説明

ビデオゲーム装置およびゲームプログラムを記憶した情報記憶媒体

【課題】マウス等のポインティングデバイスをゲームの入力装置としての使用する場合の新しい使用方法を提供する。
【解決手段】ポインティングデバイスの操作量を示すカウント値に基づいて、ポインティングデバイスの操作に関するエネルギー値を算出して、ゲーム中の物体のエネルギーに関連する情報を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はビデオゲーム装置及びゲームプログラムを記憶した情報記憶媒体に関し、特にマウスやトラックボール等のポインティングデバイスが接続されかつポインティングデバイスの移動又は操作量等に関連するエネルギー値を利用してゲームを楽しむために利用されるビデオゲーム装置及びゲームプログラムを記憶した情報記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マウス,トラックボール,タッチパッド等のポインティングデバイスは、パーソナルコンピュータ等の画像表示装置においてソフトウェアを実行するに当たり、画面上のカーソル又はポインタの座標位置を指示するもので、アイコンやメニューを選択したり、ウインドウを選択又は移動させたり、モニタ上に絵を描いて画像を作成するため等の座標入力装置として使用されていた。
【0003】
また、マウス等のポインティングデバイスをゲームの入力装置として使用することもあるが、その場合は単にキャラクタを移動させる方向を指示したり、コマンド選択のために使用するに過ぎず、ゲーム機用コントローラの方向スイッチ又はジョイスティックの代用品としての使用の域を出なかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マウス等のポインティングデバイスをゲーム入力装置として使用する従来の利用例では、キャラクタの方向指示又は座標指定のための利用に過ぎず、キャラクタに変化に富んだ動きを与えるための入力装置として使用できなかった。また、マウス等を単にゲーム機用コントローラ(操作器)の代用品として使用するだけでは、斬新で変化に富んだ画像表現を実現できず、ゲームの面白味に欠け、目の肥えたユーザーの要望を満足できない。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、ゲーム入力装置としてポインティングデバイスを使用する場合に、斬新な趣向の画像表現を実現可能であり、ビデオゲームに対する興趣を一層高めることができる、新規なビデオゲーム装置およびゲームプログラムを記憶した情報記憶媒体を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、ポインティングデバイスをエネルギー入力装置として使用することができ、入力されたエネルギー値を利用して物体画像の移動量を変化させて、斬新で豊かな画像表現を実現し得る、ビデオゲーム装置およびゲームプログラムを記憶した情報記憶媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明(請求項1に係る発明)のビデオゲーム装置は、表示手段とポインティングデバイスが接続され、ポインティングデバイスの操作に関連するエネルギーを利用して表示手段に表示される画像を変化させる装置であって、カウント値算出手段と、エネルギー関連情報発生手段と、画像データ発生手段とを備える。エネルギー関連情報発生手段は、好ましくは、カウント値に基づいてポインティングデバイスの操作に関するエネルギー値(実施例ではエネルギーE)を算出するエネルギー値算出手段と、エネルギー値算出手段によって求められたエネルギー値に基づいて、物体のエネルギーに関連する情報(実施例では初速度(Vの初期値))を決定するエネルギー関連情報決定手段とを含む。
【0008】
第2発明(請求項9に係る発明)のゲームプログラムを記憶した情報記憶媒体は、表示手段とポインティングデバイスが接続されたビデオゲーム装置に装着して使用され、ポインティングデバイスの操作に関連するエネルギーを利用して表示手段に表示される画像を変化させるためのゲームプログラムを記憶した情報記憶媒体であって、カウント値読込プログラムと、エネルギー関連情報演算プログラムと、画像データ発生プログラムとを備える。
【0009】
第1発明のビデオゲーム装置では、カウント値算出手段がポインティングデバイスの操作に伴って変化するカウント値を求め、エネルギー関連情報発生手段がカウント値に基づいてポインティングデバイスの操作に関するエネルギー値を算出してゲーム中の物体のエネルギーに関連する情報を出力し、画像データ発生手段がエネルギー関連情報に応じて物体の表示状態を変化させた画像を発生する。なお、エネルギー関連情報発生手段はポインティングデバイスの操作に関するエネルギー値を算出するが、ここでエネルギー値とは厳密な意味でのエネルギー値である必要はなく、ポインティングデバイスに与えられたエネルギーに応じて変化する値といった広い意味でのエネルギー値である。
