説明

ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法及びビニル・シス−ポリブタジエンゴム

【課題】本発明は、押出加工性、引張応力並びに耐疲労性に優れたビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法を提供する。
【解決手段】(A)(1)1,2−ポリブタジエンを1,3−ブタジエンと炭化水素系有機溶剤を主成分としてなる混合物に溶解させた混合溶液を調製し、1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程、(2)得られた重合反応混合物中に可溶性コバルト化合物と一般式AlRで表される有機アルミニウム化合物とニ硫化炭素とから得られる触媒を存在させて、1,3−ブタジエンを60℃未満で1,2重合する工程から得られたビニル・シス−ポリブタジエン、及び、(B)シス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程で得られたシス−ポリブタジエンを混合することを特徴とするビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法、とくに押出し加工性、引張応力、耐伸長亀裂成長性に優れ、自動車タイヤ部材、特にサイドウォール用として好適なビニル・シス−ポリブタジエンゴム並びに当該ゴムの製造方法に関する。
また本発明のビニル・シス−ポリブタジエンゴムは、更にタイヤにおけるキャップトレッド、ランフラットタイヤのサイド補強層、カーカス、ベルト、チェーファー、ベーストレッド、ビード、スティフナー、インナーライナー等のタイヤ部材や、防振ゴム、ホース、ベルト、ゴムロール、ゴムクーラー、靴底ゴムなどの工業製品、その他のコンポジット、接着剤、プラスチックの改質剤などにも用いる事ができる。
【背景技術】
【0002】
ポリブタジエンは、いわゆるミクロ構造として、1,4−位での重合で生成した結合部分(1,4−構造)と1,2−位での重合で生成した結合部分(1,2−構造)とが分子鎖中に共存する。1,4−構造は、更にシス構造とトランス構造の二種に分けられる。一方、1,2−構造は、ビニル基を側鎖とする構造をとる。
【0003】
従来、ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法は、ベンゼン,トルエン,キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒で行われてきた。これらの溶媒を用いると重合溶液の粘度が高く撹拌,伝熱,移送などに問題があり,溶媒の回収には過大なエネルギーが必要であった。
【0004】
上記の製造方法としては、前記の不活性有機溶媒中で水,可溶性コバルト化合物と一般式AlR3−n(但しRは炭素数1〜6のアルキル基,フェニル基又はシクロアルキル基であり,Xはハロゲン元素であり,nは1.5〜2の数字)で表せる有機アルミニウムクロライドから得られた触媒を用いて1,3−ブタジエンをシス1,4重合してBRを製造して,次いでこの重合系に1,3−ブタジエン及び/または前記溶媒を添加するか或いは添加しないで可溶性コバルト化合物と一般式AlR(但しRは炭素数1〜6のアルキル基,フェニル基又はシクロアルキル基である)で表せる有機アルミニウム化合物と二硫化炭素とから得られる触媒を存在させて1,3−ブタジエンをシンジオタクチック1,2重合(以下,1,2重合と略す)する方法(例えば、特許文献1,特許文献2)は公知である。
【0005】
また、例えば、特許文献3〜7には、二硫化炭素の存在下又は不在下に1,3−ブタジエンをシス1,4重合して製造したり,製造した後に1,3−ブタジエンと二硫化炭素を分離・回収して二硫化炭素を実質的に含有しない1,3−ブタジエンや前記の不活性有機溶媒を循環させる方法などが記載されている。更に特許文献8には配合物のダイ・スウェル比が小さく,その加硫物がタイヤのサイドウォールとして好適な引張応力と耐屈曲亀裂成長性に優れたゴム組成物が記載されている。
【0006】
また、特許文献9には、n−ブタン,シス−2−ブテン,トランス−2−ブテン,及びブテン−1などのC4留分を主成分とする不活性有機溶媒中で製造する方法が記載されている。この方法でのゴム組成物が含有する1,2−ポリブタジエンは短繊維結晶であり、短繊維結晶の長軸長さの分布が繊維長さの98%以上が0.6μm未満であり,70%以上が0.2μm未満であることが記載され、得られたゴム組成物はシス1,4ポリブタジエンゴム(以下,BRと略す)の成形性や引張応力,引張強さ,耐屈曲亀裂成長性などを改良されることが記載されている。
また、特許文献10には、溶解された1,2−ポリブタジエンと、1,3−ブタジエンと、炭化水素を主成分とする不活性有機溶媒との混合物を調製する第1工程と、第1工程で調整された混合物に水、有機アルミニウム化合物及び可溶性コバルト化合物からなる触媒、又は、ニッケル化合物、有機アルミニウム化合物及びフッ素化合物からなる触媒を添加して、1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する第2工程と、第2工程で得られた重合反応混合物中の1,3−ブタジエンをシンジオタクチック−1,2重合する第3工程と、を備えたことを特徴とするビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法が開示されている。この方法により製造されたゴム組成物はマトリクス成分であるシス−ポリブタジエンゴム中への1,2−ポリブタジエンの分散性が著しく向上しており、押出加工性及び引張応力を改良するものであることが記載されている。
【0007】
しかしながら、成形性の更なる向上を始め、用途によっては種々の特性の改良が望まれていると共に、上記のビニル・シス−ポリブタジエンゴムは通常のハイシスポリブタジエンに比べ、発熱性、反撥弾性に劣るという点もあった。
【0008】
また、一般に自動車の燃費消費量に大きな影響を及ぼす走行抵抗の中で、タイヤの転動抵抗の占める割合は大きく、サイドウォールゴムのエネルギー損失による影響も比較的大きい事が知られている。このため、従来からサイドウォール部には損失係数の小さいゴム、例えば天然ゴム・イソプレンゴム・ブタジエンゴムまたはそれらの混合物などが使用されているが、タイヤの転動抵抗をさらに改善させることが求められている。
サイドウォールゴムの損失係数を低減する方法としては、低補強性のカーボンブラックの使用やカーボンブラックの配合量の低減が考えられるが、押出加工時のダイ・スウェルが大きくなるといった問題が起こってしまい、サイドウォール部材の薄肉化やタイヤのユニフォーミティー向上を実現する事が難しくなってしまう。そのため、押出物のダイ・スウェルを小さく保ちながら低燃費性を実現する方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭49−17666号公報
【特許文献2】特公昭49−17667号公報
【特許文献3】特公昭62−171号公報
【特許文献4】特公昭63−36324号公報
【特許文献5】特公平2−37927号公報
【特許文献6】特公平2−38081号公報
【特許文献7】特公平3−63566号公報
【特許文献8】特公平4−48815号公報
【特許文献9】特開2000−44633号公報
【特許文献10】特開2008−163144号公報
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】比較例10のシス−1,4重合で得られたポリブタジエンのゲル浸透クロマトグラフィーで測定して得られた溶出曲線を低分子量成分と高分子量成分にピーク分離したもの
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来のビニル・シス−ポリブタジエンの優れた特性である押出し加工性、引張応力をさらに向上させ、かつ発熱性、反撥弾性を改良した、自動車のタイヤ用材料として優れた性質を示すビニル・シス−ポリブタジエンゴムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)
(A)(1)1,2−ポリブタジエンを1,3−ブタジエンと炭化水素系有機溶剤を主成分としてなる混合物に溶解させた混合溶液を調製し、当該混合溶液に水、有機アルミニウム化合物と可溶性コバルト化合物から得られるシス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程、引き続き、(2)得られた重合反応混合物中に可溶性コバルト化合物と一般式AlR(但し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基である)で表される有機アルミニウム化合物とニ硫化炭素とから得られる触媒を存在させて、1,3−ブタジエンを60℃未満で1,2重合する工程から得られたビニル・シス−ポリブタジエン、及び、
(B)シス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程で得られたシス−ポリブタジエンを混合することを特徴とするビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法に関する。
【0013】
(2)
