説明

ビルディングブロックを含む配位錯体系

本発明は、少なくとも2の供与体部分を持つ配位子を含む配位錯体系であって、該少なくとも2の供与体部分が遷移金属およびランタニドから選ばれた少なくとも1の金属と錯体化されている配位錯体系において、該配位子が少なくとも2のビルディングブロックを含み、該ビルディングブロックのそれぞれが少なくとも1の官能基および少なくとも1の供与体部分を持ち、1のビルディングブロックがその官能基を通してもう1つのビルディングブロックのまたはテンプレートの相補的な官能基に非共有結合的に結合され、該テンプレートはもう1つのビルディングブロックの相補的な官能基に非共有結合的に結合された少なくとも1の他の官能基を含み、かつテンプレートが2より多い官能基を含有するときはすべてのビルディングブロック−テンプレート−ビルディングブロック構造が同じであることを特徴とする配位錯体系に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2の供与体部分を持つ配位子を含む配位錯体系であって、該供与体部分が遷移金属およびランタニドから選ばれた少なくとも1の金属と錯体化されている配位錯体系、当該配位錯体系を含む触媒系、当該配位錯体系の使用方法、並びに金属と錯体化されるための配位子の2の供与体部分をつくるための自己相補的ビルディングブロックの組およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数10年の間に、コンビナトリアル化学は、信じられない態様で進化し、そして特に薬学において薬物の発見および最適化のために並びに均一系触媒を製造するために利用されてきた。コンビナトリアルな手法を使用する均一系触媒の開発は2つの明白な課題を伴っている。すなわち、1)高度の構造的な多様性を示す配位子および/または触媒の大きいライブラリーを構築するための戦略および方法を案出すること、2)関心の対象になっている反応について高処理量のスクリーニング手法を開発することである。均一系触媒のライブラリーのための新規なスクリーニング手法の開発に多大な努力が投ぜられ、そして各種の方法が成功であることが判明した。新規な遷移金属触媒の探索においては、触媒ライブラリーの構築は、配位子の変化に主に焦点が当てられてきて、その配位子は、商業的に入手できる配位子に基づいているか、または慣用の合成経路および/またはパラレル合成を使用する発散型の方法によって調製される。新規な配位子の大ライブラリーの構築は、実際、大きな難題を生じ、そして今のところ限られた数の方法論だけが報告されている。今までは、配位子のライブラリーの構築は、コンビナトリアルな有機合成とそれに続く金属との錯体化に基づいている。この手法は、パラレル合成、スプリット−プール法、エンコーディング/デコンボリューション法および重合体に担持された試薬を含む、固相および溶液相の高度なコンビナトリアルな合成方法論を使用している。スプリット−プール法のような方法は、伝統的な逐次的な手法よりもはるかに迅速であり、かつ比較的大きい数の化合物の調製を可能にするが、しばしば活性評価選抜試験に入る化合物の純度および混合物に対する制御に欠けている。対照的に、パラレル合成または配列合成は、純粋な化合物の中間規模のライブラリーを与える。配位子のライブラリーを構築するこれらのコンビナトリアルな手法は価値があることが判ったけれども、真に大きい数の潜在的に(エナンチオ)選択的な触媒の調製および評価は報告されたことがなく、かつその適用はごく少数の触媒反応に依然として限定されている。その上、重要な多座配位子、たとえば有望な2リン配位子の調製は、特に非常に複雑なキラルな分子が不斉触媒反応に要求されるときに、合成上の難問に直面している。これらの合成上の課題を効率的に処理する新規な手段を開発する必要性が存在している。
【0003】
本発明は当該手段を提供し、かつ単量体化合物を単に混合することによって形成されることができる配位子、特に2座配位子を構築する新規で有効な超分子手法をさらに提供する。たとえば、亜鉛(II)ポルフィリン部分を備えたリンの単座配位子のビルディングブロックは、供与性窒素原子を持つ単座配位のビルディングブロックと選択的に結合することができる。これらの選択的な金属−配位子相互作用(Zn−N)は配位子系の構築に利用され、そして新規な遷移金属触媒を与える。リンの単座配位化合物を変えることによって、新規な自己構築された単座および2座配位子のマトリックスが容易に創生されることができる。新しい構築された配位子を調製するこの新規な超分子戦略は、コンビナトリアルな様式で成功裡に利用され、そして、たとえば非常に複雑なホスファイト−ホスフィンキレート化配位子に基づいて、触媒のライブラリーの構築を明白に簡略化する。
【0004】
金属触媒の増加しつつある需要が存在し、かつ各種の化学転換反応用の目的に合わせて作られた遷移金属触媒の数はますます増加しているが、これらの均一系触媒の実際の使用は、生成物相からの面倒な分離によって制限されている。これまでに、触媒リサイクルの多くの色々な方法、たとえば2相触媒反応、担持水相触媒反応、フッ素系溶液相触媒反応、イオン性液体および超臨界流体の使用が研究された。触媒−生成物分離を促進するための十分に研究された手法は、均一系触媒を樹枝状の、重合体状有機性の、無機性の、または混成の担体に付けることである。
【0005】
これまでに報告されたほとんどの担持触媒は、担体に共有結合的に結合されていた。興味深い代わりの手法は触媒を担体につなぎ留める(アンカーリングする)ことである。ごく僅かな例が非共有結合、たとえばイオン性相互作用による固定化について報告されている。カチオン性遷移金属触媒がヘテロポリ酸およびシリカ担体にイオン対化によって固定化された。これは、水素化反応に活性なカチオン性ロジウム触媒についての実現性のある手法のようであったが、この概念は荷電した触媒に明らかに限られる。
【0006】
すべてのこれらの手法の問題は、触媒されるべき種々の系に必要な様々な触媒系の厄介な独立の合成である。D.de Grootら、J.Am.Chem.Soc.誌、2001年、123巻、8453〜58ページに、パラジウムと錯体化するためのホスフィン配位子が、尿素アダマンチルで官能化されたポリ(プロピレンイミン)デンドリマーのテンプレートに非共有結合的に組み込まれる方法が開示された。しかし、該テンプレートは担体上に不均一に分布されている。当該方法は触媒系を、制御された様式でつくるには不適当であり、したがって予測できない特性を持つ触媒系が得られる。
