説明

ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法及び精製方法

【課題】 ラジカル重合性及びカチオン重合性を併せ持つビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を、経済的、安定的に製造する方法及び精製する方法を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1);
CH=CR−COO−R−O−CH=CH−R (1)
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、有機残基を表す。Rは、水素原子又は有機残基を表す。)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法であって、該ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法は、遮光性構造物中で行われるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法及び精製方法に関する。更に詳しくは、熱、紫外線、放射線、電子線、ラジカル重合開始剤、酸等により容易に単独重合又は他の重合性化合物と共重合することが可能である異種の重合性基を分子内に併せ持つビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法及び精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類は、異種の重合性基、すなわちラジカル重合性及びアニオン重合性を有する(メタ)アクリロイル基とカチオン重合性を有するビニルエーテル基とを分子内に併せもつことから、医農薬原料、合成中間体、架橋剤、更に重合性材料として接着剤、粘着剤、生体材料、歯科材料、光学部材、情報記録材料、光ファイバー用材料、レジスト材料、絶縁体、封止材、印刷インキ、塗料、粉体塗料、注型材料、化粧板、WPC、被覆材、ライニング材、土木建築材料、パテ、補修材、床材、舗装材ゲルコート、オーバーコート、ハンドレイアップ・スプレーアップ・引抜成形・フィラメントワインディング・SMC・BMC等の成形材料、シート等の広範囲の工業用途に用いられる有用な化合物である。
【0003】ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法としては、(メタ)アクリル酸と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法A)、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法B)、(メタ)アクリル酸無水物と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法C)、(メタ)アクリル酸エステル類と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル交換する方法(製法D)等の方法が知られている。また、(メタ)アクリル酸とハロゲン含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法E)、(メタ)アクリル酸アルカリ(土類)金属塩とハロゲン含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法F)によっても製造することができる。
【0004】しかしながら、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類は、製法A〜製法Fの何れの方法で製造した場合においても、その製造工程中に分解による不純物の生成、過酸化物の生成及び重合を引き起こすために、安定的に製造することができないという問題点があった。
【0005】更に、上記の方法等により製造されたビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を精製する方法としては、抽出、水洗、蒸発、蒸留、カラムクロマトグラフ等の方法が知られているが、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の容易なラジカル重合性及びカチオン重合性ゆえに精製時に重合が起こったり、更に、分解による不純物の生成が容易に起こったりすることになる。このためビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類は、工業的に安定に精製できるとは言い難く、また、得られる製品の品質及び保存安定性にも問題が残ることになる。従って、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造時、精製時の重合及び分解による不純物の生成を防止し、このようなビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を工業用途において充分に実用化できるものとする研究の余地があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、ラジカル重合性及びカチオン重合性を併せ持つビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を、経済的、安定的に製造する方法及び精製する方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を製造する方法について種々検討した結果、その容易な重合性のために、(1)光、特に可視光線及び/又は紫外線の照射を受けると重合や分解による品質劣化を容易に引き起こすこと、(2)光による重合や分解による品質劣化は、分子状酸素の影響を受けることを見いだし、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造を、遮光性構造物中で行うことにより、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を簡便で経済的に、重合を防止して安定的に製造できること、また、遮光性構造物の気相部の分子状酸素濃度を特定範囲としたりすると、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を簡便でより経済的に、重合を防止してより安定的に製造できることを見いだした。
【0008】また、製造したビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を精製する際に、精製を、遮光性構造物中で、かつ精製系気相部の分子状酸素濃度が特定範囲となる雰囲気中で行うことにより、簡便で経済的に精製時の重合及び分解による不純物の生成を防止し、安定的に精製することができることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0009】すなわち本発明は、下記一般式(1);
CH=CR−COO−R−O−CH=CH−R (1)
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、有機残基を表す。Rは、水素原子又は有機残基を表す。)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法であって、上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法は、遮光性構造物中で行われるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法である。
【0010】本発明はまた、上記一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法であって、上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法は、遮光性構造物中で、かつ該遮光性構造物の気相部の分子状酸素濃度が0.01〜15容量%である雰囲気中で行われるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法でもある。
