説明

ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶

【課題】 芳香族ポリイミドの製造で使用される有機溶媒に対する未溶解物が少なく、均一な溶解性を有し、且つ、溶解と共に進行する重合反応に遅延等を引き起こさないビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶を提供すること。
【解決手段】 下記測定法で測定される100μm以上の頻度が34%以下であり、17μm以下の頻度が46%以下であるビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶。
頻度測定法:レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置により測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い溶解性を有するビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリイミドは、耐熱性、寸法安定性、絶縁性、ガスバリヤ性等に優れた樹脂として注目されており、電子材料製品など種々の分野に使用されている。芳香族ポリイミドは、原料である、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを適当な溶媒に溶解し、重合反応する方法等によって製造することができる。
上記芳香族ポリイミドの製造においては製造工程に手間をかけず、生産効率を上げ、異物の少ない製品を製造することが課題として挙げられている。
【0003】
特許文献1等には芳香族ポリアミドの前駆体であるポリアミック酸溶液の製造時、溶媒にビフェニルテトラカルボン酸二無水物を添加し、均一混合した後に、芳香族ジアミンを添加することが開示されている。特許文献2等には芳香族テトラカルボン酸成分を有機極性溶媒に溶解後にフィルターで濾過することや、ポリアミック酸溶液を製造した後に前記ポリアミック酸をフィルターで濾過することが開示されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−28432号公報
【特許文献2】特開平9−188763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
芳香族ポリイミドの製造においては、前述したように、製造工程に手間をかけず、生産効率を上げ、異物の少ない製品を製造していくかが課題となる。
しかしながら、従来の手法では、芳香族ポリイミドの製造における、原料の添加順序や製造後の処理方法については記載されているが、各々の原料をいかに短時間で芳香族ポリイミドの製造で使用される有機溶媒に溶解し、安定な重合反応を行うかの問題は解決されていない。又未溶解物や異物についても、それが発生した後の対策は提示されているが、発生原因を無くすことは提示していない。従って本発明の目的は、上記従来の問題点を解消し、該有機溶媒に対する未溶解物が少なく、均一な溶解性を有し、且つ、溶解と共に進行する重合反応に遅延等を引き起こさないビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶が特定の粒径の頻度が特定範囲であることで、芳香族ポリイミド製造時に使用される特定の溶媒に対する未溶解物が少なく、均一な溶解性を有し、且つ、溶解と共に始まる重合反応も安定に進行することを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明の要旨は下記[1]〜[5]に存する。
[1] 下記測定法で測定される100μm以上の頻度が34%以下であり、17μm以
下の頻度が46%以下であるビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶。
頻度測定法:レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置により測定する。
[2] 300μm以上の頻度が2%以下であることを特徴とする[1]に記載のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶。
[3] 100μm以上300μm未満の頻度が32%以下であることを特徴とする[1]又
は[2]に記載のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶。
[4] 前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶中のビフェニルトリカルボン酸無水物が0.3重量%未満であることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶。
[5] 前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶中の水分量が230ppm以下であることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶。
【発明の効果】
【0007】
本発明のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶は、芳香族ポリイミド製造時に使用される特定の溶媒に対する未溶解物が少なく、均一な溶解性を有し、且つ、溶解と共に進行する重合反応に遅延等を引き起こすことなく、芳香族ポリイミド製造工程に手間をかけず、生産効率を上げ、異物の少ない所望の芳香族ポリイミドを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
【0009】
本発明は100μm以上の頻度は34%以下であり、17μm以下の頻度が46%以下であるビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶である。100μm以上の頻度は好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下である。100μm以上の頻度が過度に多いと、芳香族ポリイミド樹脂製造に使用される溶媒(例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等)への溶解性が損なわれ、溶解に時間を要したり、解け残りが生じる可能性がある。17μm以下の頻度は好ましくは35%以下、より好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下である。17μm以下の頻度が過度に多いと、初期に溶解が急激に進むが、該溶解とともに進行する重合反応により溶液の粘度が上昇し、未溶解のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶の溶解を阻害する可能性がある。
