説明

ビニル重合体粉体、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物

【課題】エポキシ樹脂組成物への分散性に優れ、所定の温度で短時間の加熱によって速やかにエポキシ樹脂組成物をゲル状態とし、得られるエポキシ樹脂硬化物の透明性及び耐熱性を損なわない光半導体材料に適したプレゲル化剤として有用なビニル重合体粉体、ビニル重合体粉体を含有するエポキシ樹脂組成物及びこれを硬化したエポキシ樹脂硬化物を提供すること。
【解決手段】アセトン可溶分が2質量%以上35質量%以下で、アセトン可溶分の質量平均分子量が10万以上で、体積平均一次粒子径(Dv)が200nm以上であるビニル重合体粉体であるビニル粉体重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニル重合体粉体、ビニル重合体粉体を含有するエポキシ樹脂組成物及びこれを硬化したエポキシ樹脂硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の表示板、画像読み取り用光源、交通ディスプレイ用ユニット等に実用化されている光半導体等の発光装置は、その大部分が樹脂封止によって製造されている。封止用樹脂としては、エポキシ樹脂が一般的であり、中でも、脂環式エポキシ樹脂は透明性、耐熱性に優れるため、光半導体用の封止用樹脂として多用されている。
特に、常温で液状のエポキシ樹脂は、常温で注型、塗布できることから、各種のペースト状又はフィルム状の材料として使用されている。しかしながら、エポキシ樹脂組成物は粘度の温度依存性が高いため、硬化するまでの温度上昇により粘度が顕著に低下することから、ディスペンサーによる精密な注入や塗布、スクリーン印刷による精密なパターン形成、高い膜厚精度でのフィルム上へのコーティング等、精密加工が困難な状況にある。特に電子材料分野においては、年々高精度加工への要求が高まっており、使用するエポキシ樹脂組成物には温度上昇しても粘度が低下しないことや、早期に形状が安定化することへの要望が極めて強い。
エポキシ樹脂組成物に上記のような特性を付与する方法として、加熱により速やかにエポキシ樹脂組成物をゲル状態とするために、エポキシ樹脂組成物に特定のビニル重合体を配合し、ゲル化性付与剤(以下、「プレゲル化剤」という。)として用いる方法がある。
特許文献1では、特定のビニル重合体をプレゲル化剤として用いる方法が提案されている。
一方、脂環式エポキシ樹脂は高い透明性と耐熱性を有するが、硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物は耐クラック性が悪く、例えば冷熱サイクルによって亀裂破壊を生じやすいといった特徴を有しており、長期間の信頼性が要求される用途には不向きであった。クラックの発生は、エポキシ樹脂硬化物と無機材料との線膨張係数の差及びエポキシ樹脂硬化物の弾性率が大きな要因であり、エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度の上昇、線膨張係数及び弾性率の低下により抑制できると考えられている。特許文献2では、エポキシ樹脂硬化物の弾性率を低下する方法として、アクリル系ゴム粒子を配合する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/090246号パンフレット
【特許文献2】特開2010−53199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で提案されている方法では、エポキシ樹脂組成物にゲル化性は付与できるが、プレゲル化剤を配合したエポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度が低下する傾向にあるため、高い耐熱性が要求される用途においては不向きであった。また、特許文献1では透明性に関しては、何ら触れられていない。
一方、特許文献2で提案されている方法では、エポキシ樹脂硬化物の耐クラック性は改善されるが、硬化するまでの温度上昇によりエポキシ樹脂組成物の粘度が顕著に低下することから、高精度な塗布やパターン形成が困難であった。さらに、アクリル系ゴム粒子はガラス転移温度が低いため、エポキシ樹脂組成物に多量に配合した場合、エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度が低下する場合があり、高い耐熱性が要求される用途には不向きであった。また、イオン性不純物の含有量についても特に考慮されていないため、エポキシ樹脂組成物に配合した場合の、エポキシ樹脂硬化物の電気特性の悪化が懸念される。
【0005】
したがって、エポキシ樹脂組成物のゲル化性付与及びエポキシ樹脂硬化物の透明性及び耐熱性を満足する材料は、従来まで提案されていないのが実状である。
本発明の目的とするところは、エポキシ樹脂組成物への分散性に優れ、所定の温度で短時間の加熱によって速やかにエポキシ樹脂組成物をゲル状態とし、得られるエポキシ樹脂硬化物の透明性及び耐熱性を損なわない光半導体材料に適したプレゲル化剤として有用なビニル重合体粉体、ビニル重合体粉体を含有するエポキシ樹脂組成物及びこれを硬化したエポキシ樹脂硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨とするところは、アセトン可溶分が2質量%以上35質量%以下で、アセトン可溶分の質量平均分子量が10万以上で、体積平均一次粒子径(Dv)が200nm以上であるビニル重合体粉体(A)を第1の発明とする。
ここで、ビニル重合体粉体(A)は、メチルメタクリレート70〜99質量%、メチルメタクリレート以外のビニル単量体原料30〜1質量%を含む単量体原料を重合して得られたビニル重合体を粉体化して得られたものであることが好ましい。
また、上記ビニル重合体粉体(A)を製造するための単量体原料は、メチルメタクリレート以外のビニル単量体原料として、カルボキシル基含有ビニル単量体、水酸基含有ビニル単量体及びグリシジル基含有ビニル単量体から選ばれる少なくとも1種の官能基含有単量体を含有することが更に好ましい。
更に、ビニル重合体粉体(A)のアルカリ金属イオンの含有量は、10ppm以下であることが好ましい。
【0007】
また、本発明の要旨とするところは、本発明のビニル重合体粉体(A)及びエポキシ樹脂(B)を含有するエポキシ樹脂組成物を第2の発明とする。
ここで、エポキシ樹脂(B)は脂環式エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0008】
また、本発明の要旨とするところは、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物を第3の発明とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、所定の温度で短時間の加熱によって速やかにゲル状態とすることが可能であり、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物は透明性を損なわない。さらに、本発明のエポキシ樹脂硬化物は、耐熱性に優れる。
このため、本発明のビニル重合体粉体、本発明のビニル重合体粉体を含有するエポキシ樹脂組成物及びこれを硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物は、光半導体材料あるいは光半導体用封止材料等の透明性及び耐熱性が要求される用途に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のビニル重合体粉体(A)は、アセトン可溶分が2質量%以上35質量%以下で、アセトン可溶分の質量平均分子量が10万以上で、体積平均一次粒子径(Dv)が200nm以上であるビニル重合体粉体である。
【0011】
<アセトン可溶分>
本発明において、アセトン可溶分とは、所定量のビニル重合体粉体(A)を、50倍の質量のアセトンに溶解させ、70℃で6時間還流した後の溶解した質量(%)を意味する。より詳細には、後述するアセトン可溶分の測定法により得られるものをいう。