(A)(1)1,2−ポリブタジエンを1,3−ブタジエンと炭化水素系有機溶剤を主成分としてなる混合物に溶解させた混合溶液を調製し、当該混合溶液に水、有機アルミニウム化合物と可溶性コバルト化合物から得られるシス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程、引き続き、(2)得られた重合反応混合物中に可溶性コバルト化合物と一般式AlR(但し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基である)で表される有機アルミニウム化合物とニ硫化炭素とから得られる触媒を存在させて、1,3−ブタジエンを60℃未満で1,2重合する工程から得られたビニル・シス−ポリブタジエン溶液、及び、
(B)シス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程で得られたシス−ポリブタジエンを混合することを特徴とするビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法。
【0014】
(3)
(A)(1)1,2−ポリブタジエンを1,3−ブタジエンと炭化水素系有機溶剤を主成分としてなる混合物に溶解させた混合溶液を調製し、当該混合溶液に水、有機アルミニウム化合物と可溶性コバルト化合物から得られるシス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程、引き続き、(2)得られた重合反応混合物中に可溶性コバルト化合物と一般式AlR(但し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基である)で表される有機アルミニウム化合物とニ硫化炭素とから得られる触媒を存在させて、1,3−ブタジエンを60℃未満で1,2重合する工程から得られたビニル・シス−ポリブタジエン溶液、及び、
(B)シス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程で得られたシス−ポリブタジエン溶液を混合することを特徴とするビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法に関する。
【0015】
(4)
(A)(1)1,2−ポリブタジエンを1,3−ブタジエンと炭化水素系有機溶剤を主成分としてなる混合物に溶解させた混合溶液を調製し、当該混合溶液に水、有機アルミニウム化合物と可溶性コバルト化合物から得られるシス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程、引き続き、(2)得られた重合反応混合物中に可溶性コバルト化合物と一般式AlR(但し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基である)で表される有機アルミニウム化合物とニ硫化炭素とから得られる触媒を存在させて、1,3−ブタジエンを60℃未満で1,2重合する工程から得られたビニル・シス−ポリブタジエン、及び、
(B)シス−1,4結合を80%以上含有し、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)20〜80を有するシス−ポリブタジエンを1,3−ブタジエンおよび/または炭化水素系有機溶剤を主成分としてなる混合物に溶解させる工程で得られたシス−ポリブタジエン溶液を混合することを特徴とするビニル−シスポリブタジエンゴムの製造方法に関する。
【0016】
(5)
(A)(1)1,2−ポリブタジエンを1,3−ブタジエンと炭化水素系有機溶剤を主成分としてなる混合物に溶解させた混合溶液を調製し、当該混合溶液に水、有機アルミニウム化合物と可溶性コバルト化合物から得られるシス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程、引き続き、(2)得られた重合反応混合物中に可溶性コバルト化合物と一般式AlR3(但し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基である)で表される有機アルミニウム化合物とニ硫化炭素とから得られる触媒を存在させて、1,3−ブタジエンを60℃未満で1,2重合する工程から得られたビニル・シス−ポリブタジエン溶液、及び、
(B)シス−1,4結合を80%以上含有し、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)20〜80を有するシス−ポリブタジエンを1,3−ブタジエンおよび/または炭化水素系有機溶剤を主成分としてなる混合物に溶解させる工程で得られたシス−ポリブタジエン溶液を混合することを特徴とするビニル−シスポリブタジエンゴムの製造方法に関する。
【0017】
(6)
該1,2−ポリブタジエンの融点が60℃〜150℃であることを特徴とする前記のビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法に関する。
【0018】
(7)
ビニル・シス−ポリブタジエンゴムに対する該1,2−ポリブタジエンの添加量が20%以下であることを特徴とする前記のビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法に関する。
【0019】
(8)
シス−1,4重合で得られたポリブタジエン高分子量成分の割合が5〜25%であり、前記高分子量成分の割合は当該ポリブタジエンをゲル浸透クロマトグラフィーで測定し、得られた溶出曲線を低分子量成分と高分子量成分にピーク分離することにより求めること、を特徴とする前記のビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法に関する。
【0020】
(9)
前記(1)〜(8)いずれか記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法によって製造されたビニル・シス−ポリブタジエンゴムに関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法によれば、従来のビニル・シス−ポリブタジエンゴムに比べ、押出加工性、引張応力並びに耐疲労性をさらに向上させたビニル・シス−ポリブタジエンゴムを製造することができる。得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴムをタイヤ用途などに用いた場合、製造工程においてその優れた加工性により作業性を向上することができ、完成したタイヤの低燃費化が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(A)ビニル・シス−ポリブタジエンの製造
炭化水素系溶媒としては,トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n−ヘキサン、ブタン、ヘプタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、上記のオレフィン化合物やシス−2−ブテン、トランス−2−ブテン等のオレフィン系炭化水素、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、ケロシン等の炭化水素系溶媒、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。1,3−ブタジエンモノマーそのものを重合溶媒として用いてもよい。
【0023】
中でも、トルエン、シクロヘキサン、あるいは、シス−2−ブテンとトランス−2−ブテンとの混合物などが好適に用いられる。
【0024】
本発明に係るビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法において使用する1,2−ポリブタジエンは、コバルト化合物、一般式AlR3で表せる有機アルミニウム化合物及び二硫化炭素、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、ニトリル、スルホキシド、アミド、ホスフィン、並びに燐酸エステルからなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物、からなる触媒を用い、1,3−ブタジエンを重合することにより製造される。前記1,2−ポリブタジエンは、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンであることが好ましい。また、前記1,2−ポリブタジエンのビニル含有率が75%以上であり、かつ、ビニル含有率/シス含有率が3以上20以下であることが好ましい。融点は、60℃〜150℃であることが好ましく、70℃〜140℃であることがさらに好ましい。
前記1,2−ポリブタジエンの具体例としては、例えば、特開平2−158610号、特開平5−194656号、特開平6−25311号、特開平6−25312号、特開平6−93012号、特開平6−116318号、特開平6−128301号、特開平6−293852号、特開平8−208722号にそれぞれ記載の方法で合成することができるシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンが挙げられる。
【0025】
