説明

ビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置

【課題】一様な表面粗化を可能とするビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置を提供する。
【解決手段】いったん使用したエッチング液を管路により電解再生槽内に導いて再生した後、管路を通して供給口から前記処理槽内に戻すという液循環型の表面粗化装置において、処理槽は略直方体の形状であり、処理槽内で処理される基板の面と直角をなす側面の一方に、第1排出口と第2供給口が設けられ、もう一方の側面の第1排出口と対向する位置に第2排出口が設けられ、第2供給口と対向する位置に第1供給口が設けられ、各供給口および各排出口から一定の距離に整流部材を有し、第1排出口から電解再生槽を経由して第1供給口に至る第1循環路および第2排出口から電解再生槽を経由して第2供給口に至る第2循環路を交互に使用して液を循環させることを特徴とする、ビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大サイズの半導体パッケージ基板の製造工程で用いられる表面粗化装置に関するものであり、特に、絶縁層のエッチング量に偏りのない一様な粗化を行う場合に好適に利用できる、ビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
BGA基板を始めとする、高集積、高周波用途向け半導体パッケージ用基板には、一般に、コア材の表面に絶縁層となる樹脂を塗布し、これに直接メッキ形成しパターンエッチングすることによりプリント基板を形成するビルドアップ方式が採用されている。このビルドアップ方式では、絶縁層とメッキとの密着性を良好にするために、メッキ処理前に絶縁層の表面を荒らす粗化処理を施す必要がある。その方法としては、エッチング液を満たした処理槽内に基板を浸す、ディップ式エッチングによる粗化が主に採用されている。
【0003】
ディップ式による方法では、エッチング液の反応効果を持続させるために、処理済みのエッチング液を電解再生槽で再生しながら循環させている。従って、基板は静止したエッチング液内ではなく、常に流動しているエッチング液内に浸される。この時、基板近傍のエッチング液の温度が一定で、流れが一様であれば、均一なエッチング速度が得られる。しかしながら、従来のディップ式の処理槽では、エッチング液面で蒸発し気化熱が生じるために温度分布が発生する上、処理槽内で発生する自然対流によってエッチング液の滞留が生じ、エッチング液の疲労分布に差が生じる。そのため、エッチング速度にばらつきが生じるといった問題がある。
【0004】
このエッチング速度のばらつきを低減するために様々な提案がなされている。例えば、特許文献1に示すように、基板(被処理物)を装着したフレームを処理槽内で振動させ、エッチング液を撹拌させることで、エッチング速度のばらつきを低減し、基板のエッチングを均一化する表面粗化装置が提案されている。また、特許文献2では、基板を装着したカセットを処理槽内で回転させ、エッチング液を撹拌させることで、エッチング速度のばらつきを低減し、基板のエッチングを均一化する表面粗化装置が提案されている。
【特許文献1】特開平8−41659号公報
【特許文献2】特開2006−32609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、大型基板においては、特許文献1の方法では基板端部に比較して基板中央部のエッチング液の攪拌が少ないため、相対的にエッチング速度が遅くなり、エッチング量が十分に均一化されないといった問題がある。また、特許文献2の方法では、基板中央部のエッチング液の攪拌が十分でないことに加え、基板の回転に必要な処理槽の大きさを確保しなければならない。また、処理槽を大きくしたことに伴って循環させるエッチング液量も増やす必要があり、エッチング液を供給する供給ポンプの高性能化と、駆動のための消費エネルギーの増加によってコストアップにつながる。
【0006】