ビニル重合体粉体(A)のアセトン可溶分が、35質量%以下であれば、ビニル重合体粉体(A)をエポキシ樹脂組成物に配合した際のエポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度の低下を抑制することができる。
ビニル重合体粉体(A)のアセトン可溶分は、エポキシ樹脂の粘度が極めて低い場合でも高いゲル化性を付与できることから、2質量%以上であり、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましい。また、エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度の低下を抑制できることから、35質量%以下であり、30質量%未満が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
アセトン可溶分は、単量体原料中の架橋性単量体の含有率を調整することで、適宜設定することができる。アセトン可溶分を増やすには架橋性単量体の含有率を減らし、アセトン可溶分を減らすには架橋性単量体の含有率を増やせば良い。
【0012】
<アセトン可溶分の質量平均分子量>
ビニル重合体粉体(A)のアセトン可溶分の質量平均分子量が10万以上であれば、少ない添加量で高いゲル化性を付与でき、高温においてもエポキシ樹脂の流動が抑制される。また、エポキシ樹脂への溶解性が低下することがなく、短時間で充分なゲル状態にできることから、アセトン可溶分の質量平均分子量は2000万以下が好ましい。
ビニル重合体粉体(A)のアセトン可溶分の質量平均分子量は、エポキシ樹脂の粘度が極めて低い場合でも高いゲル化性を付与できることから、20万以上が好ましく、30万以上がより好ましく、40万以上が更に好ましい。また、一定温度で効率的にゲル状態にできることから、1000万以下がより好ましく、500万以下が更に好ましい。
本発明においてゲル状態は、後述する測定法により得られたゲル化温度及びゲル化性能で評価することができる。
また、本発明において、質量平均分子量は後述する質量平均分子量の測定法により得られたものをいう。
【0013】
<体積平均一次粒子径>
ビニル重合体粉体(A)の体積平均一次粒子径(Dv)は200nm以上であり、300nm以上が好ましく、500nm以上がより好ましく、600nm以上が更に好ましい。体積平均一次粒子径(Dv)が200nm以上であれば、粒子が持つ総表面積を充分に小さくできるため、エポキシ樹脂組成物の粘度が上昇しにくいという利点を持つ。また、ファインピッチ化や薄膜化への対応が可能であることから、ビニル重合体粉体(A)の体積平均一次粒子径(Dv)は、8μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、1μm以下が更に好ましい。
【0014】
また、ビニル重合体粉体(A)は単分散性の良好なものが好ましい。本発明において、ビニル重合体粉体(A)の単分散性は、ビニル重合体粉体(A)の体積平均一次粒子径(Dv)と個数平均一次粒子径(Dn)との比(Dv/Dn)で示される。ビニル重合体粉体(A)のDv/Dnとしては3.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましく、1.5以下が更に好ましい。ビニル重合体粉体(A)の単分散性が高い(Dv/Dnが1に近い)ほど、エポキシ樹脂組成物のゲル化が短時間で急速に進行し、エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性との両立がし易くなる傾向にある。
【0015】
ビニル重合体粉体(A)は、粉体としての性状や構造は問わない。例えば、重合で得られた一次粒子が多数集合して凝集粉体(二次粒子)を形成していてもよく、それ以上の高次構造を形成していてもよい。ただし、このような凝集粉体の場合、一次粒子同士が強固に結合せず、緩く凝集している状態が好ましい。これにより、エポキシ樹脂中で一次粒子が微細且つ均一に分散される。
さらに、ビニル重合体粉体(A)を粉体として回収する際、通常、噴霧乾燥法や湿式凝固法等によって得られる粉体は一次粒子が多数集合した凝集粉体であるが、体積平均一次粒子径(Dv)が200nm以上の場合には、この凝集粉体が一次粒子に分散し易く、エポキシ樹脂への分散性が良好となる。
【0016】
<屈折率>
本発明において、ビニル重合体粉体(A)の屈折率は特に限定されないが、20℃での屈折率が1.48以上1.51以下であることが好ましい。ビニル重合体が多層構造粒子である場合は、各層の屈折率が1.48以上1.51以下であることが好ましい。屈折率が上記の範囲内であれば、ビニル重合体粉体(A)を配合して得られるエポキシ樹脂硬化物の透明性が優れたものとなる。ビニル重合体粉体(A)の屈折率は、エポキシ樹脂硬化物の透明性の観点から、1.49以上が好ましく、1.50以上がより好ましい。
尚、本発明において、ビニル重合体粉体(A)の20℃での屈折率は、「POLYMER HAND BOOK」(Wiley Interscience社)に記載されている、20℃におけるホモポリマーの屈折率の値(ポリメチルメタクリレート:1.490、ポリn−ブチルメタクリレート:1.483、ポリスチレン:1.591等)を用いる。また、共重合体の屈折率については、その体積比率により算出できる。
【0017】
<ガラス転移温度>
本発明において、ビニル重合体粉体(A)のガラス転移温度は特に限定されないが、ガラス転移温度は0℃以上であることが好ましい。ビニル重合体が多層構造粒子である場合は、各層のガラス転移温度が0℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度が0℃以上であれば、エポキシ樹脂組成物に多量に配合した場合でも、エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度の低下が抑制でき、高い耐熱性が要求される用途においても使用することができる。また、一定温度で効率的にゲル状態にできることから、ガラス転移温度は250℃以下であることが好ましい。
尚、本発明において、ビニル重合体のガラス転移温度は、Fox式により求めることができる。ビニル重合体が単独重合体の場合は、高分子学会編「高分子データハンドブック」等に記載されている標準的な分析値を採用することができ、共重合体の場合は、各単量体単位の単独重合体のTgから式(1)により算出することができる。
Fox式を以下に示す。
1/(273+Tg)=Σ(wi/(273+Tgi)) 式(1)
式中、Tgは共重合体のTg(℃)、wiは単量体iの質量分率、Tgiは単量体iを重合して得られる単独重合体のTg(℃)である。
【0018】
<金属イオン量>
ビニル重合体粉体(A)中のアルカリ金属イオンの含有量は10ppm以下が好ましく、5ppm以下がより好ましく、1ppm以下がさらに好ましい。エポキシ樹脂組成物は様々な用途に用いられるが、僅かなイオン性不純物の存在が絶縁不良を生じる場合もある。
従って、アルカリ金属イオンの含有量が上記の範囲内であれば、幅広い用途に使用できる。また、プレゲル化剤を多量に必要とする用途でも使用できる。
本発明において、ビニル重合体粉体(A)のアルカリ金属イオンの含有量はNaイオン及びKイオンの合計量であり、後述するアルカリ金属イオンの含有量の測定法により得られたものをいう。
【0019】
<硫酸イオン量>
ビニル重合体粉体(A)中の硫酸イオン(SO42-)の含有量は20ppm以下が好ましい。電子材料に用いるエポキシ樹脂組成物は、銅やアルミニウム等の金属製のワイヤーや回路配線等と接触する環境で用いられることから、硫酸イオンが残存すると金属腐食を引き起こし、導通不良や誤動作の原因となる場合がある。ビニル重合体粉体(A)中の硫酸イオンの含有量が20ppm以下であれば、幅広い用途に使用できる。
ビニル重合体粉体(A)を得るため、乳化重合法や懸濁重合法でビニル単量体原料を重合する場合、硫酸塩以外に、硫酸エステルやスルホン酸化合物等を用いることがある。これらの化合物に含まれる、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、硫酸エステルイオンも、金属腐食を引き起こす場合がある。
従って、ビニル単量体原料の重合時には、硫酸エステルやスルホン酸化合物等の使用量を減らすことが好ましい。
【0020】
<重合方法>
