説明

ビニル重合体の製造方法及びポリウレタンの製造方法

【課題】片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体、及び該ビニル重合体とポリールとポリイソシアネートを反応して得られたポリウレタン、及び該ポリウレタン分散液からなるインクジェット印刷インク用バインダーの製造方法を提供する。
【解決手段】50℃〜200℃の範囲のラジカル重合温度に加熱することによって、5mPa・s〜10000mPa・sの範囲の粘度に調整された活性水素原子含有化合物(A)の存在下で、ビニル単量体(B)と、メルカプト基及び片末端に2個以上の水酸基を有する連鎖移動剤(C)とを混合し、ラジカル重合することにより片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体(D)であり、ポリイソシアネート(F)を反応させることによってポリウレタン(G)を製造し、水性媒体(H)とを混合し転相乳化してなるインクジェット印刷インク用バインダーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体の製造方法に関する。また、本発明は、前記ビニル重合体を用いてポリウレタンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル重合体は、コーティング剤や粘着剤をはじめとする様々な用途に使用されている。前記ビニル重合体は、一般にビニル単量体の有するビニル基のラジカル重合反応によって製造できることが知られている。
【0003】
しかし、前記ラジカル重合反応は、通常、酸素等の影響によって停止反応を引き起こしやすいため、例えば、窒素等の不活性ガスの存在下で前記反応を行ったり、バブリング等の方法で溶存酸素を除去した原料や溶媒を使用することによって、前記酸素の影響を最小限に抑制する必要があった。
【0004】
前記ビニル重合体を製造する方法としては、具体的には、反応容器中を窒素ガスによって置換し、反応系中における溶存酸素量を20ppmに調整した条件下で、ビニル単量体をラジカル重合する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかし、前記方法は、重合反応工程の他に、不活性ガスによって反応容器中を置換する工程や、原料等中に含まれる溶存酸素を除去する工程を必要とするため、目的とする最終生成物の生産工程を煩雑にし、また、生産効率を低下させる要因となる場合があった。
【0006】
また、前記文献1に記載されたようなベンゼンやメチルエチルケトン等の有機溶剤の存在下でビニル単量体をラジカル重合する方法では、ラジカル重合反応を完結するために、概ね10時間もの重合時間を要する場合があった。また、前記方法では、副反応等の影響により、目的とする化合物の収率を実用上十分なレベルにまで高めることが困難な場合があった。
【0007】
以上のことから、酸素存在下であっても停止反応などを引き起こしにくく、前記重合時間の短縮や収率の向上を図ることによって、目的とするビニル重合体の生産効率を各段に向上可能な製造方法の発明が、産業界から求められていた。
【0008】
ところで、前記ビニル重合体としては、例えば、片末端に水酸基を2個有するビニル重合体が知られており、かかるビニル重合体は、ポリウレタン等の製造に使用する際のポリオール原料として、使用される場合がある。
【0009】
しかし、前記したような、ベンゼンやメチルエチルケトン等の溶媒を用いた従来の方法によって前記片末端に水酸基を2個有するビニル重合体を製造しようとしても、前記同様に重合時間の短縮と、前記ビニル重合体の高収率化とを実現できず、前記ビニル重合体の生産効率を向上できない場合があった。
【0010】
また、前記従来の方法で得られた片末端に水酸基を2個有するビニル重合体には、未反応で残留した連鎖移動剤や、副反応生成物等が含まれる場合が多く、それが、ウレタン化反応の遅延を引き起こし、目的とするポリウレタンの生産効率の低下をも引き起こす場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−226702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、酸素存在下であっても停止反応等の副反応を引き起こしにくく、重合時間の短縮と主生成物の収率の向上とを実現し、その結果、目的とするビニル重合体の生産効率を著しく向上することの可能な片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体の製造方法を提供することである。
【0013】
また、本発明が解決しようとする課題は、前記片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体の製造時間の短縮と高収率化を実現するとともに、それを用いてポリウレタンを製造する際のウレタン化反応の遅延を防止し、該ポリウレタンの製造時間の短縮と高収率化をも実現可能なポリウレタンの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、前記課題を解決すべく検討するなかで、ラジカル重合反応を行う際の溶媒として、前記メチルエチルケトン等の有機溶剤の代わりに比較的高粘度の活性水素原子含有化合物を用い、該活性水素原子含有化合物中でビニル単量体のラジカル重合反応を行った場合に、得られる所望のビニル重合体の生産効率を向上できることを見出した。
【0015】
また、前記方法で得られた片末端に2個以上の水酸基を有するビニル単量体を用い、該ビニル重合体とポリオールとを含む混合物を用いることによって、ポリウレタンの生産効率をも向上できることを見出した。
【0016】
即ち、本発明は、50℃〜200℃の範囲のラジカル重合温度に加熱することによって、5mPa・s〜10000mPa・sの範囲の粘度に調整された活性水素原子含有化合物(A)の存在下で、ビニル単量体(B)と、メルカプト基及び片末端に2個以上の水酸基を有する連鎖移動剤(C)とを混合し、ラジカル重合することを特徴とする片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体(D)の製造方法に関するものである。
【0017】
また、本発明は、50℃〜200℃の範囲のラジカル重合温度に加熱することによって、5mPa・s〜10000mPa・sの範囲の粘度に調整された活性水素原子含有化合物(A)である500〜10000の数平均分子量を有するポリオール(A−1)の存在下で、ビニル単量体(B)と、メルカプト基及び片末端に2個以上の水酸基を有する連鎖移動剤(C)とを混合し、ラジカル重合することによって得られた片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体(D)と前記ポリオール(A−1)との混合物を含むポリオール(E)、ならびに、ポリイソシアネート(F)を反応させることを特徴とするポリウレタン(G)の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のビニル重合体の製造方法であれば、酸素存在下であっても前記ビニル重合体の停止反応等の副反応を防止し、重合時間の短縮と目的とするビニル重合体の収率向上とを実現できることから、その生産効率を著しく向上することが可能となる。
【0019】
また、前記ポリウレタンの製造方法であれば、前記ビニル重合体としての片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体(D)を製造する際に、連鎖移動剤を使用することによって生じうるウレタン化反応の遅延を防止できることから、ポリウレタンの生産効率を向上することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、50℃〜200℃の範囲のラジカル重合温度に加熱することによって、5mPa・s〜10000mPa・sの範囲の粘度に調整された活性水素原子含有化合物(A)の存在下で、ビニル単量体(B)と、メルカプト基及び片末端に2個以上の水酸基を有する連鎖移動剤(C)と、必要に応じてその他の成分とを混合することによって、前記連鎖移動剤(C)の有するメルカプト基を起点とした前記ビニル単量体(B)のラジカル重合を進行させ、目的とする片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体(D)を製造する方法に関するものである。
【0021】
本発明では、前記ビニル単量体(B)等を重合する際の溶媒として、例えば従来のメチルエチルケトンやアセトン等のケトン系溶剤やベンゼン等を実質的に使用せず、それらと比較して高粘度の活性水素原子含有化合物(A)を使用することが、重合時間の短縮と、目的とするビニル重合体の収率を向上するうえで重要である。
【0022】
前記活性水素原子含有化合物(A)としては、ビニル単量体(B)をラジカル重合する際の温度において、5mPa・s〜10000mPa・sの範囲の粘度のものを使用することが必須である。前記ビニル単量体(B)のラジカル重合は、通常、50℃〜200℃の温度範囲で行うことが多いため、活性水素原子含有化合物(A)を加熱し前記範囲内の所定の温度に調整した際の粘度が、5mPa・s〜10000mPa・sの範囲内であるものを使用することが必須である。例えば、ビニル単量体(B)のラジカル重合を80℃で行う場合であれば、前記活性水素原子含有化合物(A)を80℃に調整した際の粘度が5mPa・s〜10000mPa・sの範囲内であるものを使用する。
【0023】
ここで、前記したメチルエチルケトンやアセトンは、50℃においてそれぞれ約0.3mPa・s及び約0.2mPa・sであるため、いずれも5mPa・s以下の粘度を有するものである。これらを前記ラジカル重合の際の溶媒に用い、該溶媒と、前記ビニル単量体(B)と前記連鎖移動剤(C)等とを混合しラジカル重合しようとしても、前記ラジカル重合時間を十分に短縮できず、また、目的とするビニル重合体(D)の収率を向上することができない場合がある。