【0010】
第2発明のゲームプログラムを記憶した情報記憶媒体では、カウント値読込プログラムがポインティングデバイスの操作に伴って変化するカウント値を読み込み、エネルギー関連情報演算プログラムがカウント値に基づいてポインティングデバイスの操作に関するエネルギー値を算出してゲーム中の物体のエネルギーに関連する情報を出力し、画像データ発生プログラムがエネルギー関連情報に応じて物体の表示状態を変化させた画像を発生する。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、既存のマウスやトラックボールやタッチパッド等のポインティングデバイスを使用してエネルギー値を入力でき、そのエネルギー値又はエネルギー値に関連して決定される情報に基づいて画像を変化させているので、方向指示又は座標指示だけの入力装置を用いる場合に比べて、斬新で豊かな画像表現が実現できる。また、この発明によるポインティングデバイスの使用技術は、従来のゲーム用コントローラの代用のためではなく、プレイヤーがポインティングデバイスに与えたエネルギー値を検出してそれを画像表現に反映できるので、新しい趣向のゲームを創作することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の一実施例のビデオゲーム装置及びゲームプログラムを記憶した情報記憶媒体(以下、これらの組み合わせを総称して「ゲームシステム」という)は、概略を説明すると、プレイヤーがマウス等のポインティングデバイスによって入力したエネルギー値の大小に基づいて移動物体又は移動体の表示状態に変化を加え、表現豊かな画像変化を実現するものである。具体的には、移動物体が自動車又はカート等の走行車両の場合は、入力されたエネルギー値によって走行距離及び/又は速度を変化させる。移動物体が飛行機又はハングライダー等の飛行物体の場合は、入力されたエネルギー値によって飛行距離及び/又は最大高度を変化させる。移動体がトランポリン競技する人間の場合は、入力されたエネルギー値によってジャンプ力又はジャンプの高さを変化させることができ、ジャンプ中に他の操作スイッチが操作された状態によって演技(前・後回転又は側転等の演技)を選択できる。移動物体がシューティングゲームにおける銃器の砲弾の場合は、入力されたエネルギー値によって銃器の威力又は銃弾の発射数量を変化させることができる。以下、図面を参照して、この発明の一実施例として自動車の走行競技の場合を詳細に説明する。
【0013】
図1はこの発明の一実施例のビデオゲーム装置(以下「ゲーム機」という)及びゲームプログラムを記憶した情報記憶媒体が適用されるゲームシステムの概略図である。ゲームシステム10は、ゲーム機20と情報記憶媒体の一例のゲームカートリッジ(以下「カートリッジ」という)30とポインティングデバイスの一例のマウス40と表示装置(CRTデイスプレイ又は液晶ディスプレイ等)50とを含んで構成される。ゲーム機20には、外部記憶媒体(情報記憶媒体)であるカートリッジ30が着脱自在に装着される。ゲーム機20には、エネルギー値を入力するためのマウス40が接続されるとともに、ゲーム画像を表示するための表示装置50が接続される。マウス40は、必要に応じてマウスパッド45上で操作される。なお、この発明は、ゲーム専用機に限らず、汎用のパーソナルコンピュータ(パソコン)にゲームプログラムを装着してゲーム機能を実現するものにも適用できることを指摘しておく。
【0014】
図2はゲームシステム10のブロック図である。ゲーム機20は、中央処理ユニット(以下「CPU」という)21を含む。CPU21には、画像処理ユニット(以下「RCP」という)22,書込み読出し可能なメモリ(以下「RAM」という)23及び入出力インタフェース(以下「I/O回路」と略称する)24が接続される。RCP22は、CPU21の制御の下に、画像表示のための処理(例えば、ポリゴンデータによって指定される多角形にテクスチャーを貼り付ける処理等)を行う。RAM23は、ゲームのための画像処理及び音声処理のためのデータを一時記憶するとともに、ゲーム途中のデータ(バックアップデータを含む)を一時記憶する。I/O回路24は、マウス40との間でデータの送受信を行う。ゲーム機20には、さらにマウス40を接続するためのコネクタ25,カートリッジ30を接続するためのコネクタ26及び表示装置50を接続するためのコネクタ27が設けられる。