本発明のビニル単量体原料の重合方法としては、真球状粒子を得やすいこと及び粒子モルフォロジーを制御しやすいことから、乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、膨潤重合法、ミニエマルション重合法、分散重合法及び微細懸濁重合法が好ましい。この中でも、分散性に優れ、ファインピッチ化にも対応した粒子径を持つ重合体が得られることから、ソープフリー乳化重合法がより好ましい。
【0021】
ビニル重合体は、エポキシ樹脂組成物の粘度が上昇せず流動性に優れることから、真球状の粒子が好ましい。
ビニル重合体(一次粒子)の内部モルフォロジーについては特に限定されるものではなく、重合体組成、分子量、ガラス転移温度、溶解度パラメーター等の各種因子が均一であっても、コアシェル構造やグラディエント構造等、一般的に認識されている様々な粒子モルフォロジーを有していてもよい。
ビニル重合体の内部モルフォロジーを制御する方法としては、例えば、粒子の内側と外側で溶解度パラメーターや分子量の異なる多層構造粒子にする方法が挙げられる。この方法は、エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性(ポットライフ)とゲル化速度とを両立し易くなることから好ましい。
ビニル重合体の内部モルフォロジーを制御するための工業的に実用性の高い手法としては、例えば、異なる組成のビニル単量体混合物を多段階で逐次的に滴下重合する方法が挙げられる。
【0022】
ビニル重合体がコアシェル構造を有しているかどうかの判定方法としては、例えば、重合過程でサンプリングされる重合体粒子の粒子径が確実に成長していること、及び重合過程でサンプリングされる重合体粒子の最低造膜温度(MFT)や各種溶剤への溶解度が変化していることを同時に満足することを確認することが挙げられる。
また、透過型電子顕微鏡(TEM)によりビニル重合体の切片を観察して、同心円状の構造の有無を確認する方法、又は凍結破断された本重合体の切片を走査型電子顕微鏡(クライオSEM)で観察して、同心円状の構造の有無を確認する方法が挙げられる。
【0023】
<単量体組成>
本発明のビニル重合体は、ラジカル重合可能なビニル単量体原料を重合して得られる。
ラジカル重合可能なビニル単量体原料としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02.6]デカン−8−イル−メタクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、イソクロトン酸、サリチル酸ビニロキシ酢酸、アリロキシ酢酸、2−(メタ)アクリロイルプロパン酸、3−(メタ)アクリロイルブタン酸、4−ビニル安息香酸等のカルボキシル基含有ビニル単量体;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有ビニル単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド;ビニルピリジン、ビニルアルコール、ビニルイミダゾール、ビニルピロリドン、酢酸ビニル、1−ビニルイミダゾール等のビニル単量体;モノメチルイタコネート、モノエチルイタコネート、モノプロピルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジプロピルイタコネート、ジブチルイタコネート等のイタコン酸エステル;モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、モノプロピルフマレート、モノブチルフマレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジプロピルフマレート、ジブチルフマレート等のフマル酸エステル;及びモノメチルマレート、モノエチルマレート、モノプロピルマレート、モノブチルマレート、ジメチルマレート、ジエチルマレート、ジプロピルマレート、ジブチルマレート等のマレイン酸エステルが挙げられる。
【0024】
これらの単量体は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。これらの中で、ラジカル重合が容易であり、且つ乳化重合が容易であることから、(メタ)アクリレートが好ましい。さらに、これらの中でも重合安定性に優れることから、メチルメタクリレート70〜99質量%、メチルメタクリレート以外のビニル単量体原料30〜1質量%を含む単量体原料を用いることが好ましい。
尚、本発明において、「(メタ)アクリ…」は、「アクリ…」又は「メタクリ…」を示す。
【0025】
本発明において、単量体原料は、メチルメタクリレート以外のビニル単量体原料として、カルボキシル基含有ビニル単量体、水酸基含有ビニル単量体及びグリシジル基含有ビニル単量体から選ばれる少なくとも1種の官能基含有単量体を含有することが好ましい。これにより、本組成物を硬化して得られる硬化物の透明性を優れたものとすることができる。
【0026】
単量体原料中のカルボキシル基含有ビニル単量体、水酸基含有ビニル単量体及びグリシジル基含有ビニル単量体から選ばれる少なくとも1種の官能基含有単量体の含有量は、本硬化物の透明性の点で、好ましくは2質量%以上、より好ましくは4質量%以上、さらに好ましくは6質量%以上である。また、重合安定性の観点から少なくとも1種の官能基含有単量体の含有量は、30質量%以下であることが好ましく20質量%以下であることがより好ましい。
カルボキシル基含有ビニル単量体としては、ラジカル重合が容易であり、且つ乳化重合が容易であることから、メタクリル酸が好ましい。
水酸基含有ビニル単量体としては、ラジカル重合が容易であり、且つ乳化重合が容易であることから、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
グリシジル基含有ビニル単量体としては、ラジカル重合が容易であり、且つ乳化重合が容易であることから、グリシジルメタクリレートが好ましい。
これらのカルボキシル基含有ビニル単量体、水酸基含有ビニル単量体及びグリシジル基含有ビニル単量体は1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0027】
本発明においては、ビニル重合体を得るために2段以上の多段重合を実施する場合には、各段における単量体原料として、カルボキシル基含有ビニル単量体、水酸基含有ビニル単量体及びグリシジル基含有ビニル単量体から選ばれる少なくとも1種の官能基含有単量体2質量%以上を含有する単量体原料を使用することが好ましい。尚、多段重合における各段の単量体原料の組成は同一でも異なっていてもよい。
【0028】
<重合助剤>
ビニル単量体原料を重合する際には、重合開始剤、乳化剤、分散安定剤、連鎖移動剤を用いることができる。
【0029】
<重合開始剤>
重合開始剤としては、公知の重合開始剤を用いることができる。ビニル重合体を噴霧乾燥で粉体化する際に金属イオンの残留がないため、金属イオンが含まれていない重合開始剤を用いることが好ましい。
金属イオンが含まれていない重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス−(4−シアノバレリックアシッド)、2,2’−アゾビス−[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]等のアゾ系化合物;過硫酸アンモニウム等の過硫酸化合物;ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド、p−メンタンヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド等の有機過酸化物;前記過硫酸化合物又は前記有機過酸化物を一成分としたレドックス系開始剤が挙げられる。
これらの重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
これらの重合開始剤の中でも、過硫酸アンモニウム、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス−(4−シアノバレリックアシッド)、2,2’−アゾビス−[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]が好ましい。