【0024】
また、前記活性水素原子含有化合物(A)の代わりに、例えば50℃〜200℃の範囲のラジカル重合温度に調整した際の粘度が前記範囲外となりうる、例えば芳香族環濃度が5000mmol/kg以上であるポリエステルポリオール等を使用した場合には、ビニル単量体(B)が前記活性水素原子含有化合物(A)中に均一に溶解等しにくく、重合反応を十分に進行できない場合がある。
【0025】
したがって、前記活性水素原子含有化合物(A)としては、50℃〜200℃の範囲内の所定のラジカル重合温度において、10mPa・s〜7500mPa・sの粘度に調整されたものを使用することが好ましく、10mPa・s〜5000mPa・sの粘度に調整されたものを使用することがより好ましい。
【0026】
なお、本発明は、前記ビニル重合体(D)を製造する際の溶媒として、前記活性水素原子含有化合物(A)以外のその他の溶媒の使用を排除するものではなく、一部に前記活性水素原子含有化合物(A)以外の活性水素原子含有化合物や、従来から知られるメチルエチルケトン等の溶媒を使用しても良い。しかし、かかる溶媒を使用する場合には、前記ビニル重合体(D)の良好な生産効率を損なわない範囲で使用することが好ましく、それらは前記ビニル重合体(D)を製造する際の溶媒の全量に対して30質量%以下の範囲で使用することが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
【0027】
前記ラジカル重合温度は、前記したとおり、通常50℃〜200℃の範囲であり、好ましくは50℃〜150℃の範囲であり、より好ましくは60℃〜120℃である。具体的なラジカル重合温度は、使用する重合開始剤や前記活性水素原子含有化合物(A)の種類及びその粘度等の種類によって決定される。
【0028】
前記50℃〜200℃の範囲内の所定のラジカル重合温度に加熱することによって前記所定の粘度に調整された活性水素原子含有化合物(A)は、ビニル単量体(B)やメルカプト基を有する連鎖移動剤(C)や、必要に応じてその他の成分等と混合する。
【0029】
前記混合の際には、ラジカル重合の停止反応等を抑制する観点から、前記活性水素原子含有化合物(A)等の原料中に含まれる溶存酸素量を、不活性ガスによるバブリング等によって低減してもよい。また、前記混合は、不活性ガスによって置換された反応容器内で行ってもよい。
【0030】
前記混合は、例えば前記ビニル単量体(B)や連鎖移動剤(C)やその他成分を、それぞれ別々に、または、それらの混合物を、前記活性水素原子含有化合物(A)の存在下に供給することによって行うことができる。前記供給は、一括供給であっても、滴下等の逐次供給であっても良い。
【0031】
前記活性水素原子含有化合物(A)と、ビニル単量体(B)とメルカプト基を有する連鎖移動剤(C)と、必要に応じてその他の成分等とを混合後、前記条件でラジカル重合を進行させることによって、前記連鎖移動剤(C)の有するメルカプト基を起点として前記ビニル単量体(B)がラジカル重合したビニル重合体(D)を得ることができる。
【0032】
前記ラジカル重合時間は、ラジカル重合温度や目的とするビニル重合体(D)の分子量等によっても異なるが、メチルエチルケトン等の従来の溶媒を使用した場合と比較して、概ね1/2の時間で行うことができる。具体的にはメタクリル酸を重合しメタクリル樹脂を製造する際に、溶媒としてメチルエチルケトンを使用した場合には概ね10時間もの重合時間を要する。しかし、前記メチルエチルケトンの代わりに、前記活性水素原子含有化合物(A)を使用すれば、約5時間の重合時間で、ほぼ同様のビニル重合体(D)を製造することが可能となる。
【0033】
また、本発明の製造方法によって得られたビニル重合体(D)は、未反応物として残留したビニル単量体(B)や連鎖移動剤(C)、及び副反応による副生成物を含む場合がある。しかし、それらの含有量は、溶媒としてメチルエチルケトン等を使用した従来の製造方法の場合と比較して、著しく低減することが可能であり、通常、その副生成物等の含有量は1質量%以下に抑制することが可能である。
【0034】
また、前記未反応物や副生成物の含有を抑制することによって、目的とするビニル重合体(D)の収率を飛躍的に向上することも可能となる。
【0035】
本発明の製造方法は、その使用目的などによっても異なるが、概ね500〜10000の範囲の数平均分子量を有するビニル重合体(D)の製造に適用することができる。なかでも、1000〜3000の数平均分子量を有する前記ビニル重合体(D)の製造に適用することが、良好な耐久性や柔軟性を備えたポリウレタン(G)の製造原料に使用するうえで好ましく、1000〜2500の範囲の数平均分子量を有する前記ビニル重合体(D)の製造に適用することがより好ましい。
後述する片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(D−1)としても、前記範囲の数平均分子量を有するものを使用することができる。
【0036】
また、本発明の製造方法によって得られたビニル重合体(D)は、従来の方法で得られたビニル重合体よりも、比較的シャープな分子量分布をとりうるものとなる。
【0037】
前記したような本発明のビニル重合体(D)の製造方法で使用可能な活性水素原子含有化合物(A)としては、50℃〜200℃の範囲における所定のラジカル重合温度に調整した際に、5mPa・s〜10000mPa・sの範囲の粘度であるものであればいずれも使用することができる。
【0038】
前記活性水素原子含有化合物(A)としては、例えば水酸基やアミノ基を有する化合物を使用することができ、具体的にはポリオール(A−1)やポリアミン(A−2)等を使用することができ、ポリオール(A−1)を使用することが好ましい。
【0039】
前記ポリオール(A−1)としては、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等を使用することができる。なかでも、前記活性水素原子含有化合物(A)と前記ビニル重合体(D)との混合物の粘度を低減し、後述するポリウレタン(G)の生産効率を向上する観点から、ポリエーテルポリオールを使用することが好ましい。
【0040】
前記ポリオール(A−1)は、例えば25℃の常温下においては固体状のものであっても、前記ラジカル重合温度において所定の粘度に調整可能なものであれば使用可能である。
【0041】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば活性水素原子を2個以上有する化合物の1種または2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。
【0042】
前記開始剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等を使用することができる。
【0043】
また、前記アルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等を使用することができる。
【0044】
前記ポリエーテルポリオールとしては、具体的には、ポリオキシテトラメチレングリコールやポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールを使用することが、前記ビニル単量体(B)をラジカル重合する際の粘度を調整しやすいため好ましい。
【0045】
また、前記ポリエステルポリオールとしては、例えば低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られる脂肪族ポリエステルポリオールや芳香族ポリエステルポリオール、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルや、これらの共重合ポリエステル等を使用することができる。
【0046】
前記低分子量のポリオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコ−ル等を使用することができる。
【0047】
また、前記ポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、及びこれらの無水物またはエステル形成性誘導体などを使用することができる。
【0048】
また、前記ポリエステルエーテルポリオールとしては、例えば前記開始剤に前記アルキレンオキサイドが付加したポリエーテルポリオールと、ポリカルボン酸とが反応したものを使用することができる。前記開始剤や前記アルキレンオキサイドとしては、前記ポリエーテルポリオールを製造する際に使用可能なものとして例示したものと同様のものを使用することができる。また、前記ポリカルボン酸としては、前記ポリエステルポリオールを製造する際に使用可能なものとして例示したものと同様のものを使用することができる。
【0049】
また、前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば炭酸エステルとポリオールとを反応させて得られるものや、ホスゲンとビスフェノールA等とを反応させて得られるものを使用することができる。
【0050】
前記炭酸エステルとしては、メチルカーボネートや、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネ−ト等を使用することできる。
【0051】
前記炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノール−A、ビスフェノール−F、4,4’−ビフェノール等の比較的低分子量のジヒドロキシ化合物や、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールや、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオール等を使用することができる。
