映像処理手段(同期対象システムの)
93 映像提示装置(同期対象システムの)
A 撮影地
B 提示地
CMSc 撮像素子(撮影ビデオカメラの)
CTV 制御特性(負帰還制御を行う制御特性調整器に設定の)
DAS 生成周期調整信号(制御特性調整器が生成する)
FLM 撮像フレーム(撮影ビデオカメラの)
FST フレーム同期タイミング信号(点灯制御器の出力としての)
INL 傾き(総合遅延時間の計測結果の時間経過による全体的な)
MV 点灯度(点灯センサもしくは人が出力する)
N 個数(位相マーカの光源の)
PCV 位相調整値(位相調整器に設定の)
PER 位相誤差(タイミング信号生成器を位相同期系として扱った場合の)
PMK 位相マーカ
PMKc 位相マーカ(フレーム中央に配置の)
PMP 位相マーカ像(同期対象システムの映像提示装置の画面上の)
PMS 点灯信号(点灯信号生成器が生成する)
PQM 周期(撮影ビデオカメラのフレームタイミングの)
PTa 点灯パターン(位相マーカ像の)
PTu 点灯パターン(位相マーカ像の)
PTw 点灯パターン(位相マーカ像の)
PTx 点灯パターン(位相マーカ像の)
PTy 点灯パターン(位相マーカ像の)
PXO 周期(基本周期信号の)
QMA 撮影ビデオカメラ(同期対象システムの)
QMF 撮影フレームにおける点灯パターン(同期対象システムの)
SCT 周期間引き数(点灯信号生成器に設定の)
SHT シャッタ(撮影ビデオカメラの)
SOT 点灯開始遅れ(点灯信号生成器に設定の)
SPM 点灯期間(位相マーカの)
SQM シャッタ開口期間(撮影ビデオカメラの)
STT 送り時間間隔(点灯信号生成器に設定の)
XOS 基本周期信号(可変周期信号発振器が生成する)
r 選択器接点(選択器に存在の)
s 選択器接点(選択器に存在の)
#6fu 撮像フレーム出力(撮影ビデオカメラの)
#6fy 撮像フレーム出力(撮影ビデオカメラの)
#6fw 撮像フレーム出力(撮影ビデオカメラの)
#6su 開口期間(シャッタの)
#6sy 開口期間(シャッタの)
#6sw 開口期間(シャッタの)
#6mu 点灯期間(位相マーカの)
#6my 点灯期間(位相マーカの)
#6mw 点灯期間(位相マーカの)
#7fu 撮像フレーム出力(撮影ビデオカメラの)
#7fy 撮像フレーム出力(撮影ビデオカメラの)
#7fw 撮像フレーム出力(撮影ビデオカメラの)
#7su 開口期間(シャッタの)
#7sy 開口期間(シャッタの)
#7syc 開口期間(中央の撮像素子のシャッタの)
#7sw 開口期間(シャッタの)
#7swc 開口期間(中央の撮像素子のシャッタの)
#7my 点灯期間(位相マーカの)
#7myf 重なり(シャッタの開口期間と位相マーカの点灯期間との)
#7mye 重なり(シャッタの開口期間と位相マーカの点灯期間との)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影地に配置された撮影ビデオカメラと、前記撮影ビデオカメラによって撮像された映像を処理し提示地に伝送する映像伝送手段と、提示地に配置され前記映像伝送手段によって伝送された映像を受信し処理して提示する映像提示装置とを備えた実時間映像伝送システムを対象とする、または、撮影地に配置された撮影ビデオカメラと、映像処理手段と、提示地に配置され前記映像処理手段によって処理された映像を提示する映像提示装置とを備えた実時間映像処理システムを対象とする、前記撮影ビデオカメラのフレームタイミングに同期したフレーム同期タイミング信号を生成するタイミング信号生成器において、
撮影地に配置されて前記撮影ビデオカメラによって撮像される複数の光源で構築された位相マーカと、
撮影地に配置されて同期タイミング信号を生成して出力する可変周期信号発生器と、
撮影地に配置されて前記可変周期信号発生器の出力する同期タイミング信号に駆動されて前記位相マーカの点灯状態を制御する点灯制御器と、
提示地に配置されて前記映像提示装置によって提示される前記位相マーカの像の点灯度を測定すると共に点灯度を出力する点灯センサと、
提示地に配置されて前記点灯センサが出力する点灯度を撮影地に向けて送出するデータ送信器と、
提示地と撮影地との間でデータを伝送する伝送路と、
撮影地に配置されて前記データ送信器から前記伝送路を介して送られて来たデータを受信し前記可変周期信号発生器に入力するデータ受信器と、を備え、
前記撮影ビデオカメラによって前記位相マーカを撮像し、その撮像された映像を前記実時間映像システムの映像伝送手段によって伝送するか前期実時間映像処理システムの映像処理手段によって処理するかした後、前記映像提示装置によって提示し、
前記映像提示装置によって提示された前記位相マーカの像から前記位相マーカの点灯度を前記点灯センサで測定すると共に点灯度を出力して前記データ送信器で撮影地に前記伝送路で伝送し、
前記データ受信器で受信して、
受信した前記位相マーカ像の前記点灯度に依って前記可変周期信号発生器の出力する前記同期タイミング信号の周期を調整することにより前記実時間映像伝送システム、または、前記実時間映像処理システムとの間で同期信号を授受することなく前記撮影ビデオカメラのフレームタイミングに同期したフレーム同期タイミング信号を生成して出力するようにしたことを特徴とするタイミング信号生成器。
【請求項2】
提示地に配置されて前記映像提示装置によって提示される前記位相マーカの像の点灯度を前記点灯センサに依らずに人が読み取って点灯度とし、
提示地に配置されて前記点灯度を入力することができる点灯度入力器を用いて前記点灯度を入力し、
前記データ送信器で撮影地に前記伝送路で伝送し、
前記データ受信器で受信して、
受信した前記位相マーカ像の前記点灯度に依って前記可変周期信号発生器の出力する前記同期タイミング信号の周期を調整することにより前記実時間映像伝送システム、または、前記実時間映像処理システムとの間で同期信号を授受することなく前記撮影ビデオカメラのフレームタイミングに同期したフレーム同期タイミング信号を生成して出力するようにしたことを特徴とするタイミング信号生成器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−59014(P2013−59014A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215573(P2011−215573)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
2.イーサネット
【出願人】(594185455)
【出願人】(510074472)
【出願人】(510074483)
【Fターム(参考)】