【0010】
本発明のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶は300μm以上の頻度は通常2%以下、好ましは1%以下、更に好ましくは0.2%以下である。300μm以上の頻度が過度に多い場合は、大粒子の存在により、前記溶媒への溶解性が損なわれ、解け残りが生じる可能性がある。
【0011】
更に本発明のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶は100μm以上300μm未満の頻度は通常32%以下、好ましくは25%以下、更に好ましくは7%以下である。100μm以上300μm未満の頻度が過度に多い場合は、前記溶媒への溶解性が損なわれ、解け残りが生じる可能性がある。
【0012】
本発明のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶は、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下BPDAと称する場合がある)を主成分とし、通常、不純物としてビフェニルテトラカルボン酸一無水物、ビフェニルトリカルボン酸無水物、水分等を含有する組成物である。
【0013】
本発明のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶中のビフェニルトリカルボン酸無水物が通常0.3重量%未満、好ましくは0.1重量%未満である。ビフェニルトリカルボン酸二無水物の含有量が過度に多い場合は、ビフェニルトリカルボン酸無水物等が芳香族ポリイミド製造時に重合停止剤として作用し、所望の芳香族ポリイミドが得られない可能性がある。
【0014】
更に、本発明のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶中の水分の含有量は、通常230ppm以下、好ましくは100ppm以下である。水分の含有量が過度に多いとビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶の前記溶媒への溶解を阻害する可能性があり、更に芳香族ポリイミド製造時の重合反応に悪影響を与える可能性がある。
なお、上記のビフェニルテトラカルボン酸一無水物、ビフェニルトリカルボン酸無水物、水分は、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶を製造する際に副生したり、混入する不純物である。
【0015】
本発明のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶の製造方法は、まず粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶を製造し、次いで前記粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶をビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶とする工程からなる。
【0016】
粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶の製造方法は一般的にビフェニルテトラカルボン酸(以下、BTCと称する場合がある)を脱水閉環することによって行われている。一方、BTCの製造方法としては、例えば以下の(i) 、(ii)に記載の方法等が挙
げられる。
(i) o−フタル酸ジメチルの脱水素二量化反応で得られたビフェニルテトラカルボン
酸テトラメチルを、水性媒体中で加水分解する方法。
(ii) 無水フタル酸をハロゲン化して得られる4−ハロフタル酸を、水性媒体中、金属
触媒の存在下、脱ハロゲン二量化し、ビフェニルテトラカルボン酸テトラアルカリ金属塩水溶液とし、これを中和する方法。
【0017】
上記の様な方法により製造されたBTCは、適当な方法、例えば、無溶媒中で減圧下に加熱する方法、無水酢酸などの液状媒体中にて加熱する方法などにより脱水反応され、粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶が製造される。
上述の製造方法においては、各工程の反応条件を適当に制御することにより、不純物を低減した粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶が得られる。
【0018】
粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶を本発明におけるビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶とするには、前記粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶を例えば、特定の粉砕機により粉砕する方法及び/又は前記粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶より特定の粒度のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶を選別する方法等が挙げられる。
前記粉砕機の種類としては微粉砕機、解砕機、整粒機などが挙げられ、好ましくは微粉砕機、整粒機、であり、更に好ましくは粒径分布が制御可能な微粉砕機である。粉砕の条件は窒素下、30℃以下で行うのが好ましい。
又、選別する方法としては篩分級器、気流分級器が挙げられ、好ましくは篩分級器である。篩分級器で用いられる篩の目開きは300μm、好ましくは106μmを使用し、大粒径のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶を取り除き、更に、例えば目開き17μmの篩を使用し、小粒径のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶を取り除くことができる。篩別の条件は窒素下、クリーン度がクラス10000、好ましくはクラス100の条件下(例えば、クリーンボックス内)、30℃以下で行うのが好ましい。大きな目開きの篩上のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶は再度粉砕等を行うことで再利用が可能となり、小さな目開きの篩下のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶は再溶解して晶析等を行うことにより、再利用可能となる。篩別の条件は水分・異物が混入しない条件で行うことが好ましい。
【実施例】
【0019】
次に、本発明の実施例により詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以