【0052】
また、前記ポリオール(A−1)としては、前記したもの以外にも、比較的低分子量のポリオールを使用することができる。比較的低分子量のポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等を使用することができる。
【0053】
前記ポリオール(A−1)としては、50℃〜200℃の範囲における所定のラジカル重合温度に調整した際に、5mPa・s〜10000mPa・sの範囲の粘度を付与でき、その結果、酸素存在下であっても副生成物の抑制と目的とする生成物の収率向上とを実現するうえで、500〜10000の数平均分子量を有するものが好ましく、1000〜3000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することがより好ましい。また、前記所定の粘度を有するポリオール(A−1)としては、脂肪族ポリオールであることが好ましい。
【0054】
また、前記活性水素原子含有化合物(A)に使用可能なポリアミン(A−2)としては、例えばポリオキシエチレンジアミン等のポリオキシアルキレンジアミンや、ポリオキシエチレントリアミン等のポリオキシアルキレントリアミンをはじめ、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等を使用することができる。
【0055】
また、前記ポリアミン(A−2)としては、ポリオキシエチレングリコールやポリオキシプロピレングリコール等のポリオールの分子両末端に前記ポリアミンを反応させて得られたエーテル系ポリアミン等を使用することもできる。
【0056】
また、本発明のビニル重合体(D)の製造方法で使用するビニル単量体(B)としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸β−カルボキシエチル、2−(メタ)アクリロイルプロピオン酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸ハーフエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸基または酸無水基含有ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド;2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピペリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピロリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕モルホリン、4−〔N,N−ジメチルアミノ〕スチレン、4−〔N,N−ジエチルアミノ〕スチレン、2−ビニルピリジン;N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート;アミノメチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノ−n−ブチル(メタ)アクリレート、ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p−アミノスチレン等の窒素原子含有ビニル単量体;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和カルボン酸のニトリル類;2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のフッ素含有ビニル単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルスチレン等の芳香族環を有するビニル化合物;イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、エチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン;ポリオキシエチレンモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンモノエチルエーテル(メタ)アクリレート等のポリオキシエチレン基含有ビニル重合体等を使用することができる。
【0057】
前記ビニル単量体(B)としては、前記(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる1種以上を含むものを使用することが、前記連鎖移動剤(C)との反応を制御しやすく、ビニル重合体(D)の生産効率をより一層向上できるため好ましい。
【0058】
前記ビニル単量体(B)は、前記活性水素原子含有化合物(A)100質量部に対して5質量部〜500質量部の範囲で使用することが好ましく、10質量部〜350質量部の範囲で使用することが、ラジカル重合を効率よく進行させるうえで好ましい。
【0059】
前記連鎖移動剤(C)としては、例えば3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)、1−メルカプト−1,1−メタンジオール、1−メルカプト−1,1−エタンジオール、2−メルカプト−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メルカプト−2,3−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等のメルカプト基と2個以上の水酸基とを有する連鎖移動剤(C)を使用することができる。なかでも、後述するポリウレタン(G)として、鎖状のポリウレタンを製造する観点から、メルカプト基と2個の水酸基とを有する連鎖移動剤(C−1)を使用することが好ましく、具体的には3−メルカプト−1,2−プロパンジオールを使用することが、臭気が少なく作業性や安全性の点で優れ、かつ汎用であるため好ましい。
【0060】
前記連鎖移動剤(C)は、前記ビニル単量体(B)の全量に対して1質量部〜10質量部の範囲で使用することが、ビニル単量体(B)等のみ反応物の低減や、ビニル重合体(D)及びポリウレタン(G)等の生産効率を向上するうえでより好ましい。
【0061】
前記ビニル重合体(D)を製造する際には、前記連鎖移動剤(C)等のほかに、必要に応じて重合開始剤等を使用することができる。
【0062】
前記重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド、商品名「ナイパーBMT−K40」(日本油脂(株)製;m−トルオイルパーオキサイドとベンゾイルパーオキサイドの混合物)等の有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル、商品名「ABN−E」[日本ヒドラジン工業(株);2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)]等のアゾ系化合物等を使用することができる。なかでも、70℃〜120℃程度でラジカル発生するものが好ましく、具体的にはアゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等を使用することが好ましい。
【0063】
前記重合開始剤を使用する場合には、予め前記活性水素原子含有化合物(A)と混合してもよく、また、その他の成分のいずれかと予め混合してもよい。
【0064】
前記重合開始剤を使用する場合には、前記重合開始剤は、ビニル単量体(B)100質量部に対して0.01質量部〜10質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0065】
前記方法で得られた片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体(D)は、例えばポリウレタンやポリエステル等を製造する際のポリオール原料等に使用可能である。具体的には、前記ポリウレタン(G)は、前記方法で得られた片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体(D)、好ましくは片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(D−1)と、前記活性水素原子含有化合物(A)である500〜10000の数平均分子量を有するポリオール(A−1)との混合物を含むポリオール(E)、ポリイソシアネート(F)、ならびに、必要に応じて鎖伸長剤を反応させることによって製造することができる。前記ビニル重合体(D)の有する水酸基は、前記ポリイソシアネート(F)のイソシアネート基と反応しウレタン結合を形成しうる。
【0066】
前記ビニル重合体(D)を製造する際に溶媒として使用した前記活性水素原子含有化合物(A)は、前記ポリウレタン(G)の製造原料であるポリオール(E)の一部として消費される。
【0067】
前記ポリオール(E)と前記ポリイソシアネート(F)との反応は、例えば、前記ポリオール(E)が有する水酸基に対する、前記ポリイソシアネート(F)が有するイソシアネート基の当量割合が、0.8〜2.5の範囲で行うことが好ましく、0.9〜1.5の範囲で行うことがより好ましい。
【0068】
また、前記反応は、好ましくは20℃〜120℃の範囲で30分〜24時間程度の範囲で行うことが好ましい。
【0069】
前記ポリオール(E)とポリイソシアネート(F)との反応は、有機溶剤下または無溶媒下で行ってもよい。
【0070】
前記有機溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を、単独で使用または2種以上を使用することができる。