【0015】
カートリッジ30は、カートリッジケース(図示せず)内に不揮発性半導体記憶素子(以下「ROM」と略称する)31を内蔵する。ROM31には、後述の図4に示すブログラム及びデータ等が固定的に記憶されるとともに、図7に示すフロー動作を実現するためのプログラム等が記憶される。なお、ROM31を内蔵するカートリッジ30に代えて、CD−ROM(コンパクトディスク)やDVD等の光学式記憶媒体又は磁気記憶媒体若しくは光磁気ディスク等の各種の記憶媒体を用いてもよい。また、ROM31に代えて、EE−PROMやフラッシュメモリ(フラッシュROM)等を用いてもよい。
【0016】
マウス40は、左右のクリックスイッチ(以下「スイッチ」と略称する)41L,41Rが設けられるとともに、センサ42X,42Y及びカウンタ43X,43Yが設けられる。センサ42XはX軸(左右)方向へのマウス40の移動を検出し、センサ42YはY軸方向へのマウス40の移動を検出する。カウンタ43Xは、センサ42XがマウスのX軸方向の移動を検出してパルスを発生したとき、そのパルスを計数して一定時間(例えば、1/60秒)当たりのX軸方向の移動量に相当する計数値(カウント値ともいう)を保持し、結果的に一定時間当たりのX軸方向の移動量を検出する。同様に、カウンタ43Yは、センサ42YがマウスのY軸(前後)方向の移動を検出してパルスを発生したとき、そのパルスを計数して一定時間当たりのY軸方向の移動量に相当する計数値を保持し、結果的に一定時間当たりのY軸方向の移動量を検出する。
【0017】
さらに、マウス40には,CPU21との間でデータの転送を行うためのI/O回路44が設けられる。I/O回路44は、コネクタ25及びI/O回路24を介して、スイッチ41L及びスイッチ41Rの操作信号と、カウンタ43X及び43Yのそれぞれの計数値をCPU21へ伝送するとともに、ゲーム機20からのリセット信号を受けてカウンタ43X,43Yの計数値をリセットする。スイッチ41L及び41Rは、必要に応じて、ゲーム機用コントローラ(図示を省略する)の入力ボタンと同様に、コマンドを入力したり動作タイミングを決定するために使用される。
【0018】
CPU21は、ROM31に記憶されているプログラムデータに基づいて、ゲーム処理を行うとともに、マウス40から与えられるカウンタ43X及び/又はカウンタ43Yの計数値を読み込んで、予め定める演算式に基づいて演算して、エネルギー関連情報を求める。ここで、エネルギー関連情報とは、一例として、マウス40の一定時間当たりの操作量に基づいて、エネルギー値を累計することによって算出される。エネルギー関連情報の他の例として、カウンタ43X又はカウンタ43Yの計数値に基づいて、マウス40の操作に関するエネルギー値を算出し、そのエネルギー値を所定演算式に当てはめて物体のエネルギーに関連する情報を演算することによって求められる。エネルギー関連情報のさらに他の例として、マウス40のX軸方向成分の操作量とY軸方向成分の操作量を検出したとき、X軸方向成分の操作量に相当するカウント値とY軸方向成分の操作量に相当するカウント値を求め、X軸方向成分とY軸方向成分を合成したベクトルを演算によって求める。このエネルギー関連情報の演算処理の詳細は、一定時間当たりのエネルギー値を累計(蓄積)する場合の例を、図3,図4及び図7を参照して後述する。ここでエネルギー値を算出する方法の一例として、カウンタ43X又はカウンタ43Yの計数値を単に累計する方法がある。エネルギー値を算出する方法の他の例として、カウンタ43X又はカウンタ43Yの計数値を所定演算式に当てはめて算出する方法がある。この所定演算式とは例えばマウス40にエネルギーが与えられた時間を考慮したもの(つまりマウス40の移動速度(操作速度)を考慮したもの)である。エネルギー値を算出するさらに他の例として、マウス40のX軸方向成分の操作量とY軸方向成分の操作量を検出したとき、カウンタ43Xとカウンタ43YをそれぞれX軸方向とY軸方向の成分として合成したベクトルの大きさを演算によって算出する方法がある。このエネルギー値算出処理の詳細は、カウンタ43X又はカウンタ43Yの計数値を単に累計する場合の例を、図3、図4及び図7を参照して後述する。このようにして算出したエネルギー値に基づいてエネルギー関連情報が求められる。ここでエネルギー関連情報とは、例えば、自動車ゲームの場合の車速や移動距離、飛行機ゲームの場合の飛行距離や最大高度等である。
【0019】
これらの演算のためのデータ及び演算結果がRAM23に一時記憶される。また、CPU21は、プログラムに基づいてRCP22と共同して画像処理のための動作を行い、画像データを発生する。CPU21は、I/O回路44及び24を介してカウンタ43Yの計数値を読み込んで、プログラムに基づく処理を行い、ゲームを進行させる。CPU21によって処理されたゲーム画像データがRCP22に与えられて、RCP22によって画像表示データが生成されて表示装置50に与えられて表示される。