【0011】本発明は更に、上記一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の精製方法であって、上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の精製方法は、遮光性構造物中で、かつ精製系気相部の分子状酸素濃度が0.01〜15容量%である雰囲気中で行われるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の精製方法でもある。
【0012】本発明はそして、上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の精製は、蒸留精製により行われる上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の精製方法でもある。以下に本発明を詳述する。
【0013】本明細書中、「製造」とは、原料仕込み工程;反応工程;反応液の移送工程等の各工程を意味する。これらの工程は単独でも、あるいは2種類以上を適宜組み合わせて実施することもできる。これらの中でも、原料仕込み工程、反応工程を特に意味する。また、「気相部」とは、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を製造する際に、タンクローリー、タンク等の容器や構造物等に充填したときの気相部を意味する。
【0014】本発明における一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類は、式中のRで示される置換基が水素原子又はメチル基で、Rで示される置換基が有機残基で、Rで示される置換基が水素原子又は有機残基で構成される化合物であれば特に限定されるものではない。本明細書中、一般式(1)で表される化合物中の有機残基とは、当該化合物を構成する基本構造に結合している有機基を意味する。
【0015】上記一般式(1)において、Rで表される有機残基としては特に限定されず、例えば、炭素数2〜20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキレン基、構造中にエーテル結合及び/又はエステル結合により酸素原子を有する炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数6〜11の置換されていてもよい芳香族基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数2〜6のアルキレン基、構造中にエーテル結合により酸素原子を有する炭素数4〜10のアルキレン基が好適に用いられる。
【0016】上記一般式(1)中のRで示される有機残基としては特に限定されず、例えば、炭素数1〜10の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基、炭素数6〜11の置換されていてもよい芳香族基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数6〜8の芳香族基が好適に用いられる。
【0017】上記一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の代表例としては特に限定されず、具体的には、下記のもの等が挙げられる。(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o−ビニロキシメチルフェニルメチル。
【0018】(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロポキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロポキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロポキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル。
【0019】これらの中でも、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)プロピルが好適である。
【0020】本発明においては、一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造を、遮光性構造物中で行う形態(製造方法(a))、又は、遮光性構造物中で、かつ該遮光性構造物の気相部の分子状酸素濃度が0.01〜15容量%である雰囲気中で行う形態(製造方法(b))のいずれかの形態により行うことになる。
【0021】上記製造方法(a)によれば、一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を製造するに際し、遮光性構造物中で製造することが安定的な製造を可能とする。
【0022】上記製造方法(b)によれば、一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を製造するに際し、遮光性構造物中で、かつ該遮光性構造物の気相部の分子状酸素濃度が0.01〜15容量%の雰囲気において製造することが、より安定的な製造を可能にし、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の液相部及び/又は気相部での重合、不純物の生成及び過酸化物の生成を効果的に防止することが可能となり、一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を高収率で製造することが可能となる。
【0023】本発明に製造方法に用いられる「遮光性構造物」とは、遮光性材質により構成された反応釜、反応装置、攪拌装置、タンク、パイプ、ノズル、バルブ等の製造に用いられる構造物である。ここで、構造物内部に光が達することができる構造物内表面積は、全構造物内部表面積の20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下が更に好ましく、8%以下が特に好ましい。また、ここでいう「遮光性材質」とは、実質的に光(可視光線、紫外線及び赤外線)を透過しない材質である。更に、構造物内部に光が達することができる構造物内表面部分もしくは構造物内部に光が達することができない構造物内表面部分は連続的あるいは非連続的でもよい。
【0024】上記遮光性材質としては、特に限定されるものではないが、具体的には、下記のもの等が挙げられる。工業用純鉄、炭素鋼(JISG−SS、JISG−SC、JISG−SB、JISG−SM、JISG−SGP、JISG−STGP、JISG−STS、JISG−STB、JISG−STL、JISG−STKM、JISG−SWR、JISG−SK、JISG−SF、JISG−SC等)、鋳鉄(JISG−FC、JISG−FCD、JISG−FCM等)、低合金鋼(JISG−SNC、JISG−SNCM、JISG−SCrJISG−SCMJISG−SACMJISG−SCA等)、低合金鋳鉄(ニテンシル、ニハード、アシキュラー等)、低ニッケル鋼(JISG−STPL、JISG−STBL、JES−NiASTM−A203等)、ニッケル鋼(ASTMA353等)、クロム鋼(JISG−SUH1、JISG−SUH2、JISG−SUH3、AISI−TP501、AISI−TP503等)等の鉄及び鋼;高ケイ素鋳鉄;15%Ni鋳鉄(Ni−Resist1等)、20%Ni鋳鉄(Ni−Resist2等)、30%Ni鋳鉄(Ni−Resist3等)等の高ニッケル鋳鉄;高Cr鋳鉄(Nirosta等)、高Cr−Mo鋳鉄等の高クロム鋼。
【0025】13Cr鋼(SUS403、SUS410、SUS414、SUS416等)、13Cr高炭素鋼(SUS420等)、16Cr2Ni鋼(SUS431、SUS440A、SUS440B、SUS440C等)等のマルテンサイト系ステンレス鋼;18Cr鋼(SUS420等)、25Cr鋼(SUS446等)、13Cr−Al鋼(SUS405等)等のフェライト系ステンレス鋼;18−8鋼(SUS301、SUS302、SUS303、SUS304、SUS305、SUS308、SUS321、SUS347等)、18−8L鋼(SUS304L等)、18−8Mo鋼(SUS316、SUS317等)、18−8MoL鋼(SUS316L等)、22Cr−12Ni鋼(SUS309、SUS309S等)、25Cr−20Ni鋼(SUS310、SUS310S、SUS314等)等のオーステナイト系ステンレス鋼。