【非特許文献1】D.de Grootら、J.Am.Chem.Soc.誌、2001年、123巻、8453〜58ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、金属触媒反応のための目的に合わせて作られる触媒系の、融通がきいて用途の広い合成を可能にする方法を得ることが本発明の目的である。他の目的、たとえば種々の結合の原動力に基づいた、十分に規定された結合点を、たとえば非共有結合的に官能化されることができるシリカ担体上に、相補的な原動力を備えた配位子を持つ触媒を用いて固定化することが、本明細書で以下に明らかにされる。
【0008】
超分子戦略の実行は新規な触媒物質の調製を有意に簡略化する。というのは、組立てることによって成分が自身の行き先を見出すことになるからである。この利点だけでなく、非共有結合的な相互作用の動的性質は、新規な触媒特性を持つ物質にたどりつく。たとえば、触媒は、触媒サイクルの間にその特性を次の段階のために調整してその構造を適合化させることができる。金属−配位子相互作用に基づいた(大部分は知られている)直交する相互作用、種々の結合原動力からなる水素結合、極性/イオン性相互作用の組(たとえば、チャート1参照、ここでAは受容体を示しかつDは供与体を示す。)を用いて成分が官能化されることができ、これらの組は使用されることができる。組立てることによって、金属中心のまわりの連結、不斉環境、基体結合点の存在および触媒のまわりの局所的な極性が制御されることができる。これらは、活性および選択性のような触媒特性を規律する重要なパラメータである。その上、いくつかの担体の官能化によって、触媒はデンドリマー、シリカ、単分子膜の上に容易な方法で可逆的に固定化されることができて、触媒の固定化がその性能に及ぼす影響についての情報の迅速な集積を可能にする。これは極めて用途の広いモジュール的手法をもたらし、その手法では触媒の環境が、担体への可逆的な結合、不斉環境、基体結合点、単分子膜および集合体によって制御されることができ、それによって新規な1組の選択的な触媒系を創生する。非共有結合的なアンカーリングの手法も担体の制御された脱官能化を可能にし、これは担体と触媒との分離および再使用を可能にする。これは、多目的反応器について該当することができる。というのは、担体は反応器内に留まることができ、一方触媒(失活の場合には同じ触媒、そして新しい反応が要求される場合には異なったもの)は取り替えられることができるからである。
【0009】
「非共有結合的」の語は、当業者によって使用される普通の意味、すなわち共有結合的でない任意の化学的または物理的な結合の意味を持つ。非共有結合は、たとえばイオン性相互作用、水素結合、および可逆的な金属−配位子相互作用を含む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
触媒活性のある遷移金属に配位している供与体原子の空間的配向は、触媒作用におけるその特性にとって決定的に重要である。従来は、これらの供与体原子は配位子の骨格に共有結合的に結合され、それによって、該骨格の剛直性に応じて、金属のまわりのある配位の幾何形状を強制(または支持)していた。本発明では、相補的なビルディングブロックを直接に介した配位子のアセンブリにより、またはテンプレートを介して互いに非共有結合的に結合されたビルディングブロックにより、連結を制御する非共有結合的手法によって、この柔軟性のない従来的手法が置き換えられた。すなわち、本発明は、少なくとも2の供与体部分を持つ配位子を含む配位錯体系であって、該少なくとも2の供与体部分が遷移金属およびランタニドから選ばれた少なくとも1の金属と錯体化されている配位錯体系において、該配位子が少なくとも2のビルディングブロックを含み、該ビルディングブロックのそれぞれが少なくとも1の官能基および少なくとも1の供与体部分を持ち、1のビルディングブロックがその官能基を通してもう1つのビルディングブロックのまたはテンプレートの相補的な官能基に非共有結合的に結合され、該テンプレートはもう1つのビルディングブロックの相補的な官能基に非共有結合的に結合された少なくとも1の他の官能基を含み、かつテンプレートが2より多い官能基を含有するときはすべてのビルディングブロック−テンプレート−ビルディングブロック構造が同じであることを特徴とする配位錯体系に関する。本配位錯体系の動的特性は、本触媒系の特別な反応性を生み出すことができ、かつそれは遷移金属に基づいた動的なコンビナトリアルな触媒系の形成も可能にし、セレクター、たとえば遷移状態アナログを加えることによって、該コンビナトリアルな触媒系から本触媒が選択されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の1の実施態様では、ビルディングブロックのうち少なくとも1は、無機担体、重合体状有機担体、または混成担体上に固定化される。ビルディングブロックは好ましくは5,000より小さい、より好ましくは2,500より小さい分子量を持つ。不斉環境はアセンブリによっても制御されることになり、そしてピリジル−ホスフィンビルディングブロックと組み合わせられた亜鉛(II)ポルフィリンがこの手法に適していることが示された。ピリジンは亜鉛に選択的に配位され、かつホスフィン供与体は触媒活性のある遷移金属への配位に依然として利用できる。
【0012】
他の実施態様では、少なくとも2の供与体部分を持つ配位子を含む配位錯体系であって、該供与体部分が遷移金属およびランタニドから選ばれた少なくとも1の金属と錯体化されている配位錯体系において、該配位子が2〜6のビルディングブロックを含み、該ビルディングブロックのそれぞれが少なくとも1の官能基および少なくとも1の供与体部分を持ち、少なくとも1のビルディングブロックがその官能基を通してテンプレートの相補的な官能基に非共有結合的に結合されていることを特徴とする。
【0013】
本配位錯体系はさらに、配位子の官能基に非共有結合的に結合されている補因子を含むことができる。当該補因子は他方のビルディングブロックに、またはテンプレート若しくは担体に共有結合的に結合されていることができる。
【0014】