【0020】
図3及び図4はRAM23およびROM31のそれぞれのメモリマップの図解図である。RAM23は、図3に示すように、ワーク領域23a及び変数領域23bを含む。ワーク領域23aは、ゲームプログラムを実行する際のさまざまな中間的な値を一時的に記憶するために使用される。変数領域23bは、マウスのカウンタ43Yの読込値データ(Y)を記憶する領域321,エネルギー値データ(E)を記憶する領域232,走行距離データ(D)を記憶する領域233及び車速データ(V)を記憶する領域234を含む。
【0021】
ROM31は、図4に示すように、プログラム領域31a,定数領域31b及びグラフィックデータ領域31cを含む。プログラム領域31aは、カウント値読込プログラムを記憶する領域310,エネルギー値算出プログラムを記憶する領域311,エネルギー関連情報決定プログラムを記憶する領域312,車走行プログラムを記憶する領域313及び成功判定プログラムを記憶する領域314を含む。
【0022】
領域310に記憶されているカウント値読込プログラムは、I/O回路44及び24を介してカウンタ43Yの計数値(Y)を読み込んで、RAM23の領域231に計数値(Y)データを書込む(一時記憶させる)ためのプログラムである。領域311に記憶されているエネルギー値算出プログラムは、領域231に一時記憶されたカウンタ43Yの読込値データ(Y)に基づいてエネルギー値データ(E)を算出し、それを領域232に記憶させるためのプログラムである。この実施例では、一定時間(1/60秒)当たりのカウンタ43Yの計数値(読込値)データ(Y)を単に累積するものであり、マウスの移動量が大きい程エネルギー値データ(E)が大きな値となる。領域312に記憶されているエネルギー関連情報決定プログラムは、領域232に一時記憶されたエネルギー値データ(E)に基づいてゲームキャラクタのエネルギーに関する情報を決定するプログラムである。この実施例では、エネルギー関連情報の一例として、画面上を移動する車両(自動車等)の車速データ(V)の初期値を決定するプログラムであり、エネルギー値データ(E)が大きい程、車速データ(V)の初期値が大きな値となる。領域313に記憶されている車走行プログラムは、車が走行している画面を表示したり、車速データ(V)を次第に減少させたときに車の停止状態を判定したり、車の走行距離データ(D)を計算するプログラムである。領域314に記憶されている成功判定プログラムは、車が停止した時点における走行距離データ(D)が予め定める範囲内である場合に成功と判定し、所定の範囲外である場合に失敗と判定するプログラムである。具体的には、走行距離データ(D)が、領域316に記憶されている目標最小距離データ(Lmin)以上でありかつ領域315に記憶されている目標最大距離データ(Lmax)以下であるときに成功と判定し、それ以外のときに失敗と判定するものである。
【0023】
定数領域31bには、プログラムによって設定された定数データを記憶する領域315〜318が含まれる。具体的には、領域315には目標最大距離データ(Lmax)が記憶され、領域316には目標最小距離データ(Lmin)が記憶され、領域317には減衰値データ(E0)が記憶され、領域318には一定時間当たりの車速の減少値データ(V0)が記憶される。目標最大距離データ(Lmax)と目標最小距離データ(Lmin)は、成功判定に使用されるデータであり、走行距離データ(D)が目標最小値データ(Lmin)以上でありかつ目標最大値データ(Lmax)以下の場合に成功であると判定するのに利用される。減衰値データ(E0)は、エネルギー値データ(E)の減衰のためのデータであり、図6を参照して後述するように、プレイヤがマウス40によってエネルギー値を入力するとき、マウス40がマウスパッド45から離れた状態で後方に戻す間にエネルギーの減衰する値(以下「減衰値」という)を設定するものであり、一定時間内にマウスの移動量を示す計数が無かったときにエネルギー値データ(E)から一定値(E0)を減算するために利用される。一定時間当たりの車速の減少値データ(V0)は、一定時間当たりに減少する車速の設定データである。車速データ(V)は、一定時間毎にこの値(V0)を減算され、車速データ(V)が0になったときに車の停止状態を判断するのに利用される。
【0024】
グラフィックデータ領域31cは、ゲームのための画像を発生するためのデータを予め記憶するものであり、例えば、二次元画像表示の場合は背景画像と動画画像を表示するための複数のキャラクタデータを記憶し、三次元画像表示の場合は複数のポリゴンデータと各ポリゴンに対応する模様を指定するためのテクスチャデータを記憶している。