【0026】20合金(Worthite、Durimet20、Carpenter20、Aloyco20、FA20等)、HN合金(Chromax等)等の特殊オーステナイト系ステンレス鋼;Fe−Cr−Al−Si合金(Sicromal8、Sicromal9、Sicromal10、Sicromal11、Sicromal12等)、Fe−Cr−Al−Co合金(KanthalA等)等のFe−Cr−Al合金;JIS−SCMnH等の高マンガン鋳鋼;工業用純銅(JIS−CuP、JIS−CuB、JIS−CuT、JIS−DCuP、JIS−DCuT等)、Cu−Al合金(JIS−ABP、JIS−ABB、JIS−BsTF、アルミ青銅、アルミニウム黄銅等)、Cu−Si合金(JIS−SiBT、JIS−SzBC、ケイ素青銅、Everdur、AR合金、シルジン青銅等)、Cu−Sn−P合金(JIS−PBP、JIS−PBS、JIS−PBB、JIS−PBC、リン青銅等)、Cu−Sn−Zn合金(JIS−BsC、青銅鋳物等)、Cu−Zn合金(JIS−NBsP等)、Cu−Zn−Sn合金(Red−Brass等)、Cu−Zn合金(JIS−BsP、JIS−LBC、JIS−RBsP、黄銅、鉛入黄銅、丹銅等)等の銅及び銅合金;Cu−Ni20(白銅、JIS−CNTF2等)、Ni−Ag(洋白、洋銀、JIS−NSP、JIS−SNP1等)、Cu−Ni30(白銅、JIS−CNTF3、JIS−CNP3等)等のCu−Ni合金。
【0027】工業用純アルミニウム(JIS−AlP、JIS−AlR、JIS−AlB、JIS−AlV、JIS−AlW、JIS−AlT、ALCOA−EC、ALCOA−1050、ALCOA−1060、ALCOA−1100、ALCOA−1130、ALCOA−1175、ALCOA−1260等)、高純度アルミニウム、Al−Mn合金(JIS−A2P3、JIS−A2T3、ALCOA−3003等)、高力アルミ合金(JIS−A3P、JIS−A3R、JIS−A3T、JIS−A3B、JIS−A3W、ALCOA−2014、ALCOA−2017、ALCOA−2024、ALCOA−2025、ジュラルミン、超ジュラルミン、Y合金等)、Al−Mg−Si合金(JIS−A4F、ALCOA−6061等)、Al−Si合金(JIS−AC3A、JIS−AC4ABC、ALCOA−4032、シルミン鋳物等)、Al−Mg合金(JIS−耐食アルミ合金1種、JIS−耐食アルミ合金2種、JIS−耐食アルミ合金7種、ALCOA−5052、ALCOA−5056、ALCOA−5083等)等のアルミニウム及びアルミニウム合金;工業用純マグネシウム、マグネシウム合金(JIS−MC、Dowmetal、Elektron等)等のマグネシウム及びマグネシウム合金;工業用純ニッケル(JIS−VNiP、JIS−VCNiP、JIS−VNiW、JIS−VCNiT、ASTM−B39、ASTM−160、ASTM−161、ASTM−162等)等のニッケル;27A(Inconel、Colmonoy6等)、27B(Inconel600、ASTM−B163、ASTM−B166、ASTM−B167、ASTM−B168等)、27C等のNi−Cr−Fe合金。
【0028】モネル(JIS−NCuT、JIS−NCuP、ASTM−B127、ASTM−B163、ASTM−B164、ASTM−B165、モネル400等)、Kモネル等のNi−Cu合金;30A(HastelloyA、Contracid等)、30B(ASTM−B333、ASTM−B335、ASTM−B494、HastelloyB、Chlorimet2等)、30C(ASTM−B336、ASTM−B494、HastelloyC、Chlorimet3等)、30D(HastelloyN等)、30E(HastelloyF等)、30F(Ni−o−nel等)、30G(R−55等)等のNi−Mo−Fe−Cr合金;31A(IlliumG等)、31B(Illium98等)等のNi−Cr−Cu−Mo合金;HastelloyD等のNi−Si合金;Co−Cr合金(Stelite21、Stelite23、Stelite27、Stelite31等)、Co−Cr−Ni合金(Haynes25、Haynes36等)、Co−Si合金等のコバルト合金;工業用純鉛(JIS−PbP、JIS−PbT、JIS−PbTW、ASTM−B29、ASTM−B325等)、テルル鉛、硬鉛(JIS−HPbP、JIS−HPbT、ASTM−B23、ASTM−B32等)、ホモゲン鉛融着ライニング等の鉛及び鉛合金;錫;工業用純亜鉛(JIS−亜鉛板、ASTM−B6等)、亜鉛合金(ASTM−B69等)等の亜鉛及び亜鉛合金;銀、金、白金、ニオブ、タンタル(ASTM−B364、ASTM−B365等)等の貴金属、白金族及びバナジウム族金属;タングステン。
【0029】工業用純チタン(JIS−TP、JIS−TTP、JIS−TB、JIS−TW、ASTM−B265、ASTM−B337、ASTM−B338、ASTM−B348、ASTM−B299、ASTM−B367、ASTM−B381等)、チタン合金(ASTM−B265、ASTM−B348、ASTM−B367、ASTM−B381等)等のチタン及びチタン合金;ジルコニウム(ASTM−B349、ASTM−B350、ASTM−B351、ASTM−B352、ASTM−B353、ASTM−B356等)、ジルコニウム合金(ジルカロイ1、ジルカロイ2、ジルカロイ3、ASTM−B350、ASTM−B351、ASTM−B352、ASTM−B353、ASTM−B356等)等のジルコニウム及びジルコニウム合金;ASTM−B384、ASTM−B385、ASTM−B386、ASTM−B387等のモリブデン;ASTM−B383、ASTM−B391、ASTM−B392、ASTM−B393、ASTM−B394等のクロム。
【0030】磁器、化学用陶器、抗火石、耐酸煉瓦、耐酸タイル、耐酸磁器、シリカセメント、耐火煉瓦、耐火モルタル、ホーローエナメル等のケイ酸塩類製品;コンクリート;硫黄セメント;炭素成形品、黒鉛成形品、不浸透性炭素、不浸透性黒鉛等の炭素及び黒鉛製品;アスベスト;不透明な塩化ビニリデン系樹脂、不透明なフェノール系樹脂、不透明なフラン樹脂、不透明な塩化ビニル系樹脂、不透明な4フッ化エチレン、不透明な3フッ化塩化エチレン、不透明なケイ素樹脂、不透明なポリエチレン、不透明なポリイソブチレン、不透明なポリスチレン、不透明なエポキシ樹脂、不透明な不飽和ポリエステル、不透明なポリアミド樹脂、不透明な塩素化ポリエーテル樹脂、不透明なポリカーボネート樹脂、不透明なポリウレタン樹脂、不透明な尿素樹脂、不透明なメラミン樹脂等の合成樹脂;アスファルト;不透明な天然ゴム、不透明な塩酸あるいは塩素化天然ゴム、不透明なニトリルゴム、不透明なスチレンゴム、不透明なブタジエン・イソブチレン合成ゴム、不透明なポリクロロプレン、不透明な石綿充填ゴムシート、不透明なブチルゴム、不透明なポリ硫化ゴム、不透明なクロロスルホン化ポリエチレンゴム、不透明なフッ素ゴム、不透明なシリコンゴム、不透明なウレタンゴム等の天然ゴム及び合成ゴム類;内側及び/又は外側が不透明な合成樹脂により覆われたガラス、内側及び/又は外側が不透明な天然ゴム又は合成ゴムにより覆われたガラス、内側及び/又は外側が金属により覆われたガラス、内側及び/又は外側が金属によりメッキされたガラス等のガラス。
【0031】これらの実質的に光を透過しない材質は、単独でも、あるいは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。なお、括弧内に代表的な規格記号、商品名等を記載した。また、「不透明な」とは、実質的に光(可視光線、紫外線及び赤外線)を透過しないことを意味する。