ディップ式以外の方法としては、スプレーノズルでエッチング液を基板に吹き付けてエッチングするスプレー式がある。しかし、このスプレー式では、エッチング液を基板に均一に当てることが困難であるためにエッチング速度にばらつきが生じるといった問題や、スプレー圧力でエッチング部の底部が不均一な形状となるなどの問題がする。また、この他の方法としては、プラズマ方式によりエッチングを行う方法も知られているが、A3サイズ以上の面積の基板の両面を同時に均一にエッチングすることは困難である。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、ディップ式による絶縁層の表面粗化において、A3サイズ以上の大きな面積の基板の両面に形成された絶縁層を、同時に均一に低コストで粗化処理を行うことが可能な、ビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の請求項1においては、処理槽内で基板の絶縁層の表面を粗化した処理済みエッチング液を、排出口から管路を通して電解再生槽内に導いて再生し、再生後のエッチング液を、管路を通して供給口から前記処理槽内に戻し、エッチング液を循環させながら粗化処理を行う表面粗化装置において、前記処理槽は略直方体の形状であり、処理槽内で処理される基板の面と直角をなす側面の一方に、1ないし複数の第1排出口と1ないし複数の第2供給口が設けられ、もう一方の側面の第1排出口と対向する位置に第2排出口が設けられ、第2供給口と対向する位置に第1供給口が設けられ、前記処理槽の側面には供給口及び排出口から一定の距離を取った所に整流部材を有し、第1排出口から電解再生槽に至る第1排出管及び電解再生槽から第1供給口に至る第1供給管からなる第1循環路と、第2排出口から電解再生槽に至る第2排出管及び電解再生槽から第2供給口に至る第2供給管からなる第2循環路を交互に使用してエッチング液を循環させることを特徴とする、ビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置である。
【0009】
また請求項2においては、処理槽内で基板の絶縁層の表面を粗化した処理済みエッチング液を、排出口から管路を通して電解再生槽内に導いて再生し、再生後のエッチング液を、管路を通して供給口から前記処理槽内に戻し、エッチング液を循環させながら粗化処理を行う表面粗化装置において、前記処理槽は、略直方体の形状であり、処理槽内でエッチングが行われる際の基板面と直角の位置にあたる片側面に、1ないし複数の排出口を設けた第1排出管と1ないし複数の排出口を設けた第2供給管を挿入し、他の処理槽側面の、第1排出管と対向する位置に1ないし複数の排出口を設けた第2排出管を挿入し、第2供給管と対向する位置に1ないし複数の排出口を設けた第2排出管を挿入し、片側面の供給管と排出管は一定の間隔を有し、前記処理槽の側面には供給管及び排出管から一定の距離を取った所に整流部材を有し、第1供給管と第1排出管からなる第1循環路と第2供給管と第2排出管からなる第2循環路を交互に使用してエッチング液を循環させることを特徴とする、ビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置である。
【0010】
また請求項3においては、下記の式で示されるFが10未満となるように、エッチング液の単位時間当たりの供給体積量Vを制御することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置である。
F=Gr/Re…(式1)
Gr={g×ρ×β×(T1 −T2)×H3 }/μ2 …(式2)
Re=ρ×U×L/μ…(式3)
U=V/(H×W)…(式4)
但し、
Gr:グラスホフ数
Re:レイノルズ数
U:エッチング液の処理槽内平均流速
:処理槽のエッチング液水位
W:処理槽の深さ方向及び第1供給口と第2供給口の対向方向の、両方向と垂直を成す方向の処理槽長さ
g:重力加速度
ρ:エッチング液密度
β:エッチング液熱膨張率
μ:エッチング液粘度
:エッチング液供給温度
:処理槽のエッチング液液面の平均温度
L:第1供給管と第1排出管の距離
【0011】
また請求項4においては、前記第1循環路と第2循環路の切換時間の間隔は、粗化処理に要する時間の1/4以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置としたものである。
【0012】
また請求項5〜8においては、第1循環路と第2供給管と第2排出管からなる第2循環路を交互に使用してエッチング液を循環させる手段として、電解再生槽からの供給管路が第1供給管と第2供給管に分岐する箇所に、エッチング液の循環経路を選択するための供給バルブを設置、或いは、第1排出管と、第2排出管が排出管路に合流する箇所に、エッチング液の循環経路を選択するための排出バルブを設置、或いは、第1供給管と第2供給管のそれぞれに循環ポンプを設置、或いは、第1排出管と第2排出管のそれぞれに循環ポンプを設置、或いはこれら複数の組み合わせで、バルブや循環ポンプを制御することを特徴とするビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置としたものである。
【0013】
