説明

ビデオプリンタ

【課題】異なる特性をもつ複数の領域から構成されている静止画データの画像をプリント出力する際に、画像全体に対して均一な画質調整を実施するのではなく、各領域に応じた画質調整を実施することができないという課題があった。
【解決手段】蓄積した静止画データの各構成画素の輝度を、予め指定した輝度の閾値と比較し、蓄積した静止画データの各構成画素の輝度がどの範囲に属するかを判定する判定手段と、判定結果に基づいて、構成画素毎に、コントラストと明るさの画質調整を実施する画質調整手段を備えることにより、画像が異なる特性をもつ複数の領域から構成されている場合でも、各領域の画像特性に応じた画質調整を実施してプリント出力できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタル信号として蓄積された画像をプリント出力するビデオプリンタに関するものであって、特にプリント出力時の画質調整機能に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のビデオプリンタは、ビデオプリンタ内にデジタルデータとして蓄積された画像データをプリント出力する際の画質調整手段として、画像データ全体に均一な画質調整を行うか、又は、ユーザが個別に画像データの一部の領域を手動操作で指定した上で、この指定領域に対して画質調整を実施する(例えば、特許文献1)という手段がとられてきた。
【0003】
【特許文献1】特開2000−11140号公報(第5図、第6図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静止画データのプリント出力時に、画像全体に対して均一な画質調整を実施するのではなく、画像の各画素の特性に応じて、異なる画質調整を行ないたい場合があり、このような画像の一例として、医療用の眼底画像がある。眼底画像には、眼底の中央部に乳頭部と呼ばれる特に明るい部分と周辺部と呼ばれる中程度の明るさの部分が含まれている。この乳頭部は階調範囲が狭く、また階調性が微妙でコントラストを上げると色とび(隣接する画素間で階調変化のなめらかでないこと)が発生する恐れがある為、コントラストを下げる画質調整が望まれる。一方、周辺部はコントラストを下げると赤色の鮮やかさが損なわれてしまう事と、血管をくっきり見やすくするためにコントラストを上げる画質調整が望まれる。従って、静止画データの全領域に対して1種類の画質調整を実施するのではなく、静止画データの各画素の特性に対応した画質調整ができる必要がある。
【0005】
しかしながら、従来のビデオプリンタは、静止画データ全体に均一な画質調整を行うか、または、静止画データの一部の領域に対してユーザの手動操作による個別的な画質調整を実施するものでしかなかった為、画像のプリント出力時に静止画データの各画素の特性に応じて、異なる画質調整を実施してプリントを行うことができないという問題点があった。
【0006】
本発明は前記に述べたような問題点を解決するためになされたもので、静止画データの各画素の特性に応じて異なった画質調整を実施し、それぞれの領域に最適な画質のプリント出力が可能なビデオプリンタを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係わるビデオプリンタは、ビデオプリンタ内に保持されている静止画データの各構成画素の属性を表すデータ値として、例えば画素ごとの輝度を用いるとともに、蓄積した静止画データの各構成画素の輝度を、予め指定した輝度の閾値と比較することにより、蓄積した静止画データの各構成画素の輝度がどの範囲に属するかを判定する判定手段を設けたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、静止画像の各画素の特性に応じて異なった画質調整を実施することができるので、静止画像が異なる特性をもつ複数の領域から構成されている場合でも、各領域に適した画像調整が実施できる為、画像全体として最適な画質調整がなされたプリント出力を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1によるビデオプリンタの構成を図である。まず、ビデオプリンタが外部から入力したビデオ映像信号を静止画データとして蓄積する蓄積手段について説明する。映像信号処理部1は、外部から入力したビデオ映像信号A(映像信号形式としては、例えばコンポジット信号である。)をRGB3系統のアナログ映像信号Bに変換する。A/D変換部2はアナログ映像信号Bをサンプリングし、量子化することにより、RGBの各系統の1画素当たり1バイトのデジタル形式の静止画データ(このデータの値は0から255で、0が最も暗く、255が最も明るい。)に変換して、静止画データCとして出力する。メモリコントロール部3は、静止画データCをメモリ4に書き込む制御を行うことにより、静止画データCがメモリ4に蓄積される。