【0032】これらの中でも、鉄及び鋼、高ケイ素鋳鉄、高ニッケル鋳鉄、高クロム鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、特殊オーステナイト系ステンレス鋼、Fe−Cr−Al合金、高マンガン鋳鋼、銅及び銅合金、Cu−Ni合金、アルミニウム及びアルミニウム合金、マグネシウム及びマグネシウム合金、ニッケル、Ni−Cr−Fe合金、Ni−Cu合金、Ni−Mo−Fe−Cr合金、Ni−Cr−Cu−Mo合金、Ni−Si合金、コバルト合金、鉛及び鉛合金、錫、亜鉛及び亜鉛合金、タングステン、チタン及びチタン合金、ジルコニウム及びジルコニウム合金、モリブデン、クロム等が好適である。これらの遮光性材質は、単独でも、あるいは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0033】上記製造方法(b)において、遮光性構造物の気相部の分子状酸素濃度は0.01〜15容量%であるが、0.02容量%以上とすることが好ましく、0.05容量%以上が特に好ましい。また、12容量%以下とすることが好ましく、10容量%以下が特に好ましい。遮光性構造物の気相部の分子状酸素濃度が0.01容量%よりも低い場合には、原料(メタ)アクリル系化合物類及びビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類が窒息重合を起こすことがある。また、遮光性構造物の気相部の分子状酸素濃度が15容量%よりも高い場合には、不純物の生成、過酸化物の生成及びビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の重合を起こすことがある。よって、上記分子状酸素濃度の範囲が、収率の点、重合抑制の点及び経済性の点で好ましい。なお、上記不純物の生成、過酸化物の生成及びビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の重合は、光を透過する構造物中ではより加速されるため、遮光性構造物中で製造する必要がある。
【0034】上記遮光性構造物の気相部の分子状酸素濃度を0.01〜15容量%に調整する方法としては、(a)分子状酸素又は空気等の分子状酸素を含むガスを反応中(蒸気が存在する)反応容器に供給し、反応系気相部の容積の0.01〜15容量%の範囲になるようにする方法、(b)分子状酸素又は空気等の分子状酸素を含むガスと窒素、アルゴン等の不活性ガスとをそれぞれ反応中(蒸気が存在する)反応容器に供給し、反応系気相部の容積の0.01〜15容量%の範囲になるようにする方法、(c)分子状酸素又は空気等の分子状酸素を含むガスと窒素、アルゴン等の不活性ガスとを予め混合し、反応中(蒸気が存在する)反応容器に供給し、反応系気相部の容積の0.01〜15容量%の範囲になるようにする方法等がある。また、ガスを供給する方法としては、製造の各工程において、液相部又は気相部の一方又は両方に、連続的又は間歇的に供給すればよい。
【0035】本発明において、一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を製造する方法としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法A)、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法B)、(メタ)アクリル酸無水物と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法C)、(メタ)アクリル酸エステル類と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル交換する方法(製法D)、(メタ)アクリル酸とハロゲン含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法E)、(メタ)アクリル酸アルカリ(土類)金属塩とハロゲン含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法F)等の方法が挙げられる。すなわち、本発明の製造方法は、これらの製造方法(製法A)〜(製法F)等を行う際に適用することができる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル類と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル交換する方法(製法D)が好適である。
【0036】上記製法Dにおいては、(メタ)アクリル酸エステル類と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル交換させることにより、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を製造する。これらの化合物はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】上記水酸基含有ビニルエーテル類は、特に限定されるわけではないが、具体的には、下記のもの等が挙げられる。2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、1−メチル−3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−メチル−2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−ヒドロキシメチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル。
【0038】1,6−ヘキサンジオールモノビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、p−キシレングリコールモノビニルエーテル、m−キシレングリコールモノビニルエーテル、o−キシレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、ペンタエチレングリコールモノビニルエーテル、オリゴエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノビニルエーテル、テトラプロピレングリコールモノビニルエーテル、ペンタプロピレングリコールモノビニルエーテル、オリゴプロピレングリコールモノビニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体モノビニルエーテル。
【0039】これらの中でも、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテルが好適に用いられる。
【0040】上記(メタ)アクリル酸エステル類は、特に限定されるわけではないが、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル等の(メタ)アクリル酸低級アルキルエステルが挙げられる。
【0041】上記製法Dにおいて、(メタ)アクリル酸エステル類と水酸基含有ビニルエーテル類の反応モル比は、特に限定されるものではないが、具体的には(メタ)アクリル酸エステル類/水酸基含有ビニルエーテル類のモル比が6/1〜1/5の範囲が好ましく、5/1〜1/3の範囲がより好ましく、4/1〜1/2の範囲が更に好ましく、3/1〜1/1の範囲が特に好ましい。上記モル比の範囲が、収率の点及び経済性の点で好ましい。
【0042】上記製法Dにおいて、上記エステル交換反応は、エステル交換触媒の存在下に反応を行うことが好ましい。また、反応により副生するアルコールを反応系外へ除去することが好ましい。