また請求項9〜10においては、第1供給管と第2供給管は、それぞれ同本数の第1供給分配管と第2供給分配管に分岐して処理槽内に挿入し、第1排出管と第2排出管は、それぞれ分岐して同本数の第1排出分配管と第2排出分配管を処理槽内に挿入することを特徴とする、請求項2から請求項8のいずれかに記載のビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置としたものである。
【0014】
また請求項11においては第1供給口および第1排出口は、第2供給口および第2排出口に対し、処理槽中央面を対称中心とする面対称の位置関係にあることを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれかに記載のビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置としたものである。
【0015】
また請求項11においては、前記処理槽に供給されるエッチング液の液量は、粗化処理時間あたり、処理槽容積の4倍以上であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれかに記載のビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置としたものである。
【0016】
また請求項12においては循環流路1から循環流路2への切り替え及び循環流路2から循環流路1への切り替え時に、切り替え前の循環流路のエッチング液流量を連続的に減少させて切り替える瞬間の流量は0とし、切り替え後の循環流路のエッチング液流量を0から連続的に増加させることを特徴とする請求項12に記載のビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置としたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、処理槽の側面の供給口からエッチング液を供給し整流部材を通して、淀みの少ないエッチング液の流れを基板に与え、対面する側面の排出口から排出させることにより、基板のエッチング速度のばらつきを減少させることができる。或いは、処理槽の側面に挿入した供給管の供給口からエッチング液を供給し整流部材を通して、淀みの少ないエッチング液の流れを基板に与え、対面する側面に挿入した排出管の排出口から排出させることにより、基板のエッチング速度のばらつきを減少させることができる。
【0018】
また、請求項2の式1で示されるFが10未満となるようにエッチング液の供給速度を与えることによって、自然対流の影響が低い一様流れを与えて、基板のエッチング速度のばらつきを減少させることができる。
【0019】
更に、バルブの切り替えや循環ポンプを選択して作動させることによってエッチング液の循環経路を選択し、処理槽内のエッチング液の流れに変化を与えることができるため、定常的な滞留を防ぎ、薬液疲労による基板のエッチング速度のばらつきを減少させることができる。また、処理槽内の流れを真逆にすることができるため、流れの上流と下流の位置の差によって生じるエッチング量のばらつきを平均化して減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面に従って説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、本発明によるビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置の第1の実施形態を示す概略の構成図である。図1に示すように、表面粗化装置は、エッチング液1を満たす高さ(H)、幅(W)、長さ(L)の略直方体の処理槽2、基板3の絶縁層表面を粗化した処理済みエッチング液を排出する第1排出口81、第2排出口82、それぞれを有する第1排出管71、第2排出管72は電解再生槽6に接続され、再生後のエッチング液を供給する第1供給管51、第2供給管52は、それぞれ2本の分配管に分岐し、第1供給口41を有する第1供給分配管511と512、第2供給口42を有する第2供給分配管521と522を処理槽2の側面に対面して挿入した構成からなる。
【0022】
第1供給管51、第2供給管52、第1排出管71、第2排出管72には、それぞれ第1循環供給ポンプ91、第2循環供給ポンプ92、第1循環排出ポンプ93、第2循環排出ポンプ94が設置されている。その第1供給ポンプ91と第1排出ポンプ93を同時に作動する(第1循環路)か、第2供給ポンプ92と第2排出ポンプ94を同時に作動する(第2循環路)か選択することにより、処理槽2と電解再生槽6の間のエッチング液の循環方向を制御できるようになっている。基板3は、基板支持フォルダ11によって吊り下げられ、処理槽2に漬けられる。
