説明

ビニールハウスの開閉機構

【課題】本発明の課題は、ビニールハウスのビニールシートを開閉するための装置において、シートの巻き取りまたは引き出しをおこなう巻き取りシャフトが負荷によって撓むことを防ぎ、スムーズなビニールシートの開閉動作を実現する機構を提供することにある。
【解決手段】本発明のビニールハウスのシート開閉装置は、パイプ部材が適宜の間隔をおいて連設された蒲鉾形態のビニールハウス構造体の側壁部に、ビニールシートを巻き取るロールまたはビニールシート引き出し用紐部材を巻き取るリールを設置したシャフトを水平に維持する支承部材が、前記シャフトの中央領域において前記パイプ状構造体に取り付けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニールハウスのビニールを開閉するための機構、装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビニールハウスは寒冷期に温暖な空気を室内に保持して植物を栽培するのに効果的であるだけでなく、暑い時期には天井部に滞留する高温空気を排気部を設けることで室内換気を促進し夏野菜等の栽培にも効果的な設備である。すなわち上部の高温空気を逃がすことで下方にある側壁にもうけた窓や出入り口から涼しい外気を自然に取り込み好適な環境を保つことができるのである。農場等の大型ハウスであれば天井部に開閉自在の天窓やビニールの一部を開閉する機構を備えたものもあるが、設備的に大掛かりなものとなる。個人農家が多く使っている蒲鉾型の簡易形ビニールハウスは、一般に金属や合成樹脂製のパイプのような構造体をアーチ状に形成したものが所定間隔で設置された骨組みであって、その上にビニールシートが張られたものである。この蒲鉾型の簡易形ビニールハウスは屋根全体を一枚のビニールシートを強固な金具等を多数用いて骨組みに固定し覆うようにしているため、面積の広いシートを張るには多くの人手を要するという問題と共に、気候条件に合わせ当該屋根を開閉したいがそれを実行するのは構造的に極めて困難であるという問題があった。
【0003】
この問題に鑑み、本出願人は、先に蒲鉾型等の簡易形ビニールハウスにおいて、ビニールシートの張りわたしと固定及び天井部分と側壁部の開閉操作を一人で実行できるビニールハウスの手動開閉装置を提供することを提示(特許文献1)し、特許第3642747号として登録された。この発明は、パイプ状構造体を骨組みとした蒲鉾型のビニールハウスにおいて、該ハウスの半円筒部分及び側壁を覆うビニールシートを棟に沿って半分に分け、両側の側壁部に該ビニールシートを巻き取るロールを設置すると共に、該ビニールシートの引き出し端部に取付けた引き出し用紐部材を巻き取るリールをそれぞれ反対側の側壁部に設置するようにしたものである。この方式でビニールシートの巻き取りと巻き上げを実施した場合、巻き取りシャフトが長くなると負荷の増加に従って撓み現象が生じ、ビニールシートの巻き取りや引き出し用紐部材を巻き取る複数のリールの位置に狂いが生じ、それぞれに無理な力が加わって、スムーズな駆動が出来なかったり、部材を痛めたりしてしまう不具合が認められた。また、引き出し用紐部材はビニールシートの端部に固定された引出し竿に結ばれてビニールシートを引き出すようにしていたが、ビニールシートは引張られると伸びる素材であるため、繰り返し使用する過程でビニールシートが局部的に伸び、ビニールシートが歪んできれいに巻き取りできず、巻き取りシャフトにかかる負荷が不均一になってスムーズな巻き取り駆動が出来なくなるという不具合も認められた。
【特許文献1】特開2002−78423号公報 「ビニールハウスの手動開閉装置」平成14年3月19日公開
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ビニールハウスのビニールシートを開閉するための装置において、シートの巻き取りまたは引き出しをおこなう巻き取りシャフトが負荷によって撓むことを防ぎ、スムーズなビニールシートの開閉動作を実現する機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のビニールハウスのシート開閉装置は、パイプ部材が適宜の間隔をおいて連設された蒲鉾形態のビニールハウス構造体の側壁部に、ビニールシートを巻き取るロールまたはビニールシート引き出し用紐部材を巻き取るリールを設置したシャフトを水平に維持する支承部材が、前記シャフトの中央領域において前記パイプ状構造体に取り付けられていることを特徴とする。
また、本発明のビニールハウスのシート開閉装置では、ビニールシートを巻き取るロールを設置したシャフトを水平に維持する支承部材として、前記ロールに巻き取られるビニールシートを受け止める断面が半円形状の樋部材と該樋部材を下から保持しパイプ部材に固定する部材とからなるものとした。