テンプレートが2より多い官能基を含有するときは、すべてのビルディングブロック−テンプレート−ビルディングブロック構造は同じである。たとえば、テンプレートが8の官能基を含有し、かつ2の官能基が対を形成する一方で6の他の官能基が3の同じような他の対を形成するときは、2のビルディングブロックはこれらの対のそれぞれに非共有結合的に結合され、第1の対の1の官能基ともう1つの対の1の官能基とには結合されない(このような結合が各種のビルディングブロック−テンプレート−ビルディングブロック部分の異なった空間的配向(立体配置)を生じるときには)。すべてのビルディングブロックが同じであるのではなくて、2の異なったビルディングブロックが1対の官能基への結合に使用されるならば、この同じ2の異なったビルディングブロックが他の対への結合に使用されることがさらに注記されなければならない。
【0015】
該アセンブリの特性は、従来技術の触媒とは異なっていることができ、それはたとえば、パラジウムで触媒されたHeck反応およびロジウムで触媒されたヒドロホルミル化において、より速い反応速度を与えることができる。さらに、ビス−亜鉛−ポルフィリン系をテンプレートとして使用すると、キレート化する2座配位子を生じ、その(活性および(エナンチオ)選択性における)触媒性能はアセンブリの成分に強く依存した。動的な非共有結合的な相互作用は配位子の空間的配向を強制するのに十分であり、かつアセンブリが触媒反応条件下に安定であることをこれらの結果は示す。金属−配位子相互作用は、配位子の新規なアセンブリをつくるのに使用される。その上、種々の水素結合ビルディングブロックが、2座配位子をアセンブリによってつくるのに使用されることができる。使用されることができるいくつかの水素結合ビルディングブロックの例はチャート1に示される。これらのビルディングブロックは本発明に従ういくつかの水素結合概念に使用されうることが注記されなければならない。
【0016】
2の同一のビルディングブロックがテンプレートのまわりでアセンブリされることができて、テンプレートに依存する特性を持った2座配位子が得られる。代表的な例は尿素官能性およびベンズアミジンを含むビルディングブロックであり、これは小さいアニオン性テンプレートと錯体を形成するのに使用されることができる。2の尿素単位の配向はテンプレートに強く依存するだろう。アセンブリの触媒性能は、幾何的形状変化に敏感であることが知られているいくつかの反応(たとえば、ヒドロホルミル化、カルボニル化およびアリル位置換)を研究することによって診断手段としても使用されることができる。カチオン性の遷移金属またはランタニド金属の錯体を使用すること(たとえば、不斉水素化、不斉ヒドロビニル化)は、対イオンが金属からある距離に固定されるだろうから、特に興味深い。これは、触媒作用にかつカチオン性錯体の形成に特別な効果を与えると考えられる。本配位錯体系は、好ましくは0.2〜100の配位子と金属とのモル比を持つ。
【0017】
本発明はさらに、上述の配位錯体系を含む触媒系に関し、かつ該配位錯体系を、好ましくはヒドロホルミル化、水素化、転移水素化、ヒドロシアノ化、重合、異性化、カルボニル化、交差カップリング、メタセシス、炭素−水素活性化、アリル位置換、アルドール縮合、およびミカエル付加のための触媒として使用する方法に関する。
【0018】
多くの反応について、異なった供与体原子を持つ2座配位子は、選択性のより高いレベルの制御を提供する。この目的のためには、異なったビルディングブロックの選択的なアセンブリを可能にする手法が要求される。これは、相補的な官能基と結合する官能基を持つビルディングブロックの組をつくることによってなされ、該相補的な官能基はもう1つのビルディングブロックに付いたものであって、これによって配位子の直接形成を可能にするか、あるいは複数の同じまたは異なった官能基を備えたテンプレートに付いたものである。一連の利用された配位子(ホスフィン、ホスファイト)の相補的な結合の原動力はチャート1に示される。適切な化合物を単に混合することによって、キレート化する単座および2座配位子が形成され、種々の組み合わせの容易な形成を促進した。加えて、同じビルディングブロックが、同じ相補的な結合する官能基を持つテンプレート上にアセンブルされることができる。図1において、LおよびLはビルディングブロックの配位部分であり、Mは遷移金属またはランタニド金属であり、A)はテンプレートを使用する実施例であり、B)は自己相補的なビルディングブロックを使用する実施例である。
【0019】
その場合には、テンプレートの形は超分子系の触媒性能にも影響するだろう。テンプレートはカリックス−アレーンおよび剛直な多環芳香族系を含むことができる。2の異なった金属を持つビスポルフィリンテンプレートも好適なテンプレートであり、供与体窒素は亜鉛原子に選択的に配位し、かつスズポルフィリンはカルボキシレート基と強く配位することが知られている。
【0020】
2の直交する結合部位を用いて官能化された系が調製されることができ、その場合、触媒及び基体分子あるいはキラル補因子が、非共有結合的な相互作用を使用する良く規定された方法で固定されることができる。ポルフィリンに基づいた直截な例では、遷移(またはランタニド)金属の結合は水素結合(イオン性相互作用)に基づくだろうし、かつ(ゲスト)補因子は金属−配位子相互作用(たとえば、ピリジン−亜鉛配位)を使用して結合されるだろう。ポルフィリンへの結合は、アミノ酸を含むいくつかの種類のゲストのために使用されることができる。異なった水素結合官能基を持ち、それによって結合部位に関して触媒の位置を変えるいくつかの類似体が、つくられることができる。基体分子としての両方の触媒の動的結合は、ホスト−ゲスト触媒作用への効率的な戦略であることが見出された。少し異なった手法では、たとえば図2のような選択的なビピリジン−金属錯体化に基づいた金属−ビルディングブロック相互作用を使用して、キラル補因子がアセンブルされた。
【0021】
これらの成分の1方はキラル情報を用いて官能化されることができ、他方は触媒活性なホスフィン−金属錯体を含有する。従来の手法を超える大きな利点は、キラル触媒の大ライブラリーが(共有結合的合成に比較して)容易に構築されることができ、新しい基体は一般に新規な変性された触媒を必要とする事実を考えると、これは重要である。したがって、本発明は、それぞれが少なくとも1の官能基を持つ少なくとも2のビルディングブロックを使用する方法において、1のビルディングブロックの官能基がもう1つのビルディングブロックまたはテンプレートの官能基に対して相補的であって、その結果ビルディングブロック間に、またはビルディングブロックとテンプレートとの間に、これらの官能基を通して非共有結合的な結合を形成して、金属とともに本配位錯体系を形成する配位子を得る方法にも関する。