1,3−ブタジエンと前記溶媒とを混合して得られた混合物に1,2−ポリブタジエンを溶解し、混合溶液を調製する。
【0026】
1,2−ポリブタジエンの添加量は20%以下が好ましく、1〜10%でより好ましく、3〜7%で特に好ましい。
【0027】
次に得られた混合溶液中の水分の濃度を調節する。水分は前記混合溶液中の有機アルミニウムクロライド1モル当たり,好ましくは0.1〜1.0モル,特に好ましくは0.2〜1.0モルの範囲である。この範囲以外では触媒活性が低下したり,シス1,4構造含有率が低下したり,分子量が異常に低下又は高くなったり,重合時のゲルの発生を抑制することができず,このため重合槽などへのゲルの付着が起り,更に連続重合時間を延ばすことができないので好ましくない。水分の濃度を調節する方法は公知の方法が適用できる。多孔質濾過材を通して添加・分散させる方法(特開平4−85304号公報)も有効である。
【0028】
水分の濃度を調節して得られた溶液には有機アルミニウム化合物を添加する。有機アルミニウム化合物としては,トリアルキルアルミニウムやジアルキルアルミニウムクロライド、ジアルキルアルミニウムブロマイド、アルキルアルミニウムセスキクロライド、アルキルアルミニウムセスキブロマイド、アルキルアルミニウムジクロライド等である。
【0029】
具体的な化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムを挙げることができる。
【0030】
さらに、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライドなどのジアルキルアルミニウムクロライド、セスキエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどのような有機アルミニウムハロゲン化合物、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、セスキエチルアルミニウムハイドライドのような水素化有機アルミニウム化合物も含まれる。これらの有機アルミニウム化合物は、二種類以上併用することができる。
有機アルミニウム化合物の使用量の具体例としては,1,3−ブタジエンの全量1モル当たり0.1ミリモル以上,特に0.5〜50ミリモルが好ましい。
【0031】
次いで,有機アルミニウム化合物を添加した混合媒体に可溶性コバルト化合物を添加してシス1,4重合する。可溶性コバルト化合物としては,炭化水素系溶媒を主成分とする不活性媒体又は液体1,3−ブタジエンに可溶なものであるか又は,均一に分散できる,例えばコバルト(II)アセチルアセトナート,コバルト(III)アセチルアセトナートなどコバルトのβ−ジケトン錯体,コバルトアセト酢酸エチルエステル錯体のようなコバルトのβ−ケト酸エステル錯体,コバルトオクトエート,コバルトナフテネート,コバルトベンゾエートなどの炭素数6以上の有機カルボン酸のコバルト塩,塩化コバルトピリジン錯体,塩化コバルトエチルアルコール錯体などのハロゲン化コバルト錯体などを挙げることができる。可溶性コバルト化合物の使用量は1,3−ブタジエンの1モル当たり0.001ミリモル以上,特に0.005ミリモル以上であることが好ましい。また可溶性コバルト化合物に対する有機アルミニウムクロライドのモル比(Al/Co)は10以上であり,特に50以上であることが好ましい。また,可溶性コバルト化合物以外にもニッケルの有機カルボン酸塩,ニッケルの有機錯塩,有機リチウム化合物,ネオジウムの有機カルボン酸塩,ネオジウムの有機錯塩を使用することも可能である。
【0032】
シス1,4重合する温度は0℃を超える温度〜100℃,好ましくは10〜100℃、更に好ましくは20〜100℃までの温度範囲で1,3−ブタジエンをシス1,4重合する。重合時間(平均滞留時間)は10分〜2時間の範囲が好ましい。シス1,4重合後のポリマー濃度は5〜26重量%となるようにシス1,4重合を行うことが好ましい。重合槽は1槽,又は2槽以上の槽を連結して行われる。重合は重合槽(重合器)内にて溶液を攪拌混合して行う。重合に用いる重合槽としては高粘度液攪拌装置付きの重合槽,例えば特公昭40−2645号に記載された装置を用いることができる。
【0033】
本発明のシス1,4重合時に公知の分子量調節剤,例えばシクロオクタジエン,アレン,メチルアレン(1,2−ブタジエン)などの非共役ジエン類,又はエチレン,プロピレン,ブテン−1などのα−オレフィン類を使用することができる。又重合時のゲルの生成を更に抑制するために公知のゲル化防止剤を使用することができる。
【0034】
ムーニー粘度(ML1+4,100℃,以下,MLと略す)10〜130,特に15〜80が好ましい。実質的にゲル分を含有しない。
【0035】
5%トルエン溶液粘度(Tcp))が150〜250であることが好ましく、実質的にゲル分を含有しない。
【0036】
シス−1,4重合で得られたシス−ポリブタジエン高分子量成分の定義について概説する。
シス−ポリブタジエン高分子量成分とは、GPC測定結果から得た二つのピークトップを持つ溶出曲線を市販の波形分離ソフトを用いて分割し、得られた二つの曲線のうち高分子量側のものを言う。
【0037】
このシス−ポリブタジエン高分子成分のピーク面積は5〜25%、特に10〜20%が好ましい。特に当該範囲内では加硫物の定伸長疲労性(30%歪み)が優れる。
【0038】
前記の如くして得られたシス1,4重合物に1,3−ブタジエンを添加しても添加しなくてもよい。そして,一般式AlRで表せる有機アルミニウム化合物と二硫化炭素,必要なら前記の可溶性コバルト化合物を添加して1,3−ブタジエンを1,2重合してビニル・シス−ポリブタジエンゴム(VCR)を製造する。一般式AlRで表せる有機アルミニウム化合物としてはトリメチルアルミニウム,トリエチルアルミニウム,トリイソブチルアルミニウム,トリn−ヘキシルアルミニウム,トリフェニルアルミニウムなどを好適に挙げることができる。有機アルミニウム化合物は1,3−ブタジエン1モル当たり0.1ミリモル以上,特に0.5〜50ミリモル以上である。二硫化炭素は特に限定されないが水分を含まないものであることが好ましい。二硫化炭素の濃度は20ミリモル/L以下,特に好ましくは0.01〜10ミリモル/Lである。二硫化炭素の代替として公知のイソチオシアン酸フェニルやキサントゲン酸化合物を使用してもよい。
【0039】
1,2重合する温度は−5〜100℃が好ましく,特に−5〜60℃未満が好ましい。1,2重合する際の重合系には前記のシス重合液100重量部当たり1〜50重量部,好ましくは1〜20重量部の1,3−ブタジエンを添加することで1,2重合時の1,2−ポリブタジエンの収量を増大させることができる。重合時間(平均滞留時間)は10分〜2時間の範囲が好ましい。1,2重合後のポリマー濃度は9〜29重量%となるように1,2重合を行うことが好ましい。重合槽は1槽,又は2槽以上の槽を連結して行われる。重合は重合槽(重合器)内にて重合溶液を攪拌混合して行う。1,2重合に用いる重合槽としては1,2重合中に更に高粘度となり,ポリマーが付着しやすいので高粘度液攪拌装置付きの重合槽,例えば特公昭40−2645号公報に記載された装置を用いることができる。
【0040】
重合反応が所定の重合率に達した後,常法に従って公知の老化防止剤を添加することができる。老化防止剤の代表としてはフェノール系の2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT),リン系のトリノニルフェニルフォスファイト(TNP),硫黄系の4.6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート(TPL)などが挙げられる。単独でも2種以上組み合わせて用いてもよく,老化防止剤の添加はVCR100重量部に対して0.001〜5重量部である。次に重合停止剤を重合系に加えて停止する。例えば重合反応終了後,重合停止槽に供給し,この重合溶液にメタノール,エタノールなどのアルコール,水などの極性溶媒を大量に投入する方法,塩酸,硫酸などの無機酸,酢酸,安息香酸などの有機酸,塩化水素ガスを重合溶液に導入する方法などの,それ自体公知の方法である。次いで通常の方法に従い生成したビニル・シス−ポリブタジエン(以下、VCRと略)を分離,洗浄,乾燥する。
【0041】
このようにして得られたビニル・シス−ポリブタジエンの沸騰n−ヘキサン不溶分の割合(HI)は10〜40重量%であることが好ましく、特に10〜29重量%が好ましい。
沸騰n−ヘキサン可溶分はミクロ構造が90%以上のシス1,4−ポリブタジエンである。
【0042】
このようにして得られたVCRを分離取得した残部の未反応の1,3−ブタジエン,不活性媒体及び二硫化炭素を含有する混合物から蒸留により1,3−ブタジエン,不活性媒体として分離して,一方,二硫化炭素を吸着分離処理,あるいは二硫化炭素付加物の分離処理によって二硫化炭素を分離除去し,二硫化炭素を実質的に含有しない1,3−ブタジエンと不活性媒体とを回収する。また,前記の混合物から蒸留によって3成分を回収して,この蒸留から前記の吸着分離あるいは二硫化炭素付着物分離処理によって二硫化炭素を分離除去することによっても,二硫化炭素を実質的に含有しない1,3−ブタジエンと不活性媒体とを回収することもできる。前記のようにして回収された二硫化炭素と不活性媒体とは新たに補充した1,3−ブタジエンを混合して使用される。
【0043】