重合温度は重合開始剤の種類にもよるが、例えば、40〜90℃程度の範囲で適宜行なうことができる。
【0030】
<乳化剤>
乳化剤としては、公知の乳化剤を用いることができ、例えば、不均化ロジン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸アルカリ金属塩やアンモニウム塩、ノニオン系乳化剤が挙げられる。
乳化剤は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
これらの乳化剤の中でも、ビニル重合体粉体(A)への金属イオンの残留がないことから、金属イオンが含まれていないアンモニウム塩型アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤を用いることが好ましい。
アンモニウム塩型アニオン系乳化剤としては、乳化重合の安定性に優れることから、ラウリル硫酸アンモニウム、ジ−(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸アンモニウムが好ましい。ノニオン系乳化剤としては、乳化重合の安定性に優れることから、ポリオキシエチレン(85)モノテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルが好ましい。
【0031】
<分散安定剤>
分散安定剤としては、例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、澱粉末シリカ等の水難溶性無機塩;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、セルロース誘導体等のノニオン系高分子化合物;及びポリアクリル酸又はその塩、ポリメタクリル酸又はその塩、メタクリル酸エステルとメタクリル酸又はその塩との共重合体等のアニオン系高分子化合物が挙げられる。これらの中では、電気特性に優れることからノニオン系高分子化合物が好ましい。また、重合安定性との両立の観点から目的に応じて2種以上の分散安定剤を併用することができる。
【0032】
<連鎖移動剤>
連鎖移動剤としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン等のメルカプタン;四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化合物;及びα−メチルスチレンダイマーが挙げられる。
これらの連鎖移動剤は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0033】
<粉体回収(配合方法)>
本発明のビニル重合体のエマルションを粉体化する方法としては、公知の粉体化方法を用いることができ、例えば、噴霧乾燥法、凍結乾燥法、凝固法が挙げられる。これらの粉体化方法の中でも、エポキシ樹脂中でのビニル重合体粉体(A)の分散性に優れることから、噴霧乾燥法が好ましい。
噴霧乾燥法はエマルションを微小液滴状に噴霧し、これに熱風を当てて乾燥するものである。微小液滴を発生させる方法としては、例えば、回転ディスク式、加圧ノズル式、二流体ノズル式、加圧二流体ノズル式が挙げられる。乾燥機容量は、特に制限はなく、実験室で用いるような小規模なスケールから、工業的に用いるような大規模なスケールまで、いずれも用いることができる。乾燥機における乾燥用加熱ガスの供給部である入口部、乾燥用加熱ガス及び乾燥粉末の排出口である出口部の位置も、特に制限はなく、通常用いる噴霧乾燥装置と同様でよい。装置内に導入する熱風の温度(入口温度)、即ちビニル重合体に接触し得る熱風の最高温度は、得られるエポキシ樹脂組成物中のビニル重合体粉体の分散性に優れることから、100〜200℃であることが好ましく、120〜180℃であることがより好ましい。
噴霧乾燥の際は、本発明のビニル重合体のエマルションを単独で用いても、複数を混合して用いてもよい。また、噴霧乾燥時のブロッキング、嵩比重等の粉体特性を向上させるために、シリカ、タルク、炭酸カルシウム等の無機質充填剤や、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等を添加してもよい。
また、必要に応じて、酸化防止剤や添加剤等を加えて噴霧乾燥してもよい。
【0034】
<粉体解砕性>
ビニル重合体粉体(A)は、10μm以下の粒子径の粒子の占める割合が30vol%未満であることが好ましく、ハンドリング性の観点から、20vol%以下であることが好ましい。ここで、ビニル重合体粉体(A)の粒子径とは、噴霧乾燥法や湿式凝固法等によって得られた凝集体の粒子径を意味する。このとき、ビニル重合体粉体(A)の一次粒子同士は多数集合して凝集体を形成している。
本発明のビニル重合体粉体(A)は一次粒子同士が強固に結合せず、緩く凝集している状態を有しているため、周波数42kHz、出力40wの超音波を3分間照射した後に、10μm以下の粒子径の粒子の占める割合が30vol%以上となる。10μm以下の粒子径の粒子の占める割合は、超音波照射前より超音波照射後が10vol%以上増加することが好ましい。周波数42kHz、出力40wの超音波を3分間照射した後に、10μm以下の粒子径の粒子の占める割合が40vol%以上が好ましく、更には50vol%以上が更に好ましい。
上記の超音波の照射は、得られたビニル重合体粉体(A)をイオン交換水で希釈して行うものであり、例えばレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(島津製作所社製、「SALD−7100」)を用いて、3分間超音波を照射後、粒子径10μm以下の粒子の割合を体積基準で測定する。
ビニル重合体粉体(A)の試料濃度は、装置に付属の散乱光強度モニターにおいて適正範囲となるよう適宜調整した
【0035】
<エポキシ樹脂組成物>
本発明において、本発明のビニル重合体粉体(A)はエポキシ樹脂(B)に添加して使用することができる。
【0036】
<エポキシ樹脂(B)>
本発明で用いるエポキシ樹脂(B)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、脂肪族系エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0037】
本発明においては、エポキシ樹脂組成物にゲル化性を付与する点で、常温で液体のエポキシ樹脂か、又は常温で固体であるが加熱時に硬化が充分に進行する前に液体化するエポキシ樹脂を主成分とするものが好ましい。さらにこれらのエポキシ樹脂の中でも、透明性及び耐熱性に優れ、光半導体材料に好適であることから、脂環式エポキシ樹脂が好ましい。
【0038】
脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートとε−カプロラクトンの2量体の付加物(セロキサイド2081)、1,2,8,9−ジエポキシリモネン(セロキサイド3000)(いずれもダイセル社製)、ビスフェノールA型の水素化脂環式エポキシ樹脂(YX−8000、YX−8034:三菱化学社製、EPICLON750:大日本インキ化学工業社製)が挙げられる。
【0039】
<エポキシ樹脂組成物及び配合量>
本発明のエポキシ樹脂組成物は、ビニル重合体粉体(A)及びエポキシ樹脂(B)を含有するものである。
エポキシ樹脂組成物中のビニル重合体粉体(A)の配合量としては5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。ビニル重合体粉体(A)の配合量が5質量%以上で充分なゲル状態を実現することができ、エポキシ樹脂組成物の染み出しやパターン乱れ等を抑制することができる。また、ビニル重合体粉体(A)の配合量としては50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。ビニル重合体粉体(A)の配合量を50質量%以下とすることで、エポキシ樹脂組成物のペースト粘度が上昇するのを抑制することができ、本発明のエポキシ樹脂組成物を使用して各種材料を作製する際の加工性や作業性を良好とすることができる。
また、所望のゲル化性を発現させるために、ゲル化温度の異なる複数のビニル重合体粉体(A)を併用してもよい。