【0010】
メモリ4内では、蓄積画像は横方向m個の画素、縦方向nラインで構成されているものとする。従って、メモリ4には各画素毎にRGBの各色成分につき1バイトの輝度データが含まれており、画像全体としては各色成分につきm*nバイトのデータがメモリ4に蓄積されていることになる。ここで、メモリ4に蓄積されている画像の画像空間内の座標を(x,y)とすると(但し1≦x≦m、1≦y≦n)、座標(x,y)におけるR、G、Bの各成分の輝度データをRxy、Gxy、Bxyと記すことにする。
【0011】
次に、メモリ4に蓄積済みの静止画データの画像をプリント出力する際には、メモリコントロール部3がメモリ4内に蓄積されている静止画データを画像の1ライン分のデータ単位で、静止画データDとして読み出し制御を行い、転写部5へ出力する。転写部5は静止画データDの1ライン分の静止画データに含まれる各画素毎の画質調整を実施する。その後、画像データの色形式をRGBからYMC(イエロー、マゼンタ、シアン)に変換した後、サーマルヘッドをONさせる時間長パルスEに変換して、サーマルヘッド6に出力する。
【0012】
図2はこの実施の形態1による転写部5の画質調整の処理手順を示すフロー図である。次に、転写部5における画質調整の処理を図2の処理フローに従って説明する。なお、メモリ4には各画素毎にRGBの各色成分の静止画データが含まれているが、転写部5における各色成分に対する処理はいずれも同様な手順で行われるので、以下の説明ではR成分に対する処理についてのみ説明する。
【0013】
転写部5は、まず、メモリ4から読み出した1ライン分の静止画データから画像空間座標(x,y)に対応する画素のR成分の輝度データRxyを取り出す(ステップ1)。次にRxyを予め設定した輝度の閾値zと比較することにより、輝度データRxyがRxy≧zか、またはRxy<zのいずれの範囲に属するかを判定する(ステップ2)。即ち、ステップ2は、各構成画素の属性である輝度が予め指定した範囲のいずれに属するかを判定し、判定結果を出力する判定手段であり、Rxy≧zに対応する画素はある明るさ以上の領域に含まれていることを意味し、Rxy<zに対応する画素はある明るさ未満の領域に含まれていることを意味することになる。なお、閾値zは予め転写部5に設定しておくものとする。この閾値zは設定変更が可能であり、閾値zを変更することにより、静止画データにおける各画質調整毎を行う対象領域を変更することができる。
【0014】
判定結果がRxy≧zの場合は、この画素データに対して、画質調整関数gによる画質調整を実施する(ステップ3a)。一方、判定結果がRxy<zの場合は、この画素データに対して、画質調整関数fによる画質調整を実施する(ステップ3b)。即ち、ステップ3aとステップ3bにより、各画素の画質を調整する画質調整手段を構成する。なお、画質調整関数は画質調整前の輝度データRxyから画質調整後の輝度データR’xyを得る関数であり、それぞれ具体的には、R’xy=f(Rxy)=a*Rxy+b、及び、R’xy=g(Rxy)=c*Rxy+d、(但し、a、b、c、dは定数)とする。
【0015】
図3は画質調整の概念を示したものである。図3の(a)は画質調整前の静止画データの各画素毎の輝度データのR色成分Rxyを示す図であり、静止画データ全体がRxy≧zである領域Aと、Rxy<zである領域Bの2つの領域から構成されていることを示している。この静止画データに対して、前述した転写部5における画質調整処理を実行すると、領域Aに含まれる画素のR色成分Rxyに対して画質調整関数gが適用され、領域Bに含まれる画素のR色成分Rxyに対して画質調整関数fが適用される結果、図3の(b)に示すように、領域Aの各画素毎の輝度データのR色成分R’xyはR’xy=g(Rxy)に画質調整され、領域Bの各画素毎の輝度データのR色成分R’xyはR’xy=f(Rxy)に画質調整されたことを示している。
【0016】
