説明

ビレット自動押上げ機具

【課題】ビレット荷降ろし後の山崩し作業の作業負荷を軽減しかつ安全性を確保しうるビレット自動押上げ機具を提供する。
【解決手段】傾斜スキッド架台12上に山積み状に荷降ろしされたビレット10の山崩しに用いるビレット自動押上げ機具であって、ビレット10を下方から押上げ4可能な少なくとも一対の押上げシリンダ1と、押上げシリンダ1を支持するシリンダステージ2と、シリンダステージ2をビレット搬送方向沿いの進退移動5可能に支持するステージ支持手段3とを有してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビレット自動押上げ機具に関し、特に鉄鋼分野においてビレットなどの長尺重量材を、傾斜を有する荷降ろし場に降ろす際に好ましく適用される、ビレット自動押上げ機具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、狭い場所や間隔が狭く配置された石材等の重量物を1人の作業者で容易に持上げるための、重量物持上げ治具が記載されている。この重量物持上げ治具は、鋼材からなる1対の持上げアームが複数の連結部材により、一定間隔をおいて平行に連結されている。各持上げアームは、アーム本体の一方の端部に、アーム本体に対してほぼ90度の角度で設けられたフォークを有し、他方の端部に、アーム本体に対してフォークとは反対側にほぼ90度の角度で設けられ保持部を有し、持上げアームがほぼS字形状に形成されている。この重量物持上げ治具は、フォークと保持部がアーム本体に対してほぼ90度の角度で反対側に曲がっているから、持上げる石材と他の石材等との間隔が狭くても、フォークの先端を、地面と持上げる石材の下端部の間に容易に差し込むことができるとともに、アーム本体を地面に対してほぼ垂直に配置することができる。
【0003】
特許文献2には、重量物品を小さな力で確実に持上げることができ、作業時における作業人員の削減、安全性の向上、重量物品の損傷防止が図れる重量物品の持上治具が記載されている。この持上治具は、水平支持杆と交差する部分を回動支点部とする梃棒を有する。梃棒の一端側には重量物品に掛止する掛止部を有する掛止部材が取付けられ、梃棒の他端側を押下げることにより重量物品を梃の原理により小さな力で持上げることができる。掛止部材の掛止部は回動可能であり、梃棒の角度が変わっても、掛止部は常に重量物品に密着した状態となる。梃棒の他端側には、梃棒の回動量を規制する持上量規制部材が取付けられており、重量物品を所定位置まで持上げた状態を容易に保持することができる。
【0004】
これら背景技術はいずれも梃子の原理を利用したものであり、狭い場所で重量物(数百kg)を持ち上げるために適用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−170548号公報
【特許文献2】特開平7−285624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、ビレット(円柱ビレット;例えば重量約1トン、長さ約2m)の荷降ろし作業は、図2に示すような形態で行われていた。すなわち、図2(a)のように、山積み状態に結束したビレット10を天井クレーン11で吊持して、搬送ライン内の荷降ろし場に設置された傾斜スキッド架台12の上に吊下ろす。結束を解いて、ビレット10の山が崩れると、ビレット10は傾斜スキッド架台12の傾斜面を転がり下りて一列に並び、傾斜面の下端に配設したストッパ13で係止される。しかし、荷降ろし時のビレット山の形、ビレット重量、傾斜の角度によってはビレット10の山が自然には崩れない場合があり、その場合には、図2(b)〜(d)のように、作業者がバール等を用いて人力でビレット10を押すことで山崩しを行っている。この山崩し作業は一人作業のとき図2(c)のようにライン片側からの作業となるため、ビレット10を平行移動させるのが困難なことがあり、また、図2(d)のようにビレット山の形によっては傾斜が緩いとビレット10が転がり難いこともあって、作業負荷が大きく、また安全面の確保も難しいという課題があった。
【0007】
前述の背景技術に係る治具は、狭い場所で使える、簡易機械である、低廉であるなどの利点はあるが、作業者が治具で直に重量物を持ち上げるため重量物付近での作業となり、傾斜のある荷降ろし場では円柱ビレット等重量物(〜1トン)に挟まれる危険性があって安全上の問題が解消しない。また、人力で持ち上げるための治具であるため、対象物が円柱ビレット等長尺材(〜2m)のときは限界があり、持ち上げ治具として適用できない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために、ビレット荷降ろし後の山崩し作業の作業負荷を軽減しかつ安全性を確保しうるビレット自動押上げ機具の提供を目的としてなされたものであり、その要旨構成は次の通りである。