【0023】
図2は、図1の処理槽2を上から見た平面図である。第1供給管51と第2排出管62は処理槽2の同じ側に挿入され、第2供給管52と第1排出管61は処理槽2のもう一方の側に挿入される。各供給分配管および各排出管から一定の距離にパンチングメタルや金網、ハニカムなどの整流部材12を設置し、エッチング液の供給、排出が一様に行われるようにしている。
【0024】
第1供給分配管511、第2供給分配管512は、処理槽深さ方向に一定間隔で処理槽側面側の複数方向に第1供給口41、第2供給口42を設けた。また、第1排出管71、第2排出管72は、処理槽の深さ方向一定間隔で処理槽側面側の複数方向に第1排出口81、第2排出口82を設けた。第1供給口および第1排出口は、第2供給口および第2排出口に対し、処理槽中央面13を面対称の基準とする面対称の位置関係にすることによって、第1循環路を使用した場合と第2循環路を使用した場合で、エッチング液の流動状況は対称になる。
【0025】
以上のように構成された表面粗化装置を用いた、基板3の粗化処理について説明する。基板3は、縦(a)、横(b)、厚み(c)のビルドアップ基板とし、エポキシ樹脂等の絶縁層が塗布された状態である。エッチング液1を深さ(H)に満たした処理槽2に、基板3を漬けて粗化処理を行う。その際、エッチング液は第1循環路のポンプ91及び93と、第2循環路のポンプ92及びポンプ94を5分毎に交互に作動して循環させ、処理槽2に逆向きの流れを与える。本発明においては、エッチング液の循環経路を選択するためのポンプの作動切換時間の間隔は、粗化処理に要する時間の1/4以下であることが好ましい。これにより、処理槽内のエッチング液の定常的な滞留が生じ難く、基板のエッチング速度のばらつきを減少させることができる。
【0026】
本発明における樹脂層表面粗化装置では、処理槽2のエッチング液面では蒸発が起き、気化熱が生じる。このために処理槽2内のエッチング液1中では、温度分布と自然対流が起きやすい。エッチング速度はエッチング液の温度によって変化し、また自然対流により疲労したエッチング液が淀む箇所ではエッチング速度が遅くなるため、エッチング液の蒸発はなるべく抑制することが望ましい。
【0027】
供給流量を増やすことにより、蒸発時間を短くし、エッチング液の温度低下を少なくすることが可能である。また、循環するエッチング液の流量を増やすことにより、自然対流よりも強制対流が勝り、淀みを減らすことも可能である。しかし、一般的に、エッチング液の再生能力や循環系統に制約があり、循環流量を増やすことには限界がある。そこで本発明ではエッチング液の流れの向きを交互に入れ替えることによって、エッチング液をより一様になるようにかくはんしており、これによってエッチング速度をより均一に近づけることができる。
【0028】
強制対流に対する自然対流の強さは、一般的に次の式1のようなグラスホフ数とレイノルズ数の2乗の比Fで求められる。
F=Gr/Re…(式1)
Gr={g×ρ×β×(T1 −T2 )×H3 }/μ2 …(式2)
Re=ρ×U×L/μ…(式3)
U=V/(H×W)…(式4)
【0029】
但し、
Gr:グラスホフ数
Re:レイノルズ数
U:エッチング液の処理槽内平均流速
H:処理槽のエッチング液水位
W:処理槽の深さ方向及び第1供給口と第2供給口の対向方向の、両方向と垂直を成す方向の処理槽長さ
g:重力加速度
ρ:エッチング液密度
β:エッチング液熱膨張率
μ:エッチング液粘度
:エッチング液供給温度
:処理槽のエッチング液液面の平均温度
L:第1供給管と第1排出管の距離
【0030】
グラスホフ数Grは流体の浮力と粘性力の強さの比を表す無次元数であり、レイノルズ数Reは流体の慣性力と粘性力の強さを表す無次元数である。Fが1以上で自然対流が支配的であり、1以下で強制対流が支配的となる。粗化処理時のFは10以下であり、1以下であれば粗化の均一性は更に向上する。
【0031】
また、図3,4に、第1循環路のポンプ91及び93の流量変化と第2循環路のポンプ92及びポンプ94の流量変化の例を示す。図3のようにデジタル的に流れを切り替えるのではなく、図4の様に循環路の切り替え時に連続的に流量を0に変化させることで、流れの方向の切り替えで生じる衝撃波(かく乱)を抑え、基板3の樹脂面を保護することができる。
【0032】
(第2の実施形態)