本発明のビニル重合体粉体(A)は、エポキシ樹脂に添加してゲル状態を実現するエポキシ樹脂用プレゲル化剤として使用することができる。
【0040】
<その他添加物>
本発明のエポキシ樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、各種添加剤を配合することができる。
添加剤としては、例えば、シリコーン系やフッ素系消泡剤、レベリング剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、界面活性剤、充填剤、難燃剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、イオン吸着体、可塑剤、顔料、離型剤、ガラスビーズ、無機粒子、応力緩和剤等の慣用の添加剤を使用することができる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤は、それぞれ単独で使用できるが、フェノール系/イオウ系、又はフェノール系/リン系のように2種以上を併用することが好ましい。
可塑剤としては、公知のものを使用でき、例えば、フタル酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤等が挙げられる。
難燃剤は、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、リン系、ハロゲン系、無機系難燃剤等、公知のものを用いればよい。
無機粒子としては、例えば、銀粉、金粉、ニッケル粉、銅粉等の導電性フィラー;窒化アルミニウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ等の絶縁フィラー等が挙げられる。
【0041】
<混合>
本発明のエポキシ樹脂組成物を調製する際には、公知の混練装置を用いることができる。
エポキシ樹脂組成物を得るための混練装置としては、例えば、らいかい機、アトライタ、プラネタリミキサ、ディゾルバー、三本ロール、ボールミル及びビーズミルが挙げられる。また、これらは2種以上を併用することができる。
【0042】
本発明のエポキシ樹脂組成物に添加剤等を配合する場合、配合する順番は特に問わないが、本発明の効果を充分に発揮するために、ビニル重合体粉体(A)はできるだけ最後に混練することが好ましい。また、混練による剪断発熱等で、系内の温度が上がるような場合には、混練中に温度を上げない工夫をすることが好ましい。
【0043】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化して得られる厚さ3mmのエポキシ樹脂硬化物の23℃における全光線透過率は70.0%以上であることが好ましく、80.0%以上であることがより好ましい。さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化して得られる厚さ3mmのエポキシ樹脂硬化物の120℃における全光線透過率は70.0%以上であることが好ましく、80.0%以上であることがより好ましい。
透過率が上記範囲を下回る場合には、光半導体用封止材料として使用した際に、発光効率が低下し、性能が低下する場合がある。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、ビニル重合体粉体(A)の配合により硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物の弾性率が低下する。これにより、エポキシ樹脂硬化物の反り、クラックの抑制、各種環境試験後の反り、クラックの抑制、吸湿試験後の剥離の抑制等の効果が期待できる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、透明アンダーフィル材、透明液状封止材、透明封止用シート、透明ダイアタッチフィルム、透明ダイアタッチペースト、発光ダイオードの封止材、透明接着剤、光学接着剤、液晶、有機EL等の各種フラットパネルディスプレイ等の各種シーリング材等の各種用途に使用することができる。
【0044】
<硬化>
本発明のエポキシ樹脂硬化物は、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる。
硬化条件としては、エポキシ樹脂組成物を構成する各成分の種類や含有量等によって適宜決めることができる。硬化温度としては、80〜180℃が一般的である。
本発明においては、エポキシ樹脂組成物を、例えば、酸無水物、アミン化合物、フェノール化合物等の硬化剤を使用して硬化させることができる。
【0045】
酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、ドデセニル無水コハク酸、ポリアゼライン酸無水物及びポリ(エチルオクタデカン二酸)無水物が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらの中で、耐候性、耐光性、耐熱性等が求められる用途ではメチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸が好ましい。
【0046】
アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、m−キシレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等の脂肪族ポリアミン;イソホロジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、メチレンビスシクロヘキサナミン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン等の脂環族ポリアミン;ジアミノジエチルジフェニルメタン、ジアミノフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジエチルトルエン等の芳香族ポリアミンが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
耐候性、耐光性、耐熱性等が求められる用途では2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン及びイソホロンジアミンが好ましい。
【0047】
フェノール化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD及びこれらビスフェノール類のジアリル化物の誘導体が挙げられる。
これらは、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
【0048】
本発明のエポキシ樹脂組成物を光半導体用封止材料として用いるには比較的着色の少ないものが好ましく、例えば、酸無水物系硬化剤を用いるのが好ましく、脂環式酸無水物系硬化剤がより好ましい。具体的には、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、水素化メチルナジック酸無水物が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0049】
硬化剤の使用量としては、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性及び硬化性に優れることからエポキシ樹脂(B)100質量部に対して50〜150質量部が好ましく、60〜140質量部がより好ましい。より具体的には、酸無水物の場合には、エポキシ基1当量あたりの酸無水物基当量としては0.7〜1.3当量が好ましく、0.8〜1.1当量がより好ましい。また、アミン系化合物の場合には、エポキシ基1当量あたりの活性水素当量としては0.3〜1.4当量が好ましく、0.4〜1.2当量がより好ましい。更に、フェノール化合物の場合には、エポキシ基1当量あたりの活性水素当量としては0.3〜0.7当量が好ましく、0.4〜0.6当量がより好ましい。
【0050】
本発明においては、本発明のエポキシ硬化物の透明性を損なわない範囲で硬化促進剤を使用してもよい。
硬化促進剤は、エポキシ樹脂(B)と硬化剤との反応を促進する作用を有するものであり、本発明のエポキシ樹脂組成物を光半導体用封止材料として使用する場合には、エポキシ樹脂硬化物の着色が少ない硬化促進剤が好ましい。
