説明

ビュレットまたはピペットの目盛読み取り用ルーペ

【課題】ビュレットまたはピペットに簡単に取り付けることができ、軽量で且つ単純構造の目盛読み取り用ルーペを提供する。
【解決手段】ビュレットまたはピペットを通すことができる孔が両端に一つずつ設けられた湾曲率可変の弾性体からなる湾曲した基部と、基部中央から基部長手方向に直交して設けられ基部の湾曲方向と同じ方向に湾曲した二つのアーム部と、二つのアーム部の先端間を橋渡すように取り付けられた拡大レンズとを有し、基部の湾曲率を大きくすると基部の両端に一つずつ設けられた孔を見通したときに観える孔の大きさがビュレットまたはピペットの外径よりも大きくなり、且つ基部の湾曲率を小さくすると基部の両端に一つずつ設けられた孔を見通したときに観える孔の大きさがビュレットまたはピペットの外径よりも小さくなる、ビュレットまたはピペットの目盛読み取り用ルーペ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビュレットまたはピペットの目盛読み取り用ルーペに関する。
【背景技術】
【0002】
ビュレットは、分析化学における滴定の時に使用し、滴下した液の容量を秤量するための実験器具である。ガラス製、プラスチック製のものが一般的である。ビュレットは、筒状の貯留部の下に活栓がついた構造をしている。貯留部は計量に適したように一定の内径を有し、細く、且つ目盛が壁に刻印されている。
ピペットは一定の容量を正確に計量するための器具である。熱膨張の影響を少なくするために、肉厚のガラス管製のものが一般的である。ピペットとしては、ガラス管に目盛が刻印されたメスピペットや、定量容積を示す線が刻印されたホールピペットなどがある。
【0003】
ビュレットまたはピペットにおいては、凹型メニスカスの下面または凸型メニスカスの上面の位置に対応する目盛を読み取ることで液容量を決定する。
メニスカスの下面または上面の位置の読み取りを正確に行うために、拡大鏡を用いることがある。しかしながら、滴定のたびに、拡大鏡を取り出して、目盛を読み取るのは煩雑である。
市販の精密液柱型圧力計として、メニスカスを観るための拡大ルーペ部分を、スケール柱とラックアンドピニオンにて取り付けて、上下に移動可能にしたものがある。しかしながら、ラックアンドピニオン部の構造は複雑で重いので、この機構をそのままビュレットやピペットなどの器具に適用することはできない。
なお、記載すべき先行技術文献情報がないので、特許文献等の記載をしていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ビュレットまたはピペットに簡単に取り付けることができ、軽量で且つ単純構造の目盛読み取り用ルーペを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ビュレットまたはピペットを通すことができる孔が両端に一つずつ設けられた湾曲率可変の弾性体からなる湾曲した基部と、基部中央から基部長手方向に直交して設けられ基部の湾曲方向と同じ方向に湾曲した二つのアーム部と、二つのアーム部の先端間を橋渡するように取り付けられた拡大レンズとを有し、基部の湾曲率を大きくすると基部の両端に一つずつ設けられた孔を見通したときに観える孔の大きさがビュレットまたはピペットの外径よりも大きくなり、且つ基部の湾曲率を小さくすると基部の両端に一つずつ設けられた孔を見通したときに観える孔の大きさがビュレットまたはピペットの外径よりも小さくなる、ビュレットまたはピペットの目盛読み取り用ルーペは、軽量で且つ単純構造であり、ビュレットまたはピペットに簡単に取り付けることができることを見出した。
【発明の効果】
【0006】
本発明のビュレットまたはピペットの目盛読み取り用ルーペは、湾曲率可変の弾性体からなる基部と、二つのアーム部と、拡大レンズとからなるものであり、構造が単純である。また、基部およびアーム部は樹脂などの弾性体で形成でき、軽量化することができる。
本発明のビュレットまたはピペットの目盛読み取り用ルーペは、基部の両端に一つずつ設けられた孔にビュレットまたはピペットを通すだけで、ビュレットまたはピペットに簡単に取り付けることができ、取り外しも簡単である。
また、基部の両端を挟み摘まんで、該両端間の距離を変えることによって、基部の湾曲率を変化させることができる。基部の湾曲率の変化によって、基部の両端に設けられた孔を見通したときに観える孔の大きさが変化する。見通したときに観える孔の大きさを大きくすると、本発明の目盛読み取り用ルーペをビュレットまたはピペットの長手方向に移動させることができる。見通したときに観える孔の大きさを小さくすると、本発明の目盛読み取り用ルーペをビュレットまたはピペットの長手方向の所望の場所に固定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のビュレットまたはピペットの目盛読み取り用ルーペに用いられる基部とアーム部の一例を示す図である。
【図2】本発明のビュレットまたはピペットの目盛読み取り用ルーペに用いられる拡大レンズの一例を示す図である。
【図3】立設されたビュレットに、本発明のビュレットまたはピペットの目盛読み取り用ルーペを取り付け、それを上方から観た図である。
【図4】立設されたビュレットに、本発明のビュレットまたはピペットの目盛読み取り用ルーペを取り付け、それを左側面から観た図である。
【図5】立設されたビュレットに、本発明のビュレットまたはピペットの目盛読み取り用ルーペを取り付け、それを正面から観た図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、図面に示した本発明の実施形態を参照して、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態によって限定されるものではない。
【0009】