本発明による方法で連続運転すると,触媒成分の操作性に優れ,高い触媒効率で工業的に有利にVCRを連続的に長時間製造することができる。特に,重合槽内の内壁や攪拌翼,その他攪拌が緩慢な部分に付着することもなく,高い転化率で工業的に有利に連続製造できる。
【0044】
(B)シス−ポリブタジエンの製造
本発明で使用される上記(A)の製造方法、すなわち、シス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程と同様にして製造できる。
【0045】
得られたシス−ポリブタジエンは、シス1,4−構造含有率が一般に90%以上,特に95%以上であることが好ましい。
【0046】
ムーニー粘度(ML1+4,100℃,以下,MLと略す)10〜130,特に15〜80が好ましい。実質的にゲル分を含有しない。
【0047】
5%トルエン溶液粘度(Tcp))が30〜250であることが好ましい。
【0048】
また、本発明では(B)成分として、シス−1,4結合を80%以上含有し、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)20〜80を有するシス−ポリブタジエンを1,3−ブタジエンおよび/または炭化水素系有機溶剤を主成分としてなる混合物に溶解させる工程で得られたシス−ポリブタジエン溶液を使用してもよい。当該(B)のシス−ポリブタジエンは、コバルト触媒、またはニッケル触媒、またはランタノイド触媒を用いて合成されたシス−ポリブタジエンを単独または2種類以上ブレンドで製造することが好ましい。水分の濃度が調節された、1,3−ブタジエンと炭化水素系有機溶剤を主成分としてなる混合物中の、上記のシス−ポリブタジエンの濃度は、1〜30wt%が好ましい。
【0049】
(A)ビニル・シス−ポリブタジエンと(B)シス−ポリブタジエンとを混合して得られるビニル・シス−ポリブタジエンゴムにおける(A)と(B)の割合は(A)/(B)=90〜25重量%/10〜75重量%であることが好ましく、(A)/(B)=85〜40重量%/15〜60重量%であることが更に好ましい。
【0050】
本発明により得られるビニル・シス−ポリブタジエンゴム(以下、ビニル・シス−ポリブタジエンゴム(a)ということがある)はタイヤ用として有用であり,サイドウォール、または、トレッド,スティフナー,ビードフィラー,インナーライナー,カーカスなどに,その他、ホース,ベルトその他の各種工業用品等の剛性、機械的特性及び破壊特性が要求されるゴム用途に使用される。また,プラスチックスの改質剤として使用することもできる。
【0051】
本発明により得られるビニル・シス−ポリブタジエンゴムに配合剤を加えて混練した組成物は、従来の方法で得られたものに比較して耐伸長亀裂性が優れ、初期歪み50%以下では特に優れている。
【0052】
また,本発明により得られるビニル・シス−ポリブタジエンゴムに配合剤を加えて混練した組成物は、加硫すると引張応力が向上する。特に100%引張応力の向上が著しく,補強効果が大幅に改善される。また高剛性であるため、カーボンやシリカ等の補強材使用量の低減が容易になり、タイヤの軽量化による低燃費化が可能となる。
【0053】
さらに、本発明により得られるビニル・シス−ポリブタジエンゴムに配合剤を加えて混練した組成物は、加硫すると従来のビニル・シス−ポリブタジエンゴムに比較して。高反撥弾性、低発熱性を示し、エネルギーロスが小さく、タイヤの低燃費化が可能である。従って本発明のビニル・シス−ポリブタジエンゴムをサイドウォール及びトレッドの素材として使用したタイヤは上記特性により優れた走行安定性・耐久性・高速耐久性を示し、且つ低燃費化を可能とする。
【0054】
本発明により得られるビニル・シス−ポリブタジエンゴムと天然ゴム、合成ゴム若しくはこれらの任意の割合のブレンドゴムからなる群から選ばれたゴム100重量部に対して、ゴム補強剤を10〜100重量部を配合することにより、ゴム組成物を製造できる。
【0055】
前記のブレンドゴムとしては、ハイシスポリブタジエンゴム、ローシスポリブタジエンゴム(BR)、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、乳化重合若しくは溶液重合スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。
【0056】
また、これらゴムの誘導体、例えば錫化合物で変性されたポリブタジエンゴムやエポキシ変性、シラン変性、マレイン酸変性された上記ゴムなども用いることができ、これらのゴムは単独でも、二種以上組み合わせて用いても良い。
【0057】
前記のゴム補強剤としては、各種のカーボンブラック以外に、ホワイトカーボン、活性化炭酸カルシウム、超微粒子珪酸マグネシウム等の無機補強剤やシンジオタクチック1,2ポリブタジエン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ハイスチレン樹脂、フェノール樹脂、リグニン、変性メラミン樹脂、クマロンインデン樹脂及び石油樹脂等の有機補強剤があり、特に好ましくは、粒子径が90nm以下、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が70ml/100g以上のカーボンブラックで、例えば、FEF、FF、GPF、SAF、ISAF、SRF、HAF等が挙げられる。また、シリカとしては、乾式法による無水ケイ酸及び湿式法による含水ケイ酸や合成ケイ酸塩などが挙げられる。
【0058】
本発明により得られるビニル・シス−ポリブタジエンゴムに配合剤を加えて混練したゴム組成物は、前記各成分を通常行われているバンバリー、オープンロール、ニーダー、二軸混練り機などを用いて混練りすることで得られる。混練温度は、当該ビニル・シス−ポリブタジエンに含有される1,2ポリブタジエン結晶繊維の融点より低い必要がある。この1,2ポリブタジエン結晶繊維の融点より高い温度で混練すると、ビニル・シス−ポリブタジエン中の微細な短繊維が溶けて球状の粒子等に変形してしまうから好ましくない。
【0059】
本発明により得られるビニル・シス−ポリブタジエンゴムに配合剤を加えて混練した組成物には、必要に応じて、加硫剤、加硫助剤、老化防止剤、充填剤、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸など、通常ゴム業界で用いられる配合剤を混練してもよい。
【0060】
加硫剤としては、公知の加硫剤、例えば硫黄、有機過酸化物、樹脂加硫剤、酸化マグネシウムなどの金属酸化物などが用いられる。
【0061】
加硫助剤としては、公知の加硫助剤、例えばアルデヒド類、アンモニア類、アミン類、グアニジン類、チオウレア類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカーバメイト類、キサンテート類などが用いられる。
【0062】
老化防止剤としては、アミン・ケトン系、イミダゾール系、アミン系、フェノール系、硫黄系及び燐系などが挙げられる。
【0063】
充填剤としては、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、クレー、リサージュ、珪藻土等の無機充填剤、再生ゴム、粉末ゴム等の有機充填剤が挙げられる。
【0064】
プロセスオイルは、アロマティック系、ナフテン系、パラフィン系のいずれを用いてもよい。
【実施例】
【0065】
以下に本発明に基づく実施例について具体的に記載する。実施例及び比較例において、得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴムの素ゴムの物性、及び得られたゴム組成物の配合物の物性と加硫物の物性は以下のようにして測定した。
(1)沸騰n−ヘキサン不溶分(H.I.);示差走査熱量計(島津製作所製、DSC−50)により測定した融解熱量と、実測H.I測定法で得られたH.Iの検量線から求めた。実測H.Iは2gのビニル・シス−ポリブタジエンゴムを200mlのn−ヘキサンにて4時間ソックスレー抽出器によって沸騰抽出した抽出残部を重量部で示した。
(2)沸騰n−ヘキサン不溶分(H.I)の融点、融解熱量及び結晶化温度;試料約10mg、昇温速度10℃/minとした場合の値を示差走査熱量計(島津製作所製、DSC−50)により測定した。
(3)ムーニー粘度;ビニル・シス−ポリブタジエンゴム、及びビニル・シス−ポリブタジエンゴムの配合物をJIS K6300に準じて100℃にて測定した値である。
(4)シス−ポリブタジエンゴムのトルエン溶液粘度;シス−ポリブタジエンの25℃における5重量%トルエン溶液の粘度を測定してセンチポイズ(cp)で示した。
(5)伸張疲労性:定伸張疲労試験機(上島製作所製)を用いて、ダンベル状3号形(JIS−K6251)試験片の中央に0.5mmの傷を入れ、初期歪30%、50%、100%、300回/分の条件で試験片が破断した回数を測定した。市販のビニル・シス−ポリブタジエンゴムであるUBEPOL VCR412(宇部興産株式会社製)を用いた比較例3を100とし、指数を算出した。数値が大きいほど耐疲労性が高いことを示す。
(6)ダイ・スウェル;加工性測定装置(モンサント社、MPT)を用いて配合物の押出加工性の目安として100℃、100sec−1のせん断速度で押出時の配合物の断面積とダイオリフィス断面積(但し、L/D=1.5mm/1.5mm)の比を測定して求めた。また比較例3を100とし、指数を算出した。数値が小さい程押出し加工性が良好なことを示す。