【0043】上記エステル交換触媒としては、特に限定されるわけではないが、具体的には、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の酸化物;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化タリウム、水酸化スズ、水酸化鉛、水酸化ニッケル等の水酸化物;塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化スズ、塩化鉛、塩化ジルコニウム、塩化ニッケル等のハロゲン化物;炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸鉛、炭酸亜鉛、炭酸ニッケル等の炭酸塩;炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウム等の炭酸水素塩;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ルビジウム、リン酸鉛、リン酸亜鉛、リン酸ニッケル等のリン酸塩;硝酸リチウム、硝酸カルシウム、硝酸鉛、硝酸亜鉛、硝酸ニッケル等の硝酸塩;酢酸リチウム、酢酸カルシウム、酢酸鉛、酢酸亜鉛、酢酸ニッケル等のカルボン酸塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド、カルシウムメトキシド、カルシウムエトキシド、バリウムメトキシド、バリウムエトキシド、テトラエトキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラ(2−エチルヘキサノキシ)チタン等のアルコキシ化合物;リチウムアセチルアセトナート、ジルコニアアセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、ジブトキシスズアセチルアセトナート、ジブトキシチタンアセチルアセトナート等のアセチルアセトナート錯体;テトラメチルアンモニウムメトキシド、テトラメチルアンモニウムt−ブトキシド、トリメチルベンジルアンモニウムエトキシド等の4級アンモニウムアルコキシド;ジメチルスズオキサイド、メチルブチルスズオキサイド、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド等のジアルキルスズ化合物;ビス(ジブチルスズアセテート)オキサイド、ビス(ジブチルスズラウレート)オキサイド等のジスタノキサン;ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート等のジアルキルスズジカルボン酸塩等が挙げられる。これらは、単独でも2種類以上を併用してもよい。
【0044】これらのエステル交換触媒の中でも、炭酸カリウム、炭酸セシウム、テトラエトキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラ(2−エチルヘキサノキシ)チタン、ジルコニアアセチルアセトナート、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ビス(ジブチルスズアセテート)オキサイド、ビス(ジブチルスズラウレート)オキサイド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレートが好適に用いられる。
【0045】上記エステル交換触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、具体的には、水酸基含有ビニルエーテル類に対して、0.001モル%以上が好ましく、0.005モル%以上がより好ましく、0.01モル%以上が更に好ましく、0.05モル%以上が特に好ましく、20モル%以下が好ましく、15モル%以下がより好ましく、10モル%以下が更に好ましく、5モル%以下が特に好ましい。上記エステル交換触媒の使用量の範囲が、収率の点及び経済性の点で好ましい。
【0046】上記副生アルコールの除去方法としては、例えば、減圧下で反応を行う方法、共沸溶媒を用いて反応を行う方法、吸着剤の存在下で反応を行う方法等が挙げられる。これらの中でも、減圧下で反応を行う方法、共沸溶媒を用いて反応を行う方法が好ましい。
【0047】上記共沸溶媒については、反応を阻害しないものであれば特に制限はなく、具体的には、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;等を挙げることができる。これらの共沸溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、過剰に用いた(メタ)アクリル酸エステル類を共沸溶媒とすることもできる。
【0048】上記共沸溶媒の使用量は特に限定されるものではなく、具体的には、(メタ)アクリル酸エステル類と水酸基含有ビニルエーテル類の合計質量の0質量%以上とすることが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル類と水酸基含有ビニルエーテル類の合計質量の300質量%以下とすることが好ましく、200質量%以下がより好ましく、150質量%以下が更に好ましく、100質量%以下が特に好ましい。上記共沸溶媒の使用量の範囲が、収率の点及び経済性の点で好ましい。
【0049】上記反応の反応温度は、特に限定されるものではないが、副生するアルコールの沸点あるいは共沸温度以上であることが好ましく、具体的には、40℃以上とすることが好ましく、50℃以上が更に好ましく、60℃以上が特に好ましい。また、180℃以下とすることが好ましく、170℃が更に好ましく、160℃以下が特に好ましい。反応圧力は、特に限定されるものではなく、常圧、加圧及び減圧の何れであってもよい。また、反応時間は、上記反応が完結するように、適宜設定すればよい。
【0050】上記製造方法(a)及び(b)の形態を製造方法(製法A)〜(製法F)等に適用する場合、何れの場合においても、ラジカル重合禁止剤及び/又は塩基性化合物を共存させておくことが、重合を抑制し、収率の点で好ましい。更に、エステル交換反応を行う際には、上述したラジカル重合禁止剤、又は、ラジカル重合禁止剤と塩基性化合物との存在下で反応させることが好ましい。ラジカル重合禁止剤及び塩基性化合物は、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。
【0051】上記ラジカル重合禁止剤としては特に限定されず、一般にラジカル重合防止剤として用いられるものであるならばいずれも使用することができる。具体的には、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール等のキノン系重合禁止剤;2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール等のアルキルフェノール系重合禁止剤;アルキル化ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ヒドロキシ−4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のアミン系重合禁止剤;ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅等のジチオカルバミン酸銅系重合禁止剤;2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルのエステル等のN−オキシル系重合禁止剤;等が挙げられる。
【0052】これらの中でも、好ましいラジカル重合禁止剤として、キノン系重合禁止剤、アミン系重合禁止剤、ジチオカルバミン酸銅系重合禁止剤、N−オキシル系重合禁止剤を挙げることができる。特に好ましいラジカル重合禁止剤として、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール、フェノチアジン、アルキル化ジフェニルアミン、ジブチルジチオカルバミン酸銅、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルのエステル等を挙げることができる。
【0053】上記ラジカル重合禁止剤の添加量は、原料として用いられる(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸アルカリ(土類)金属塩等の(メタ)アクリル系化合物類の種類にもよるが、該原料(メタ)アクリル系化合物に対して、0.0001質量%以上が好ましく、0.0002質量%以上がより好ましく、0.0005質量%以上が更に好ましく、0.001質量%以上が特に好ましく、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以下が特に好ましい。上記ラジカル重合禁止剤の添加量の範囲が、収率の点、重合抑制の点及び経済性の点で好ましい。
