説明

ビニリデンフルオライド系重合体の製造方法

【課題】溶剤や(メタ)アクリルモノマーに対する溶解性が向上する含フッ素樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】
(a)含フッ素オレフィン、(b)マロン酸、マロン酸モノエステルまたはマロン酸ジエステルおよび(c)水溶性ラジカル重合開始剤を水中に添加し乳化重合を行う含フッ素樹脂の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マロン酸、マロン酸モノエステルまたはマロン酸ジエステルの存在下で含フッ素オレフィンを水溶性ラジカル重合開始剤により乳化重合を行う含フッ素樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素樹脂は耐候性や撥水撥油性、防汚性、化学的安定性、非粘着性、潤滑性、耐熱性、難燃性などに優れているという利点があるが、高価で汎用の用途には多量に使用することは困難である。そこで、(メタ)アクリルポリマーなどの汎用樹脂にフッ素系低分子化合物やフッ素樹脂を添加剤として添加して使用されている。
【0003】
ところで、含フッ素樹脂を乳化重合により製造する場合、水中に含フッ素オレフィンおよび水溶性重合開始剤を添加し重合する方法が古くから知られている。例えば、特許文献1には、フッ素系界面活性剤を用いてビニリデンフルオライド系重合体を製造する旨が記載されているが、該製造方法により得られるビニリデンフルオライド系重合体は、水溶性重合開始剤由来のイオン性末端基を有するため、溶剤に対する溶解性が悪く、改善の余地があった。
【0004】
また、特許文献2には、フッ化ビニリデンを水溶性重合開始剤として過硫酸塩を用いて乳化重合させる際に、連鎖移動剤として酢酸メチルや酢酸エチルを添加してポリフッ化ビニリデンを製造する旨が記載されている。該連鎖移動剤を添加することにより重合速度の低下が少なく、また、安定性が良好であるポリフッ化ビニリデンが得られるが、重合体における水溶性重合開始剤由来のイオン性末端基については残存しており、得られる重合体の溶剤に対する溶解性については改善の余地があった。
【0005】
さらに特許文献3の比較例4において連鎖移動剤としてマロン酸ジエチルが用いられているが、開始剤として過マンガン酸カリウムとシュウ酸の組み合わせたものを用いており水溶性ラジカル重合開始剤は用いられていない。
【0006】
【特許文献1】特開平7−90153号公報
【特許文献2】特開昭58−65711号公報
【特許文献3】特表2004−528451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、溶剤に対する溶解性が向上する含フッ素樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(a)含フッ素オレフィン、(b)マロン酸、マロン酸モノエステルまたはマロン酸ジエステルおよび(c)水溶性ラジカル重合開始剤を水中に添加し乳化重合を行う含フッ素樹脂の製造方法に関する。
【0009】
さらに、水溶性溶媒中に(d)界面活性剤を添加してもよい。
【0010】
含フッ素オレフィン(a)がビニリデンフルオライドまたはビニリデンフルオライドと他の共重合可能なオレフィンの混合物であることが好ましい。
【0011】
他の共重合可能なオレフィンが、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびクロロトリフルオロエチレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
含フッ素オレフィン(a)がビニリデンフルオライド、クロロトリフルオロエチレンおよびテトラフルオロエチレンの混合物であることが好ましい。
【0013】
マロン酸、マロン酸モノエステルまたはマロン酸ジエステル(b)が式(1):
【化1】

(式中、R1およびR2は、同じであっても異なっていてもよく、いずれも炭素数1〜6のアルキル基、または水素原子)
であることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、前記の製造方法により得られる含フッ素樹脂にも関する。
【0015】