【0051】
硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン系硬化促進剤;2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール系硬化促進剤;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエタノールアミン、ベンジルメチルアミン等の三級アミン系硬化促進剤;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボレート系硬化促進剤が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0052】
硬化促進剤の配合割合は、エポキシ樹脂(B)100質量%に対して0.05〜5質量%が好ましい。
本発明のエポキシ樹脂硬化物は電気・電子部品用の封止材料、例えば絶縁材料として好適に使用できる。さらに、透明性、耐熱性に優れるため、光半導体用封止材料、光学用接着剤、各種シーリング剤として好適である。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例における各評価項目は、以下の方法により実施した。
【0054】
(1)一次粒子径及び単分散性
ビニル重合体のエマルションをイオン交換水で希釈し、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(島津製作所社製、「SALD−7100」)を用い、体積平均一次粒子径(Dv)及び個数平均一次粒子径(Dn)を測定した。
屈折率は仕込みモノマー組成から算出される屈折率を用いた。粒子がコアシェル構造等の多層構造を持つ場合には、各層毎の屈折率を算出し、層毎の質量比で全体平均を算出して用いた。
いずれも平均径としてはメジアン径を用いた。また、Dv及びDnの値より単分散性(Dv/Dn)を求めた。下記の基準で単分散性を評価した。
ビニル重合体エマルションの試料濃度は、装置に付属の散乱光強度モニターにおいて適正範囲となるよう適宜調整した。
【0055】
(2)アセトン可溶分
ビニル重合体粉体(A)1gをアセトン50gに溶解させ、70℃で6時間還流及び抽出した後、遠心分離装置((株)日立製作所製、「CRG SERIES」)を用いて、4℃にて14,000rpmで30分間遠心分離した。分離したアセトン可溶分をデカンテーションで取り除き、アセトン不溶分を真空乾燥機にて50℃で24時間乾燥させて質量を測定した。アセトン可溶分(質量%)は以下の式にて算出した。
(アセトン可溶分)=(1−アセトン不溶分の質量)×100
【0056】
(3)アセトン可溶分の分子量
上記のアセトン可溶分の測定で得られたアセトン可溶分からアセトンを留去してアセトン可溶分の固形物を得た。この固形物についてゲルパーミエーションクロマトグラフィを用いて下記の条件で質量平均分子量(Mw)を測定した。また、併せて数平均分子量(Mn)も測定した。
装置 :東ソー(株)製HLC8220
カラム:東ソー(株)製TSKgel SuperHZM−M(内径4.6mm×長さ15cm)
本数;4本、排除限界;4×106
温度 :40℃
キャリアー液:テトラヒドロフラン
流量 :0.35ml/分
サンプル濃度 :0.1質量%
サンプル注入量:10μl
標準 :ポリスチレン
【0057】
(4)アルカリ金属イオンの含有量
ビニル重合体粉体(A)20gをガラス製耐圧容器に量り取り、これにメスシリンダーを用いてイオン交換水200mlを加え、蓋をして強く振り混ぜて均一に分散させ、ビニル重合体の分散液を得た。この後、得られた分散液を95℃のギヤーオーブン内に20時間静置してビニル重合体粉体中のイオン分の抽出を行なった。
次いで、ガラス容器をオーブンから取り出して冷却した後、分散液を0.2μmセルロース混合エステル製メンブレンフィルター(アドバンテック東洋(株)製、型番:A020A025A)で濾過し、濾液100mlを用いてビニル重合体粉体中のアルカリ金属イオンを下記の条件で測定した。尚、アルカリ金属イオンの含有量はNaイオン及びKイオンの合計量を測定した。
ICP発光分析装置:Thermo社製、IRIS「Intrepid II XSP」
定量法:濃度既知試料(0ppm、0.1ppm、1ppm及び10ppmの4点)による絶対検量線法
測定波長:Na;589.5nm及びK;766.4nm
【0058】
(5)粉体解砕性
ビニル重合体粉体(A)をイオン交換水で希釈し、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(島津製作所社製、「SALD−7100」)を用いて、超音波照射(周波数42kHz、出力40W、3分間照射)前後の10μm以下の粒子の割合を体積基準で測定した。
(6)分散性
エポキシ樹脂組成物中のビニル重合体の分散状態を、粒ゲージを用いてJIS K−5600に準拠して測定し、下記の基準で分散性を評価した。
○:5μm以下
△:5μmを超える
エポキシ樹脂組成物中でのビニル重合体粉体の分散状態が5μm以下であれば、ファインピッチ化や薄膜化への対応が可能である。
【0059】
(7)ゲル化温度
得られたエポキシ樹脂組成物を動的粘弾性測定装置(ユービーエム(株)製、「Rheosol G−3000」、パラレルプレート直径40mm、ギャップ0.4mm、周波数1Hz、捻り角度1度)を用い、開始温度40℃、終了温度200℃及び昇温速度4℃/分の条件で粘弾性の温度依存性を測定した。
また、測定開始時に10以上である、貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”との比(G”/G’=tanδ)がある温度にて、10を下回るようになった場合にゲル化が進行したと判断し、tanδ=10となる温度をもってゲル化温度とした。
【0060】
(8)ゲル化性能
上記のエポキシ樹脂組成物のゲル化温度の測定において、ゲル化温度−20℃での貯蔵弾性率G’をG’A、ゲル化温度+20℃での貯蔵弾性率G’をG’B(到達弾性率)とし、その比率(G’B/G’A)を求めて、下記の基準でゲル化性能を評価した。
○:G’B/G’Aが1000以上
×:G’B/G’Aが1000未満
G’B/G’Aが1000以上であれば、高温においてもエポキシ樹脂組成物の流動が抑制される。
【0061】
(9)外観
エポキシ樹脂組成物を硬化して得られた厚さ3mmのエポキシ樹脂硬化物について、外観を下記の基準で評価した。
○:目視で凝集物(ブツ)なし
△:目視で凝集物(ブツ)あり
【0062】
(10)全光線透過率
エポキシ樹脂組成物を硬化して得られたエポキシ樹脂硬化物を、3mm×30mm×30mmに切断して試験片とし、ヘイズメーター(村上色彩研究所製、「HR−100」)を用い、23℃及び120℃の条件で硬化物の全光線透過率を測定し、下記の基準で評価した。
尚、120℃の全光線透過率評価は、120℃のオーブン中で30分間加熱した試験片を用いた。
○:全光線透過率が80%以上
△:全光線透過率が50%以上80%未満
×:全光線透過率が50%未満
【0063】
(11)ガラス転移温度
エポキシ樹脂組成物を硬化して得られたエポキシ樹脂硬化物を、3mm×10mm×60mmに切断して試験片とし、動的機械的特性解析装置(機種名「EXSTAR DMS6100」、セイコーインスツル(株)製)により、両持ち曲げモード、昇温速度2℃/分、周波数10Hzの条件でtanδ曲線を測定し、転移点に対応した温度をガラス転移温度とし計測した。
【0064】
(12)比誘電率
エポキシ樹脂組成物を硬化して得られたエポキシ樹脂硬化物を、3mm×30mm×30mmに切断して試験片とし、インピーダンスアナライザー(機種名「E4991A」、アジレントテクノロジーズ社製)を用い、周波数100メガヘルツ時の比誘電率を測定した。比誘電率の値が低いほど絶縁性が良好となる。
【0065】
[ビニル重合体粉体(A−1)〜(A−8)、(A‘−1)の調製]
下記の実施例1〜8、比較例1に従い、ビニル重合体粉体(A−1)〜(A−8)、(A‘−1)を製造した。実施例1、比較例1〜8、比較例1では下記の原料を使用した。