【0071】
前記ポリウレタン(G)を製造する際に使用するポリオール(E)は、前記ビニル重合体(D)と前記ポリオール(A)とを、前記ポリオール(E)の全量に対して合計50質量%〜100質量%の質量割合で行うことが、得られるポリウレタン(G)に良好な柔軟性や強靭性を付与するうえで好ましい。
【0072】
また、前記ポリオール(E)は、前記ビニル重合体(D)と前記活性水素原子含有化合物(A)の他に、必要に応じてその他のポリオールを組み合わせ使用することもできる。
【0073】
前記その他のポリオールとしては、前記活性水素原子含有化合物(A)に使用可能なものとして例示したポリオール(A−1)と同様のポリオールや、前記ポリオール(A−1)以外のポリオールを使用することができる。
【0074】
前記その他のポリオールとしては、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等の、前記ポリオール(A−1)に使用可能なものとして例示したものと同様のものを使用することができる。
【0075】
前記ポリウレタン(G)として水性媒体(H)中に溶解または分散可能な水性ポリウレタンを製造する際には、前記その他のポリオールとして親水性基含有ポリオール(e−1)を使用することができる。
【0076】
前記親水性基含有ポリオール(e−1)としては、親水性基を有するものを使用することができ、例えば、アニオン性基含有ポリオール、カチオン性基含有ポリオール、及びノニオン性基含有ポリオールを使用することができ、なかでもアニオン性基含有ポリオールまたはカチオン性基含有ポリオールを使用することが好ましい。
【0077】
前記アニオン性基含有ポリオールとしては、例えばカルボキシル基含有ポリオールや、スルホン酸基含有ポリオールを使用することができる。
【0078】
前記カルボキシル基含有ポリオールとしては、例えば2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2’−ジメチロールブタン酸、2,2’−ジメチロール酪酸、2,2’−ジメチロール吉草酸等を使用することができ、なかでも2,2’−ジメチロールプロピオン酸を使用することが好ましい。また、前記カルボキシル基含有ポリオールと各種ポリカルボン酸とを反応させて得られるカルボキシル基含有ポリエステルポリオールも使用することもできる。
【0079】
前記スルホン酸基含有ポリオールとしては、例えば5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5[4−スルホフェノキシ]イソフタル酸等のジカルボン酸、及びそれらの塩と、前記低分子量ポリオールとを反応させて得られるポリエステルポリオールを使用することができる。
【0080】
前記カルボキシル基含有ポリオールやスルホン酸基含有ポリオールは、前記ポリウレタン(G)の酸価が10〜70となる範囲で使用することが好ましく、10〜60となる範囲で使用することがより好ましい。なお、本発明で言う酸価は、前記ポリウレタン(G)の製造に使用したカルボキシル基含有ポリオール等の酸基含有化合物の使用量に基づいて算出した理論値である。
【0081】
前記アニオン性基は、それらの一部または全部が塩基性化合物等によって中和されていることが、良好な水分散性を発現するうえで好ましい。
【0082】
前記アニオン性基を中和する際に使用可能な塩基性化合物としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、モルホリン、モノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の沸点が200℃以上の有機アミンや、NaOH、KOH、LiOH等を含む金属水酸化物等を使用することができる。前記塩基性化合物は、得られるコーティング剤の水分散安定性を向上させる観点から、塩基性化合物/アニオン性基=0.5〜3.0(モル比)となる範囲で使用することが好ましく、0.9〜2.0(モル比)となる範囲で使用することがより好ましい。
【0083】
また、前記カチオン性基含有ポリオールとしては、例えば3級アミノ基含有ポリオールを使用することができ、具体的にはN−メチル−ジエタノールアミンや、1分子中にエポキシを2個有する化合物と2級アミンとを反応させて得られるポリオールなどを使用することができる。
【0084】
前記カチオン性基は、その一部または全部が、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、酒石酸、アジピン酸等の酸性化合物で中和されていることが好ましい。
【0085】
また、前記カチオン性基としての3級アミノ基は、その一部または全部が4級化されていることが好ましい。前記4級化剤としては、例えばジメチル硫酸、ジエチル硫酸、メチルクロライド、エチルクロライド等を使用することができ、ジメチル硫酸を使用することが好ましい。
【0086】
また、前記ノニオン性基含有ポリオールとしては、エチレンオキサイド由来の構造単位を有するポリアルキレングリコール等を使用することができる。
【0087】
前記親水性基含有ポリオール(e−1)は、前記ポリウレタン(G)の製造に使用する原料の合計質量に対して、1質量%〜45質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0088】
また、前記ポリウレタン(G)の製造に使用するポリイソシアネート(F)としては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネートあるいは脂環式構造を有するポリイソシアネートを使用することができる。なかでも、黄変色を防止する観点では脂肪族ポリイソシアネートを使用することが好ましく、前記変色防止とともに、耐擦過性や耐アルカリ性のより一層の向上を図る観点では、脂肪族環式構造含有ポリイソシアネートを使用することが好ましい。
【0089】
前記ポリウレタン(G)を製造する際には、必要に応じて鎖伸長剤を使用することもできる。前記鎖伸長剤は、ポリウレタンの有するイソシアネート基等と反応することでウレア結合を形成するため、例えば高硬度等の求められる場面で使用することが好ましい。一方、柔軟性や密着性の向上が求められる場合には、前記ポリウレタン(G)として、鎖伸長剤を使用せずに得られたポリウレタンや、その使用量を最小限に制限して得られたポリウレタン、具体的には、前記ポリウレタン中に含まれるウレア結合の割合が10質量%以下であるものを使用することが好ましい。
【0090】
前記鎖伸長剤としては、ポリアミンや、その他活性水素原子含有化合物等を使用することができる。
【0091】
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;N−ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N−エチルアミノエチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン;ヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド;β−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3−セミカルバジッド−プロピル−カルバジン酸エステル、セミカルバジッド−3−セミカルバジドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンを使用することができ、エチレンジアミンを使用することが好ましい。
【0092】
前記その他活性水素含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール類;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール類、及び水等を、本発明のコーティング剤の保存安定性が低下しない範囲内で単独で使用または2種以上を併用することができる。
【0093】
前記鎖伸長剤は、例えばポリアミンが有するアミノ基と過剰のイソシアネート基との当量比が、1.9以下(当量比)となる範囲で使用することが好ましく、0.3〜1.0(当量比)の範囲で使用することがより好ましい。
【0094】
前記ポリオール(E)と前記ポリイソシアネート(F)と、必要に応じて前記鎖伸長剤とを反応させることによって得られたポリウレタン(G)としては、例えば前記ビニル重合体(C)として片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(C−2)を使用した場合であれば、主鎖構造としてのポリウレタン構造に対する側鎖として、前記ビニル重合体(C−2)由来にビニル重合体構造がグラフトしたポリウレタンが挙げられる。また、前記ビニル重合体(C)として片末端に1個の水酸基を有するビニル重合体を使用した場合であればポリウレタンの分子片末端または両末端に前記ビニル重合体由来のビニル重合体構造を備えたポリウレタンを得ることができる。
【0095】
なお、前記ビニル重合体(D)由来のビニル重合体構造を、前記ポリウレタン(G)の側鎖に存在させる場合には、前記片末端の2個以上の水酸基以外の、他の水酸基を有さないものを使用することが好ましい。具体的には、前記ビニル重合体(D)の製造に使用可能なビニル単量体として例示したものとともに、水酸基含有ビニル単量体を使用しないことが好ましい。前記ポリウレタン(G)等を製造する際に、前記ビニル重合体(D)由来のビニル重合体構造を、その側鎖に存在させる必要がない場合には、前記水酸基含有ビニル単量体を用いてもよい。
【0096】
前記ポリウレタン(G)としては、前記ポリウレタン(G)全量に対して、前記ビニル重合体(C)由来のビニル重合体構造を1質量%〜70質量%含むものを使用することが好ましく、5質量%〜50質量%含むものを使用することが、耐久性や耐候性に優れた硬化物を形成するうえで好ましい。