図5は、本発明によるビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置の第2の実施形態を示す概略の構成図である。図5に示すように、表面粗化装置は、エッチング液1を満たす高さ(H)、幅(W)、長さ(L)の略直方体の処理槽2、基板3の絶縁層表面を粗化した処理済みエッチング液を排出する第1排出口81、第2排出口82、それぞれからの第1排出管71、第2排出管72、排出バルブ102、排出管7、電解再生槽6、再生後のエッチング液を供給する第1供給管路51、第2供給管路52、供給バルブ101、供給管5、処理槽2の側面に対面して設けた第1供給口41、第2供給口42、循環ポンプ10、整流部材12からなる。
【0033】
第1供給口41と第2排出口82は処理槽2の一方の側面に設けられ、第2供給口42と第1排出口81は処理槽2のもう一方の側面に設けられている。第1排出管71と第2排出管72は、排出管路7に合流しており、その合流する箇所に排出バルブ102が設けられている。この排出バルブ102を操作することにより、第1排出管71と第2排出管72のどちらかを使うよう選択できるようになっている。
【0034】
また、第1供給管51と第2供給管52は、供給管5から分岐しており、この分岐する箇所に供給バルブ101が設けられている。この供給バルブ101を操作することにより、第1供給管51と第2供給管52のどちらかを使うよう選択できるようになっている。また、エッチング液は、供給管5に設置された循環ポンプ9で送られて、処理槽2と電解再生槽6の間を循環する。基板3は、基板支持フォルダ11によって吊り下げられ、処理槽2に浸けられる。また、処理槽2の側面に金網、パンチングメタル、ハニカムなどの整流部材12を設置している。
【0035】
以上のように構成された表面粗化装置を用いた、基板3の粗化処理について説明する。基板3は、縦(a)、横(b)、厚み(c)のビルドアップ基板とし、エポキシ樹脂等の絶縁層が塗布された状態である。この基板3をエッチング液1で満たした処理槽2に漬けて粗化処理を行う。
【0036】
その際、エッチング液は、供給量を毎分500Lとし、5分毎に排出バルブ92と供給バルブ91を切り替えて、第1供給口41と第1排出口81、第2供給口42と第2排出口82を交互に使用して循環させた。また、本発明においては、エッチング液の循環経路を選択するためのバルブの切換時間の間隔は、粗化処理に要する時間の1/4以下であることが好ましい。これにより、処理槽内のエッチング液の定常的な滞留が生じ難く、基板のエッチング速度のばらつきを良好に減少させる。
【実施例】
【0037】
(実施例1)
第1の実施形態で説明した構成の表面粗化装置での実施例を述べる。図1において、表面粗化装置の処理槽2は、高さ(H)1m、幅(W)50cm、長さ(L)1.2mの略直方体ステンレス槽とした。第1供給分配管511と512、第2供給分配管521と522は40Aステンレスパイプを用い、エッチング液に浸る範囲に5cm間隔で3方向に直径6mmの第1供給口41及び第2供給口を設けた。
【0038】
基板3は、縦(a)60cm、横(b)50cm、厚み(c)0.1cmのビルドアップ基板とし、エポキシ樹脂が塗布された状態である。エッチング液1に70℃の過マンガン酸カリウム溶液を使用し、深さ(Hw)80cmに満たした処理槽2に基板3を20分浸けて粗化処理を行った。その際、エッチング液は第1循環路のポンプ91及び93と、第2循環路のポンプ92及びポンプ94を5分毎に交互に作動して毎分500L循環させ、処理槽2に交互に逆向きの流れを与えた。
【0039】
この条件において、前述の式1〜3よりFの値を求めると、
U:0.0208m/sec H:0.8m W:0.5m g:9.8m/sec2
ρ:1211kg/m3 β:0.00047/K μ:0.0006Pas T1:70℃
2 :68℃ L:1.2m
より、F=8.2となり、10以下であった。
【0040】
この時の処理槽内のエッチング液の流れを模式的に表したものを図6、図7に示す。図6は第1供給管51と第1排出管71からなる第1循環路を選択した場合の流れ、図7は第2供給管52、第2排出管72からなる第2循環路を選択した場合の流れである。いずれも液面近傍の下流側にやや下降する流れが生じ平行流が崩れるが、定常的な滞留は起きなかった。また、シミュレーションにより基板近傍のエッチング液の温度分布を求めると0.01℃以内に抑えられた。エッチング液の流れの向きを変えたことによって、基板3表面の粗化状態を一様で良好なものとすることができた。
【0041】
比較のため、実施例1と同じ構成で、エッチング液を一方向に毎分100Lで循環した場合の結果について述べる。処理槽内のエッチング液の流れを模式的に表したものを図8に示す。この時のFは195であり、本案の基準値10を超えた。実際、エッチング液の流れも自然対流が支配的となり、渦による滞留が起きた。基板3近傍の温度分布のばらつきも0.3℃以上となり、基板3表面の粗化状態にもばらつきが発生した。