また、本発明のビニールハウスのシート開閉装置では、ビニールシート引き出し用紐部材を巻き取るリールを設置したシャフトを水平に維持する支承部材として、前記シャフトの貫通する穴がシャフト長さ方向に複数個設けられた部材からなるものとした。
さらに、本発明のビニールハウスのシート開閉装置では、ビニールシートのパイプ部材と接触し摺動する部分には強化テープが貼り付けられ、該強化テープの端部はシートの端辺において引き出し用紐部材が連結される引き出し竿に取り付けられている構成を採用した。
【発明の効果】
【0006】
本発明のビニールハウスのシート開閉装置は、パイプ部材が適宜の間隔をおいて連設された蒲鉾形態のビニールハウス構造体の側壁部に、ビニールシートを巻き取るロールまたはビニールシート引き出し用紐部材を巻き取るリールを設置したシャフトを水平に維持する支承部材が、前記シャフトの中央領域において前記パイプ状構造体に取り付けられているので、負荷を受けてもシャフトが屈曲変形することが防止され、ビニールシートの引き出し及び巻き取りをスムーズに行うことが出来る。
また、ビニールシートを巻き取るロールを設置したシャフトを水平に維持する支承部材として、前記ロールに巻き取られるビニールシートを受け止める断面が半円形状の樋部材と該樋部材を下から保持しパイプ部材に固定する部材とからなるものとした本発明のビニールハウスのシート開閉装置では、巻かれたビニールシートの最下端部が常に樋部材に接触して保持されるので、シャフト軸を水平に維持できスムーズな巻き取りと引き出しがなされる。
また、ビニールシート引き出し用紐部材を巻き取るリールを設置したシャフトを水平に維持する支承部材として、前記シャフトの貫通する穴がシャフト長さ方向に複数個設けられた部材からなるものとした本発明のビニールハウスのシート開閉装置では、シャフトの中間位置を複数箇所で回転自在に支承されるため、シャフトの屈曲変形が防止されて複数箇所に取り付けられたリールが同じ位置姿勢を保つ状態で巻き取り繰り出しがなされる。このことにより、ビニールシート引き出し用紐部材の巻き取り繰り出しをスムーズに行うことが出来る。
さらに、本発明のビニールハウスのシート開閉装置では、ビニールシートのパイプ部材と接触し摺動する部分には強化テープが貼り付けられ、該強化テープの端部はシートの端辺において引き出し用紐部材が連結される引き出し竿に取り付けられている構成を採用したことにより、巻き取り繰り出しの際に掛かる張力によってビニールシートが伸びることを防止できるため、シートの変形を抑えスムーズな巻き取りと引き出しがなされる。また、巻き取り繰り出しの際にパイプ部材と接触して摺動するが、そのときの摩耗を防止し、ビニールシートを長持ちさせることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1に本発明の装置を適用したビニールハウスの1形態を示す。単純な蒲鉾型ハウスで出入り口が設置される両端壁面部は省き、アーチ形状のパイプ構造体とビニールシートの開閉機構だけを示している。ビニールハウスの手動開閉装置の構成と動作については特許文献1を参照して頂くとして、本発明の実施形態を説明する前に、ここではその概略を説明しておく。
このビニールハウスのシート開閉装置はパイプ状構造体1を骨組みとした蒲鉾型等のビニールハウスを棟に沿って半分に分けて覆うビニールシート2を巻き取るロール3を設置すると共に、該ビニールシート2の引き出し端部に取付けた引き出し用紐部材5を巻き取るリール4を側壁部に設置したものである。前記パイプ状構造体1に一体に形成されたガイド部またはパイプ状構造体1の管内部に引き出し用紐部材5が案内されて巻き取り繰り出しがなされる。ビニールシート2の先端部分を引出し竿6に固定し、前記構造体のパイプをレールとして該引出し竿6に構造体1と同じ間隔で配設されたローラ17が走行するガイド機構形態が採られている。前記ガイド部材に案内される引き出し用紐部材5には帯状のものが使用され、素材は強化ビニールを用い糸が芯材として入った引っ張り強度の高いものが好ましい。
【0008】
引き出し紐部材5用のリール4はパイプ状の構造体1と同じ間隔で回転シャフト8に固定され、該シャフト8の両端部はハウスの外側四隅に立てられた支柱7に取り付けられた軸受9により回転自在に設置され、一端部に取り付けられたハンドル10によって回転駆動される。勿論これは手動ではなく電動形態であっても良い。引き出し操作がなされる。また、ビニールシート2を巻き付けるロール3もリール4と同様の形態でシャフト8に固定され、該シャフト8の両端部はハウスの外側四隅に立てられた支柱7に取り付けられた軸受9により回転自在に設置され、一端部に取り付けられたハンドル10によって回転駆動される。図1に示した実施形態では上下に3段のハンドルを配置しており、上段がビニールシートの巻き取りロール用、中段が引き出し紐部材のリール用、そして下段は日照調整用のネット11の巻き取り用である。上段のハンドル10を回すと、手前側の棟に張られているビニールシート2をロール3に巻き取る動作となる。ロール3に巻き取られ開放状態となった状態でビニールシート2を張る動作は、反対側の棟にゆき中段のハンドル10を回動する。すると、リール4が引き出し紐部材5を巻き取り、ロール3に巻き取られた状態のビニールシート2を引き出してパイプ部材1の上に張っていく。