【0022】
本発明の他の面は、1組の自己相補的なビルディングブロックを、遷移金属およびランタニドから選ばれた金属と錯体をつくるために少なくとも2の供与体部分を持つ配位子をつくるのに使用する方法において、該配位子が該1組のビルディングブロックを含み、それぞれのビルディングブロックがもう1つのビルディングブロックのまたはテンプレートの官能基に対して相補的である少なくとも1の官能基、および少なくとも1の供与体部分を持ち、該ビルディングブロックが互いにまたはテンプレートにそれらの相補的官能基を通して非共有結合的に結合されている方法に関する。
【0023】
本発明はさらに、配位子をつくるための自己相補的ビルディングブロックを含み、かつ任意的にテンプレートを含んでいてもよい組に関する。該組は、上述の使用のために配位のための金属を含むこともできる。
【0024】
例として、Aテトラアリールポルフィリン並びにトランス−Aテトラアリールポルフィリンが、十分に確立された合成手順によって容易につくられることができる。さらなる官能化のための反応性基として、アミンおよびイソチオシアネート基が導入されることができ、これらはどちらも反応性でありかつ容易に接近できる。したがって、たとえばポルフィリンが(大量)調製されることができ、そして異なった方法の非共有結合的固定化に必要なビルディングブロックを合成するためのシントンとして使用される。
【0025】
目的に合わせて作られた担持触媒をつくる手法の例は、トリアルコキシ官能化ポルフィリンを商業的に入手できるシリカと混合すること、ゾル−ゲル法による固定化、固定化前の遷移金属錯体の予備構築(アセンブリ)、固定化されたポルフィリンの触媒による後変性である。
【0026】
合成的に容易に接近できるポルフィリンは、その両親媒性の特性の故に、明確に規定された集合体、たとえばミセルおよび小胞を形成すると予想され、本手法に従ってつくられることもできる。明確に規定された集合体を形成する両親媒性化合物は、触媒の構築に使用されることができる。これらの両親媒性化合物は、ビスアニオンをカチオン性両親媒性化合物と混合することによるイオン対化によって調製されることができる。
【0027】
(ポルフィリン、カルボシランデンドリマーおよびポリスチレン単位に基づいた)官能化されたブロック共重合体への拡張も、成分ブロックの集合化および極性の差によるミクロ相分離(すなわち、両親媒性の系)、立体配座の柔軟性および体積充填特性における非両立性を制御できる興味深い系を与えることが可能である。本発明に従うビルディングブロックのいくつかの例がチャートIIに示される。いくつかのテンプレートがチャートIIIに示される。これらの例に基づいて、当業者は他のビルディングブロックおよびテンプレートを容易に想到することができる。(ビルディングブロックおよび任意的にテンプレートからつくられる)非共有結合的アンカーリングのために接近可能な配位子の数は、実際上無限であり、かついくつかのビルディングブロックおよびテンプレートは商業的に入手できる。チャートIVに、担体(この例ではシリカ担体)に非共有結合的に結合されたビルディングブロックの例が示される。
【0028】
ポルフィリンに関連し、本明細書に記載された手法に適した重要な部類の化合物は、ビス(サリチルアルジミン)金属錯体を包含する。該ビルディングブロックの大きい利点は合成上の入手性および構造上の変化が可能なことである。ビス(サリチルアルジミン)−亜鉛への軸方向の配位は、亜鉛−ポルフィリン類似体へよりも2桁大きい。
【0029】
本発明は、以下の実施例によってさらに明確にされかつ例示される。
[実施例]
【0030】
一般
【0031】
1−オクテンがその使用の前に中性アルミナ上で精製された。溶媒がその使用の前に乾燥された。ヘキサン、ペンタン、ジエチルエーテル、THF(テトラヒドロフラン)、トルエンおよびベンゼンが、ナトリウム/ベンゾフェノンまたはカルシウム水素化物(ジクロロメタン、トリエチルアミン)から蒸留された。上述されなかったすべての溶液および溶媒は、その使用の前にアルゴン下に脱気された。すべての反応は、シュレンク管の条件下に不活性雰囲気としてアルゴンまたは精製された窒素を使用して実施された。水およびCDClは脱気されそして窒素下に貯蔵された。化学薬品はAldrich Chemical社およびAcros Chimica社から購入され、そしてさらなる精製なしに使用された。ピペリジンは使用前に中性アルミナ上でろ過された。サイズ排除クロマトグラフ法のために、Bio−Beads(商標)S−X1ビーズ(ゲル浸透ゲル200〜400メッシュ、米国、Hercules、Bio−Rad Laboratories社)が使用された。パラ−(ジフェニルホスフィノ)ベンジルアミン、(COD)PdMeCl、[(アリル)PdCl]および[(クロチル)PdCl]が、文献の手順に従って調製された。
【0032】
ビルディングブロックの合成
【0033】
以下に示された化合物を除いて、すべての試薬は商業的供給者から購入され、そしてさらなる精製なしに使用された。ジイソプロピルエチルアミンおよびトリエチルアミンはアルゴン下にCaHから蒸留された。以下の化合物(ビルディングブロックまたはテンプレート)は、公表された手順に従って合成された。すなわち、ビルディングブロックB4〜B6 (Buhling,A.;Kamer,P.C.J.;van Leeuwen,P.W.N.M.;J.Mole.Catal.A,1995,98,69〜80); B8 (Hayashi,T.;Mise,T.;Fukushima,M.;Kagotani,M.;Nagashima,N.,;Hamada,Y.;Matsumoto,A.;Kawakami,S.;Konishi,M.;Yamamoto,K.;Kumada,M.,Bull.Chem.Soc.Jpn.1980,53,1138); B11〜13 (Buhling,A.;Kamer,P.C.J.;van Leeuwen,P.W.N.M.;J.Mole.Catal.A 1995,98,69); B20,B21 (Kellner,K.;Hanke,W.;Tzschach,A.,Zeitschrift für Chem.1984,24,193); B33 (Liebigs Ann.Chem.1962,659,49); T2〜T6 (Cooper,J.B.;Brewer,C.T.;Brewer,G.,Inorg.Chim.Acta 1987,129,25.