説明

ビニル系重合体の製造方法

【課題】有機テルル化合物を重合開始剤として使用するビニル系モノマーのリビングラジカル重合により得られるビニル系重合体のテルル含有量が100ppm以下であり、且つ、重合系内に残存する有機テルル化合物の残存量も少ない、ビニル系重合体の製造方法によって、経時安定性及び取り扱い上の利便性を向上させた重合体を提供すること。
【解決手段】有機テルル化合物を重合開始剤とするリビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する重合工程、該重合体に酸化剤を作用させる酸化分解工程、さらに任意の回収工程、精製工程を経ることにより、含有テルル量が一層低減された重合体(製品樹脂)を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニル系重合体を製造方法に関するものであり、特に有機テルル化合物を重合開始剤とするリビングラジカル重合によって得られた重合体において、テルル含有量が100ppm以下であることを特徴とする、ビニル系重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リビングラジカル重合技術の発達はめざましく、様々な手法を用いたリビングラジカル重合技術が報告されている。その中でも有機テルル化合物を用いた重合法であるTERP(organotellurium-mediated living radical polymerization)法は、様々な種類のビニル系モノマーの重合に適用できる汎用性と通常のラジカル重合と変わらぬ実用的な反応条件で重合体の分子量や分子量分布を高度に制御できる点で特に注目されている重合法である(特許文献1乃至5参照)。
【特許文献1】国際公開第2004/014848号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/014962号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2004/072126号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2004/096870号パンフレット
【特許文献5】特開2005−126459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし一般にリビングラジカル重合法により得られる重合体はリビングポリマーであり、重合開始剤など添加剤に用いた化合物の残基が重合体の末端にドーマント種として残る。
また多くの場合、末端基がリビング状態のままでは経時安定性に問題を持ち、残存する末端基の構造によってはその重合体を用いた製品の性能に悪影響を及ぼすことがある。
【0004】
TERP法の場合、重合反応後未処理の状態では反応系に残存する有機テルル化合物によって特異な臭気や色相を呈し、当業者が一般的に行う再沈澱等の精製工程を経ても、臭気と着色を完全に取り去ることは難しい。
また、TERP法に使用する有機テルル化合物には揮発性を有するものもあり、重合反応後に有機テルル化合物が低分子量の形態で残存する場合、取り扱い作業者に臭気による不快感を与えることとなる。
【0005】
このように、TERP法は重合反応を高度に制御出来る有用な技術ではあるものの、得られた重合体には残存する有機テルル化合物による臭気、着色の影響等の問題があった。このためTERP法の工業的な利用には多くの課題が残り、有機テルル化合物及び該重合体末端のテルル残基の残存量が少ないビニル系重合体の製造方法への要求があった。
本発明は、TERP法の工業的な利用可能分野を広げるべく、テルル含有量が100ppm以下であるビニル系重合体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を解決するため検討した結果、有機テルル化合物を重合開始剤として用いたリビングラジカル重合の反応終了後、重合体(重合体溶液)を酸化剤と反応させ、さらに続いて、当業者が一般的に行う濾過、再沈澱、分液操作等の回収・精製工程を経ることにより、テルル含有量が100ppm以下であるビニル系重合体が容易に得られることを見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
すなわち本発明は、有機テルル化合物を重合開始剤とするリビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する重合工程、及び、該重合体に酸化剤を作用させる酸化分解工程を含む、テルル含有量が100ppm以下であるビニル系重合体の製造方法に関する。
【0008】
好ましい態様の本発明は、前記酸化剤が過酸化水素又は過酸化物であることを特徴とする、前記方法に関する。
また、好ましい態様の本発明は、前記酸化分解工程に続いて、さらに、重合体(重合体溶液)に対して抽出操作及び/またはろ過操作を行う回収工程を含むことを特徴とする、前記方法に関する。
【0009】
そして本発明は、前記製造方法により得られるビニル系重合体に、さらに還元剤を作用させる精製工程を含むことを特徴とする、ビニル系重合体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る方法によれば、有機テルル化合物を重合開始剤として用いたリビングラジカル重合(TERP法)により得られたビニル系重合体から反応系内に残存する有機テルル化合物及び該重合体末端のテルル残基を簡便な方法で除去することができ、テルル含有量が100ppm以下であるビニル系重合体を得ることができる。これにより、これまでTERP法の欠点とされた反応系内に残存する有機テルル化合物による臭気、着色等の問題を改善することができる。