【0054】上記塩基性化合物としては特に限定されず、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ(土類)金属水酸化物;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ(土類)金属炭酸塩;酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等のアルカリ(土類)金属カルボン酸塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムブトキシド、カルシウムエトキシド等のアルカリ(土類)金属アルコキシド;アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、エタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリス(2−エチルヘキシル)アミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トレン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、ピリジン、ピペリジン、ピコリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、ルチジン、キノリン、イソキノリン、コリジン等のアミン類;等が挙げられる。
【0055】これらの中でも、好ましい塩基性化合物としてアルカリ(土類)金属水酸化物、アミン類を挙げることができる。特に好ましい塩基性化合物として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリス(2−エチルヘキシル)アミン、トリエタノールアミンが挙げられる。
【0056】上記塩基性化合物の添加量としては、原料として用いられる水酸基含有ビニルエーテル類、ハロゲン含有ビニルエーテル類等のビニルエーテル類の種類にもよるが、該原料ビニルエーテル類に対して0.0001質量%以上が好ましく、0.0002質量%以上がより好ましく、0.0005質量%以上が更に好ましく、0.001質量%以上が特に好ましく、5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以下が特に好ましい。上記塩基性化合物の範囲が、収率の点、重合抑制の点及び経済性の点で好ましい。
【0057】上記ラジカル重合禁止剤と上記塩基性化合物を組み合わせて共存させる場合におけるラジカル重合禁止剤と塩基性化合物の添加の割合は特に限定されるものではなく、それぞれが上述の範囲内にあればよい。
【0058】上記製造方法により製造された一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類は、反応溶液を精製することによって得ることができる。
【0059】上記一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の精製方法としては、例えば、遮光性構造物中で、かつ精製系気相部の分子状酸素濃度が0.01〜15容量%である雰囲気中で行われるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の精製方法を好適に適用することができる。上記精製方法もまた、本発明の1つである。本発明のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の精製方法について、以下に説明する。
【0060】本発明により精製されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類は、一般式(1)で表される化合物であれば特に限定されるものではない。また、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法としては特に限定されず、例えば、上記製造方法(製法A)〜(製法F)等の方法が挙げられ、これらの中でも、製法Dが工業的には好適である。またこの際、上述したビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法を適用することが好ましい。
【0061】上記「精製」とは、操作を行う前後において、操作後の一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の濃度及び/又は純度が操作前よりも向上する操作を意味する。より具体的には、特に限定されるものではないが、原料回収操作、触媒回収操作、中和操作、ろ過操作、デカンテーション操作、抽出操作、水洗操作、蒸発操作、蒸留操作、カラムクロマトグラフ操作等の操作を意味する。上記各操作は単独でも、あるいは2種類以上を適宜組み合わせて実施することもできる。これらの中でも、蒸留操作、すなわち、蒸留精製が特に好ましい。すなわち本発明の精製方法としては、蒸留精製が好適である。
【0062】上記精製に用いられる「遮光性構造物」とは、遮光性材質により構成された蒸留釜、蒸留塔、精留塔、蒸留装置、分液装置、ろ過装置、攪拌装置、タンク、パイプ、ノズル、バルブ等の精製に用いられる構造物であり、構造物内部に光が達することができる構造物内表面積は上述したのと同様である。また、遮光性材質も上述したのと同様のもの等が挙げられる。また、「精製系気相部」とは、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を精製する際に、タンク等の容器や構造物等に充填したときの気相部を意味する。
【0063】上記精製方法においては、精製操作を遮光性構造物中で、かつ精製系気相部の分子状酸素濃度が0.01〜15容量%である雰囲気中で行うことにより、上記の精製時の重合及び分解による不純物の生成を効果的に防止でき、簡便で経済的に目的とするビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を安定に精製することができる。
【0064】上記精製系気相部の分子状酸素濃度は0.01〜15容量%であるが、0.02容量%以上とすることが好ましく、0.05容量%以上が特に好ましい。また、12容量%以下とすることが好ましく、10容量%以下が特に好ましい。上記分子状酸素濃度の範囲が、収率の点、重合抑制の点及び経済性の点で好ましい。
【0065】上記精製系気相部の分子状酸素濃度を0.01〜15容量%に調整する方法や、ガスを供給する方法としては、上述した分子状酸素濃度を調製する方法等を適用することができる。また、精製系へのガス供給方法としては、精製系内の液相部又は気相部の一方又は両方に、連続的又は間歇的にガスを供給すればよい。
【0066】本発明の製造方法及び精製方法により得られた、上記一般式(1)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の用途としては特に限定されず、例えば、医農薬原料、合成中間体、更に重合性材料として広範囲に用いることができる。
【0067】
【実施例】以下に実施例を揚げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0068】実施例1遮光性構造物であるSUS316製の攪拌装置、温度計ホルダ、ガス導入管、液体添加ライン及び精留塔を備えた3Lセパラブル装置に2−ヒドロキシエチルビニルエーテル529g、アクリル酸エチル1502g、フェノチアジン300mg及びジブチルスズオキサイド10gを添加した。ガス導入管より空気を液相部に導入しながら混合攪拌し、130℃のオイルバスにつけ昇温を開始した。精留塔塔頂部より留出するアクリル酸エチル−エタノール共沸組成物中のアクリル酸エチルに相当する質量のアクリル酸エチルを液体添加ラインを通じて反応系に連続的に添加しながら12時間反応を継続した。反応中気相部の分子状酸素濃度は0.1〜21容量%であった。
【0069】GC−1700型ガスクロマトグラフ(株式会社島津製作所社製;以下「GC」と呼ぶ)により分析した結果、目的とするアクリル酸2−ビニロキシエチルの収率は96モル%であった。該反応系の気相部及び液相部ともに固形物の生成は認められなかった。更に、液相部をRQフレックス型過酸化物測定装置(MERCK CO.LTD製;以下「RQ」と呼ぶ)により分析した結果、3ppmの過酸化物が検出された。
【0070】実施例2空気に変えて15容量%酸素ガス(窒素バランス)を導入した以外は、実施例1と同様の操作を行った。反応中気相部の分子状酸素濃度は0.1〜15容量%であった。GCにより分析した結果、目的とするアクリル酸2−ビニロキシエチルの収率は96モル%であった。該反応系の気相部及び液相部ともに固形物の生成は認められなかった。RQにより分析した結果、過酸化物は検出されなかった。