下の記載例に限定されるものではない。以下において、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶の物性ないし特性の評価は次の方法により行った。
【0020】
<ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶の溶解時間の測定>
撹拌機を具備した、ジャケット付きガラス製セパラブルフラスコ内を窒素置換し、ジャケット温度を25℃に設定した。ジメチルアセトアミド200gを添加し、ジアミノジフェニルエーテル19.32gを加え、200rpmで撹拌機を始動し、溶解させた。前記ジアミノジフェニルエーテルの溶解が完了したのち、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶28.39gを添加した。ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶を添加してから、溶解完了までの時間を測定した。
【0021】
<ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶の頻度分布測定>
所定量秤量したビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶に、0.2重量%界面活性剤(トリトンX:商標名)水溶液を1ml加え、スラリー溶液とした。前記スラリー溶液を用いて、日機装(株)製のレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置Microtrac MT3000IIによりビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶の各粒径における頻度を測定した。
【0022】
<ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶中の水分量測定>
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶を1g秤量し、サンプルとした。前記サンプルを三菱化学(株)製の気化式水分計CA-100により、乾燥窒素流通下で180℃に加熱した際に気化した水分を定量した。次いで240℃に加熱した際に気化した水分を定量し、その二つの値を合算し、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶の水分量とした。
【0023】
<ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶中のビフェニルトリカルボン酸無水物量の測定>
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の純度は高速液体クロマトグラフィーにより分離、定量して算出した。ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶約100mgを精秤し、NaOH水溶液(濃度:0.5mol/L)5mLを添加した。更に水を45mL添加して超音波洗浄器中で溶解し、検液とした。該検液を高速液体クロマトグラフィーにより、ビフェニルトリカルボン酸無水物量を定量した。尚、溶離液は37%アセトニトリル、酢酸アンモニウム水溶液(濃度:0.01mol/L)、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド水溶液(濃度:0.02mol/L)を、酢酸にてpH5に調整したものを用いた。カラムは Nucleosil ODS 7μm、オーブン温度35℃、紫外線分光光度計(検出波長254nm)、流量1ml/分という条件で測定を行った。
【0024】
<合成例1>
ビフェニルテトラカルボン酸を窒素流通下245℃で24時間、加熱脱水し、粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とした。次いで該粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を305℃まで昇温し、0.2kPaに減圧し、蒸発させた。蒸発した粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を回転冷却器表面に接触させ、冷却析出させた。回転冷却器表面に析出した粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物をかきとり装置によって連続的にかきとり、フレークとして回収した。
【0025】
<合成例2>
ビフェニルテトラカルボン酸を窒素流通下250℃〜255℃で24時間、加熱脱水し、粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とした。
【0026】
[実施例1]
合成例1で合成した粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を三洋電機(株)製の微粉砕機SM-L56を用いて回転速度11300rpmで10秒間、30℃、窒素気流下で粉砕し
た。前記条件で5回粉砕を繰り返し、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶を得た。該ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶の300μm以上の頻度は1.4%、300μm未満100μm以上の頻度は11%、更に17μm以下の頻度は34%であった。「
溶解時間の測定」結果は、15分程度で該ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶は溶解した(溶解性○)。該ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶中の水分量は91ppm、ビフェニルトリカルボン酸無水物量は0.2重量%であった。
【0027】
[実施例2]
合成例1で合成した粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を窒素が流通したグローブボックス内で目開き106μmの篩で分級した。次いで篩下に残った粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物をさらに目開き45μmの篩で分級した。そして篩上のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶を得た。該ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶の300μm以上の頻度は0.1%、300μm未満100μm以上の頻度は7%、更に17μm