そして本発明の方法をTERP法と組み合わせて用いることにより、TERP法の利用分野をレジスト樹脂に代表される電子産業分野、液晶材料分野、医薬品分野等に拡大することが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
これまでにも残存するテルル化合物の含有量が少ないビニル系重合体を製造するために、再沈殿などの一般的な精製方法以外にも、トリブチルスズヒドリドなどによるラジカル還元方法(特許文献5参照)などによって重合開始剤や重合体末端のテルル残基を除去する方法が提案されているが、この方法においてはテルルの除去に一定の効果はあるものの、使用した還元剤に由来する化合物の除去に煩雑な工程を必要とする上、重合体中にかなりのスズ化合物が残存するという点で課題を残すものであった。
本発明は、有機テルル化合物を重合開始剤とするリビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する重合工程、及び、該重合体に酸化剤を作用させる酸化分解工程、その後濾過、分液操作、再沈澱、イオン交換、還元剤との接触等の回収・精製工程を実施することにより、テルル含有量が100ppm以下であるビニル系重合体を簡便に得られる製造方法である。
以下、各工程に沿って本発明を説明する。
【0012】
<重合工程>
[ビニル系モノマー]
本発明における重合工程に用いられる単量体はビニル系モノマーであり、該ビニル系モノマーとしてはラジカル重合可能であれば特に制限はされないが、具体的には下記化合物を挙げることができる。
また本発明の重合体は下記ビニル系モノマーを含む複数のモノマーからなる共重合体であっても良い。なお、下記の(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及び/又はメタクリル酸を表す。
【0013】
a)(メタ)アクリル酸エステル:(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メ
タ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル又は(メタ)アクリル酸と2−メチル−2−アダマンタノール、2−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン、ヒドロキシノルボルナンラクトン又は1,3−ジヒドロキシアダマンタン等とのエステルなど。
b)シクロアルキル基含有不飽和モノマー:(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル等。
c)カルボキシル基含有不飽和モノマー:(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸等メチル等。
d)3級アミン含有不飽和モノマー:N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等。
e)4級アンモニウム塩基含有不飽和モノマー:N−2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、N−メタクリロイルアミノエチル−N,N,N−ジメチルベンジルアンモニウムクロライド等。
f)エポキシ基含有不飽和モノマー:(メタ)アクリル酸グリシジル等。
g)芳香族不飽和モノマー(スチレン系モノマー):スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン(p−メチルスチレン)、2−メチルスチレン(o−メチルスチレン)、3−メチルスチレン(m−メチルスチレン)、4−メトキシスチレン(p−メトキシスチレン)、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、2−ヒドロキシメチルスチレン、p−アセトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン又はp−エトキシエトキシスチレン、2−クロロスチレン(o−クロロスチレン)、4−クロロスチレン(p−クロロスチレン)、2,4−ジクロロスチレン、1−ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、p−スチレンスルホン酸又はそのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)等。
h)ヘテロ環含有不飽和モノマー:2−ビニルチオフェン、N−メチル−2−ビニルピロール、1−ビニル−2−ピロリドン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等。
i)ビニルアミド:N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等。
j)(メタ)アクリルアミド系モノマー:(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等。
k)α−オレフィン:1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等。
l)ジエン類:ブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等。
m)カルボン酸ビニルエステル:酢酸ビニル、安息香酸ビニル等。
n)その他:(メタ)アクリロニトリル、メチルビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等。