【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の表面粗化装置の第1の実施形態の構成を示す説明図である。
【図2】第1の実施形態の処理槽を上から見た説明図である。
【図3】第1の実施形態の第1循環路と第2循環路のポンプを単純に切り替えた場合を示す説明図である。
【図4】第1の実施形態の第1循環路と第2循環路のポンプの流量を徐々に切り替えた場合を示す説明図である。
【図5】本発明の表面粗化装置の第2の実施形態の構成を示す説明図である。
【図6】第1の実施形態の第1循環路を選択した場合の処理槽内でのエッチング液の流れを示す説明図である。
【図7】第1の実施形態の第2循環路を選択した場合の処理槽内でのエッチング液の流れを示す説明図である。
【図8】第1の実施形態の第1循環路を選択し、十分な循環量を与えていない場合の処理槽内でのエッチング液の流れを示す説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1・・・エッチング液
2・・・処理槽
3・・・基板
4・・・供給口
5・・・供給管
6・・・電解再生槽
7・・・排出管
8・・・排出口
9・・・循環ポンプ
91・・・第1循環供給ポンプ
92・・・第2循環供給ポンプ
93・・・第1循環排出ポンプ
94・・・第2循環排出ポンプ
101・・・排出バルブ
102・・・供給バルブ
11・・・基板支持フォルダ
12・・・整流部材
13・・・面対称基準面
41、42・・・第1供給口、第2供給口
51、52・・・第1供給管、第2供給管
511,512・・・第1供給分配管、第2供給分配管
71、72・・・第1排出管、第2排出管
81,82・・・第1排出口、第2排出口
91、92・・・供給バルブ、排出バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽内で基板の絶縁層の表面を粗化した処理済みエッチング液を、排出口から管路を通して電解再生槽内に導いて再生し、再生後のエッチング液を、管路を通して供給口から前記処理槽内に戻し、エッチング液を循環させながら粗化処理を行う表面粗化装置において、前記処理槽は略直方体の形状であり、処理槽内で処理される基板の面と直角をなす側面の一方に、1ないし複数の第1排出口と1ないし複数の第2供給口が設けられ、もう一方の側面の第1排出口と対向する位置に第2排出口が設けられ、第2供給口と対向する位置に第1供給口が設けられ、前記処理槽の側面には供給口及び排出口から一定の距離を取った所に整流部材を有し、第1排出口から電解再生槽に至る第1排出管及び電解再生槽から第1供給口に至る第1供給管からなる第1循環路と、第2排出口から電解再生槽に至る第2排出管及び電解再生槽から第2供給口に至る第2供給管からなる第2循環路を交互に使用してエッチング液を循環させることを特徴とする、ビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置。
【請求項2】
処理槽内で基板の絶縁層の表面を粗化した処理済みエッチング液を、排出口から管路を通して電解再生槽内に導いて再生し、再生後のエッチング液を、管路を通して供給口から前記処理槽内に戻し、エッチング液を循環させながら粗化処理を行う表面粗化装置において、前記処理槽は、略直方体の形状であり、処理槽内でエッチングが行われる際の基板面と直角の位置にあたる片側面に、1ないし複数の排出口を設けた第1排出管と1ないし複数の排出口を設けた第2供給管を挿入し、他の処理槽側面の、第1排出管と対向する位置に1ないし複数の排出口を設けた第2排出管を挿入し、第2供給管と対向する位置に1ないし複数の排出口を設けた第2排出管を挿入し、片側面の供給管と排出管は一定の間隔を有し、前記処理槽の側面には供給管及び排出管から一定の距離を取った所に整流部材を有し、第1供給管と第1排出管からなる第1循環路と第2供給管と第2排出管からなる第2循環路を交互に使用してエッチング液を循環させることを特徴とする、ビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置。
【請求項3】
下記の式で示されるFが10未満となるように、エッチング液の単位時間当たりの供給体積量Vを制御することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置。
F=Gr/Re…(式1)
Gr={g×ρ×β×(T1 −T2 )×H3 }/μ2 …(式2)
Re=ρ×U×L/μ…(式3)
U=V/(H×W)…(式4)