さらに、本発明は、前記の含フッ素樹脂を含む水性分散組成物にも関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法によれば、マロン酸、マロン酸モノエステルまたはマロン酸ジエステルを添加することにより、水溶性ラジカル重合開始剤によるポリマーのイオン性末端をキャップすることができる。そのため、得られるポリマーは、溶剤溶解性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の製造方法は、(a)含フッ素オレフィン、(b)マロン酸、マロン酸モノエステルまたはマロン酸ジエステルおよび(c)水溶性ラジカル重合開始剤を水中に添加し乳化を行うことを特徴とする。
【0018】
含フッ素オレフィン(a)としては、たとえばビニリデンフルオライド(VdF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロプロピレン、フッ化ビニル(VF)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)などの1種または2種以上の混合物があげられるが、有機溶剤への溶解性が良好であるという点から、VdFまたはVdFと他の共重合可能なオレフィンとの混合物であることが好ましい。
【0019】
VdFの配合量は、有機溶剤への溶解性が良好であるという点から、含フッ素オレフィン(a)中、60〜85モル%が好ましく、70〜80モル%がより好ましい。
【0020】
具体的には、VdF/TFE(60〜99/1〜40モル%)、VdF/TFE/HFP(60〜98/1〜39/1〜39モル%)、VdF/TFE/CTFE(60〜98/1〜39/1〜39モル%)、VdF/HFP(60〜99/1〜40モル%)、VdF/CTFE(60〜99/1〜40モル%)などがあげられ、特に、有機溶剤への溶解性の点から、VdF/TFE/CTFEがより好ましい。
【0021】
マロン酸、マロン酸モノエステルまたはマロン酸ジエステル(b)を配合することにより、得られるポリマーが水溶性ラジカル重合開始剤由来のイオン性末端をキャップすることができ、溶剤への溶解性を向上させることができる。マロン酸、マロン酸モノエステルまたはマロン酸ジエステル(b)としては、式(1):
【化2】

のものがあげられる。
【0022】
式中、式中、R1およびR2は、同じであっても異なっていてもよく、いずれも炭素数1〜6、または水素原子、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。
【0023】
具体的には、マロン酸ジエチル、マロン酸ジメチル、マロン酸メチルエチルなどがあげられるが、コストの点からマロン酸ジエチルが特に好ましい。
【0024】
マロン酸、マロン酸モノエステルまたはマロン酸ジエステル(b)の配合量は、ポリマーのイオン性末端のキャップする効率が良好であるという点から、水溶性ラジカル重合開始剤(c)100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、10000質量部以下が好ましい。
【0025】
水溶性ラジカル重合開始剤(c)としては、水性媒体中でフリーラジカル反応に供しうるラジカルを20〜90℃の間の温度で発生するものであれば特に限定されないが、通常、水溶性の開始剤として過硫酸のカリウム塩、アンモニウム塩、過酸化水素などがあげられる。具体的には、過硫酸アンモニウム(APS)、過硫酸カリウム(KPS)、過硫酸ナトリウムなどがあげられ、これらのうちイオン性末端基を生成させる能力が良好な点から、APS、KPSが好適に使用できる。
【0026】
また、前記水溶性ラジカル重合開始剤(c)について、必要に応じて還元剤を添加してレドックス反応を用いた低温分解型の開始剤系を採用することも可能である。好ましい還元剤としては亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどの亜硫酸塩、亜硫酸水素ナトリウム、または亜硫酸水素カリウムなどのメタ重亜硫酸塩、ピロ硫酸塩、およびチオ硫酸塩などがあげられる。亜硫酸塩を用いた場合にはイオン性末端基がSO3になる場合がある。
【0027】
水溶性ラジカル重合開始剤(c)の配合量は、重合速度を速くするという点から、水に対して、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上がさらに好ましい。また、水溶性ラジカル重合開始剤(c)の配合量は、電解質濃度を下げ、平均一次粒子径を小さくできる点から、水に対して、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下がさらに好ましい。
【0028】