画質調整関数は関数内の定数を設定することにより多様な画質調整を実現できる。具体的には、画質調整関数fにおける定数aによってコントラストの調整を行い、定数bによって明るさの調整を行うことができる。コントラスト、及び明るさの調整方法を図に基づいて説明する。図4は定数b=0として、定数aを変化させた場合の画質調整関数fを、横軸を画質調整前の輝度データRxy、縦軸を輝度データf(Rxy)としてプロットしたものである。図4に示すように、a=1の場合は、実質的な画質調整を行わない場合に相当し、a>1の場合はコントラストが上げる調整に、a<1の場合はコントラストを下げる調整にそれぞれ対応する。また、図5は定数aを一定にして、定数bを変化させた場合の画質調整関数fを、横軸を画質調整前の輝度データRxy、縦軸を輝度データf(Rxy)としてプロットしたものである。図5に示すように、b>0の場合は輝度が全体的に上がる調整に対応し、b<0の場合は輝度が全体的に下がる調整に対応する。なお、画質調整関数gにおいても、定数c、dがそれぞれ定数a、bと同様な効果を有する。
【0017】
以上、R成分についての画質調整関数について説明したが、G成分、B成分の画質調整も画質調整関数を用いて同様に行うことができる。即ち、G成分用の画質調整関数として、G’xy=f(Gxy)=a*Gxy+b,及びG’xy=g(Gxy)=c*Gxy+dを使用し、B成分用の画質調整関数として、B’xy=f(Bxy)=a*Bxy+b,及びB’xy=g(Bxy)=c*Gxy+dを使用すればよい。ここで、画質調整関数の各定数にa=a=a3、b=b=b、c=c=c3、及びd=d=d3の関係があれば、画質調整前の色相を保った状態で画質調整が行われ、画質調整関数の各定数が前述の関係を満たさない場合には、異なる色相へと画質調整がなされることになる。
【0018】
ステップ2、及びステップ3の処理を画像データ1ライン分に含まれる全ての画素に実行した後、画質調整後の輝度データR’xyを、RGB形式からYMCに色変換し(ステップ4)、サーマルヘッドをONさせる時間長パルスFに変換して(ステップ5)、サーマルヘッドへ転送する(ステップ6)。
【0019】
以上説明したように、実施の形態1のビデオプリンタは、画像の各画素の属性値である輝度に基づいて、画素毎に異なる画質調整が可能なようにしたので、画像が異なる特性をもつ複数の領域から構成されている場合でも、各領域の画像特性に応じた画質調整を実施してプリント出力を行うことができるという効果がある。
【0020】
例えば、前記に述べた医療用眼底画像の例で言えば、乳頭部内の細い毛細血管は通常では非常に判別しにくく、コントラストを上げると階調変化が急になり、色飛びを起こして見えなくなることもある為、コントラストを下げる画質調整を行うことにより、乳頭部での階調変化をゆるやかにし、診断で必要とされる情報の欠落をなくすようにできる。また、周辺部では逆にコントラストをあげる画質調整を行うことで、周辺部内に走る比較的太い血管をきわだたせて表示することができる。
【0021】
なお、実施の形態1ではR成分についての画質調整関数について説明したが、G成分、B成分の画質調整も画質調整関数を用いて同様に行うことができる。即ち、G成分用の画質調整関数として、G’xy=f(Gxy)=a*Gxy+b,及びG’xy=g(Gxy)=c*Gxy+dを使用し、B成分用の画質調整関数として、B’xy=f(Bxy)=a*Bxy+b,及びB’xy=g(Bxy)=c*Gxy+dを使用すればよい。ここで、画質調整関数の各定数にa=a=a3、b=b=b、c=c=c3、及びd=d=d3の関係があれば、画質調整前の色相を保った状態で画質調整が行われ、画質調整関数の各定数が前述の関係を満たさない場合には、異なる色相へと画質調整がなされることになる。
【0022】
また、実施の形態1では、画質調整関数f、gは輝度Rxyの一次関数であったが、これに限定されるものではなく、画質調整関数として輝度Rxyの高次関数を用いて、より複雑な画質調整を実施することもできる。
【0023】
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2のビデオプリンタにおける転写部5での画質調整の処理の動作を示すフロー図である。実施の形態1では、転写部5での判定手段(ステップ2)において、輝度の閾値として一つの閾値zを用いるようにしたが、複数個の閾値、例えばz1、z2、・・・、znというように、n個の閾値(但しz1<z2<・・・<zn)を用いた判定を行うこともできる。そして、判定結果に対応した画質調整手段として、(n+1)個の画質調整関数、f1、f2、・・・、fn+1を用意することにより、画像全体に対して、よりきめの細かい画質調整を行うことができる。