但し、
Gr:グラスホフ数
Re:レイノルズ数
U:エッチング液の処理槽内平均流速
H:処理槽のエッチング液水位
W:処理槽の深さ方向及び第1供給口と第2供給口の対向方向の、両方向と垂直を成す方向の処理槽長さ
g:重力加速度
ρ:エッチング液密度
β:エッチング液熱膨張率
μ:エッチング液粘度
:エッチング液供給温度
:処理槽のエッチング液液面の平均温度
L:第1供給管と第1排出管の距離
【請求項4】
前記第1循環路と第2循環路の切換時間の間隔は、粗化処理に要する時間の1/4以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置。
【請求項5】
電解再生槽からの供給管路が第1供給管と第2供給管に分岐する箇所に、エッチング液の循環経路を選択するための供給バルブが設けられたことを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載のビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置。
【請求項6】
第1排出管と、第2排出管が排出管路に合流する箇所に、エッチング液の循環経路を選択するための排出バルブが設けられたことを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載のビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置。
【請求項7】
第1供給管と第2供給管のそれぞれに循環ポンプを設置し、スイッチング機構で前述の循環ポンプを選択して作動させることにより、エッチング液の循環経路を選択することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載のビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置。
【請求項8】
第1排出管と第2排出管のそれぞれに循環ポンプを設置し、スイッチング機構で前述の循環ポンプを選択して作動させることにより、エッチング液の循環経路を選択することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載のビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置。
【請求項9】
第1供給管と第2供給管は、それぞれ同本数の第1供給分配管と第2供給分配管に分岐して処理槽内に挿入することを特徴とする、請求項2から請求項8のいずれかに記載のビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置。
【請求項10】
第1排出管と第2排出管は、それぞれ分岐して同本数の第1排出分配管と第2排出分配管を処理槽内に挿入することを特徴とする、請求項2から請求項8のいずれかに記載のビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置。
【請求項11】
第1供給口および第1排出口は、第2供給口および第2排出口に対し、処理槽中央面を対称中心とする面対称の位置関係にあることを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれかに記載のビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置。
【請求項12】
前記処理槽に供給されるエッチング液の液量は、粗化処理時間あたり、処理槽容積の4
倍以上であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれかに記載のビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置。
【請求項13】
循環流路1から循環流路2への切り替え及び循環流路2から循環流路1への切り替え時に、切り替え前の循環流路のエッチング液流量を連続的に減少させて切り替える瞬間の流量は0とし、切り替え後の循環流路のエッチング液流量を0から連続的に増加させることを特徴とする請求項12に記載のビルドアップ基板絶縁層の表面粗化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−80612(P2010−80612A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246115(P2008−246115)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】