【0009】
前述したように、このハンドル10を回動し、ビニールシート2をロール3に巻き付ける際、または引き出し紐部材5をリール4に巻き取る際に、負荷が掛かって、シャフト8が撓むことの不都合を解決することが本発明の目的である。
本発明のビニールハウスのシート開閉装置は、パイプ部材が適宜の間隔をおいて連設された蒲鉾形態のビニールハウス構造体の側壁部に、ビニールシート2を巻き取るロール3またはビニールシート引き出し用紐部材5を巻き取るリール4を設置したシャフト8を水平に維持する支承部材を、前記シャフト8の中央領域において前記パイプ部材1に取り付けられた構成を採るようにした。
【実施例】
【0010】
図2に示した部材12はビニールシート2を巻き取るロール3を受け止め水平状態に支承する断面が半円形状の樋部材(図のA参照)である。プラスチック又はブリキ等の金属板で形成する。部材13は前記樋部材12をパイプ部材1に取り付ける部材であって、ここに示した例は図のBにあるとおり樋部材12を下から支えるU字状の受け部とブラケット部、端部にはパイプ部材1を握り込むホルダー部13aと締め付けネジ13bとから成るもの(図のC:部分拡大図参照)であるが、要は樋部材12を水平に安定してパイプ部材1に取り付ける部材であればよく、適宜の形態が設計できる。この実施例をパイプ部材1に取り付けた形態を図3に示す。取り付け部材13のホルダー部13aにパイプ部材1を挟持させ、締め付けネジ13bを締めて固定する。複数のパイプ部材1に取り付け部材13を取り付け、そのU字状の受け部で樋部材12を水平に支承させるようにする。U字状の受け部と樋部材12の結合は接着又は溶接等適宜の方法でよいが、樋部材12の内面に突部が生じないようにする固着法が望ましい。ビニールシート2を巻き込み、引き出しする際に該突部がシート面を引っかくことがないためである。また、ロール3に巻かれたシート2の厚さ寸法は巻かれた状態によって変化するので、巻かれたビニールシート2の最下端部が常に樋部材内面に接触して保持される形態を採るためにはシャフト8の両端部を支承する軸受9が支柱7に対して上下方向のみに厚さ変動分だけ移動可能な形態で取り付けられることが望ましい。樋部材12によるロール3の水平保持が実現され、シャフト8の軸を水平に維持できスムーズな巻き取りと引き出しがなされる。
【0011】
次に、ビニールシート引き出し用紐部材5を巻き取るリール4を設置したシャフト8を水平に維持する支承部材の実施例を図4に示す。図のAに示す例は板状体の両端部を直角に立ち上げコの字状とした支承部材14で、該支承部材14の両側の垂直部にシャフト8を貫通させる穴14aを穿設したものである。該支承部材14の下面にはブラケット部が一体的に固着され、その反対側端部にはパイプ部材1を握り込むホルダー部14bと締め付けネジ14cが一体的に取り付けられている。この実施例をパイプ状構造体1に取り付けた形態を図5に示す。支承部材14のホルダー部14bにパイプ部材1を挟持させ、締め付けネジ14cを締めて固定する。複数のパイプ状構造体1に支承部材14を取り付け、貫通穴14aでシャフト8を受け水平に支承させるようにする。
図4のBに示した支承部材15は、パイプ部材1間の位置関係を安定強固にするハウスパイプ補強材を兼用したものである。図示されているように貫通穴15aを穿設した部材をほぼパイプ間隔で一体的に取り付けると共に、パイプ部材1の位置にあわせて穿設された穴15bが配置されている。ハウスへの取付はこの穿設穴15bに図中で示しているようにパイプ部材1(破線)に嵌め込んで溶接若しくは適宜の固定部材で水平に固着する。これによって、シャフト8は安定的に水平状態が維持されると共に、パイプ部材1の位置関係も安定して強固となる。
【0012】