【0097】
また、前記ポリウレタン(G)としては、10000〜150000の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましく、15000〜50000のものを使用することがより好ましい。
【0098】
前記方法で得られたポリウレタン(G)は、例えば一般にホットメルトといわれる無溶剤のものであっても、各種有機溶剤に溶解等したものであっても良い。前記ポリウレタン(G)を製造する際に前記親水性基含有ポリオール(e−1)を使用することによって得られた親水性基を有するポリウレタン(G−1)は、水性媒体(H)に溶解または分散したものであることが好ましい。
【0099】
前記ポリウレタン(G−1)が水性媒体(H)中に溶解または分散した水性ポリウレタン組成物は、前記ポリウレタン(G−1)またはその有機溶剤溶液と水性媒体(H)とを混合し、いわゆる転相乳化することによって製造することができる。具体的には、以下の方法によって製造することができる。
【0100】
〔方法1〕前記親水性基含有ポリオール(e−1)等を含むポリオール(E)とポリイソシアネート(F)とを反応させて得られたポリウレタン(G−1)の親水性基の一部又は全てを中和又は4級化した後、水性媒体(H)を投入してポリウレタン(G−1)を水分散させる方法。
【0101】
〔方法2〕前記親水性基含有ポリオール(e−1)等を含むポリオール(E)とポリイソシアネート(F)とを反応させて得られたポリウレタン(G−1)の親水性基の一部又は全てを中和又は4級化した後、水性媒体(H)を投入し、必要に応じて前記鎖伸長剤を用いて鎖伸長することによりポリウレタン(G−1)を水分散させる方法。
【0102】
〔方法3〕前記親水性基含有ポリオール(e−1)等を含むポリオール(E)とポリイソシアネート(F)とを反応させて得られたポリウレタンと、必要に応じて前記と同様の鎖伸長剤とを、反応容器中に一括又は分割して仕込み、鎖伸長反応させることでポリウレタン(G−1)を製造し、次いで得られたポリウレタン(G−1)中の親水基の一部又は全てを中和又は4級化した後、水性媒体(H)を投入して水分散せしめる方法。
【0103】
前記水性媒体(H)は、前記ポリウレタン(G−1)が分散等しうる溶媒である。前記水性媒体(H)としては、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム類、等が挙げられる。本発明では、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、又は、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
【0104】
前記〔方法1〕〜〔方法3〕では、必要に応じて乳化剤を使用してもよい。また、水溶解や水分散の際には、必要に応じてホモジナイザー等の機械を使用しても良い。
【0105】
前記乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン系乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン系乳化剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン系乳化剤が挙げられる。なかでも、ポリウレタン(G)等の優れた保存安定性を維持する観点から、基本的にアニオン性又はノニオン性の乳化剤を使用することが好ましい。また、前記ポリウレタン(G)の混和安定性を維持可能な範囲であれば、例えばカチオン性の乳化剤と両性の乳化剤とを併用してもよい。
【0106】
前記方法で得られたビニル重合体(D)や、それを用いて得られたポリウレタン(G)は、必要に応じて有機溶剤や水性媒体を溶媒として、例えばコーティング剤や接着剤、成形材料、グラビアインクやインクジェットインクや機能性インクの顔料分散剤やバインダー剤、または受理剤、ホットメルト接着剤、ウレタンフォーム等に使用することができる。
【0107】
前記ビニル重合体(D)やポリウレタン(G)を含む組成物は、使用する用途等に応じて硬化剤や硬化触媒を併用しても良い。
【0108】
前記硬化剤としては、例えばシラノール基及び/または加水分解性シリル基を有する化合物、ポリエポキシ化合物、ポリオキサゾリン化合物、ポリイソシアネート等を使用することができ、前記硬化触媒としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸カリウム等を使用することができる。
る。
【0109】
以上のとおり、前記方法で得られたビニル重合体(D)のうち、水酸基含有ビニル重合体、好ましくは片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体(D−1)、より好ましくは片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(D−2)を使用しポリウレタン(G)を製造することによって、従来のメチルエチルケトン等の存在下で得られた水酸基を有するビニル重合体を用いてポリウレタンを製造する場合と比較して、該ポリウレタン(G)の製造時間を約2/3にまで短縮することが可能となる。
【0110】
前記方法で得られたポリウレタン(G)としては、未反応のビニル単量体(B)の残留物が少なく、ゲル化しておらず、分散安定性に優れるため、もっぱらインクジェット印刷用インクのバインダー樹脂に好適に使用することができる。
【0111】
前記インクジェット印刷インク用バインダーは、インクの保存安定性と優れた耐擦過性と、耐アルカリ性等の耐久性とを両立する観点から、前記インクジェット印刷インク用バインダーの全量に対して、ポリウレタン(G)を10〜50質量%含まれることが好ましく、15〜35質量%含まれることがより好ましい。また、前記インクジェット印刷インク用バインダーは、前記インクジェット印刷インク用バインダーの全量に対して、水性媒体(H)を50質量%〜90質量%含まれることが好ましく、65質量%〜85質量%含まれることがより好ましい。
【0112】
前記インクジェット印刷インク用バインダーは、例えば顔料や染料、その他必要に応じて各種の添加剤と組み合わせることでインクジェット印刷用インクに使用することができる。なお、水性のインクジェット印刷用インクを使用する場合には、前記ポリウレタン(G)としてポリウレタン(G−1)を使用することが好ましい。
【0113】
前記顔料としては、公知慣用の無機顔料や有機顔料を使用することができる。
前記無機顔料としては、例えば酸化チタン、アンチモンレッド、ベンガラ、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等を使用することができる。
【0114】
前記有機顔料としては、例えば、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、アゾ系顔料等の有機顔料を使用することができる。
【0115】
また、前記染料としては、例えばモノアゾ・ジスアゾ等のアゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノイミン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ペリノン染料、フタロシアニン染料、トリアリルメタン系等を使用することができる。
【0116】
また、前記添加剤としては、例えば高分子分散剤や粘度調整剤、湿潤剤、消泡剤、界面活性剤、防腐剤、pH調整剤、キレート化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤をはじめ、従来のインクジェット印刷用インクのバインダーに使用されていたアクリル樹脂等を使用することができる。
【0117】
前記高分子分散剤としては、例えばアクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂等を使用することができ、それらはランダム型、ブロック型、グラフト型のいずれのものも使用することができる。前記高分子分散剤を使用する際には、高分子分散剤を中和するために酸または塩基を併用しても良い。
【0118】
前記インクジェット印刷用インクのうち、水性のインクジェット印刷用インクは、例えば以下の製造方法によって調製することができる。
【0119】
(1)前記顔料または染料と前記水性媒体(H)と、前記ポリウレタン(G−1)を含むインクジェット印刷インク用バインダーと必要に応じて前記添加剤とを、各種の分散装置を用いて一括して混合しインクを調製する方法。
【0120】
(2)前記顔料または染料と前記水性媒体(H)と必要に応じて前記添加物とを、各種の分散装置を用いて混合することで顔料または染料の水系分散体からなるインク前駆体を調製し、次いで、前記顔料または染料の水分散体からなるインク前駆体と、前記ポリウレタン(G−1)を含むインクジェット印刷インク用バインダーと、必要に応じて水性媒体と添加剤とを、各種の分散装置を用いて混合しインクを調製する方法。
【0121】
上記(2)に記載したインクの製造方法で使用する顔料を含むインク前駆体は、例えば以下の方法によって調製することができる。
【0122】
(i)顔料及び高分子分散剤等の添加剤を2本ロールやミキサー等を用いて予備混練して得られた混練物と、水性媒体とを各種の分散装置を用いて混合することによって顔料を含む水系分散体からなるインク前駆体を調製する方法。
【0123】
(ii)顔料と高分子分散剤を各種の分散装置を用いて混合した後、前記高分子分散剤の溶解性をコントロールすることによって該高分子分散剤を前記顔料の表面に堆積させ、更に分散装置を用いてそれらを混合することで顔料を含む水系分散体からなるインク前駆体を調製する方法。
【0124】