およびAdler,A.D.;Longo,F.R.;Kampas,F.;Kim,J.,J.Inorg.Nucl.Chem.,1970,32,2443); T7〜T10 (P.Kaiser博士論文、2002年、ドイツ国、ケルン大学); T11 (Biemans,H.A.M.;Rowan,A.E.;Verhoeven,A.;Vanoppen,P.;Latterini,L.;Foekema,J.;Schenning,A.P.H.J.;Meijer,E.W.;De Schryver,F.C.;Nolte,R.J.M.,J.Am.Chem.Soc.1998,120,11054); T12 (Arnold,D.P.;Kennard,C.H.L.;Mak,T.C.W.,Polyhedron,1991,10,509; Arnold,D.P.,Polyhedron 1990,9,1331;Arnold,D.P.,Polyhedron 1986,5,1957); B25 (D.de Groot et al.,J.Am.Chem.Soc.2001,123,8453〜58)。
【0034】
以下の化合物は商業的に入手できる。すなわち、B7、B9、T1、T14〜T23(Aldrich社から)。
【実施例1】
【0035】
B1の合成
【0036】
トルエン(3×5ml)を用いて共沸蒸留によって乾燥された3−ヒドロキシピリジン(1.44g、15.1mmole)およびトリエチルアミン(2.3ml、16.6mmole)がTHF(40ml)に溶解され、そして該溶液が−40℃に冷却された。新たに調製された(S)−2,2’−ビスナフトールホスホロクロリダイト(Buisman,G.J.H.;van der Veen,L.A.;Klootwijk,A.;de Lange,W.G.J.;Kamer,P.C.J.;van Leeuwen,P.W.N.M.;Vogt,D.,Organometallics 1997,16,2929参照)(5.3g)がTHF(20ml)に溶解され、そして滴下によって加えられた。冷却浴が除かれ、そして溶液は室温まで温まるように放置され、撹拌が1時間続けられた。反応混合物はろ過され、そして溶媒が蒸発された。トルエン/ヘキサンの1/3混合物(40ml)が加えられて、生成物が抽出された。ろ過後、溶媒が真空下に除かれ、B1(5.4g)が白色の固体として得られた。
【実施例2】
【0037】
B2の合成
【0038】
この化合物は、新たに調製された(S)−3,3’−ビス(トリメチルシリル)−2,2’−ビスナフトールホスホロクロリダイト(Buisman,G.J.H.;van der Veen,L.A.;Klootwijk,A.;de Lange,W.G.J.;Kamer,P.C.J.;van Leeuwen,P.W.N.M.;Vogt,D.,Organometallics 1997,16,2929参照)を使用して、B1について記載されたように調製された。白色の固体として収率(66%)。
【実施例3】
【0039】
B3の合成
【0040】
トルエン(3×2ml)を用いて共沸蒸留によって乾燥された3−ヒドロキシピリジン(0.95g)およびトリエチルアミン(1.4ml、10mmole)がTHF(20ml)に溶解され、そして溶液が0℃に冷却された。新たに調製された3,3’−5,5’−テトラ−第3級ブチル−1,1’−ビスフェノールホスホロクロリダイト(4.75g、10mmole)がTHF(20ml)に溶解され、そして滴下によって加えられ、撹拌が10分間続けられた。冷却浴が除かれ、そして溶液は室温まで温まるように放置され、撹拌が1時間続けられた。反応混合物はろ過され、そして溶媒が蒸発された。トルエン/ヘキサンの1/3混合物(40ml)が加えられて、生成物が抽出された。ろ過後、溶媒が真空下に除かれ、B3(3.4g)が白色の固体として得られた。
【実施例4】
【0041】
B10の合成
【0042】
この化合物は、新たに調製された(R)−2,2’−ビスナフトールホスホロクロリダイトを使用して、B1について記載されたように調製された。白色の固体として収率(78%)。
【実施例5】
【0043】
5−(3−ヒドロキシフェニル)−10,15,20−トリス(フェニル)(亜鉛(II))ポルフィリンの合成
【0044】
3−ヒドロキシベンズアルデヒド(6.35g)およびベンズアルデヒド(15.8ml)が750mlのプロピオン酸に溶解され、そして還流まで加熱された。空気流および激しい撹拌下にピロール(14.4ml、208mmole)が加えられ、そして溶液が1時間還流された。反応混合物は60℃まで冷却され、そして100mlのメタノールが加えられた。反応は4℃で1晩貯蔵され、ポルフィリンを沈殿させた。反応混合物はろ過され、そしてろ液が無色になるまでメタノールで数回洗われた。ポルフィリンはカラムクロマトグラフ法(塩基性アルミナ、CHCl、CHCl中2%メタノールの上等。)を使用して精製され、1.09gの5−(3−ヒドロキシフェニル)−10,15,20−トリス(フェニル)が得られた。亜鉛ポルフィリンは、5−(3−ヒドロキシフェニル)−10,15,20−トリス(フェニル)を過剰のZn(OAc)の存在下に還流することによって調製された。
【実施例6】
【0045】
B14の合成
【0046】
トルエン(3×5ml)を用いて共沸蒸留によって乾燥された5−(2−ヒドロキシフェニル)−10,15,20−トリス(フェニル)−亜鉛(II)ポルフィリン(1.59g)およびジイソプロピルエチルアミン(4.0ml、23.0mmole)がTHF(80ml)に溶解され、そして溶液が0℃に冷却された。新たに調製された(S)−2,2’−ビスナフトールホスホロクロリダイト(0.73g、2.09mmole)がTHF(20ml)に溶解され、そして滴下によって加えられ、撹拌が15分間続けられた。冷却浴が除かれ、そして溶液は室温まで温まるように放置され、撹拌が30分間続けられた。反応混合物はろ過され、そして溶媒が蒸発された。粗生成物はアルゴン下にフラッシュカラムクロマトグラフ法(塩基性アルミナ、CHCl)によって精製されて、過剰のヒドロキシルポルフィリンが除かれ、B14(0.887g)が赤紫色の固体として得られた。
【実施例7】
【0047】
B15の合成
【0048】
この化合物は、5−(3−ヒドロキシフェニル)−10,15,20−トリス(フェニル)−亜鉛(II)ポルフィリンを使用して、B14について記載されたように調製された。赤紫色の固体として収率(47%)。