(1) 傾斜スキッド架台上に山積み状に荷降ろしされたビレットの山崩しに用いるビレット自動押上げ機具であって、前記ビレットを下方から押上げ可能な少なくとも一対の押上げシリンダと、該押上げシリンダを支持するシリンダステージと、該シリンダステージをビレット搬送方向沿いの進退移動可能に支持するステージ支持手段とを有することを特徴とするビレット自動押上げ機具。
(2) 前記シリンダステージは、前記押上げシリンダを首振り運動可能に支持するシリンダステージであることを特徴とする前項(1)に記載のビレット自動押上げ機具。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、傾斜スキッド架台上に山積み状に荷降ろしされたビレットの山崩し作業の安全性及び作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の1例を示す概略図
【図2】従来技術の問題点を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施形態の1例を示す概略図である。傾斜スキッド架台12上に山積み状に荷降ろしされたビレット10の山崩しに用いるビレット自動押上げ機具は、傾斜スキッド架台12の下側に配設される。このビレット自動押上げ機具は、ビレット10を下方から押上げ4が可能な少なくとも一対の押上げシリンダ1と、押上げシリンダ1を支持するシリンダステージ2と、シリンダステージ2をビレット搬送方向沿いの進退移動5可能に支持するステージ支持手段3とを有してなる。
【0012】
傾斜スキッド架台12は複数のスキッド材を互いに隙間14を空けて並列配置して構成されているので、少なくとも一対の押上げシリンダ1を1つずつ別々の隙間14に通して、山積み状態のビレット10を下方から押上げ可能である(図1(b))。これにより、ビレット10はビレット長手方向の少なくとも二箇所で押上げ力を受けて、ビレット搬送方向(=シリンダステージ2の進退移動5方向)に対して斜めに傾くことなく押上げられるので、ビレット長手方向がビレット搬送方向にほぼ直交するようにビレット10を1列に並べ直すことが容易にできる。
【0013】
押上げシリンダ1はシリンダステージ2により支持され、このシリンダステージ2はステージ支持手段3により、ビレット搬送方向沿いの進退移動5可能に支持されているので、押上げシリンダ2のビレット搬送方向位置を、山積みされた中の押上げ対象とする個々のビレット10の位置に合わせることが容易にできる。ステージ支持手段3は、軌条、チェーン、ラックピニオン等で構成できる。
【0014】
押上げシリンダ1の自動的な押上げ4動作とシリンダステージ2の進退移動5動作とは、ビレット10から離隔した場所からの作業員の遠隔スイッチ操作で実行可能であるから、安全上の問題は解消する。
なお、図1(c)のように、シリンダステージ2としては、押上げシリンダ1を首振り運動6可能に支持する機構(例えば回転軸を介して支持するなどの機構)を備えたものを用いると、押上げシリンダ1の押上げ角度を、ビレット10の山がより崩れやすい角度となるように調整することができて、さらに作業性が向上するので好ましい。この押上げ角度調整作業も、例えば前記回転軸の軸端部にレバー等を設けてこれを操作するなどの方法で、ビレット10から隔離した場所で行うことができるので、安全上の問題は生じない。
【符号の説明】
【0015】
1 押上げシリンダ
2 シリンダステージ
3 ステージ支持手段
4 押上げ
5 進退移動
6 首振り運動
10 ビレット(円柱ビレット)
11 天井クレーン
12 傾斜スキッド架台
13 ストッパ
14 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜スキッド架台上に山積み状に荷降ろしされたビレットの山崩しに用いるビレット自動押上げ機具であって、前記ビレットを下方から押上げ可能な少なくとも一対の押上げシリンダと、該押上げシリンダを支持するシリンダステージと、該シリンダステージをビレット搬送方向沿いの進退移動可能に支持するステージ支持手段とを有することを特徴とするビレット自動押上げ機具。
【請求項2】
前記シリンダステージは、前記押上げシリンダを首振り運動可能に支持するシリンダステージであることを特徴とする請求項1に記載のビレット自動押上げ機具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−148605(P2011−148605A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11807(P2010−11807)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)