(7)引張弾性率;JIS K6251に従い、引張弾性率M100を測定した。また比較例3を100とし、指数を算出した。数値が大きい程引張応力が高いことを示す。
(7’)引張弾性率;JIS K6251に従い、引張弾性率M300を測定した。また比較例3を100とし、指数を算出した。数値が大きい程引張応力が高いことを示す。
(8)発熱性(tanδ);粘弾性測定装置(アルファテクノロジーズ社製、RPA2000)を用い、温度50℃、周波数1Hz、動歪み3%、10%で測定し、比較例3を100とし、指数を算出した。数値が低い程発熱性が良好なことを示す。
(9)硬度;JIS K6253に準じてタイプAデュロメーターを用いて室温で測定した。比較例3を100として指数を算出した。数値が大きいほど硬度が高く良好な物性であることを示す。
(10)ポリブタジエンゴム中の高分子量成分の割合;シス−1,4重合で得られたポリブタジエンゴム100mgをテトラヒドロフラン50mLに溶解し、ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー株式会社製、HLC−8220 GPC、カラム:KF−805L×2、検出器:RI)を用いて測定し、得られた溶出曲線を市販の波形分離ソフト(ORIGIN Pro8.0)を用い、ピーク検索にてピークトップと分子量10^6.10付近のピーク(もしくはショルダー)を指定し、反復回数500、許容値1E−15で波形分離し、高分子量成分の面積割合を求めた。
【0066】
(実施例1)
(A)ビニル・シス−ポリブタジエンの製造
ヘリカル羽根を備えチッソ置換を終えた1.9Lステンレス製オートクレーブに、示差走査熱量計(島津製作所製、DSC−50)で測定した融点が97.4℃のシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン(低融点SPB)粉末を0.425g導入した後、チッソ置換を5kg/cmで5回行った。次に、1,3−ブタジエン、2−ブテン及びシクロヘキサンの重量比が32:31:35からなる混合液(FB)を0.5L導入した。撹拌スピードは500回転/分とした。水15.3mgを添加し、60℃で30分間保持し、低融点SPBを溶解した後、30℃とした。次に、1,5−シクロオクタジエン(COD)0.97ml、ジラウリル−3,3’−ジチオプロピオネート(TPL)のシクロヘキサン溶液(0.02M)0.375ml、及びジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)のシクロヘキサン溶液(1.0M)1.5mlを添加し、25℃で5分間反応させた。その後、溶液を60℃に昇温し、直ちにオクテン酸コバルト(Co(Oct))のシクロヘキサン溶液(5.0mM)0.40mlを添加して、60℃で20分間シス−1,4重合を行った。
次に、トリエチルアルミニウム(TEA)のシクロヘキサン溶液(1.0M)1.95mlを添加し、5分後にオクテン酸コバルト(Co(Oct))のシクロヘキサン溶液(0.05M)0.70ml及び二硫化炭素(CS)のシクロヘキサン溶液(0.25M)0.50mlを添加して、40℃で20分間1,2重合を行った。重合停止は、n−ヘプタンとエタノールの1:1混合液である「イルガノックス」(登録商標)1076(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)の0.2%溶液を0.5ml、及びナフトキノンのエタノール溶液(0.2M)を0.5ml加えて行った。次にオートクレーブを氷水で冷やしながら放圧し、圧力が常圧に戻った後、重合物をバットに回収し、100℃で3時間真空乾燥した。シス−1,4重合条件を表1に、1,2−重合条件を表2に、重合結果を表3に示した。
【0067】
(B)シスポリブタジエンの製造
ヘリカル羽根を備えチッソ置換を終えた5.0Lステンレス製オートクレーブに、1,3−ブタジエン、2−ブテン及びシクロヘキサンの重量比が32:31:35からなる混合液(FB)を2.5L導入した。撹拌スピードは500回転/分とした。水76.7mgを添加し、60℃で30分間保持し、低融点SPBを溶解した後、30℃とした。次に、1,5−シクロオクタジエン(COD)4.48ml、ジラウリル−3,3’−ジチオプロピオネート(TPL)のシクロヘキサン溶液(0.02M)1.875ml、及びジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)のシクロヘキサン溶液(2.0M)3.75mlを添加し、25℃で5分間反応させた。その後、溶液を60℃に昇温し、直ちにオクテン酸コバルト(Co(Oct))のシクロヘキサン溶液(5.0mM)2.70mlを添加して、60℃で20分間シス−1,4重合を行った。重合停止は、n−ヘプタンとエタノールの1:1混合液である「イルガノックス」(登録商標)1076(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)の0.2%溶液を2.5ml加えて行った。次にオートクレーブを氷水で冷やしながら放圧し、圧力が常圧に戻った後、重合物をバットに回収し、100℃で3時間真空乾燥し、シスポリブタジエン253.2gを得た。このシスポリブタジエンのML粘度は26.1であった。
【0068】
(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
前述のビニル・シス−ポリブタジエン40g、前述のシスポリブタジエン40gを6インチロール(100℃、ロール間隔0.5mm)で3分間素練りを行い、(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴム80gを得た。混合条件、得られた(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの物性を表4に示した。
【0069】
(実施例2)
(A)ビニル・シス−ポリブタジエンの製造
シス−1,4重合おいて、低融点SPBの添加量を0.85g、CODの添加量を1.05ml、Co(Oct)のシクロヘキサン溶液(0.05M)の添加量を0.54mlとした以外は実施例1と同様の手順で重合を行った。シス−1,4重合条件を表1に、1,2−重合条件を表2に、重合結果を表3に示した。
【0070】
(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
実施例2の(A)で得られたビニル・シスポリブタジエン40g、実施例1で得られたシスポリブタジエン40gを実施例1と同様の手順で混合し、(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムを得た。混合条件、得られた(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの物性を表4に示した。
【0071】
(実施例3)
(A)ビニル・シス−ポリブタジエンの製造
シス−1,4重合おいて、低融点SPBの添加量を1.70g、CODの添加量を1.26ml、Co(Oct)のシクロヘキサン溶液(0.05M)の添加量を0.79mlとした以外は実施例1と同様の手順で重合を行った。シス−1,4重合条件を表1に、1,2−重合条件を表2に、重合結果を表3に示した。
【0072】
(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
実施例3の(A)で得られたビニル・シスポリブタジエン40g、実施例1で得られたシスポリブタジエン40gを実施例1と同様の手順で混合し、(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムを得た。混合条件、得られた(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの物性を表4に示した。
【0073】
(比較例1)
(A)ビニル・シス−ポリブタジエンの製造
シス−1,4重合おいて、低融点SPBを添加せず、CODの添加量を0.96ml、Co(Oct)のシクロヘキサン溶液(0.05M)の添加量を0.33mlとした以外は実施例1と同様の手順で重合を行った。シス−1,4重合条件を表1に、1,2−重合条件を表2に、重合結果を表3に示した。
【0074】
(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
比較例1の(A)で得られたビニル・シスポリブタジエン40g、実施例1で得られたシスポリブタジエン40gを実施例1と同様の手順で混合し、(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムを得た。混合条件、得られた(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの物性を表4に示した。
【0075】
(実施例4)
(A)ビニル・シス−ポリブタジエン溶液の製造