【0025】
図5はマウス40の計測原理を示す図である。CPU21は、I/O回路44及び24を介してカウンタ43Yの一定時間当たりの計数値(例えば1/60秒毎累計値)を読み込んだ後、リセット信号(リセットパルス)を出力する。カウンタ43Yは、リセット信号が与えられる毎にその計数値をリセットし、以後のマウス40のY方向の移動量に応じたカウント値を累積的に計数して保持する。この処理を繰り返すことにより、カウンタ43Yは、1/60秒毎のマウスのY方向の移動量に応じた計数値(Y1,Y2,Y3……)を順次保持し、その計数値(Y1,Y2,Y3……)がCPU21に読み込まれる。
【0026】
なお、この実施例では、カウンタ43Xの計数値は使用しないが、ゲーム内容によってカウンタ43Xの計数値を使用するようにしてもよい。また、カウンタ43Xの計数値(X1,X2,X3……)とカウンタ43Y計数値(Y1,Y2,Y3……)の同じ時間軸(X1とY1,X2とY2……)における合成ベクトルに基づいてX軸方向とY軸方向の合成ベクトルによって表されるエネルギー値を求め、それをゲームに利用する様にしてもよい。この場合は、マウス40を斜め方向に移動した移動量を検出することになり、Y軸(又はX軸)のみの直線的な移動量を検出する場合に比べてより大きなエネルギーを入力することに役立ち、しかもX軸とY軸の合成ベクトルなので蓄積エネルギーを予測することが困難性を伴う利点がある。
【0027】
図6はマウス40によるエネルギー値を入力するための操作方法の一例を示した図である。図6において、プレイヤは、マウス40を持ってマウスパッド45に載せた状態で前方に移動させた後、上方に浮かせてマウス40をマウスパッド45から離した状態で後方に戻し、この操作を1回〜数回繰り返す。マウス40がマウスパッド45に接触した状態で前方に移動している間に、カウンタ43Yはその移動距離に応じたY軸方向の一定時間当たりの計数値を計測する。この計数値がゲーム装置20に読み込まれ、エネルギー値データ(E)の算出に利用される。例えば、図6(a)に示すように、マウス40を1回だけ移動操作した場合は、小さなエネルギー値が算出される。一方、図6(b)に示すように、マウス40の移動操作を何度も繰り返した場合は、エネルギー値データ(E)が累計されて、より大きなエネルギー値が蓄積される。蓄積されたエネルギー値データは、表示装置50の画面上に表示される移動物体(例えば車)の移動(又は走行)状態の制御に利用される。そして、プレイヤは、エネルギー値が適当な値に達した(蓄積した)と判断したとき、マウス40の左クリックスイッチ41Lを押し、画面上の車51のスタートを指示する。そのときの車51の走行状態がエネルギー値によって変化する。これは、ぜんまいバネ付き自動車玩具の車輪を平面上に押しつけて移動させながらバネ力を蓄積し、自動車玩具を離してそのバネ力で走行させると、蓄積したばね力が小さい場合は走行速度が低く走行距離も短いのに対して、蓄積したばね力が大きい場合は走行速度が速く走行距離も長くなるのと同様である。
【0028】
図7はこの発明の一実施例のゲームプログラムのフローチャートである。図8の(a)〜(f)の表示例はゲーム画面図の一例である。次に、図7に示すフローチャート及び図8に示す表示例を参照して、この実施例のゲーム処理の動作を説明する。
【0029】
動作説明に先立ち、図8の表示例を参照してこの実施例のゲーム処理の概要を説明する。ゲームカセット30とマウス40と表示装置50をゲーム装置10に接続し、ゲーム装置10の電源を入れてゲームをスタートさせる。このときのゲーム画面は、例えば図8(a)であり、車51の走行する道路52上に、成功区間53が表示され、車51が成功区間53を超えて走行したときに失敗を表すための崖54が表示される。初期状態(車のスタート前)では、車51が空中に浮いたスタンバイ状態を表示し、エネルギーを与えられても前進しない。この状態において、プレイヤは、図6に示す操作方法によって、マウス40を移動操作してエネルギー値を入力し蓄積させる。エネルギーを蓄積した状態で、プレイヤがマウス40のスイッチ41Lを押すと、そのときのエネルギー値データ(E)に基づいて車51の車速データ(V)の初期値が決定され、図8(c)に示すように車51が道路52上を走行する。車51は、走行距離に比例してエネルギーを消費するので、蓄積エネルギーの減少を伴い、それに従って車速(V)を減少させる。車速データ(V)が0になると、車51が停止する。このとき、車51が成功区間53内に停止する(図8(e)参照)と、走行距離データ(D)が目標最小値データ(Lmin)以上でありかつ目標最大値データ(Lmax)以下であるので、成功であると判定される。車51が成功区間53以外の位置に停止すると、失敗であると判定される。図8(d)は失敗のうちの成功区間53より手前で停止した場合を示し、図8(f)は成功区間53を超えて停止した場合を示し,いずれの場合も失敗と判定される。但し、図8(f)に示す失敗の場合は車が崖から転げ落ちるような画像が表示される。