メチルメタクリレート :三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルM」
n−ブチルメタクリレート:三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルB」
n−ブチルアクリレート :三菱化学(株)製
スチレン :新日鐵化学(株)製
ジビニルベンゼン :新日鐵化学(株)製
メタクリル酸 :三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルMAA」
2−ヒドロキシエチルメタクリレート:三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルHO」
アリルメタクリレート :三菱レイヨン(株)製、商品名「アクリエステルA」
ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム:東邦化学工業(株)製、商品名「リカサーフM−300」
過硫酸アンモニウム:和光純薬工業(株)製
過硫酸カリウム :和光純薬工業(株)製
2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル):和光純薬(株)製、商品名「V−65」(10時間半減期温度51℃)
【0066】
[実施例1]ビニル重合体粉体(A−1)の製造
マックスブレンド攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、滴下ポンプ及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコにイオン交換水78.00質量部、メチルメタクリレート2.83質量部、及びn−ブチルメタクリレート2.17質量部を投入し、120rpmで攪拌しながら窒素ガスのバブリングを30分間行なった。
その後、窒素雰囲気下で80℃に昇温し、予め調製した過硫酸アンモニウム0.02質量部及びイオン交換水2.00質量部の水溶液を一括投入して60分間保持し、シード粒子を形成させた。
上記のシード粒子が形成されたフラスコ内に、メチルメタクリレート92.94質量部、n−ブチルメタクリレート2.00質量部、アリルメタクリレート0.06質量部、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム1.00質量部、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.02質量部及びイオン交換水50.00質量部をホモジェナイザー(IKA社製、「ウルトラタラックスT−25」、25000rpm)で乳化処理して得られた混合物を300分かけて滴下して、その後1時間保持し、重合を終了した。得られたビニル重合体エマルションの一次粒子径の評価結果を表1に示す。
得られたビニル重合体エマルションを、大川原化工機(株)製、L−8i型スプレードライヤーを用い、下記条件で噴霧乾燥処理してビニル重合体粉体(A−1)を得た。得られたビニル重合体粉体(A−1)のアセトン可溶分、アセトン可溶分の分子量(Mw、Mn)、アルカリ金属イオンの含有量及び粉体解砕性の評価結果を表1に示す。
【0067】
[噴霧乾燥処理条件]
噴霧方式:回転ディスク式
ディスク回転数:25,000rpm
熱風温度
入口温度:150℃
出口温度:65℃
【0068】
[実施例2〜8,比較例1]ビニル重合体粉体(A−2)〜(A−8)、(A’−1)の製造
実施例2〜8,比較例1は、表1に示す原料組成及び重合条件とする以外は、実施例1と同様にしてビニル重合体粉体(A−2)〜(A−8)、(A’−1)を得た。得られたビニル重合体エマルションの一次粒子径の評価結果を表1に示す。得られたビニル重合体粉体(A−2)〜(A−8)、(A’−1)のアセトン可溶分、アセトン可溶分の分子量(Mw、Mn)、アルカリ金属イオンの含有量及び粉体解砕性の評価結果を表1に示す。
【0069】
[比較例2]ビニル重合体粉体(A’−2)の製造
マックスブレンド攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、滴下ポンプ及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコにイオン交換水157.57質量部、n−ブチルアクリレート3.05質量部、スチレン0.83質量部、ジビニルベンゼン0.13質量部、及びジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム0.20質量部を投入し、120rpmで攪拌しながら窒素ガスのバブリングを30分間行なった。
その後、窒素雰囲気下で80℃に昇温し、予め調製した過硫酸カリウム0.01質量部及びイオン交換水3.22質量部の水溶液を一括投入して60分間保持し、シード粒子を形成させた。
上記のシード粒子が形成されたフラスコ内に、過硫酸カリウム0.06部を添加し、n−ブチルアクリレート58.04質量部、スチレン15.72質量部、ジビニルベンゼン2.36質量部、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム0.31質量部からなる単量体混合物を120分かけて滴下して、その後1時間保持し、第1段目の重合を終了した。
次いで、過硫酸カリウム0.02質量部を添加し、メチルメタクリレート19.29質量部、メタクリル酸0.48質量部、アリルメタクリレート0.10質量部、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム0.10質量部からなる単量体混合物を30分かけて滴下して1時間保持し、重合を終了した。得られたビニル重合体エマルションの一次粒子径の評価結果を表1に示す。
得られたビニル重合体エマルションは、実施例1と同様に噴霧乾燥処理して、ビニル重合体粉体(A’−2)を得た。得られたビニル重合体粉体(A’−2)のアセトン可溶分、アセトン可溶分の分子量(Mw、Mn)、アルカリ金属イオンの含有量及び粉体解砕性の評価結果を表1に示す。
【0070】
【表1−1】



【表1−2】



【0071】
表中の略号は以下の化合物を示す。
MMA :メチルメタクリレート
n−BMA:n−ブチルメタクリレート
n−BA :n−ブチルアクリレート
St :スチレン
DVB :ジビニルベンゼン
AMA :アリルメタクリレート
MAA :メタクリル酸
HEMA :2−ヒドロキシエチルメタクリレート
乳化剤 :ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アンモニウム
V−65 :2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)
【0072】
[実施例9〜16、比較例3〜5]
脂環式エポキシ樹脂(ダイセル社製、「セロキサイド2021」)及びビニル重合体粉体を表2で示す割合で配合し、遊星運動式真空ミキサー(シンキー社製、商品名「泡取り練太郎ARV−310LED」)を使用して、大気圧下で回転数1200rpmの条件で3分間混練を行ない、混練物を得た。得られた混練物を3本ロールミル(EXAKT社製、「M−80E」)を使用し、ロール回転数200rpm、ロール間隔20μm・10μmで1パス、10μm・5μmで1パス、5μm・5μmで1パス処理した。
その後、再び遊星運動式真空ミキサー(シンキー社製、商品名「泡取り練太郎ARV−310LED」)を使用して、3KPaの減圧下で回転数1200rpmの条件で2分間混練・脱泡を行ない、エポキシ樹脂組成物を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物について分散性、ゲル化温度、ゲル化性能の評価を実施した。評価結果を表2に示す。
【0073】
[実施例17〜24、比較例6〜8]
得られたエポキシ樹脂組成物に、硬化剤として酸無水物系硬化剤(商品名「リカシッドMH−700」、新日本理化(株)製)、硬化促進剤としてテトラブチルホスホニウムジエチルホスホジチオネート(日本化学工業社製、「ヒシコーリンPX−4ET」)を表3に示す割合で配合し、遊星運動式真空ミキサー(シンキー社製、商品名「泡取り練太郎ARV−310LED」)を用い、3KPaの減圧下で回転数1200rpmの条件で2分間混練・脱泡を行い、エポキシ樹脂組成物を得た。