以下の頻度は17%であった。「溶解時間の測定」結果は、5分程度で該ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶は溶解した(溶解性◎)。該ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶中の水分量は100ppm、ビフェニルトリカルボン酸無水物量は0.2重量%であった。
【0028】
[実施例3]
合成例2で合成した粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を窒素が流通したグローブボックス内で目開き106μmの篩で分級した。次いで篩下に残った粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物をさらに目開き45μmの篩で分級した。そして篩上のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶を得た。該ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶の300μm以上の頻度は0.6%、300μm未満100μm以上の頻度は25%、更に17μm以下の頻度は0%であった。「溶解時間の測定」結果は、5分程度で該ビフェニルテト
ラカルボン酸二無水物結晶は溶解した(溶解性◎)。該ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶中の水分量は188ppm、ビフェニルトリカルボン酸無水物量は0.1重量%であった。
【0029】
[比較例1]
合成例1で合成された粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は、300μm以上の頻
度は2.4%、300μm未満100μm以上の頻度は42%、更に17μm以下の頻度
は13%であった。「溶解時間の測定」結果は、30分程度で該粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は溶解した(溶解性△)。尚、該粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物中の水分量は90ppm、ビフェニルトリカルボン酸無水物量は0.2重量%であった。
【0030】
[比較例2]
合成例2で合成された粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は、300μm以上の頻
度は4.7%、300μm未満100μm以上の頻度は33%、更に17μm以下の頻度
は6%であった。「溶解時間の測定」結果は、30分程度で該粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は溶解した(溶解性△)。尚、該粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物中の水分量は48ppm、ビフェニルトリカルボン酸無水物量は0.0重量%であった。
【0031】
[比較例3]
合成例1で合成された粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を窒素が流通したグローブボックス内で目開き300μmの篩で分級した。篩上のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶は300μm以上の頻度は86%、300μm未満100μm以上の頻度は1
4%、更に17μm以下の頻度は0%であった。「溶解時間の測定」の結果は、22時間
後でも完全に溶解しなかった(溶解性××)。尚、該ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶中の水分量は95ppm、ビフェニルトリカルボン酸無水物量は0.2重量%であ
った。
【0032】
[比較例4]
合成例1で合成された粗ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を窒素が流通したグローブボックス内で目開き45μmの篩で分級した。篩下のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶は300μm以上の頻度は0.5%、300μm未満100μm以上の頻度は2
%、更に17μm以下の頻度は62%であった。「溶解時間の測定」の結果、4時間後で
も完全に溶解しなかった(溶解性×)。尚、該ビフェニルテトラカルボン酸二無水物中の水分量は103ppm、ビフェニルトリカルボン酸無水物量は0.2重量%であった。
【0033】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶は、芳香族ポリイミドの製造に使用される溶媒への溶解性が非常に高く、重合後に重合液中の残存、重合液面近傍での残存が少ないため、不溶解物を除去する必要がなく、重合粘度の低下も生じない。さらに、重合粘度上昇時間が早く、重合時間を短縮することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記測定法で測定される100μm以上の頻度が34%以下であり、17μm以下の頻度が46%以下であるビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶。
頻度測定法:レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置により測定する。
【請求項2】
300μm以上の頻度が2%以下であることを特徴とする請求項1に記載のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶。
【請求項3】
100μm以上300μm未満の頻度が32%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶。
【請求項4】
前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶中のビフェニルトリカルボン酸無水物量が0.3重量%未満であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶。
【請求項5】
前記ビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶中の水分量が230ppm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のビフェニルテトラカルボン酸二無水物結晶。

【公開番号】特開2011−173826(P2011−173826A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38763(P2010−38763)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】