【0030】
次に、図7のフローチャートに沿ってゲーム処理の動作を説明する。ステップ11において、エネルギー値データ(E)がリセットされる(すなわち、領域232に0が設定される)。ステップ12において、スイッチ41Lが押された(マウス40が左クリックされた)か否かが判断される。スイッチ41Lが押されていないことが判断されると、ステップ13においてカウンタ43Yの計数値が読み込まれ、RAM23の領域231に書き込まれ一時記憶される。カウンタ43Yの計数値を読み込んだ直後に、CPU21がリセット信号を発生し、I/O回路24及びI/O回路44を介してカウンタ43Yに与え、カウンタ43Yをリセットさせる。ステップ14において、カウンタ43Yから読み込んだ一定時間当たりの計数値(Y)が0か否かが判断される。カウンタ43Yの計数値が0でないことが判断されると、ステップ15において直前のエネルギー値データ(E)にYの値を加算して、エネルギー値データの累積値が求められた後、ステップ19へ進む。
【0031】
一方、ステップ14において、カウンタ43Yの計数値(Y)が0であると判断された場合(例えば、マウス40をマウスパッド45から離して後方に戻す間等マウス40のカウントがされていない場合)は、ステップ16において減衰値データ(E0)の値だけエネルギー値データ(E)を減少させる(E−E0の計算処理)。続くステップ17において、エネルギー値データ(E)が0より小さいか否かが判断され、0以上の場合はステップ19に進む。また、ステップ17において、エネルギー値データ(E)が0より小さいと判断された場合は、エネルギー値データ(E)を0にして、ステップ19に進む。ステップ19において、時間待ち処理、具体的には1/60秒待つ処理が行われる。この時間待ち期間内に、マウス40のY方向の移動がセンサ42Yによって検出され、その移動量に応じた計数値がカウンタ43Yに累計されて保持される。その後、ステップ12に戻る。
【0032】
前述のステップ12において、マウス40のスイッチ41Lの押されたことが判断されると、ステップ21に進み、画面上における車51の走行が開始される。具体的には、CPU21は、ゲームプログラムに基づいて、走行により振動しているような車51の移動体ポリゴンデータを発生したり、道路や周囲の風景等が走行速度に比例して変化するような背景画像のポリゴンデータを発生する。ステップ21において、走行距離データ(D)がリセットされる。ステップ22において、エネルギー値データ(E)に基づいて車速データ(V)の初期値が決定される。ステップ23において、一定時間(T)当たりの走行距離(Dt)が計算される(Dt=VT)とともに、走行距離データ(D)に一定時間当たりの走行距離(Dt)が加算される(D=D+Dt)。ステップ24において、走行距離データ(D)が目標最大距離データ(Lmax)の値より大きいか否かが判断される。走行距離データ(D)が目標最大距離データ(Lmax)以下であると判断されると、ステップ25において、表示装置50の画面上に表示される車51を一定時間当たりの距離(Dt)だけ走行させるような画像表示の変化処理が行われる。続くステップ26において、車速データ(V)から減少値データ(V0)を減算する処理が行われ、一定時間当たりの車速の減速処理が行われる。ステップ27において、車速データ(V)が0以下であるか否かが判断される。車速データ(V)が0より大きい(すなわち走行中である)と判断されると、ステップ23に戻って、車の走行処理が継続される。
【0033】
一方、ステップ24において、走行距離データ(D)が目標最大距離データ(Lmax)より大きい(車51が成功区間53をオーバーした)ことが判断されると、ステップ30において、失敗処理が行われる。例えば、図8(f)に示すように、車51が崖54から転落するするような表示が行われる。ステップ27において、車速(V)が0以下である(すなわち停止した)ことが判断されると、ステップ28に進み、走行距離データ(D)が目標最小距離データ(Lmin)より小さい(目標地点に到達していない)か否かが判断される。走行距離データ(D)が目標最小距離データ(Lmin)より小さい(すなわち、車51が成功区間53の手前で停止した)ことが判断されると、ステップ30に進み、図8(d)に示すような状態で停止している場合の失敗処理(例えば、エネルギー不足によるエンスト状態の表示等)が行われる。ステップ27において、走行距離データ(D)が目標最小距離データ(Lmin)以上であることが判断されると、車51が成功区間53内に停止したことが判断される。この場合、図8(e)に示すような状態で停止しているので、ステップ29において成功処理が行われる。この成功処理としては、効果音のファンファーレが鳴ったり、くす玉の割れるような画像表示や得点の付与等がある。