ヘリカル羽根を備えチッソ置換を終えた1.9Lステンレス製オートクレーブに、示差走査熱量計(島津製作所製、DSC−50)で測定した融点が97.4℃のシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン(低融点SPB)粉末を0.425g導入した後、チッソ置換を5kg/cmで5回行った。次に、1,3−ブタジエン、2−ブテン及びシクロヘキサンの重量比が32:31:35からなる混合液(FB)を0.5L導入した。撹拌スピードは500回転/分とした。水15.3mgを添加し、60℃で30分間保持し、低融点SPBを溶解した後、30℃とした。次に、1,5−シクロオクタジエン(COD)0.97ml、ジラウリル−3,3’−ジチオプロピオネート(TPL)のシクロヘキサン溶液(0.02M)0.375ml、及びジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)のシクロヘキサン溶液(1.0M)1.5mlを添加し、25℃で5分間反応させた。その後、溶液を60℃に昇温し、直ちにオクテン酸コバルト(Co(Oct))のシクロヘキサン溶液(5.0mM)0.40mlを添加して、60℃で20分間シス−1,4重合を行った。
次に、トリエチルアルミニウム(TEA)のシクロヘキサン溶液(1.0M)1.95mlを添加し、5分後にオクテン酸コバルト(Co(Oct))のシクロヘキサン溶液(0.05M)0.70ml及び二硫化炭素(CS)のシクロヘキサン溶液(0.25M)0.50mlを添加して、40℃で20分間1,2重合を行った。重合停止は、n−ヘプタンとエタノールの1:1混合液である「イルガノックス」(登録商標)1076(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)の0.2%溶液を0.5ml、及びナフトキノンのエタノール溶液(0.2M)を0.5ml加えて行い、ビニル・シスポリブタジエン溶液を製造した。シス−1,4重合条件を表5に、1,2−重合条件を表6に示した。
【0076】
(B)シスポリブタジエンの製造
ヘリカル羽根を備えチッソ置換を終えた5.0Lステンレス製オートクレーブに、1,3−ブタジエン、2−ブテン及びシクロヘキサンの重量比が32:31:35からなる混合液(FB)を2.5L導入した。撹拌スピードは500回転/分とした。水76.7mgを添加し、60℃で30分間保持し、低融点SPBを溶解した後、30℃とした。次に、1,5−シクロオクタジエン(COD)4.58ml、ジラウリル−3,3’−ジチオプロピオネート(TPL)のシクロヘキサン溶液(0.02M)1.875ml、及びジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)のシクロヘキサン溶液(2.0M)3.75mlを添加し、25℃で5分間反応させた。その後、溶液を60℃に昇温し、直ちにオクテン酸コバルト(Co(Oct))のシクロヘキサン溶液(5.0mM)2.75mlを添加して、60℃で20分間シス−1,4重合を行った。重合停止は、n−ヘプタンとエタノールの1:1混合液である「イルガノックス」(登録商標)1076(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)の0.2%溶液を2.5ml加えて行った。次にオートクレーブを氷水で冷やしながら放圧し、圧力が常圧に戻った後、重合物をバットに回収し、100℃で3時間真空乾燥し、シスポリブタジエン259.4gを得た。このシスポリブタジエンのML粘度は25.9であった。
【0077】
(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
ヘリカル羽根を備えた1.9Lステンレス製オートクレーブにシクロヘキサン500ml、実施例4の(B)で得られたシスポリブタジエン50gを加え、攪拌速度を500rpmとした。25℃で5時間保持し、シスポリブタジエン溶液を作製した。この溶液を実施例4の(A)で作製したビニル・シス−ポリブタジエン溶液に加え、攪拌速度を500rpmとし、40℃で30分間保持した。オートクレーブを放圧した後、内容物をバットに回収し、100℃で3時間真空乾燥して(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴム92.7gを得た。得られた(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの物性を表7に示した。
【0078】
(実施例5)
(A)ビニル・シス−ポリブタジエンの製造
シス−1,4重合おいて、低融点SPBの添加量を0.85g、CODの添加量を1.05ml、Co(Oct)のシクロヘキサン溶液(0.05M)の添加量を0.54mlとした以外は実施例4と同様の手順で重合を行い、ビニル・シスポリブタジエン溶液を製造した。シス−1,4重合条件を表5に、1,2−重合条件を表6に示した。
【0079】
(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
ビニル・シス−ポリブタジエン溶液として実施例5の(A)で得られたビニル・シス−ポリブタジエン溶液を用いた以外は実施例4と同様の手順で溶液混合を行い、(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴム95.2gを得た。得られた(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの物性を表7に示した。
【0080】
(実施例6)
(A)ビニル・シス−ポリブタジエンの製造
シス−1,4重合おいて、低融点SPBの添加量を1.7g、CODの添加量を1.26ml、Co(Oct)のシクロヘキサン溶液(0.05M)の添加量を0.79mlとした以外は実施例4と同様の手順で重合を行い、ビニル・シスポリブタジエン溶液を製造した。シス−1,4重合条件を表5に、1,2−重合条件を表6に示した。
【0081】
(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
ビニル・シス−ポリブタジエン溶液として実施例6の(A)で得られたビニル・シス−ポリブタジエン溶液を用いた以外は実施例4と同様の手順で溶液混合を行い、(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴム94.4gを得た。得られた(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの物性を表7に示した。
【0082】
(比較例2)
(A)ビニル・シス−ポリブタジエンの製造
シス−1,4重合おいて、低融点SPBを添加せず、CODの添加量を0.96ml、Co(Oct)のシクロヘキサン溶液(0.05M)の添加量を0.33mlとした以外は実施例4と同様の手順で重合を行い、ビニル・シスポリブタジエン溶液を製造した。シス−1,4重合条件を表5に、1,2−重合条件を表6に示した。
【0083】
(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
ビニル・シス−ポリブタジエン溶液として比較例2の(A)で得られたビニル・シス−ポリブタジエン溶液を用いた以外は実施例4と同様の手順で溶液混合を行い、(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴム93.7gを得た。得られた(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの物性を表7に示した。
【0084】
前記の実施例と比較例にあるビニル・シス−ポリブタジエンゴムを表8の配合表に従ってプラストミルでカーボンブラック、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤を加えて混練する一次配合を実施し、次いでロールにて加硫促進剤、硫黄を添加する二次配合を実施し、配合ゴムを作製した。この配合ゴムを用い、ダイ・スウェルを測定した。更にこの配合ゴムを目的物性に応じて成型し、150℃にてプレス加硫し加硫物を得た後、物性測定を行った。それぞれの物性測定結果について、市販のビニル・シス−ポリブタジエンゴムであるUBEPOL VCR412(宇部興産株式会社製)を用い、これを100とした指数を表9に示した。表9の結果から、実施例1〜6で得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴムを用いた場合、比較例1、2、3と比べ、配合物及び加硫物の押出加工性、引張応力並びに耐伸張疲労性が向上していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
(実施例7)
(A)ビニル・シス−ポリブタジエンの製造
ヘリカル羽根を備えチッソ置換を終えた1.9Lステンレス製オートクレーブに、示差走査熱量計(島津製作所製、DSC−50)で測定した融点が97.4℃のシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン(低融点SPB)粉末を0.425g導入した後、チッソ置換を5kg/cmで5回行った。次に、1,3−ブタジエン、2−ブテン及びシクロヘキサンの重量比が40:31:26からなる混合液(FB)を1.0L導入した。水36.0mgを添加し、撹拌スピードを500回転/分とした。60℃で30分間保持し、低融点SPBを溶解した後、25℃とした。次に、1,5−シクロオクタジエン(COD)2.38ml、及びジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)のシクロヘキサン溶液(1.0M)3.0mlを添加し、25℃で5分間反応させた。その後、溶液を45℃に昇温し、直ちにオクテン酸コバルト(Co(Oct))のシクロヘキサン溶液(5.0mM)0.82mlを添加して、45℃で20分間シス−1,4重合を行った。オートクレーブからポリマー溶液を少量(1g程度)アルミニウム製の容器に抜き出し、真空乾燥した(100℃で0.5時間真空乾燥)。