(iii)顔料と前記添加物とを各種の分散装置を用いて混合し、次いで前記混合物と樹脂エマルジョンとを分散装置を用いて混合することによって顔料を含む水系分散体からなるインク前駆体を調製する方法。
【0125】
前記で得たインクジェット印刷用インクは、200nm以下の体積平均粒子径を有するものを使用することが好ましく、特に写真画質のようにより一層高光沢の画像を形成する場合には、80〜120nmの範囲であることがより好ましい。
【0126】
また、前記インクジェット印刷用インクは、インクジェット印刷用インク全体に対して、前記ポリウレタン(C)を0.2〜10質量%、水性媒体を50〜95質量%、顔料または染料を0.5〜15質量%含むことが好ましい。
【0127】
前記方法で得られた本発明のインクジェット印刷用インクは、もっぱらインクジェットプリンターを用いたインクジェット印刷に使用することができ、例えば紙やプラスチックフィルム、金属フィルムまたはシート等の基材に対するインクジェット印刷に使用することができる。インクジェットの方式は特に限定するものではないが、連続噴射型(荷電制御型、スプレー型など)、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式など)などの公知の方式を適用することができる。
【0128】
本発明のインクジェット印刷用インクを用いて印刷された印刷物は、優れた耐擦過性を有することから顔料等の欠落に起因した印刷画像の劣化等を引き起こしにくく、また優れた耐アルカリ性を有することから、アルカリ性洗浄剤等の印刷画像表面への付着によるにじみ等の発生を防止でき、かつ高発色濃度の画像を有するものであるから、例えばインクジェット印刷による写真印刷や、インクジェット印刷による高速印刷によって得られた印刷物など様々な用途に使用することができる。
【実施例】
【0129】
以下、本発明を実施例と比較例により、一層、具体的に説明する。
【0130】
[実施例1]片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a1−1)の調製
温度計、攪拌装置、還流冷却管及び窒素導入管を備えた4ッ口フラスコに、ポリプロピレングリコール(数平均分子量2000、80℃に加熱した際の粘度 約40mPa・s) 500質量部を仕込み、次いで前記反応容器中にメチルメタクリレート 302質量部とブチルアクリレート 172質量部と3−メルカプト−1,2−プロパンジオール 24質量部と2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル) 2質量部を供給し、反応させることによって、数平均分子量2000の片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a1−1)の溶液を得た。
【0131】
[実施例2]片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a1−2)の調製
温度計、攪拌装置、還流冷却管及び窒素導入管を備えた4ッ口フラスコに、ポリオキシテトラメチレングリコール(数平均分子量2000、80℃に加熱した際の粘度 約450mPa・s) 500質量部を仕込み、次いで前記反応容器中にメチルメタクリレート 302質量部とブチルアクリレート 172質量部と3−メルカプト−1,2−プロパンジオール 24質量部と2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル) 2質量部を供給し、反応させることによって、数平均分子量2000の片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a1−2)の溶液を得た。
【0132】
[実施例3]片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a1−3)の調製
温度計、攪拌装置、還流冷却管及び窒素導入管を備えた4ッ口フラスコに、1,4−ブタンジオールとアジピン酸とを反応させて得られたポリエステルポリオール(数平均分子量2000、80℃に加熱した際の粘度 約750mPa・s) 500質量部を仕込み、次いで前記反応容器中にメチルメタクリレート 302質量部とブチルアクリレート 172質量部と3−メルカプト−1,2−プロパンジオール 24質量部と2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル) 2質量部を供給し、反応させることによって、数平均分子量2000の片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a1−3)の溶液を得た。
【0133】
[実施例4]片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a1−4)の調製
温度計、攪拌装置、還流冷却管及び窒素導入管を備えた4ッ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られる数平均分子量2000のポリカーボネートジオール(80℃に加熱した際の粘度 約2600mPa・s) 500質量部を仕込み、次いで前記反応容器中にメチルメタクリレート 302質量部とブチルアクリレート 172質量部と3−メルカプト−1,2−プロパンジオール 24質量部と2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル) 2質量部を供給し、反応させることによって、数平均分子量2000の片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a1−4)の溶液を得た。
【0134】
[比較例1]片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a1’−1)の調製
温度計、攪拌装置、還流冷却管及び窒素導入管を備えた4ッ口フラスコに、メチルエチルケトン(80℃に加熱した際の粘度 約0.2mPa・s) 500質量部を仕込み、次いで前記反応容器中にメチルメタクリレート 302質量部とブチルアクリレート 172質量部と3−メルカプト−1,2−プロパンジオール 24質量部と2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル) 2質量部を供給し、反応させることによって、数平均分子量2000の片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a1’−1)の溶液を得た。
【0135】
[比較例2]片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a2’−1)の調製
温度計、攪拌装置、還流冷却管及び窒素導入管を備えた4ッ口フラスコに、エチレングリコール(80℃に加熱した際の粘度 約3mPa・s) 500質量部を仕込み、次いで前記反応容器中にメチルメタクリレート 302質量部とブチルアクリレート 172質量部と3−メルカプト−1,2−プロパンジオール 24質量部と2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル) 2質量部を供給し、反応させることによって、数平均分子量2000の片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a2’−1)の溶液を得た。
【0136】
[比較例3]片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a3’−1)の調製
温度計、攪拌装置、還流冷却管及び窒素導入管を備えた4ッ口フラスコに、2,2’−[イソプロピリデンビス[(p−フェニレン)(オキシ)]]ジエタノール(ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物)とイソフタル酸を反応させて得られたポリエステルポリオール(数平均分子量2000、80℃に加熱した際の粘度が約30000mPa・s、本ポリエステルポリオール中に存在する芳香族構造の濃度 約6700mmol/kg) 500質量部を仕込み、次いで前記反応容器中にメチルメタクリレート 302質量部とブチルアクリレート 172質量部と3−メルカプト−1,2−プロパンジオール 24質量部と2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル) 2質量部を供給し、反応させることによって、数平均分子量2000の片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体(a3’−1)の溶液を得た。
【0137】
[ビニル重合体の数平均分子量の測定]
ビニル重合体の数平均分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC法)により測定した。具体的には、ビニル重合体を、ガラス板上に3milアプリケーターで塗工し、常温で1時間乾燥して半乾きの塗膜を作成した。得られた塗膜をガラス板から剥し、0.4gをテトラヒドロフラン100gに溶解して測定試料とした。
【0138】
測定装置としては、東ソー(株)製高速液体クロマトグラフHLC−8220型を用いた。カラムは、東ソー(株)製カラムTSK−GEL(HXL−H、G5000HXL、G4000HXL、G3000HXL、G2000HXL)を組み合わせて使用した。
【0139】
標準試料として昭和電工(株)製及び東洋曹達(株)製の標準ポリスチレン(分子量:448万、425万、288万、275万、185万、86万、45万、41.1万、35.5万、19万、16万、9.64万、5万、3.79万、1.98万、1.96万、5570、4000、2980、2030、500)を用いて検量線を作成した。
【0140】