次いで、長さ300mm×幅300mm×厚さ5mmの強化ガラス板2枚の、それぞれの強化ガラス板の片面にPETフィルム(東洋紡(株)製、商品名:TN200)を貼り、PETフィルム面が向き合うように並べ、強化ガラス板の間に厚み3mmのテフロン(登録商標)製のスペーサーを挟んで型を作製した。この型の中に上記のエポキシ樹脂組成物を流し込み、クランプで固定し100℃で3時間予備硬化を行なった後、120℃で4時間硬化を行い、型から取り出して厚さ3mmの硬化物を得た。エポキシ樹脂硬化物の外観、全光線透過率、ガラス転移温度、比誘電率の評価結果を表3に示す。
【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
[実施例25、26、比較例9〜11]
ビスフェノールA型水素化脂環式エポキシ樹脂(三菱化学社製、「YX−8000」)及びビニル重合体粉体を表4で示す割合で配合し、実施例9と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物の分散性、ゲル化温度、ゲル化性能の評価を実施した。評価結果を表4に示す。
【0077】
[実施例27、28、比較例12〜14]
得られたエポキシ樹脂組成物に、硬化剤として酸無水物系硬化剤(商品名「リカシッドMH−700」、新日本理化(株)製)、硬化促進剤としてテトラブチルホスホニウムジエチルホスホジチオネート(日本化学工業社製、「ヒシコーリンPX−4ET」)を表5に示す割合で配合し、実施例17と同様にしてエポキシ樹脂硬化物を得た。得られたエポキシ樹脂硬化物の外観、全光線透過率、ガラス転移温度、比誘電率の評価結果を表5に示す。
【0078】
【表4】

【0079】
【表5】

【0080】
表2〜5から明らかなように、本発明のビニル重合体粉体(A−1)〜(A−8)を添加したエポキシ樹脂組成物は、分散性に優れ、高いゲル化性能を有する。また、ビニル重合体粉体(A−1)〜(A−8)を添加したエポキシ樹脂組成物を硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物は、外観に優れ、高い透明性を有している。
特に、カルボキシル基を有するビニル重合体粉体(A−2,A−7)、水酸基を有するビニル重合体粉体(A−3,A−4,A−5,A−8)を添加して得られるエポキシ樹脂硬化物は、高い透明性を有している(実施例18〜21,23,24,28)。さらに、高温条件下でも透明性の低下が少ない(実施例18〜21,23,24)。そのため、高い透明性及び高温条件下での透明性が要求される光半導体用封止材料等の用途においても使用可能である。
屈折率が1.50であるビニル重合体粉体(A−6)〜(A−8)を添加して得られるエポキシ樹脂硬化物は、エポキシ樹脂硬化物とビニル重合体の屈折率差が小さいため、高い透明性を有している(実施例22〜24)。さらに、カルボキシル基、水酸基を導入することにより、高温条件下でも高い透明性を維持することが可能である(実施例23,24)。
また、本発明のビニル重合体粉体(A−1)〜(A−8)を添加して得られるエポキシ樹脂硬化物は、ガラス転移温度の低下が少ないため、高い耐熱性が要求される用途においても使用が可能である。更に、比誘電率が低いことから電子材料分野にも好適である。
【0081】
アセトン可溶分が本発明の範囲外である、ビニル重合体粉体(A’−1)を添加したエポキシ樹脂硬化物は、アセトン可溶分が多いため、ビニル重合体粉体(A)を添加していない硬化物(比較例8、比較例14)と比較するとガラス転移温度が大幅に低下している。(比較例6、比較例12)
アセトン可溶分、アセトン可溶分分子量が本発明の範囲外である、ビニル重合体粉体(A’−2)を添加したエポキシ樹脂組成物は、ゲル化性が見られなかった。(比較例4、10)
また、ビニル重合体粉体(A‘−2)はアルカリ金属イオン量が多いため、添加して得られるエポキシ樹脂硬化物の電気特性が低位であった。さらに、ビニル重合体粉体(A’−2)はガラス転移温度が低いため、添加して得られるエポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度の低下が見られた。
ビニル重合体を添加していない比較例5、11のエポキシ樹脂組成物は、ゲル化性が見られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセトン可溶分が2質量%以上35質量%以下で、アセトン可溶分の質量平均分子量が10万以上で、体積平均一次粒子径(Dv)が200nm以上であるビニル重合体粉体(A)。
【請求項2】
ビニル重合体粉体(A)のアセトン可溶分が30質量%未満である請求項1に記載のビニル重合体粉体(A)。
【請求項3】
ビニル重合体粉体(A)のアセトン可溶分が25質量%以下である請求項1に記載のビニル重合体粉体(A)。
【請求項4】
ビニル重合体粉体(A)の20℃での屈折率が1.48以上1.51以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載のビニル重合体粉体(A)。
【請求項5】
ビニル重合体粉体(A)のガラス転移温度が0℃以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載のビニル重合体粉体(A)。
【請求項6】
ビニル重合体粉体(A)が、メチルメタクリレート70〜99質量%、メチルメタクリレート以外のビニル単量体原料30〜1質量%を含む単量体原料を重合して得られたビニル重合体を粉体化して得られたものである請求項1〜5のいずれか一項に記載のビニル重合体粉体(A)。
【請求項7】
単量体原料が、メチルメタクリレート以外のビニル単量体原料として、カルボキシル基含有ビニル単量体、水酸基含有ビニル単量体及びグリシジル基含有ビニル単量体から選ばれる少なくとも1種の官能基含有単量体を含有する、請求項6に記載のビニル重合体粉体(A)。
【請求項8】
単量体原料が、メチルメタクリレート以外のビニル単量体原料として、カルボキシル基含有ビニル単量体、水酸基含有ビニル単量体及びグリシジル基含有ビニル単量体から選ばれる少なくとも1種の官能基含有単量体を2質量%以上含有する請求項7に記載のビニル重合体粉体(A)。
【請求項9】
ビニル重合体粉体(A)のアルカリ金属イオンの含有量が10ppm以下である請求項1〜8のいずれか一項に記載のビニル重合体粉体(A)。
【請求項10】
粒子径10μm以下の粒子の占める割合が30vol%未満であり、周波数42kHZ、出力40Wの超音波を3分間照射すると、10μm以下の粒子径の粒子の占める割合が30vol%以上となる特性を有する請求項1〜9のいずれか一項に記載のビニル重合体粉体(A)。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のビニル重合体粉体(A)からなるエポキシ樹脂用プレゲル化剤。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のビニル重合体粉体(A)とエポキシ樹脂(B)とを含有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項13】
エポキシ樹脂(B)が脂環式エポキシ樹脂である請求項12に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項14】
前記ビニル重合体粉体(A)と前記エポキシ樹脂(B)を含有するエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる厚さ3mmの硬化物の23℃における全光線透過率が70.0%以上である請求項12又は13に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
【請求項16】
請求項15に記載の硬化物を含む光半導体用封止材料。

【公開番号】特開2013−28813(P2013−28813A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2012−217760(P2012−217760)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】