次に、トリエチルアルミニウム(TEA)のシクロヘキサン溶液(1.0M)1.95mlを添加し、5分後にオクテン酸コバルト(Co(Oct))のシクロヘキサン溶液(0.05M)0.84ml及び二硫化炭素(CS)のシクロヘキサン溶液(0.25M)1.0mlを添加して、45℃で20分間1,2重合を行った。重合停止は、n−ヘプタンとエタノールの1:1混合液である「イルガノックス」(登録商標)1076(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)の0.2%溶液を0.5ml、及びナフトキノンのエタノール溶液(0.2M)を0.5ml加えて行った。次にオートクレーブを氷水で冷やしながら放圧し、圧力が常圧に戻った後、重合物をバットに回収し、100℃で3時間真空乾燥した。シス−1,4重合条件を表10に、1,2−重合条件を表11に、重合結果を表12に示した。
【0086】
(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
前述のビニル・シス−ポリブタジエン51g、市販のシスポリブタジエンゴムであるUBEPOL BR14H(宇部興産株式会社製)22gを6インチロール(100℃、ロール間隔0.5mm)で3分間素練りを行い、(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴム73gを得た。混合条件、得られた(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの物性を表13に示した。
【0087】
(実施例8)
シス−1,4重合おいて、低融点SPBの添加量を3.75g、CODの添加量を2.53ml、Co(Oct)のシクロヘキサン溶液(5.0mM)の添加量を1.55mlとし、1,2−重合において、Co(Oct)のシクロヘキサン溶液(0.05M)の添加量を1.85mlとした以外は実施例7と同様の手順で重合を行い、ビニル・シスポリブタジエン溶液を製造した。シス−1,4重合条件を表10に、1,2−重合条件を表11に、重合結果を表12に示した。
【0088】
(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
前述のビニル・シス−ポリブタジエン70g、市販のシスポリブタジエンゴムであるUBEPOL BR14H(宇部興産株式会社製)30gを6インチロール(100℃、ロール間隔0.5mm)で3分間素練りを行い、(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴム100gを得た。混合条件、得られた(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの物性を表13に示した。
【0089】
(実施例9)
シス−1,4重合おいて、低融点SPBの添加量を4.50g、CODの添加量を2.68ml、Co(Oct)のシクロヘキサン溶液(5.0mM)の添加量を2.15mlとし、1,2−重合において、Co(Oct)のシクロヘキサン溶液(0.05M)の添加量を2.50ml、二硫化炭素(CS)のシクロヘキサン溶液(0.25M)の添加量を1.25mlとした以外は実施例7と同様の手順で重合を行い、ビニル・シスポリブタジエン溶液を製造した。シス−1,4重合条件を表10に、1,2−重合条件を表11に、重合結果を表12に示した。
【0090】
(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
前述のビニル・シス−ポリブタジエン70g、市販のシスポリブタジエンゴムであるUBEPOL BR14H(宇部興産株式会社製)30gを6インチロール(100℃、ロール間隔0.5mm)で3分間素練りを行い、(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴム100gを得た。混合条件、得られた(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの物性を表13に示した。
【0091】
(実施例10)
シス−1,4重合おいて、低融点SPBの添加量を5.00g、CODの添加量を2.70ml、Co(Oct)のシクロヘキサン溶液(5.0mM)の添加量を2.50mlとし、1,2−重合において、Co(Oct)のシクロヘキサン溶液(0.05M)の添加量を1.65mlとした以外は実施例7と同様の手順で重合を行い、ビニル・シスポリブタジエン溶液を製造した。シス−1,4重合条件を表10に、1,2−重合条件を表11に、重合結果を表12に示した。
【0092】
(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
前述のビニル・シス−ポリブタジエン71g、市販のシスポリブタジエンゴムであるUBEPOL BR14H(宇部興産株式会社製)29gを6インチロール(100℃、ロール間隔0.5mm)で3分間素練りを行い、(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴム100gを得た。混合条件、得られた(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの物性を表13に示した。
【0093】
(実施例11)
シス−1,4重合おいて、低融点SPBの添加量を5.00g、水の添加量を30.8mg、CODの添加量を2.80ml、Co(Oct)のシクロヘキサン溶液(5.0mM)の添加量を2.60mlとし、1,2−重合において、Co(Oct)のシクロヘキサン溶液(0.05M)の添加量を1.60mlとした以外は実施例7と同様の手順で重合を行い、ビニル・シスポリブタジエン溶液を製造した。シス−1,4重合条件を表10に、1,2−重合条件を表11に、重合結果を表12に示した。
【0094】
(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
前述のビニル・シス−ポリブタジエン70g、市販のシスポリブタジエンゴムであるUBEPOL BR14H(宇部興産株式会社製)30gを6インチロール(100℃、ロール間隔0.5mm)で3分間素練りを行い、(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴム100gを得た。混合条件、得られた(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの物性を表13に示した。
【0095】
低分子量成分と高分子量成分にピーク分離し、高分子量成分の割合を求めた
(比較例4)
シス−1,4重合おいて、低融点SPBの添加量を5.00g、水の添加量を27.0mg、CODの添加量を3.20ml、Co(Oct)のシクロヘキサン溶液(5.0mM)の添加量を3.10mlとし、1,2−重合において、Co(Oct)のシクロヘキサン溶液(0.05M)の添加量を1.45mlとした以外は実施例7と同様の手順で重合を行い、ビニル・シスポリブタジエン溶液を製造した。シス−1,4重合条件を表10に、1,2−重合条件を表11に、重合結果を表12に示した。
【0096】
(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
前述のビニル・シス−ポリブタジエン67g、市販のシスポリブタジエンゴムであるUBEPOL BR14H(宇部興産株式会社製)33gを6インチロール(100℃、ロール間隔0.5mm)で3分間素練りを行い、(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴム100gを得た。混合条件、得られた(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの物性を表13に示した。
【0097】
(比較例5)
シス−1,4重合おいて、低融点SPBの添加量を5.00g、水の添加量を21.6mg、CODの添加量を3.20ml、Co(Oct)のシクロヘキサン溶液(5.0mM)の添加量を3.61mlとし、1,2−重合において、Co(Oct)のシクロヘキサン溶液(0.05M)の添加量を1.20mlとした以外は実施例7と同様の手順で重合を行い、ビニル・シスポリブタジエン溶液を製造した。シス−1,4重合条件を表10に、1,2−重合条件を表11に、重合結果を表12に示した。
【0098】
(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造