【0014】
[重合開始剤]
本発明における重合工程において使用する重合開始剤は有機テルル化合物であり、該有機テルル化合物としては、式(1)であらわされる化合物を用いることができる。
【化1】

(式中R1は炭素原子数1乃至炭素原子数8のアルキル基、アリール基、置換アリール基
又は芳香族ヘテロ環基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1
乃至炭素原子数8のアルキル基を表し、R4はアリール基、置換アリール基、芳香族へテ
ロ環基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基またはシアノ基を表す。)
【0015】
上記R1において、炭素原子数1乃至炭素原子数8のアルキル基の例としては、メチル
基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の炭素原子数1乃至炭素原子数8の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を挙げることができ、好ましくは炭素原子数1乃至炭素原子数4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、より好ましくはメチル基、エチル基又はn−ブチル基を挙げることができる。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができ、好ましくはフェニル基を挙げることができる。
また、置換アリール基としては、置換基を有しているフェニル基、置換基を有しているナフチル基等を挙げることができる。該置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、−CORaで示されるカルボニル含有基(Ra=炭素原子数1乃至炭素原子数8のアルキル基、アリール基、炭素原子数1乃至炭素原子数8のアルコキシ基、アリーロキシ基)、スルホニル基、トリフルオロメチル基等を挙げることができ、好ましくは、トリフルオロメチル置換フェニル基を挙げることができる。これら置換基は、1個又は2個置換しているのが良く、パラ位若しくはオルト位で置換していることが好ましい。
さらに、芳香族へテロ環基としては、ピリジル基、ピロール基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。
【0016】
上記R2又はR3において、炭素原子数1乃至炭素原子数8のアルキル基の例としては、上記R1で示したアルキル基と同様のものを挙げることができる。
上記R4において、アリール基、置換アリール基、芳香族へテロ環基の例としては上記
1で示した各基と同様のものを挙げることができる。
アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等を挙げることができる。
アミド基としては、アセトアミド、マロンアミド、スクシンアミド、マレアミド、ベンズアミド、2−フルアミド等のカルボン酸アミド、チオアセトアミド、ヘキサンジチオアミド、チオベンズアミド、メタンチオスルホンアミド等のチオアミド、セレノアセトアミド、ヘキサンジセレノアミド、セレノベンズアミド、メタンセレノスルホンアミド等のセレノアミド、N−メチルアセトアミド、ベンズアニリド、シクロヘキサンカルボキサニリド、2,4'−ジクロロアセトアニリド等のN−置換アミド等を挙げることができる。
またオキシカルボニル基としては、−COORb(Rb=H、炭素原子数1乃至炭素原子数8のアルキル基、アリール基)で示される基を挙げることができ、具体的には、カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、ter−ブトキシカルボニル基、n−ペントキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等を挙げることができる。このうち好ましくは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基を挙げることができる。
【0017】
上記式(1)で示される好ましい有機テルル化合物としては、R1が、炭素原子数1乃
至炭素原子数4のアルキル基を示し、R2及びR3が、水素原子又は炭素原子数1乃至炭素原子数4のアルキル基を示し、R4が、アリール基、置換アリール基、オキシカルボニル
基で示される化合物が良い。
特に好ましくは、R1が、炭素原子数1乃至炭素原子数4のアルキル基を示し、R3及びR4が、水素原子又は炭素原子数1乃至炭素原子数4のアルキル基を示し、R5が、フェニル基、置換フェニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が良い。
【0018】
上記式(1)で示される有機テルル化合物は、具体的な代表例は次の通りである。
(メチルテラニルメチル)ベンゼン、(1−メチルテラニルエチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(1−メチルテラニルエチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(1−メチルテラニルエチル)ベンゼン、3,5−ビス−トリフルオロメチル−1−(1−メチルテラニルエチル)ベンゼン、1,2,3,4,5−ペンタフルオロ−6−(1−メチルテラニルエチル)ベンゼン、2−メチルテラニルプロピオニトリル、(2−メチルテラニルプロピル)ベンゼン、メチル 2−メチルテラニル−2−メチル−プロピネート、エチル 2−メチルテラニル−2−メチル−プロピネート、2−メチルテラニル−2−メチル−プロピオニトリル等を挙げることができる。また、上記において、メチルテラニルの部分がエチルテラニル、n−ブチルテラニル、n−オクチルテラニル等と変更した化合物も全て含まれる。その他国際公開第2004/014962号パンフレット(4頁25行目〜7頁18行目)に記載された有機テルル化合物の全てを例示することができる。