本発明の乳化重合は、界面活性剤の不存在下で重合を行ってもよく、また、水溶性溶媒中に界面活性剤(d)を配合してもよい。界面活性剤(d)としては、含フッ素オレフィン(a)を安定に乳化させることができるという点から、フッ素系界面活性剤(a)が好ましく、具体的には、C511COONH4やC715COONH4に代表されるRfCOONH4(Rfは炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基)界面活性剤、特表2004−533511号公報記載のビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミドまたはその塩を含む界面活性剤、特表2004−509993号公報記載のCF3(CF25CH2CH2SO3M(M=NH4、H)に代表される界面活性剤、特開昭61−223007号公報記載のC37OCF(CF3)COONH4、C37OCF(CF3)CF2OCF(CF3)COONH4などに代表される界面活性剤などがあげられる。
【0029】
また、非フッ素系界面活性剤を配合してもよい。具体的には、ノニオン系非フッ素系界面活性剤、アニオン系非フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤などがあげられる。
【0030】
ノニオン系非フッ素系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、グリセリンエステル類およびその誘導体などがあげられる。より具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類のものとしてポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルなどがあげられ、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類のものとしてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどがあげられ、ポリオキシエチレンアルキルエステル類のものとしてモノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコールなどがあげられ、ソルビタンアルキルエステル類のものとしてモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどがあげられ、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類のものとしてモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどがあげられ、グリセリンエステル類のものとしてモノミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリルなどがあげられる。また、これらの誘導体としては、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニル−ホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩などがあげられる。特に好ましいものはポリオキシエチレンアルキルエーテル類およびポリオキシエチレンアルキルエステル類であってHLB値が10〜18のものであり、具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO:5〜20。EOはエチレンオキシドユニット数を示す。)モノステアリン酸ポリエチレングリコール(EO:10〜55)、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(EO:6〜10)があげられる。
【0031】
アニオン系非フッ素系界面活性剤としては、高級アルコール硫酸塩のエステル、例えばアルキルスルホン酸ナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸ナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム塩、などがあげられる。
【0032】
また、両性界面活性剤としては、ラウリルベタインなどがあげられる。
【0033】