溶離液、及び試料溶解液としてテトラヒドロフランを用い、流量1mL/min、試料注入量500μL、試料濃度0.4%としてRI検出器を用いて数平均分子量を測定した。
【0141】
【表1】

【0142】
表1中の略称について以下に説明する。
「PPG」;ポリプロピレングリコール(数平均分子量2000)
「PTMG」;ポリオキシテトラメチレングリコール(数平均分子量2000)
「PES1」;1,4−ブタンジオールとアジピン酸とを反応させて得られたポリエステルポリオール(数平均分子量2000)
「PC1」;1,6−ヘキサンジオールと炭酸エステルとを反応させて得られるポリカーボネートジオール(数平均分子量2000)
「EG」;エチレングリコール
「MEK」;メチルエチルケトン
「PES2」;2,2’−[イソプロピリデンビス[(p−フェニレン)(オキシ)]]ジエタノール(ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物)とイソフタル酸を反応させて得られたポリエステルポリオール(数平均分子量2000)
【0143】
[ビニル重合体の生産効率の向上の評価方法]
[反応時間に基づく評価]
第一に、ビニル単量体混合物のラジカル重合反応を開始した時点から、ビニル単量体の全量の98質量%以上がラジカル重合反応するまでに要した時間に基づいて評価した。
具体的には、はじめに各実施例及び比較例に記載のビニル単量体混合物の全てがラジカル重合反応しビニル重合体を生成したと過程した場合の、前記片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体の溶液の不揮発分[V](理論値)を算出した。
次いで、前記ビニル単量体混合物のラジカル重合反応を80℃の条件下で、前記実施例及び比較例の記載にしたがって行った。その反応過程で、反応混合物の一部を採取し、108℃の条件下で1時間乾燥することによって、その反応混合物中の不揮発分[W]を測定した。
前記不揮発分[V]及び[W]の値、ならびに、式〔不揮発分[W]/不揮発分[V]〕×100に基づいて、ビニル単量体混合物の全量に対して、実際にラジカル重合反応したビニル単量体の質量割合を算出した。
前記ビニル単量体混合物のラジカル重合反応を開始してから、前記質量割合が98質量%以上となるまでに要した時間を測定し、かかる時間が、概ね10時間以内であったものを、ビニル重合体の生産効率の向上に寄与したと評価した。また、ラジカル重合反応が殆ど進行しなかったものは、表中「−」とした。
【0144】
[ゲル分率に基づく評価]
第二に、ゲル分率に基づいて評価した。具体的には、実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体の溶液と、「コロネートHXR」(日本ポリウレタン工業株式会社製:平均イソシアネート官能基数3.3〜3.5のヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体)からなる架橋剤とを、前記ビニル重合体及び活性水素原子含有化合物の有する水酸基と前記架橋剤の有するイソシアネート基との当量割合が[水酸基/イソシアネート基]=1/1となる範囲で混合することによって組成物を得た。
【0145】
前記で得た組成物を、予め質量を測定したポリプロピレンからなるフィルムの表面に、乾燥膜厚が10μmとなるように塗布し、次いで100℃の条件下で5時間乾燥し、更に常温下に24時間放置することによって、前記フィルム表面に乾燥被膜が積層した各積層体を得た。
前記積層体から、ポリプロピレンフィルムを除去して得た各乾燥被膜の質量[X]を測定した。
【0146】
次いで、前記した各乾燥皮膜を25℃のトルエン中に浸漬した状態で1時間放置した後、100℃の条件下で1時間乾燥した。前記乾燥後の各乾燥皮膜の質量[Y]を測定した。
【0147】
前記質量[X]及び質量[Y]の値と、式〔[Y]/[X]〕×100に基づいて、トルエン中への浸漬前後の質量に基づく各乾燥被膜のゲル分率を測定した。
【0148】
前記ゲル分率の値が概ね90質量%以上であるものは、低分子量の副反応生成物等が少なく、目的とするビニル重合体の収率を向上できたものであると評価した。
【0149】
[ポリウレタンの生産効率の向上の評価方法]
[反応時間に基づく評価]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された80℃の容器中で、実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体の溶液のいずれかと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(ジイソシアン酸メチレンジフェニル)とを、前記溶液中に含まれるビニル重合体と活性水素原子含有化合物とが有する水酸基、及び、前記4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの有するイソシアネート基との当量割合[水酸基/イソシアネート基]が1/2となる範囲で混合し反応させることによって各ポリウレタンを製造した。
その際、前記片末端に2個の水酸基を有するビニル重合体の溶液と4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとを前記当量割合で混合した時点から、それらを80℃で反応させ、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの全量に対してウレタン化反応した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの質量割合が95質量%を超えるまでに要した時間を測定し、かかる時間かかるポリウレタンの生産効率を評価した。前記時間が、概ね5時間内であったものを、ポリウレタンの生産効率の向上に寄与したと評価した。また、ウレタン化反応が殆ど進行しなかったものは、表中「−」とした。なお、前記ウレタン化反応した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの質量割合は、逆滴定法によって求めた未反応の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの質量と、仕込量とに基づいて算出した。
【0150】
[実施例5]ポリウレタン及びそれを含むインクジェット印刷インク用バインダーの調製
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、前記で得たビニル重合体(a1−1)の溶液292質量部とイソホロンジイソシアネート 127質量部を100℃で5時間反応させたあと、2,2―ジメチロールプロピオン酸57質量部とメチルエチルケトン 471質量部を添加し、さらに80℃で10時間反応させたあと、メタノール5質量部投入し反応させることによって、重量平均分子量が50000のポリウレタン(酸価50)の有機溶剤溶液(a2−1)を得た。
【0151】
前記ポリウレタンの有機溶剤溶液(a2−1)に48質量%水酸化カリウム水溶液を49質量部加えることで、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水1500質量部を加え十分に攪拌することによりポリウレタンの水分散体(a3−1)を得た。
【0152】
次いで、前記ポリウレタンの水分散体(a3−1)を脱溶剤し、更に不揮発分が25質量%となるよう水を加え調整することによって、本発明のインクジェット印刷インク用バインダー(a4−1)を得た。
【0153】
[比較例4]ポリウレタン及びそれを含むインクジェット印刷インク用バインダーの調製
温度計、窒素ガス導入管、攪拌器を備えた窒素置換された容器中で、前記比較例1で得たビニル重合体(a1’−1)の溶液292質量部とポリプロピレングリコール(数平均分子量2000) 146質量部を仕込み、イソホロンジイソシアネート 127質量部を80℃で10時間反応させたあと、2,2―ジメチロールプロピオン酸57質量部とメチルエチルケトン 325質量部を添加し、さらに80℃で10時間反応させたあと、メタノール5質量部投入し反応させることによって、重量平均分子量が50000のポリウレタン(酸価50)の有機溶剤溶液(a2’−1)を得た。
【0154】
次いで、前記ポリウレタンの有機溶剤溶液(a2’−1)に48質量%水酸化カリウム水溶液を49質量部加えることで、前記ポリウレタンが有するカルボキシル基の一部または全部を中和し、さらに水1500質量部を加え十分に攪拌することによりポリウレタンの水分散体(a3’−1)を得た。
【0155】
次いで、前記ポリウレタンの水分散体(a3’−1)を脱溶剤し、更に不揮発分が25質量%となるよう水を加え調整することによって、本発明のインクジェット印刷インク用バインダー(a4’−1)を得た。
【0156】
[重量平均分子量の測定]
ポリウレタン(G)の重量平均分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC法)により測定した。具体的には、ポリウレタン(C)を、ガラス板上に3milアプリケーターで塗工し、常温で1時間乾燥して半乾きの塗膜を作成した。得られた塗膜をガラス板から剥し、0.4gをテトラヒドロフラン100gに溶解して測定試料とした。
【0157】
測定装置としては、東ソー(株)製高速液体クロマトグラフHLC−8220型を用いた。カラムは、東ソー(株)製カラムTSK−GEL(HXL−H、G5000HXL、G4000HXL、G3000HXL、G2000HXL)を組み合わせて使用した。
【0158】
標準試料として昭和電工(株)製及び東洋曹達(株)製の標準ポリスチレン(分子量:448万、425万、288万、275万、185万、86万、45万、41.1万、35.5万、19万、16万、9.64万、5万、3.79万、1.98万、1.96万、5570、4000、2980、2030、500)を用いて検量線を作成した。