【0019】
上記有機テルル化合物は、その使用量を適宜調整することにより、目的とする数平均分子量の重合体を得ることができる。好ましい使用量としては、概ね原料ビニルモノマーの質量(単位はグラム)を目的とする重合体の数平均分子量で割った値(使用量の単位はモル数)であり、場合によりその値の0.3倍〜3倍程度の量を使用する。
【0020】
なお、重合するビニル系モノマーの種類により、上記重合開始剤として用いた式(1)の有機テルル化合物に加えて、式(2)
(R1Te)2 (2)
(式中、R1は前出の定義と同じ。)で表されるジテルリド化合物をさらに添加しても良
い。
該ジテルリド化合物の具体例としては、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジイソプロピルジテルリド、ジシクロプロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリド、ジ−sec−ブチルジテルリド、ジ−tert−ブチルテルリド、ジシクロブチルテルリド、ジフェニルジテルリド、ビス−(p−メトキシフェニル)ジテルリド、ビス−(p−アミノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−ニトロフェニル)ジテルリド、ビス−(p−シアノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−スルホニルフェニル)ジテルリド、ジナフチルジテルリド、ジピリジルジテルリド等が挙げられる。
好ましくは、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリド、ジフェニルジテルリドである。
特に好ましくは、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリドが良い。
上記式(2)で表されるジテルリド化合物を使用する場合、重合開始剤として用いた式(1)の有機テルル化合物1molに対して好ましくは0.01乃至100mol、より好ましくは0.1乃至100mol、さらに好ましくは0.1乃至5molの割合で使用されることが望ましい。
【0021】
本発明における重合工程において使用する重合開始剤は、上記の有機テルル化合物に加え、アゾ系重合開始剤を使用してもよい。アゾ系重合開始剤としては、通常のラジカル重合に用いる開始剤であれば特に限定されないが、例示するなら2,2'−アゾビス(イソ
ブチロニトリル)(AIBN)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(A
MBN)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,
1'−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリアン酸
)(ACVA)、1,1'−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチルアミド)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−
ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)二塩酸
塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2'−ア
ゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'−ア
ゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、2,2'−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。
【0022】
これらのアゾ系重合開始剤は反応条件に応じて適宜選択するのが好ましい。
例えば低温重合(40℃以下)の場合は2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロ
ニトリル)(ADVN)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロ
ニトリル)、中温重合(40〜80℃)の場合は2,2'−アゾビス(イソブチロニトリ
ル)(AIBN)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)、ジ
メチル−2,2'−アゾビスイソブチレート(MAIB)、1,1'−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、高温重合(80℃以上)の場合は1,1'−アゾビス(
1−シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、2,2'−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス(
2,4,4−トリメチルペンタン)を用いるのが好ましい。