界面活性剤(d)の配合量は、フッ素系界面活性剤では、コストが抑えられる点から、水に対して、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下がさらに好ましい。非フッ素系界面活性剤の配合量は、連鎖移動による重合速度の低下という点から、水に対して、1質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.05質量%以下がさらに好ましい。
【0034】
乳化重合を行う際の重合圧力は、重合速度が早いという点から、ゲージ圧で0.1MPa以上が好ましく、0.3MPa以上がより好ましく、0.5MPa以上がさらに好ましい。また、乳化重合を行う際の重合圧力は、ゲージ圧で5MPa以下が好ましく、2MPa以下がより好ましく、高圧化に伴う付帯設備が必要ないという点から、1MPa以下がさらに好ましい。
【0035】
乳化重合を行う際の重合温度は、生成する水性分散体の安定性が良好であるという点から、20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、40℃以上がさらに好ましい。また、乳化重合を行う際の重合温度は、連鎖移動による重合速度の失速が起こりにくいという点から、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、90℃以下がさらに好ましい。
【0036】
乳化重合を行う際に、さらに任意成分として、連鎖移動剤、pH調整剤などを添加してもよい。
【0037】
本発明の製造方法としては、例えば、耐圧反応容器に脱イオン水を仕込み、チッ素圧入、脱気を繰り返し、残存空気を除去したのち、含フッ素オレフィン(a)およびマロン酸、マロン酸モノエステルまたはマロン酸ジエステル(b)を添加し、さらに水溶性ラジカル重合開始剤(c)を添加して、そののち前記含フッ素オレフィン(a)を連続供給することによって反応を行うことが好ましい。
【0038】
また、本発明は、重合を二段に分け、さらに、一段目の重合で多数のポリマー粒子を合成し、得られる乳濁液を用いて二段目の重合を行う方法で製造してもよい。
【0039】
この場合、少量の乳化剤で得られるポリマーの粒子径を低く抑えることができ、その結果、安定した乳濁液が得られる。また、得られるポリマー粒子も均一な粒径であり、かつポリマー含有量を高濃度とすることができるため好ましい。二段階で重合を行う際、マロン酸、マロン酸モノエステルまたはマロン酸ジエステルは一段目の重合の際に添加してもよく、また、二段階の重合の際にも添加してもよい。
【0040】
得られる含フッ素樹脂の数平均分子量は、塗膜化の際に機械的特性、耐侯性が良好であるという点から、5,000以上が好ましく、8,000以上がより好ましく、10,000以上がさらに好ましい。また、得られる含フッ素樹脂の数平均分子量は、溶剤溶解性や、塗膜化時のレベリング性が良好であるという点から、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましく、100,000以下がさらに好ましい。
【0041】
得られる含フッ素樹脂の平均一次粒子径は、粘度が低く、高濃度の水性分散液が得られるという点から、50nm以上が好ましく、80nm以上がより好ましく、100nm以上がさらに好ましい。また、得られる含フッ素樹脂の平均一次粒子径は、水性分散液の保存安定性、また、塗膜調整時の光沢が良好であるという点から、3,000nm以下が好ましく、1,000nm以下がより好ましく、500nm以下がさらに好ましい。
【0042】
また、本発明は、前記の製造方法により得られる含フッ素樹脂を含む水性分散組成物にも関する。
【0043】
含フッ素樹脂の固形分濃度は、得られる重合体の量が多いという点から、水性分散組成物中に5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。また、含フッ素樹脂の含有量は、水性分散体の安定性、重合時の付着物が少ないという点から、水性分散組成物中に50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0044】
本発明のビニリデンフルオライド系重合体は溶剤、顔料、増粘剤、分散剤、消泡剤、凍結防止剤、成膜助剤などの添加剤を配合することにより、また更に他の高分子化合物を複合して溶剤塗料、水性塗料、粉体塗料として用いることができる。
【0045】
塗装方法としては、従来と同様のハケやローラーで塗布する方法、エアスプレー、エアレススプレー、エアゾールなどのスプレー法、デッピング法、ロールコート法、インクコート法などが採用でき、たとえばタイル、セメント、コンクリートなどのセラミックス、木材、金属、プラスチック、ゴムなどに塗装できる。
【0046】