【0034】
以上説明したマウスの操作状態に応じて付与されるエネルギー値に関連する情報に基づくゲームの画像表示は、上述の実施例に限らず、ゲームの種類や移動物体の種類によって異なり、マウスを用いてエネルギー値の蓄積を演算によって求めれば、その演算結果をゲームの種類や移動物体の種類によって様々な態様に変形して利用できることを指摘しておく。すなわち、マウス40の操作によって蓄積したエネルギー値に基づく移動物体の画像の変化は、適用されるゲームの種類によって、文章番号
【0035】
に記載したような種々の例が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の一実施例のゲームシステムの外観図である。
【図2】この発明の一実施例のゲームシステムのブロック図である。
【図3】RAMのメモリマップの図解図である。
【図4】ROMのメモリマップの図解図である。
【図5】マウスのカウント値の計測原理を説明するための図解図である。
【図6】マウスによるエネルギー値の入力操作例を示す図である。
【図7】この発明の一実施例の動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】この発明の一実施例のゲーム画面の表示例の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
10:ゲームシステム
20;ビデオゲーム機(ゲーム機)
21;CPU
22;画像処理ユニット(RCP)
30;メモリカートリッジ
31;ROM
40;マウス
50;表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示手段とポインティングデバイスが接続され、ポインティングデバイスの操作に関連するエネルギーを利用して表示手段に表示される物体の画像を変化させるビデオゲーム装置であって、前記ポインティングデバイスの操作に伴って変化するカウント値を求めるカウント値算出手段、前記カウント値に基づいて、前記ポインティングデバイスの操作に関するエネルギー値を算出して、ゲーム中の物体のエネルギーに関連する情報を出力するエネルギー関連情報発生手段、および前記エネルギー関連情報に応じて前記物体の表示状態を変化させた画像を発生する画像データ発生手段を備えたビデオゲーム装置。
【請求項2】
前記エネルギー関連情報発生手段は、前記カウント値に基づいて、前記ポインティングデバイスの操作に関するエネルギー値を算出するエネルギー値算出手段と、前記エネルギー値算出手段によって求められたエネルギー値に基づいて、前記物体のエネルギーに関連する情報を決定するエネルギー関連情報決定手段とを含むことを特徴とする、請求項1に記載のビデオゲーム装置。
【請求項3】
前記エネルギー値算出手段は、前記ポインティングデバイスの単位時間当たりの操作量に基づいて、エネルギー値を算出する、請求項2に記載のビデオゲーム装置。
【請求項4】
前記ポインティングデバイスは、第1の軸方向成分の操作量と第2の軸方向成分の操作量を検出するものであり、前記カウント値算出手段は、前記第1の軸方向成分の操作量に相当する第1のカウント値と第2の軸方向成分の操作量に相当する第2のカウント値を演算によって求め、前記エネルギー関連情報発生手段は、前記第1のカウント値と前記第2のカウント値とに基づいて第1の軸方向成分と第2の軸方向成分を合成したエネルギー値を算出して前記物体のエネルギーに関連する情報を発生する、請求項1に記載のビデオゲーム装置。
【請求項5】
前記カウント値算出手段は、前記ポインティングデバイスが所定時間以上操作されていないことを検出する無操作状態検出手段を含み、前記エネルギー関連情報発生手段は、前記無操作状態検出手段の無操作状態検出出力に応答して、前記エネルギー値を減衰させる、請求項1に記載のビデオゲーム装置。
【請求項6】
前記画像データ発生手段は、移動物体の画像データと当該移動物体が移動する経路の背景画像を発生するものであり、前記エネルギー値が大きいことに基づいて移動物体の移動速度が速くなるように移動物体の移動状態と背景画像を変化させて表示し、エネルギー値が小さいことに基づいて移動物体の移動速度が遅くなるように移動物体の移動状態と背景画像を変化させて表示するための画像データを発生する、請求項1又は請求項2に記載のビデオゲーム装置。