また水系溶剤を用いた反応では4,4'−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)(AC
VA)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチルアミド)、2,2'−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イ
ル)プロパン]、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロ
ピオンアミド]を用いるのが好ましい。
【0023】
上記アゾ系重合開始剤を使用する場合、重合開始剤として用いた式(1)の有機テルル化合物1molに対して好ましくは0.01乃至100mol、より好ましくは0.1乃至100mol、さらに好ましくは0.1乃至5molの割合で使用されることが望ましい。
【0024】
[重合方法]
本発明の重合工程において、その重合方法に関して特に制限はなく、無溶媒重合法でも良いが、生成する(共)重合体を溶解する溶剤を用いた溶液重合法で重合を行うことが好ましい。
なお、以降の記述は溶液重合法を用いた場合を前提とした重合反応操作及び精製操作について記したものである。
【0025】
溶液重合法に用いる溶媒としては、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、水等を挙げることができる。
重合反応時のモノマー濃度は1乃至100質量%の範囲から適宜選択できるが、重合反応液の取り扱い易さにおいて10乃至60質量%の濃度範囲であることが好ましい。
重合反応時の温度は使用するモノマーの種類及び重合開始剤の種類によるが、一般的なラジカル重合反応温度である0℃乃至150℃の温度範囲にて行われることが望ましい。
【0026】
<酸化分解工程>
重合工程終了後、重合体溶液に酸化剤を作用させる酸化分解工程を経ることにより、反応系内に残存する有機テルル化合物及び重合体末端のテルル残基を酸化分解する。
本発明における酸化分解工程において用いる酸化剤としては、一般的な有機合成反応に用いられる酸化剤であれば特に限定はされない。例示するならば、過酸化水素、酸素、過安息香酸、メタクロロ過安息香酸、モノペルオキシフタル酸、過ギ酸、過酢酸、トリフル
オロ過酢酸、tert−ブチルヒドロペルオキシド等の過酸化物、ジメチルスルホキシド、過ヨウ素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、N−クロロコハク酸イミド、N−ブロモコハク酸イミド、過マンガン酸カリウム、無水クロム酸、重クロム酸塩、クロム酸塩、塩化クロミル、クロム酸エステル、四酢酸鉛、二酢酸鉛、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、二酸化セレン等が挙げられる。好ましくは、取り扱いと反応後の精製の容易さから過酸化水素又は過酸化物が望ましい。
【0027】
上記酸化剤の使用量は使用する酸化剤の種類によっても異なるが、重合体溶液中に含まれるテルル(Te)原子の量に対して1倍乃至100倍程度のモル比で使用されることが好ましい。
【0028】
重合体溶液への上記酸化剤の投入方法に関して特に限定はないが、酸化剤の投入の方法によっては、重合体の物性に変質を招く場合があることから、目的とする重合体の末端基以外の構造に変化が起こらない条件で酸化剤が投入されることが好ましい。
前記酸化剤はそのまま投入してもよいが、副反応を防ぐために、その条件の例としては、酸化剤を溶媒にて50質量%乃至5質量%程度の濃度に、特に好ましくは25質量%乃至10質量%程度の濃度に希釈して使用することが挙げられる。酸化剤の希釈に用いる溶媒は前出の溶液重合時に用いる溶媒(重合溶媒)と同じであっても異なってもよく、前記重合溶媒の例で前に挙げたものを使用することができる。またそれら溶媒の混合液であってもよい。
投入方法に関する例としては、重合体活性末端と酸化剤の反応による発熱を抑えるためにも30分乃至2時間程度の時間で滴下することが挙げられる。重合体溶液は滴下される酸化剤が即座に反応に関与できる温度に維持されていることが好ましい。具体的に例示するなら、過酸化水素の場合、0℃乃至120℃であり、好ましくは10℃乃至100℃である。
なお、場合により、使用する酸化剤の総質量の0.01倍量乃至1倍量の酢酸、又はシュウ酸を反応系に添加して、反応を実施しても良い。
【0029】
<回収工程>
酸化分解工程が終了した後、濾過、分液操作、再沈澱、イオン交換等の回収工程を実施し、酸化反応後の重合体溶液よりテルル化合物を除去する。除去すべきテルル化合物は、酸化反応の条件と酸化反応後の重合体溶液の取り扱いにより様々な化学構造をとるため、以下に例示する方法を適宜選択して回収工程を行うことが効率的であり好ましい。
1)酸化反応を50℃から80℃程度の高温で実施した場合、反応系中の有機テルル化合物はほぼ定量的にテルル酸となる。生成したテルル酸は、中性乃至酸性の水溶液を用いて分液操作を実施することにより容易に重合体溶液から除去することができ、また、重合体溶液中にテルル酸が析出する場合には濾別することにより、容易に重合体溶液からテルル酸を回収することができる。
2)酸化反応を25℃程度の低温で実施し、その後反応液をアルカリと接触させた場合、反応系中の有機テルル化合物はほぼ定量的に亜テルル酸塩となる。生成した亜テルル酸塩は、中性乃至アルカリ性の水溶液を用いて分液操作を実施することにより、容易に重合体溶液から除去することができる。
3)酸化反応の条件によらず、メタノールや水などを使用し、重合体の再沈澱を実施することにより、あるいはイオン交換により、重合体溶液からテルル化合物を除去することができる。