塗料組成物としては、耐候性塗料組成物、特に建築・建材用の耐候性塗料組成物、自動車の内・外装用塗料組成物、電気製品の内・外装塗料用組成物、事務機器あるいは厨房器具類の塗料組成物、電子部品あるいはプリント基板類の防湿用塗料組成物などが例示でき、特に耐候性・耐久性が良好な点から建材用の耐候性塗料組成物に有利に適用できる。
【実施例】
【0047】
つぎに実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0048】
実施例1
内容積6Lの攪拌機付耐圧反応容器に脱イオン水を3000g、マロン酸ジエチル24gを仕込み、チッ素圧入、脱気を繰り返し、残存空気を除去したのち、VdF/TFE/CTFEの74/14/12モル%比の混合モノマーにて75℃でゲージ圧で0.80MPaまで加圧した。10質量%過硫酸アンモニウム水溶液28.5gを圧入し、槽内圧力がゲージ圧で0.80MPaとなるように該混合モノマーを連続供給しながら反応を行った。重合開始9時間後に槽内を常温、常圧に戻して重合を停止し、含フッ素重合体の粒子の水性分散液(固形分濃度20質量%)を得た。
【0049】
この水性分散体に4質量%の硫酸アルミニウム水溶液を添加して凝析を行った。得られた凝析物を水洗、乾燥して、樹脂状重合体を得た。
【0050】
実施例2
内容積0.5Lの攪拌機付耐圧反応容器に脱イオン水を250g、マロン酸ジエチル2gを仕込み、チッ素圧入、脱気を繰り返し、残存空気を除去したのち、VdF/TFE/CTFEの74/14/12モル%比の混合モノマーにて80℃でゲージ圧で0.80MPaまで加圧した。10質量%過硫酸アンモニウム水溶液2.4gを圧入し、槽内圧力がゲージ圧で0.80MPaとなるように該混合モノマーを連続供給しながら反応を行った。重合開始9時間後に槽内を常温、常圧に戻して重合を停止し、含フッ素重合体の粒子の水性分散液(固形分濃度16重量%)を得た。
【0051】
この水性分散体を−20℃で12時間冷却し凍結凝析を行った。得られた凝析物を水洗、乾燥して、樹脂状重合体を得た。
【0052】
実施例3
内容積0.5Lの攪拌機付耐圧反応容器に脱イオン水を250g、マロン酸ジエチル2g、50質量%C511COONH4水溶液0.5gを仕込み、チッ素圧入、脱気を繰り返し、残存空気を除去したのち、VdF/TFE/CTFEの74/14/12モル%比の混合モノマーにて80℃でゲージ圧で0.80MPaまで加圧した。10質量%過硫酸アンモニウム水溶液2.4gを圧入し、槽内圧力がゲージ圧で0.80MPaとなるように該混合モノマーを連続供給しながら反応を行った。重合開始6時間後に槽内を常温、常圧に戻して重合を停止し、含フッ素重合体の粒子の水性分散液(固形分濃度15重量%)を得た。
【0053】
この水性分散体を−20℃で12時間冷却し凍結凝析を行った。得られた凝析物を水洗、乾燥して、樹脂状重合体を得た。
【0054】
実施例4
内容積0.5Lの攪拌機付耐圧反応容器に脱イオン水を250g、マロン酸ジエチル1gを仕込み、チッ素圧入、脱気を繰り返し、残存空気を除去したのち、VdF/TFE/CTFEの74/14/12モル%比の混合モノマーにて80℃でゲージ圧で0.80MPaまで加圧した。10質量%過硫酸アンモニウム水溶液2.4gを圧入し、槽内圧力がゲージ圧で0.80MPaとなるように該混合モノマーを連続供給しながら反応を行った。重合開始9時間後に槽内を常温、常圧に戻して重合を停止し、含フッ素重合体の粒子の水性分散液(固形分濃度23重量%)を得た。
この水性分散体を−20℃で12時間冷却し凍結凝析を行った。得られた凝析物を水洗、乾燥して、樹脂状重合体を得た。
【0055】
比較例1
内容積0.5Lの攪拌機付耐圧反応容器に脱イオン水を250g、酢酸エチル1gを仕込み、チッ素圧入、脱気を繰り返し、残存空気を除去したのち、VdF/TFE/CTFEの74/14/12モル%比の混合モノマーにて80℃でゲージ圧で0.80MPaまで加圧した。10質量%過硫酸アンモニウム水溶液2.4gを圧入し、槽内圧力がゲージ圧で0.80MPaとなるように該混合モノマーを連続供給しながら反応を行った。重合開始8時間後に槽内を常温、常圧に戻して重合を停止し、含フッ素重合体の粒子の水性分散液(固形分濃度16重量%)を得た。
この水性分散体を−20℃で12時間冷却し凍結凝析を行った。得られた凝析物を水洗、乾燥して、樹脂状重合体を得た。
【0056】
比較例2