次に、ハウスシートの補強について好ましい形態を図6に示す。スムーズなビニールシートの開閉動作を実現する機構としては、シートの巻き取りまたは引き出しをおこなう巻き取りシャフトが負荷によって撓むことを防ぐだけでなく、ビニールシート2が使用する過程で部分的に伸びて歪まないようにすることも重要な問題となる。そこで、本発明ではパイプ部材1と接触し摺動する部分には強化テープ16が貼り付けられ、該強化テープの端部はシートの端辺において引き出し用紐部材5が連結される引き出し竿6に取り付けられているローラ17に締結された構成を採用した。強化テープ16は引張り強度と摩擦強度を備えたものであれば、市販の粘着テープを利用することができる。この構成を採用したことにより、ビニールシート2は水平に保たれたロール3に巻き取られる際に、引張り方向に所定間隔に張られた強化テープで補強されているため、シート2が部分的伸びることは無く均一に力が作用することとなり、安定して巻き取りがなされる。また、引き出しに際しては水平に保たれたシャフト8に固定されたリール4によって均一条件で巻かれる引き出し用紐部材5の引き出し力はシート2の端部の引出し竿6に構造体1と同じ間隔で配設されたローラ17を介して引出し竿6に作用し、ビニールシート2を全体的に引き上げる力となって作用し、安定した引き出しを行う。この際、引張り方向に所定間隔に張られた強化テープで補強されているため、シート2が部分的伸びることは無く均一に力が作用することとなり、安定して巻き取りがなされることは巻き取りの際と同様である。しかも、シート2の巻き取りまたは引き出しをおこなう際には、パイプ部材1の上を摺動することになるが、この接触部分には強化テープ16が貼り付けられているため、シートの摩耗が防止できるという効果をも奏する。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、農業用のビニールハウスを想定して説明してきたが、本発明のシート巻き取り機構はそれに限らず、他のシート部材の巻き取り、引き出し機構、例えば先の特許文献1で紹介した家屋の雪下ろし装置にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のシート部材の巻き取り、引き出し機構をビニールハウスに適用した例を示す図である。
【図2】ビニールシートを巻き取るロールを受け止め水平状態に支承する部材の例を示す図である。
【図3】ロールを水平状態に支承する部材をパイプ部材に取り付けた形態を示す図である。
【図4】ビニールシート引き出し用紐部材を巻き取るリールを設置したシャフトを水平に維持する支承部材を示す図である。
【図5】リールを水平状態に支承する部材をパイプ部材に取り付けた形態を示す図である。
【図6】ビニールシートが使用する過程で部分的に伸びて歪まないよう補強する形態を示す図である。
【符号の説明】
【0015】
1 パイプ部材(構造体) 2 ビニールシート
3 シート巻き取りロール 4 引き出し用紐部材巻き取りリール
5 引き出し用紐部材 6 引き出し用竿
7 支柱 8 シャフト
9 軸受 10 ハンドル
11 網部材 12 樋部材(ロール支承部材)
13 樋取り付け部材 14 支承部材
15 ハウスパイプ補強を兼ねた支承部材 16 強化テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ部材が適宜の間隔をおいて連設された蒲鉾形態のビニールハウス構造体の側壁部に、ビニールシートを巻き取るロールまたはビニールシート引き出し用紐部材を巻き取るリールを設置したシャフトを水平に維持する支承部材が、前記シャフトの中央領域において前記パイプ状構造体に取り付けられていることを特徴とするビニールハウスのシート開閉装置。
【請求項2】
ビニールシートを巻き取るロールを設置したシャフトを水平に維持する支承部材は、前記ロールに巻き取られるビニールシートを受け止める断面が半円形状の樋部材と該樋部材を下から保持しパイプ部材に固定する部材とからなる請求項1に記載のビニールハウスのシート開閉装置。
【請求項3】
ビニールシート引き出し用紐部材を巻き取るリールを設置したシャフトを水平に維持する支承部材は、前記シャフトの貫通する穴がシャフト長さ方向に複数個設けられた部材からなる請求項1に記載のビニールハウスのシート開閉装置。
【請求項4】
ビニールシートのパイプ部材と接触し摺動する部分には強化テープが貼り付けられ、該強化テープの端部はシートの端辺において引き出し用紐部材が連結される引き出し竿に取り付けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載のビニールハウスのシート開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−306993(P2008−306993A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158786(P2007−158786)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(500308705)
【Fターム(参考)】