4)更に上記酸化反応を経たテルル化合物は、還元剤の作用により水及び有機溶剤の何れにも不溶のテルル化合物へと変換することも可能である。すなわち、還元剤を作用させた後に析出物を濾過することによっても、重合体溶液からテルル由来の化合物を除去することができる。
【0030】
これら回収操作は単独で実施してもよいが、組み合わせて実施するとより効果的である。以下に各回収操作の具体的な方法を示す。
【0031】
上記分液操作の具体例としては、水と層分離可能であって重合体(製品樹脂)を溶解する有機溶媒と酸化反応後の重合体溶液を混合し、さらに洗浄用の水(水溶液)と混合後、分離した水層を抜き取る。この操作によりテルル化合物(オキソ酸化合物)の除去が可能であり、分液操作を繰り返すことで一層の効果がある。
分液操作に用いる特に好ましい有機溶媒の例としてはベンゼン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタンなどが挙げられる。また、上記以外の有機溶媒を使用しても良く、それぞれ単独で使用しても混合して使用しても良い。
分液操作に用いる洗浄用の水(水溶液)としては、イオン交換水、塩酸水溶液、硫酸水溶液、硝酸水溶液、リン酸水溶液、亜リン酸水溶液、次亜リン酸水溶液、酢酸水溶液、シュウ酸水溶液、亜硫酸ナトリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液、硫酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、チオ硫酸ナトリウム水溶液、亜硫酸ナトリウム水溶液等が例として挙げられる。目的とする不純物の種類によりそれぞれを使い分ける。また、上記以外の水溶液を使用しても良い。
【0032】
再沈澱の場合、重合体(製品樹脂)を溶解しない多量の溶液を撹拌し、この中に、重合体を溶解可能な有機溶媒(上記参照)に該重合体を溶解した重合体溶液を滴下し、析出する樹脂をろ過により集めることで重合体を精製する。
【0033】
イオン交換の場合、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、またはそれらの混合物のマクロポーラス型イオン交換樹脂を用いる。非水系、水系のイオン交換樹脂どちらも使用可能であるが、得られた重合体(製品樹脂)の種類により適宜使い分ける。
【0034】
通常、上記操作により重合体中の残存テルル濃度は20ppm以下、多くても100ppm以下に低減される。回収操作はここで完了しても良いが、さらに追加して還元剤を作用させる精製工程を経ることにより、残存テルル濃度を更に低減した重合体を得ることができる。
【0035】
<還元剤による精製工程>
還元剤による精製工程においては、還元剤と共に還元触媒を用いてもよい。使用する還元剤および還元触媒は亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、パラジウムカーボンと水素ガスの組み合わせ、白金カーボンと水素ガスの組み合わせ、ニッケルクロリド、ニッケルクロリドとAIBNの組み合わせ、次亜リン酸、次亜リン酸とAIBNの組み合わせなどが好ましい。
還元剤を作用させる時期としては、酸化反応終了以降であれば良いが、効率的にテルル化合物を反応系内より除去するためには、重合体と酸化されたテルル化合物が分離された後に作用させることが好ましい。重合体の溶液に還元剤を作用させた後、発生する析出物を濾過することにより、重合体よりテルル化合物を完全に除去することが可能である。酸化されたテルル化合物と還元剤を作用させることにより、テルル化合物を金属テルルの状態で回収することも可能である。
【0036】
還元剤または還元触媒の使用量は、使用する還元剤の種類によっても異なるため、一概に規定することは出来ないが、例えばパラジウムカーボンと水素ガスの組み合わせ、又は白金カーボンと水素ガスの組み合わせの場合、パラジウムカーボンまたは白金カーボンの使用量は重合体の総質量に対して0.01倍量乃至1倍量、取扱いの容易さから重合体の
総質量に対して0.01倍量乃至0.1倍量であることが好ましい。
反応温度も特に限定されるものではなく、例えば0℃乃至100℃にて実施可能である。なお、反応系は常に水素ガスで置換された状態で実施されることが望ましい。
反応後、使用した還元剤または還元触媒は、当業者が一般的に実施するろ過や分液による水洗により除去可能である。
通常、上記還元剤又は還元触媒を作用させる一連の工程を経ることにより、重合体中の残存テルル濃度は2ppm以下、多くても20ppm以下に低減される。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限を受けるものではない。なお、実施例および比較例中の化合物の物性等は以下の方法により測定した。
【0038】
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
下記合成例1乃至3で合成した各重合体溶液100mgを5mlのテトラヒドロフランに溶解し、合成例4の場合は重合体ビーズ50mgを5mlのテトラヒドロフランに溶解し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過した試料溶液を昭和電工(株)製GPC装置(Shodex(登録商標)ゲル・パーミエイション・クロマトゲラフィーGPC−101)を用いて測定した。分離カラムはShodex GPC KF−G、KF−805、KF−803、KF−802を直列して用い、溶出溶媒はテトラヒドロフラン、流量1.0ml/分、検出器は示差屈折計、測定温度40℃、注入量0.1ml、標準ポリマーとしてスチレンを使用した。