内容積0.5Lの攪拌機付耐圧反応容器に脱イオン水を250g仕込み、チッ素圧入、脱気を繰り返し、残存空気を除去したのち、VdF/TFE/CTFEの74/14/12モル%比の混合モノマーにて80℃でゲージ圧で0.80MPaまで加圧した。10質量%過硫酸アンモニウム水溶液2.4gを圧入し、槽内圧力がゲージ圧で0.80MPaとなるように該混合モノマーを連続供給しながら反応を行った。重合開始3時間後に槽内を常温、常圧に戻して重合を停止し、含フッ素重合体の粒子の水性分散液(固形分濃度24重量%)を得た。
【0057】
この水性分散体を−20℃で12時間冷却し凍結凝析を行った。得られた凝析物を水洗、乾燥して、樹脂状重合体を得た。
【0058】
比較例3
内容積0.5Lの攪拌機付耐圧反応容器に脱イオン水を250g、イソプロピルアルコール(以下、IPAともいう)1gを仕込み、チッ素圧入、脱気を繰り返し、残存空気を除去したのち、VdF/TFE/CTFEの74/14/12モル%比の混合モノマーにて80℃でゲージ圧で0.80MPaまで加圧した。10質量%過硫酸アンモニウム水溶液2.4gを圧入し、槽内圧力がゲージ圧で0.80MPaとなるように該混合モノマーを連続供給しながら反応を行ったが、反応は進行せず、ポリマーを得ることが出来なかった。
【0059】
比較例4
比較例3と同様の方法で、連鎖移動剤をアセチルアセトンに変更して重合を行ったが、反応は進行せず、ポリマーを得ることが出来なかった。
【0060】
得られた水性分散体の重合速度(Rate of polymerization)(以下、Rpともいう)を計算した。また、得られた樹脂状重合体を以下に示す測定方法により、分子量および平均粒子径を測定した。測定結果を表1に示す。
【0061】
(Rp)
Rpの計算式を下に示す。
【数1】

【0062】
(分子量測定)
樹脂粉末をテトラヒドロフラン(THF)で濃度が0.2%となるように溶解させ、これをGPC測定装置(東ソー(株)製、商品名HLC−8020)を用いてポリスチレン換算の数平均分子量および重量平均分子量を測定した。また、THFに溶解不充分な場合はフィルターで残渣を取り除いた後、カラムを通過した部分のみを測定した。
【0063】
(溶剤溶解性試験)
樹脂粉末に酢酸ブチルを加え50重量%の樹脂溶液を調整した。この樹脂溶液の粘度を25℃の条件でB型粘度計(東京計器(株)製、BM型粘度計 ローターNo.4 60rpm)で測定した。
【0064】
(粒子径測定)
水性分散液中の粒子の平均粒子径を濃厚系粒径アナライザー(大塚電子(株)製 FPAR−1000)を用いて測定した。
【0065】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)含フッ素オレフィン、(b)マロン酸、マロン酸モノエステルまたはマロン酸ジエステルおよび(c)水溶性ラジカル重合開始剤を水中に添加し乳化重合を行う含フッ素樹脂の製造方法。
【請求項2】
さらに、水中に(d)界面活性剤を添加する請求項1記載の含フッ素樹脂の製造方法。
【請求項3】
含フッ素オレフィン(a)がビニリデンフルオライドまたはビニリデンフルオライドと他の共重合可能なオレフィンの混合物である請求項1または2記載の含フッ素樹脂の製造方法。
【請求項4】
他の共重合可能なオレフィンが、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびクロロトリフルオロエチレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項3記載の含フッ素樹脂の製造方法。
【請求項5】
含フッ素オレフィン(a)がビニリデンフルオライド、クロロトリフルオロエチレンおよびテトラフルオロエチレンの混合物である請求項1〜4のいずれかに記載の含フッ素樹脂の製造方法。
【請求項6】
マロン酸、マロン酸モノエステルまたはマロン酸ジエステル(b)が式(1):
【化1】

(式中、R1およびR2は、同じであっても異なっていてもよく、いずれも炭素数1〜6のアルキル基、または水素原子)
である請求項1〜5のいずれかに記載の含フッ素樹脂の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られる含フッ素樹脂。
【請求項8】
請求項7記載の含フッ素樹脂を含む水性分散組成物。

【公開番号】特開2008−297529(P2008−297529A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148417(P2007−148417)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】