【実施例8】
【0049】
B16の合成
【0050】
トルエン(3×5ml)を用いて共沸蒸留によって乾燥された5−(2−ヒドロキシフェニル)−10,15,20−トリス(フェニル)−亜鉛(II)ポルフィリン(1.59g、2.30mmole)およびジイソプロピルエチルアミン(4.0ml、23.0mmole)がTHF(80ml)に溶解され、そして溶液が−40℃に冷却された。新たに調製された(S)−2,2’−ビスナフトールホスホロクロリダイト(0.73g、2.09mmole)がTHF(20ml)に溶解され、そして滴下によって加えられ、そして撹拌が15分間続けられた。冷却浴が除かれ、そして溶液は室温まで温まるように放置され、撹拌が30分間続けられた。反応混合物はろ過され、そして溶媒が蒸発された。粗生成物はアルゴン下にフラッシュカラムクロマトグラフ法(塩基性アルミナ、CHCl)によって精製されて、過剰のヒドロキシポルフィリンが除かれ、B16(0.887g)が赤紫色の固体として得られた。
【実施例9】
【0051】
B17の合成
【0052】
この化合物は、新たに調製された(R)−2,2’−ビスナフトールホスホロクロリダイトを使用して、B16について記載されたように調製された。赤紫色の固体として収率(46%)。
【実施例10】
【0053】
B18の合成
【0054】
この化合物は、5−(3−ヒドロキシフェニル)−10,15,20−トリス(フェニル)−亜鉛(II)ポルフィリンおよび新たに調製された(S)−2,2’−ビスナフトールホスホロクロリダイトを使用して、B16について記載されたように調製された。赤紫色の固体として収率(39%)。
【実施例11】
【0055】
B19の合成
【0056】
この化合物は、新たに調製された(S)−3,3’−ビス(トリメチルシリル)−2,2’−ビスナフトールホスホロクロリダイトを使用して、B16について記載されたように調製された。赤紫色の固体として収率(51%)。
【実施例12】
【0057】
B22の合成
【0058】
この化合物は、空気を用いたB4の酸化によって生成された。
【実施例13】
【0059】
B23の合成
【0060】
トルエン(3×3ml)を用いて共沸蒸留によって乾燥された5−(3−ヒドロキシフェニル)−10,15,20−トリス(フェニル)−亜鉛(II)ポルフィリン(1.23g)およびジイソプロピルエチルアミン(3.1ml)がTHF(80ml)に溶解され、そして溶液が−40℃に冷却された。新たに調製されたPCl(44μl)がTHF(10ml)に溶解され、そして滴下によって加えられ、そして撹拌が15分間続けられた。冷却浴が除かれ、そして溶液は室温まで温まるように放置され、撹拌が2時間続けられた。反応混合物はろ過され、そして溶媒が蒸発された。粗生成物はアルゴン下にフラッシュカラムクロマトグラフ法(シリカ、トルエン)によって精製されて、過剰のヒドロキシポルフィリンが除かれ、B23(0.341g)が赤紫色の固体として得られた。
【実施例14】
【0061】
B27の合成
【0062】
0.50g(0.616mmole)の4,5−ジ(ジフェニルホスフィン)−2−ペンチル−7−ブロモペンチル−9,9−ジメチル−キサンテンが15mlのTHFに溶解された。アルゴン下に溶液は100mlのオートクレーブに移された。20mlの液体NHの添加の後、オートクレーブは1晩撹拌されかつ70℃に加熱された。THFが真空下に除かれ、そして残渣物が20mlのDCM(ジクロロメタン)に溶解され、そして10mlの水で加水分解された。有機層が分離され、そしてMgSO上で乾燥された。溶媒を真空中で除いた後、白色の固体が得られた。収量0.41g。
【実施例15】
【0063】
B24の合成
【0064】
DCM(10ml)中のB27(0.25g)の溶液へ、0.038mlのエチルイソシアナトアセテートが加えられた。室温で1晩撹拌後、溶媒が蒸発された。生成物はDCM/ペンタンから再結晶化され、そして白色の固体が得られ、そして5mlのTHFに溶解され、それに水(4ml)中のNaOH(15.0mg、0.375mmole)の溶液が加えられた。1晩撹拌後、THFが蒸発され、そして反応混合物は2mlの0.44Mの水性HClの添加によって中和された。溶媒が傾斜除去され、そして粗生成物は水で洗われた。クロロホルムから再結晶化後、0.136gの白色粉体が得られた。
【実施例16】
【0065】
B28の合成
【0066】
トルエン(3×2ml)を用いて共沸蒸留によって乾燥された3−アミノピリジン(0.82g、8.7mmole)およびトリエチルアミン(1ml、8mmole)がTHF(40ml)に溶解され、そして溶液が0℃に冷却された。新たに調製された(S)−2,2’−ビスナフトールホスホロクロリダイト(Buisman,G.J.H.;van der Veen,L.A.;Klootwijk,A.;de Lange,W.G.J.;Kamer,P.C.J.;van Leeuwen,P.W.N.M.;Vogt,D.,Organometallics 1997,16,2929参照)(1gの(S)−(−)2,2’−ビスフェノールおよび0.76gのPClおよび1.4gのEtNから)がTHF(20ml)に溶解され、そして滴下によって加えられた。冷却浴が除かれ、そして溶液は室温まで温まるように放置され、そして撹拌が2.5時間続けられた。反応混合物がろ過され、そして溶媒が蒸発され、B28(1.3g)が白色の固体として得られた。
【実施例17】
【0067】
B29の合成
【0068】
199mg(0.856mmole)の(R.S.MarmorによってJ.Org.Chem.1969,34,748に記載されたように調製された)ヒドロキシメチルジフェニルホスフィンオキシドが、トルエン(3×2ml)上で共沸蒸留によって乾燥され、そしてその後10mlのTHFおよび1mlのEtNに溶解された。THF(10ml)中の新たに調製された(S)−2,2’−ビスナフトールホスホロクロリダイト(250mg、0.713mmole)の溶液が、0℃で反応混合物に加えられた。得られた混合物は室温で24時間撹拌された。混合物はろ過され、そして溶媒が減圧下に除かれた。EtOAc(酢酸エチル)を用いた入念な洗浄後、純粋な生成物が白色の固体として得られた(収量:224mg)。
【実施例18】
【0069】
B30の合成
【0070】