【0039】
[残存テルル定量方法]
PFA試料小容器に下記実施例1乃至5及び比較例1の各重合体100mg、超高純度硝酸2.0mL、及び超高純度過酸化水素0.2mLを添加したものを、加圧分解容器中にセットし、180℃で4時間乾熱器で加熱した。これを超純水で希釈して測定試料とし、(株)日立製作所製ゼーマン原子吸光光度計で測定した。溶媒は超純水を用い、検量線は0から40ppbまで作成した。場合により関東化学(株)製パラジウムマトリックス修飾剤と超高純度硝酸を超純水で希釈し、炉内に後添加して測定した。
【0040】
<合成例1>
窒素置換されたグローブボックス内にて、2−メチル−2−メチルテラニル−プロピオニトリル0.527g、ジメチルジテルリド0.713g、AIBN0.205g、メチルメタクリレート30.0g、窒素バブリングで脱気した1,4−ジオキサン30.0gを反応容器に仕込み、60℃にて18時間重合反応を行った。
得られた重合体溶液1をGPCで分析した結果、Mn=10400、Mw/Mn=1.19、GPC測定によるRIチャートのピーク面積を基準に解析したモノマーの転化率は98%であった。
【0041】
<合成例2>
窒素置換されたグローブボックス内にて、2−メチル−2−メチルテラニル−プロピオニトリル0.527g、ジメチルジテルリド0.713g、AIBN0.205g、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート16.1g、γ−ブチロラクトンメタクリレート5.83g、ヒドロキシアダマンタンメタクリレート8.10g、窒素バブリングで脱気した1,4−ジオキサン30.0gを反応容器に仕込み、60℃にて18時間重合反応を行った。
得られた重合体溶液2をGPCで分析した結果、Mn=6804、Mw/Mn=1.18、GPC測定によるRIチャートのピーク面積を基準に解析したモノマーの転化率は95%であった。
【0042】
<合成例3>
窒素置換されたグローブボックス内にて、エチル−2−メチル−2−メチルテラニル−プロピオネート3.01g、ジメチルジテルリド0.37g、ACHN1.25g、メタクリル酸13.42g、メタクリル酸−t−ブチル29.86g、スチレン36.72g、窒素バブリングで脱気した1,4−ジオキサン97.80gを反応容器に仕込み、80℃にて24時間重合反応を行った。
得られた重合体溶液3をGPCで分析した結果、Mn=6800、Mw/Mn=1.51、GPC測定によるRIチャートのピーク面積を基準に解析したモノマーの転化率は92%であった。
【0043】
<合成例4>
窒素置換された反応容器内にエチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート150g、ジブチルジテルリド190g、ADVN60g、メチルメタクリレート50kgを反応容器に仕込み、ゴーセノール(ポリビニルアルコール、日本合成化学工業株式会社製 GH−17)の0.6wt%水溶液75kgを加え、40℃にて24時間、懸濁重合反応を行った。得られた懸濁液から重合体ビーズをろ別した後、水で洗浄することにより未乾燥状態で62kgの重合体ビーズを得た。得られた重合体ビーズをGPCで分析した結果、Mn=60264、Mw/Mn=1.47であった。
【0044】
《実施例1》
合成例1で得られた重合体溶液1の48.0gを反応容器に仕込み、1,4−ジオキサン48.0g、酢酸0.120gを加えた。反応液を撹拌しつつ80℃に維持した状態で、1,4−ジオキサン13.6gと30%過酸化水素水溶液6.81gの混合溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後80℃で12時間撹拌を続けた。
冷却後反応液をベンゼン124gで希釈し、分液ロート中にて120gのイオン交換水で5回、合計600gのイオン交換水にて有機層の洗浄を行った。有機層を1200gのヘキサン溶液に注ぎ、生じた沈澱物をろ別し、回収した沈澱物を減圧乾燥することで所望の重合体1(23.4g)を得た。
重合工程、酸化分解工程及び回収工程を経た重合体1のトータルでの収率は97%であった。
【0045】
《実施例2》
合成例2で得られた重合体溶液2の48.0gを反応容器に仕込み、1,4−ジオキサン48.0g、酢酸0.120gを加えた。反応液を撹拌しつつ80℃に維持した状態で、1,4−ジオキサン13.6gと30%過酸化水素水溶液6.81gの混合溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後80℃で12時間撹拌を続けた。
冷却後反応液をベンゼン124gで希釈し、120gのイオン交換水で5回、合計600gのイオン交換水にて有機層の洗浄を行った。有機層を1200gのヘキサン溶液に注ぎ、生じた沈澱物をろ別し、回収した沈澱物を減圧乾燥することで所望の重合体2(21.6g)を得た。
重合工程、酸化分解工程及び回収工程を経た重合体2のトータルでの収率は90%であった。
【0046】
《実施例3》
合成例3で得られた重合体溶液3の181gを反応容器に仕込み、1,4−ジオキサン142gを加えた。反応液を撹拌しつつ80℃に維持した状態で、1,4−ジオキサン28.8gと30%過酸化水素水溶液9.6gの混合溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後80℃で12時間撹拌を続けた。
冷却後反応液を酢酸エチル450gで希釈し、分液ロート中にて267gのイオン交換
水で5回、合計1335gのイオン交換水にて有機層の洗浄を行った。有機層を濃縮後1,4−ジオキサン605gを加え再度濃縮し、375gの1,4−ジオキサン溶液とした。