【0159】
溶離液、及び試料溶解液としてテトラヒドロフランを用い、流量1mL/min、試料注入量500μL、試料濃度0.4%としてRI検出器を用いて重量平均分子量を測定した。
【0160】
調製例1(キナクリドン系顔料の水系分散体)
ビニル重合体(スチレン/アクリル酸/メタクリル酸=77/10/13(質量比)であり、重量平均分子量が11000、酸価156mgKOH/g)を1500g、キナクリドン系顔料(クロモフタールジェットマジェンタDMQ、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を4630g、フタルイミドメチル化3,10−ジクロロキナクリドン(1分子あたりの平均フタルイミドメチル基数が1.4)を380g、ジエチレングリコールを2600g、及び34質量%水酸化カリウム水溶液688gを、容量50LのプラネタリーミキサーPLM−V−50V(株式会社井上製作所製)に仕込み、4時間、混練を継続した。
【0161】
前記混練物に、2時間で総量8000gの60℃に加温したイオン交換水を加え、不揮発分が37.9質量%の着色樹脂組成物を得た。
【0162】
前記方法で得た着色樹脂組成物の12kgに、ジエチレングリコール744gと、イオン交換水7380gとを少量ずつ添加しながら分散撹拌機で撹拌し、キナクリドン系顔料の水系分散体の前駆体(分散処理前の水系分散体)を得た。
【0163】
次いで、この水系分散体前駆体の18kgを、ビーズミル(浅田鉄工(株)製ナノミルNM−G2L、ビーズφ;0.3mmのジルコニアビーズ、ビーズ充填量;85%、冷却水温度;10℃、回転数;2660回転/分)を用いて処理し、前記ビーズミルの通過液を13000G×10分の遠心処理した後、有効孔径0.5μmのフィルターにより濾過処理を行うことによってキナクリドン系顔料の水系分散体を得た。この水系分散体中のキナクリドン系顔料濃度は14.9質量%であった。
【0164】
[インクジェット印刷用インクの調製]
キナクリドン系顔料の濃度が4質量%で、かつポリウレタンの濃度が1質量%となるよう、前記実施例5及び比較例4で得たインクジェット印刷インク用のバインダー(a4−1)及び(a4’−1)と、調製例1で得たキナクリドン系顔料の水系顔料分散液と、2−ピロリジノンと、トリエチレングリコールモノブチルエーテルと、グリセリンと、界面活性剤(サーフィノール440、エアープロダクツ社製)とイオン交換水とを、下記配合割合にしたがって混合、攪拌することによって、インクジェット印刷用インクを調製した。
【0165】
(インクジェット印刷用インクの配合割合)
・調製例1で得たキナクリドン系顔料の水系分散体(顔料濃度14.9%);26.8g
・2−ピロリジノン;8.0g
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル;8.0g
・グリセリン;3.0g
・界面活性剤(サーフィノール440、エアープロダクツ社製);0.5g
・イオン交換水;48.7g
・前記実施例5及び比較例4で得たインクジェット印刷インク用のバインダー(不揮発分25質量%);4.0g
【0166】
〔インク吐出安定性の評価〕
前記のインクジェット顔料インクを黒色インクカートリッジに充填したPhotosmart D5360(ヒューレットパッカード社製)にて、診断ページを印刷しノズルの状態を確認した。1ページあたり18cm×25cmの領域の印字濃度設定100%のベタ印刷を連続で20ページ実施した後、再度診断ページを印刷しノズルの状態を確認した。連続ベタ印刷の前後でのノズルの状態変化をインク吐出性として評価した。評価基準を以下に記す。
【0167】
[判定基準]
◎:ノズルの状態に変化がなく、吐出異常が発生していないもの
○:ノズルへの若干のインクの付着が確認されたものの、インクの吐出方向の異常は発生していないもの
△:前記ベタ印刷を連続で20ページ実施した後に、インクの吐出方向の異常やインクの不吐出が生じたもの
×:印刷途中でインクの吐出方向の異常やインクの不吐出が生じ、連続して20ページの印刷を完了できなかったもの
【0168】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
50℃〜200℃の範囲のラジカル重合温度に加熱することによって、5mPa・s〜10000mPa・sの範囲の粘度に調整された活性水素原子含有化合物(A)の存在下で、ビニル単量体(B)と、メルカプト基及び片末端に2個以上の水酸基を有する連鎖移動剤(C)とを混合し、ラジカル重合することを特徴とする片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体(D)の製造方法。
【請求項2】
前記活性水素原子含有化合物(A)が500〜10000の数平均分子量を有するポリオール(A−1)である、請求項1に記載の片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体(D)の製造方法。
【請求項3】
前記ビニル単量体(B)が、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる1種以上のビニル単量体を含むものである、請求項1に記載の片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体(D)の製造方法。
【請求項4】
前記メルカプト基及び片末端に2個以上の水酸基を有する連鎖移動剤(C)の使用量が、前記ビニル単量体(B)の全量に対して1質量部〜10質量部の範囲である、請求項1に記載の片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体(D)の製造方法。
【請求項5】
前記メルカプト基及び片末端に2個以上の水酸基を有する連鎖移動剤(C)が、メルカプト基と2個の水酸基とを有する連鎖移動剤(C−1)である、請求項1に記載の片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体(D)の製造方法。
【請求項6】
前記片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体(D)が、500〜10000の数平均分子量を有するものである、請求項1に記載の片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体(D)の製造方法。
【請求項7】
50℃〜200℃の範囲のラジカル重合温度に加熱することによって、5mPa・s〜10000mPa・sの範囲の粘度に調整された活性水素原子含有化合物(A)である500〜10000の数平均分子量を有するポリオール(A−1)の存在下で、ビニル単量体(B)と、メルカプト基及び片末端に2個以上の水酸基を有する連鎖移動剤(C)とを混合し、ラジカル重合することによって得られた片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体(D)と前記ポリオール(A−1)との混合物を含むポリオール(E)、ならびに、ポリイソシアネート(F)を反応させることを特徴とするポリウレタン(G)の製造方法。
【請求項8】
前記メルカプト基及び片末端に2個以上の水酸基を有する連鎖移動剤(C)の使用量が、前記ビニル単量体(B)の全量に対して1質量部〜10質量部の範囲である、請求項7に記載のポリウレタン(G)の製造方法。
【請求項9】
前記片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体(D)が500〜10000の数平均分子量を有するものである、請求項7に記載のポリウレタン(G)の製造方法。
【請求項10】
50℃〜200℃の範囲のラジカル重合温度に加熱することによって、5mPa・s〜10000mPa・sの範囲の粘度に調整された活性水素原子含有化合物(A)である500〜10000の数平均分子量を有するポリオール(A−1)の存在下で、ビニル単量体(B)と、メルカプト基及び片末端に2個以上の水酸基を有する連鎖移動剤(C)とを混合し、ラジカル重合することによって得られた片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体(D)と前記ポリオール(A−1)と親水性基含有ポリオール(e−1)とを含むポリオール(E)、ならびに、ポリイソシアネート(F)を反応させることによってポリウレタン(G)を製造し、次いで、前記ポリウレタン(G)と水性媒体(H)とを混合し転相乳化することを特徴とするポリウレタン水分散体の製造方法。
【請求項11】
50℃〜200℃の範囲のラジカル重合温度に加熱することによって、5mPa・s〜10000mPa・sの範囲の粘度に調整された活性水素原子含有化合物(A)である500〜10000の数平均分子量を有するポリオール(A−1)の存在下で、ビニル単量体(B)と、メルカプト基及び片末端に2個以上の水酸基を有する連鎖移動剤(C)とを混合し、ラジカル重合することによって得られた片末端に2個以上の水酸基を有するビニル重合体(D)と前記ポリオール(A−1)と親水性基含有ポリオール(e−1)とを含むポリオール(E)、ならびに、ポリイソシアネート(F)を反応させることによってポリウレタン(G)を製造し、次いで、前記ポリウレタン(G)と水性媒体(H)とを混合し転相乳化することを特徴とするポリウレタン水分散体からなるインクジェット印刷インク用バインダーの製造方法。

【公開番号】特開2012−201730(P2012−201730A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65757(P2011−65757)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】