【0071】実施例3〜10使用した(メタ)アクリル酸エステル類の種類、水酸基含有ビニルエーテル類の種類及び量、ラジカル重合禁止剤の種類及び量や酸素濃度を変更したり、更に塩基性化合物を使用したりしたこと以外は実施例2と同様の操作を行った。それらの種類及び量、並びにビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の種類及び収率、反応中気相部の分子状酸素濃度、並びに反応系気相部及び液相部での固形物の有無及びRQによる分析結果を表1に示す。なお、原料としてメタクリル酸メチルを用いた場合には、留出するメタクリル酸メチル−メタノール共沸組成物中のメタクリル酸メチルに相当する質量のメタクリル酸メチルを液体添加ラインを通じて反応系に連続的に添加した。
【0072】
【表1】


【0073】表1について、以下に説明する。(メタ)アクリル酸エステル類において、AEとは、アクリル酸エチルであり、MMAとは、メタクリル酸メチルである。水酸基含有ビニルエーテル類において、HEVとは、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルであり、DEGVとは、ジエチレングリコールモノビニルエーテルであり、BDVとは、1,4−ブタンジオールモノビニルエーテルである。ラジカル重合禁止剤において、MEHQとは、メトキシヒドロキノンであり、PTZとは、フェノチアジンであり、TEMPOとは、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルである。塩基性化合物において、NaOHとは、水酸化ナトリウムであり、TEHAとは、トリス(2−エチルヘキシル)アミンである。触媒において、DBTOとは、ジブチルスズオキサイドである。生成物において、VEAとは、アクリル酸2−ビニロキシエチルであり、VEMとは、メタクリル酸2−ビニロキシエチルであり、VEEAとは、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルであり、VEEMとは、メタクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルであり、VBAとは、アクリル酸4−ビニロキシブチルであり、VBMとは、メタクリル酸4−ビニロキシブチルである。
【0074】実施例11実施例2のSUS316セパラブル装置の上部蓋部分を透明ガラス製に変更した以外は実施例2と同様の操作を行った(このとき、上記反応装置の構造内部に光が達することができる構造物内表面積の83%が遮光性材質であるSUS316により形成されている)。反応中気相部の分子状酸素濃度は0.1〜15容量%であった。GCにより分析した結果、目的とするアクリル酸2−ビニロキシエチルの収率は96モル%であった。該反応系の気相部及び液相部ともに固形物の生成は認められなかった。RQにより分析した結果、過酸化物は検出されなかった。
【0075】実施例12(原料回収操作)
遮光性構造物であるSUS316製の攪拌装置、温度計ホルダ、ガス導入管、減圧制御装置及び精留塔を備えた3L蒸留装置に実施例6と同様の操作により得られた反応液を導入した。ガス導入管より15容量%酸素ガス(窒素バランス)を液相部に導入しながら混合攪拌し、130℃のオイルバスにつけ昇温を開始した。667hPaから徐々に67hPaに減圧することにより、精留塔塔頂部よりアクリル酸エチル及びエタノールを留出させ、原料であるアクリル酸エチルを回収した。原料回収操作中気相部の分子状酸素濃度は0.1〜15容量%であった。該蒸留装置の気相部及び液相部ともに固形物の生成は認められなかった。更に、液相部をRQにより分析した結果、過酸化物は検出されなかった。
【0076】実施例13(原料回収操作)
15容量%酸素ガス(窒素バランス)に変えて8容量%酸素ガス(窒素バランス)を導入した以外は、実施例12と同様の操作を行った。原料回収操作中気相部の分子状酸素濃度は0.1〜8容量%であった。該蒸留装置の気相部及び液相部ともに固形物の生成は認められなかった。更に、液相部をRQにより分析した結果、過酸化物は検出されなかった。
【0077】実施例14(原料回収操作)
15容量%酸素ガス(窒素バランス)に変えて0.1容量%酸素ガス(窒素バランス)を導入した以外は、実施例12と同様の操作を行った。原料回収操作中気相部の分子状酸素濃度は0.02〜0.1容量%であった。該蒸留装置の気相部及び液相部ともに固形物の生成は認められなかった。更に、液相部をRQにより分析した結果、週酸化物は検出されなかった。
【0078】実施例15(原料回収操作)
実施例6と同様の操作により得られた反応液に変えて実施例8と同様の操作により得られた反応液を導入した以外は、実施例12と同様の操作を行い精留塔塔頂部よりメタクリル酸メチル及びメタノールを留出させ、原料であるメタクリル酸メチルを回収した。原料回収操作中気相部の分子状酸素濃度は0.1〜15容量%であった。該蒸留装置の気相部及び液相部ともに固形物の生成は認められなかった。更に、液相部をRQにより分析した結果、過酸化物は検出されなかった。
【0079】実施例16(原料回収操作)
実施例12に引き続き、15容量%酸素ガス(窒素バランス)を液相部に導入しながら混合攪拌し、150℃のオイルバスにつけ昇温した。17hPaに減圧することにより、精留塔塔頂部より原料であるジエチレングリコールモノビニルエーテルの未反応分を留出させ、回収した。原料回収操作中気相部の分子状酸素濃度は0.1〜15容量%であった。該蒸留装置の気相部及び液相部ともに固形物の生成は認められなかった。更に、液相部をRQにより分析した結果、過酸化物は検出されなかった。
【0080】実施例17(原料回収操作)
実施例15に引き続き実施例16と同様の操作を行った。原料回収操作中気相部の分子状酸素濃度は0.1〜15容量%であった。該蒸留装置の気相部及び液相部ともに固形物の生成は認められなかった。更に、液相部をRQにより分析した結果、過酸化物は検出されなかった。
【0081】実施例18(蒸留精製操作)
遮光性構造物であるSUS316製の攪拌装置、温度計ホルダ、ガス導入管、減圧制御装置及び精留塔を備えた1L蒸留装置に実施例16と同様の操作により得られた液を導入した。ガス導入管より15容量%酸素ガス(窒素バランス)を液相部に導入しながら混合攪拌し、150℃のオイルバスにつけ昇温した。13hPaに減圧することにより、精留塔塔頂部よりアクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルを留出させ、精製を行った。蒸留精製中気相部の分子状酸素濃度は0.1〜15容量%であった。該蒸留装置の気相部及び液相部ともに固形物の生成は認められなかった。更に、液相部及び留出したアクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルをRQにより分析した結果、過酸化物は検出されなかった。
【0082】実施例19(蒸留精製操作)
実施例16と同様の操作により得られた液に変えて実施例17と同様の操作により得られた液を導入した以外は、実施例18と同様の操作を行い、メタクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルを留出させ、精製を行った。蒸留精製中気相部の分子状酸素濃度は0.1〜15容量%であった。該蒸留装置の気相部及び液相部ともに固形物の生成は認められなかった。更に、液相部及び留出したメタクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルをRQにより分析した結果、過酸化物は検出されなかった。
【0083】実施例20(水洗操作)
遮光性構造物であるSUS316製の攪拌装置及びガス導入管を備えた1L分液装置に実施例6と同様の操作により得られた反応液400mL及び1N水酸化ナトリウム水溶液400mLを導入した。ガス導入管より15容量%酸素ガス(窒素バランス)を気相部に導入しながら室温で1時間混合攪拌した後、1時間静置することにより油相、水相並びに触媒相に分離した。未反応ジエチレングリコールモノビニルエーテルを含む水相を除去した後、触媒相をろ過により除去した。該分液装置の気相部及び液相部ともに固形物の生成は認められなかった。更に、油相をRQにより分析した結果、過酸化物は検出されなかった。