続いてジ亜リン酸50%水溶液7.5gを加え、AIBN1.35gを加えて80℃に昇温し、AIBNを1時間毎に1.35gずつ3回(合計4.05g)加えた後、4時間反応を継続した(合計6時間)。
反応液を冷却後、0.04μナイロンフィルターにてろ過した。ろ液に酢酸エチル280gを加えて希釈し、分液ロート中にて350gのイオン交換水で6回、合計2100gのイオン交換水にて有機層の洗浄を行った。有機層を4000gのヘキサン溶液に注ぎ、生じた沈殿物をろ別し、回収した沈殿物を減圧乾燥することで所望の重合体4(58.2gを得た。
重合工程、酸化分解工程、回収工程さらに還元剤を用いた精製工程を経た重合体3のトータルでの収率は73%であった。
【0047】
《実施例4》
合成例1で得られた重合体溶液1の6.0gを反応容器に仕込み、1,4−ジオキサン6.0g、酢酸0.015gを加えた。反応液を撹拌しつつ80℃に維持した状態で、1,4−ジオキサン2.52gとメタクロロ過安息香酸0.840gの混合溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後80℃で12時間撹拌を続けた。
冷却後反応液をベンゼン15.5gで希釈し、分液ロート中にて5%亜硫酸ナトリウム水溶液12.5gにて有機層を洗浄後、15gの3%シュウ酸水溶液にて洗浄した。次に15gのイオン交換水で5回、合計75gのイオン交換水にて有機層の洗浄を行った。有機層を150gのヘキサン溶液に注ぎ、生じた沈澱物をろ別し、回収した沈澱物を減圧乾燥して所望の重合体4(2.68)gを得た。
重合工程、酸化分解工程及び回収工程を経た重合体4のトータルでの収率は89%であった。
【0048】
《実施例5》
合成例4で得られた重合体ビーズ62kgを反応容器に仕込み、酢酸エチル283kgに溶解させた後、70%tert−ブチルヒドロペルオキシド水溶液1.94kgを加え室温で2時間攪拌した。反応液にイオン交換水18.7kg、48%水酸化ナトリウム水溶液1.04kg、32%チオ硫酸ナトリウム水溶液7.83kgを加え、分液操作にて有機層の洗浄を実施した。続いて5wt%硫酸ナトリウム水溶液50kgにて2回、有機層の洗浄を実施した後、硫酸マグネシウム10kgにて有機層の乾燥を実施した。有機層をろ過後、2740kgのメタノールに注ぎ生じた沈澱物をろ別し、回収した沈澱物を減圧乾燥することで所望の重合体5(37kg)を得た。
重合工程、酸化分解工程及び回収工程を経た重合体5のトータルでの収率は74%であった。
【0049】
《実施例6》
実施例1と同様の方法及び条件により重合体1を調製し、その重合体1の24.0gを反応容器に仕込み、1,4−ジオキサン216.0g、パラジウムカーボンとして和光純薬工業(株)製パラジウム−活性炭素(Pd10%)1.2gを加えた。水素雰囲気下、25℃にて24時間撹拌後、反応液を0.03μテフロンフィルターにてろ過した。ろ液を1200gのヘキサン溶液に注ぎ、生じた沈澱物をろ別し、回収した沈澱物を減圧乾燥することで所望の重合体6(21.6g)を得た。収率は90%であった。
【0050】
《比較例1》
合成例1で得られた重合体溶液1の2.0gを分液ロートに注ぎ、1,4−ジオキサン2.0g、酢酸0.05g、ベンゼン6.0gで希釈し、5.0gのイオン交換水で5回
、合計25gのイオン交換水にて有機層の洗浄を行った。
有機層を50gのヘキサン溶液に注ぎ、生じた沈澱物をろ別し、回収した沈澱物を減圧乾燥することで所望の比較重合体1(0.93g)を得た。
【0051】
[性状比較結果]
合成例1乃至4、実施例1乃至5及び比較例1より得られた重合体溶液、重合体ビーズ及び重合体の性状比較結果を表1に示す。
【表1】

【0052】
上記に示すとおり、本発明の方法を用いて得られたビニル系重合体は、重合開始剤として用いた有機テルル化合物による着色や臭気のない重合体となり、また、従来の製造方法において実施される精製工程(回収工程)を経た重合体と比較して、含有するTeの量も低減されているとする結果が得られた。
以上より、本発明を利用することにより、TERP重合技術の利用分野の拡大が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機テルル化合物を重合開始剤とするリビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する重合工程、及び、該重合体に酸化剤を作用させる酸化分解工程を含む、テルル含有量が100ppm以下であるビニル系重合体の製造方法。
【請求項2】
前記酸化剤が過酸化水素又は過酸化物であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに、酸化剤を作用せしめた重合体溶液に対して抽出操作及び/またはろ過操作を行う回収工程を含むことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の方法により得られるビニル系重合体に、さらに還元剤を作用させる精製工程を含むことを特徴とする、ビニル系重合体の製造方法。


【公開番号】特開2009−19165(P2009−19165A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184526(P2007−184526)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(302060306)大塚化学株式会社 (88)
【出願人】(000221797)東邦化学工業株式会社 (188)
【Fターム(参考)】