図1は、本発明のビュレットまたはピペットの目盛読み取り用ルーペに用いられる基部とアーム部の一例を示す図である。図2は、本発明のビュレットまたはピペットの目盛読み取り用ルーペに用いられる拡大レンズの一例を示す図である。
本発明の目盛読み取り用ルーペは、図1に示すような基部1とアーム部2を有し、且つ図2に示すようなフレネルレンズRを有する。
【0010】
図1に示す、基部1とアーム部2は、十字状の板部材によって構成されている。板部材は弾性体からなるものである。弾性体としては、樹脂やゴムなどからなる板部材や金属の板などが挙げられる。図1は湾曲前の状態を示しているが、基部1およびアーム部2は図面の紙面から起き上がる方向にそれぞれ湾曲させることができる。
基部1の両端には孔3aおよび孔3bが各1つ設けられている。孔3aおよび孔3bの大きさや形はビュレットまたはピペットを通すことができるものであれば特に制限されない。
【0011】
図4は、立設されたビュレットPに、本発明のビュレットまたはピペットの目盛読み取り用ルーペを取り付け、それを左側面から観た図である。
図4に示すように基部1を湾曲させて、基部の両端を近づける。孔3aと孔3bとを見通せるところまで湾曲させることができる。なお、図4では孔3aおよび孔3bを点線で示している。
【0012】
基部の湾曲率を大きくすると基部の両端に一つずつ設けられた孔3aおよび孔3bを見通したときに観える孔の大きさがビュレットまたはピペットの外径よりも大きくなる。孔3aおよび孔3bを見通したときに観える孔の大きさをビュレットまたはピペットの外径よりも大きくしたときには、本発明の目盛読み取り用ルーペの孔3aおよび孔3bに、ビュレットPを通すことができる。そして、本発明の目盛読み取り用ルーペを、ビュレットPの所望の高さ位置に移動させることができる。
【0013】
一方、基部の湾曲率を小さくすると基部の両端に一つずつ設けられた孔3aおよび孔3bを見通したときに観える孔の大きさがビュレットまたはピペットの外径よりも小さくなる。ビュレットPが孔3aおよび孔3bに通されている状態で湾曲率を小さくすると、孔3aおよび孔3bの縁がビュレットPの壁面に押し付けられ、摩擦力が高くなる。これによって、本発明の目盛読み取り用ルーペを、ビュレットPの所望の高さ位置に固定させることができる。
【0014】
基部は弾性体からなるものであるので、例えば、基部の両端を指で挟み該両端間の距離を近づけることで、湾曲率は大きくなる。逆に指で挟む力を緩めると弾性力によって基部の両端が離れ、両端間の距離が遠くなり、湾曲率が小さくなる。
【0015】
アーム部は、基部中央から基部長手方向に直交して設けられている(図1参照)。アーム部は、基部の湾曲方向と同じ方向に湾曲させて、アーム部の両端を近づける。そして、二つのアーム部の先端間を橋渡するように、フレネルレンズRが取り付けられている(図3参照)。なお、図3は、立設されたビュレットに、本発明のビュレットまたはピペットの目盛読み取り用ルーペを取り付け、それを上方から観た図である。
【0016】
アーム部と基部が同方向に湾曲しているので、孔3aおよび孔3bに通したビュレットPが湾曲したアーム部および基部の内側に位置するようになる。アーム部の長さは、アーム部先端に取り付けたフレネルレンズRに孔3aおよび孔3bに通したビュレットPが接触しない程度の長さであることが好ましく、ビュレットP内のメニスカスMを拡大して見えるような位置にフレネルレンズRが配置される長さであることがより好ましい。
【0017】
本発明のビュレットまたはピペットの目盛読み取り用ルーペでは、基部1またはアーム部2の中央に対向する位置に拡大レンズRが取り付けられている。ビュレットまたはピペットに対して斜め方向からメニスカスを観察してしまうと目盛の読みに誤差が出る。しかし、本発明のビュレットまたはピペットの目盛読み取り用ルーペを用いると、拡大レンズRを通してメニスカスMを拡大して見ることができる位置は、ビュレットまたはピペットPに対して直角な方向だけになるので、メニスカスの位置の読み取り誤差が小さくなり、容量の測定を正確に行うことができる。図5は、立設されたビュレットに、本発明のビュレットまたはピペットの目盛読み取り用ルーペを取り付け、それを正面から観た図である。図5に示すように、フレネルレンズRを通してビュレットP内のメニスカスMおよびビュレットに刻まれた目盛が拡大されて観える。本発明のビュレットまたはピペットの目盛読み取り用ルーペは孔3aおよび孔3bとビュレットPとの摩擦力によってに固定されるので、実験者がメニスカスの位置を読み取る度に拡大鏡を持ち出す必要がなく、化学分析の作業効率を非常に高くすることができる。
【符号の説明】
【0018】
1:基部
2:アーム部
3a、3b:孔
P:ビュレット
R:フレネルレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビュレットまたはピペットを通すことができる孔が両端に一つずつ設けられた湾曲率可変の弾性体からなる湾曲した基部と、
基部中央から基部長手方向に直交して設けられ基部の湾曲方向と同じ方向に湾曲した二つのアーム部と、
二つのアーム部の先端間を橋渡するように取り付けられた拡大レンズとを有し、

基部の湾曲率を大きくすると基部の両端に一つずつ設けられた孔を見通したときに観える孔の大きさがビュレットまたはピペットの外径よりも大きくなり、且つ
基部の湾曲率を小さくすると基部の両端に一つずつ設けられた孔を見通したときに観える孔の大きさがビュレットまたはピペットの外径よりも小さくなる、

ビュレットまたはピペットの目盛読み取り用ルーペ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−56329(P2011−56329A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205334(P2009−205334)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】