【0084】実施例21(水洗操作)
実施例6と同様の操作により得られた反応液に変えて実施例8と同様の操作により得られた反応液を導入した以外は、実施例20と同様の操作を行い、未反応ジエチレングリコールモノビニルエーテルを含む水相及び触媒相を除去した。該分液装置の気相部及び液相部ともに固形物の生成は認められなかった。更に、油相をRQにより分析した結果、過酸化物は検出されなかった。
【0085】比較例1攪拌装置、温度計、オルダーショウ型精留塔、ガス導入管及び液体添加ラインを備え付けたガラス製3L5つ口フラスコに、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル529g、アクリル酸エチル1502g、フェノチアジン300mg、ジブチルスズオキサイド10gを添加した。ガス導入管より空気を液相部に導入しながら混合攪拌し、130℃のオイルバスにつけ昇温を開始した。オルダーショウ型精留塔塔頂部より留出するアクリル酸エチル−エタノール共沸組成物中のアクリル酸エチルに相当する質量のアクリル酸エチルを液体添加ラインを通じて反応系に連続的に添加しながら12時間反応を継続した。反応中気相部の分子状酸素濃度は0.1〜21容量%であった。GCにより分析した結果、目的とするアクリル酸−ビニロキシエチルの収率は96モル%であった。該反応系の気相部及び液相部ともに固形物の生成は認められなかったが、RQにより分析した結果、17ppmの過酸化物が検出された。
【0086】比較例2空気に変えて15容量%酸素ガス(窒素バランス)を導入した以外は、比較例1と同様の操作を行った。反応中気相部の分子状酸素濃度は0.1〜15容量%であった。GCにより分析した結果、目的とするアクリル酸−ビニロキシエチルの収率は96モル%であった。該反応系の気相部及び液相部ともに固形物の生成は認められなかったが、RQにより分析した結果、12ppmの過酸化物が検出された。
【0087】比較例3(原料回収操作)
攪拌装置、温度計ホルダ、ガス導入管、減圧制御装置及び精留塔を備えたガラス製3L蒸留装置に実施例6と同様の操作により得られた反応液を導入した。ガス導入管より15容量%酸素ガス(窒素バランス)を液相部に導入しながら混合攪拌し、130℃のオイルバスにつけ昇温を開始した。667hPaから徐々に67hPaに減圧することにより、精留塔塔頂部よりアクリル酸エチル及びエタノールを留出させ、原料であるアクリル酸エチルを回収した。原料回収操作中気相部の分子状酸素濃度は0.1〜15容量%であった。該蒸留装置の気相部及び液相部ともに固形物の生成は認められなかった。更に、液相部をRQにより分析した結果、12ppmの過酸化物が検出された。
【0088】比較例4(蒸留精製操作)
攪拌装置、温度計ホルダ、ガス導入管、減圧制御装置及び精留塔を備えたガラス製3L蒸留装置に実施例6と同様の操作により得られた反応液を導入した。ガス導入管より8容量%酸素ガス(窒素バランス)を液相部に導入しながら混合攪拌し、130℃のオイルバスにつけ昇温を開始した。667hPaから徐々に67hPaに減圧することにより、精留塔塔頂部よりアクリル酸エチル及びエタノールを留出させ、原料であるアクリル酸エチルを回収した。引き続き8容量%酸素ガス(窒素バランス)を液相部に導入しながら混合攪拌し、150℃のオイルバスにつけ昇温した。17hPaに減圧することにより、精留塔塔頂部より原料であるジエチレングリコールモノビニルエーテルの未反応分を留出させ、回収した。
【0089】攪拌装置、温度計ホルダ、ガス導入管、減圧制御装置及び精留塔を備えたガラス製1L蒸留装置に、上記操作により得られた液を導入した。ガラス導入管より15容量%酸素ガス(窒素バランス)を液相部に導入しながら混合攪拌し、150℃のオイルバスにつけ昇温を開始した。13hPaに減圧することにより、精留塔塔頂部よりアクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルを留出させ、精製を行った。蒸留精製中気相部の分子状酸素濃度は0.1〜15容量%であった。該蒸留装置の気相部及び液相部ともに固形物の生成は認められなかった。更に、液相部をRQにより分析した結果、21ppmの過酸化物が検出された。
【0090】比較例5(水洗操作)
攪拌装置及びガス導入管を備えたガラス製1L分液装置に実施例6と同様の操作により得られた反応液400mL及び1N水酸化ナトリウム水溶液400mLを導入した。ガス導入管より15容量%酸素ガス(窒素バランス)を気相部に導入しながら室温で1時間混合攪拌した後、1時間静置することにより油相、水相並びに触媒相に分離した。未反応ジエチレングリコールモノビニルエーテルを含む水相を除去した後、触媒相をろ過により除去した。該分液装置の気相部及び液相部ともに固形物の生成は認められなかった。更に、液相部をRQにより分析した結果、10ppmの過酸化物が検出された。
【0091】
【発明の効果】本発明は、上述のような構成からなり、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造時や精製時の重合及び分解による不純物を防止し、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を簡便で経済的、安定的に製造、精製することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記一般式(1);
CH=CR−COO−R−O−CH=CH−R (1)
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、有機残基を表す。Rは、水素原子又は有機残基を表す。)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法であって、該ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法は、遮光性構造物中で行われることを特徴とするビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法。
【請求項2】 下記一般式(1);
CH=CR−COO−R−O−CH=CH−R (1)
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、有機残基を表す。Rは、水素原子又は有機残基を表す。)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法であって、該ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法は、遮光性構造物中で、かつ該遮光性構造物の気相部の分子状酸素濃度が0.01〜15容量%である雰囲気中で行われることを特徴とするビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法。
【請求項3】 下記一般式(1);
CH=CR−COO−R−O−CH=CH−R (1)
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Rは、有機残基を表す。Rは、水素原子又は有機残基を表す。)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の精製方法であって、該ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の精製方法は、遮光性構造物中で、かつ精製系気相部の分子状酸素濃度が0.01〜15容量%である雰囲気中で行われることを特徴とするビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の精製方法。

【公開番号】特開2002−326973(P2002−326973A)
【公開日】平成14年11月15日(2002.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−31960(P2002−31960)
【出願日】平成14年2月8日(2002.2.8)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】