182.6mg(1.427mmole)の(H.K.HallによってJ.Am.Chem.Soc.1958,80,6409に記載されたように調製された)N−アセチル−2−イミダゾリドンが、トルエン(3×2ml)上で共沸蒸留によって乾燥され、そして20mlのTHFと2mlのEtNとの中に懸濁された。THF(10ml)中の新たに調製された(R)−2,2’−ビナフトールホスホクロロダイト(500mg、1.43mmole)の溶液が、0℃でゆっくりと加えられた。得られた混合物は室温で18時間撹拌された。ろ過後、THFを減圧下に除くと、生成物が白色の固体として得られた。生成物はヘキサン/メタノ−ル中の迅速な抽出によって精製された(収量:253mg)。
【実施例19】
【0071】
B31の合成
【0072】
97mg(1.31mmole)のメチル尿素がアセトニトリル(3×3ml)上で共沸蒸留によって乾燥され、そしてPの存在下に1晩真空下に保たれた。THF(10ml)中の新たに調製された(R)−2,2’−ビスナフトールホスホクロロダイト(309.4mg、0.882mmole)の溶液が、10mlのTHFと1mlのEtNとの中のメチル尿素の溶液に0℃でゆっくりと加えられた。白色の沈殿が直ちに生成された。得られた混合物は室温で18時間撹拌され、ろ過され、そして減圧下に乾燥状態まで濃縮された。生成物は無色の固体として得られた。生成物はトルエンへの溶解および少量のヘキサンの添加によって精製された(収量:301mg)。
【実施例20】
【0073】
B32の合成
【0074】
200mg(1.341mmole)の3−メトキシフェニルイソシアネートが、ジクロロメタン(20ml)中の(1R,2S)−(−)−ノレフェドリン(202.8mg、1.341mmole)の懸濁物に室温で滴下によって加えられた。得られた混合物は室温でさらに18時間撹拌された。溶媒が減圧下に除かれた。生成物のジクロロメタン溶液は、10%水性HCl溶液を用いて洗われ(3×5ml)、MgSO上で乾燥され、そして減圧下に単離された(収量:352mg)。
【0075】
得られた生成物、1−(1R,2S)−2−ヒドロキシ−1−メチル−2−フェニルエチル−3−(3−メトキシフェニル尿素)がトルエン(3×3ml)上で乾燥され、そして10mlのTHFに溶解され、そして1mlのEtNが加えられた。この清澄な溶液に、10mlのTHF中の(R)−2,2’−ビスナフトールホスホクロロダイトの溶液が0℃でゆっくりと加えられた。得られた混合物は室温で18時間撹拌され、ろ過され、そして乾燥状態まで濃縮された。生成物は無色の固体として得られた(収量:299mg)。
【実施例21】
【0076】
T12の合成
【0077】
Arnold,D.P.;Kennard,C.H.;Mak,T.C.W.,Polyhedron 1991,10,509;Arnold,D.P.,Polyhedron 1990,9,1331;Arnold,D.P.,Polyhedron 1986,5,1957によって記載されたのと同じような手順に従って、炭酸カリウム(800mg)および5,10,15,20−テトラキスフェニルジクロロスズ(IV)ポルフィリン(280mg)が、150mlのTHFと40mlの水との混合物に溶解され、還流で3時間加熱された。有機溶媒が除かれ、そして水層が100mlのジクロロメタンを用いて抽出された。有機層は水で洗われ(2×80ml)、そして次に無水硫酸ナトリウム上で乾燥され、ろ過され、そして次いで溶媒が除かれて粗生成物が得られ、それは次にヘキサン/ジクロロメタン(1/1)から再結晶化されてT12が金属調の紫色の結晶性固体として得られた(242mg、91%)。
【実施例22】
【0078】
T13の合成
【0079】
この化合物はT11の遊離の塩基同族体(Biemans,H.A.M.;Rowan,A.E.;Verhoeven,A.;Vanoppen,P.;Latterini,L.;Foekema,J.;Schenning,A.P.H.J.;Meijer,E.W.;De Schryver,F.C.;Nolte,R.J.M.,J.Am.Chem.Soc.1998,120,11054)を出発物質として使用して、T12について記載されたように調製された。紫色の固体として収率(89%)。
【実施例23】
【0080】
T24の合成
【0081】
DAB−デンドリ(dendr)−(NH(N,N,N’,N’−テトラキス(3−アミノプロピル)−1,4−ブタンジアミンの0.12g(Aldrich社))がジクロロメタン(5ml)に溶解され、3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート(0.34g)が加えられ、そして混合物が2時間撹拌された。溶媒の蒸発後、化合物が単離された(収率76.9%)。
【実施例24】
【0082】
T25の合成
【0083】
トルエン中のT24とシリカとの懸濁物を5時間還流後、T25が得られた。
【実施例25】
【0084】
T26の合成
【0085】
T26は、T25と同じような手順を使用して調製された。
【実施例26】
【0086】
T27〜T32、T38の合成
【0087】
本発明者らは、O’Conner,M.J.;West,B.O.,Aust.J.Chem.,1967,20,2077から採用された修正された手順を使用した。すなわち、メタノール(40ml)中のサリチルアルデヒド(2当量)とオルトフェニレンジアミン(1当量)との溶液に、酢酸亜鉛2水和物(≧1当量)とトリエチルアミン(2〜4ml)との溶液が加えられた。混合物は室温で18時間撹拌された。生成物はその後、ろ過によって単離され、そして乾燥された。典型的な単離された収率57〜100%。
【実施例27】
【0088】
典型的な実施例T27
【0089】
4,5−ジクロロ−オルト−フェニレンジアミン(0.38g、2.15mmole)、3,5−ジ−第3級ブチル−サリチルアルデヒド(1.04g、4.44mmole)がメタノール(50ml)中で混合された。次にMeOH(5ml)中のZn(OAc)・2HO(0.60g、2.73mmole)の溶液が加えられ、続いてNEt(3ml)の単品が加えられた。混合物は室温で18時間撹拌され、そして沈殿した生成物がろ過によって回収された。真空中の乾燥によって0.83gのオレンジ色の固体が得られた(1.23mmole、57%)。
【実施例28】
【0090】
T33〜T37の合成
【0091】