【0024】
本実施の形態2と実施の形態1との相違点は、転写部5の構成のみであるので、以下、転写部5の画質調整の処理フローについて、図6に基づいて説明する。なお、図6において、ステップ1、及びステップ4〜6については実施の形態1における図2に示した処理フローと同一な為、説明を省略する。
【0025】
ステップ2の判定手段では閾値として2つの閾値z1、z2を使って、画素のR成分の輝度データRxyと、z1、及びz2の値を比較する。これにより、RxyがRxy<z1、z1≦Rxy<z2、z2≦Rxyのいずれの範囲に属するか判定する。
【0026】
次に、ステップ2での判定結果に応じた画質調整関数を用いて画質調整を行う。具体的には、Rxy<z1の時は、画質調整関数f1(ステップ3a)、z1≦Rxy<z2の時は画質調整関数f2(ステップ3b)、z2≦Rxyの時は画質調整関数f3(ステップ3c)を用いて、それぞれ画質調整を行う。ステップ3a、3b、3c全体で画質調整手段を構成する。
【0027】
以上のように、実施の形態2のビデオプリンタは、複数個の閾値を用いた判定手段と、複数個の画質調整関数を用いた画質調整手段とを有するようにしたので、画像が異なる特性をもつ複数の領域から構成されている場合に、よりきめの細かい画質調整を行ったプリント出力が得られるという効果がある。
【0028】
なお、実施の形態1、及び実施の形態2では、画質調整関数の独立変数として、画素の輝度を用いたが、他の属性、例えば色相、彩度、明度などを独立変数とした画質調整関数を使用することも可能である。例えば、彩度を独立変数とした場合は、実施の形態1における転写部5の動作フロー(図2)のステップ2の処理において、まず、画素のRGB成分から彩度sを求め、この彩度sと、予め設定した彩度の閾値Szとを比較するようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態1のビデオプリンタの構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1のビデオプリンタにおける転写部の処理フローである。
【図3】本発明の実施の形態1の画質調整機能の概念を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1のコントラスト調整の説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1の明るさ調整の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態2のビデオプリンタにおける転写部の処理フローである。
【符号の説明】
【0030】
1 ・・・・ 映像信号処理部
2 ・・・・ A/D変換部
3 ・・・・ メモリコントロール部
4 ・・・・ メモリ
5 ・・・・ 転写部
6 ・・・・ サーマルヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された映像信号を静止画データとして蓄積する蓄積手段と、前記蓄積した静止画データの各構成画素の属性を表すデータ値が予め指定した範囲のいずれに属するかを判定し、判定結果を出力する判定手段と、前記判定結果に基づいて、前記構成画素毎に異なる画質調整を実施する画質調整手段を備えたことを特徴とするビデオプリンタ。
【請求項2】
判定手段は静止画データの構成画素の属性を表すデータ値である輝度データに基づいて判定し、画質調整手段は前記構成画素の輝度データに特定の定数を乗ずることでコントラストを調整し、前記構成画素の輝度データに特定の定数を加減することで明るさを調整することを特徴とする請求項1記載のビデオプリンタ。
【請求項3】
判定手段における構成画素の属性を表すデータ値の予め指定する範囲は、輝度データの複数個の閾値に基づいて指定することを特徴とする請求項2記載のビデオプリンタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−339984(P2006−339984A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161662(P2005−161662)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】