【請求項7】
前記画像データ発生手段は、移動物体の画像データと当該移動物体が移動する経路の背景画像を発生するものであり、前記エネルギー値が大きいことに基づいて移動物体の移動距離が長くなるように移動物体の移動状態と背景画像を変化させて表示し、エネルギー値が小さいことに基づいて移動物体の移動距離が短くなるように移動物体の移動状態と背景画像を変化させて表示するための画像データを発生する、請求項1又は請求項2に記載のビデオゲーム装置。
【請求項8】
前記画像データ発生手段は、前記背景画像として前記移動物体が走行するコース画像を発生し、前記ビデオゲーム装置は、前記移動物体が前記コース画像のスタート地点から目標地点へ向けて走行するときの目標地点近傍の所定範囲内に到達することを競う走行ゲームであり、さらに前記移動物体が前記スタート地点から走行するとき、前記エネルギー値算出手段によって求められた全エネルギーを消耗して走行を停止したときの位置が前記目標地点近傍の所定範囲内であるかどうかを検出する目標地点到達検出手段を備えた、請求項6又は請求項7に記載のビデオゲーム装置。
【請求項9】
表示手段とポインティングデバイスが接続されたビデオゲーム装置に装着して使用され、ポインティングデバイスの操作に関連するエネルギーを利用して表示手段に表示される画像を変化させるためのゲームプログラムを記憶した情報記憶媒体であって、前記ポインティングデバイスの操作に伴って変化するカウント値を読み込むカウント値読込プログラム、前記カウント値に基づいて、前記ポインティングデバイスの操作に関するエネルギー値を算出して、ゲーム中の物体のエネルギーに関連する情報を出力するエネルギー関連情報演算プログラム、および前記エネルギー関連情報に応じて前記物体の表示状態を変化させた画像を発生する画像データ発生プログラムを備えた、情報記憶媒体。
【請求項10】
前記エネルギー関連情報演算プログラムは、前記カウント値に基づいて、前記ポインティングデバイスの操作に関するエネルギー値を算出するエネルギー値算出プログラムと、前記エネルギー値算出プログラムによって求められたエネルギー値に基づいて、前記物体のエネルギーに関連する情報を決定するエネルギー関連情報決定プログラムを含む、請求項9に記載の情報記憶媒体。
【請求項11】
前記エネルギー値算出プログラムは、前記ポインティングデバイスの単位時間当たりの操作量に基づいて、エネルギー値を算出するプログラムを含む、請求項10に記載の情報記憶媒体。
【請求項12】
前記ポインティングデバイスは、第1の軸方向成分の操作量と第2の軸方向成分の操作量を検出するものであり、前記カウント値読込プログラムは、前記第1の軸方向成分の操作量に相当する第1のカウント値と第2の軸方向成分の操作量に相当する第2のカウント値を読み込むプログラムを含み、前記エネルギー関連情報演算プログラムは、前記第1のカウント値と前記第2のカウント値とに基づいて第1の軸方向成分と第2の軸方向成分を合成したエネルギー値を算出して、前記物体のエネルギーに関連する情報を求めるプログラムを含む、請求項9に記載の情報記憶媒体。
【請求項13】
前記カウント値読込プログラムは、前記ポインティングデバイスが所定時間以上操作されていないことを検出する無操作状態検出プログラムを含み、前記エネルギー関連情報演算プログラムは、前記無操作状態検出プログラムによる無操作状態検出出力に応答して、前記エネルギー値を減衰させる、請求項9に記載の情報記憶媒体。
【請求項14】
前記画像データ発生手段は、移動物体の画像データと当該移動物体が移動する経路の背景画像を発生するものであり、前記エネルギー値が大きいことに基づいて移動物体の移動速度が速くなるように移動物体の移動状態と背景画像を変化させて表示し、エネルギー値が小さいことに基づいて移動物体の移動速度が遅くなるように移動物体の移動状態と背景画像を変化させて表示するための画像データを発生する、請求項9又は請求項10に記載の情報記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−18259(P2008−18259A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225691(P2007−225691)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【分割の表示】特願平11−237738の分割
【原出願日】平成11年8月25日(1999.8.25)
【出願人】(000233778)任天堂株式会社 (1,115)
【Fターム(参考)】