T27〜T32について記載された反応手順の修正が実施された。すなわち、サリチルアルデヒドおよびサリチリデン(1−イミノフェニレン−2−アミン)(Munoz−Hernandez,M.A.;Keizer,T.S.;Parkin,S.;Patrick,B.;Atwood,D.A.,Organometallics,2000,19,4416)が1:1の比で混合され、そして酢酸亜鉛2水和物(≧1当量)とトリエチルアミンとの溶液が加えられた。混合物は室温で18時間撹拌された。生成物はその後、ろ過によって単離され、そして乾燥された。典型的な単離された収率57〜100%。
【実施例29】
【0092】
ビルディングブロックのアセンブリによる配位子および錯体の生成
【0093】
ビルディングブロック、テンプレート、および金属前駆体を、要求される比率で溶液中で単に混合することによって、配位子および錯体が生成された。以下の表1に、このようにして調製された錯体のいくつかの例が示される(構造についてはチャートIIおよびIIIを見よ)。
【表1】








【0094】
アセンブルされたビルディングブロックに基づいた配位錯体の触媒反応における例が以下の表に示される。
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7−1】

【表7−2】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【0095】

【0096】

【0097】

【0098】

【0099】


【0100】

【0101】

【0102】

【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】ビルディングブロックのアセンブリングを示す模式図。
【図2】キラル補因子のアセンブリングを示す模式図。









【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2の供与体部分を持つ配位子を含む配位錯体系であって、該少なくとも2の供与体部分が遷移金属およびランタニドから選ばれた少なくとも1の金属と錯体化されている配位錯体系において、該配位子が少なくとも2のビルディングブロックを含み、該ビルディングブロックのそれぞれが少なくとも1の官能基および少なくとも1の供与体部分を持ち、1のビルディングブロックがその官能基を通してもう1つのビルディングブロックのまたはテンプレートの相補的な官能基に非共有結合的に結合され、該テンプレートはもう1つのビルディングブロックの相補的な官能基に非共有結合的に結合された少なくとも1の他の官能基を含み、かつテンプレートが2より多い官能基を含有するときはすべてのビルディングブロック−テンプレート−ビルディングブロック構造が同じであることを特徴とする配位錯体系。
【請求項2】
少なくとも1のビルディングブロックが、無機担体、重合体状有機担体、または混成担体上に固定化されている、請求項1の配位錯体系。
【請求項3】
ビルディングブロックが5,000より小さい分子量を持っている、請求項1〜2のいずれか1項の配位錯体系。
【請求項4】
配位錯体系が、配位子の官能基に非共有結合的に結合されている補因子をさらに含んでいる、請求項1〜3のいずれか1項の配位錯体系。
【請求項5】
配位子と金属とのモル比が0.2〜100である、請求項1〜4のいずれか1項の配位錯体系。
【請求項6】
少なくとも2の供与体部分を持つ配位子を含む配位錯体系であって、該少なくとも2の供与体部分が遷移金属およびランタニドから選ばれた少なくとも1の金属と錯体化されている配位錯体系において、該配位子が2〜6のビルディングブロックを含み、該ビルディングブロックのそれぞれが少なくとも1の官能基および少なくとも1の供与体部分を持ち、少なくとも1のビルディングブロックがその官能基を通してテンプレートの相補的な官能基に非共有結合的に結合されていることを特徴とする配位錯体系。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項の配位錯体系を含んでいる触媒系。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項の配位錯体系を、好ましくはヒドロホルミル化、水素化、転移水素化、ヒドロシアノ化、重合、異性化、カルボニル化、交差カップリング、メタセシス、炭素−水素活性化、アリル位置換、アルドール縮合、およびミカエル付加のために、触媒として使用する方法。
【請求項9】
それぞれが少なくとも1の官能基を持つ少なくとも2のビルディングブロックを使用する方法において、1のビルディングブロックの官能基がもう1つのビルディングブロックまたはテンプレートの官能基に対して相補的であって、その結果ビルディングブロックとテンプレートとの間に、または直接に若しくはテンプレートを介して少なくとも2のビルディングブロック間に、それらの官能基を通して非共有結合的な結合を形成し、金属とともに請求項1〜7のいずれか1項の配位錯体系を得る方法。
【請求項10】
遷移金属およびランタニドから選ばれた金属と錯体をつくるための少なくとも2の供与体部分を持つ配位子をつくるために、1組の自己相補的ビルディングブロックを使用する方法において、該配位子が該1組のビルディングブロックを含み、それぞれのビルディングブロックが、もう1つのビルディングブロックまたはテンプレートの官能基に対して自己相補的である少なくとも1の官能基および少なくとも1の供与体部分を持ち、該複数のビルディングブロックが、互いにまたはテンプレートにそれらの相補的官能基を通して非共有結合的に結合されている方法。
【請求項11】
請求項10に記載された方法に使用するための、配位子をつくるための自己相補的ビルディングブロックを含み、かつ任意的にテンプレートおよび/または配位のための金属を含んでいてもよいビルディングブロックの一組。

【公表番号】特表2007−505153(P2007−505153A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530218(P2006−530218)
【出願日】平成16年5月24日(2004.5.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/050906
【国際公開番号】WO2004/103559
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(505432603)ユニベルシテイト ファン アムステルダム (1)
【Fターム(参考)】