前述のビニル・シス−ポリブタジエン69g、市販のシスポリブタジエンゴムであるUBEPOL BR14H(宇部興産株式会社製)31gを6インチロール(100℃、ロール間隔0.5mm)で3分間素練りを行い、(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴム100gを得た。混合条件、得られた(A)+(B)混合物ビニル・シス−ポリブタジエンゴムの物性を表13に示した。
【0099】
前記の実施例と比較例にあるビニル・シス−ポリブタジエンゴムを表14の配合表に従ってプラストミルでカーボンブラック、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤を加えて混練する一次配合を実施し、次いでロールにて加硫促進剤、硫黄を添加する二次配合を実施し、配合ゴムを作製した。この配合ゴムを用い、ダイ・スウェルを測定した。更にこの配合ゴムを目的物性に応じて成型し、150℃にてプレス加硫し加硫物を得た後、物性測定を行った。それぞれの物性測定結果について、市販のビニル・シス−ポリブタジエンゴムであるUBEPOL VCR412(宇部興産株式会社製)を用い、これを100とした指数を表15に示した。表15の結果から、実施例7〜11で得られたビニル・シス−ポリブタジエンゴムを用いた場合、比較例3、4、5と比べ、配合物及び加硫物の押出加工性、引張応力並びに耐伸張疲労性が向上していることが分かる。
【0100】
本願発明は、自動車のタイヤ用材料をはじめとして、工業ベルト、ゴルフボール、履物部材、ゴムホース、および医療用ゴム材などにも幅広く適用できる。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

【0104】
【表4】

【0105】
【表5】

【0106】
【表6】

【0107】
【表7】

【0108】
【表8】

【0109】
【表9】

【0110】
【表10】

【0111】
【表11】

【0112】
【表12】

【0113】
【表13】

【0114】
【表14】

【0115】
【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(1)1,2−ポリブタジエンを1,3−ブタジエンと炭化水素系有機溶剤を主成分としてなる混合物に溶解させた混合溶液を調製し、当該混合溶液に水、有機アルミニウム化合物と可溶性コバルト化合物から得られるシス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程、引き続き、(2)得られた重合反応混合物中に可溶性コバルト化合物と一般式AlR(但し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基である)で表される有機アルミニウム化合物とニ硫化炭素とから得られる触媒を存在させて、1,3−ブタジエンを60℃未満で1,2重合する工程から得られたビニル・シス−ポリブタジエン、及び、
(B)シス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程で得られたシス−ポリブタジエン
を混合することを特徴とするビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法。
【請求項2】
(A)(1)1,2−ポリブタジエンを1,3−ブタジエンと炭化水素系有機溶剤を主成分としてなる混合物に溶解させた混合溶液を調製し、当該混合溶液に水、有機アルミニウム化合物と可溶性コバルト化合物から得られるシス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程、引き続き、(2)得られた重合反応混合物中に可溶性コバルト化合物と一般式AlR(但し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基である)で表される有機アルミニウム化合物とニ硫化炭素とから得られる触媒を存在させて、1,3−ブタジエンを60℃未満で1,2重合する工程から得られたビニル・シス−ポリブタジエン溶液、及び、
(B)シス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程で得られたシス−ポリブタジエン
を混合することを特徴とするビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法。
【請求項3】
(A)(1)1,2−ポリブタジエンを1,3−ブタジエンと炭化水素系有機溶剤を主成分としてなる混合物に溶解させた混合溶液を調製し、当該混合溶液に水、有機アルミニウム化合物と可溶性コバルト化合物から得られるシス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程、引き続き、(2)得られた重合反応混合物中に可溶性コバルト化合物と一般式AlR(但し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基である)で表される有機アルミニウム化合物とニ硫化炭素とから得られる触媒を存在させて、1,3−ブタジエンを60℃未満で1,2重合する工程から得られたビニル・シス−ポリブタジエン溶液、及び、
(B)シス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程で得られたシス−ポリブタジエン溶液
を混合することを特徴とするビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法。
【請求項4】
(A)(1)1,2−ポリブタジエンを1,3−ブタジエンと炭化水素系有機溶剤を主成分としてなる混合物に溶解させた混合溶液を調製し、当該混合溶液に水、有機アルミニウム化合物と可溶性コバルト化合物から得られるシス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程、引き続き、(2)得られた重合反応混合物中に可溶性コバルト化合物と一般式AlR(但し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基である)で表される有機アルミニウム化合物とニ硫化炭素とから得られる触媒を存在させて、1,3−ブタジエンを60℃未満で1,2重合する工程から得られたビニル・シス−ポリブタジエン、及び、
(B)シス−1,4結合を80%以上含有し、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)20〜80を有するシス−ポリブタジエンを1,3−ブタジエンおよび/または炭化水素系有機溶剤を主成分としてなる混合物に溶解させる工程で得られたシス−ポリブタジエン溶液を混合することを特徴とするビニル−シスポリブタジエンゴムの製造方法。
【請求項5】
(A)(1)1,2−ポリブタジエンを1,3−ブタジエンと炭化水素系有機溶剤を主成分としてなる混合物に溶解させた混合溶液を調製し、当該混合溶液に水、有機アルミニウム化合物と可溶性コバルト化合物から得られるシス−1,4重合触媒を添加して1,3−ブタジエンをシス−1,4重合する工程、引き続き、(2)得られた重合反応混合物中に可溶性コバルト化合物と一般式AlR(但し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基である)で表される有機アルミニウム化合物とニ硫化炭素とから得られる触媒を存在させて、1,3−ブタジエンを60℃未満で1,2重合する工程から得られたビニル・シス−ポリブタジエン溶液、及び、
(B)シス−1,4結合を80%以上含有し、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)20〜80を有するシス−ポリブタジエンを1,3−ブタジエンおよび/または炭化水素系有機溶剤を主成分としてなる混合物に溶解させる工程で得られたシス−ポリブタジエン溶液を混合することを特徴とするビニル−シスポリブタジエンゴムの製造方法。
【請求項6】
該1,2−ポリブタジエンの融点が60℃〜150℃であることを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法。
【請求項7】
ビニル・シス−ポリブタジエンゴムに対する該1,2−ポリブタジエンの添加量が20%以下であることを特徴とする請求項1乃至6いずれか記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法。
【請求項8】
シス−1,4重合で得られたポリブタジエン高分子量成分の割合が5〜25%であり、前記高分子量成分の割合は当該ポリブタジエンをゲル浸透クロマトグラフィーで測定し、得られた溶出曲線を低分子量成分と高分子量成分にピーク分離することにより求めることを特徴とする請求項1乃至7いずれか記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8いずれか記載のビニル・シス−ポリブタジエンゴムの製造方法によって製造されたビニル・シス−ポリブタジエンゴム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−214735(P2012−214735A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−67951(P2012−67951)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】